説明

消音器、および消音器付き削岩機

【課題】削岩機から作動気体が排出される音を低減して、削岩機の騒音を低減し、かつ削岩機の取り扱いの容易さを維持することができる消音器を提供することを目的とする。
【解決手段】被削岩物51を削る削岩部13を作動気体Fにより作動させ、前記作動後に作動気体Fを排出気体Gとして排出部14より排出する削岩機1の、排出気体の排出音を軽減する消音器3であって、排出部に結合される結合部34と、排出部から排出された排出気体Gを流す可撓性を有する排気流入管33と、排気流入管から排出気体を導入し通過させて排出音を軽減する消音部31とを備える消音器とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、削岩機に取り付けられ、削岩機から排出される排出気体の騒音を低減させる消音器、および当該消音器が取り付けられた削岩機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工事現場では空気圧打撃を利用した削岩機が使用されている。この削岩機は、シリンダと、シリンダ内部に収納されたピストンに連結された、先端にピッドを有するロッドとを備える。シリンダにはコンプレッサから作動気体である高圧の圧縮空気が供給され、当該圧縮空気によって、ピストンが往復動し、これによりピストンに連結された先端にピッドを有するロッドが往復動する。ピッドを連続的に往復動させ、岩石等にぶつけることにより岩石等が削岩される。コンプレッサから削岩機に供給された圧縮空気は、ピストンを作動させた後、すなわちピストンを一往復動させた後ごとに、シリンダの排出口から排出される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
シリンダの排出口から排出される空気は膨張するため、大きな排出音を伴うことになる。この騒音は、工事現場付近の住民に対する大きな環境問題となることがある。また、作業効率の確保のため削岩機の取り扱いの容易さが要求される。
そこで、本願発明は、削岩機から作動気体が排出される音を低減して、削岩機の騒音を低減し、かつ削岩機の取り扱いの容易さを維持することができる消音器、および当該消音器を付きの削岩機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係る消音器3は、例えば図1、図2に示すように、被削岩物51を削る削岩部13を作動気体Fにより作動させ、前記作動後に作動気体Fを排出気体Gとして排出部14より排出する削岩機1の、排出気体Gの排出音を軽減する消音器3であって;排出部14に結合される結合部34と;排出部14から排出された排出気体Gを流す可撓性を有する排気流入管33と;排気流入管33から排出気体Gを導入し通過させて排出音を軽減する消音部31とを備える。
【0005】
このように構成すると、結合部を排出部に結合し、消音器を削岩機に取り付けることができ、消音器により削岩機から作動気体が排出される音を低減して、削岩機の騒音を低減することができる。さらに、排気流入管が可撓性を有するので、排気流入管によって削岩部の作動による上下動を吸収することができる。また、排気流入管を所定の長さとすることによって、消音部を地上に配置することができるので、消音器の重量が削岩部の作動にとって負担とならないようにすることができ、削岩機の取り扱いの容易さを維持することができる。さらに消音部を地上に配置することにより、削岩作業中に消音部の重量の影響を受けない削岩機とすることができるので、大きくて重い消音器を採用し騒音の低い削岩機とすることができる。ここで、被削岩物とは、いわゆる岩石に限らず、コンクリート、アスファルト等の岩石状の固形物を広く含む概念である。
【0006】
請求項2に係る消音器3は、請求項1に記載の消音器において、例えば図1、図2に示すように、消音部31が、車輪37、38を有し、移動可能なように構成される。
【0007】
このように構成すると、消音部を地上に配置した場合に、消音部をスムーズに移動可能とすることができる。
【0008】
上記目的を達成するため、請求項3に記載の発明に係る削岩機は、例えば図1、図2に示すように、請求項1または請求項2に記載の消音器3と;作動気体Fを導入する導入部12と;導入部12から導入された作動気体Fにより作動し、被削岩物51を削る削岩部13と;前記作動後に作動気体Fを排出気体Gとして排出する排出部14とを備え;排気流入管33の長さが、排出部14から削岩部13の先端19までの長さより長く形成され、削岩部13の作動中に、消音部31が地上に配置されるように形成される。
【0009】
このように構成すると、結合部を排出部に結合し、消音器を削岩機に取り付けることができ、消音器により削岩機から作動気体が排出される音を低減して、削岩機の騒音を低減することができる。さらに、排気流入管が可撓性を有するので、排気流入管によって削岩部の作動による上下動を吸収することができる。また、消音部を地上に配置することができるので、消音器の重量が削岩部の作動にとって負担とならないようにすることができ、削岩機の取り扱いの容易さを維持することができる。さらに消音部を地上に配置することにより、削岩作業中に消音部の重量の影響を受けない削岩機とすることができるので、大きくて重い消音器を採用し騒音の低い削岩機とすることができる。
【0010】
