説明

液体と粉体の混合装置およびシステム

【課題】ジェットポンプの吸引作用を利用して粉塵飛散を防止し液体と粉体を混合する場合に、粉体の混合率の増大に伴う吸引効果の低下を防ぐこと、及び均質な混合液を効果的に製造できる簡易な装置・システムを構築する。
【解決手段】撹拌機能を備えた液槽及び加圧ポンプならびにジェットポンプを直列に連結して循環流路を形成しジェットポンプの低圧室に粉体を供給することにより、槽内の撹拌によってチキソトロピックな流体の粘度を低下させて後段のジェットポンプの吸引効果の低下を防ぐ。また、加圧ポンプを水蒸気エゼクターとしてジェットポンプと一体化することにより、水蒸気凝縮に際して発生する衝撃波によって液状物質の粉砕・均質化を一層効果的に行わせると共に構造を簡単・小型化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品・化粧品・食品・染料などの製造プロセスにおいて、液体に粉体を添加混合する装置およびシステムに係る。
【背景技術】
【0002】
医薬品・化粧品・食品・染料などの製造プロセスにおいて、撹拌槽内で液体と粉体を混合し乳化する場合に、粉体供給時の粉塵飛散による作業環境の悪化や粉塵爆発の危険を防止する必要があるが、粉塵飛散の完全防止は容易ではない。その対策として粉体をジェットポンプの低圧部に供給して吸引させる方法が考えられるが、粉体の混合率の増加に伴って混合液の粘度が高くなるとジェットポンプの吸引効果が低下する問題がある。
【0003】
また、ジェットポンプの吸引効果で均質な乳化物を製造するためには、液量に対して粉体量を適確に制御すると共に吸引混合操作を繰り返して粉体の凝集を防ぐ必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の背景に鑑み本発明は、撹拌槽内で液体と粉体を混合・乳化する場合にジェットポンプの吸引作用を利用して粉体の飛散を完全に防除すると共に、粉体の混合率が増加して高濃度になってもジェットポンプの吸引効果が低下せず、円滑な混合操作が可能となることを第一の課題としている。また、粉体濃度の制御が容易であり且つ粉体の凝集がなく均質な乳化物を効果的に製造できる簡易な装置・システムを構築することを第二の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、撹拌機能を備えた液槽及び加圧ポンプならびにジェットポンプを直列に連結して循環流路を形成すると共に、該ジェットポンプの低圧室に調整弁を介して粉体を供給し液体に粉体を吸引混合せしめることを特徴とする、液体と粉体の混合装置である。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、加圧ポンプを水蒸気エゼクターにすると共にジェットポンプと一体化することを特徴とする、液体と粉体の混合装置である。
【0007】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1及び2に記載の発明において、液槽の上部に循環流路の入口を接線方向に接続して液槽内に旋回流を生成せしめると共に、液槽内壁に旋回流に対向する邪魔板を設けることを特徴とする、液体と粉体の混合装置である。
【0008】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1及び2に記載の発明において、ジェットポンプのノズル出口を扁平に構築し、ジェット流を扁平として粉体との比接触面積を増大させることを特徴とする、液体と粉体の混合装置である。
【0009】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4に記載の混合装置に加えて、循環流路に調整弁を介して原液供給管と混合液排出管を接続すると共に混合液の濃度計測器を設け、原液の供給量に対する粉体の添加量と混合液の循環量及び排出量を調整することによって所定濃度の均質な混合液を連続的に排出せしめ得ることを特徴とする、液体と粉体の混合システムである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、粉体がミクロン単位の超微粉体であっても、混合操作において粉体が飛散することがないので粉塵爆発を防止し作業環境を改善できるのみならず、チキソトロピックな液体は槽内の撹拌によって粘度が低下するので、後段のジェットポンプの吸引性能を損なうことなく高添加率かつ高粘度の混合処理が可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明は高圧水蒸気の利用が可能であり且つ液中への水蒸気凝縮水の混入が許されるケースに利用されるもので、本発明によれば、水蒸気エゼクターの特性として水蒸気凝縮に際して衝撃波が発生するので液状物質の粉砕・均質化が一層効果的に行われると共に、構造がより簡単かつ小型化できる。
【0012】
請求項3に記載の発明は循環液が比較的低粘度のケースに利用されるもので、本発明によれば、高価な回転撹拌装置が省略され構造が簡単かつ省エネが可能となる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、ジェット流と粉体との比接触面積(同一ジェット流量に対する粉体の接触面積)が増大するので、相対的に高い吸引混合効果が得られる。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、所定濃度の均質な混合液を連続的に排出し得るシステムを構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は本発明の実施例の説明図、図2は図1のX視矢断面図、図3は本発明の他の実施例の説明図、をそれぞれ示す。
