説明

液体カートリッジ

【課題】本発明は、吐出ヘッドの回復操作において吸入させるべき必須の液剤を無駄にしない吸入用液体カートリッジを提供する。
【解決手段】本発明の液体カートリッジは、液滴を吐出する液体吐出部1と、液剤を収容する液剤容器E1と、両者を連通させる連通部材3を備えている。液剤容器E1は互いに間隔をおいて配置したフィルム6〜8によって隔離された第1及び第2の収容部10a、10b及び大気開放部を有する。液体吐出部1の装着凹部4に小径部5aを挿入すると挿入開始から挿入完了までの間に連通部材3の先端3aが順次第1ないし第3のフィルム6〜8を突き破る。その結果、第1の収容部10a内の液剤が吐出ヘッド2に充填され、次いで第2の収容部10b内に収容された液剤が充填される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液、アロマ、ニコチンなどの液剤を吸入装置の吸入流路中へ微小液滴にして吐出し、利用者に吸入させる吸入装置に主に用いられる液体カートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置において、インクタンクから吐出ヘッドへインクを充填させたり、回復操作を行うのは、吸引手段を設けるのが一般的である(特開2001−246759号公報参照)。一方、インクジェット方式の吐出原理を利用して治療用の薬剤を吐出し、利用者に吸入させるための吸入装置においては、装置の大型化を防ぐ目的で、インクジェット記録装置のように吸引手段によらない充填、回復技術もある。例えば、特開2004−290593号公報には、液剤を収容する容器を吸入装置の取り付け部に取り付けたときに容器の一部を圧迫して吐出ヘッドに液剤を充填させる方法が開示されている。また、特開2004−97617号公報には、吸入装置の液滴吐出部より、定期的に少量の液剤を吐出(予備吐出)させることによって、異常吐出をなくした吐出ヘッドの回復手段が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−290593号公報
【特許文献2】特開2004−97617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
初回使用時に、吐出ヘッドに液剤を充填させる際には、確実に吐出ヘッドに液剤を充填させるべく、吐出口から多少の液剤があふれるまで充填操作を行う必要がある。また、定期的に予備吐出を行うような場合でも、吸入に使用するのと同じ種類の液剤を使用していた。
【0005】
しかし、上記のような従来の技術では、吸入させるべき液剤である必須の液剤を無駄に吐出してしまう。また、回復手段の構成が複雑であり、軽量化して携帯性を向上させることも困難であるという課題がある。
【0006】
本発明は上記従来の技術の有する課題に鑑みてなされたものであって、携帯性を向上させるとともに吸入させるべき必須の液剤を無駄に吐出しない液体カートリッジを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の液体カートリッジは、液体吐出装置に取り付け可能な液体カートリッジであって、隔離膜によって隔離された第1及び第2の収容部を有する液剤容器と、液滴を吐出させる吐出ヘッド及び前記液剤容器を装着するための装着部を有する液体吐出部と、前記装着部への前記液剤容器の装着操作の開始から完了するまでの間に、前記吐出ヘッドに前記第1及び前記第2の収容部を順次連通させる連通部材と、を備えており、前記第2の収容部に必須の液剤を収容し、前記第1の収容部に前記必須の液剤とは異種の液剤を収容することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の液体カートリッジは、上述のとおり構成されているので次に記載するような効果を奏する。
【0009】
吐出ヘッドの回復操作において、利用者に吸入させるべき必須の液剤(主吸入液剤)とは異種の液剤を吐出させることができる。このため、貴重な主吸入液剤が無駄に吐出されなくなる。加えて、複雑な構成の回復手段を備えなくてもよいので、軽量化が可能である
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
本発明の液体カートリッジは、吸入装置などの液剤吐出装置に取り付け可能であり、利用者に吸入される薬液を吐出するのに用いられる。しかし、吸入装置に限定されることはなく、霧化装置全般に適用可能である。他の用途としては、香り発生器、経皮投与装置などが考えられる。
