説明

消臭剤

【課題】脂肪酸類、アルデヒド類、アンモニア、及びアミン類に由来する複合臭を低減させることができ、分解による異臭の発生もなく、かつ人体に触れても安全な消臭剤を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)及び/又は(2)で表されるアミノ酸誘導体及び/又はその塩を含有し、pHが6.5〜9.5である消臭剤である。


(式中、R1、R2、R5、R6は、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基又はエーテル基を表し、R3は水素原子又はメチル基を表し、R4及びR7は水素原子等を表し、mは0〜2の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消臭剤に関し、詳しくは、脂肪酸類、アルデヒド類、アンモニア、及びアミン類に由来する複合臭を低減させることができ、かつ人体に安全な消臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
消臭剤は、芳香剤と共に不快な匂いを和らげるものであり、快適な生活を送る上で重要な部分を担っている。消臭に関する近年のニーズは、強い芳香で悪臭をマスキングする芳香剤から、微香性又は無香性で臭い自体を消す消臭剤へと変化している。
一方、生活環境における不快な臭いの殆どは複合臭であるが、化学的消臭剤では、対象とする1種類の悪臭に対しては効果があるが、複合臭に対して効果的なものは少ない。
生活環境における不快な臭いは様々であるが、例えば汗臭ではイソ吉草酸等の低級脂肪酸が、生ゴミ臭ではトリエチルアミンに代表されるアミン類が深く関わっており、また中高年以降に認められる加齢臭ではオクテナールやノネナール等の不飽和アルデヒドが深く関わっていることが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、有機二塩基酸及び/又はその塩により、酢酸、イソ吉草酸等の低級脂肪酸類やアンモニア、アミン類等を消臭できることが開示されている。しかしながら、有機二塩基酸及び/又はその塩は、アルデヒド類に対する消臭効果が充分ではない。
特許文献2には、中高年以降に認められる加齢臭の原因物質として深く関わっているとされるノネナール等の不飽和アルデヒドの消臭について、エタノールアミンが効果的であることが開示されている。しかしながら、エタノールアミンに関しては脂肪酸臭やアミン臭等に対する効果が不明であり、またエタノールアミンは刺激性があり、人体に触れる可能性のある形態での使用には適さない。
特許文献3には、グリシンやリシン等のアミノ酸のアミドやエステルの塩酸塩を用いた消臭剤がアルデヒド類の脱臭活性に優れることが開示されている。しかしながら、特許文献3に開示されているアミノ酸アミドやエステルの塩酸塩では、水系の消臭剤として使用するとアルデヒドに対して消臭効果が発現しないか、又はアルデヒドに対する消臭性能は発現するが、分解による異臭の発生等があり好ましくない。
また、特許文献4には、トリエタノールアミン、イミダゾール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンから選ばれる1種以上を塩として含むアニオン界面活性剤により、低級脂肪酸、アミン類が共存する複合臭を抑制できることが開示されている。しかしながら、このアニオン界面活性剤のアミン塩に関してはアルデヒド類に対する効果が不明であり、水に対する溶解性が悪いものもあるため、消臭剤を調製するには適さない。
かかる状況から、水系においても、脂肪酸類、アミン類及びアルデヒド類に由来する複合臭を低減させることができ、かつ人体に安全な消臭剤の開発が望まれていた。
【0004】
【特許文献1】特開2001−95907号公報
【特許文献2】特開2001−97838号公報
【特許文献3】特開2002−95726号公報
【特許文献4】特開2004−49889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、水系においても、脂肪酸類、アルデヒド類、アンモニア、及びアミン類に由来する複合臭を低減させることができ、分解による異臭の発生もなく、かつ人体に触れても安全な消臭剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定のアミノ酸誘導体が水系においても、脂肪酸類やアルデヒド類の消臭に有効であり、pHを中性付近に調整することでアンモニア、アミン類にも効果を発揮でき、分解による異臭の発生もなく、しかも人体に触れても刺激等が緩和されることを見出した。また、酸解離指数(pKa)が大きい酸と併用することにより、消臭性能を更に高め得ることを見出した。
