説明

消臭器の製造方法及び消臭器

【課題】 天然鉱石中に存在する多数の細孔をそのまま利用して臭気物質の吸着を図ると共に吸着した臭気物質の分解を促進して消臭性の低下を防止することが可能な消臭器の製造方法及び消臭器を提供する。
【解決手段】 臭気物質12を吸着する多数の細孔13を備えた天然鉱石から整形体14を作製し、整形体14中の細孔13内に臭気物質12の分解反応を促進する触媒作用を有する鉄系化合物及びマンガン系化合物のいずれか一方又は双方を有する金属系触媒を担持させた。ここで、天然鉱石として麦飯石が使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭気物質を細孔内に吸着し分解して消臭する消臭器の製造方法及び消臭器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消臭作用を有する天然鉱石として麦飯石が使用されている。しかし、麦飯石は天然素材であるため、組織や組成が一定しておらず、このため消臭作用も不安定となっている。そこで、一定量の麦飯石を粉砕して粉末にして混合することで麦飯石としての組成を均一にしている。そして、粉末にした麦飯石を消臭材として利用する場合、例えば、麦飯石の粉末にセピオライト粉末、カオリン粉末、及びセラミック繊維を加えて成形基材を調製し、所定形状に成形し焼成して使用している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−187786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、麦飯石の粉砕、成形基材の調製、成形、及び焼成の各工程を必要とするため、麦飯石の利用に際し製造コストがかかるという問題が生じる。また、成形基材を成形して焼成するため、得られる焼成体に麦飯石が本来有していたのと同程度の比表面積を維持させることが困難であるという問題がある。更に、焼成を行なうため、麦飯石が本来有していた組成や組織が熱により変化する可能性があり、麦飯石の有していた臭気物質の消臭性が低下するという問題も生じる。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、天然鉱石中に存在する多数の細孔をそのまま利用して臭気物質の吸着を図ると共に吸着した臭気物質の分解を促進して消臭性の低下を防止することが可能な消臭器の製造方法及び消臭器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る消臭器の製造方法は、臭気物質を吸着する多数の細孔を有する天然鉱石から整形体を作製し、該整形体中の前記細孔内に前記臭気物質の分解反応を促進する触媒作用を有する金属系触媒を担持させた。
【0007】
第1の発明に係る消臭器の製造方法において、前記天然鉱石に麦飯石を用いることができる。麦飯石を使用することにより、非常に多数の細孔を有する(比表面積の大きな)整形体を容易に得ることができる。
第1の発明に係る消臭器の製造方法において、前記金属系触媒は鉄系化合物及びマンガン系化合物のいずれか一方又は双方を有してもよい。なお、鉄系化合物とは、2価鉄化合物(例えば、硫酸第一鉄)を主剤とし、アスコルビン酸等の有機酸を添加した化学的に活性な鉄−有機酸系化合物等を指し、マンガン系化合物とは、2価マンガン塩(例えば、硫酸マンガン(II))の水溶液に、アスコルビン酸及びオキシ多塩基(例えば、クエン酸)から選ばれた少なくとも1種の酸又はその塩(例えば、アスコルビン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム)を結合させたマンガン−有機酸系化合物等を指す。
第1の発明に係る消臭器の製造方法において、前記整形体が板状及び粒状のいずれか一方であってもよい。
【0008】
前記目的に沿う第2の発明に係る消臭器は、麦飯石から加工された整形体中の細孔内に臭気物質を吸着し分解して消臭する。ここで、麦飯石から加工された整形体とは、例えば、麦飯石を粉砕した粉粒体、麦飯石の粉末を造粒した造粒体、麦飯石の粉末を成型した成形体、及び麦飯石から切り出した板状体のいずれか1又は2以上を指す。
