説明

液体クロマトグラフ用粘度計

【課題】 本発明の解決すべき課題は粘度信号のテーリングが生じにくく、しかも小流量液の粘度変化を高精度に測定することのできる液体クロマトグラフ用粘度検出装置を提供することにある。
【解決手段】 ダイヤフラム44の基準位置に対する変位を検出する変位検出手段46と、
前記ダイヤフラム44の変位を低減するようにダイヤフラム44に対し変位抑制力を印加する変位抑制手段48と、
前記変位抑制手段48による変位抑制力値より流体の粘度を算出する粘度算出手段52と、
を備えた平衡ブリッジ型粘度検出装置24。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘度検出装置、特にダイヤフラム式差圧トランスデューサーを用いた粘度検出装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフ装置の溶離液に含まれる高分子物質のサイズ、分子量を測定するためには、通常、多孔質ゲル等により分子サイズ等で分離することができる分析カラムと、示差屈折率検出器或いは紫外吸収検出器が汎用される。
【0003】
ところで高分子物質には、単にその分子量のみならず、空間的な展開の度合いなど、サイズによっても挙動に大きな違いが認められる。そこで、予めサイズや分子量と濃度が既知の高分子物質を試料として用い、各特性と溶出位置との関係を求めておき、未知高分子物質の溶出位置と比較することで、対象高分子物質のサイズ或いは分子量を見積もることができる。また、紫外吸光度や屈折率の変化の大きさから濃度を求めることもできる。
【0004】
一般的に、紫外吸光度や屈折率は重量濃度に依存し、粘度は重量濃度と分子サイズ、分子量に依存することから、屈折率と粘度、或いは紫外吸光度と粘度を同時に測定することによってサイズ或いは分子量に関する情報を直接的に得ることができる。
【0005】
ところで、液体クロマトグラフ装置の溶離液のように、微量でしかも連続的に粘度の測定を行う必要がある場合には、キャピラリーブリッジを用いた粘度計を用いることが多い。
このキャピラリーブリッジを用いた粘度計の例が、特許文献1ないし3に開示されている。すなわち、キャピラリーブリッジは、最も基本的には、同じ長さ、内径を有する4本のキャピラリー(細管)をブリッジ状に接続したものであり、各細管にキャリア液を充たした上で、試料液(通常、キャリア液に高分子物質を含む液)を一本の細管に送りこむと、試料液粘度とキャリア液粘度の差に依存して細管の両端に発生する圧力が変化する。したがって、ブリッジの中点の圧力差から試料液の粘度を求めることができる。なお、連続的に粘度測定を行う際には、いずれか一方の直列ペア細管の後段細管と中点との間に、試料液を滞留ないし希釈し、前段細管を経由して流入する流体が粘度測定期間中、直接該後段細管に流入しないようにする希釈管ないし遅延管を設ける。そして、中点における圧力差の測定にはダイヤフラム式差圧トランスデューサーを用いることが多い。
【0006】
液体クロマトグラフ用粘度計としてダイヤフラム型キャピラリーブリッジ粘度計を用いる場合、細管として内径が0.2〜0.4mm、長さが数十cm〜数mのステンレス細管またはPEEK細管が用いられている。粘度計に流す流量は、分析カラムのサイズなどによって変わるが、通常0.2〜0.3ml/分ないし2〜3ml/分である。
【0007】
そして、ダイヤフラムの変位を可変リラクタンス型差圧トランスデューサーで検出する場合には、通常、磁性体で作られたダイヤフラムの両側にコイルが垂直向きで近接して配置されている。さらに、ダイヤフラムの中心部が平面を保ったまま、差圧によって平行移動しやすくするために、ダイヤフラムの周辺部がヒダ状になっている。そして、ダイヤフラムの両側に差圧が生じると、ダイヤフラムの面が最大0.025〜0.05mm移動し、コイルとダイヤフラムの距離が変化してリラクタンスが変化する。直列に配線接続された両コイルの両端に5V(実効値)、3〜5kHz程度の交流電圧が逆極性で加えられる。両コイルのリラクタンスに差がない時には、両コイルの接続点に交流電圧が生じないが、リラクタンスに差が生じると、差の値に応じて交流電圧が出力される。
【0008】
一般に、可変リラクタンス型差圧トランスデューサーでは、ダイヤフラムはヒステレシスが小さい軟質磁性材料で作られている。厚さを変えるなどしてダイヤフラムの剛性を変えることにより所定の差圧に対するダイヤフラムの変位量を変えることができ、差圧の検出感度を調整できる。
【0009】
ところで、液体クロマトグラフにおいて、少量の試料に対応し、溶離液の消費量を減らし、分析時間を短縮化するために、近年、分析カラムに充填する粒子の細径化と分析カラムの小口径化が進んできている。そのため、0.2〜0.3ml/分以下の溶離液流量が使われることが増えてきた。