【0012】
本発明において「必須の液剤」とは、吸入装置や経皮投与装置に用いる場合には利用者に投与すべき薬液をいい、香り発生器の場合は香りの主成分を含む液剤をいう。すなわち、液体カートリッジの主の用途の液剤である。また、本発明において「異種の液剤」とは、上記必須の液剤とは異種の液剤であり、吸入装置や経皮投与装置に用いる場合には、吐出ヘッドへの充填用の液剤となる。この場合、異種の薬剤は、利用者に吸入されることのない予備吐出などに用いられる。
【0013】
また、「液体カートリッジ」とは、吸入装置に用いられる場合、吸入する薬剤を収容した詰め替え容器を含むものである。本発明の液体カートリッジは、吸入装置に取り付け可能に構成されており、液剤を吐出するための吐出ヘッドも一体化することが可能である。以下、吸入装置に装着する場合を前提として説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、実施例1による液体カートリッジを示し、(a)は液剤容器と吐出ヘッドとを連通させる前の模式断面図、(b)は液剤容器と吐出ヘッドとを連通させた後の模式断面図である。
【0015】
図1の(a)に示すように、液体カートリッジは、液剤を液滴にして吐出する液体吐出部1と、液剤を収容する液剤容器E1と、使用時に液体吐出部1と液剤容器E1の収容部とを連通させる連通部材3を備えている。液剤容器E1は、本体の形状が円筒体であって外径及び内径が小さい小径部5aと、小径部5aより外径及び内径がわずかに大きい大径部5bとを有している。小径部5a内には互いに間隔をおいて配置された3枚の隔離膜であるフィルム6、7、8で隔離された第1の収容部10a及び第2の収容部10bを有する。なお、隔離膜としては、各収容部を分離する役割を果たすものであれば、フィルムに限定されることはなく、薄板などでも構わない。
【0016】
第1の収容部10a内には、吸入させるべき必須の液剤とは異種の液剤が収容されており、第2の収容部10b内には吸入させるべき必須の液剤が収容されている。
【0017】
液体吐出部1は、電気熱変換体(ヒータ)や電気圧力変換体(圧電素子)等の吐出エネルギー発生素子により発生された吐出エネルギーによって液滴を吐出させる吐出ヘッド2を有している。また、液体吐出部1は、液剤容器E1の小径部5aを着脱自在に嵌合させる装着部である装着凹部4と、装着凹部4に同心状に配置された連通部材3を有している。
【0018】
液剤容器E1の第1の収容部10a及び第2の収容部10bと液体吐出部1とは、吸入装置使用前においては連通されておらず、吸入装置を使用する際に液剤容器E1を液体吐出部1の装着凹部4内へ挿入することにより、順次連通する。すなわち、連通部材3は針状になっており、その外径は液剤容器E1の小径部5aの内径とほぼ同じに設計されている。また、連通部材3の内部には収容部10a,10bと吐出ヘッド2との連通空間を形成し、収容部10a,10b内の液剤を吐出ヘッドへと導く液剤流路3bが設けられている。
【0019】
吸入装置による液剤の吸入を開始する際には、図1の(a)に示すように液剤容器E1の小径部5aを液体吐出部1に設けられた装着凹部4内へ図示矢印方向へ挿入して装着する。この装着操作の開始から完了するまでの間に吐出ヘッド2に液剤が充填される。これは、液剤流路3bの溶液が、連通部材3自身の占める空間の分だけ、小径部5aの溶液よりも小さいことに起因する作用である。
【0020】
本実施例において、連通部材3の尖った先端3aが第1のフィルム6を突き破って第1の収容部10aが吐出ヘッド2に連通され、必須の液剤とは異種の液剤が吐出ヘッド2に供給される。次いで、連通部材3の先端3aが第2のフィルム7を突き破り、第2の収容部10bが吐出ヘッド2に連通され、必須の液剤が供給される。つまり、吐出ヘッド2に第1及び第2の収容部10a、10bを順次連通させる連通部材3を備えている。
【0021】
その後図1の(b)に示すように、連通部材3の先端部3aが第3のフィルム8を突き破って大径部5b内に開口して大気開放され、吐出ヘッド2の吐出口から少量の液剤11を溢れ出させて次の吐出の準備を完了する。吐出ヘッドへの液剤の充填が完了したときに吐出口から溢れ出る液剤11は、吸入に使用しない液剤(異種の液剤)であるため、吸入に使用する薬剤を無駄にすることがない。使用する薬剤が高価なものである場合には特に有効である。また、利用者が吸入する前に、吸入されることのない少量の予備吐出を行うことがある。この場合でも本実施例によれば、吸入に使用しない液剤を吐出させることができる。