すなわち、本発明は、次の〔1〕及び〔2〕を提供する。
〔1〕下記一般式(1)及び/又は(2)で表されるアミノ酸誘導体及び/又はその塩を含有し、pHが6.5〜9.5である消臭剤。
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、R1及びR2は、水素原子、炭素数2〜22のアルキル基又はヒドロキシアルキル基、又は炭素数3〜22のエーテル基を表し、同一でも異なっていてもよいが、共に水素原子であることはない。R3は水素原子又はメチル基を表し、R4は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、mは0〜2の整数を表す。)
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、R5及びR6は、水素原子、炭素数2〜22のアルキル基又はヒドロキシアルキル基、又は炭素数3〜22のエーテル基を表し、同一でも異なっていてもよい。R7は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
〔2〕前記〔1〕の消臭剤を対象物に付着させ、対象物の臭いを低減させる消臭方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の消臭剤は、脂肪酸類、アルデヒド類、アンモニア、及びアミン類に由来する複合臭を消臭でき、人体に触れても安全である。また、水系消臭剤の調製も容易であり、得られる水系消臭剤は保存安定性に優れている。
本発明の消臭剤は、特に空間や繊維製品等の固体表面に付着した複合臭について優れた消臭効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の消臭剤は、下記一般式(1)及び/又は(2)で表されるアミノ酸誘導体及び/又はその塩(以下、単に「アミノ酸誘導体等」ということがある)を主成分として含有する。
【0013】
【化3】

【0014】
一般式(1)において、R1及びR2は、水素原子、炭素数2〜22、好ましくは炭素数3〜14のアルキル基又はヒドロキシアルキル基、又は炭素数3〜22、好ましくは炭素数3〜12のエーテル基、好ましくはアルキルエーテル基を表し、同一でも異なっていてもよいが、共に水素原子であることはない。
1及びR2は、消臭性能及び入手性の観点から、水素原子、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−エトキシプロピル基、3−ブトキシプロピル基、3−オクチルオキシプロピル基が好ましく、特に水素原子、ヒドロキシエチル基、3−エトキシプロピル基、3−ブトキシプロピル基が好ましい。
3は、入手性の観点から、水素原子又はメチル基が用いられるが、水素原子が好ましい。
4は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基が用いられるが、入手性の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。
一般式(1)中のmは、0〜2の整数を表すが、消臭性能及び入手性の観点から、0又は1が好ましい。
【0015】
一般式(1)で表されるアミノ酸誘導体又はその塩の好適例としては、2−アミノ−N−シクロヘキシルアセトアミド、2−アミノ−N−(2−エチルヘキシル)アセトアミド、2−アミノ−N−(2−ヒドロキシエチル)アセトアミド、2−アミノ−N−(2−ヒドロキシプロピル)アセトアミド、2−アミノ−N−(3−エトキシプロピル)アセトアミド、2−アミノ−N−(3−n−ブトキシプロピル)アセトアミド、2−アミノ−N−シクロヘキシルプロピオン酸アミド、2−アミノ−N−(2−エチルヘキシル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−N−(2−ヒドロキシプロピル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−N−(3−エトキシプロピル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−N−(3−n−ブトキシプロピル)プロピオン酸アミド、3−アミノ−N−シクロヘキシルプロピオン酸アミド、3−アミノ−N−(2−エチルヘキシル)プロピオン酸アミド、3−アミノ−