説明

消臭装置

【課題】害虫捕獲機能を有し、かつ長期間消臭効果が持続できる消臭装置を提供する。
【解決手段】空気取り入れ口4に光源12を囲むように設置され、かつ光源より照射される紫外線により活性化されて、空気取り入れ口より取り込まれた空気中の有機有害物質を分解して消臭する光触媒層13gを有する消臭体13aが上下方向に間隔を存して複数段設けられた消臭手段13と、消臭及び浄化する空気や、光源に誘引された害虫を空気とともに吸引する電動ファンよりなる吸引手段5と、吸引手段より排出された空気中より花粉及び粉塵等のアレルギー原因物質や、害虫を捕獲する通気性を有する捕虫袋15からなり、害虫発生時期には害虫捕獲機能と消臭機能を同時に使用し、害虫が発生することが少ない時期には、消臭機能を単独で使用することにより、年間を通して使用することができる上、消臭装置と害虫捕獲器の両方を揃える必要がないため経済的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫捕獲機能を有する消臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活で発生する悪臭の原因には種々のものがあり、近年のように消費者が臭いに敏感になると、微弱な臭いに対しても嫌悪感を抱くことが多い。
このため従来から種々の消臭剤が開発及び実用化されており、日常生活に欠かせないものとなっている。
また従来の消臭剤には、活性炭等により臭いを吸着して消臭する吸着剤や、臭いを化学的に分解して消臭する化学消臭剤、各種香料によるマスキング作用により臭いを消臭する芳香剤等があり、手軽に使用できることから、一般家庭での普及率も高い。
しかしこれらの消臭剤や芳香剤は、消臭効果が長期間持続しないため、吸着剤や芳香剤を定期的に交換したり、化学消臭剤を繰り返し噴霧する必要があり、手間や経費がかかる等の問題がある。
【0003】
このため近年では、光触媒を利用して消臭や防汚、防カビ等の効果が得られる商品の開発が行われている(例えば特許文献1)。
光触媒は、太陽光や蛍光灯の光に含まれる紫外線をエネルギにして、臭いや汚れの原因である有機有害物質を分解することにより、消臭や防汚、防カビ等の効果が得られるようにしたもので、消臭効果が長期間持続することから、簡単に交換することができない建材や内装材、衛生設備等に採用されている。
例えば気密性の高い屋内の壁紙に光触媒を使用した場合、蛍光灯等の照明から発せられる紫外線により光触媒が活性化されて、屋内で発生するタバコ臭(アセドアルデヒド)や、新建材等から放出され、シックハウス症候群の原因とされる有害物質(ホルムアルデヒド)等を分解して消臭したり、トイレや介護施設に設置されている衛生器具に使用することによりアンモニア臭を消臭し、同時に抗菌、抗カビ効果を得る等、その利用方法は無限にあると考えられている。
【0004】
一方本出願人は、先に実用新案登録第3139542号で、「害虫捕獲器」を提案している。
この害虫捕獲器は、光源に誘引された害虫を空気とともにする電動ファンにより吸引し、吸引手段の下方に着脱自在に設けられた通気性を有する捕虫袋内に害虫を捕獲するようにしたもので、捕集袋内を通過した空気中に害虫に寄生したダニや雑菌が含まれていたり、蛾等の害虫から剥がれ落ちた鱗粉等が混入していても、捕虫袋内を通過した空気が筐体外へ排出されることがないため、主に食品を取り扱う施設に採用することができる上、アレルギー等の持病がある利用者であっても安心して使用することができるという特有の作用効果を有している。
【特許文献1】特開2008−79907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載された消臭装置は、光触媒を含有する消臭体と、消臭体に光を照射する光源が、蛍光染料が混練された樹脂からなる筐体内に収容された構成で、光触媒反応により高効率で消臭処理を行うことができる効果を有している。
しかし前記特許文献1に記載された消臭装置は、消臭に特化されていて害虫を捕獲する機能がないため、害虫を捕獲する場合は害虫捕獲器を別に設置する必要があり、経費が嵩む等の問題がる。
