説明

消音通気構造

【課題】通過する空気流と吸音材との接触面積を可及的に大きく(広く)し、該吸音材における吸音効果を増大して騒音の流出を可及的に抑制することができる消音通気構造を提供するものである。
【解決手段】騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間における消音通気構造であって、吸音材からなる吸音部材3を主体とし、該吸音部材3は、前記防音空間に連通される空洞部5と該空洞部5の内周面から直交方向の外方に向けて延在する複数個のスリット状の空間部6とからなる空気流通路Xを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、騒音の発生源を防音構造(壁)等で遮蔽した防音空間(部屋)の換気や、同部位から外部に送気を行う場合、該防音空間(部屋)の騒音の流出を可及的に抑制する消音通気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の消音通気構造にあっては、例えば、エンジンルームのダクトの内部(内面)に、ランダムな形状(ランダムなほぼ波形状)を有する吸音材を貼付し、その内部通路を空気の流れに沿って連続的に断面形状とした構成の吸音ダクトが案出されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特願平11−117761号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来の吸音ダクトにあっては、騒音は空気がダクト内を通過する際に、その吸音材により吸音されるとともに、その断面形状の変化する箇所で互いに干渉し、打消し合って騒音低減を図ることができるものの、吸音材の形状と相まってダクト内における空気流と該吸音材との接触面積を大きく(広く)することに限界があり、その消音効果を満足するには未だ至っていないのが現状である。
そこで、本発明は、上記した従来の問題点に鑑み、通過する空気流と吸音材との接触面積を可及的に大きく(広く)し、該吸音材における吸音効果を増大して騒音の流出を可及的に抑制することができる消音通気構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間における消音通気構造であって、
吸音材からなる吸音部材を主体とし、該吸音部材は、前記防音空間に連通される空洞部と該空洞部の内周面から直交方向の外方に向けて延在する複数個のスリット状の空間部とからなる空気流通路を備えてなることを要旨とする。
上記した構成によれば、吸音部材にあって、騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間内と連通する空気流通路において空洞部内を通過する空気流が各複数個のスリット状の空間部内にも行き渡り、該空気流と吸音部材との接触面積を可及的に大きく、広くし、その吸音部材における吸音効果を増大し得るものである。
したがって、騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間に対する空気流に伴う騒音の流出を可及的に抑制することができる。
【0005】
請求項2に記載の発明は、騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間における消音通気構造であって、
吸音材からなる吸音部材を主体とし、該吸音部材を、その外周が外筒部材により覆われた所定長さの筒状形態に形成するとともに、その中心軸心方向には、前記防音空間に連通される空洞部と該空洞部の内周面から直交方向の外方に向けて延在する複数個のスリット状の空間部とからなる空気流通路を備えてなることを要旨とする。
この構成によれば、筒状形態に形成された吸音部材にあって、請求項1と同様に、騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間内と連通する空気流通路において空洞部内を通過する空気流が各複数個のスリット状の空間部内にも行き渡り、該空気流と吸音部材との接触面積を可及的に大きく、広くし、その吸音部材における吸音効果を増大し得るものである。
したがって、騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間に対する空気流に伴う騒音の流出を可及的に抑制することができる。
【0006】
請求項3に記載の発明は、騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間における消音通気構造であって、
吸音材からなる吸音部材を主体とし、該吸音部材を、所定の厚さを有する板状形態に形成するとともに、その厚さ方向には、前記防音空間に連通される空洞部と該空洞部の内周面から直交方向の外方に向けて延在する複数個のスリット状の空間部とからなる空気流通路を貫設し、該空気流通路を板状面に対して所定の間隔をおいて多数個形成してなるを要旨とする。
この構成によれば、板状形態に形成された吸音部材にあって、請求項1と同様に、騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間内と連通する空気流通路において空洞部内を通過する空気流が各複数個のスリット状の空間部内にも行き渡り、該空気流と吸音部材との接触面積を可及的に大きく、広くし、その吸音部材における吸音効果を増大し得るものである。
したがって、騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間に対する空気流に伴う騒音の流出を可及的に抑制することができる。
【0007】
請求項4に記載の発明は、騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間における消音通気構造であって、
基体部材を所定の厚さを有する板状形態に形成するとともに、この基体部材の板状面には、その厚さ方向に所定の間隔をおいて多数個の装着孔を貫設し、該各装着孔内には外周が外筒部材により覆われかつ所定長さの筒状形態に形成された吸音材からなる吸音部材を挿通固定し、この吸音部材の中心軸心方向には、前記防音空間に連通される空洞部と該空洞部の内周面から直交方向の外方に向けて延在する複数個のスリット状の空間部とからなる空気流通路を備えてなることを要旨とする。
この構成によれば、板状形態の形成された基体部材に対し、筒状形態で配設された吸音部材にあって、請求項1と同様に、騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間内と連通する空気流通路において空洞部内を通過する空気流が各複数個のスリット状の空間部内にも行き渡り、該空気流と吸音部材との接触面積を可及的に大きく、広くし、その吸音部材における吸音効果を増大し得るものである。
