説明

消防用ホース

【課題】 口巻き布3に消防用ホース本体1を保護するに十分な強度を維持しつつ、撤収時に一時的に折り返したときに接続金具2の重さによりその折り返し状態を維持することのできる口巻き布3を取りつけた消防用ホースを提供することを目的とする。
【解決手段】 扁平に折り畳み可能な消防用ホース本体1の、両端部外側に口巻き布3が嵌合され、その消防用ホース本体1の両端末に接続金具2が取り付けられた消防用ホースにおいて、前記口巻き布3の軸方向の中央部に、屈曲が容易な易屈曲部を周方向に沿って形成した。
【効果】 口巻き布の軸方向の中央部に易屈曲部を形成しているので、消防用ホースの端末部を図2に示すように折り返した場合においては、前記易屈曲部において容易に折り曲げることができ、また当該易屈曲部の反発力が小さいために折り返し状態が真っ直ぐに戻ることもない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消防用ホースに関するものであって、特に消防用ホース本体の両端部の外側に被せて取り付けられる、口巻き布の新規な構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に消防用ホースの両端部の外側には、消防用ホース本体の保護のために筒状の口巻き布が取り付けられる。
【0003】
図1は消防用ホースの端末部を示すものであって、消防用ホース本体1の端末に接続金具2が挿入されており、また消防用ホース本体1の端末部の外側には筒状の口巻き布3が嵌合され、当該口巻き布3の外側から針金4を巻きつけて締め付け、消防用ホース本体1と接続金具2とを固定している。
【0004】
接続金具2の構造や当該接続金具2を消防用ホース本体1に固定する手段は、図1に示すもの以外にも各種の形式のものが使用されているが、いずれの場合にも消防用ホース本体1の端末部には口巻き布3が被せられる。
【0005】
消防用ホース本体1は、それ自体が円筒形を保持する保形性を有しておらず、通常扁平に折り畳まれた状態で収納されている。そして送水することにより内圧で円筒状に膨らみ、使用後には水を抜くと再度扁平に折り畳まれた状態に戻る。従って消防用ホース本体1は肉厚が薄く柔軟であって、その消防用ホース本体1にパイプ2を取りつけて針金4などで締め付けるため傷つき易い。
【0006】
またかかる消防用ホースを接続する際には接続金具2の取り付け位置の近傍を足で踏んで接続金具2を上向きとし、そこに次の消防用ホースの接続金具2を結合することが行われる。さらに消防用ホースをコイル状に巻くことにより接続金具2が消防用ホース本体1に当たる。これらのことにより消防用ホースの端末に近い部分は他の部分に比べて傷つき易いので、消防用ホース本体1が傷ついて耐圧性能が低下するのを防止するために、前記口巻き布3が取り付けられるのである。
【0007】
かかる消防用ホースを火災現場などにおいて使用する際には、複数の消防用ホースを接続してポンプ車から先端にまで水を送り、先端の消防用ホースに取り付けられた放水ノズルから放水して火災を消火する。
【0008】
そして火災が鎮火した後は消防用ホースの接続を解除して個々の消防用ホースをコイル状に巻き取って撤収するのであるが、個々の消防用ホース内には水が入っているため、その水が路上に流れて作業の障害にならないように、水を側溝などに排出するのであるが、その排出ができるまで一時的に図2に示すように消防用ホースの端末部を折り返しておくことが行われている。
【0009】
しかしながら前述のように消防用ホース本体1の端末部に口巻き布3が嵌合されており、その口巻き布3を嵌合した個所で折り返すことになるため、口巻き布3により剛直さを増した消防用ホースがその弾力により真っ直ぐに戻ろうとする力が働き、接続金具2の重さのみでは折り返した状態を保持することができず、真っ直ぐに戻って消防用ホース本体1内の水が排出されてしまうことがある。
【0010】
剛性が低く十分に柔軟な口巻き布3を使用することにより、折り返した状態を維持することもできるが、柔軟な口巻き布3はその強度も弱く、消防用ホース本体1を保護するという本来の目的のためには不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実開昭55−45070号公報
