説明

液体カートリッジ

【課題】液体噴射ヘッド内への気泡の侵入を防止することができる液体カートリッジを提供する。
【解決手段】液滴を噴射可能な液体噴射ヘッド2に供給する液体を貯留する液体貯留部15と、液体噴射ヘッド2内の流路と連通するカートリッジ接続部21に接続され、液体貯留部15の液体をカートリッジ接続部21に向けて流入させる液体供給部16と、を有する液体カートリッジ3であって、液体供給部16は、液体貯留部15からの液体が浸透する多孔質材からなるフォーム部17と、該フォーム部のカートリッジ接続部21側に形成されたフィルター部材18と、から構成され、該フィルター部材18は、カートリッジ接続部21側の面とフォーム部17側の面との間を貫通する貫通孔19を有し、貫通孔19は、テーパー形状であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式記録装置などの液体噴射ヘッドに液体を供給する液体カートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置は液体噴射ヘッドを備え、この噴射ヘッドから各種の液体を噴射する装置である。この液体噴射装置としては、例えば、インクジェット式プリンターやインクジェット式プロッター等の画像記録装置があるが、最近ではごく少量の液体を所定位置に正確に着弾させることができるという特長を生かして各種の製造装置にも応用されている。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタを製造するディスプレイ製造装置,有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイやFED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極形成装置,バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置に応用されている。そして、画像記録装置用の記録ヘッドでは液状のインクを噴射し、ディスプレイ製造装置用の色材噴射ヘッドではR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極形成装置用の電極材噴射ヘッドでは液状の電極材料を噴射し、チップ製造装置用の生体有機物噴射ヘッドでは生体有機物の溶液を噴射する。
【0003】
この種の液体噴射ヘッドとしては、流通に乗せ易く取り扱いが容易なカートリッジタイプの液体貯留部材を用いるものが開発されている。例えば、インクジェット式プリンター(以下、単にプリンターという)では、液体状のインクを封入したインクカートリッジを使用するものが広く普及している。このようなインクカートリッジには、内部に貯留したインクが浸透する多孔質材と該多孔質体に密接させたフィルターとをインク供給部として構成し、該インク供給部を記録ヘッド側のインク導入口に接続させるものがある。この構成では、インクカートリッジ内のインクは、インク供給部およびインク導入口を通じて記録ヘッド側に導入される。また、フィルターは、多孔質材の破片等からなるゴミや気泡等が記録ヘッド側に侵入するのを防いでいる。そして、インク導入口から記録ヘッド内に流入したインクは、ヘッド内部の流路を通じて圧力室に供給される。記録ヘッドは、この圧力室内のインクに圧力変動を生じさせ、この圧力変動を利用してノズルから液体を噴射する。
【0004】
ここで、インクカートリッジのインク供給部と記録ヘッドのインク導入口とを接続する際に、これらの接続部分に気泡が入り込み、この気泡がインク導入口から記録ヘッド側に侵入する虞があった。記録ヘッド側に侵入した気泡が圧力室に達すると、当該気泡がインク流路やノズル等を塞ぐことによりインクが噴射されない所謂ドット抜けが生じる虞があった。また、記録ヘッドに侵入した気泡を除去するために、定期的に記録媒体(着弾対象)以外にインクを吐出するクリーニング処理が必要になり、その分インクが無駄に消費されていた。このような不具合を解決すべく、記録ヘッドのインク導入口にフィルターを取付け、気泡の侵入を防いだものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−71900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような従来のインクカートリッジを搭載したプリンターは、記録ヘッドのインク導入口およびインクカートリッジのインク供給部の両方にフィルターを設けているため、これらを接続する際に、この接続部に気泡が入り込んでしまう場合があった。このため、当該気泡によって記録ヘッドへのインクの供給が阻害される虞があった。また、場合によっては、インクカートリッジからのインクの流入に伴って、一部の気泡がフィルターを通じて記録ヘッド内に侵入する虞もあった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体噴射ヘッド内への気泡の侵入を防止することができる液体カートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液体カートリッジは、上記目的を達成するために提案されたものであり、液滴を噴射可能な液体噴射ヘッドに供給する液体を貯留する液体貯留部と、