したがって、騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間に対する空気流に伴う騒音の流出を可及的に抑制することができる。
【0008】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか1の請求項に記載の消音通気構造であって、
前記空気流通路における空間部が、その先端から前記空洞部の内周面に至るにしたがって暫時広くなる形状、または該空洞部の内周面から先端に至るにしたがって暫時広くなる形状に形成するとともに、該空洞部位を中心とする放射方向に所望の間隔で形成したことを要旨とする。
この構成によれば、空気流が空間部内で広がって乱流を起こすことになり、この空間部内における空気の乱流によって騒音を減衰してさらなる吸音効果の増大を図るものである。
したがって、空間部における吸音効果を増大して騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間に対する空気流に伴う騒音の流出を可及的に抑制することができる。
【0009】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のうちのいずれか1の請求項に記載の消音通気構造であって、
前記空気流通路における空洞部は、その軸方向において前記空洞部に連通されかつ該空洞部より大径の空気拡張空間部が所望の間隔で多数個形成されていることを要旨とする。
この構成によれば、空洞部より大径の空気拡張空間部を形成したことにより、空気流が各空気拡張空間部で広がって乱流を起こすことになり、この空気の乱流によって騒音を減衰し、さらに吸音効果を増大して、騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間に対する空気流に伴う騒音の流出を可及的に抑制することができる。
【0010】
請求項7に記載の発明は、請求項2に記載の消音通気構造であって、前記外筒部材の少なくとも一方端部おいて、該外筒部材の端面から外周にわたり所望の空間部を隔てて有底筒状の被嵌部材が嵌挿され、該被嵌部材は、前記外筒部材の開口端面に対向する底面に吸音部材が配設されていることを要旨とする。
この構成によれば、外筒部材の端面から外部への空気の流出部位において、有底筒状の被嵌部材により折り返し状の空気流が形成され、この折り返し状の空気流及び底面の吸音部材によって、さらなる吸音効果の増大を図り、騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間に対する空気流に伴う騒音の流出を可及的に抑制することができる。
【0011】
請求項8に記載の発明は、請求項2、4、7のうちのいずれか1の請求項に記載の消音通気構造であって、
前記外筒部材を屈曲自在な柔軟性を有する素材から形成してなるを要旨とする。
この構成によれば、この構成によれば、筒状主体部自体が屈曲自在となるので、騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間における消音通気構造としての実際の使用にあっての利便性を一層発揮し得るものである。
【0012】
請求項9に記載の発明は、請求項2、4、8のうちのいずれか1の請求項に記載の消音通気構造であって、
前記外筒部材の少なくとも一方端部側には前記空気流通路に連通する通風口を有するルーパー手段を装設したことを要旨とする。
この構成によれば、筒状形態の吸音部材にあって、ルーパー手段により外気に臨んだ外筒部材(吸音部材)の一方端部側から吸音部材内に雨水等が入り込む、いわゆる流水状態を可及的に抑制して該吸音部材の吸音効果等を確保し得るものである。
【0013】
請求項10に記載の発明は、請求項3または4に記載の消音通気構造であって、
前記板状形態の吸音部材または基体部材の少なくとも一方側の板状面全面には前記空気流通路に連通する通風口を有するルーパー手段を装設したことを要旨とする。
この構成によれば、板状形態の吸音部材にあって、請求項9と同様に、ルーパー手段によって、外気側に面した吸音部材に雨水等が入り込む、いわゆる流水状態を可及的に抑制して該吸音部材の吸音効果等を確保し得るものである。
【0014】
請求項11に記載の発明は、請求項3または4に記載の消音通気構造であって、
前記板状形態の吸音部材または基体部材の少なくとも一方側の板状面全面には外装部材を装設し、この外装部材には、風圧で開閉動されて前記吸音部材の空気流通路と外気とを連通可能とする通風窓を備えてなるを要旨とする。
この構成によれば、板状形態の吸音部材にあって、請求項10と同様に、外装部材の通風窓によって、吸音部材における空気流通路の外気との連通状態を制御し得るとともに、該吸音部材に雨水等が入り込むことを可及的に抑制して該吸音部材の吸音効果等を確保し得るものである。
【0015】
請求項12に記載の発明は、請求項3または4に記載の消音通気構造であって、
前記板状形態の吸音部材または基体部材の少なくとも一方側の板状面全面には撥水加工を施したメッシュ状の外装部材を装設し、前記吸音部材の空気流通路と外気を連通可能に構成したことを要旨とする。
この構成によれば、吸音部材における空気流通路と外気を空気のみの流通を許容するとともに、外気からの雨水の浸入を阻止することができ、外気側に面した吸音部材に雨水等が入り込む、いわゆる流水状態を可及的に抑制して該吸音部材の吸音効果等を確保し得るものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明にあっては、吸音部材にあって、空気流通路となる空洞部内を通過する空気流が各空間部内にも行き渡ることになり、該空気流と吸音部材との接触面積を可及的に大きくかつ広くして吸音部材における吸音効果を増大し得、騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間に対する空気流に伴う騒音の流出を可及的に抑制することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明にあっては、筒状形態の吸音部材にあって、請求項1と同様に、空気流と吸音部材との接触面積を可及的に大きくかつ広くして吸音部材における吸音効果を増大し得る。このことは、騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間に設けられる通気ダクト等として、その防音空間から流出される空気流に伴う騒音の流出を可及的に抑制することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明にあっては、板状形態の吸音部材にあって、請求項1と同様に、空気流と吸音部材との接触面積を可及的に大きくかつ広くして吸音部材における吸音効果を増大し得る。