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸アミド、3−アミノ−N−(2−ヒドロキシプロピル)プロピオン酸アミド、3−アミノ−N−(3−エトキシプロピル)プロピオン酸アミド、3−アミノ−N−(3−n−ブトキシプロピル)プロピオン酸アミド、4−アミノ−N−シクロヘキシル酪酸アミド、4−アミノ−N−(2−エチルヘキシル)酪酸アミド、4−アミノ−N−(2−ヒドロキシエチル)酪酸アミド、4−アミノ−N−(2−ヒドロキシプロピル)酪酸アミド、4−アミノ−N−(3−エトキシプロピル)酪酸アミド、4−アミノ−N−(3−n−ブトキシプロピル)酪酸アミド、等、及びそれらと塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸等との塩が好ましく、挙げられる。
これらの中では、消臭性能及び入手性の観点から、2−アミノ−N−(2−エチルヘキシル)アセトアミド、2−アミノ−N−(3−エトキシプロピル)アセトアミド、2−アミノ−N−(3−n−ブトキシプロピル)アセトアミド、及びそれらの塩から選ばれる1種以上が特に好ましい。
【0016】
【化4】

【0017】
一般式(2)において、R5及びR6は、水素原子、炭素数2〜22、好ましくは炭素数3〜14のアルキル基又はヒドロキシアルキル基、又は炭素数3〜22、好ましくは炭素数3〜12のエーテル基、好ましくはアルキルエーテル基を表し、同一でも異なっていてもよい。R7は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
5及びR6は、消臭性能及び入手性の観点から、水素原子、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−エトキシプロピル基、3−ブトキシプロピル基、が好ましく、特に水素原子、ヒドロキシエチル基、3−エトキシプロピル基、3−ブトキシプロピル基が好ましい。
7は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基が用いられるが、入手性の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。
【0018】
一般式(2)で表されるアミノ酸誘導体又はその塩の好適例としては、セリンアミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−シクロヘキシルプロピオン酸アミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−(2−エチルヘキシル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−(2−ヒドロキシプロピル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−(3−エトキシプロピル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−(3−n−ブトキシプロピル)プロピオン酸アミド等、及びそれらと塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸等との塩が挙げられる。
これらの中では、消臭性能及び入手性の観点から、セリンアミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−(2−エチルヘキシル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−(3−エトキシプロピル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−(3−n−ブトキシプロピル)プロピオン酸アミド、及びそれらの塩から選ばれる1種以上が特に好ましい。
【0019】
一般式(1)及び/又は(2)で表されるアミノ酸誘導体は、光学活性体でもラセミ体でもよく、これらの混合物でもよい。
一般式(1)及び/又は(2)で表されるアミノ酸誘導体は、公知の方法、例えば、各種アミノ酸をベンジルオキシカルボン酸クロライド等でアミノ基を保護した後、対応するアミン類と反応させた後、水素雰囲気下で触媒等を用いて接触水素還元を行う方法により合成することができる。水添触媒としては、ニッケル、銅、白金、コバルト、パラジウム等の金属活性成分を、珪藻土、アルミナ、シリカゲル、シリカアルミナ、活性炭などの担体に担持させた触媒、より具体的にはPd/活性炭触媒等を用いることができる。
【0020】
