説明

液体として被覆される水蒸気透過性の膜

本発明の例示的な膜、液体組成物、および方法においては、建築物の表面に水蒸気透過性をもった空気障壁をつくるために、疎水性のアクリル重合体および少なくとも1種の水溶性の重合体(例えばPVOH)を使用している。従来の空気障壁材とは異なり、本発明によれば良好な亀裂架橋性および非吸水性をもった膜が提供される。

【発明の詳細な説明】
【研究分野】
【0001】
本発明は防水性をもった水蒸気透過性の膜に関し、特に疎水性のアクリル重合体相、および水蒸気を通過させる通路として動作する連続した水溶性の重合体相を有する、液体として被覆される組成物からつくられた膜に関する。
【背景技術】
【0002】
液体の被覆用組成物を用い、水蒸気透過性をもち空気に対しては障壁性をもった膜を建築構造物の表面上につくることは公知である。このような組成物はHenry CompanyからAIR−BLOC 31の商品名で入手することができる。この組成物は噴霧によって被覆でき、硬化させて空気を遮断し、また空気の漏れを防止し、ASTM E−96(2002年7月15日付けのHenry Technical Data Sheet)により12.3perms(即ち704ng/Pa.m.s)に達すると言われる水蒸気透過性が得られる膜をつくることができる。
【0003】
この組成物によりつくられた膜は微小多孔性の構造をもつと考えられている。微小多孔性は、臨界的な「顔料容積濃度(pigment volume concentration(PVC)」を越えるレベルまで充填剤またはかたい粒状物を充填することによって達成される。この臨界点を越えると、充填剤の量は重合体マトリックスの連続性を破壊し、水蒸気を透過し得る通路が生じる。
【0004】
Henryの組成物は約15部の炭酸カルシウム(典型的な充填剤)、35部の炭化水素ワックス(ここではフィルムをつくらないから充填剤として作用すると考えられる)、および50部の酢酸ビニル−アクリレート共重合体を含んで成り、臨界顔料容積濃度(PVC)を越えていると考えられている。
【0005】
PVCの値は充填剤の容積(フィルムをつくらない材料を含む)に100を乗じ、この積を固体の全容積で割ることにより決定される。PVCは次のようにして計算される:PVC=100×((ワックスの重量%/ワックスの密度)+(充填剤の重量%/充填剤の密度))/((ワックスの重量%/ワックスの密度)+(充填剤の重量%/充填剤の密度))+(重合体の重量%/重合体の密度))=(35+(15/2.6))×100/(35+(15/2.6)+50)=45%。この数字はPVCの臨界値を越えていると考えられる。この組成物からつくられた膜は、水蒸気を透過し液体の水を透過しないが、本出願人には、伸びが小さく、亀裂架橋性(crack−bridging property)が悪いように思われる。さらにこの膜は大量の水を吸収する。
【0006】
上記の欠点の観点からすれば、本発明は、液体として被覆される新規の水蒸気障壁性組成物およびその製造法が必要とされることに対応するものと考えられる。
【本発明の開示】
【0007】
本発明の概要
従来法の欠点を克服するために、本発明においては、水蒸気に対し透過性をもつが、空気および液体の水に対しては障壁性をもち、水の凝縮、並びに建築構造物の中における以後の成形型の膨張を最低限度に抑制する膜が提供される。
【0008】
空気および水に対する不透過性および水蒸気に対する透過性をもっていることに加えて、また本発明の膜は水蒸気吸収性が低く、伸びが大きく、さらに温度および湿度のサイクリング(周期的な増減)に伴い膨張および収縮し得る板の継ぎ目および亀裂に対し架橋を行うのに十分なボディーの厚さ(湿った被膜の厚さ)をもっている。この膜は噴霧によって被覆することができる。乾燥させた場合、この膜は基質の表面に十分に接着する。
【0009】
微小多孔性を生じるがマトリックスの構造を弱める可能性がある臨界顔料容積濃度(PVC)を越えて充填された無機充填剤を使用する代わりに、本発明の組成物は液体の水に対する不透過性を与えるために疎水性のアクリル重合体相を含み、水蒸気に対する透過性を与えるために連続的な水溶性の重合体相を含んで成っている。随時、臨界PVCを越えないレベルにおいて充填剤を混入することができる。
【0010】
このように、建築物の表面において水蒸気を透過するが空気に対しては障壁性をもつ本発明の例示的な液体組成物は、式−(CH−CHCOOR)−で表される反復基をもった少なくとも1種の疎水性アクリル重合体を含んで成り、ここでRはC〜Cアルキル基であり、該少なくとも1種のアクリル重合体は−55〜0℃のガラス転移温度をもち、乾燥固体分の全重量に関して50〜97重量%の量で存在している。