【0022】
図2は液剤容器の製造工程の説明図である。図2の(a)に示すように、第1の分割小径部21の一端面にフィルム26を接着又は溶着することによって、開口部を封止する。次いで第2の分割小径部22の一端面にフィルム27を接着又は溶着することによって、開口部を封止した後、必須の液剤とは異種の液剤を充填する。次いで第1の分割小径部21の一端面のフィルム26と第2の分割小径部22の他端面を接着又は溶着することにより封止する。
【0023】
続いて、第3の分割小径部23の一端に一体に設けられた大径部24を有する分割容器の分割小径部23と大径部24との段差部にフィルム28を接着又は溶着することにより封止した後吸入させるべき液剤を充填する。
【実施例2】
【0024】
図3は、実施例2による液体カートリッジを示し、(a)は液剤容器と吐出ヘッドとの連通前の模式断面図、(b)は液剤容器と吐出ヘッドとの連通後の模式断面図である。
【0025】
図3に示すように液剤容器E2は、小径部45aと、小径部45aより外径及び内径がわずかに大きい大径部45bとを有する円筒体である。小径部45aの内部には互いに間隔をおいて配置された4枚のフィルム46〜49によって隔離された第1ないし第3の収容部50a〜50cが設けられている。
【0026】
第2の収容部50bは吸入させるべき必須の液剤を収容し、第1の収容部50aには必須の液剤とは異種の液剤を収容し、第3の収容部50cには固体を収容している。
【0027】
本実施例において固体を第3の収容部50cに収容した理由は、液剤を一度吐出したのち分散した固体が吐出ヘッド42のノズルを詰まらせて吐出を阻害させて複数回の吐出を防止するためである。固体の平均粒子径は、吐出ヘッドのノズル径よりも大きくかつその比重が必須の液剤よりも小さいことが望ましい。ここで、固体粒子の「平均粒子径」とは、固体粒子の大きさを分布であらわしたときにその出現比率が最も大きい粒子径チャンネル(モード径)をいう。また、吐出ヘッドのノズル径とは、液剤が液滴として吐出される開口部の直径をいう。固体の比重が必須の液剤より小さい場合、液剤が消費されるにつれて固体粒子が吐出ヘッドの方向に導かれていってノズルを詰まらせることができるため、好ましい。
【0028】
吸入装置による液剤の吸入を開始する際に、図3の(a)に示すように液剤容器E2の小径部45aを液体吐出部41の装着凹部44の中へ図示矢印方向に挿入して装着する。この装着操作の開始から完了するまでの間に次の動作が順次行なわれて吐出ヘッド42に液剤が充填される。
【0029】
連通部材43の尖った先端が第2のフィルム46を突き破って第1の収容部50aが吐出ヘッド42に連通され、必須の液剤とは異種の液剤が吐出ヘッド42へ供給される。
【0030】
次に図3の(b)に示すように、連通部材43の先端が第2のフィルム47を突き破り、第2の収容部50bが吐出ヘッド42に連通されて必須の液剤が吐出ヘッド42に供給される。続いて、連通部材43の先端が第3のフィルム48を突き破り、第3の収容部50cが吐出ヘッド42に連通されて固体が吐出ヘッド42に供給される。つまり、吐出ヘッド42に第1ないし第3の収容部50a〜50cを順次連通させる連通部材43を備えている。
【0031】
この実施例によれば、吐出ヘッドに最初に供給される液剤(吐出口からあふれる液剤51)が、吸入に使用しない液剤であるため、実施例1と同様に充填時および予備吐出時に吸入に使用する薬剤を無駄にすることがない。さらに、吸入に使用する薬剤を吐出した後は、固体が吐出ヘッドに供給されることにより液滴の吐出が阻害される。これにより、1回の吸入で使いきりの液体カートリッジの繰り返し使用を防止できる。
【実施例3】
【0032】
図4は実施例3による液体カートリッジを示し、(a)は液剤容器と吐出ヘッドとの連通前の模式断面図、(b)は液剤容器と吐出ヘッドとの連通完了後の模式断面図である。
【0033】
図4の(a)、(b)に示すように、液剤容器E3は、小径部65aと、外径及び内径が小径部65aよりもわずかに大きい大径部65bとを有している。小径部65aは互いに間隔をおいて配置された5枚のフィルム66〜69、76で隔離された第1の収容部71aないし第4の収容部71dを有している。第1の収容部71aには必須の液剤とは異種の液剤を収容し、第2の収容部71bには吸入の補助剤を収容している。第3の収容部71cには必須の液剤を収容し、第4の収容部71dには吐出を阻害する固体を収容している。