このことは、騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間に対し、その防音構造として用いられる防音壁部材、防音天井部材、防音床部材、防音マット部材等として、その防音空間から流出される空気流に伴う騒音の流出を可及的に抑制することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明にあっては、請求項3と同様に、板状形態の吸音部材にあって、空気流と吸音部材との接触面積を可及的に大きくかつ広くして吸音部材における吸音効果を増大し得る。このことは、騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間に対し、その防音構造として用いられる防音壁部材、防音天井部材、防音床部材、防音マット部材等として、その防音空間から流出される空気流に伴う騒音の流出を可及的に抑制することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明にあっては、空気流が空間部内で広がって乱流を起こすことになり、この空間部内における空気の乱流によって騒音を減衰してさらなる吸音効果の増大を図ることができる。
【0021】
請求項6に記載の発明にあっては、空気流が各空気拡張空間部内に広がって乱流を起こし、この空気のさらなる乱流によって騒音を減衰し得、その消音効果を増大することができる。
【0022】
請求項7に記載の発明にあっては、外筒部材の端面から外部への空気の流出部位において、さらなる吸音効果の増大を図り、騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間に対する空気流に伴う騒音の流出を可及的に抑制することができる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、筒状主体部自体が屈曲自在となるので、騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間における消音通気構造としての実際の使用にあっての利便性を一層発揮することができる。
【0024】
請求項9に記載の発明は、筒状形態の吸音部材にあって、外気に臨んだ外筒部材(吸音部材)の一方端部側から吸音部材内に雨水等が入り込む、いわゆる流水状態を可及的に抑制して該吸音部材の吸音効果等を確保し得る。
【0025】
請求項10に記載の発明は、板状形態の吸音部材にあって、外気側に面した吸音部材に雨水等が入り込む、いわゆる流水状態を可及的に抑制して該吸音部材の吸音効果等を確保し得る。
【0026】
請求項11に記載の発明は、請求項10と同様に、板状形態の吸音部材にあって、外装部材の通風窓によって、吸音部材における空気流通路の外気との連通状態を制御し得、該吸音部材に雨水等が入り込むことを可及的に抑制して該吸音部材の吸音効果等を確保し得る。
【0027】
請求項12に記載の発明は、吸音部材における空気流通路と外気を空気のみの流通を許容するとともに、外気からの雨水の浸入を阻止することができ、外気側に面した吸音部材に雨水等が入り込む、いわゆる流水状態を可及的に抑制して該吸音部材の吸音効果等を確保し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に、本発明を実施するための最良の形態について、実施例にしたがって説明する。
(実施例)
【0029】
以下、本発明の各実施例を図面にしたがって説明する。
【0030】
図1〜図14に示す各実施例は、騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間に設けられる通気ダクト等の消音通気構造に採用した場合であって、後述する吸音部材を筒状形態として構成したものである。図1〜4に示すように、該防音空間内に連通される筒状主体部1から構成されており、該筒状主体部1は、外筒部材2と、該外筒部材2内に配設された所望の厚さの吸音部材3とから形成されている。
なお、筒状主体部1は、図3に示すように、外筒部材2の一方側端部が、騒音の発生源を遮蔽して防音空間(部屋)を形成する防音構造(壁)Yに対してその防音空間内との連通状態で適宜の取付け手段(図示しない)を介して取付け固定され、他端側端部が、防音空間(部屋)の外部(外気)に位置されて、防音空間(部屋)の換気や、同部位から外部に送気等を行うように構成するものである。
【0031】
この外筒部材2は、所望の長さでかつ所望の断面形状(本実施例の場合は、円形状を示す。)に形成されていて、この断面形状が保持できる素材、例えば、合成樹脂製、ゴム製、金属製等から形成されている。とくに、屈曲自在な柔軟性を有する構成とする場合は、ゴム製とすることが好ましく、騒音が該外筒部材2を通じて外側にもれないように防振(防音)ゴム製から形成することがより好ましい。また、外筒部材2に対し耐衝撃性や強度を付与する鉄、ステンレス鋼等の金属製から形成することが好ましい。ただし、外筒部材2を金属製から形成した場合、前述の屈曲自在な柔軟性を既存のフレキシブル構造を採用することもできる。
また、前記外筒部材2は、図4に示すように、その外周にさらに外膜層部材4を設けて二重構造とすることもでき、例えば、外筒部材2を防振(防音)ゴム製とした場合には、その外側の外膜層部材4を耐候性に優れたゴム素材とすること、さらに断面形状の保持性を向上するために、該外膜層部材4を金属製とすることの技術構成を採用することができる。
【0032】
前記吸音部材3は、所望の厚みの断面円形状の筒状に形成され、その外周に相当する部位が前記外筒部材2の内周軸線方向に嵌合されて接着剤等により固着され、その中央部位には前記筒状主体部1における空気流通路Xとなる空洞部5がその軸方向に沿って貫設形成されるとともに、該外筒部材2の内周面側から空洞部5に至るにしたがって暫時広くなるスリット状の空間部6〜6が該空洞部5の部位から放射方向に所望の間隔で多数個形成された横断面形状(図2参照)に形成されている。すなわち、吸音部材3は、横断面形状において、頂角部を空気流通路Xとなる空洞部5に指向する三角形状の各吸音部材片3a〜3aが該各吸音部材片3a〜3aの三角形状とは逆向きの頂角部を外筒部材2の内周面側に指向する三角形状の各空間部6〜6を隔てて等間隔に配置された構造となる。
【0033】