【0011】
上記のように、例示的な液体組成物はさらに、炭酸カルシウム、タルク、粘土、シリカ、および二酸化チタンから成る群から選ばれる無機充填剤を全固体分に関して0〜50重量%の量で含んで成っていることができる。PVCは、充填剤および他のかたいフィルム生成成分の容積に100を乗じ、これを固体分の全容積で割ることにより計算して0〜25%である。好ましくは充填剤の量はPVCを越えるのに必要な量よりも少ない量でなければならない.換言すれば、得られる膜は微小多孔性をもたない。
【0012】
さらにこの液体組成物は全重量の30〜50重量%の量の水を含み、また固体分の乾燥重量に関し3〜17重量%の量で存在する少なくとも1種の水溶性の重合体を含んで成っている。この水溶性の重合体は水中で該水溶性重合体を4重量%含む場合2〜50センチポズの溶液粘度をもっていなければならない。好ましくは水溶性の重合体は数平均分子量が5,000〜50,000のポリビニルアルコール;数平均分子量が5,000〜200,000のポリエチレンオキシド;および数平均分子量が3,000〜20,000のセルロースのメチルエーテルまたはエチルエーテルから成る群から選ばれる。
【0013】
基質の表面の上に組成物を噴霧してつくられた本発明の例示的な膜は、好ましくは乾燥状態の厚さが20〜60ミルであり、水蒸気の透過率が1〜20perms、さらに好ましくは2〜10permsである。このような厚さにおいて、本発明の被覆組成物からつくられた被膜は高い伸びを示し、これによって優れた亀裂架橋能力が与えられる。
【0014】
本発明によれば、石膏ボード、セメント、石積み加工材(masonry)、またはコンクリートからつくられた構造物、或いは木材からつくられた構造物を被覆する方法が提供される。また本発明はこのような基質表面を上記の被覆組成物で被覆することによってつくられた複合体構造物に関する。
【0015】
本発明のさらに他の利点および特徴は下記の説明に詳細に記載されている。
【0016】
本発明のこれ以上の良好な理解を容易にするために、添付図面と組み合わせて下記に例示的な具体化例の詳細な説明を行う。
【0017】
例示的な具体化例の詳細な説明
本発明の水蒸気を透過するが空気に対しては障壁性をもつ膜は、好ましくは陰イオン性または非イオン性のアクリル乳化物、少なくとも1種の水溶性の重合体、および随時炭酸カルシウム、タルク、砂、または他の粒子状(且つ好ましくは無機性の)材料のような充填剤、またはこれらの随時使用される充填剤の組み合わせを含んで成る液体組成物を、基
質の表面に注型することによってつくられる。
【0018】
他の随時使用される成分には、着色剤(膜に色を賦与するための通常の意味での「顔料」)、レオロジー変性剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、発泡防止剤、および殺生物剤が含まれる。
【0019】
本発明の例示的な液体組成物の成分の量は、特記しない限り全固体分に関する乾燥重量の百分率で表される。
【0020】
本発明に使用するのに適した例示的な液体組成物は、式−(CH−CHCOOR)−で表される反復基をもった少なくとも1種の疎水性アクリル重合体を含んで成り、ここでRはC〜Cアルキル基であり、該少なくとも1種のアクリル重合体は−55〜0℃のガラス転移温度をもち、乾燥固体分の全重量に関して50〜97重量%の量で存在している。この重合体は他の単量体を含むこともでき、これらの単量体にはこれだけには限定されないがスチレン、酢酸ビニル、および塩化ビニルが含まれる。
【0021】
本発明に使用するのに適した液体組成物の一例は、アクリル酸ブチルおよびスチレンを含んで成る乳化物を含んでいる。アクリル酸ブチル/スチレンの好適なモル比は1.5よりも大きい。
【0022】
好ましくはRはエチル、プロピル、ブチル、オクチルまたはエチルヘキシルを表す。さらに好ましくは疎水性のアクリル重合体はアクリル酸ブチルの重合体である。他の例示的な組成物はさらにメタ(アクリル)重合体を含んでいる。アクリル重合体のレベルは組成物中の全固体分に関し好ましくは50〜97%、さらに好ましくは60〜90%である。
【0023】
例示的な液体組成物はさらに少なくとも1種の水溶性の重合体を含んで成っている。水溶性の重合体は液体組成物の中に全乾燥固体分の重量に関し3〜17重量%の量で存在していなければならない。また水溶性の重合体は水中に該水溶性の重合体を4重量%含む場合約2〜50センチポイズ(cps)の溶液粘度をもっていなければならない。