請求項4に係る削岩機1は、請求項3に記載の削岩機において、例えば図1に示すように、排気流入管33の長さが、さらに、消音部31を移動させず、所定の範囲内で削岩部13が岩を削る位置を変更できるような長さに形成される。
【0011】
このように構成すると、消音部を移動させず、所定の範囲内で削岩部が岩を削る位置を変更できるので、削岩作業効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明の消音器によれば、結合部を排出部に結合し、消音器を削岩機に取り付けることができ、消音器により削岩機から作動気体が排出される音を低減して、削岩機の騒音を低減することができる。さらに、排気流入管が可撓性を有するので、排気流入管によって削岩部の作動による上下動を吸収することができる。また、排気流入管を所定の長さとすることによって、消音部を地上に配置することができるので、消音器の重量が削岩部の作動にとって負担とならないようにすることができ、削岩機の取り扱いの容易さを維持することができる。さらに消音部を地上に配置することにより、削岩作業中に消音部の重量の影響を受けない削岩機とすることができるので、大きくて重い消音器を採用し騒音の低い削岩機とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図において互いに同一あるいは相当する部材には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態の削岩機1の構成を示す概念図である。図2は、消音器3の消音部31の構成を示す概念図である。削岩機1は、人間によって取り扱われるが、図1中、人間は省略してある。削岩機1は、削岩機本体2と、消音器3とを備える。
【0015】
削岩機本体2は、人間の手によって、削岩機1の姿勢を保持するためにつかまれるハンドル11と、作動気体Fを導入する導入部12と、作動気体Fにより軸方向Xに往復動振動(上下動)して作動し、被削岩物としての岩石51を削る削岩部13と、作動後に、すなわち削岩部13の一回の作動毎に作動気体Fを排出気体Gとして排出する排出部14とを有する。
【0016】
削岩部13は、ピストン16(図中、破線にて表示)と、ピストン16に連結されたロッド17(図中、一部破線にて表示)と、ロッド17の先端に取り付けられたピッド18とを有する。ピッド18の先端19は、削岩部13の先端19でもある。削岩機本体2は、さらにシリンダ15を有する。ピストン16はシリンダ15に収納され、シリンダ15内での作動気体Fの膨張により下方向に移動する。作動気体Fは、ピストン16の上方向の移動により排出気体Gとして排出される。ピストン16は、この上下動により往復動振動して作動する。
【0017】
ピストン16がシリンダ15内で往復動振動し、この往復動振動がロッド17を介してピッド18に伝達され、ピッド18が往復動振動する。ピッド18の往復動振動により、削岩機1は、岩石51を削岩することができる。ここで、削岩とは、例えば、ハツリ、穴あけ、切断等を含む。
【0018】
導入部12は、作動気体Fをシリンダ15に導入し、排出部14は排出気体Gをシリンダ15から排出する。作動気体F(典型的には圧縮空気)は、不図示のエアーコンプレッサから、導入部12に接続された供給ホース21(図1中、一部省略)によって供給される。供給ホース21は可撓性を有し、さらに削岩機1の往復動振動、およびある程度の移動が自由に行える長さのものとすることが望ましい。
【0019】
消音器3は、消音部31と、排出部14から排出気体Gを消音部31に流入させる、排気流入管としての排気流入ホース33と、消音部31から排出気体Gを流出させる排気流出ホース39(非気流出管)とを有する。排気流入ホース33は、排気流入管としての排気流入ホース本体36と、排気流入ホース本体36の両端にある結合部品としてのアダプタ34とを有し、一端が排出部14に、他端が消音部31に結合されている。排気流出ホース39は、排気流出ホース本体40と、排気流出ホース本体40一端にある結合部品としてのアダプタ41とを有し、当該一端が消音部31に結合されている。
【0020】
排気流入ホース本体36は可撓性を有し、排出部14から削岩部13の先端までの長さより長く形成され、消音部31を地上に配置することができるようにしてある。消音部31を地上に配置しているので、消音器3の重量が削岩部13の作動にとって負荷とならない。さらに排気流入ホース本体36は可撓性を有し、十分な長さとしているので、削岩機1の往復動振動が、排気流入ホース本体36により吸収され、消音部31に伝達されない。排気流入ホース33の長さは、さらに、消音部31を移動せることなく、削岩機1を、ある範囲(所定の範囲)、自由移動させることができるように決められる。この範囲は、削岩機1によって削岩作業が行われる現場の状況によるが、例えば3m四方の広さを有する、作業現場の状況に応じて事前に計画された作業範囲である。消音部31を移動させず、ある範囲内で削岩部13が岩を削る位置を変更できるので、削岩作業効率を高めることができる。
【0021】
消音部31を地上に配置するので、削岩作業中に消音部31の重量の影響を受けない削岩機1とすることができ、大きな消音器3を採用し、より騒音の低い削岩機1とすることができる。さらに、削岩機1の取り扱いの容易さを維持することができ、効率的な削岩作業をすることができる。
【0022】