上記のようにして筒状形態の吸音部材本体22Aが構成されるものであり、前記吸音部材3は、一般的に使用されている既存のグラスウール等無機質繊維素材やウレタンフォーム、硬質発泡ウレタンエラストマー、スポンジゴム等多孔質樹脂発泡体等の吸音性、加工性に富む素材が採用されるもので、さらに、前記外筒部材2の屈曲自在な柔軟性に対応するように、柔軟性に富む素材、空気流に対する耐久性に富む素材、空気の流通をより妨げないような連続空隙が形成された通気性に富む素材がより好ましい。
また、前記吸音部材3における外筒部材2に対する取付けは、該吸音部材3の位置が確保できるように、前述した接着剤により固着することが好ましく、この場合は柔軟性に富む接着剤を使用することがより好ましい。さらに、外筒部材2に対する吸音部材3の取付けは、焼付け手段、型枠等を用い直接外筒部材2の内周面に発泡形成する等の種々の手段を採用することができるものである。
さらに、吸音部材3における各吸音部材片3a〜3aの断面形状にあっては、図示の三角形状の他に、空気流を阻害することなく、該空気流との接触面積を大きく(広く)確保し得る形状、例えば、円弧形状、台形状、また、空洞部5から外筒部材2の内周面側に至るにしたがって暫時広くなる三角形状、台形状等に変更可能であり、これに伴って各空間部6の形状も該各吸音部材片3aの形状に対応して変更されるものである。
【0034】
本実施例の消音通気構造は、上述のように構成したものであり、筒状形態の吸音部材本体22Aの使用に際し、前述したように、筒状主体部1における外筒部材2の一方側端部を、騒音の発生源を遮蔽して防音空間(部屋)を形成した防音構造(壁)Yに対してその防音空間内との連通状態で適宜の取付け手段(図示しない)を介して取付け固定する。この場合、外筒部材2の他端側端部はそのまま防音空間(部屋)の外部に位置させる。
【0035】
そして、防音空間(部屋)での騒音が発生する各種作業において、該防音空間(部屋)に換気或いは送気を行った場合、この防音空間(部屋)の空気は該騒音とともに、筒状主体部1における外筒部材2の吸音部材3内に形成された空気流通路Xとなる空洞部5から外部に排出(排気)されることになる。
【0036】
この吸音部材3内の空気流通路Xとなる空洞部5から外部への排出(排気)時において、該空洞部5内を通過する空気流が各空間部6〜6内にも行き渡り、該空気流との接触面積が可及的に大きく、広く形成された吸音部材3により吸音し、その吸音部材3における吸音効果を増大し得るとともに、空洞部5から各空間部6〜6内に至る空気流に乱流を生起させてその消音効果を発揮する。すなわち、空気流とともに騒音が吸音部材3の素材内(表面)の細かな空隙内に吸い込まれてラビリンスとなって減衰していくことと、該騒音が吸音部材3を振動させ、これが熱エネルギーに変換されて音のエネルギーが減少されること等によりその消音効果を発揮するものである。
したがって、騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間に対する空気流に伴う騒音の流出を可及的に抑制し得るものである。
なお、外部の騒音が防音空間内に流入する場合も上記同様にして防音空間内に対する空気流に伴う騒音の流出を可及的に抑制し得るものである。
また、本実施例にあっては、外筒部材2を屈曲自在な柔軟性を有する構成とすることにより、筒状主体部1全体が屈曲自在となるので、騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間における消音通気構造として、実際の使用にあっての利便性を一層発揮し得るものである。
【0037】
次に、本発明の別例を図5〜図11にしたがって説明すると、この図示の実施例にあっては、前述した実施例における吸音部材3に対し、その軸方向において、空気流通路Xとなる空洞部5と連通されかつ該空洞部5より大径の空気拡張空間部7〜7が所望の間隔で多数個形成されている態様で、図5に示す態様は、その空気拡張空間部7〜7が外筒部材2の内周面まで至る深さに形成された場合で、図6に示す態様は、その空気拡張空間部7〜7を吸音部材3が残る深さに形成された場合であって、その余の構成は前述した構成と同様であるため、同一の部材構成については図中同符号を付してその説明を省略する。なお、図6に示す態様の吸音部材3にあっては、図7に示すように、各空間部6〜6がその頂角部に相当する部位を外筒部材2の内周面に至るまでの深さより浅い深さの位置まで形成されている。なお、空気拡張空間部7〜7の横断面円形状に形成され、その幅は所望の幅でよい。
【0038】
したがって、この実施例にあっては、空気流通路X内の空気流が各空気拡張空間部7〜7内で広がってさらに乱流を起こすことになり、この空気の乱流によって騒音を減衰し、さらなる吸音効果を増大することができるとともに、前述の実施例と同様な作用効果を享受するものである。
【0039】
また、図8及び図9に示す態様は、前述した空気拡張空間部7〜7を軸方向においてランダムな間隔(図8参照)或いは幅を変化(図9参照)させた場合であって、その余の構成は前述した構成と同様であるので、同一の部材構成については図中同符号を付してその説明を省略する。
【0040】
したがって、この実施例にあっては、空気流通路X内の空気流が各空気拡張空間部7〜7内で広がってさらに種々異なる乱流を起こすことになり、この空気の乱流によって騒音を減衰し、さらなる吸音効果を増大することができるとともに、前述の実施例と同様な作用効果を享受するものである。
【0041】
また、図10に示す態様は、前述した空気拡張空間部7〜7の両側における各ブロックに相当する吸音部材3ごとの空気流通路Xとなる空洞部5〜5の中心を種々変位させた場合であって、その余の構成は前述した構成と同様であるので、同一の部材構成については図中同符号を付してその説明を省略する。
【0042】
したがって、この実施例にあっては、空気流通路Xとなる空洞部5〜5の中心を種々変位させることにより、空気流は複雑な経路となり、この複雑な経路によるラビリンス効果が向上し、より騒音を減衰して、さらなる吸音効果を増大することができるとともに、前述の実施例と同様な作用効果を享受するものである。
【0043】
また、図12〜図14に示す態様は、前述した図1〜3に示す態様において、筒状主体部1の少なくとも一方端部(防音空間の外部に位置される端部)おいて、外筒部材2の端面から外周にわたり所望の空間部を隔てて有底筒状の被嵌部材8を嵌挿して支持部材9〜9を介して固定した態様で、該被嵌部材8の該外筒部材2の開口端面に対向する底面には、例えば、多数の三角形状の凹凸部が形成された吸音部材10が配設されている。前記外筒部材2の端部外周には、前記支持部材9を取付ける外被筒部材11が嵌挿され、この外被筒部材11と被嵌部材8の筒部内周面との間には前述した実施例と同様に構成された吸音部材3が介装されている。