液体噴射ヘッド内の流路と連通するカートリッジ接続部に接続され、前記液体貯留部の液体を前記カートリッジ接続部に向けて流入させる液体供給部と、
を有する液体カートリッジであって、
前記液体供給部は、前記液体貯留部からの液体が浸透する多孔質材からなるフォーム部と、該フォーム部のカートリッジ接続部側に形成されたフィルター部材と、から構成され、
該フィルター部材は、カートリッジ接続部側の面とフォーム部側の面との間を貫通する貫通孔を有し、
前記貫通孔は、テーパー形状であることを特徴とする。
【0009】
本発明の液体カートリッジによれば、カートリッジ接続部と液体カートリッジの液体供給部とを接続する際に、これらの間に気泡が生じたとしても、この気泡の全部または一部を、貫通孔を介して液体カートリッジ側に逃がすことができる。特に、貫通孔の内径を、フィルター部材の液体に対する濡れ易さ(接触角の度合い)に応じたテーパー形状にすることで、毛細管力により気泡を確実にフォーム部側へ移動させることができる。これにより、気泡が液体噴射ヘッド内に侵入することを防止できる。
【0010】
上記構成において、前記フィルター部材は親水性の部材で構成され、
前記貫通孔はフォーム部側からこれとは反対側に向けて内径を次第に小さくしたことが望ましい。
【0011】
この構成によれば、フィルター部材を親水性(接触角が90°より小さい場合)の部材で構成した場合であっても、カートリッジ接続部と液体カートリッジの液体供給部との間に生じた気泡を、貫通孔を介して確実にフォーム部側に逃がすことができる。
【0012】
また、前記フィルター部材は疎水性の部材で構成され、
前記貫通孔はフォーム部側からこれとは反対側に向けて内径を次第に大きくしたことが望ましい。
【0013】
この構成によれば、フィルター部材を疎水性(接触角が90°より大きい場合)の部材で構成した場合であっても、カートリッジ接続部と液体カートリッジの液体供給部との間に生じた気泡を、貫通孔を介して確実にフォーム部側に逃がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】プリンターの斜視図である。
【図2】インクカートリッジおよび記録ヘッドの構成を説明する模式図である。
【図3】インクカートリッジと記録ヘッドの接続を説明する模式図である。
【図4】カートリッジ側フィルターが親水性の場合における貫通孔の断面拡大図である。
【図5】カートリッジ側フィルターが疎水性の場合における貫通孔の断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、本発明の液体噴射装置として、インクジェット式記録装置1(以下、プリンター)を例に挙げて説明する。
【0016】
図1はプリンター1の構成を示す斜視図である。このプリンター1は、液体噴射ヘッドの一種である記録ヘッド2が取り付けられると共に、液体カートリッジの一種であるインクカートリッジ3が着脱可能に取り付けられるキャリッジ4と、記録動作時の記録ヘッド2の下方に配設されたプラテン5と、キャリッジ4を記録紙6(記録媒体および着弾対象の一種)の紙幅方向、即ち、主走査方向に往復移動させるキャリッジ移動機構7と、主走査方向に直交する副走査方向に記録紙6を搬送する搬送機構8と、を備えている。
【0017】
キャリッジ4は、主走査方向に架設されたガイドロッド9に軸支された状態で取り付けられており、キャリッジ移動機構7の作動により、ガイドロッド9に沿って主走査方向に移動する。キャリッジ4の主走査方向の位置は、位置情報検出手段の一種であるリニアエンコーダー10によって検出され、その検出信号、即ち、エンコーダーパルス(位置情報の一種)をプリンター1の制御部に送信する。
【0018】
また、キャリッジ4の移動範囲内における記録領域よりも外側の端部領域には、キャリッジ4の走査の基点となるホームポジションが設定されている。本実施形態におけるホームポジションには、記録ヘッド2のノズル形成面を封止するキャッピング部材11と、ノズル形成面を払拭するためのワイパー部材12とが配置されている。そして、プリンター1は、このホームポジションから反対側の端部へ向けてキャリッジ4が移動する往動時と、反対側の端部からホームポジション側にキャリッジ4が戻る復動時との双方向で記録紙6上に文字や画像等を記録する所謂双方向記録を行う。
【0019】
図2は、インクカートリッジ3と記録ヘッド2の構成を模式的に示した断面図である。