【0024】
好適な水溶性の重合体は、数平均分子量が5,000〜50,000のポリビニルアルコール;数平均分子量が5,000〜200,000のポリエチレンオキシド;および数平均分子量が3,000〜20,000のセルロースのメチルエーテルまたはエチルエーテルから成る群から選ばれる。メチルセルロースのエーテルはDow ChemicalからMETHOCEL Aの商品名で入手でき、27.5〜31.5%のメトキシル基を含むか、或いはメトキシル基の置換度が1.64〜1.92であると考えられている。他の水溶性の重合体にはヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ビニルメチルエーテルを含んで成る重合体、加水分解したマレイン酸無水物を含む重合体および共重合体、およびビニルエーテル、スチレン、エチレン、および他のオレフィンの共重合体、ポリビニルピロリドン、スルフォン化されたポリスチレン、ポリスルフェニルアクリレート、ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリアクリルアミド、ポリ(アクリル酸)およびそのアルカリ金属塩、天然のまたは合成的に変性されたポリサッカリド、蛋白質、アルギネート、キサンタンガム、およびグアーガムが含まれる。
【0025】
冷水に可溶な、および熱水に可溶な両方のポリビニルアルコールを使用することができる。冷水に可溶な種類は加水分解度が80〜90%である。熱水に可溶な種類は加水分解度が90〜100%である。
【0026】
しかし前述のようにポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシドおよびメチルセルロースが最も好適な水溶性の重合体である。これらの重合体の低分子量の種類を使用すると、これらの液体組成物の粘度が該液体組成物を容易に噴霧できるほど十分に低くなり、水溶性の重合体の重量比を水蒸気透過性が得られるほど十分に高くすることができる。
【0027】
本発明の例示的な液体組成物は、随時さらに炭酸カルシウム、タルク、粘土、シリカ、および二酸化チタンから成る群から選ばれる無機性の充填剤を含んで成っており、少なくとも1種の充填剤が組成物中の全固体分に関し0〜50重量%の量で存在している。顔料容積濃度は0〜25%であることができる。PVC=100×充填剤(および他の非フィルム生成成分)の容積%/すべての固体成分(アクリルおよび水溶性重合体はフィルム生成成分である)(上記に記載したここで引用されている式を用いて計算する場合)であり、これは臨界顔料容積濃度よりも小さくなければならない(これよりも大きいと、液体組成物により得られる乾燥フィルムは微小多孔性をもつようになるであろう)。好ましくは、フィルム材料は平均の粒子の大きさが0.1μm以上で50μm以下である。
【0028】
さらに好ましくは、充填剤のレベルは組成物の全固体分に関して2〜40%であり、もっと好ましくは5〜30%である。
【0029】
この組成物は噴霧被覆、刷毛塗り、鏝塗り、またはその他の方法で目的の基質に被覆することができる。基質にはセメント性の表面(例えばセメント、モルタル、石積み加工材、コンクリート、ショットクリート(吹き付けコンクリート)、石膏)、並びに石膏ボード、および例えば木材または合板のような人または動物が住む建物および囲い込み構造物を建造することができる他の多孔性の構造物が含まれる。
【0030】
従って本発明は、基質の表面に上記組成物を被覆する段階を含んで成る基質を防水する方法、並びに該組成物および上記の方法によって処理された複合体(例えば建築用のパネル、壁、基礎材の表面、デッキの表面、屋根の表面)に関する。
【0031】
好ましくは、基質の表面に組成物を被覆することによってつくられる膜は乾燥した平均の厚さが10〜100ミル、さらに好ましくは20〜80ミル、最も好ましくは40〜60ミルである。
【0032】
またこの組成物でつくられる例示的な膜は、ASTM E=96による水蒸気透過度が2perms以上で20perms以下であり;伸びが200%以上、1000%以下であり;水中に1日(24時間)浸漬した後の水吸収値が50%より少なく;顔料容積濃度(PVC)が0〜25%であることが好ましい。
【0033】