そして、その余の構成は前述した構成と同様であるので、同一の部材構成については図中同符号を付してその説明を省略する。図13においては外筒部材2、吸音部材3、被嵌部材8を断面楕円上に図示されているが、真円形のものとする。なお、前記被嵌部材8は、筒状主体部1の他方端部(防音空間の内部に位置される端部)或いはその両端部においても装設可能である。
【0044】
したがって、この実施例においては、外筒部材2の端面から外部への空気の流出部位において、有底筒状の被嵌部材8により折り返し状の空気流が形成され、この折り返し状の空気流及び底面の吸音部材10によって、さらなる吸音効果の増大を図り、騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間に対する空気流に伴う騒音の流出を可及的に抑制することができるとともに、前述の実施例と同様な作用効果を享受するものである。
【0045】
また、図14に示す態様は、前述した実施例において、外筒部材2の端部における前述の外被筒部材11を延出して空間部位を形成し、この空間部位に空気流の進行方向に凹凸を形成しかつ径方向に絞り部効果を有する吸音部材12を配設した構造の態様であって、その余の構成は前述した構成と同様であるので、同一の部材構成については図中同符号を付してその説明を省略する。
【0046】
したがって、この実施例においては、外筒部材2の端面に形成された外被筒部材11の吸音部材12によって、空気流のさらなる乱流を生起させて消音効果を高めるとともに、折り返し状の空気流及び底面の吸音部材10によって、さらなる吸音効果の増大を図り、騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間に対する空気流に伴う騒音の流出を可及的に抑制することができる。そして、前述の実施例と同様な作用効果を享受することは勿論のことである。
【0047】
なお、前述した実施例において、外筒部材2の断面形状を円形としたが、これに限定するものではなく、例えば、四角形等の多角形状,楕円形状でも実施可能である。また、送風機等からの種々の空調ダクト等にも応用可能である。
【0048】
次に、図15〜図34に示す各実施例は、騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間に対し、その防音構造として用いられる防音壁部材、防音天井部材、防音床部材、防音マット部材等としての消音通気構造に採用した場合であって、図15及び図17に示すように、吸音部材を板状形態として構成したものである。
まず、図15に示す態様は、所定の厚さの基体部材20が所定の大きさの矩形板状態に形成されていて、その板状面には、縦、横方向の全面にわたって所定の間隔(図では等間隔の場合を示す。)で多数個の装着孔21〜21がその厚さ方向に貫設されている。
この各装着孔21〜21内には前述した筒状形態の吸音部材本体22A〜22Aがそれぞれ挿通固定されている(図20参照)。すなわち、基体部材20の各装着孔21に挿通固定される各吸音部材本体22Aは、前述と同様に、外筒部材2と、該外筒部材2内に配設された吸音部材3とから形成され、その中心軸心方向には、空洞部5及び各空間部6〜6から構成された空気流通路Xが貫設されている。これによって、基体部材20に多数個の筒状形態の吸音部材本体22A〜22Aを備えた板状形態の吸音部材本体22Bが構成されるものである。
なお、筒状形態の吸音部材本体22Aにおける外筒部材2及び吸音部材3の材質(素材)、空洞部5及び各空間部6〜6の各構成は、前述した図1〜図4に示す実施例の構成と同様であるので、同一の部材構成については図中同符号を付してその説明を省略する。
【0049】
また、前記基体部材20は、その形状(本実施例では板状)の保持が可能で、強度、耐衝撃性、耐候性等に優れかつ装着孔21〜21の穿孔加工が容易な材質、例えば合成樹脂板から構成することが好ましいが、軽金属板、木板、スレート板等から構成することも可能である。さらには、前記基体部材20は前述の材質の他に、コンクリート(ポーラスコンクリートを含む。)やモルタル等、水硬性材料から構成することも可能である。
そして、前記基体部材20の厚さは、必要とする防音性能により設定することができるが、例えば、約5〜10cm程度に設定することが望ましい。
さらに、基体部材20における装着孔21に対する吸音部材本体22Aの固定は、柔軟性の高い接着剤、焼付け等により両者を固着するものであるが、基体部材20をコンクリート(ポーラスコンクリートを含む。)やモルタル等、水硬性材料から構成する場合は、水硬性材料成形型内の所定位置に各吸音部材本体22Aを配設しておき、この型内に水硬性材料を打ち込んで硬化させ、基体部材20の成形とともに、各吸音部材本体22Aを固着することが可能である。なお、基体部材20の外周の四辺には金属製からなる補強枠体(図示しない)を設けることも可能である。
【0050】
上記のように構成された板状形態の吸音部材本体22Bは、図19に示すように、例えば、遮音底板Z1及び四側面を各遮音側板Z2によって発熱を伴う騒音源であるエンジンE等を遮蔽した防音構造において、その防音空間Sの上部を遮蔽するように、例えば、防音天井部材として組付けられるものであり、防音空間S内は該エンジンEの冷却等のため換気が必要であって、前記遮音底板Z1に設けた空気導入口から外部の空気(外気)が取り入れられて該エンジン(発電機)Eの冷却等が行なわれ、この防音空間S内の空気は板状形態の吸音部材本体22Bにおける各筒状形態の吸音部材22Aの空気流通路Xから外部(外気)側に排出(排気)されるものである。(図19の矢印参照)
【0051】
そして、防音空間S内の空気が各筒状形態の吸音部材22Aの空気流通路Xから外部(外気)側に排出(排気)されるとき、その各筒状形態の吸音部材22Aにおいては、前述した実施例と同様に、吸音部材3の空洞部5内を通過する空気流が各空間部6〜6内にも行き渡り、該空気流との接触面積が可及的に大きく、広く形成された吸音部材3により吸音し、その吸音部材3における吸音効果を増大し得るとともに、空洞部5から各空間部6〜6内に至る空気流に乱流を生起させてその消音効果を発揮する。すなわち、空気流とともに騒音が吸音部材3の素材内(表面)の細かな空隙内に吸い込まれてラビリンスとなって減衰していくことと、該騒音が吸音部材3を振動させ、これが熱エネルギーに変換されて音のエネルギーが減少されること等によりその消音効果を発揮するものである。
したがって、騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間Sに対する空気流に伴う騒音の流出を可及的に抑制し得るものである。なお、外部の騒音が防音空間S内に流入する場合も上記同様にして防音空間S内に対する空気流に伴う騒音の流出を可及的に抑制し得るものである。
