説明

液体の浄化方法および液体の浄化装置

【課題】汚染された水などの液体を浄化するにあたり、オゾンやOHラジカルを用いてより一層効率良く行える浄化装置を提供することを課題とする。
【解決手段】浄化原料ガスを導入し、浄化原料ガスが対向する電極に発生するプラズマによりオゾンおよびOHラジカルを生成させる第1の領域と、汚染液体を流し、汚染液体が流れる流路中に少なくとも一部が光触媒処理された部材を有する第2の領域と、を有し、生成されたオゾンおよびOHラジカルを前記第2の領域に導入し、光触媒処理された部材に、プラズマの発光に起因する光が照射されることを特徴とする浄化装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分を含む空気などを原料としてオゾンやOHラジカルを生成させ、このオゾンやOHラジカルによって水などの液体の浄化を効率良く行うのに適した液体の浄化方法および液体の浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水などの液体の浄化を行うに際しては、オゾン(O3)を使用するのが一般的である。
【0003】
このオゾンは、図5に示すように、空気中で無声放電することによって製造されており、空気の代わりに酸素を原料とした場合には設備費および電力費とも40〜50%節減することができる。
【0004】
このようにして得られたオゾンは、上水道の殺菌,廃水処理,香料の合成,脱臭などの用途に適用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなオゾンは、酸化力が強く、殺菌ないしは滅菌作用にすぐれているものの、非常に分解しやすいため、貯蔵が困難であり、安定した作業がむつかしいという問題点があった。
【0006】
本発明は、このような従来の課題にかんがみてなされたものであって、汚染された水などの液体を浄化するにあたり、オゾンやOHラジカルを用いてより一層効率良く行えるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係わる液体の浄化方法は、請求項1に記載しているように、少なくとも一方を光触媒処理した電極の間でプラズマを生じさせ、前記プラズマ中に酸素や水を含む浄化原料ガスを流し、前記酸素や水を前記浄化原料ガスのプラズマ化により化学励起させてオゾンやOHラジカルを生成すると共に、前記プラズマの発光に起因する光により光触媒反応を効率良く進行させて前記浄化原料ガス中の酸素や水からのオゾン生成やOHラジカル生成を促進し、前記オゾンやOHラジカルを汚染液体中に流してその浄化を行うようにしたことを特徴としている。
【0008】
そして、本発明に係わる液体の浄化方法においては、請求項2に記載しているように、浄化原料ガスは水分を含む空気であり、液体は汚染された水であるものとすることができる。
【0009】
本発明に係わる液体の浄化装置は、請求項3に記載しているように、少なくとも一方が光触媒処理された電極と、前記電極の間でプラズマを生じさせる電源と、前記プラズマ中に酸素や水を含む浄化原料ガスを流してプラズマ化する浄化原料ガス送給流路と、浄化原料ガスのプラズマ化により生成したオゾンやOHラジカルを汚染液体中に流出するバルブを備えた構成としたことを特徴としている。
【0010】
そして、本発明に係わる液体の浄化装置においては、請求項4に記載しているように、浄化原料ガスは水分を含む空気であり、液体は汚染された水であるものとすることができる。
【0011】
同じく、本発明に係わる液体の浄化装置においては、請求項5に記載しているように、光触媒処理された電極は、光触媒としてTiO2を有しているものとすることができ、この場合に、請求項6に記載しているように、光触媒処理した電極は、Tiと前記Tiよりも酸化傾向の小さい(酸素との親和力が弱い)金属とを合金化させて合金中のTiのみを選択酸化することによりその一部に光触媒性TiO2を形成したものとすることができる。
【0012】
同じく、本発明に係わる液体の浄化装置においては、請求項7に記載しているように、電極は、対向配置した中心電極と外部電極と光触媒処理したリング電極をそなえ、対向電極間の少なくとも一部でプラズマを生じさせるものとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明による液体の浄化方法では、請求項1に記載しているように、少なくとも一方を光触媒処理した電極の間でプラズマを生じさせ、前記プラズマ中に酸素や水を含む浄化原料ガスを流し、前記酸素や水を前記浄化原料ガスのプラズマ化により化学励起させてオゾンやOHラジカルを生成すると共に、前記プラズマの発光に起因する光により光触媒反応を効率良く進行させて前記浄化原料ガス中の酸素や水からのオゾン生成やOHラジカル生成を促進し、前記オゾンやOHラジカルを汚染液体中に流してその浄化を行うようにしたから、プラズマ作用と光触媒作用との相乗的作用により水道水等の汚染液体の液質浄化(水質浄化)をより一層高効率で行うことが可能になるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0014】