本発明の消臭剤における、アミノ酸誘導体等の含有量は、消臭する悪臭の濃度、使用形態によっても異なるが、通常0.001質量%以上、好ましくは0.005〜10質量%、更に好ましくは0.01〜8質量%である。
本発明の消臭剤のpHは、6.5〜9.5である。本発明の消臭剤は、pH6.5以上で脂肪酸類やアルデヒド類に対する効果が発現し、またpH9.5以下でアンモニア、アミン類に対する効果が発現する。
脂肪酸類、アルデヒド類、アンモニア、及びアミン類の全てに対する効果、及び皮膚刺激低減等の観点から、pHは6.5〜9.0が好ましく、6.5〜8.8が更に好ましい。
本発明の消臭剤のpHは、酸を添加することにより調整することができる。用いることができる酸としては、塩酸、硫酸、硝酸の他、リン酸、炭酸、酢酸、乳酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、モノ(短・中鎖アルキル、グルコース等)置換リン酸エステル、マレイン酸、マロン酸、エチレンジアミンポリ酢酸、シクロアルカン・アルケン−1,2−ジカルボン酸、ジエチレントリアミンポリ酢酸、1,2−シクロヘキサンジアミン−N−ポリ酢酸等が挙げられる。
【0021】
本発明の消臭剤においては、少なくとも一つの解離段における酸解離指数(pKa)(25℃)が5.0以上である無機酸及び/又は有機酸を含有することが好ましい。前記酸解離指数(pKa)が5.0以上の酸を含有させることにより、中性付近の緩衝能を上げることができるだけでなく、脂肪酸類やアンモニア、アミン類の消臭にも作用し、アミノ酸誘導体等の添加量を減らしても、脂肪酸臭、アンモニア臭、アミン臭に対して充分な効果が発現するため好ましい。
酸解離指数は、例えば、(a)The Journal of Physical Chemistry vol.68, number6, page1560 (1964) 記載の方法、(b)京都電子工業株式会社製の電位差自動滴定装置(AT310J等)を用いる方法等により測定することができ、また、(c)日本化学会編の化学便覧(改訂3版、昭和59年6月25日、丸善株式会社発行)に記載の酸解離指数、(d)コンピュドラッグ (Compudrug) 社製の pKaBASE 等のデータベース等を利用することができる。
【0022】
少なくとも一つの解離段における酸解離指数(pKa)(25℃)が5.0以上である無機酸としては、例えば、炭酸(1段目pKa値:6.35、2段目pKa値:10.33)、ホスホン酸(2段目pKa値:6.79)、リン酸(2段目pKa値:7.20、3段目pKa値:12.35)、二リン酸(3段目pKa値:6.70、4段目pKa値:9.40)、トリポリリン酸(4段目pKa値:6.50、5段目pKa値:9.25)等が挙げられる。
また、前記酸解離指数(pKa)が5.0以上である有機二塩基酸としては、例えば、マレイン酸(2段目pKa値:5.83。以下の( )内の数値は2段目pKa値を表す。)、マロン酸(5.28)、2−メチルマロン酸(5.76)、2−エチルマロン酸(5.81)、2−イソプロピルマロン酸(5.88)、2,2−ジメチルマロン酸(5.73)、2−エチル−2−メチルマロン酸(6.55)、2,2−ジエチルマロン酸(7.42)、2,2−ジイソプロピルマロン酸(8.85)、m−ヒドロキシ安息香酸(9.96)、p−ヒドロキシ安息香酸(9.46)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸(トランス体:6.06、シス体:6.74)、1,2−シクロペンタンジカルボン酸(トランス体:5.99、シス体:6.57)、1,2−シクロオクタンジカルボン酸(トランス体:6.24、シス体:7.34)、1,2−シクロヘプタンジカルボン酸(トランス体:6.18、シス体:7.6)、コハク酸(5.24)、フェニルコハク酸(5.55)、2,3−ジメチルコハク酸(6.0)、2,3−ジエチルコハク酸(6.46)、2−エチル−3−メチルコハク酸(6.1)、テトラメチルコハク酸(7.41)、2,3−ジ−t−ブチルコハク酸(10.26)、3,3−ジメチルグルタル酸(6.45)、3,3−ジエチルグルタル酸(7.42)、3−イソプロピル−3−メチルグルタル酸(6.92)、3−t−ブチル−3−メチルグルタル酸(7.49)、3,3−ジイソプロピルグルタル酸(7.68)、3−メチル−3−エチルグルタル酸(6.70)、3,3−ジプロピルグルタル酸(7.48)、2−エチル−2−(1−エチルプロピル)グルタル酸(7.31)、シクロヘキシル−1,1−ジ酢酸(7.08)、2−メチルシクロヘキシル−1,1−ジ酢酸(6.89)、シクロペンチル−1,1−ジ酢酸(6.77)、3−メチル−3−フェニルグルタル酸(6.17)、3−エチル−3−フェニルグルタル酸(6.95)等が挙げられる。