上記のインクカートリッジ3は、熱可塑性プラスチック等の成型により作製された箱状の液体貯留部15を備え、この液体貯留部15内にはインク(記録ヘッド2から噴射する液体の一種)を貯留する空間が形成されている。また、液体貯留部15内の空間には液体保持部材の一種であるインク保持材(図示せず)が収容されており、この保持部材にインクを吸収することで、液体貯留部15内にインク保持している。なお、インク保持材としては、例えば、スポンジ状の発泡素材(多孔質材)が好適に用いられる。
【0020】
インクカートリッジ3(液体貯留部15)の底面部(記録ヘッド2側)には、後述するカートリッジ接続部21に接続され、液体貯留部15内のインクをカートリッジ接続部21に向けて流入させるインク供給部16(本発明における液体供給部に相当)が形成されている。インク供給部16は、液体貯留部15からのインクが浸透するフォーム部17と、該フォーム部17のカートリッジ接続部21側に形成されたカートリッジ側フィルター18(本発明におけるフィルター部材に相当)と、から構成されている。フォーム部17は、例えば、スポンジ状の発泡素材等からなる多孔質材を用いて、底面積がカートリッジ接続部21の接続面の面積より僅かに小さい円柱状あるいは多角柱状に形成されている。そして、インク供給部16がカートリッジ接続部21に接続された状態で、液体貯留部15からのインクは毛細管力によりフォーム部17内を浸透し、記録ヘッド2側に流入する。
【0021】
また、フォーム部17の底面は、カートリッジ側フィルター18により覆われている。詳しくは、カートリッジ側フィルター18は、フォーム部17の底面よりも僅かに大きく形成され、フォーム部17の底面に接続されている。このカートリッジ側フィルター18の周縁の一部には、カートリッジ側フィルター18を固定する固定部材(図示せず)が固定されている。固定部材は、例えば、カートリッジ側フィルター18の厚みよりも細い針状の部材を、カートリッジ側フィルター18の四方の端部に、それぞれの一端を当該端部側に折り曲げた状態で固定されている。この固定部材の他端をインク貯留部15の底面に固定することにより、フォーム部17の底面が位置決めされる。なお、カートリッジ側フィルターとしては、フォーム部17の底面を覆うフィルター面部と、当該フィルター面部の周縁からインク貯留部15の底面側に向けて斜めに延出した側面部とからなる、フィルター面部を底としたカップ状に形成してもよい。この場合は、カートリッジ側フィルターの側面部の端部をインク貯留部15の底面に固定し、フィルター面部、側面部、およびインク貯留部15の底面によって区画される空間に、フォーム部17を収容する。また、カートリッジ側フィルター18は、例えば、ナイロン、ガラス、ポリエステル,ポリエチレン等の繊維、またはこれらを組み合わせたものを原料とした不織布が用いられる。なお、本実施形態では、繊維間の平均間隔が10μm程度の不織布を用いている。
【0022】
さらに、図3に示すように、本実施形態のカートリッジ側フィルター18は、カートリッジ接続部21側の面とフォーム部17側の面との間を貫通する貫通孔19を複数有している。このため、フォーム部17からのインクは、この貫通孔19および不織布の繊維間を通じて、記録ヘッド2側へ送られる。すなわち、カートリッジ側フィルター18は、フォーム部17からのゴミ等が記録ヘッド2側に混入することを防ぐ。ここで、貫通孔19は、内径が当該貫通孔19の軸方向で異なるテーパー形状に形成されている。そして、このテーパーの傾斜方向は、カートリッジ側フィルター18を構成する不織布のインクに対する濡れ易さ(接触角の度合い)に応じて決定される。
【0023】
具体的に説明すると、カートリッジ側フィルター18が親水性(接触角が90°より小さい場合)の不織布で構成される場合、図3、図4に示すように、貫通孔19は、フォーム部17側からこれとは反対側(後述するヘッド側フィルター23側)に向けて内径が次第に小さくなるように形成される。すなわち、カートリッジ側フィルター18の断面において、ヘッド側フィルター23側の底面と貫通孔19の内面とのなす角θが90°よりも小さくなるように貫通孔19が形成される。一方、カートリッジ側フィルター18が疎水性(接触角が90°より大きい場合)の不織布で構成される場合、図5に示すように、貫通孔19はフォーム部17側からこれとは反対側(ヘッド側フィルター23側)に向けて内径が次第に大きくなるように形成される。すなわち、カートリッジ側フィルター18の断面において、ヘッド側フィルター23側の底面と貫通孔19の内面とのなす角θが90°よりも大きくなるように貫通孔19が形成される。これにより、インク供給部16とカートリッジ接続部21とを接続する際に、これらの間に気泡Bが取り込まれた場合、この気泡Bが、この貫通孔19を通じて毛細管力によりフォーム部17側へ移動する。なお、貫通孔19における気泡Bの移動については、後述する。また、貫通孔19は、当該カートリッジ側フィルター18を形成する不織布の繊維間の平均間隔よりも十分に大きい径であって、その内部に働く毛細管力に比べて、気泡Bに働く浮力が無視できる程度の大きさに形成されている(例えば、数十μm程度)。
