説明

液だれ防止充填ノズル

【課題】液だれを効果的に防止し得る液体充填装置の充填ノズルを提供することにある。
【解決手段】内部が充填液の通路となる筒状のホルダ10と、ホルダ10の先端部13内周に配置され充填停止時に多数の孔に液体を保持して液だれを防止する先端スクリーン20と、を備え、ホルダ10内周には前記先端スクリーン20が係合するスクリーン係合部11が設けられた液だれ防止充填ノズルにおいて、前記先端スクリーン20は、前記スクリーン係合部11に係合する係合端部21と、該係合端部の内側に位置し充填液が透過するスクリーン本体部23と、を備え、スクリーン本体部23は、周辺部よりも中央部が下方に突出する形状となっていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば飲料用液体を容器に充填する液体充填装置に用いられる充填ノズルに関し、特に液だれ防止用のスクリーンを備えた液だれ防止充填ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の液だれ防止充填ノズルとしては、たとえば、特許文献1,特許文献2,特許文献3に記載されるようなものが知られている。
【0003】
すなわち、充填ノズルには、図5に示すように、整流効果を高め、液だれを防止するためのメッシュ構造のスクリーン101(50〜80メッシュ程度)がホルダ103内に数枚組み込まれ、各スクリーン101の多数の目を通過させて充填液の圧力勾配を小さくして整流し、充填ノズル100の直下に配置されるボトル200の開口部201に充填液102を注出するようになっている(図5(A)参照)。充填が完了すると、充填ノズル100の先端部に位置する先端スクリーン101Aの外面側(容器側)に付着した残留液体は表面張力によって先端スクリーン101Aの目に保持され、液だれの発生を防止するようになっていた。
【0004】
しかしながら、従来の充填ノズルの場合には、充填完了時に先端スクリーン101Aに充填液が保持されるものの、先端スクリーン101Aより下方に位置するホルダ先端部内周面103bが露出しているので、残留液体が先端スクリーン101Aの下面からホルダ先端部内周面103bにかけて付着し、接液面積が拡がっている(図5(B)参照)。
【0005】
充填スピードが低速の場合には、液滴は下方に位置するボトル200の開口部201の範囲に落下するので問題ないが、600BPM以上の高回転になると、図5(C)に示すように、ホルダ先端部内周面103bに付着している自由状態の液滴105が、遠心力によってホルダ先端部内周面103bの一方側に片寄って振り切られるように落下し、ボトル200の開口部201よりも外側に飛散する。
アプセティック充填においては、充填後に加熱殺菌する工程が無いので、特にボトル口部汚れやボトル外への液こぼれを嫌っており、この対策が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公平7−28155号公報
【特許文献2】特開2001−2025号公報
【特許文献3】特開平9−99914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記した従来技術の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、液だれを効果的に防止し得る液体充填装置の充填ノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、内部が充填液の通路となる筒状のホルダと、該ホルダの先端部内周に配置され充填停止時に多数の孔に液体を保持して液だれを防止する先端スクリーンと、を備え、ホルダ内周には前記先端スクリーンが係合するスクリーン係合部が設けられた液だれ防止充填ノズルにおいて、
前記先端スクリーンは、前記スクリーン係合部に係合する係合端部と、該係合端部の内側に位置し充填液が透過するスクリーン本体部と、を備え、該スクリーン本体部は、周辺部よりも中央部が下方に突出する形状となっていることを特徴とする。
スクリーン本体部の中央部は、ホルダ先端面とほぼ同じか下方に突出していることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、内部が充填液の通路となる筒状のホルダと、該ホルダの先端部内周に配置され充填停止時に多数の孔に液体を保持して液だれを防止する先端スクリーンと、を備え、ホルダ内周には前記先端スクリーンが係合するスクリーン係合部が設けられた液だれ防止充填ノズルにおいて、