【0023】
前記酸解離指数(pKa)が5.0以上であるその他の有機多塩基酸としては、クエン酸(3段目pKa値:5.69)、グルタミン酸(3段目pKa値:9.59)、アスパラギン酸(3段目pKa値:9.63)等が挙げられる。
これらの中では、入手が容易で、少なくとも一つの解離段における酸解離指数(pKa)が5.2以上のリン酸、クエン酸、コハク酸、マレイン酸、マロン酸等が好ましい。
【0024】
一般式(1)及び/又は(2)で表されるアミノ酸誘導体を塩酸等の塩として用いる場合は、塩基を添加することによりpHを調整することができる。用いることができる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の他、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。これらの中では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
一般式(1)及び/又は(2)で表されるアミノ酸誘導体及び/又はその塩は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
本発明の消臭剤は、アミノ酸誘導体等の単独でも、脂肪酸類、アルデヒド類、アンモニア、及びアミン類に由来する複合臭に対して消臭性能を発揮するが、多価アルコール類や界面活性剤の1種以上と併用することにより、消臭性能が更に高めることができる。
臭気成分は布地、衣類、カーペット、ソファー等の繊維製品等の固体表面に付着するが、多価アルコール類や界面活性剤は、固体表面に付着した臭気成分の揮発を抑制するばかりでなく、消臭成分であるアミノ酸誘導体等を安定に分散させ、臭気成分との接触を向上させて、消臭性能を更に高めることができる。
【0026】
用いることができる多価アルコール類としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらの中では、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールが好ましい。
消臭剤中の多価アルコール類の含有量は、消臭する悪臭の濃度、使用形態によっても異なるが、通常0.001質量%以上、好ましくは0.001〜30質量%、更に好ましくは0.005〜10質量%である。
【0027】
用いることができる好適な界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤非イオン界面活性剤が挙げられる。
これらの界面活性剤としては、疎水部の分子中に少なくとも炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基を有し、親水部にはカルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩、4級アンモニウム塩、スルホベタイン、カルボベタイン、アミンオキシド、(ポリ)オキシアルキレン、(ポリ)アルカノールアミン、(ポリ)グリコシド、1,2−等のジオールや、(ポリ)グリセリン骨格を持つ化合物等を有するものが挙げられる。疎水部のアルキル基又はアルケニル基と親水部が、エーテル基、エステル基、アミド基、アルキル基から選ばれる1種以上を介して結合していてもよい。
これらの界面活性剤の中では、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩、4級アンモニウム塩、アミンオキシド、カルボベタイン、(ポリ)グリコシド、1,2−等のジオール型界面活性剤が好ましい。
消臭剤中の界面活性剤の含有量は、消臭する悪臭の濃度、使用形態によっても異なるが、通常0.001質量%以上、好ましくは0.001〜30質量%、更に好ましくは0.01〜10質量%である。
【0028】
本発明の消臭剤には、アミノ酸誘導体等と共に、他の消臭剤を含むことができる。更に、前記の多価アルコール類や界面活性剤の他に、通常の消臭剤に添加される、各種の溶剤、油剤、ゲル化剤、硫酸ナトリウムやN,N,N−トリメチルグリシン等の塩、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、殺菌・抗菌剤、香料、色素、紫外線吸収剤等の他の成分を添加することができる。