【0052】
続いて、上記した実施例における実験例を以下に説明する。
まず、前記板状形態の吸音部材本体22Bの模擬吸音部材本体22Bを製造した。該模擬吸音部材本体22Bは、図23及び図24に示すように、基体部材20の全体の大きさを、横幅Wを50cm、縦幅Vを50cm、厚さHを10cmとした矩形の平板状とし、筒状形態の吸音部材22Aの大きさを、直径Tを15cm、空気流通路の直径E(空洞部5の内周)を2cmとし、この筒状形態の吸音部材22Aを前記基体部材20に対して5個配設して作成した。なお、基体部材20を硬質発泡ウレタンエラストマー、筒状形態の吸音部材22Aにおける外筒部材2を防振ゴム、吸音部材3をポリウレタンフォームの材質(素材)からそれぞれ成形した。
【0053】
上記した模擬吸音部材本体22Bを用いて、騒音源としてのスピーカーを、中央部が地上(床上)より25cm上方位置に配置し、これより水平方向に20cm離れた位置に該
模擬吸音部材本体22Bを垂直状に立設し、騒音計を模擬吸音部材本体22Bのスピーカーに面した側と反対方向に該模擬吸音部材本体22Bから水平方向に10cm離しかつ地上(床面)より25cm上方位置に設置した。この場合、上記スピーカーと騒音計との距離は模擬吸音部材本体22Bの厚さが10cmであるので、40cmとなる。
そこで、前記スピーカーより、録音した100Vエンジン式発電機音とホワイトノイズを発生させ、模擬吸音部材本体22Bの有無において前記騒音計で測定した。この場合の測定条件は表1に示すとおりである。
【0054】
【表1】

【0055】
上記の測定結果は表2に示すとおりである。
【0056】
【表2】

【0057】
上記の測定結果によれば、表2に示すように、本実施例の模擬吸音部材本体22B(表では本発明防音通気板と記載されている。)は、空気流通路Xにより通気できる状態でありながら、13.4〜17.3dB(A)騒音を減少(消音)することができたものである。
【0058】
また、上記測定結果において、各周波数における音量を図25に示す。
この図に示されたグラフから明らかなように、本実施例の模擬吸音部材本体22Bは特に高い周波数における防音効果が顕著に発揮されることが理解できる。
このことは、例えば、建設工事に使用される機器にあっては高い周波数領域の騒音が大きいことから、本実施例においては、特に建設工事において大きな防音効果を発揮し、各種の装置の過熱防止を含む安全性の確保を簡易になし得るものである。
【0059】
次に、板状形態の吸音部材本体22Bの別例を図16及び図18に示す。この実施例は、前述した実施例における筒状形態の吸音部材本体22Aを排除した構成であり、前述の基体部材20全体を吸音素材からなる吸音部材本体3から構成し、この吸音部材3からなる基体部材20を所定の厚さでかつ所定の大きさの矩形板状に形成し、その外周の四辺を枠体23により囲い全体として板状形態の吸音部材本体22Cを構成した態様である。
【0060】
この板状形態の吸音部材本体22Cの板状面には、縦、横方向の全面にわたって所定の間隔(図では等間隔の場合を示す。)で多数個の空気流通路X〜Xがその厚さ方向に直接押し抜き成形等の手段により貫設されている。
この各空気流通路X〜Xは、前述と同様に形成された空洞部5及び各空間部6〜6から構成されている。なお、その余の構成並びに板状形態の吸音部材本体22Cを構成する吸音部材3の材質(素材)、空洞部5及び各空間部6〜6の各構成は、前述した図1〜図4に示す実施例の構成と同様であるので、同一の部材構成については図中同符号を付してその説明を省略する。
また、枠体23は金属製が望ましく、取り扱いの簡便さ、加工性、耐久性等によりアルミニウム、鉄、ステンレス等から形成することが好ましい。なお、板状形態の吸音部材22Cを構成する吸音部材3は複数毎のシート状の素材を貼り合わせて構成してもよい。
したがって、本実施例においては、前述した実施例と同様の作用効果を享受するものである。
【0061】
さらに、板状形態の吸音部材本体22Cの別例を図33及び図34に示す。この実施例は、前述した図16に示す実施例の板状形態の吸音部材本体22Cにおける各空気流通路X〜Xの各空間部6〜6を微小空間となるスリット状6aとして形成した場合であって、その余の構成は、前述した図16に示す実施例の構成と同様であるので、同一の部材構成については図中同符号を付してその説明を省略する。
【0062】
したがって、本実施例においては、各空気流通路X〜Xにおける各空間部6〜6がスリット状6aとして微小空間となるが、前述したと同様に、各空気流通路X内において、空気流とともに騒音が吸音部材3の素材内(表面)の細かな空隙内に吸い込まれてラビリンスとなって減衰していくことと、該騒音が吸音部材3を振動させ、これが熱エネルギーに変換される音のエネルギーが減少されること等によりその消音効果を十分に発揮するものであり、前述した実施例と同様の作用効果を享受するものである。
なお、この各空間部6〜6におけるスリット状6aの態様は、前記した微小空間の他に、単に切り込みを入れた態様でも可能あり、この場合は、各空気流通路Xにおいてその空気の流通により、各吸音部材3が振動し易くなり、前記と同様に、熱エネルギーに変換される音のエネルギーが減少されること等によりその消音効果を十分に発揮するものである。
【0063】
上記した板状形態の吸音部材本体22B、22Cにおいては、図21及び図22に示すように、各空気流通路Xにおける各空洞部5に対し、該空洞部5より大径でかつ所定の幅の空気拡張空間部7〜7が所望の間隔で形成することができ、この場合にあっても、前述したように、空気流通路X内の空気流が各空気拡張空間部7〜7内で広がってさらに乱流を起こすことになり、この空気の乱流によって騒音を減衰(ラビリンス効果)し、さらなる吸音効果(防音効果)を増大することができる。
【0064】
また、図26の(a)(b)に示すように、筒状形態の吸音部材本体22Aには、その一方端面側(通気端面側)に対し、円筒キャンプ状のルーパー部材24を嵌合状態で装設することが可能である。すなわち、ルーパー部材24は耐久性、耐候性に優れた、例えば、アクリル等の合成樹脂製、アルミニウム、ステンレス、鉄等の金属製等から形成されていて、そのキャンプ状底面(図において側面)には空気流通路Xに連通する通風口24aが複数個貫設され、その通風口24a前面側にはフィン24bが斜状に突設されている。なお、ルーパー部材24は、筒状形態の吸音部材本体22Aの他方端部或いはその両端部においても装設可能である。
【0065】