前記先端スクリーンは、前記スクリーン係合部に係合する係合端部と、該係合端部から下方に延びてホルダ先端部内周面に嵌合する環状の側壁部と、該側壁部の下端を覆い充填液が透過するスクリーン本体部と、を備え、
ホルダ先端部内周面を下方に向かって徐々に小径となる円弧形状とし、環状壁外周をホルダ先端部内周面に対応する円弧形状となっている。
【発明の効果】
【0010】
本請求項1に係る発明は、先端スクリーンを、ホルダ内周のスクリーン係合部に係合する係合端部と、この係合端部の内側に位置し充填液が透過するスクリーン本体部と、を備え、スクリーン本体部を周辺部よりも中央部が下方に突出する形状としたので、充填停止時に液滴が重力によりスクリーン本体部中央に集まり、ホルダ先端部内周面側に付着する液滴をスクリーン本体部側に引き寄せるので、ホルダ先端部内周面側の液滴が少量となり、液表面張力によって液滴が保持されて滴下を防止することができる。
請求項2に係る発明によれば、スクリーン本体部の中央がホルダ先端面とほぼ同じか下方に突出する構成としたので、残留液が付着するホルダ先端部内周面の接液面積を可及的に小さくできる。
【0011】
本請求項3に係る発明は、先端スクリーンを、ホルダ内周のスクリーン係合部に係合する係合端部と、係合端部から下方に延びてホルダ先端部内周面に嵌合する環状の側壁部と、側壁部の下端を覆い充填液が透過するスクリーン本体部と、を備えた構成となっているので、ホルダ先端部内周面の接液面積が小さくなると共に、残留液体は先端スクリーンだけでなく側壁部とホルダ先端部内周面との嵌合隙間に表面張力によって補足され、液だれが防止される。
特に、ホルダ先端部内周面を下方に向かって徐々に小径となる円弧形状とし、側壁部外周をホルダ先端部内周面に対応する円弧形状としたので、側壁部とホルダ先端部内周面間を密着させることができ、隙間からの液滴の落下をより確実に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1(A)は本発明の液だれ防止充填ノズルの縦断面図、同図(B)は同図(A)の先端スクリーンの斜視図、同図(C)は先端スクリーンのメッシュの構成を示す拡大模式図である。
【図2】図2(A),(B)は図1の充填ノズルの他の構成例を示す要部断面図である。
【図3】図3(A)は図1の充填ノズルの整流板の斜視図、同図(B)は図1の中間スクリーンの斜視図である。
【図4】図4(A),(B)は本発明の他の実施の形態に係る充填ノズルの要部断面図である。
【図5】図5(A)乃至(C)は従来の充填ノズルによる充填工程を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る液だれ防止充填ノズルを示している。
すなわち、この液だれ防止充填ノズル1は、不図示の液体充填装置先端に設けられた保持筒2内に移動自在に装着されるもので、内部が充填液の通路となる筒状のホルダ10と、このホルダ10の先端部13内周に配置され充填停止時に多数の孔に液体を保持して液だれを防止する先端スクリーン20と、を備え、ホルダ10内周には先端スクリーン20が係合するスクリーン係合部11が設けられている。
【0014】
ホルダ10は円筒形状で、その外周中途部には保持筒2内周に摺動自在に嵌合する環状凸部12が設けられている。ホルダ10の先端部内周面13aは、上流側のホルダ本体内周面10aよりも一段小径に絞られており、先端部内周面13aとホルダ本体内周面10aとの境界の段差がスクリーン係合部11となっている。
【0015】
ホルダ本体内周面10aには、先端スクリーン20の上流側に5枚の中間スクリーン30と、一つの整流板40が直列に配置されている。整流板40は下流側3枚の中間スクリーン30と上流側2枚の中間スクリーン30の間に挟まれている。各中間スクリーン30間および中間スクリーン30と整流板40との間には、リング状のカラー50が介装され、所定間隔に保持されている。カラー50の半径方向の幅は、スクリーン係合部11の段差の幅とほぼ等しくなっている。
【0016】
また、最上流に位置する中間スクリーン30は長尺の押さえカラー51によって下方に押さえられ、押さえカラー51の上端がホルダ10の上端開口部にはめ込まれる押さえリング52によって固定されている。
中間スクリーン30および整流板40の枚数および間隔は、充填液の種類,粘度,流速,圧力等に応じて適宜選択される。図2(A)に示すように、整流板40を設けないで、中間スクリーン30としてもよい。場合によっては、中間スクリーン30は設けないで先端スクリーン20のみでもよい。