【特許文献2】実開昭58−158880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、口巻き布3に消防用ホース本体1を保護するに十分な強度を維持しつつ、撤収時に一時的に折り返したときに接続金具2の重さによりその折り返し状態を維持することのできる口巻き布3を取りつけた消防用ホースを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
而して本発明は、扁平に折り畳み可能な消防用ホース本体の、両端部外側に口巻き布が嵌合され、その消防用ホース本体の両端末に接続金具が取り付けられた消防用ホースにおいて、前記口巻き布の軸方向の中央部に、屈曲が容易な易屈曲部を周方向に沿って形成したことを特徴とするものである。
【0014】
本発明における前記口巻き布としては、柔軟な筒状布の内側の両略半部にそれぞれ屈曲可能な補強体を嵌合してなり、当該両補強体の間に若干の間隔を形成して易屈曲部としたものとすることができる。また前記口巻き布の他の構造としては、柔軟な筒状布の内側における前記接続金具側の端末から中央部にかけて、屈曲可能な補強体を嵌合してなるものとすることもできる。
【0015】
また口巻き布のさらに他の構造として、前記口巻き布が柔軟な筒状布であって、その軸方向の中央部を除いた部分に樹脂加工を施し、樹脂加工を施さない部分を易屈曲部としたものとすることもできる。
【0016】
さらに他の構造として、前記口巻き布がたて糸とよこ糸とを筒状に織成してなる屈曲可能な筒状布であって、その口巻き布の軸方向の中央部における前記よこ糸の打ち込みが他の部分より粗い易屈曲部としたものとすることも可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、口巻き布の軸方向の中央部に易屈曲部を形成しているので、消防用ホースの端末部を図2に示すように折り返した場合においては、前記易屈曲部において容易に折り曲げることができ、また当該易屈曲部の反発力が小さいために折り返し状態が真っ直ぐに戻ることもない。
【0018】
また口巻き布における前記易屈曲部以外の個所においては、十分に補強された剛直なものとすることが可能であり、口巻き布によって消防用ホース本体を十分に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】消防用ホースの端末部の側面図
【図2】消防用ホースの端末部を折り返した状態の側面図
【図3】本発明の一例を示す消防用ホースの端末部の半裁側面図
【図4】本発明の他の例を示す消防用ホースの主要部の中央縦断面図
【図5】本発明のさらに他の例を示す消防用ホースの主要部の中央縦断面図
【図6】本発明のさらに他の例を示す消防用ホースの主要部の中央縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明を図面に基づいて説明する。図3は本発明の一例を示すものであって、消防用ホース本体1の端末部の外側に口巻き布3が嵌合されており、その消防用ホース本体1の端末に接続金具2の結合筒5が挿入され、前記口巻き布3の外側から針金4で締め付けて固定している。
【0021】
而してこの例においては、口巻き布3は内外二層になっており、外層は柔軟な筒状布6よりなっており、その筒状布6の内側にはその両端からのそれぞれ略半部に屈曲可能な補強体7a、7bが嵌合されている。そしてその両補強体7a、7bの間には若干の間隔8が形成され、当該間隔8が易屈曲部をなしている。
【0022】
この例によれば、口巻き布3は柔軟な筒状布6の内側に屈曲可能な補強体7a、7bが嵌合されているので、不使用時には扁平に折り畳んでコイル状に巻くことができると共に、その口巻き布3は十分に消防用ホース本体1を保護している。
【0023】
そして消防用ホースの使用後に接続金具2の結合を解除してその端末部を図2に示すように折り返したときには、口巻き布3は補強体7a、7bにより相当程度の剛直性を有しているにも拘らず、間隔8の個所で容易に折り返すことができ、かつその折り返し状態を維持して真っ直ぐに戻ることがない。
【0024】
次に図4は本発明における口巻き布3の他の例を示すものであって、柔軟な筒状布6の内側における前記接続金具2側の端末から中央部にかけて、屈曲可能な補強体7を嵌合してなるものであって、補強体7の先端が易屈曲部をなしている。
【0025】
この例においても先の図3の例と同様に、口巻き布3は柔軟な筒状布6の内側に屈曲可能な補強体7が嵌合されているので、不使用時には扁平に折り畳んでコイル状に巻くことができると共に、その口巻き布3は十分に消防用ホース本体1を保護している。