【0006】
一方実用新案登録第3139542号の害虫捕獲器は、害虫を効率よく捕獲することができる効果がある反面、害虫が発生することが少ない冬季等には稼動することが少ないため、使用期間が限定される問題がある。
また害虫を捕獲できる効果はあっても消臭機能がないため、悪臭を消臭したい場合は別に消臭装置を設置する必要があり、前記特許文献1と同様に経費が嵩む問題がる。
本発明はかかる問題を改善するためになされたもので、害虫捕獲機能を有し、かつ長期間消臭効果が持続できる消臭装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の消臭装置は、害虫を誘引し、また光触媒を活性化する紫外線を含む光を発生する光源が下面に取り付けられた上部ケースと、上部ケースの下方に設けられた下部ケースと、上下部ケースの間に開口された空気取り入れ口と、空気取り入れ口に光源を囲むように設置され、かつ光源より照射される紫外線により活性化されて、空気取り入れ口より取り込まれた空気中の有機有害物質を分解して消臭する光触媒層を有する消臭体が上下方向に間隔を存して複数段設けられた消臭手段と、下部ケース内に設置され、かつ消臭及び浄化する空気や、光源に誘引された害虫を空気とともに吸引する電動ファンよりなる吸引手段と、吸引手段の下方に接続された筒状ケースの下部に着脱自在に取り付けられ、かつ吸引手段より排出された空気中より花粉及び粉塵等のアレルギー原因物質や、害虫を捕獲する通気性を有する捕虫袋から構成したものである。
【0008】
前記構成により、消臭体の近傍に設けられた光源より発生される紫外線が光触媒層に照射さることにより光触媒層が活性化され、空気取り入れ口より取り込まれた空気中の臭いの原因となる有機有害物質が活性化された光触媒層により二酸化炭素と水に分解されて空気中に放出するため、空気中の悪臭を効率よく消臭することができると共に、不織布等により形成された捕虫網のフィルタ効果により、空気中の花粉や粉塵等のアレルギー物質を除去することができるため、常時運転状態にしておくことにより、空気清浄効果も得られるようになる。
また害虫捕獲器として使用した場合、吸引手段により空気とともに吸引された害虫が、筒状ケース内を通って捕虫袋内へと排出されて捕獲されるため、光源に誘引された害虫を効率よく捕獲することができると共に、単一の光源により光触媒層の活性化と害虫の誘引効果が得られるため、消臭用の光源と害虫誘引用の光源を別に設ける必要がなく、これによって装置全体を小型化できる上、部品点数の削減により装置のコスト低減が図れる。
さらに消臭機能と害虫捕獲機能を有していて、これらを単独もしくは同時に使用することができるため、害虫発生時期には害虫捕獲機能と消臭機能を同時に使用し、害虫が発生することが少ない時期には、消臭機能を単独で使用することにより、年間を通して使用することができる上、消臭装置と害虫捕獲器の両方を揃える必要がないため経済的である。
【0009】
本発明の消臭装置は、消臭体を、中央に円孔が開口され、かつ外周縁側から円孔側へ順次低くなるよう傾斜するテーパ面を有する環状基板と、環状基板の少なくとも表面にコーティングされた光触媒層とから形成し、かつ円孔のほぼ中心に光源を設置したものである。
【0010】
前記構成により、消臭体の至近距離に設けられ光源より紫外線が照射されて光触媒層が常時活性化されるため、タバコ臭の原因となるアセドアルデヒドやペット等の動物臭、生ゴミ等から放出されるアンモニア臭等の消臭効果、抗ウィルス、防カビ等の抗菌作用により細菌の繁殖防止効果が長期間得られるようになる。
【0011】
本発明の消臭装置は、光触媒層を、アパタイト二酸化チタンコーティング剤をコーティングすることにより形成したものである。
【0012】
前記構成により、光触媒層が有機有害物質を分解するのに一定の時間を必要としても、アパタイトが有機有害物質を捕捉して逃がさないため、光触媒層により有機有害物質を確実に分解することができると共に、光触媒層が有機有害物質を分解すると、アパタイトが再び有機有害物質を吸着する体制をとなって吸着と分解を繰り返すため、消臭効果を長期間持続することができる。