そして、請求項2に記載しているように、浄化原料ガスは水分を含む空気であり、液体は汚染された水であるものとすることによって、プールなどにおける水の大量浄化に適したものになるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0015】
本発明による液体の浄化装置によれば、請求項3に記載しているように、少なくとも一方が光触媒処理された電極と、前記電極の間でプラズマを生じさせる電源と、前記プラズマ中に酸素や水を含む浄化原料ガスを流してプラズマ化する浄化原料ガス送給流路と、浄化原料ガスのプラズマ化により生成したオゾンやOHラジカルを汚染液体中に流出するバルブを備えたものとしたから、プラズマ作用と光触媒作用との相乗的作用により液体の浄化反応のさらなる高効率化が可能になるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0016】
そして、請求項4に記載しているように、浄化原料ガスは水分を含む空気であり、液体は汚染された水であるものとなすことによって、プールなどにおける水の大量浄化に適したものになるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0017】
さらにまた、請求項5に記載しているように、光触媒処理された電極は、光触媒としてTiO2を有しているものとなすことによって、光触媒機能をより一層有効に発揮させることが可能になるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0018】
さらにまた、請求項6に記載しているように、光触媒処理した電極は、Tiと前記Tiよりも酸化傾向の小さい金属とを合金化させて合金中のTiのみを選択酸化することによりその一部に光触媒性TiO2を形成したものであるようになすことによって、光触媒性能に優れた電極の活用が可能となり、さらにまた、材質の選択によっては光触媒性能と化学触媒性能をあわせもつ電極の活用が可能になるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0019】
さらにまた、請求項7に記載しているように、電極は、対向配置した中心電極と外部電極と光触媒処理したリング電極をそなえ、対向電極間の少なくとも一部でプラズマを生じさせるものとすることによって、プラズマ作用と光触媒作用との相乗的作用による反応効率の高い液体の浄化装置を提供することが可能であるという著しく優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による液体の浄化装置の実施の形態を示す基本的説明図である。
【図2】光触媒処理した電極の構造例を示す説明図である。
【図3】本発明による液体の浄化装置の第1実施例を示す概略断面説明図である。
【図4】本発明による液体の浄化装置の第2実施例を示す概略断面説明図である。
【図5】オゾン(O3)の製造工程を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係わる液体の浄化方法は、少なくとも一方を光触媒処理した電極の間でプラズマを生じさせ、前記プラズマ中に酸素や水を含む浄化原料ガスを流し、前記酸素や水を前記浄化原料ガスのプラズマ化により化学励起させてオゾンやOHラジカルを生成すると共に、前記プラズマの発光に起因する光により光触媒反応を効率良く進行させて前記浄化原料ガス中の酸素や水からのオゾン生成やOHラジカル生成を促進し、前記生成されたオゾンやOHラジカルを汚染液体中に流してその浄化を行うようにしたものであり、このような液体の浄化方法を実施するための液体の浄化装置としては、少なくとも一方が光触媒処理された電極と、前記電極の間でプラズマを生じさせる電源と、前記プラズマ中に酸素や水を含む浄化原料ガスを流してプラズマ化する浄化原料ガス送給流路と、浄化原料ガスのプラズマ化により生成したオゾンやOHラジカルを汚染液体中に流出するバルブを備えたものとすることができ、プラズマと光触媒を時空間的に共存させ、常温・常圧下でプラズマの作用と光触媒の作用との相乗的作用によって高効率での処理が可能である液体の浄化装置とすることができる。