溶剤としては、水、エタノール、エチレングリコールやプロピレングリコールのモノエチル又はモノブチルエーテル、ジエチレングリコールやジプロピレングリコールのモノエチル又はモノブチルエーテル、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、フェノール性化合物のエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。
香料としては、公知のミント系香気をもつ香料、柑橘系香気をもつ香料,ハーブ系香気をもつ香料、ウッディー系香気をもつ香料等が挙げられる。また、抗菌作用を有する香料は、繊維製品等に付着した皮脂・汗成分からの細菌等の繁殖による悪臭の発生を抑制するため好ましい。香料は、通常0.001〜2重量%、より好ましくは0.005〜1重量%配合することで、より好適な消臭効果を得ることができる。香料は単体香料でもよいが、調合香料を使用することが好ましい。
【0029】
本発明の消臭剤の使用に際しては、液状、ゲル状、粉状、粒状等の固体状とすることができる。液状の場合には、特にスプレー、ローション等として用いることができる。本発明の消臭剤は、特に水系消臭剤としてミストタイプのスプレー容器に充填し、一回の噴霧量を0.1〜1mlに調整したものが好ましい。使用するスプレー容器としては、トリガースプレー容器(直圧あるいは蓄圧型)やディスペンサータイプのポンプスプレー容器等の公知のスプレー容器を用いることができる。
ゲル状、固体状の場合には、人体、毛髪、ペット等に部分的に使用するのに適している。また、例えば、紙や不織布等に浸漬、噴霧させて空気清浄器のフィルターとして用いる等、据え置き型として使用することもできる。
本発明の消臭剤を用いる消臭方法の対象物は、固体表面を有するものであれば特に制限はない。例えば、カーテン等の布地、スーツ、セーター等の衣類、カーペット、ソファー等の繊維製品、食器、ゴミ箱、調理台、室内の床、天井、壁等の硬質表面を有する対象物に本発明の消臭剤組成物を付着させ、対象物の臭いを効果的に低減させることができる。特に、繊維製品のような消臭対象の表面積が広い対象物において効果的である。
【実施例】
【0030】
実施例1〜6及び比較例1〜2
表1に示す消臭剤0.50gにイオン交換水を加えて10gとし、48%NaOH水溶液又は濃塩酸を添加してpH調整を行い、5%消臭剤水溶液を調製した。
100mLの蓋付きビンに上記の方法で調製した5%消臭剤水溶液400mgを入れ、臭気成分水溶液として、2%イソ吉草酸水溶液100μL、9.3%アンモニア水溶液1μL、0.35%アセトアルデヒド水溶液10μLを各々加え、密栓した。次いで、イソ吉草酸の場合には35℃の水浴中で20分間振とうさせた後、アンモニアとアセトアルデヒドの場合には室温で20分間振とうさせた後、ガステック社製のガス検知管を用いて気相部のガス濃度を測定した。同一サンプルについて3回試験を行い、その平均値(S)を求めた。
イオン交換水400mgを加えて同様の試験を行った時のガス濃度をCとし、次式により消臭率(%)を算出した。結果を表1に示す。
消臭率(%)=(1−S/C)×100
【0031】
【表1】

【0032】
表1から、比較例1(酸性条件)ではイソ吉草酸とアセトアルデヒドに対する消臭性能が低く、比較例2(強アルカリ条件)ではアンモニアに対する消臭性能が低いが、本発明の実施例1〜6の消臭剤は、イソ吉草酸、アンモニア、アセトアルデヒドのいずれに対しても高い消臭性能を発揮することが分かる。
【0033】
実施例7〜11及び比較例3〜4
表2に示す消臭剤6.0gにイオン交換水を加えて20gとし、ここに濃塩酸又は48%NaOH水溶液を加えてpH7.5の消臭剤水溶液を調製した。この水溶液5.0gを50mL容のスクリュー管に入れ、窒素ガスを軽く吹き込んだ後密栓し、40℃で保存した。
30歳代の男性1人(A)及び女性2人(B、C)のパネラーに保存後の消臭剤の臭いを嗅いでもらい、保存しなかった調製直後の各サンプルと比較した結果を、下記の3段階の臭気強度表示法で評価した。結果を表2に示す。
○:かわらず(ほぼ無臭)
△:弱い臭いあり
×:強い臭いあり
【0034】
【表2】

【0035】
表2から、比較例3、4の水系消臭剤においては、消臭剤の分解に起因すると考えられるアンモニア臭が感じられるのに対して、実施例7〜11の水系消臭剤はアンモニアの発生が抑制され、水溶液系で優れた保存安定性を有することが分かる。
【0036】
実施例12〜16及び比較例5