【0013】
本発明の消臭装置は、環状基板に光触媒層を形成する際、環状基板に下地としてアクリル酸をコーティングして保護層を形成し、保護層の上にアパタイト二酸化チタンコーティング剤をコーティングしたものである。
【0014】
前記構成により、環状基板にコーティングされた保護層は、光触媒層を透過した紫外線を乱反射して、再び紫外線を光触媒側へ戻すことにより光触媒層がさらに活性化されるため、より高い消臭効果が得られるようになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の消臭装置によれば、消臭体の近傍に設けられた光源より発生される紫外線が光触媒層に照射さることにより光触媒層が活性化され、空気取り入れ口より取り込まれた空気中の臭いの原因となる有機有害物質が活性化された光触媒層により二酸化炭素と水に分解されて空気中に放出するため、空気中の悪臭を効率よく消臭することができると共に、不織布等により形成された捕虫網のフィルタ効果により、空気中の花粉や粉塵等のアレルギー物質を除去することができるため、常時運転状態にしておくことにより、空気清浄効果も得られるようになる。
また消臭機能と害虫捕獲機能を単独もしくは同時に使用することができるため、害虫発生時期には害虫捕獲機能と消臭機能を同時に使用し、害虫が発生することが少ない時期には、消臭機能を単独で使用することにより、年間を通して使用することができる上、消臭装置と害虫捕獲器の両方を揃える必要がないため経済的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態を、図面を参照して詳述する。
図1は消臭装置の正面図、図2は図1のA−A線に沿う断面図、図3は吸引手段付近の一部切欠斜視図、図4は消臭手段の拡大断面図、図5ないし図7は作用説明図である。
図1に示す消臭装置の本体(以下装置本体という)1は、上部ケース2及び下部ケース3と、上部ケース2と下部ケース3の間に設けられた空気取り入れ口4と、下部ケース3内に設けられた吸引手段5及びシャッタ手段6とからなり、装置本体1全体が上下方向に長いコンパクトな筒状となっている。
上部ケース2は、上ケース2aと下ケース2bとからなり、下ケース2bに上ケース2aを上方から嵌合した状態で、ビス等の固着具2fにより上ケース2aと下ケース2bの間が固定されており、上ケース2aの中心部には、装置本体1を吊り下げるための環状の吊り具9が設けられている。
【0017】
上ケース2aの中心よりやや外れた位置には、コード引き込み口2cが形成されていて、このコード引き込み口2cより電源コード10の一端側が引き込まれており、電源コード10の途中には電源スイッチが、そして他端側には、商用電源へ接続されるためのプラグ(何れも図示せず)が設けられている。
コード引き込み口2cより上部ケース2内に引き込まれた電源コード10の一端側は、上部ケース2内で2路に分岐され、一方10aは上部ケース2の下面に設置された光源12に、他方10bは、空気取り入れ口4に設けられた後述するガイド手段13の中空な支柱13b内を通って下部ケース3内に配線され、下部ケース3内に設けられた吸引手段5の電動モータ5bに接続されている。
【0018】
下ケース2bの底板2d下面には、ほぼ中心部にソケット12aが固着されていて、このソケット12aに電球型の光源12が着脱自在に取り付けられている。
光源12は、光触媒を活性化させ、かつ害虫が好む波長、例えば300〜400nmに光波長成分のピークを持つ紫外線を放射する蛍光灯よりなり、光源12が切れたり、寿命で照度が低下した場合に、上部ケース2を取り外すことにより新しい光源12と簡単に交換できるようになっている。
下部ケース3は、上部ケース2の外径とほぼ等しい外径の筒状体からなり、上端よりやや下方の内部に、円環状の支持板3aが設けられている。