本発明の例示的な組成物においては、連続した水溶性の重合体相の重量割合は液体組成物の全重量に関し、3〜17%、さらに好ましくは5〜10%でなければならない。水溶性重合体のレベルはアクリル乳化物中の保護コロイド(乳化物が乳化物の製造業者によって供給される場合)として使用できる任意の水溶性の重合体を加えた値である。
【0034】
図1に示されているように、二相から成る組成物をつくる機構は次のとおりである。水溶性の重合体を予め製造された陰イオン性または非イオン性のアクリル乳化物に溶解する。この液体組成物を基質の上に注型し、水を蒸発させる。大部分の水が蒸発した後、二相組成物が生じる。水が蒸発するにつれて水溶性の重合体(例えば溶液中に溶解したPVOH)が溶液から沈澱し、これは得られる膜の被膜の内部に連続した相をつくるであろう)。
【0035】
このように、液体状で組成物の被覆することによってつくられる膜の水蒸気の透過性は、水溶性の重合体相によってつくられる親水性の通路に由来し、微小多孔性によるものではない。顔料容積濃度(PVC)は充填剤(フィルムを生成しない無機性の非揮発性材料)の容積に100を乗じ、これを固体分の全容積で割ることにより決定されるから、PVCの値が高い場合、フィルム生成材料(例えばアクリル重合体)の量は非フィルム生成成分全体を濡らす目的には不十分な量であり、微小多孔性が生じるであろう。CPVC(臨界顔料容積濃度)は、非多孔性から微小多孔性へと転移が起こる際の充填剤材料の固体分濃度である。
【0036】
本発明の組成物は微小多孔性ではなく、低いPVCを示す。PVCは好ましくは25%以下である。本発明の組成物のPVCは16%以下であることが好ましい。
【0037】
本発明の組成物では、伸びが大きいこととフィルムの厚さの性能が高いこととが組み合わされて良好な亀裂架橋特性が得られる。図2に図示されているように、コンクリートまたは石膏ボードの壁のような基質表面30の亀裂33は、温度および湿度の変動と共に膨張および収縮を起こす。亀裂33の膨張が起こった場合、歪みのプロフィールに勾配が生じるであろう。亀裂の大きさが与えられている場合、被膜の上部における歪みは薄い被膜32の方が厚い被膜31よりも迅速に起こるであろう。
【0038】
図2は、単にペイントを被覆した場合と比べ本発明の液体被覆組成物の場合の基本的な差を示唆している。ペイントは薄い被膜として被覆しようとしたものであり、その結果乾燥した厚さは10ミルであった。これとは対照的に、本発明の膜では20ミルより、さらに好ましくは40ミルよりも厚い平均の乾燥被覆の厚さが得られた。
【0039】
下記の実施例により本発明を例示する。
【実施例1】
【0040】
透過度、強さ、および伸びに対するポリビニルアルコール(PVOH)の濃度の影響を、アクリル重合体およびPVOH(ポリビニルアルコール)だけを含んで成る系に対して例示する。アクリル重合体はBASFから商品名ACRONAL S400のものを得た。PVOHはDupontから商品名ELVANOL 51−05のものを入手した。透過度の結果は2回繰り返して測定して得た。二組のデータをそれぞれ図3および4に示す。透過度はPVOHの濃度のレベルに比例することに注目されたい。引っ張り強さもPVOHのレベルに比例する。しかし伸びはPVOHのレベルが少ない場合には比較的影響を受けない。
【実施例2】
【0041】
液体組成物からつくられた膜の透過度、強さ、および伸びに対するアクリル重合体、充填剤のレベル、およびポリビニルアルコールのレベルの影響を試験した。液体組成物を調製する目的でアクリル重合体はBASF(ACRONAL S400)から入手し、PVOHはCelanese Corporationから入手した。種々の膜組成物を表1に示す。
【0042】
膜の透過度、伸び、および強さをそれぞれ図5、6および7にプロットする。透過度は大部分PVOHの濃度に依存し、それぞれPVOHを6〜23%含んで成る組成物に対しては8〜27permsの間で変動することが注目される。伸びは、重合体レベルが高くPVOHおよび充填剤のレベルが低い組成物からつくられた膜の場合に最大になる。組成物7および9からつくられた膜において良好な透過度および高い伸びが見出だされた。透過度はそれぞれ12permsおよび8permsであった。伸びの値はそれぞれ460%および680%であった。
【0043】
【表1】

【実施例3】
【0044】