また、前記目的に沿う第3の発明に係る消臭器は、麦飯石から加工された整形体中の細孔内に、鉄系化合物及びマンガン系化合物のいずれか一方又は双方を有する金属系触媒が担持され、前記細孔内に吸着された臭気物質を前記金属系触媒の触媒作用で分解して消臭する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1〜4記載の消臭器の製造方法においては、消臭の触媒作用を有する金属系触媒を担持させるに際し、天然鉱石中に存在する多数の細孔をそのまま利用するので、消臭器を安価に製造することが可能になる。そして、吸着した臭気物質は金属系触媒の触媒作用で分解反応が促進されて消失するので、細孔内への臭気物質の吸着性の低下を防止することが可能となり、安定した消臭性を維持することが可能になる。更に、吸着性を再生させる処理を行なうことが不要となるため、消臭器の使用が容易となる。
【0010】
特に、請求項2記載の消臭器の製造方法においては、天然鉱石が麦飯石であるので麦飯石の有する臭気物質に対する高い吸着性をそのまま利用すると共に、消臭性の維持を図ることが可能になる。
請求項3記載の消臭器の製造方法においては、金属系触媒が鉄系化合物及びマンガン系化合物のいずれか一方又は双方であるので、金属系触媒の担持処理を行なう際に水溶液の状態で金属系触媒を使用することができ、金属系触媒の取り扱いが容易となって、金属系触媒を担持する際のコストを安価にすることが可能になる。
請求項4記載の消臭器の製造方法においては、整形体が板状及び粒状のいずれか一方であるので、天然鉱石からの整形体の加工歩留りを向上することが可能になる。また、板状に加工した場合は敷きつめたり、台として利用することができ、粒状に加工した場合は敷きつめたり、任意の場所に配置したり、袋に収納してマット状にしたり、容器に入れて室内調度品の一部として使用したりすることができ、消臭器を用いて消臭を効率的に行なうことが可能になる。
【0011】
請求項5記載の消臭器においては、麦飯石中に存在する多数の細孔をそのまま利用すると共に種々の用途に合わせた最適形状の消臭器を得ることができ、効率的な消臭を行なうことができる。
請求項6記載の消臭器においては、麦飯石中に存在する多数の細孔をそのまま利用して、その細孔内に鉄系化合物及びマンガン系化合物のいずれか一方又は双方を有する金属系触媒を担持することができ、金属系触媒を担持する際のコストを安価にすることが可能になる。また、細孔内に吸着した臭気物質は金属系触媒の触媒作用で分解して消失するので、細孔内への臭気物質の吸着性の低下を防止することが可能となる。このため、吸着性を再生させる処理を行なう必要がなくなり、消臭器の使用が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1(A)、(B)はそれぞれ本発明の第1の実施の形態に係る消臭器の一例であるペット用消臭具の説明図、部分拡大断面図、図2は同ペット用消臭具の製造方法の工程説明図、図3(A)〜(C)はそれぞれ同ペット用消臭具の製造方法の切り出し工程、浸漬工程、及び加熱工程を説明する部分拡大断面図、図4(A)、(B)はそれぞれ本発明の第2の実施の形態に係る消臭器の一例であるペット用の消臭マットの説明図、部分拡大断面図である。
【0013】
図1(A)、(B)に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る消臭器の一例であるペット用消臭具10は、例えば、室の床面11上に置いてペットの寝床やトイレ部材の一部として使用するもので、臭気物質12を吸着する多数の細孔13を備えた天然鉱石の一例である麦飯石の原石から切り出して作製した整形体の一例である平板14中の細孔13の内面に、臭気物質12の分解反応を促進する触媒作用を有する金属系触媒であるマンガン系化合物の一例である硫酸マンガン(II)−アスコルビン酸化合物(以下、マンガン−有機酸系化合物という)の担持層15が形成されている消臭部材16と、消臭部材16の裏面側の角部に取付けられた、例えば、ゴム製の脚17とを有している。
ここで、ペットとは、例えば、室内で飼う猫や小型の犬等を指す。また、臭気物質12とは、ペットの悪臭の発生源となる物質であり、その主成分はアンモニア、トリメチルアミン、メチルメルカプタン、及び硫化水素のいずれか1又は2以上である。