上部ケース2と下部ケース3の間に設けられた空気取り入れ口4は、光源12に誘引された害虫が装置本体1内へ侵入するためのもので、空気取り入れ口4には、外気の流入を円滑にするガイド機能と、光源12に手などが直接触れるのを防止するガード機能とを備えると同時に、本発明の主要部である悪臭を消臭する消臭機能を有する消臭手段13が設けられている。
【0019】
消臭手段13は、図2に示すように例えば金属パイプや樹脂パイプよりなる複数の支柱13bと、これら支柱13bに嵌挿された複数枚の消臭体13aとからなる。
各支柱13bの上端部は、下ケース2bの底板2dを貫通した状態でナット13cにより底板2dに固着され、各支柱13bの下端は、下部ケース3の支柱板3aに螺着されている。
各支柱13bは装置本体1の円周方向にほぼ等間隔に配置されていて、消臭体13aに穿設された複数の取り付け孔13dがこれら支柱13bに嵌挿されている。
各消臭体13aは、図2に示すように中央に円孔13eが開口され、かつ外周縁側から円孔13e側へ順次低くなるよう傾斜するテーパ面を有する環状基板13fと、環状基板13fの表面にコーティングされた光触媒層13gとからなる。
環状基板13fは、例えばABS樹脂により一体成形されていて、各支柱13bにほぼ等間隔に嵌着されており、各環状基板13fの間隔は、子供の指が入らない程度で、かつ蛾等の比較的大型の害虫が侵入できる程度に設定されている。
【0020】
光触媒層13gは、光源12から照射される紫外線の波長の350nm付近で活性化され、最も効率よく有機有害物質を分解する能力を有する二酸化チタンが使用されている。
これに対し害虫は、300〜400nmに光波長成分のピークを持つ光に誘引される性質を有している。
すなわち、300〜400nmに光波長成分のピークを持つ光を発生する蛍光灯を光源12に使用することにより、環状基板13fの表面に形成された光触媒層13gを活性化させて、有機有害物質を効率よく分解することができると同時に、害虫を空気取り入れ口4より上部ケース2内へ誘引することができ、単一の光源12で消臭用の光源と害虫誘引用の光源に兼用することができるようになる。
【0021】
また消臭体13aを形成する光触媒層13gには、表面にアパタイトを生成させた二酸化チタンを使用している。
二酸化チタンは、紫外線が照射されると、光触媒作用により有機有害物質を分解して無害化する能力を有していることが知られている。
しかし細菌を積極的に吸着する能力がないため、表面に接触した菌にしか殺菌、分解することができない。
【0022】
一方アパタイトは、たんぱく質の吸着能力あるため、細菌等を吸着する能力はあるが、一旦吸着したたんぱく質系の物質を分解することができないため、いつまでも物質が付着したままの状態となり、経時的に殺菌効果が低下する。
そこで両者の利点を活用し、また欠点を排除するため、両者を複合化したアパタイト二酸化チタンを光触媒として使用している。
本発明の実施の形態では、独立行政法人「産業技術総合研究所」が開発(特許第3275032号)し、株式会社ニュートラルが商品化した「アパタイト二酸化チタンコーティング剤(商品名:nu−COAT AP)」を使用している。
【0023】
このアパタイト二酸化チタンコーティング剤は、1コーティングで光触媒層13gを形成できる特徴を有しているが、コーティングする環状基板13fが例えばABS樹脂等の場合、環状基板13fの表面が荒らされることがあるため、下地として環状基板13fの表面にアクリル酸をガン吹きによりコーティングして保護層(図示せず)を予め形成し、その上にアパタイト二酸化チタンコーティング剤をガン吹きによりコーティングして、薄膜状の光触媒層13gを形成した2層構造となっている。
【0024】
下部ケース3内に設置された吸引手段5は、ケーシング5a内に電動モータ5bにより回転されるファン5cが設けられていて、ケーシング5aの上面が下部ケース3の支持板3a下面に固着されており、光源12に誘引されて空気取り入れ口4より侵入した害虫を、電動モータ5bにより回転されるファン5cにより、吸引手段5の下側に設けられたシャッタ手段6の筒状ケース6a内へ吸引するようになっている。