【0024】
インクカートリッジ3のインク供給部16と接続されるカートリッジ接続部21は、記録ヘッド2の上部(インクカートリッジ3側)、例えば、記録ヘッド2の上部に備えられたカートリッジホルダー(図示を省略)に設けられている。このカートリッジ接続部21は、インクカートリッジ3からのインクを受け入れるインク導入口22(液体導入口)と、インク導入口22の上端側の開口部を塞ぐヘッド側フィルター23とを有している。すなわち、ヘッド側フィルター23のインク供給部16側の面が、インク供給部16のカートリッジ側フィルター18と接続される接続面となる。インク導入口22は、上方から下方に向けて内径が次第に小さくなる漏斗状に形成されている。このインク導入口22の下側は、後述するインク導入路25と連通する。ヘッド側フィルター23は、カートリッジ側フィルター18と同様に繊維等からなる不織布が用いられ、インクカートリッジ3からインク導入口22に流入するインクを濾過する。
【0025】
本実施形態の記録ヘッド2は、ヘッドケース、流路形成基板、ノズルプレート等を積層して構成される。この記録ヘッド2の内部には、インク導入路25、リザーバー26、圧力室27、連通室28、及びノズル29に至るまでのインク流路と、圧力発生手段の一種として機能する圧電振動子30と、が設けられている。
【0026】
インク導入路25は、一端(上流端)がインク導入口22に連通し、他端がリザーバー26に連通した一連の流路である。リザーバー26は、ノズル列方向に沿って長尺な空部であり、当該リザーバー26の短尺方向において、インク導入路25とは反対側の端部で各圧力室27と連通している。したがって、リザーバー26内のインクは、各圧力室27にそれぞれ供給される。なお、リザーバー26と各圧力室27の連通部分は、圧力室27よりも狭い幅で形成されており、リザーバー26から圧力室27に流入するインクに対して一定の流路抵抗を付与している。
【0027】
圧力室27は、ノズル29の列設方向(ノズル列方向)に対して直交する方向に細長い室として形成されている。また、圧力室27を挟んでリザーバー26とは反対側には、連通室28が形成されている。連通室28は、一端(上流端)が圧力室27に連通し、他端がノズル29に連通した流路である。このため、圧力室27内のインクに圧力変動が生じると、連通室28を通じてノズル29からインクが噴射される。なお、ノズル29は、ドット形成密度に対応したピッチ(例えば180dpi)で複数(例えば、180個)のノズル29が副走査方向に沿って列状に穿設されている。
【0028】
また、圧力室27の上面には、可撓性を有する振動板32が設けられている。この振動板32の圧力室27とは反対側の面には、圧電振動子30が配設されている。本実施形態の圧電振動子30は、所謂撓み振動モードの圧電振動子30であり、駆動電極と共通電極とによって圧電体を挟んで構成されている(図示を省略)。そして、圧電振動子30の駆動電極に駆動信号が印加されると、駆動電極と共通電極との間には電位差に応じた電場が発生する。この電場は圧電体に付与され、圧電体が付与された電場の強さに応じて変形する。そして、この変形により、圧力室27内の容積が変化し、圧力室27内のインクの圧力が変動する。
【0029】
そして、上記構成の記録ヘッド2では、カートリッジ接続部21(ヘッド側フィルター23)にインクカートリッジ3のインク供給部16(カートリッジ側フィルター18)を接続することで、カートリッジ接続部21を通じてインクを取り込むことができる。記録ヘッド2に取り込まれたインクは、リザーバー26を通じて、各圧力室27を満たす。そして、各圧力室27がインクで満たされた状態で、上記のように圧電振動子30を作動させると、圧力室27の容積が変化し、この圧力変動を制御することで、ノズル29からインク滴が噴射(吐出)される。
【0030】
ところで、カートリッジ接続部21とインク供給部16を接続する際に、ヘッド側フィルター23とカートリッジ側フィルター18との間に気泡Bが残ることがある。本実施形態のカートリッジ側フィルター18は、貫通孔19を複数有しているため、これらの気泡Bの全部または一部をこの貫通孔19を通じてフォーム部17側に移動させることができる。
【0031】
この貫通孔19内の気泡Bの移動について説明する。貫通孔19内に気泡Bが混入すると、この気泡Bを挟んだ上下の液体に毛細管力が働く。すなわち、カートリッジ側フィルター18が親水性の場合には、気泡Bを挟んで下側(ヘッド側フィルター23側)の液面は、上昇しようとするのに対し、気泡Bを挟んで上側(フォーム部17側)の液面は、下降しようとする。このため、気泡Bの移動方向は、これらの圧力のバランスにより決まる。ここで、管の内部の液体に働く毛細管力は、管の内径の大きさに反比例することが知られている。本実施形態では、カートリッジ側フィルター18が親水性の場合、図3、図4に示すように、貫通孔19の内径をフォーム部17側からこれとは反対側に向けて次第に小さくしたテーパー形状に形成しているため、毛細管力は、気泡Bを挟んで上側の液体よりも下側の液体の方で強くなる。このため、気泡Bは液体の移動に伴ってフォーム部17側に移動(上昇)し、フォーム部17に取り込まれる。その結果、気泡Bが記録ヘッド2内に侵入することを防止できる。