【0014】
また、脚17は、消臭部材16の裏面に一側が取付けられた支持部18と、支持部18の他側が固定されて床面11に当接する受圧部19を有している。これによって、ペット用消臭具10を床面11に置いた際に、消臭部材16を床面11から浮かせて保持することができ、消臭部材16と床面11との間の通気性を確保することができる。このため、消臭部材16の表面、裏面、及び側面を室内の空気に接触させることができ、室内の空気中に混入している臭気物質12を効率的に吸着することができる。なお、脚17がゴム製のため、脚17と床面11との間の摩擦力が大きく、ペットがペット用消臭具10に飛び乗ったり、ペット用消臭具10から飛び下りたりしても、ペット用消臭具10が床面11上でずれるのを防止できる。なお、ペット用消臭具10の表面側を、冬場は布やマット等の敷物20で覆ってもよい。この場合は、敷物20を介して臭気物質12がペット用消臭具10に吸着されることになる。
【0015】
ここで、消臭部材16の細孔13の内面にはマンガン−有機酸系化合物の担持層15が形成されており、消臭部材16の比表面積Sa は平板14の比表面積Sb の1〜500倍とするのがよい。1倍未満では担持層15と吸着された臭気物質12との接触が不十分となり、臭気物質12の分解が十分に行なわれず好ましくない。一方、500倍を超えると過剰な担持層15が存在することになり、消臭部材16の製造コストが上昇して好ましくない。
また、担持層15中では、マンガン原子は2価イオンの状態で存在している。このため、担持層15中のマンガンイオンは強い酸化作用を発現し、細孔13内に吸着されて担持層15に接触した臭気物質12の酸化を促進して、臭気物質12を分解することができる。このため、細孔13内が臭気物質12で飽和状態になることが防止され、細孔13の臭気物質12に対する吸着性を長期に渡って維持することができる。更に、臭気物質12の吸着と分解が並行して生じるため、臭気物質12の消臭を短時間で行なうことができる。
【0016】
次に、ペット用消臭具10の製造方法について説明する。
図2に示すように、先ず、麦飯石の原石から、例えば、ダイヤモンドカッターを用いて、例えば、縦が40〜60cm、横が40〜60cm、厚み2〜3cmの平板14を切り出す。そして、切り出した平板14の表面を洗浄して、細孔13内に進入した切削屑、ごみ等の異物を除去する。なお、平板14の汚れ度合いに応じて、平板14を熱湯中で煮沸したり、水中で超音波洗浄して、細孔13内の異物を除去する。次いで、洗浄後の平板14を乾燥する(以上、切り出し工程)。なお、切り出し工程が完了した時点では、図3(A)に示すように、平板14中の細孔13内は空洞になって、空気が充満した状態になっている。
【0017】
乾燥が完了した平板14をマンガン−有機酸系化合物の濃度1〜20%の水溶液中に浸漬する。平板14を水溶液中に浸漬すると、平板14の細孔13内で空気と水溶液との置換が行なわれ細孔13内は、図3(B)に示すように、置換した水溶液21で満たされた状態になる。水溶液中に浸漬する時間は、平板14の細孔径分布により変動する。このため、例えば、細孔13内の空気と水溶液との置換が進行している間は平板14から空気の泡が発生するので、平板14から空気の泡が発生しなくなった時点で浸漬処理を完了とした。そして、浸漬が完了した平板14を乾燥させる(以上、浸漬工程)。なお、水溶液の濃度が1%未満では、細孔13内に置換した水溶液中のマンガン−有機酸系化合物の重量が少なく担持層15の形成が不十分となる。一方、水溶液の濃度が20%を超えると、細孔13内に置換した水溶液中のマンガン−有機酸系化合物の重量が過多となって担持層15の形成が過剰となる。
【0018】
なお、平板14を真空容器内に収容して減圧状態(例えば、−700〜−750mmHg)に保持し、次いで真空容器内に水溶液を注入して圧力差を利用して平板14の細孔13内に水溶液を圧入するようにしてもよい。この方法では、短時間で浸漬処理を完了することができる。更に、乾燥が完了した平板14の表面に、例えば、刷毛を用いて水溶液を塗布しながら徐々にしみ込ませて、細孔13内に水溶液を注入するようにしてもよい。この方法では、水溶液の濃度と塗布量を管理することにより、平板14の細孔13内に注入するマンガン−有機酸系化合物の重量を容易に調製することができる。