【0016】
図1,2において、液槽1と加圧ポンプ2及びジェットポンプ3を直列に連結して循環流路4を形成し、ジェットポンプ3の液噴射ノズル7とディフューザ8の間の低圧室9に粉体調整弁5を介して粉体槽6を繋ぐと、液噴射ノズル7のジェット流で生じた真空により低圧室9内に粉体10が吸引され、ディフューザ8の喉部で循環液と激しく混合し、混合液はディフューザ8で圧力を回復して循環流路4を経て液槽1に還流される。ここで、液噴射ノズル7の出口を扁平に構築し,ジェット流を扁平として粉体との比接触面積(同一ジェット流量に対する粉体の接触面積)を増大させることによりジェット流の吸引混合効果が一層高められる。尚、混合液中に粉体以外に液体を混合する必要があれば、低圧室9に別途調整弁を介して該液体の供給管を接続すればよい(図示せず)。
【0017】
以上の構成において、粉体調整弁5の操作により液体循環量に対する粉体の添加量を加減すれば、混合液の粉体濃度や混合効果を任意に調整することができる。更に、循環流路4に原液供給管21と混合液排出管22をそれぞれ原液供給調整弁23及び混合液排出調整弁24を介して接続すると共に混合液の濃度計測器20を設ければ、原液の供給量に対する粉体の添加量と混合液の循環量及び排出量を調整することによって、所定濃度の均質な混合液を連続的に排出させることができる。
【0018】
以上の操作において、混合液中の粉体濃度が増加して液の粘度が高まるとジェットポンプの真空形成が困難となるが、液槽1に撹拌機能を備えることにより、チキソトロピックな液体は粘度が低下するので、混合液の粉体濃度を増加せしめることが可能になる。この撹拌方式としては、図1、2に示すように、液槽1の上部に循環流路4の液槽入口11を接線方向に接続して液槽内に旋回流13を生成せしめると共に、液槽1の内壁に旋回流に対向する邪魔板12を設けるとよい。このような簡易な構成によって、旋回流13と邪魔板12との衝突作用及び邪魔板12の裏側に発生する渦流14の作用ならびに液槽中心に生ずる逆流15の不安定振動の作用などにより、液の撹拌・分散・均質化が効果的に行われる。尚、液槽1内の上端に周知の回転羽根(図示せず)を設ければ旋回流13の作用を助勢することができる。更に、粉体濃度が高く液の粘度が高い場合は、図2に示す回転スクリュー16のような周知の高粘度液用撹拌翼(化学工学便覧参照)を用いるとよい。
【0019】
また、施設内で高圧水蒸気を利用でき且つ液中への水分混入が許される条件であれば、図3に示すように、加圧ポンプ2を廃し、ジェットポンプ3の液噴射ノズル7内に高圧水蒸気18を噴射する蒸気ノズル17を設けて水蒸気エゼクター19を構築するとよい。このような構成により、水蒸気エゼクターの特性として水蒸気凝縮に際して衝撃波が発生するので、液状物質の粉砕・均質化が一層効果的に行われると共に、構造をより簡単且つ小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】 本発明の実施例の説明図
【図2】 図1のX視矢断面図
【図3】 本発明の他の実施例の説明図
【符号の説明】
【0021】
1 液槽
2 加圧ポンプ
3 ジェットポンプ
4 循環流路
5 粉体調整弁
6 粉体槽
7 液噴射ノズル
8 ディフューザ
9 低圧室
10 粉体
11 液槽入口
12 邪魔板
13 旋回流
14 渦流
15 逆流
16 回転スクリュー
17 蒸気ノズル
18 高圧水蒸気
19 水蒸気エゼクター
20 濃度計測器
21 原液供給管
22 混合液排出管
23 原液供給調整弁
24 混合液排出調整弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌機能を備えた液槽及び加圧ポンプならびにジェットポンプを直列に連結して循環流路を形成すると共に、該ジェットポンプの低圧室に調整弁を介して粉体を供給し液体に粉体を吸引混合せしめることを特徴とする、液体と粉体の混合装置。
【請求項2】
前記加圧ポンプを水蒸気エゼクターにすると共に前記ジェットポンプと一体化することを特徴とする、請求項1に記載の液体と粉体の混合装置。
【請求項3】
前記液槽の上部に前記循環流路の入口を接線方法に接続して液槽内に旋回流を生成せしめると共に、液槽内壁に旋回流に対向する邪魔板を設けることを特徴とする、請求項1及び2に記載の液体と粉体の混合装置。
【請求項4】
前記ジェットポンプのノズル出口を扁平に構築し、ジェット流を扁平として粉体との比接触面積を増大させることを特徴とする、請求項1及び2に記載の液体と粉体の混合装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4に記載の混合装置に加えて、循環流路に調整弁を介して原液供給管と混合液排出管を接続すると共に混合液の濃度計測器を設け、原液の供給量に対する粉体の添加量と混合液の循環量及び排出量を調整することによって所定濃度の均質な混合液を連続的に排出せしめ得ることを特徴とする、液体と粉体の混合システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−167399(P2010−167399A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34492(P2009−34492)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(509045830)
【Fターム(参考)】