したがって、このルーパー部材24を嵌合状態で装設された筒状形態の吸音部材本体22Aにあっては、ルーパー手段24により外気に臨んだ外筒部材2(吸音部材本体22A)の一方端部側から該吸音部材本体22A内に雨水等が入り込む、いわゆる流水状態を可及的に抑制して該吸音部材本体22Aの吸音効果等を確保し得るものである。すなわち、吸音部材本体22Aを構成する素材は水が流入するとその吸音効果が減少するとともに、重量が著しく増加してその形状保持が困難となる問題点があるが、この問題点を解消して該吸音部材本体22Aの吸音効果等を確保することができる。
なお、ルーパー手段24は、防腐処理等を施した木製等も使用可能であり、その円筒キャンプ状の外面或いは内面に対し、シリコーン系、フッ素系のオイル或いは樹脂等の撥水性塗料を塗布することが可能である。また、筒状形態の吸音部材本体22Aとルーパー部材24とはその嵌合部位に接着剤等で固定することも可能である。
【0066】
図27の(a)(b)及び図28に示すように、板状形態の吸音部材本体22B、22Cの一方側(通気側)の板状面に対し、板状のルーパー部材25を装設することが可能である。すなわち、ルーパー部材25は耐久性、耐候性に優れた、例えば、アクリル等の合成樹脂製、アルミニウム、ステンレス、鉄等の金属製等から所定の厚さに形成されていて、その板厚部にはフィン25bで区画されかつ各空気流通路Xに連通する通風口25aが斜状に複数個貫設されており、その余の構成は前記したルーパー部材24同様であるので、同一の部材構成については図中同符号を付してその説明を省略する。なお、ルーパー部材25は、板状形態の吸音部材本体22B、22Cの他方側或いはその両方側においても装設可能である。
したがって、このルーパー部材25が装設された板状形態の吸音部材本体22B、22Cにあっては、前記したルーパー手段24の場合と同様に、一方端部側から該吸音部材本体22B、22C内に雨水等が入り込む、いわゆる流水状態を可及的に抑制して該吸音部材本体22Aの吸音効果等を確保し得るものである。
このルーパー手段25においても、ルーパー手段24と同様に、防腐処理等を施した木製等も使用可能であり、その外面或いは内面に対し、シリコーン系、フッ素系のオイル或いは樹脂等の撥水性塗料を塗布することが可能である。また、板状形態の吸音部材本体22B、22Cとルーパー部材25とはその装着部位に接着剤等で固定することも可能である。
【0067】
さらに、図29の(a)(b)〜図31の(a)(b)に示すように、板状形態の吸音部材本体22B、22Cの一方側(通気側)の板状面に対し、板状の外装材26を装設することが可能である。この外装材26は耐久性、耐候性に優れた、例えば、合成樹脂製、アルミニウム、ステンレス、鉄等の金属製等から所定の厚さに形成されている。この場合は、所定の柔軟性を有する合成樹脂製、ゴム製が好ましく、その板厚部には各空気流通路Xに連通する通風窓27が該各空気流通路Xに対向して形成されている。
この通風窓27は、所望の切り込み部を設けて所定の風圧で変形されて該各空気流通路Xを開口するように開閉動作可能に構成されている。なお、この通風窓27を備えた外装材26は、板状形態の吸音部材本体22B、22Cの他方側或いはその両方側においても装設可能である。
したがって、この外装材26にあっては、所定の風圧で変形されて該各空気流通路Xを開口するように開閉動作する通風窓27によって、各空気流通路Xと外気との連通状態を制御し得る。(図31の(a)(b)参照)
これによって、該吸音部材本体22B、22C内に雨水等が入り込む、いわゆる流水状態を可及的に抑制して該吸音部材本体22Aの吸音効果等を確保し得るものである。
この外装材26においても、ルーパー手段24と同様に、防腐処理等を施した木製等も使用可能であり、その外面或いは内面に対し、シリコーン系、フッ素系のオイル或いは樹脂等の撥水性塗料を塗布することが可能である。また、板状形態の吸音部材本体22B、22Cと外装材26とはその装着部位に接着剤等で固定することも可能である。なお、通風窓27を別の材質で作成してこれを外装材26本体に装設する構成であってもよい。
【0068】
また、図32の(a)(b)に示すように、板状形態の吸音部材本体22B、22Cの一方側(通気側)の板状面に対し、メッシュ形態の外装材28を装設することが可能である。このメッシュ形態の外装材28は耐久性、耐候性に優れた例えば、合成樹脂製、ゴム製等からなり、所定の通気性を備えた構造に形成され、少なくとも一方面に撥水処理が施されている。なお、メッシュ形態の外装材28は、板状形態の吸音部材本体22B、22Cの他方側或いはその両方側においても装設可能である。
したがって、この外装材28にあっては、吸音部材本体22B、22Cにおける空気流通路Xと外気を空気のみの流通を許容するとともに、外気からの雨水の浸入を阻止することができる。これによって、該吸音部材本体22B、22C内に雨水等が入り込む、いわゆる流水状態を可及的に抑制して該吸音部材本体22Aの吸音効果等を確保し得るものである。
この外装材28においても、その撥水性塗料はシリコーン系、フッ素系のオイル或いは樹脂等等が好ましく、また、メッシュ形態の外装材27の成形素材に撥水性材料を混入してもよい。
【0069】
なお、前述した各実施例において、空気流通路Xの空間部6の形状にあっては、図示の形状に限定するものではなく種々の形状、例えば、空間部6の全体が空洞部5を中心とした菊花紋状等が採用されるものであり、さらに各構成部位にあっては、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本実施例における筒状主体部全体(筒状形態の吸音部材本体)を示す斜視図である。
【図2】図1のa−a線断面である。
【図3】筒状主体部1全体を取付け状態を示す縦断面図である。
【図4】外筒部材の別例を示す横断面図である。
【図5】吸音部材の別例を示す縦断面図である。
【図6】吸音部材のさらなる別例を示す縦断面図である。
【図7】図6のb−b線断面図である。
【図8】吸音部材及び空気拡張空間部の別例を示す縦断面図である。
【図9】吸音部材及び空気拡張空間部のさらなる別例を示す縦断面図である。
【図10】空洞部の別例を示す縦断面図である。
【図11】図10のc−c線断面図である。
【図12】外筒部材に被嵌部材を取付けた実施例を示す縦断面図である。
【図13】図12のd−d線断面図である。
【図14】外筒部材に被嵌部材を取付けた別例を示す縦断面図である。
【図15】板状形態の吸音部材本体の実施例を示す正面図である。
【図16】板状形態の吸音部材本体の別実施例を示す正面図である。
【図17】図15のe−e線断面図である。
【図18】図16のf−f線断面図である。
【図19】板状形態の吸音部材本体の使用状態を示す正断面図である。
【図20】基体部材と筒状形態の吸音部材本体との固定状態を説明する斜視図である。