【0017】
先端スクリーン20は、図1(C)に示すように、多数の縦線20aと横線20bを交差させたメッシュ部材を断面ハット形状で成形したもので、縦線20aと横線20bの間に開口する多数の孔としての目20cに液体を保持するようになっている。
この先端スクリーン20は、上記したホルダ先端部13内周のスクリーン係合部11に係合する係合端部21と、係合端部21から下方に延びる環状の側壁部22と、この側壁部21の下端を覆い充填液が透過するスクリーン本体部23と、を備えた構成となっている。
【0018】
ホルダ先端部内周面13aは、下方に向かって徐々に小径となる円弧形状となっており、先端スクリーン20の側壁部21外周面もホルダ先端部内周面13aに対応する円弧形状となっている。
スクリーン本体部23は、周辺部よりも中央部が下方に突出する凸形状となっている。この例ではドーム形状に成形されている。スクリーン本体部23の周縁はホルダ先端面13bとほぼ同じ位置となっており、ドーム状に突出している分だけ、スクリーン本体部23はホルダ先端面13bより下方に突出している。
スクリーン本体部23の形状としてはドーム形状に限定されるものではなく、円錐形状としてもよく、要するに周辺部よりも中央部が下方に突出する形状であればよい。
【0019】
中間スクリーン30は、図3(B)に示すような円板形状で、先端スクリーン20と同様に、多数本の縦線と横線を交差させたメッシュ部材によって構成されている。
先端スクリーン20および中間スクリーン30に用いられるメッシュ材は、充填液の種
類,粘度、中間スクリーンの枚数、整流板の有無等によって適宜選択される。実験によれば、中間スクリーン30には#60程度のメッシュ材を用い、先端スクリーン20には#40程度のメッシュ材を用いたところ良好な結果を得た。
整流板40は、図3(A)に示すように、液体の流れを整流する所定長さの複数の流路41を備えた厚肉の円板形状で、流路41は円形の貫通穴によって構成されている。
【0020】
上記構成の液だれ防止充填ノズルにあっては、中間スクリーン30および整流板40の流路41によって効果的に整流され、不図示の容器の開口部に向けて注出される。
充填完了後、充填ノズル1の先端部に位置する先端スクリーン20のスクリーン本体部23の下面からホルダ先端部にかけて残留液体が付着するが、図5のようなホルダ先端部内周面103bの接液部がないので、残留液体は表面張力によってスクリーン本体部23の目に保持され、充填液の液滴下は生じない。
ホルダ先端部内周面13aに先端スクリーン20の側壁部22が嵌合しているので、液滴はスクリーン本体部23だけでなく、ホルダ先端部内周面13aと側壁部22との嵌合隙間に表面張力によって補足され、液だれ防止効果が高くなっている。
特に、ホルダ先端部内周面13aが下方に向かって徐々に小径となる円弧形状で、側壁部22外周面がホルダ先端部内周面13aに対応する円弧形状となっているので、側壁部22とホルダ先端部内周面13a間が軸方向に密着し、嵌合隙間からの液滴の落下をより効果的に阻止することができる。
【0021】
さらに、スクリーン本体部23は、周辺部よりも中央部が下方に突出する凸形状となっているので、ホルダ先端部内周面13a側の液滴がスクリーン本体部23側に引き寄せられるので、ホルダ先端部内周面13a側に付着する液滴が少量となり、液滴の滴下をより確実に防止することができる。また、残留液体はドーム状スクリーンの中央に集まり、万一滴下してもドーム中央から滴下するため、ボトル口部に付着することがない。
【0022】
他の実施の形態
次に本発明の他の実施の形態について説明する。以下の説明では、上記実施の形態と異なる点についてのみ説明するものとし、同一の構成部分については同一の符号を付して説明を省略する。
図2(B)は、ホルダ先端部内周面13aを、下方に向かって徐々に小径となるテーパー形状とし、側壁部22外周面をホルダ先端部内周面13aに対応するテーパー形状としたものである。このようにテーパ形状とすれば円弧形状に比べて成形が容易となる。
【0023】
図4(A)は、スクリーン本体部23を平坦面としたものである。
側壁部22外周面とホルダの先端部内周面13aとが嵌合する構成であれ、側壁部22の外周面と先端部内周面13aとの嵌合隙間に液滴が補足され、液だれ防止効果が得られる。
【0024】