【0019】
乾燥が完了した平板14を熱処理装置に装入し、温度を徐々に上げながら、例えば、102〜105℃まで加熱し30分〜24時間保持することで水分を完全に消失させる。温度の上昇と共に各細孔13内の水溶液21の濃度は徐々に増大し、水の蒸発が更に顕著となると、各細孔13の内面には徐々に析出物が発生し、完全に水が消失した時点では、図3(C)に示すように、各細孔13の内面に析出物からなる担持層15が形成され、消臭部材16の製作が完了する(以上、加熱工程)。その結果、臭気物質12が進入可能な空洞が細孔13内に再び形成されて、消臭部材16により臭気物質12の吸着が可能になる。そして、消臭部材16の裏面側の角部にゴム製の脚17を、例えば、接着剤を用いて固定する。これにより、ペット用消臭具10の製造が完了する。
【0020】
図4(A)、(B)に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る消臭器の一例であるペット用の消臭マット22は、例えば、室の床面11上に置いてペット用マットとして使用するもので、臭気物質12を吸着する多数の細孔13を備えた麦飯石の原石から切り出して作製した整形体の一例である粒状体23中の細孔13の内面に、臭気物質12の分解反応を促進する触媒作用を有する金属系触媒である鉄系化合物の一例である硫酸第一鉄−アスコルビン酸化合物(以下、鉄−有機酸系化合物という)の担持層24が形成されている消臭粒25と、消臭粒25を多数収容する通気性を備えた袋状カバー26とを有している。なお、消臭粒25の粒径は、例えば、2〜10mmと幅を持たせて、袋状カバー26内で消臭粒25が容易に流動できるようにしている。これによって、消臭マット22を床面11に置いてペットがその上に座ったり寝たりした際に、ペットの体重で袋状カバー26内の消臭粒25を流動させて、消臭マット22の表面形状をペットの体形に応じて変化させることができ、従来の敷物やマットと同様に使用することができる。
【0021】
ここで、消臭粒25の細孔13の内面には鉄−有機酸系化合物の担持層24が形成されており、消臭粒25の比表面積Ta は粒状体23の比表面積Tb の1〜500倍とするのがよい。1倍未満では担持層24と吸着された臭気物質12との接触が不十分となり、臭気物質12の分解が十分に行なわれず好ましくない。一方、500倍を超えると過剰な担持層24が存在することになり、消臭粒25の製造コストが上昇して好ましくない。
また、担持層24中では、鉄原子は2価イオンの状態で存在している。このため、担持層24中の鉄イオンは強い酸化作用を発現し、細孔13内に吸着されて担持層24に接触した臭気物質12の酸化を促進して、臭気物質12を分解することができる。このため、細孔13内が臭気物質12で飽和状態になることが防止され、細孔13の臭気物質12に対する吸着性を長期に渡って維持することができる。更に、臭気物質12の吸着と分解が並行して生じるため、臭気物質12の消臭を短時間で行なうことができる。
【0022】
次に、ペット用の消臭マット22の製造方法について説明する。
先ず、麦飯石の原石から、例えば、ダイヤモンドカッターを用いて、例えば、一辺が5〜15mmの立方体を切り出す。そして切り出した立方体を水と共に、例えば、アルミナ製の容器に入れ、蓋をして水平に保ち容器の中心軸の周りに、10〜30回/分の回転数で一定時間回転させ、立方体同士を相互に摺り合わせることにより角に丸みを付けて粒状体23に整形する。ここで、アルミナ製の容器内に入れる立方体の寸法と回転時間により、粒状体23の粒径を調製する。なお、アルミナ製の容器内に入れる形状は立方体に限らず、任意の形状のものを利用できる。得られた粒状体23の表面を洗浄して、細孔13内に進入した切削屑、ごみ等の異物を除去する。なお、粒状体23の汚れ度合いに応じて、粒状体23を熱湯中で煮沸したり、水中で超音波洗浄して、細孔13内の異物を除去する。次いで、洗浄後の粒状体23を乾燥する(以上、切り出し工程)。
【0023】