シャッタ手段6は筒状ケース6aと、筒状ケース6a内に設けられたシャッタ板6bとからなり、筒状ケース6aの上端部が吸引手段5のケーシング5a下面に接続されている。
【0025】
シャッタ手段6のシャッタ板6bは、図3に示すように筒状ケース6aの内径よりやや小径な円板よりなり、全体がプラスチックのような軽量な材料により薄板状により形成されており、中心より偏心した位置が回転軸6cに固着されている。
回転軸6cは、水平となるよう両端が筒状ケース6aに支承されていて、回転軸6cを中心にシャッタ板6bが回動自在となっており、回転軸6cの両端側には、シャッタ板6bの外周縁が筒状ケース6aの内周面に接触しないように両者の間に微小な隙間を形成する球状のスペーサ6dが嵌装されている。
【0026】
またシャッタ板6bには、偏心側にバランサ6eが設けられている。
バランサ6eは、回転軸6cにより偏心位置が支持されたシャッタ板6bを水平位置に復帰させるもので、吸引手段5が停止されて筒状ケース6a内が無風となったときにシャッタ板6bが自動的に水平位置に復帰できるようになっており、筒状ケース6aの内周面には、シャッタ板6bに当接したシャッタ板6bを水平位置に停止させるストッパ6fが突設されている。
シャッタ手段6の筒状ケース6aには、下部外周に係止部6gが突設されていて、この係止部6gに補虫袋15の開口部15aが係止されている。
【0027】
係止部6gは、図4に示すように筒状ケース6aの外周面に突設された突条や、図示しない凹溝等からなり、補虫袋15の開口部15aに予め挿通された輪ゴム等の係止手段15bにより開口部15aを係止することにより、吸引手段5より補虫袋15内に風圧を受けても補虫袋15が脱落しないようになっている。
補虫袋15は、小さな害虫が通り抜けられないような目の細い網体や不織布等の通気性を有する素材により袋状に形成されていて、捕獲した害虫とともに廃棄処分できるようになっている。
【0028】
一方下部ケース3の下部には、蛇腹状のカバー16が取り付けられている。
このカバー16は、補虫袋15内に捕獲された害虫が外から見えないよう補虫袋15の周囲を覆うもので、軟質の樹脂により下部ケース3とほぼ同径に形成されており、伸長した際補虫袋15の下部が見えない長さに設定されている。
また補虫袋15を交換する際は、図7に示すように収縮することにより、補虫袋15の交換が容易に行えるようになっている。
【0029】
次に前記構成された消臭装置の作用を説明すると、装置本体1は、消臭機能と害虫捕獲機能を有していて、消臭機能は単独で、また害虫捕獲機能と消臭機能は同時に使用できるようになっているが、消臭作用と害虫捕獲作用を分けて説明する。
害虫の発生が少ない冬季等であって消臭機能のみを使用したい場合は、消臭したい場所に装置本体1を吊り下げて使用するが、特に花粉の飛散が多い時期には、捕虫袋15を付けることにより、花粉や粉塵等のアレルギー原因物質を捕虫袋15により濾過することができるため、花粉症等のアレルギー対策にも大きなを発揮する。
装置本体1を消臭したい場所に設置してスイッチをオンにすると、光源12が点灯されると同時に吸引手段5の電動モータ5bが回転し、ファン5cによる送風が開始される。
【0030】
電動モータ5bによりファン5cが回転されることにより、吸引手段5によって光源12周辺の空気が下部ケース3内へ吸引されるため、空気取り入れ口4より外気が上部ケース2内に吸入される。
空気取り入れ口4には下向きに傾斜する複数の消臭体13aが上下方向にほぼ等間隔に設けられていて、空気取り入れ口4へ吸入される空気はこれら消臭体13aのガイド作用により下向き方向の流れに整流されるため、吸引能力の小さい吸引手段5でも効率よく空気取り入れ口4周辺の外気を取り込むことができると共に、空気取り入れ口4内へ吸引された空気は、消臭体13aの整流作用により増速されながら、図4の矢印Bに示すように各消臭体13aの間を流通し、このとき空気中に含まれる臭い成分である有機有害物質Dが消臭体13aの表面に形成された光触媒層13gに接触する。