図4(B)は、先端スクリーン20に側壁部を設けず、スクリーン係合部11に係合する係合端部21と、係合端部21の内側に位置し充填液が透過するスクリーン本体部23と、を備えた構成で、スクリーン本体部23を周辺部よりも中央部が下方に突出する形状としたものである。スクリーン本体部23は、ドーム形状でも、円錐形状でもよい。
このようにスクリーン本体部23が下方に突出する構成であれば、充填停止時に液滴がスクリーン本体部23中央に集まり、表面張力によってホルダ先端部内周面13aに付着する液滴がスクリーン本体部23側に引き寄せられる力が大きくなるので、ホルダ先端部内周面13aに付着する液滴が少なくなり、液だれを防止することができる。
なお、付着する液量を少なくするため、ホルダ先端部内周面13aの面積はできるだけ小さくすることが好ましく、図4(B)の例では、結果的にスクリーン本体部23の中央が、ホルダ先端面13bとほぼ同じか下方に突出するようになっている。
【0025】
なお、上記各実施の形態では、先端スクリーン20全体を一枚のメッシュ部材で成形しているが、側壁部22とスクリーン本体部23のみをメッシュ部材とし、係合端部21はカラー50と同等のリング部材によって構成し、側壁部22とリング部材を溶接等で接合した構成でもよいし、カラー50と一体成形してカラー50を係合端部としてもよい。また、スクリーン本体部23のみをメッシュ部材とし、係合端部21と側壁部22を不図示のつば付き円筒形状のリング部材によって構成し、スクリーン本体部23をリング部材に溶接するような構成としてもよい。
また、先端スクリーンにメッシュ部材を用いずに、薄板に多数の微細孔を設けた多孔板を用いてもよい。要するに、表面張力によって多数の孔に液体を保持する構成であればよい。
【符号の説明】
【0026】
1 液だれ防止充填ノズル
2 保持筒
10 ホルダ
10a ホルダ本体内周面
11 スクリーン係合部
12 環状凸部
13 先端部
13a 先端部内周面
13b ホルダ先端面
20 先端スクリーン
21 係合端部
22 側壁部
23 スクリーン本体部
30 中間スクリーン
40 整流板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が充填液の通路となる筒状のホルダと、該ホルダの先端部内周に配置され充填停止時に多数の孔に液体を保持して液だれを防止する先端スクリーンと、を備え、ホルダ内周には前記先端スクリーンが係合するスクリーン係合部が設けられた液だれ防止充填ノズルにおいて、
前記先端スクリーンは、前記スクリーン係合部に係合する係合端部と、該係合端部の内側に位置し充填液が透過するスクリーン本体部と、を備え、
該スクリーン本体部は、周辺部よりも中央部が下方に突出する形状となっていることを特徴とする液だれ防止充填ノズル。
【請求項2】
スクリーン本体部の中央部は、ホルダ先端面とほぼ同じか下方に突出している請求項1に記載の液だれ防止充填ノズル。
【請求項3】
内部が充填液の通路となる筒状のホルダと、該ホルダの先端部内周に配置され充填停止時に多数の孔に液体を保持して液だれを防止する先端スクリーンと、を備え、ホルダ内周には前記先端スクリーンが係合するスクリーン係合部が設けられた液だれ防止充填ノズルにおいて、
前記先端スクリーンは、前記スクリーン係合部に係合する係合端部と、該係合端部から下方に延びてホルダ先端部内周面に嵌合する環状の側壁部と、該側壁部の下端を覆い充填液が透過するスクリーン本体部と、を備えた構成で、
前記ホルダ先端部内周面を、下方に向かって徐々に小径となる円弧形状とし、前記環状の側壁部外周をホルダ先端部内周面に対応する円弧形状としたことを特徴とする液だれ防止充填ノズル。
【請求項4】
スクリーン本体部は、平坦形状となっている請求項3に記載の液だれ防止充填ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−42870(P2010−42870A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268129(P2009−268129)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【分割の表示】特願2002−348135(P2002−348135)の分割
【原出願日】平成14年11月29日(2002.11.29)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】