乾燥が完了した粒状体23を鉄−有機酸系化合物の濃度1〜20%の水溶液中に浸漬する。粒状体23を水溶液中に浸漬すると、粒状体23の細孔13内で空気と水溶液との置換が行なわれ細孔13内は置換した水溶液で満たされた状態になる。水溶液中の粒状体23から空気の泡が発生しなくなった時点で浸漬処理を完了とする。そして、浸漬が完了した粒状体23を乾燥させる(以上、浸漬工程)。
【0024】
乾燥が完了した粒状体23を熱処理装置に装入し、温度を徐々に上げながら、例えば、102〜105℃まで加熱し30分〜24時間保持することで水分を完全に消失させる。温度の上昇と共に各細孔13内の水溶液の濃度は徐々に増大し、水の蒸発が更に顕著となると、各細孔13の内面には徐々に析出物が発生し、完全に水が消失した時点では、図4(B)に示すように、各細孔13の内面に析出物からなる担持層24が形成され、消臭粒25の製作が完了する(以上、加熱工程)。その結果、消臭粒25内には、臭気物質12が進入可能な空洞が細孔13に存在して、消臭粒25により臭気物質12の吸着が可能になる。そして、消臭粒25を袋状カバー26内に収容することにより、消臭マット22の製造が完了する。
【実施例】
【0025】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。ここで、図5(A)〜(D)は本発明の実施例に係るペット用消臭具の消臭部材によるアンモニア、トリメチルアミン、硫化水素、及びメチルメルカプタンの消臭効果を示すグラフである。
【0026】
麦飯石の原石から、縦が5cm、横が5cm、厚み1cmの平板を切り出し、細孔内に進入した切削屑等を除去してから十分に乾燥させた。次いで、乾燥が完了した平板を、濃度5%の鉄−有機酸系化合物の水溶液中に浸漬し、水溶液中の平板から空気の泡が発生しなくなった時点で引き上げ、十分に乾燥させた。そして、乾燥が完了した平板を熱処理装置に装入し、温度を徐々に上げながら、105℃まで加熱し5時間保持して水分を完全に消失させて消臭部材を作製した。
【0027】
密閉容器(内容積20リットル)内の空気にそれぞれアンモニア、トリメチルアミン、硫化水素、及びメチルメルカプタンの各ガスを混入させた後、各密閉容器内から少量のガスを採取し各密閉容器内の初期ガス濃度を求めた。続いて、各密閉容器内に作製した消臭部材をそれぞれ1枚ずつ装入した後、一定時間経過毎に、各密閉容器内から少量のガスを採取しそのガス濃度を測定した。そして、各密閉容器毎に求まった初期ガス濃度c0 、消臭部材を装入してからt分経過後のガス濃度ct を用いて、ガス濃度の減少率を示す消臭効果Eを、E=100(c0 −ct )/c0 として算出した。その結果を図5(A)〜(D)に示す。
また、比較例として、消臭部材の代りに消臭部材と実質的に同一寸法のゼオライトの平板を装入して、ゼオライトの平板を装入してからt分経過後のガス濃度ct を求めて消臭効果Eを算出した。その結果を、図5(A)〜(D)に合わせて示す。
【0028】
図5(A)に示すように、臭気物質がアンモニアの場合、消臭部材を装入すると消臭効果Eは経過時間に比例して増加し、7.5分経過後で消臭効果Eは75%、20分経過後で消臭効果Eは96%となり、60分経過後には消臭効果Eは98%となってアンモニアの消臭がほぼ完了したことが判る。一方、ゼオライトの平板を装入した場合においても、消臭効果Eは経過時間に比例して増加し、30分経過後で消臭効果Eは75%に達する。しかし、消臭効果Eが75%を超えた時点で消臭効果Eの増加率が大幅に低下し、60分経過後でも79%となり、消臭効果Eが飽和する傾向を示している。また、消臭効果Eが経過時間に比例して増加する領域での消臭効果Eの増加速度を比較すると、消臭部材を使用した場合の増加速度が10%/分であるのに対し、ゼオライトを使用した場合の増加速度は2.9%/分となり、消臭部材ではゼオライトの平板と比較して約3.4倍となっている。
【0029】