【0034】
具体例をあげると、気管支喘息治療薬では数種類の薬剤が処方されるケースがある。また、交感神経刺激薬(吸収を補助する液剤)により気管支を広げて呼吸を楽にし、その次に副交感神経遮断薬(吐出する液剤)で気管支を広げて喘息の発作を予防する組み合わせが可能となる。
【0035】
また、糖尿病治療に用いる場合、まず交感神経刺激薬(吸収を補助する液剤)により気管支を広げて呼吸を楽にする。その次にインスリン(必須の液剤)を吸入させて肺の毛細血管から吸収させる。このように、吸入される液剤が収容される収容部を複数有する構成では、複数の薬剤を吸入させることが可能となる。
【0036】
実施例1ないし実施例3のように隔離膜によって隔離された複数の収容部を有する液体容器についてまとめると、次のような好ましい実施形態が挙げられる。
【0037】
装着部への液剤容器の装着操作の開始から完了するまでの間に、吐出ヘッドに複数の収容部が順次連通される。そして、複数の収容部のうち、吐出ヘッドに最も近接している収容部、すなわち、装着動作によって最初に吐出ヘッドに連通される第1の収容部に、液体吐出装置で吐出するための必須の液剤とは異種の液剤を収容することが好ましい。
【0038】
また、複数の収容部のうち、前記吐出ヘッドから最も遠ざかっている収容部、すなわち、装着動作によって最後に吐出ヘッドに連通される収容部に、吐出ヘッドの液滴の吐出を阻害する固体を収容することが好ましい。
【実施例4】
【0039】
図5は、実施例4による液体カートリッジを示し、(a)は液剤容器と吐出ヘッドとを連通させる前の模式断面図、(b)は液剤容器と吐出ヘッドとを連通させた後の模式断面図である。
【0040】
図5に示すように、液剤容器E4は、小径部85aと、小径部85aより外径及び内径がわずかに大きい大径部85bとを有している。小径部85aには互いに間隔をおいて配置された3枚の隔離膜であるフィルム86、87、88で隔離された第1の収容部89a及び第2の収容部89bを有する。
【0041】
第1の収容部89aには吸入させるべき必須の液剤とは異種の液剤が収容されているとともに、軸方向に移動自在な第1の貫通部材98aが配置される。また、第2の収容部89b内には吸入させるべき必須の液剤とともに軸方向に移動自在な第2の貫通部材98bが配置される。液体吐出部81は、液剤容器E4の小径部85aを着脱自在に嵌挿できる装着凹部(装着部)84aを有し、装着凹部84aの中心部には連通部材83の先端が嵌合する嵌合凹部84bが設けられている。
【0042】
本実施例において、吸入装置による液剤の吸入を開始する際に、装着凹部84に液剤容器E4を押し込むことにより連通部材83の先端部が嵌合部84bに嵌合される。その後で連通部材83が第1のフィルム86を押し破ることにより、第1の収容部89aと吐出ヘッド82とが連通し、必須の液剤とは異種の液剤が液体吐出部81に充填される。この際連通部材83が嵌合部84bに嵌合された後で、第1のフィルム86が押し破られるように抵抗部材を設置することが望ましい。
【0043】
さらに連通部材83を押し込むことにより、貫通部材98aを介して第2のフィルム87を押し破る。連通部材83と2つの貫通部材98a、98bをさらに押し込むことにより、液体吐出部81に充填されている必須の液剤とは異種の液剤を押し出し、必須の液剤が充填される。そののち、第2の貫通部材98bで第3のフィルム98を押し破ることにより、大気連通口を開口させて液体ヘッド82の吐出面に液剤を溢れさせる。
【0044】
なお、液剤が吐出面に溢れたままでは液滴を吐出できないので、吐出開始するにあたり吐出面の表面を拭って余分の液剤を除去する。
【0045】
本発明の液体カートリッジを吸入装置に装着して用いる場合は、必須の液剤は、利用者に吸入させるべき薬液(インスリン、ビタミンB1など医薬の溶液)、アロマ、ニコチンなどであり、異種の液剤は、精製水、生理食塩水、アルコール水溶液、必須の液剤の溶媒等となる。
【0046】
また、液剤容器は、液剤を収容して滅菌状態を保持する必要があるために、液剤への溶出がなく、生体に無害な材料で構成することが望ましい。例えば、ポリエチレン、軟質ポリプロピレン、ポリカーボネイト、ABS樹脂、シクロオレフィン樹脂、メタクリル樹脂があげられる。また複合樹脂ではポリエチレン/(エチレンビニルアルコール共重合体)、ポリプロピレン/(エチレンビニルアルコール共重合体)等を用いるとよい。