【0031】
光触媒層13gは、アパタイト二酸化チタンコーティング剤により形成されていて、二酸化チタンの表面がアパタイトにより被覆されているため、有機有害物質Dはアパタイトにより吸着されて、光触媒層13gの表面に蓄積される。
光源12より発生される光に含まれる紫外線Cが、消臭体13aの表面に形成された光触媒層13gに至近距離から照射されと光触媒層13gが活性化されて、光触媒層13gの表面に蓄積された有機有害物質Dが、図5に示すように二酸化炭素(CO)と水(HO)に分解されて、吸引手段5により吸引される空気中に放出されるが、光触媒層13gが有機有害物質Dを分解するのに一定の時間を必要とする。
【0032】
しかしアパタイトが有機有害物質Dを捕捉して逃がさないため、有機有害物質を光触媒層13gが確実に分解することができる。
これによって悪臭の原因であるアンモニア臭、タバコ臭の原因であるアセトアルデヒド、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒド、カビ臭等の有機有害物質が除去される。
また光触媒層13gの下地として環状基板13fの表面にコーティングされた保護層は、光触媒層13gを透過した紫外線Cを乱反射して、再び紫外線Cを光触媒13g側へ戻すことにより光触媒層13gがさらに活性化されるため、より高い消臭効果が得られるようになる。
【0033】
一方吸引手段5の下方に設置されたシャッタ手段6は、今までバランサ6eの作用で閉鎖されていたシャッタ板6bにファン5cにより送風される空気の風圧(図6の矢印B)を受けると、回転軸6cを中心にほぼ90度回動して開放されるため、吸引手段5により空気とともに吸引された花粉や粉塵等のアレルギー原因物質は、筒状ケース6a内を通って捕虫袋15内へと排出されることにより、網体や不織布等により形成された捕虫袋15によりアレルギー物質が濾過され、空気は図6の矢印Eに示すように捕虫袋15を通過した後、カバー16の下部開口より屋内へ排出されるようになる。
【0034】
これによって消臭体13aに形成された光触媒層13gによる二酸化チタン光触媒反応により、排ガス(NOx、SO)新建材等から放出されるホルムアルデヒド等の有害物質、タバコ臭の原因となるアセドアルデヒド、ペット等の動物臭、生ゴミ等から放出されるアンモニア臭等の消臭効果と、抗ウィルス、防カビ等の抗菌作用により細菌の繁殖防止効果が得られる。
また捕虫網15によるフィルタ効果により、空気中の花粉や粉塵等のアレルギー物質の除去と、吸引手段5が常時回転して空気を循環させることにより、空気清浄効果が得られるようになる。
【0035】
以上は装置本体1を使用して消臭を行う場合について説明したが、次に害虫を捕獲する場合の作用を説明する。
害虫を捕獲する場合の設置場所としては、一般家庭の室内、食品加工場や飲食店、コンビニ等の食品や製品に害虫が混入しては困る場所、人に不快感を与えては困る場所等に適しており、消臭装置自体を小型に製作することができるため、特に設置スペースに制限のあるに一般の家庭や飲食店、コンビニ等に最適であるが、設置場所に制限はなく、屋外やビニールハウス等の施設に設置しても勿論よい。
装置本体1を屋内に設置するに当って、天井に設置された照明器具に集まる害虫が効率よく捕獲できるように、装置本体1の上部に設けた光源12が天井付近となるように、上部ケース2に設けた吊り具9により装置本体1を天井等から吊り下げる。
【0036】
装置本体1の取り付けが完了したら、下部ケース3の下部に取り付けた蛇腹状のカバー16を図7に示す位置まで収縮して、予め用意した捕虫袋15の開口部15aを筒状ケース6aの下端側外周に嵌装し、開口部15aの外周をゴム輪等の係止手段15bで筒状ケース6aの外周面に突設された係止部6gに係止することにより、吸引手段5より風圧が捕虫袋15の内側から下方向へ作用しても捕虫袋15がずれ落ちるのを防止することができる。