【0022】
そして、本発明の実施態様においては、例えば、図1に示すように、上部のみを示す外壁W内において、少なくとも一方を光触媒処理した対向電極(中心有孔電極E0と、外部電極E1と、電極本体E上に光触媒層Cをそなえた有孔リング電極E2)のうち少なくとも一部の間でプラズマPを生じさせ、前記プラズマP中に酸素や水を含む浄化原料ガスを導入弁V1を介して流入させ、前記酸素や水を前記浄化原料ガスのプラズマ化により化学励起させてオゾンやOHラジカルを生成すると共に、前記プラズマの発光に起因する光により光触媒層Cによる光触媒反応を効率良く進行させて前記浄化原料ガス中の酸素や水からのオゾン生成やOHラジカル生成を促進し、前記生成したオゾンやOHラジカルを排出弁V2を介して例えば間欠的に排出するようにし、液体中でOH-を生成させて水質の浄化を行うものとすることができる。
【0023】
本発明に係わる液体の浄化方法および液体の浄化装置において、浄化原料ガスはオゾンやOHラジカルの生成源となる水分を含む空気であるものとし、汚染液体は汚染された水であるものとすることができる。
【0024】
また、光触媒処理された電極は、光触媒としてTiO2を有しているものとすることができ、この場合に、光触媒処理した電極は、Tiと前記Tiよりも酸化傾向の小さい金属(例えばNi)とを合金化させて合金中のTiのみを酸化させることにより光触媒性TiO2、例えばアナターゼ型TiO2を形成したものとすることができる。このとき、Ti量は0.01〜30at%が好適であり、図2に示すように光触媒性TiO2をNi−Ti系合金の表面または内部に層状ないしは粒子状に形成したものであるようになすことが可能であって、このような光触媒は波長が400nm以下の紫外線の光励起で触媒活性を発揮するものとなり、プラズマからの発光により励起された光触媒によるオゾンやOHラジカルの生成が促進されるものとなる。
【0025】
そしてまた、電極は、対向配置した内筒電極と外筒電極をそなえ、内筒電極の外周と外筒電極の内周との間でプラズマを生じさせると共に、相互に固定ないしは相対回転可能としたものであるようにしたり、あるいはまた、対向電極は、対向配置したディスク電極をそなえ、対向配置したディスク電極の対向面間でプラズマを生じさせると共に、相互に固定ないしは相対回転可能としたものであるようにしたり、さらにまた、電極は、対向配置した中心電極と外部電極と光触媒処理したリング電極をそなえ、対向電極間の少なくとも一部でプラズマを生じさせるものとしたりすることができる。
【0026】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこのような実施例のみに限定されないことはいうまでもない。
【0027】
(実施例1)
図3は本発明による液体の浄化装置の第1実施例を示すものであって、この図3に示す液体の浄化装置11は、対向配置した一方の電極である内筒電極12と他方の電極である外筒電極13をそなえ、内筒電極12および外筒電極13が共に固定設置したものとなっている。
【0028】
そして、外筒電極13は電極本体部の内側に光触媒層としてアナターゼ型TiO2層13Cを有しているものとなっている。
【0029】
さらに、内筒電極12と外筒電極13との間には高圧電源が接続してあると共に外筒電極13を支持しているガラス管14の両端にそれぞれ浄化原料ガス送給流路15と浄化用ガス送給流路16とをそなえたものとなっている。
【0030】
このような構成をもつ液体の浄化装置11において、内筒電極12と外筒電極13との間に高圧電源により高電圧を印加すると、この内筒電極12の外周と外筒電極13の内周との間でかつガラス管24の内部でプラズマPが発生する。
【0031】
この状態において、浄化原料ガス送給流路15より浄化原料ガスとして水分を含む空気を送給すると、プラズマPにおいて浄化原料ガスである空気がプラズマ化することにより、オゾンやOHラジカルが生成される。このとき、プラズマの発光に起因する光によって外筒電極13の内周面(TiO2層13C)上で光触媒反応が効率良く進行することにより浄化原料ガス中の酸素や水からのオゾン生成やOHラジカル生成が促進されることとなる。
【0032】
そして、ここで生成されたオゾンやOHラジカルは、浄化用ガス送給流路16を介して適宜(例えば、バルブ16V等により間欠的に)汚染液体中に送給され、水などの汚染液体の浄化に供されることとなる。
【0033】
(実施例2)