【図21】板状形態の吸音部材本体における空気拡張空間部を示す縦断面図である。
【図22】板状形態の吸音部材本体における空気拡張空間部の別例を示す縦断面図である。
【図23】模擬吸音部材本体を示す正面図である。
【図24】図23の縦断面図である。
【図25】測定結果に基づく各周波数における音量の関係を示すグラフである。
【図26】筒状形態の吸音部材本体にルーパー手段を設けた状態を示し、(a)は正面図、(b)は側断面図である。
【図27】板状形態の吸音部材本体にルーパー手段を設けた状態を示し、(a)は正面図、(b)は側断面図である。
【図28】別例として示す板状形態の吸音部材本体にルーパー手段を設けた状態の側断面図である。
【図29】板状形態の吸音部材本体に外装材を設けた状態を示し、(a)は正面図、(b)は側断面図である。
【図30】別例として示す板状形態の吸音部材本体に外装材を設けた状態の側断面図である。
【図31】外装材の通風窓の動作状態を示し、(a)は空気流通路と外気とを遮断した状態の断面図、(b)は空気流通路と外気とを連通した状態の断面図である。
【図32】別の外装材を示し、(a)は正面図、(b)は縦断面図である。
【図33】板状形態の吸音部材本体における別の実施例を示す正面図である。
【図34】図33の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0071】
3 吸音部材
5 空洞部
6 空間部
22A 筒状形態の吸音部材本体
22B,C 板状形態の吸音部材本体
X 空気流通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間における消音通気構造であって、
吸音材からなる吸音部材を主体とし、該吸音部材は、前記防音空間に連通される空洞部と該空洞部の内周面から直交方向の外方に向けて延在する複数個のスリット状の空間部とからなる空気流通路を備えてなることを特徴とする消音通気構造。
【請求項2】
騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間における消音通気構造であって、
吸音材からなる吸音部材を主体とし、該吸音部材を、その外周が外筒部材により覆われた所定長さの筒状形態に形成するとともに、その中心軸心方向には、前記防音空間に連通される空洞部と該空洞部の内周面から直交方向の外方に向けて延在する複数個のスリット状の空間部とからなる空気流通路を備えてなることを特徴とする消音通気構造。
【請求項3】
騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間における消音通気構造であって、
吸音材からなる吸音部材を主体とし、該吸音部材を、所定の厚さを有する板状形態に形成するとともに、その厚さ方向には、前記防音空間に連通される空洞部と該空洞部の内周面から直交方向の外方に向けて延在する複数個のスリット状の空間部とからなる空気流通路を貫設し、該空気流通路を板状面に対して所定の間隔をおいて多数個形成してなるを特徴とする消音通気構造。
【請求項4】
騒音の発生源を防音構造で遮蔽した防音空間における消音通気構造であって、
基体部材を所定の厚さを有する板状形態に形成するとともに、この基体部材の板状面には、その厚さ方向に所定の間隔をおいて多数個の装着孔を貫設し、該各装着孔内には外周が外筒部材により覆われかつ所定長さの筒状形態に形成された吸音材からなる吸音部材を挿通固定し、この吸音部材の中心軸心方向には、前記防音空間に連通される空洞部と該空洞部の内周面から直交方向の外方に向けて延在する複数個のスリット状の空間部とからなる空気流通路を備えてなることを特徴とする消音通気構造。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか1の請求項に記載の消音通気構造であって、
前記空気流通路における空間部が、その先端から前記空洞部の内周面に至るにしたがって暫時広くなる形状、または該空洞部の内周面から先端に至るにしたがって暫時広くなる形状に形成するとともに、該空洞部位を中心とする放射方向に所望の間隔で形成したことを特徴とする消音通気構造。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか1の請求項に記載の消音通気構造であって、
前記空気流通路における空洞部は、その軸方向において前記空洞部に連通されかつ該空洞部より大径の空気拡張空間部が所望の間隔で多数個形成されていることを特徴とする消音通気構造。
【請求項7】
請求項2に記載の消音通気構造であって、前記外筒部材の少なくとも一方端部おいて、該外筒部材の端面から外周にわたり所望の空間部を隔てて有底筒状の被嵌部材が嵌挿され、該被嵌部材は、前記外筒部材の開口端面に対向する底面に吸音部材が配設されていることを特徴とする消音通気構造。
【請求項8】
請求項2、4、7のうちのいずれか1の請求項に記載の消音通気構造であって、
前記外筒部材を屈曲自在な柔軟性を有する素材から形成してなるを特徴とする消音通気構造。
【請求項9】
請求項2、4、8のうちのいずれか1の請求項に記載の消音通気構造であって、
前記外筒部材の少なくとも一方端部側には前記空気流通路に連通する通風口を有するルーパー手段を装設したことを特徴とする消音通気構造。
【請求項10】
請求項3または4に記載の消音通気構造であって、
前記板状形態の吸音部材または基体部材の少なくとも一方側の板状面全面には前記空気流通路に連通する通風口を有するルーパー手段を装設したことを特徴とする消音通気構造。
【請求項11】
請求項3または4に記載の消音通気構造であって、
前記板状形態の吸音部材または基体部材の少なくとも一方側の板状面全面には外装部材を装設し、この外装部材には、風圧で開閉動されて前記空気流通路と外気とを連通可能とする通風窓を備えてなるを特徴とする消音通気構造。
【請求項12】
請求項3または4に記載の消音通気構造であって、
前記板状形態の吸音部材または基体部材の少なくとも一方側の板状面全面には撥水加工を施したメッシュ状の外装部材を装設し、前記吸音部材の空気流通路と外気を連通可能に構成したことを特徴とする消音通気構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2008−139816(P2008−139816A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115392(P2007−115392)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(390017628)大有建設株式会社 (10)
【Fターム(参考)】