【0026】
口巻き布3における接続金具2から離れた略半部は補強体7で保護されていないが、消防用ホース本体1における接続金具2の際に近い部分が最も傷つきやすいので、その部分が補強体7で保護されているだけでも十分な保護効果がある。
【0027】
そして消防用ホースの使用後に接続金具2の結合を解除してその端末部を図2に示すように折り返したときには、口巻き布3は補強体7の先端付近で折り返されることとなり、それより先の部分は柔軟な筒状布6のみであるので容易に折り返すことができると共に、その折り返し状態を維持することができる。
【0028】
また図5は本発明における口巻き布3のさらに他の例を示すものであって、この例においては口巻き布3は柔軟な筒状布9よりなり、当該筒状布9の軸方向の中央部を除いて樹脂加工10が施されており、その樹脂加工10を施していない部分11が容易に屈曲する易屈曲部をなしている。
【0029】
この例においては、口巻き布3を構成する筒状布9が易屈曲部11を除いて樹脂加工10を施されており、当該樹脂加工10により筒状布9が補強され、口巻き布3として消防用ホース本体1を有効に保護している。
【0030】
そしてその樹脂加工10の中央部に樹脂加工を施されていない易屈曲部11が形成さているので、口巻き布3はその易屈曲部11において容易に屈曲することができ、過度に大きい剛性を示すことがない。従って消防用ホースの端末部を図2に示すように折り返したときにおいては、口巻き布3は易屈曲部11において折れ曲がり、折り返し状態を維持することができるのである。
【0031】
さらに図6は本発明における口巻き布3のさらに他の例を示すものであって、この例においては口巻き布3は、たて糸12とよこ糸13とを筒状に織成した筒状布14よりなっており、この筒状布14は消防用ホースの口巻き布として十分な厚さと強度とを有している。
【0032】
そしてその筒状布14における軸方向の中央部に、前記よこ糸13の打ち込みが他の部分より粗い部分15が形成されており、当該部分は他の部分より柔軟であって屈曲しやすく、易屈曲部を構成している。
【0033】
この例においては口巻き布3は筒状布14自身の厚さと強度により消防用ホース本体1を保護していると共に、消防用ホースの端末部を図2に示すように折り返したときには、前記よこ糸13の打ち込みの粗い易屈曲部15において折り返され、折り返し状態が維持される。
【符号の説明】
【0034】
1 消防用ホース本体
2 接続金具
3 口巻き布
6 筒状布
7 補強体
8 間隔
9 筒状布
10 樹脂加工
11、15 易屈曲部
12 たて糸
13 よこ糸
14 筒状布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平に折り畳み可能な消防用ホース本体(1)の、両端部外側に口巻き布(3)が嵌合され、その消防用ホース本体(1)の両端末に接続金具(2)が取り付けられた消防用ホースにおいて、前記口巻き布(3)の軸方向の中央部に、屈曲が容易な易屈曲部を周方向に沿って形成したことを特徴とする、消防用ホース
【請求項2】
前記口巻き布(3)が、柔軟な筒状布(6)の内側の両略半部にそれぞれ屈曲可能な補強体(7a、7b)を嵌合してなり、当該両補強体(7a、7b)の間に若干の間隔(8)を形成して易屈曲部としたことを特徴とする、請求項1に記載の消防用ホース
【請求項3】
前記口巻き布(3)が、柔軟な筒状布の内側における前記接続金具(2)側の端末から中央部にかけて、屈曲可能な補強体(7)を嵌合してなることを特徴とする、請求項1に記載の消防用ホース
【請求項4】
前記口巻き布(3)が柔軟な筒状布(9)であって、その軸方向の中央部を除いた部分に樹脂加工(10)を施したものであって、樹脂加工(10)を施さない部分を易屈曲部としたことを特徴とする、請求項1に記載の消防用ホース
【請求項5】
前記口巻き布(3)がたて糸(12)とよこ糸(13)とを筒状に織成してなる屈曲可能な筒状布(14)であって、その口巻き布(3)の軸方向の中央部における前記よこ糸(3)の打ち込みが他の部分より粗い易屈曲部を構成することを特徴とする、請求項1に記載の消防用ホース

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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