捕虫袋15の取り付けが完了したら、カバー16を元の位置まで伸張した後、電源コード10の途中に設けた電源スイッチをオンにすると、光源12が点灯されると同時に吸引手段5の電動モータ5bが回転し、ファン5cによる送風が開始される。
【0037】
電動モータ5bによりファン5cが回転されることにより、吸引手段5によって光源12周辺の空気が下部ケース3内へ吸引されるため、天井付近の空気が空気取り入れ口4より吸入される。
空気取り入れ口4には下向きに傾斜する複数の消臭体13aが上下方向にほぼ等間隔に設けられていて、空気取り入れ口4へ吸入される空気は、これら消臭体13aのガイド作用により下向き方向の流れに整流されるため、吸引能力の小さい吸引手段5でも効率よく空気取り入れ口4周辺の外気を取り込むことができると共に、空気取り入れ口4内へ吸引された空気は、ガイド板13aの整流作用により増速されて吸引手段5へと吸入されるため、光源12周辺の空気をほぼ均一に吸引することが可能になる。
【0038】
また光源12には害虫が好む波長の誘引光を発生する蛍光灯のような電球を使用していることから、屋内に設置された照明器具に誘引されて屋内へ侵入した害虫も光源12へと誘引されて光源12付近に達すると、空気取り入れ口4に吸入された空気とともに吸引手段5に吸引される。
【0039】
一方吸引手段5の下方に設置されたシャッタ手段6は、今までバランサ6eの作用で閉鎖されていたシャッタ板6bにファン5cにより送風される空気の風圧(図6の矢印B)を受けると、回転軸6cを中心にほぼ90度回動して開放されるため、吸引手段5により空気とともに吸引された害虫は、筒状ケース6a内を通って捕虫袋15内へと排出されることにより、網体や不織布等により形成された捕虫袋15に害虫のみが捕獲され、空気は図6の矢印Eに示すように捕虫袋15を通過した後、カバー16の下部開口より屋内へ排出されるため、光源12に誘引された害虫を効率よく捕虫袋15内に捕獲することができる。
【0040】
また空気取り入れ口4内へ吸引された空気は、消臭体13aの整流作用により増速されながら、図4の矢印Bに示すように各消臭体13aの間を流通し、このとき空気中に含まれる臭い成分である有機有害物質が消臭体13aの表面に形成された光触媒層13gに接触した際に、前記消臭機能により二酸化炭素(CO)と水(HO)に分解されて、吸引手段5により吸引される空気中に放出されるため、害虫捕獲時においても消臭効果が得られるようになる。
【0041】
また長時間運転している間に捕獲袋15内に害虫がある程度溜まったら、捕虫袋15に捕獲された害虫を捕虫袋15ごと廃棄処理するが、廃棄処理に当って、まず電源スイッチにより光源12及び吸引手段5をオフにすると、吸引手段5による送風が停止されて、今まで風圧により開放位置にあったシャッタ板6bがバランサ6eの作用で水平位置へ回動され、筒状ケース6aの上面開口がシャッタ板6bにより閉鎖される。
これによって捕虫袋15に捕獲された害虫の一部が生存していても、オフによって吸引を停止した吸引手段5側へ害虫が逃げ出すのをシャッタ板6bが阻止するため、捕虫袋15内に捕獲した害虫うち生存している害虫が捕虫袋15より逃げ出すのを確実に防止することができる。
【0042】
光源12が消灯し、吸引手段5が完全に停止したら、カバー16を図7に示す位置まで収縮させて捕虫袋15を露出させた状態で、捕虫袋15の開口部15aを手で絞りながら筒状ケース6aの下部より捕虫袋15を取り外し、係止手段15bにより捕虫袋15の開口部15aを閉じた状態で廃棄することにより、捕獲した害虫を逃がすことなく捕虫袋15ごと廃棄処理することができる。
また新らしい捕虫袋15を筒状ケース6aの下部に取り付けたら、カバー16を図1に示す位置まで伸張して再び消臭装置の運転を開始することにより、引き続き害虫を捕獲することができるようになる。
【0043】
なお前記実施の形態では、環状基板13fの表面のみに光触媒層13gを形成した場合について説明したが、環状基板13fの裏面側にも光触媒層13gを形成してもよい。