水の吸収に対するアクリル重合体、充填剤、およびPVOHのレベルの影響をHenry Companyから商品名AIR−BLOC 31として得られる膜に対して試験した。成分の種類は実施例2と同じである。各試料に対して注型されたフィルムの乾燥した厚さの平均値は60ミルであった。乾燥したフィルムを24時間水道水に浸漬した。種々の組成物からつくられた膜に対する結果を下記表2に示す。水の吸収は%単位で測定した(表には、弱い場合に破断した膜は「破断」と示されている)。水の吸収はPVOHのレベルにほぼ比例することに注目されたい。水の吸収を最低限度に抑制するためにはPVOHが低いことが好適である。
【0045】
【表2】

【0046】
Henryの組成物に対する水の吸収は102%と決定された。他の試料に対するのと同様に、60ミルの市販の生成物の乾燥したフィルムを注型し、24時間水に浸漬した。重量百分率規準の水の吸収率を測定した。
【実施例4】
【0047】
本発明の組成物に対し顔料容積濃度を計算し、図8に示した。本発明の組成物に対する顔料容積濃度は最高25%の範囲にあることに注目されたい。これとは対照的に、Henryの組成物に対するPVCは45%と決定された。
【実施例5】
【0048】
組成物の粘度に対するPVOHの分子量の影響を評価した。目標とする透過度を得るのに十分なPVOHが必要であるが、PVOHの分子量は液体組成物を噴霧被覆できるのに十分なほど低くなければならない。すべての試験に使用された組成物を表3に示す。表4にはPVOHの分子量および液体組成物の粘度を示す。
【0049】
液体組成物の粘度はPVOHの粘度に比例することに注目されたい。組成物番号1は容易には噴霧できなかったが、他の組成物は容易に噴霧被覆することができた。
【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
上記の実施例および具体化例は単に例示の目的のためであり、本発明の範囲を限定する意図をもつものではない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の組成物が連続的な水蒸気透過性の相をつくる機構を示す模式図。
【図2】薄い膜を被覆した場合と、本発明のような厚い膜を被覆した場合とにおいて賦与されるそれぞれの亀裂架橋特性を比較した図。
【図3−4】本発明の例示的な組成物における透過度、強さ、および伸びに対するポリビニルアルコール(PVOH)の濃度の影響を示す図。
【図5】本発明の例示的な膜の透過度のグラフ表示。
【図6】本発明の例示的な膜の伸びのグラフ表示。
【図7】本発明の例示的な膜の強さのグラフ表示。
【図8】本発明の例示的な膜の顔料容積濃度(PVC)のグラフ表示。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の表面に水蒸気透過性をもった空気障壁性の膜をつくるための液体組成物であって、該液体組成物は式
−(−CH−CHCOOR−)−、
但し式中RはC〜Cアルキル基を表す、
の反復基をもった少なくとも1種の疎水性のアクリル重合体を含んで成る乳化物を含んで成り、該少なくとも1種のアクリル重合体はガラス転移温度が−55〜0℃であって、組成物の全乾燥固体分含量に関し50重量%以上、97重量%以下の量で存在し;
該液体組成物はさらに炭酸カルシウム、タルク、粘土、シリカ、および二酸化チタンから成る群から選ばれる無機充填剤を含んで成り、該充填剤の少なくとも1種は全固体分に関して0〜50重量%の量で存在し;いずれの場合も該液体組成物の内部に含まれるすべての充填剤材料の全量は顔料容積濃度(PVC)が0〜25%であるような量で存在しており;
該液体組成物はさらに該液体組成物の全量の30重量%以上、50重量%以下の量で水を含んでおり、
該液体組成物はさらに該液体組成物の全乾燥固体分含量に関して3重量%以上、17重量%以下の量で少なくとも1種の水溶性の重合体を含んで成り、該少なくとも1種の水溶性の重合体は水中に4重量%含まれる場合2センチポイズ以上、50センチポイズ以下の溶液粘度を有することを特徴とする液体組成物。
【請求項2】
該少なくとも1種の水溶性の重合体は、
数平均分子量が5,000以上で50,000以下のポリビニルアルコール、
数平均分子量が5,000以上で200,000以下のポリエチレンオキシド、および
数平均分子量が3,000以上で20,000以下のセルロースのメチルエーテルまたはエチルエーテルから成る群から選ばれることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
該少なくとも1種の水溶性の重合体は数平均分子量が5,000以上で50,000以下のポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項4】