【0032】
一方、カートリッジ側フィルター18が疎水性の場合には、気泡Bを挟んで下側(ヘッド側フィルター23側)の液面は、下降しようとするのに対し、気泡Bを挟んで上側(フォーム部17側)の液面は、上昇しようとする。この場合も、気泡Bの移動方向は、これらの圧力のバランスにより決まる。本実施形態では、カートリッジ側フィルター18が疎水性の場合、図5に示すように、貫通孔19の内径をフォーム部17側からこれとは反対側に向けて次第に大きくしたテーパー形状に形成しているため、毛細管力は、気泡Bを挟んで下側の液体よりも上側の液体の方で強くなる。このため、気泡Bは液体の移動に伴ってフォーム部17側に移動(上昇)し、フォーム部17に取り込まれる。その結果、気泡Bが記録ヘッド2内に侵入することを防止できる。
【0033】
このように、カートリッジ接続部21とインクカートリッジ3のインク供給部16とを接続する際に、これらの間に気泡が生じたとしても、この気泡の全部または一部を、貫通孔19を介してインクカートリッジ3側に逃がすことができる。特に、貫通孔19の内径を、カートリッジ側フィルター18の液体に対する濡れ易さ(接触角の度合い)に応じたテーパー形状にすることで、毛細管力により気泡を確実にフォーム部17側へ移動させることができる。これにより、気泡が記録ヘッド2内に侵入することを防止できる。
【0034】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。例えば、上記した実施形態では、圧力発生手段として、所謂撓み振動型の圧電振動子を例示したが、これには限られず、例えば、所謂縦振動型の圧電振動子を採用することも可能である。さらに、圧力発生手段としては圧電振動子には限らず、圧力室内に気泡を発生させる発熱素子や静電気力を利用して圧力室の容積を変動させる静電アクチュエーター等の各種圧力発生手段を用いる場合にも本発明を適用することができる。
【0035】
そして、本発明は、圧力発生手段を用いて液体の噴射制御が可能な液体噴射装置に用いられる液体カートリッジであれば、プリンターに限らず、プロッター、ファクシミリ装置、コピー機等、各種のインクジェット式記録装置や、記録装置以外の液体噴射装置、例えば、ディスプレイ製造装置、電極製造装置、チップ製造装置等に用いられる液体カートリッジにも適用することができる。そして、ディスプレイ製造装置では、色材噴射ヘッドからR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極製造装置では、電極材噴射ヘッドから液状の電極材料を噴射する。チップ製造装置では、生体有機物噴射ヘッドから生体有機物の溶液を噴射する。
【符号の説明】
【0036】
1…プリンター,2…記録ヘッド,3…インクカートリッジ,15…液体貯留部,16…インク供給部,17…フォーム部,18…カートリッジ側フィルター,19…貫通孔,21…カートリッジ接続部,22…インク導入口,23…ヘッド側フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を噴射可能な液体噴射ヘッドに供給する液体を貯留する液体貯留部と、
液体噴射ヘッド内の流路と連通するカートリッジ接続部に接続され、前記液体貯留部の液体を前記カートリッジ接続部に向けて流入させる液体供給部と、
を有する液体カートリッジであって、
前記液体供給部は、前記液体貯留部からの液体が浸透する多孔質材からなるフォーム部と、該フォーム部のカートリッジ接続部側に形成されたフィルター部材と、から構成され、
該フィルター部材は、カートリッジ接続部側の面とフォーム部側の面との間を貫通する貫通孔を有し、
前記貫通孔は、テーパー形状であることを特徴とする液体カートリッジ。
【請求項2】
前記フィルター部材は親水性の部材で構成され、
前記貫通孔はフォーム部側からこれとは反対側に向けて内径を次第に小さくしたことを特徴とする請求項1に記載の液体カートリッジ。
【請求項3】
前記フィルター部材は疎水性の部材で構成され、
前記貫通孔はフォーム部側からこれとは反対側に向けて内径を次第に大きくしたことを特徴とする請求項1に記載の液体カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−82078(P2013−82078A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221693(P2011−221693)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】