消音部31は、消音部本体32と、消音部本体32を搭載する台車部42と、消音部本体32を台車部42に固定する2本の固定バンド43とを有する。台車部42は、移動方向が可変である一対の可変車輪38と、移動方向が固定された一対の固定車輪37とを有する。よって、消音部31は、移動可能であり、移動方向を変えることができ、削岩機1を前述のある範囲を超えて移動させたとき、消音部31をスムーズに移動させることができる。
【0023】
図3は、消音部本体32の構成を示す断面概念図である。消音部本体32は、パイプ壁45Aに小さい貫通孔46を密に多数形成したパンチングパイプ45と、パンチングパイプ45の外側に巻きつけたグラスウールからなる吸音材層49と、パンチングパイプ45に接続される入口短管47および出口短管48と、吸音材層49の外側に設けられ、吸音材層49を覆う防護層50とを有する。入口短管47からパンチングパイプ45内部に導入された排出気体Gの音波を、パイプ壁45Aの貫通孔46を通して吸音材層49に吸収させて、排出気体Gの削岩機1からの排出の消音を行うことができる。パンチングパイプ45を通過した排出気体Gは、出口短管48を通って消音部31から排出される。消音部31は、防護層50を有するので、堅い物にぶつかった場合に、防護層50により保護される。
【0024】
図1および図3を参照して、削岩機1の作用を説明する。
削岩作業をするため、削岩機1を工事現場に搬送し、ハンドル11をつかんで削岩機1を地面に対して垂直の姿勢をとらせ、例えば岩石51の上に載置する。このとき消音部31は地上に位置し、ピッド18が岩石51の表面51Aに接触した状態になる。
【0025】
次に、不図示のコンプレッサから、例えば圧縮空気である作動気体Fを供給ホース21を通し導入部12を介して削岩機1に供給する。具体的には、作動気体Fはシリンダ15に導入され、ピストン16を往復動振動させる。この往復動振動はロッド17を介してピッド18に伝達され、ピッド18の削岩機1の軸方向Xの往復動振動によって、岩石51の削岩を行うことができる。削岩作業を行っている間、削岩機1全体が軸方向Xに往復動振動するが、排気流入ホース本体36が可撓性を有するので、削岩機1の往復動振動は排気流入ホース33に吸収され消音部31には伝達されない。
【0026】
削岩機1に供給された作動気体Fは、ピストン16の一往復動ごとに、ピストン16が反ピッド方向(図中、上方向)に戻るときに、排出部14から排出気体Gとして排出される。排出された排出気体Gは排気流入ホース33を通って消音部31の消音器本体32に導入され、消音部31を通過して、排気流出ホース39から排出される。排気気体Gが、消音部31を通って排出されるので、削岩機1から排気気体Gが排出される音を低減して、削岩機1の騒音を低減することができる。
【0027】
所定の範囲、例えば3m四方の広さを有する範囲で、削岩機1を移動させることができるように、排気流入ホース33の長さが決められている場合、この範囲で消音部31を動かすことなく削岩機1を移動させて、削岩箇所を変更することができ、効率的な削岩作業をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る削岩機の構成を示す概念図である。
【図2】図1に示す削岩機の消音器の構成を示す概念図である。
【図3】消音器本体の構成を示す断面概念図である。
【符号の説明】
【0029】
1 削岩機
2 削岩機本体
3 消音器
11 ハンドル
12 導入部
13 削岩部
14 排出部
15 シリンダ
16 ピストン
17 ロッド
18 ピッド
19 先端
21 供給ホース
31 消音部
32 消音部本体
33 排気流入ホース(排気流入管)
34 アダプタ(結合部)
37 固定車輪
38 可変車輪
39 排気流出ホース
40 排気流出ホース本体
41 アダプタ
42 台車部
45 パンチングパイプ
45A パイプ壁
46 貫通孔
47 入口短管
48 出口短管
49 吸音材層
50 防護層
F 作動気体
G 排出気体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被削岩物を削る削岩部を作動気体により作動させ、前記作動後に前記作動気体を排出気体として排出部より排出する削岩機の、前記排出気体の排出音を軽減する消音器であって;
前記排出部に結合される結合部と;
前記排出部から排出された排出気体を流す可撓性を有する排気流入管と;
前記排気流入管から前記排出気体を導入し通過させて排出音を軽減する消音部とを備える;
消音器。
【請求項2】
前記消音部が、車輪を有し、移動可能なように構成された;
請求項1に記載の消音器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の消音器と;
前記作動気体を導入する導入部と;
前記導入部から導入された作動気体により作動し、被削岩物を削る削岩部と;
前記作動後に前記作動気体を排出気体として排出する排出部とを備え;
前記排気流入管の長さが、前記排出部から前記削岩部の先端までの長さより長く形成され、前記削岩部の作動中に、前記消音部が地上に配置されるように形成された;
削岩機。
【請求項4】
前記排気流入管の長さが、さらに、前記消音部を移動させず、所定の範囲内で前記削岩部が岩を削る位置を変更できるような長さに形成された;
請求項3に記載の削岩機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate