説明

消音器を内蔵するファンユニット

【課題】
ブレードサーバ等のラックマウントサーバにおいて装置筐体外部へ消音器を設けることなく低騒音化、ファンの冗長性を両立する手段を提供する。
【解決手段】
吸気面と排気面を保持するユニット筐体と、該ユニット筐体内の空気流路上に所定の空間を保持して直列的に設けられた複数のファンから構成されるファンユニットにおいて、前記ユニット筐体内の空気流路上に消音器を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等の低騒音化技術に関わる。
【背景技術】
【0002】
電子機器に用いられる半導体、とりわけ情報処理装置のCPUの高性能化はすさまじく、それに伴い高発熱・高発熱密度化の一途をたどっている。一方で、装置の発熱量増大に伴い、冷却のためのファン実装数、あるいは回転数の増大により、装置の騒音値も上昇傾向にある。
【0003】
なかでもブレードサーバ等のラックマウント型の情報処理装置は、より高密度な実装、高い信頼性が要求される装置であり、騒音もより大きくなってしまう。
【0004】
一般にブレードサーバ等の装置では、装置の信頼性を高めるため部品故障時に備えて部品の冗長化構成が採られている。冷却ファンについても同様で一台のファンが故障した場合にも残りのファンで装置が冷却できるように冗長化構成が採られている。
【0005】
一方で、ユーザからの低騒音化の要求に応えるため、ブレードサーバ等のラックマウント型の情報処理装置では、その装置の筐体外部の排気部分に消音器を取り付ける方法が行われてきた。
【0006】
【特許文献1】特開平04−214699
【特許文献2】特開2002−280784
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
まず、従来技術について例を挙げて説明する。
【0008】
図1に一般にブレードサーバ8と呼称される情報処理装置の冷却構造を模式的に示す。
これは、筐体前側にCPUブレード9を搭載し、筐体後側にファンユニット10を有し、その下に電源ユニット11を有している。電源ユニット11も内部に電源冷却用ファンを有しているが、CPUブレード9の冷却は、主にファンユニット10によってなされる。
空気は、CPUブレード9の前面から吸気し、ファンユニット10、および電源ユニット11背面から排気される。
【0009】
図2にファンユニット10の断面図を示す。断面図は図1に示すように切断面15にてファンユニット10の真ん中を切断したものである。ファンユニット10は、図のように上流側ファン12と下流側ファン13の直列構成であり、その間に気流を整流するための整流格子14を設けた構成となっている。このようにして一方のファンが故障してももう一方のファンにより装置の冷却が可能な冗長化構成となっている。
【0010】
図3にブレードサーバ8と複数の情報処理装置1をラックキャビネット2へ多段搭載したときの透視図を示す。また、その側面図を図4へ示す。以下、ラックキャビネット2はラック2と略称する。ラック2への情報処理装置1の搭載について簡単に説明する。図3、4に示すようにラック2内には4本の装置支持柱3があり、これにより搭載される情報処理装置1を支持する。搭載される装置は、装置支持柱3に取り付けられている装置固定用レール4へ固定しラック2内へコンパクトに収納される。各装置は、ラック2前面より吸気しラック2後面へ排気する。
従来は、ラックマウント型サーバの低騒音化は、空気を排気する際、複数の情報処理装置の排気面に設けた共通の消音器5を通過させることにより騒音を下げる仕組みをとっていた。
【0011】
以下、従来技術の課題を示す。
まず、この構成では、その筐体外部へ消音器5を設けなくてはならず、メンテナンス性の面から空けておきたい多数の電源ケーブル・IOケーブル等6が接続された情報処理装置の背面のスペースを確保することができないという課題がある。
また、筐体外に消音器が必要になり部品点数が増加するという課題もある。
また、情報処理装置、あるいは、ファンユニットとして冗長化設計(ファン正常時、故障時の両方を考慮した風量設計)を行った後、再度、筐体外消音器にて低騒音化設計(消音器よる風量低下と減音量をトレードオフする設計)を行わなくてはならず、手戻りのある設計プロセスとなり設計効率が悪いという課題もある。一般的に消音器の減音量を増やそうとすると、圧力損失が増加し風量は低下する傾向にある。
また、消音器を複数の装置に対して一括して設けるため装置ごとの最適な低騒音化設計がしにくいという課題もある。
【0012】
また、特開平04−214699や特開2002−280784のように、装置筐体内へ消音器を設けたものもあるが、これらは装置外部へ消音器を設ける必要はないが、ファンの冗長化構成を採っておらず、この構成ではファン故障時に装置の冷却ができないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために本発明では、吸気面と排気面を保持するユニット筐体と、該筐体内の空気流路上に所定の空間を保持して直列的に設けられた複数のファンから構成されるファンユニットにおいて、前記ユニット筐体内の空気流路上に消音器を設ける。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、その装置筐体外部へ消音器を設けずにすみ、メンテナンス性の面から空けておきたい多数の電源ケーブル・IOケーブル等6が接続された情報処理装置の背面のスペースを確保することができる。また、筐体外に消音器がいらず、部品点数を削減できる。
【0015】
また、情報処理装置、あるいは、ファンユニットとして冗長化設計(ファン正常時、故障時の両方を考慮した風量設計)を行う際に同時に、低騒音化設計(消音器よる風量低下と減音量のトレードオフする設計)を行うため、手戻りのない設計プロセスとなり設計効率が良い。
【0016】
また、ファンユニットあるいは、装置ごとの低騒音化が可能であり、より最適な低騒音化が可能である。
【0017】