また光触媒層13gを、アパタイト二酸化チタンコーティング剤を環状基板13fにコーティングすることにより形成したが、害虫が好む波長、例えば300〜400nmに光波長成分のピークを持つ紫外線を照射することにより活性化する光触媒であれば、特にこれに限定されるものではない。
さらにカバー16を蛇腹状に形成したが、下部ケース3の外周面に沿って上下摺動自在な筒状のカバーを設けても同様な効果が得られると共に、消臭装置としてのみ使用する場合は、カバー16を省略してもよい。
また電源コード10の途中に電源スイッチを設けた例について説明したが、装置本体1の一部、例えば下部ケース3に電源スイッチを設けるようにしても勿論よい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態になる消臭装置の正面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】本発明の実施の形態になる消臭装置の吸引手段付近の一部切欠斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態になる消臭装置の主要部を構成する消臭手段の拡大断面図である。
【図5】本発明の実施の形態になる消臭装置の消臭時の作用説明図である。
【図6】本発明の実施の形態になる消臭装置の運転時の作用説明図である。
【図7】本発明の実施の形態になる消臭装置の捕虫網交換時の作用説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 装置本体
2 上部ケース
3 下部ケース
4 空気取り入れ口
5 吸引手段
6 シャッタ手段
6a 筒状ケース
12 光源
13 消臭手段
13a 消臭体
13e 円孔
13f 環状基板
13g 光触媒層
15 捕虫網
C 紫外線
D 有機有害物質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
害虫を誘引し、また光触媒を活性化する紫外線を含む光を発生する光源が下面に取り付けられた上部ケースと、前記上部ケースの下方に設けられた下部ケースと、前記上下部ケースの間に開口された空気取り入れ口と、前記空気取り入れ口に前記光源を囲むように設置され、かつ前記光源より照射される紫外線により活性化されて、前記空気取り入れ口より取り込まれた空気中の有機有害物質を分解して消臭する光触媒層を有する消臭体が上下方向に間隔を存して複数段設けられた消臭手段と、前記下部ケース内に設置され、かつ消臭及び浄化する空気や、前記光源に誘引された害虫を空気とともに吸引する電動ファンよりなる吸引手段と、前記吸引手段の下方に接続された筒状ケースの下部に着脱自在に取り付けられ、かつ前記吸引手段より排出された空気中より花粉及び粉塵等のアレルギー原因物質や、害虫を捕獲する通気性を有する捕虫袋とを具備したことを特徴とする消臭装置。
【請求項2】
前記消臭体を、中央に円孔が開口され、かつ外周縁側から円孔側へ順次低くなるよう傾斜するテーパ面を有する環状基板と、前記環状基板の少なくとも表面にコーティングされた光触媒層とから形成し、かつ前記円孔のほぼ中心に前記光源を設置してなる請求項1に記載の消臭装置。
【請求項3】
前記光触媒層を、アパタイト二酸化チタンコーティング剤をコーティングすることにより形成してなる請求項1または2に記載の消臭装置。
【請求項4】
前記環状基板に光触媒層を形成する際、前記環状基板に下地としてアクリル酸をコーティングして保護層を形成し、前記保護層の上に前記アパタイト二酸化チタンコーティング剤をコーティングしてなる請求項2または3に記載の消臭装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−22754(P2010−22754A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190674(P2008−190674)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(500086766)株式会社シューサン (2)
【Fターム(参考)】