図4は本発明の第2実施例を示すものであって、この図4に示す液体の浄化装置21は、水道管21Pの内部でガラス管21Gが同心状態で設けてあり、このガラス管21Gの内側の一部には一方の電極である中心電極22が設けてあると共に、ガラス管21Gの外側の一部には他方の電極である有孔外部電極23が設けてあり、さらには水道管21Pの内側の一部には同じく他方の電極である光触媒分散リング電極24が設けてあって、中心電極22と有孔外部電極23との間には高圧電源が接続してある。
【0034】
また、ガラス管21Gの図示右側部分には分岐した二つの空気導入部(浄化原料ガス送給流路)25A,25Bが設けてあると共に、ガラス管21Gの図示左側部分には浄化用ガス送給流路26およびガス放出用電磁弁26Vが設けてあり、このガス放出用電磁弁26Vの近傍にある水道管21Pの外周部分には電磁弁駆動コイル27が設けてある。
【0035】
このような構成をもつ液体の浄化装置21において、中心電極22と有孔外部電極23との間に高圧電源により高電圧を印加すると、この中心電極22と有孔外部電極23との間でかつガラス管21Gの内部においてプラズマPが発生する。
【0036】
この状態において、空気導入部である浄化原料ガス送給流路25A,25Bから水分を含む空気が導入されると、前記プラズマ中において水分を含む空気がプラズマ化することにより化学励起されてオゾンやOHラジカルが発生する。
【0037】
そして、このオゾンやOHラジカルは浄化用ガス送給流路26に流れ、ガス放出用電磁弁駆動コイル27の駆動によりガス放出用電磁弁26Vが開くことにより水中に間欠的に放出され、汚染された水の浄化に作用するものとなる。
【0038】
また、上記プラズマの発光に起因する光によって光触媒分散リング電極24の内周面(TiO2層24Cの表面)上で光触媒反応が効率良く進行することにより水質の浄化がより効果的に行えるようになる。
【符号の説明】
【0039】
11,21 液体の浄化装置
12,22 一方の電極
13,23,24 他方の電極
13C,24C アナターゼ型TiO2層(光触媒層)
15,25A,25B 浄化原料ガス送給流路
16,26 浄化用ガス送給流路
16V,26V バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方を光触媒処理した電極の間でプラズマを生じさせ、前記プラズマ中に酸素や水を含む浄化原料ガスを流し、前記酸素や水を前記浄化原料ガスのプラズマ化により化学励起させてオゾンやOHラジカルを生成すると共に、前記プラズマの発光に起因する光により光触媒反応を効率良く進行させて前記浄化原料ガス中の酸素や水からのオゾン生成やOHラジカル生成を促進し、前記オゾンやOHラジカルを汚染液体中に流してその浄化を行うことを特徴とする液体の浄化方法。
【請求項2】
浄化原料ガスは水分を含む空気であり、液体は汚染された水であることを特徴とする請求項1に記載の液体の浄化方法。
【請求項3】
少なくとも一方が光触媒処理された電極と、前記電極の間でプラズマを生じさせる電源と、前記プラズマ中に酸素や水を含む浄化原料ガスを流してプラズマ化する浄化原料ガス送給流路と、浄化原料ガスのプラズマ化により生成したオゾンやOHラジカルを汚染液体中に流出するバルブを備えたことを特徴とする液体の浄化装置。
【請求項4】
浄化原料ガスは水分を含む空気であり、液体は汚染された水であることを特徴とする請求項3に記載の液体の浄化装置。
【請求項5】
光触媒処理された電極は、光触媒としてTiO2を有していることを特徴とする請求項3または4に記載の液体の浄化装置。
【請求項6】
光触媒処理した電極は、Tiと前記Tiよりも酸化傾向の小さい金属とを合金化させて合金中のTiのみを選択酸化することによりその一部に光触媒性TiO2を形成したものである請求項5に記載の液体の浄化装置。
【請求項7】
電極は、対向配置した中心電極と外部電極と光触媒処理したリング電極をそなえ、対向電極間の少なくとも一部でプラズマを生じさせることを特徴とする請求項3ないし6のいずれかに記載の液体の浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−255081(P2009−255081A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157800(P2009−157800)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【分割の表示】特願平11−373649の分割
【原出願日】平成11年12月28日(1999.12.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】