【0047】
図6に、本発明の液体カートリッジを吸入装置に装着した例を模式図で示す。吸入装置本体の一部は透視図としている。
【0048】
前述の吐出ヘッドから溢れた余分の充填用液剤を除去した液体カートリッジ101を吸入装置100に取り付ける。次に吸入装置100のアクセスカバー102を閉じる。アクセスカバー102に設けられた吸入装置側電気接点103を介して液体カートリッジに設けられた電気接点104に電力が供給される。吸入装置100の吐出ボタン105を押すことにより所定の電力が所定時間供給され、液体吐出部の吐出ヘッドより充填用液剤と主の用途の液剤が順に吐出される。所定時間等の霧化の条件は吸入装置100内の制御部106により制御される。すなわち、制御部106は、本発明の液体カートリッジ側の吐出ヘッドの駆動を制御する制御手段としての役割を果たす。吐出ヘッドのノズル径を1.5−3μmとすれば吐出された液滴は粒径約3μmとなり肺の中に送達することが可能となる。
【0049】
本発明の液体カートリッジは、異種の薬剤が収容される第1の収容部(10a,50a,71a,89a)の容積に関する情報を有することが好ましい。例えば、液体カートリッジに取り付けられたバーコードやICタグに、上記の情報を記憶させておくことができる。そして、吸入装置には液体カートリッジが取り付けられたときにバーコード等を読み取ることのできる読取手段を設ける。そして、制御部106は、読取手段の読取結果に基づいて、予備吐出を行うように吐出ヘッドを駆動することができる。例えば、第1の収容部の容積が1mLの場合、吐出ヘッドには1mLの異種の薬剤が供給される。充填動作によりあふれる液量を予め考慮して、0.9mL分の液剤を吐出するように予備吐出をするように制御部106により吐出ヘッドを駆動する。これにより、吸入すべき薬剤を無駄にしないで予備吐出を行うことができる。また、吸入時には本来の吸入すべき薬剤を最初から吸入することができる。予備吐出は、利用者が吸入装置の電源を入れ、吸入準備が完了した後の吸入直前に装置が自動的に行っても良い。または、利用者の吐出ボタン105の操作により予備吐出を行っても良い。予備吐出の吐出量に関しては、液体カートリッジに記憶された異種の薬剤の量に基づいて、吸入装置側で予め決定しておいても良いし、利用者が上記の情報にしたがって予備吐出回数相当のパラメータを入力するような形態でも構わない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施例1による吸入用液体カートリッジを示し、(a)は液剤容器と吐出ヘッドとの連通前の模式断面図、(b)は連通後の模式断面図である。
【図2】本発明の吸入用液体カートリッジにおける液剤容器の製造工程の説明図である。
【図3】実施例2による吸入用液体カートリッジを示し、(a)は液剤容器と吐出ヘッドとの連通前の模式断面図、(b)は連通後の模式断面図である。
【図4】実施例3による吸入用液体カートリッジを示し、(a)は液剤容器と吐出ヘッドとの連通前の模式断面図、(b)は連通後の模式断面図である。
【図5】実施例4による吸入用液体カートリッジを示し、(a)は液剤容器と吐出ヘッドとの連通前の模式断面図、(b)は連通後の模式断面図である。
【図6】本発明の液体カートリッジを吸入装置に装着した例を示す模式斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
1、41、61、81 液体吐出部
2、42、62、82 吐出ヘッド
3、43、63、83 連通部材
4、44、64、84 装着凹部(装着部)
5、45、65、85 第1のフィルム
6、46、66、86 第2のフィルム
7、47、67、87 第3のフィルム
100 吸入装置
101 液体カートリッジ
102 アクセスカバー
103 吸入化装置側電気接点
104 電気接点
105 吐出ボタン
106 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出装置に取り付け可能な液体カートリッジであって、
隔離膜によって隔離された第1及び第2の収容部を有する液剤容器と、
液滴を吐出させる吐出ヘッド及び前記液剤容器を装着するための装着部を有する液体吐出部と、
前記装着部への前記液剤容器の装着操作の開始から完了するまでの間に、前記吐出ヘッドに前記第1及び前記第2の収容部を順次連通させる連通部材と、を備えており、