図5(B)に示すように、臭気物質がトリメチルアミンの場合は、消臭部材を装入すると消臭効果Eは経過時間に比例して増加し、消臭部材を装入してから22.7分経過後で消臭効果Eは75%に達し、その後消臭効果Eの増加率は徐々に減少し、60分経過後で消臭効果Eは94%となった。一方、ゼオライトの平板を装入した場合は、消臭効果Eは経過時間に比例して増加し、ゼオライトの平板を装入してから30分経過した時点で消臭効果Eは60%に達し、その後消臭効果Eの増加率は徐々に減少し、60分経過後で消臭効果Eは71%となった。消臭効果Eが経過時間に比例して増加する領域での消臭効果Eの増加速度を比較すると、消臭部材を使用した場合の増加速度は3.3%/分、ゼオライトを使用した場合の増加速度は2%/分となり、消臭部材ではゼオライトの平板と比較して約1.7倍となっている。
【0030】
図5(C)に示すように、臭気物質が硫化水素の場合は、消臭部材を装入すると消臭効果Eは経過時間に比例して増加し、消臭部材を装入してから6.1分経過後で消臭効果Eは85.4%に達し、その後消臭効果Eの増加率は徐々に減少し、60分経過後で消臭効果Eは100%となった。一方、ゼオライトの平板を装入した場合は、消臭効果Eは経過時間に比例して増加し、ゼオライトの平板を装入してから25.5分経過した時点で消臭効果Eは75%に達し、その後消臭効果Eの増加率は徐々に減少し、60分経過後で消臭効果Eは81%となった。消臭効果Eが経過時間に比例して増加する領域での消臭効果Eの増加速度を比較すると、消臭部材を使用した場合の増加速度は14%/分、ゼオライトを使用した場合の増加速度は2.9%/分となり、消臭部材ではゼオライトの平板と比較して約4.8倍となっている。
【0031】
図5(D)に示すように、臭気物質がメルカプタンの場合は、消臭部材を装入すると消臭効果Eは経過時間に比例して増加し、消臭部材を装入してから15分経過後で消臭効果Eは75%に達し、その後消臭効果Eの増加率は徐々に減少し、60分経過後で消臭効果Eは95.8%となった。一方、ゼオライトの平板を装入した場合は、消臭効果Eは経過時間に比例して増加し、ゼオライトの平板を装入してから23.8分経過した時点で消臭効果Eは64.6%に達し、その後消臭効果Eの増加率は徐々に減少し、60分経過後で消臭効果Eは75%となった。消臭効果Eが経過時間に比例して増加する領域での消臭効果Eの増加速度を比較すると、消臭部材を使用した場合の増加速度は5%/分、ゼオライトを使用した場合の増加速度は2.7%/分となり、消臭部材ではゼオライトの平板と比較して約1.9倍となっている。
以上のことから、消臭部材はゼオライトの平板と比較して、消臭効果Eの速度が速く、消臭効果Eのレベルが高いことが判り、消臭部材を用いて各種臭気物質に対して効率的に消臭できることが確認できた。
【0032】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明の消臭器の製造方法及び消臭器を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
例えば、細孔内に形成する金属系触媒の担持層を1種類の鉄系化合物又はマンガン系化合物を用いて形成したが、複数種の鉄系化合物又はマンガン系化合物を用いて形成することもできる。また、担持層を鉄系化合物とマンガン系化合物を組み合わせて構成するようにしてもよい。これによって、広範囲の臭気物質に対して効率的に消臭を行なうことが可能になる。更に、金属系触媒の担持層を、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化珪素、硫酸銅、硫酸亜鉛、塩化亜鉛等の金属化合物や、ニッケル、錫、鉛、コバルト、銀、モリブデン、ストロンチウム等の金属を用いて形成することもできる。
【0033】
消臭部材にゴム製の脚を取付けてペット用消臭具を形成する代りに、消臭部材の裏面に、例えば、ゴム板を貼ってもよい。ゴム板を貼ることにより、消臭部材の厚みを薄くしても割れ難くすることができ、より軽量のペット用消臭具を得ることができる。また、平板を金属系触媒の水溶液中に1回浸漬することにより細孔内に担持層を形成させたが、浸漬した後乾燥させて再度浸漬することを繰り返すことにより細孔内に担持層を形成しても、浸漬した後乾燥及び加熱を行なって再度浸漬することを繰り返すことにより細孔内に担持層を形成するようにしてもよい。浸漬を繰り返すことにより、一定厚みの担持層を確実に形成することができる。
【0034】