該少なくとも1種の水溶性の重合体は数平均分子量が5,000以上で200,000以下のポリエチレンオキシドであることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項5】
該少なくとも1種の水溶性の重合体は数平均分子量が3,000以上で20,000以下のセルロースのメチルエーテルまたはエチルエーテルであることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項6】
該少なくとも1種の充填剤は該組成物の全重量に関し少なくとも5重量%であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項7】
該少なくとも1種の充填剤は該組成物の全乾燥重量に関し少なくとも1重量%の量で存在し、
顔料容積濃度は18%より大きくはないことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項8】
該少なくとも1種の疎水性のアクリル重合体において、Rはエチル、プロピル、ブチル、オクチルまたはエチルヘキシルを表すことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項9】
疎水性のメタ(アクリル)重合体をさらに含んで成ることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項10】
該少なくとも1種の疎水性のアクリル重合体はアクリル酸ブチル重合体であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項11】
該少なくとも1種の疎水性のアクリル重合体はアクリル酸ブチルおよびスチレンの共重合体であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項12】
アクリル酸ブチル/スチレンのモル比は1.5よりも大きいことを特徴とする請求項11記載の組成物。
【請求項13】
該充填剤は炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項14】
該充填剤は該組成物の全固体分の重量に関し少なくとも1重量%の量で存在し、その平均の粒子の大きさは0.1μm以上で50μm以下であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項15】
該ポリビニルアルコールは80〜90%の加水分解度をもっていることを特徴とする請求項3記載の組成物。
【請求項16】
該ポリビニルアルコールは90〜100%の加水分解度をもっていることを特徴とする請求項3記載の組成物。
【請求項17】
請求項1記載の組成物で基質表面を被覆することによってつくられた膜。
【請求項18】
セメント性、木材、または石膏の基質の上に請求項1記載の組成物を被覆することを含んで成ることを特徴とする水蒸気を透過し得る膜をつくる方法。
【請求項19】
請求項1記載の組成物で被覆された建築用のパネルまたはセメント性のボディーを含んで成る複合体。
【請求項20】
平均の厚さが20ミル以上で100ミル以下であることを特徴とする請求項17記載の膜。
【請求項21】
平均の厚さが40ミル以上であることを特徴とする請求項17記載の膜。
【請求項22】
平均の厚さが40ミル以上で100ミル以下であり、ASTM E−96による水 蒸気透過性は2perms以上で20perms以下であり、伸びは200%以上で1000%以下であり、1日間水に浸漬した後の水吸収値は50%より小さく、顔料容積濃度は0〜25%であることを特徴とする請求項17記載の膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−527107(P2008−527107A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550425(P2007−550425)
【出願日】平成18年1月4日(2006.1.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/000114
【国際公開番号】WO2006/076186
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(399016927)ダブリュー・アール・グレイス・アンド・カンパニー−コネチカット (63)
【Fターム(参考)】