【0010】
液体クロマトグラフの流量が小さくなると、キャピラリーブリッジに同じ径の細管を使用した場合、細管の両端間に発生する圧力が小さくなる。したがって、低流量で検出可能な圧力を発生するためには、より細い径の細管を使用するか、より感度が高い差圧トランスデューサーを用いる必要があった。ところが、0.2mm以下の径の細管を使うと粘度信号のピークがテーリングすることが明らかになった。一方、粘度計の下流に示差屈折計などの検出器を接続して調査したところ、粘度信号のテーリングはピーク成分の広がりによって起きているのではない。
【0011】
また、ダイヤフラムを薄くしたり、ダイヤフラムの周辺に通常より多くのヒダを設けたり、ダイヤフラムを弾性に富む材質で作るなどして差圧トランスデューサーの感度を上げると、細管の径を小さくした時と同様に、粘度信号のピークがテーリングすることが解った。
【0012】
【特許文献1】特開昭59−160740号公報
【特許文献2】特開平11−83823号公報
【特許文献3】特表平11−514744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は前記従来技術に鑑みなされたものであり、その解決すべき課題は粘度信号のテーリングが生じにくく、しかも小流量液の粘度変化を高精度に測定することのできる粘度検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために本発明にかかる平衡ブリッジ型粘度検出装置は、
いずれか一方の直列ペア細管の後段細管と中点との間に設置され、前段細管を経由して流入する流体を粘度測定期間中、滞留ないし希釈し、後段細管に基準粘度流体を導入する基準粘度調整手段と、
前記ダイヤフラムの基準位置に対する変位を検出する変位検出手段と、
前記ダイヤフラムの変位を低減するようにダイヤフラムに対し変位抑制力を印加する変位抑制手段と、
前記変位抑制手段による変位抑制力値より流体の粘度を算出する粘度算出手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、前記装置において、ダイヤフラムは磁性体を含み、また変位抑制手段は、前記ダイヤフラムの外周に配置されたソレノイドコイルを含み、変位検出手段による検出結果に基づき前記ソレノイドコイルを励磁し、ダイヤフラムに変位抑制力を印加することが好適である。
【0016】
また、前記装置において、変位抑制手段は流体ポンプを含み、基準粘度調整手段が設置された側の中点の圧力が他方の中点の圧力より低くなったときに該中点に液体を注入し、あるいは該中点の圧力が他方の中点の圧力より高くなったときに該中点から液体を吸引し、ダイヤフラムに変位抑制力を印加することが好適である。
また、前記装置において、変位抑制手段は少なくともいずれかの細管直列ペアの後段細管側に配置された圧力調整弁を含み、該圧力調整弁の開度調整によりダイヤフラムに変位抑制力を印加することが好適である。
【0017】
また、前記装置において、
ダイヤフラムは磁性体を含み、
変位検出手段は、ダイヤフラムの両側に配置された検出コイルを含み、ダイヤフラムがいずれの検出コイルに近接したかを磁気的に検出し、
変位抑制手段は、ダイヤフラムの変位に応じて前記いずれかの検出コイルに変位抑制電流を重畳的に印加することが好適である。
【0018】
また、前記装置において、変位抑制手段は、ダイヤフラムの変位に応じて前記いずれかの検出コイルにチョークコイルを介して直流電流を供給することが好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる液体クロマトグラフ用粘度検出装置は、前述したようにダイヤフラムの変位を抑制する変位抑制手段を有し、ダイヤフラムの変位量から粘度を算出するのではなく、ダイヤフラムの変位を抑制するのに必要な抑制力値から粘度を算出することとしているので、ダイヤフラムの変位量を厳密に測定する必要がなくなり、検出精度の向上を図ることができるとともに、トランスデューサーの感度向上を試みた際などに生じるテーリングを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は本発明が適用される液体クロマトグラフ10の概略構成が示されている。
同図に示す液体クロマトグラフ10は、分析カラム12及び該カラム12の下流側に配置された検出器14、カラム12に溶離液(キャリア液)16を供給するポンプ18、分析カラム12の上流側に試料を注入可能なインジェクションバルブ20を備える。そして、本発明において特徴的な粘度検出装置24をカラム12と検出器14の間に設けている。
【0021】