表3に示す消臭剤3.0gにイオン交換水を加えて10gとし、ここに濃塩酸又は48%NaOH水溶液を加えてpH調整を行い、消臭剤水溶液を調製した。この消臭剤水溶液66.7mgと悪臭成分であるアルデヒド(ノナナール、トランス−2−ノネナール、2,4−デカジエナール)の各2μLを20mLのバイアル瓶に入れて軽く振った後、下記の測定条件で気相部のガスクロマト分析を行い、消臭剤を加えないときのアルデヒド量をC、消臭剤を加えたときのアルデヒド量をSとし、次式により消臭率(%)を算出した。結果を表3に示す。
消臭率(%)=(1−S/C)×100
【0037】
ガスクロマト測定条件:
HS-オートサンプラー:PERKIN ELMER社製、商品名:HS40XL
バイアル保温時間:35℃で30分保温後、加圧2分、注入0.3分
ガスクロマト分析装置:HEWLETT PACKARD社製、商品名:5890
カラム液相:(5%フェニル)メチルポリシロキサン(無極性)
カラム長さ:30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm
昇温条件:40℃(8℃/分)−60℃(4℃/分)−200℃
【0038】
【表3】

【0039】
表3から、本発明の実施例12〜16の消臭剤は、各種アルデヒドに対しても高い消臭性能を発揮することが分かる。
【0040】
水系消臭剤の調製例1〜9
水系消臭剤として、表4に示す配合処方の消臭剤を調製した。
【0041】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の消臭剤は、脂肪酸類、アルデヒド類、アンモニア、及びアミン類に由来する複合臭を消臭でき、人体に触れても安全である。また、水系消臭剤の調製も容易であり、得られる水系消臭剤は保存安定性に優れている。このため、本発明の消臭剤は、空間や、布地、衣類、カーペット、ソファー等の繊維製品等の固体表面に付着した複合臭の消臭剤として、好適に使用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)及び/又は(2)で表されるアミノ酸誘導体及び/又はその塩を含有し、pHが6.5〜9.5である消臭剤。
【化1】

(式中、R1及びR2は、水素原子、炭素数2〜22のアルキル基又はヒドロキシアルキル基、又は炭素数3〜22のエーテル基を表し、同一でも異なっていてもよいが、共に水素原子であることはない。R3は水素原子又はメチル基を表し、R4は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、mは0〜2の整数を表す。)
【化2】

(式中、R5及びR6は、水素原子、炭素数2〜22のアルキル基又はヒドロキシアルキル基、又は炭素数3〜22のエーテル基を表し、同一でも異なっていてもよい。R7は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)のR4及び前記一般式(2)のR7が水素原子である、請求項1に記載の消臭剤。
【請求項3】
前記一般式(1)のmが0又は1である、請求項1に記載の消臭剤。
【請求項4】
一般式(1)で表されるアミノ酸誘導体又はその塩が、2−アミノ−N−(2−エチルヘキシル)アセトアミド、2−アミノ−N−(3−エトキシプロピル)アセトアミド及びそれらの塩から選ばれる1種以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の消臭剤。
【請求項5】
一般式(2)で表されるアミノ酸誘導体又はその塩が、セリンアミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−(2−エチルヘキシル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−(3−n−ブトキシプロピル)プロピオン酸アミド及びそれらの塩から選ばれる1種以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の消臭剤。
【請求項6】
消臭剤が水系消臭剤である、請求項1〜5のいずれかに記載の消臭剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の消臭剤を対象物に付着させ、対象物の臭いを低減させる消臭方法。
【請求項8】
脂肪酸類、アルデヒド類及びアミン類に由来する複合臭を低減させるものである請求項7に記載の消臭方法。


【公開番号】特開2007−229016(P2007−229016A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51238(P2006−51238)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】