消臭器を、麦飯石から加工した整形体中の細孔内に金属系触媒を担持させることにより形成したが、麦飯石から加工した整形体、例えば、麦飯石の粉粒体、麦飯石の粉末の造粒体、麦飯石の粉末の成形体、及び麦飯石から切り出した板状体の中には、麦飯石が本来有していた臭気物質を吸着し分解することが可能な細孔が多数存在しているので、整形体をそのまま消臭器として使用することもできる。
更に、消臭器を、ペット用の消臭具や消臭マット以外に、日用品や室内装飾品として使用することもできる。例えば、消臭器の細孔の一部に、金属系触媒の触媒作用で分解され難い芳香剤を担持させて、消臭源と共に芳香源として使用することもできる。また、整形体の一部の細孔内に金属系触媒を担持し、残りの細孔内に苔の菌(例えば、蘚苔類)を担持しておき、適宜水をかけて苔を生やすようにしてもい。
また、天然鉱石として、麦飯石を使用したが、ゼオライト、珪藻土、珪藻土頁岩、大谷石、又は軽石を使用することもできる。更に、多数の細孔を備えた天然鉱石を複数種組み合わせて使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(A)、(B)はそれぞれ本発明の第1の実施の形態に係る消臭器の一例であるペット用消臭具の説明図、部分拡大断面図である。
【図2】同ペット用消臭具の製造方法の工程説明図である。
【図3】(A)〜(C)はそれぞれ同ペット用消臭具の製造方法の切り出し工程、浸漬工程、及び加熱工程を説明する部分拡大断面図である。
【図4】(A)、(B)はそれぞれ本発明の第2の実施の形態に係る消臭器の一例であるペット用の消臭マットの説明図、部分拡大断面図である。
【図5】(A)〜(D)は本発明の実施例に係るペット用消臭具の消臭部材によるアンモニア、トリメチルアミン、硫化水素、及びメルカプタンの消臭効果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0036】
10:ペット用消臭具、11:床面、12:臭気物質、13:細孔、14:平板、15:担持層、16:消臭部材、17:脚、18:支持部、19:受圧部、20:敷物、21:置換した水溶液、22:消臭マット、23:粒状体、24:担持層、25:消臭粒、26:袋状カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭気物質を吸着する多数の細孔を備えた天然鉱石から整形体を作製し、該整形体中の前記細孔内に前記臭気物質の分解反応を促進する触媒作用を有する金属系触媒を担持させたことを特徴とする消臭器の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の消臭器の製造方法において、前記天然鉱石が麦飯石であることを特徴とする消臭器の製造方法。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の消臭器の製造方法において、前記金属系触媒が鉄系化合物及びマンガン系化合物のいずれか一方又は双方を有することを特徴とする消臭器の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の消臭器の製造方法において、前記整形体が板状及び粒状のいずれか一方であることを特徴とする消臭器の製造方法。
【請求項5】
麦飯石から加工された整形体中の細孔内に臭気物質を吸着し分解して消臭することを特徴とする消臭器。
【請求項6】
麦飯石から加工された整形体中の細孔内に、鉄系化合物及びマンガン系化合物のいずれか一方又は双方を有する金属系触媒が担持され、前記細孔内に吸着された臭気物質を前記金属系触媒の触媒作用で分解して消臭することを特徴とする消臭器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−296742(P2006−296742A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−122537(P2005−122537)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(503418829)
【出願人】(591065549)福岡県 (121)
【Fターム(参考)】