前記第2の収容部に必須の液剤を収容し、前記第1の収容部に前記必須の液剤とは異種の液剤を収容することを特徴とする液体カートリッジ。
【請求項2】
液体吐出装置に取り付け可能な液体カートリッジであって、
隔離膜によって隔離された第1ないし第3の収容部を有する液剤容器と、
液滴を吐出させる吐出ヘッド及び前記液剤容器を装着するための装着部を有する液体吐出部と、
前記装着部への前記液剤容器の装着操作の開始から完了するまでの間に、前記吐出ヘッドに前記第1ないし前記第3の収容部を順次連通させる連通部材と、を備えており、
前記第2の収容部に必須の液剤を収容し、前記第1の収容部に前記必須の液剤とは異種の液剤を収容し、前記第3の収容部に前記吐出ヘッドの液滴の吐出を阻害する固体を収容することを特徴とする液体カートリッジ。
【請求項3】
液体吐出装置に取り付け可能な液体カートリッジであって、
隔離膜によって隔離された第1ないし第4の収容部を有する液剤容器と、
液滴を吐出させる吐出ヘッド及び前記液剤容器を装着するための装着部を有する液体吐出部と、
前記装着部への前記液剤容器の装着操作の開始から完了するまでの間に、前記吐出ヘッドに前記第1ないし前記第4の収容部を順次連通させる連通部材と、を備えており、
前記第2及び前記第3の収容部に必須の液剤を収容し、前記第1の収容部に前記必須の液剤とは異種の液剤を収容し、前記第4の収容部に前記吐出ヘッドの液滴の吐出を阻害する固体を収容することを特徴とする液体カートリッジ。
【請求項4】
前記第1の収容部に収容された液剤は、前記第2の収容部に収容された前記必須の液剤の溶媒であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の液体カートリッジ。
【請求項5】
前記第1の収容部に収容された液剤は、精製水、生理食塩水又はアルコール水溶液であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の液体カートリッジ。
【請求項6】
前記固体の平均粒子径が、前記吐出ヘッドのノズル径よりも大きく、かつその比重が前記必須の液剤よりも小さいことを特徴とする請求項2または3に記載の液体カートリッジ。
【請求項7】
前記必須の液剤は、薬剤であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の液体カートリッジ。
【請求項8】
液体吐出装置に取り付け可能な液体カートリッジであって、
隔離膜によって隔離された複数の収容部を有する液剤容器と、
液滴を吐出させる吐出ヘッド及び前記液剤容器を装着するための装着部を有する液体吐出部と、
前記装着部への前記液剤容器の装着操作の開始から完了するまでの間に、前記吐出ヘッドに前記複数の収容部を順次連通させる連通部材と、を備えており、
前記複数の収容部のうち、前記吐出ヘッドに最も近接している収容部に、該液体吐出装置で吐出するための必須の液剤とは異種の液剤を収容することを特徴とする液体カートリッジ。
【請求項9】
前記複数の収容部のうち、前記吐出ヘッドから最も遠ざかっている収容部に、前記吐出ヘッドの液滴の吐出を阻害する固体を収容することを特徴とする請求項8に記載の液体カートリッジ。
【請求項10】
前記異種の薬剤が収容される収容部の容積に関する情報を有することを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の液体カートリッジ。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の液体カートリッジと、
前記吐出ヘッドの駆動を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする吸入装置。
【請求項12】
請求項10に記載の液体カートリッジと、
前記情報の読取手段と、を備えており、
前記読取手段の読取結果に基づいて、前記異種の液剤により利用者に吸入されることのない予備吐出を行うように前記吐出ヘッドを駆動することを特徴とする吸入装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−45441(P2009−45441A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163977(P2008−163977)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】