また、特開平04−214699や特開2002−280784のように冗長構成を設けていないものとは異なり、ファン故障時においても装置の冷却ができ、高い装置信頼性が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の最良の実施形態は、図3のようにラック2に多段搭載されるブレードサーバ8や複数の情報処理装置1がそれぞれ図2に示すような冗長構成ファンユニット10を保持する形態である。
それぞれの装置の冗長構成ファンユニット10において本発明を実施することで最良の効果が得られる。
【実施例1】
【0019】
本発明の第1の実施例を図5に示す。
【0020】
ファンユニット10は、図のように上流側ファン12と下流側ファン13の直列構成であり、その間に設けられた気流を整流する整流格子14、下流側ファン13から下流側に設けられた消音器5からなる。整流格子14は、必ずしも必要ではないが、上流側ファン12の排気を整流し、下流ファン13の吸気損失を低減する効果があるためできるだけ設けた方がよい。
【0021】
図6に消音器5の斜視図を示す。
消音器5は吸音部材7により構成されるが、吸音部材7は加工性が良く、広い周波数帯域に良好な吸音効果を持つポリウレタンフォームなどの多孔質材料を用いるとよい。
【0022】
消音器5は図5、6のように矩形状の吸音部材7を一定の間隔でファンユニットの上面下面に交互に設けることで蛇行流路を形成される。吸音部材7を空気流路を蛇行させるように設けることにより直接音を極力出さない形状としている。また、吸音部材7を設ける面がファンユニットの左面右面であってもよい。また、消音器5の形状を蛇行流路とすることで音の反射回数を増やし効率的に音を減衰させ消音することができる。
【0023】
本実施例では、吸音部材7の高さをファンユニットの高さHの半分H/2より高くすることで直接音が外部へ出ない構成を採っている。直接音とは、反射、透過せずにダイレクトに耳に到達する音であり、間接音とは、透過、反射してから耳に到達する音のことである。
【実施例2】
【0024】
本発明第2の実施例は、図7に示すようにファンユニット10内において下流側ファン13がファンユニット10の排気面に配置された場合である。
装置実装上の制約等から、ファンユニット10内の配置がこのようになる場合は、上流側ファン12と下流側ファン13の間に消音器5を設け消音するとよい。この場合、主に上流ファン12の発生音に対して消音効果が得られる。
【0025】
消音器5の形状は実施例1のように空気流路を蛇行させるように設けるなど上流ファンの直接音を極力出さない形状にするとよいが、このとき、消音器5が整流効果を持つように吸音部材7の配置や形状は最適化するとなおよい。
【実施例3】
【0026】
本発明の第3の実施例は、上流側ファン12と下流側ファン13の間、及び下流側ファン13から空気排気面の間の2箇所に消音器5を設けた構成である。この構成は、消音器5を2箇所とすることで消音効果をより高めることのできる構成である。
【0027】
下流側ファン13から空気排気面間の消音器5の形状は、実施例1のように空気流路を蛇行させるように設けるなど上流ファンの直接音を極力出さない形状にするとよい。
また、上流側ファン12と下流側ファン13の間の消音器5の形状も同様にするとよいが、このとき、消音器5が整流効果を持つように吸音部材7の配置や形状は最適化するとなおよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】ブレードサーバ構造の透視図
【図2】従来技術のファンユニット断面図
【図3】ブレードサーバのラック搭載時の透視図
【図4】ブレードサーバのラック搭載時の側面図
【図5】本発明第一の実施例の断面図
【図6】第一の実施例の消音器斜視図
【図7】本発明第二の実施例の断面図
【図8】本発明第三の実施例の断面図
【符号の説明】
【0029】
1 情報処理装置
2 ラックキャビネット(略称、ラック)
3 装置支持柱
4 装置固定用レール
5 消音器
6 電源ケーブル・IOケーブル等
7 吸音部材
8 ブレードサーバ筐体
9 CPUブレード
10 ファンユニット
11 電源ユニット
12 上流側ファン
13 下流側ファン
14 整流格子
15 ファンユニット断面図の切断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気面と排気面を保持するユニット筐体と、該ユニット筐体内の空気流路上に所定の空間を保持して直列的に設けられた複数のファンから構成されるファンユニットにおいて、前記ユニット筐体内の空気流路上に消音器を設けたことを特徴とするファンユニット。
【請求項2】
空気流路上で上流に位置する上流側ファンと空気流路上で下流に位置する下流側ファンとの間の空間に消音器を設けたことを特徴とする請求項1記載のファンユニット。
【請求項3】
空気流路上で下流に位置する下流側ファンとユニット筐体の排気面との間の空間に消音器を設けたことを特徴とする請求項1記載のファンユニット。
【請求項4】
空気流路上で上流に位置する上流側ファンと空気流路上で下流に位置する下流側ファンとの間の空間、及び前記下流側ファンとユニット筐体の排気面との間の空間に消音器を設けたことを特徴とする請求項1記載のファンユニット。
【請求項5】
前記消音器は、吸音部材により蛇行する空気流路を形成して成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のファンユニット。
【請求項6】
前記消音器は、ユニット筐体の高さより低い所定の高さを有する矩形状の吸音部材を所定の間隔でユニット筐体内部の上面と下面、あるいは右面と左面に交互に設けることで形成されることを特徴とする請求項5記載のファンユニット。
【請求項7】
請求項1〜6に記載されたファンユニットを搭載したことを特徴とする情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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