なお、検出器14としては、示差屈折率計を用いたほうが、汎用的に用いることができるが、分析対象物が紫外吸収を持つ場合には、紫外線吸収検出器の方が感度が高いため、より好ましく用いられる。
【0022】
本実施形態において、粘度検出装置24は図2に示すように構成されている。
すなわち、粘度検出装置24は、4本の細管26,28,30,32を備え、細管26,28は流入路34及び流出路36に対して直列に接続され、また、細管30,32も直列に接続されている。なお、細管30と細管32の間には、希釈管ないし遅延管よりなる粘度調整管38が設置されている。ここで、希釈管としては、充分大きな内容量を有し、撹拌子で内部液体が撹拌される中空円筒管が用いられ、また遅延管としてはガラスビーズなどを充填した円筒管(カラム)が多く用いられる。そして、細管26,28の中点40と、細管30と粘度調整管38の中点42との間にはブリッジが形成され、該ブリッジの中点にはダイヤフラム44を有した差圧トランスデューサー46が設置されている。差圧トランスデューサー46は、実質的にダイヤフラム44の変位量を検出することにより圧力を電気信号に変換するものであり、本発明の変位検出手段として機能する。粘度調整管38の圧損は細管32の圧損に比して無視できるように選択する。また、粘度調整管38内の液体部分の体積は、分析対象物を溶出する為に必要な溶離液の体積に比して大なるように選択する。なお、粘度調整管38の圧損が無視できない場合には、粘度調整管38−細管32の圧損と、細管28の圧損が等しくなるように調整する。このような基準粘度調整管38により、細管30を経由して流入する試料液は検出期間中、細管32には流入せず、基準粘度流体(通常は溶離液)が流入し、或いは試料液が充分に希釈され溶離液と同程度の粘度に調整されて流入する。
【0023】
粘度検出装置24は概略以上のように構成され、カラム12の出口を流入路34に接続し、流出路36を検出器14に接続する。そして、液体クロマトグラフに溶離液を流すと、溶離液に溶解した高分子物質が中点40,42に達するまでは、細管26,30の圧損が等しく変動し、一方細管28,32の圧損が等しいため、中点40,42の間に圧力差が生じない。しかし高分子物質を含む溶離液が中点40,42を通過すると、区間Aでは液体に含まれる高分子物質に起因する粘度によって細管28の圧損が変化するのに対し、区間Bでは高分子物質が粘度調整管38に滞留し、細管32に達するまでは圧損を生じないため、中点40,42間に差圧が発生する。
【0024】
そして、差圧トランスデューサー46によるダイヤフラム変位検出に基づき、該変位を抑制するように変位抑制手段48がダイヤフラム44に抑制力を印加し、その抑制力値に基づき粘度演算手段52が該時点での粘度を出力する。
【0025】
したがって、差圧トランスデューサーはダイヤフラムの微小な変位を定量的に測定する必要はなく、また各流路容量も変化しない為、粘度の高精度な測定、及びテーリングの防止を図ることができる。
【0026】
本発明において、中点40,42間の差圧は、ダイヤフラム式差圧トランスデューサー46で検出する。ダイヤフラムの変位を検出する方式としては静電容量型、抵抗型、可変リラクタンス型などがあるが特定の方式に限定されることはない。
【0027】
ダイヤフラム式差圧トランスデューサーの中で、静電容量型や抵抗型の差圧トランスデューサーでは、多くの場合、圧力測定室にはシリコンオイルなどの不活性な液体を充填して液体クロマトグラフの溶離液が直接、ダイヤフラムや電極、抵抗体に触れないようにしている。一方、可変リラクタンス型差圧トランスデューサーでは、液体が触れる部分を耐蝕性のある材料で作れば、圧力測定室を液体クロマトグラフの溶離液で充填させることができる。
【0028】
変位抑制手段48が、ダイヤフラムの変形を抑制する力を与える方式は特に限定されないが、小さい力を精密に制御することが必要である。ダイヤフラムが磁性体でできているときには磁気的な力を直接的にダイヤフラムに加えることができる。また、ダイヤフラムの材料に関係なく、力をレバーなどを介してダイヤフラムに加えたり、キャピラリーブリッジの中点42(或いは40)に接続したポンプなどによって液体を出し入れして差圧が生じないようにするか、細管32と圧力調整弁を接続して圧力調整弁の圧力差を変化させて差圧が発生しないようにするか、などの方法を採用することができる。
【0029】
特に可変リラクタンス型差圧トランスデューサーを用いた場合には、ダイヤフラムの両側にリラクタンス変化を検出するための検出コイルが設けられている。したがって、市販の可変リラクタンス型差圧トランスデューサーを改造することなく、リラクタンス変化を検出するためのコイルに直流電流を重畳し、ダイヤフラムの変位を抑える方向に磁気引力(変位抑制力)を働かせることができる。すなわち、可変リラクタンス型差圧トランスデューサーのリラクタンスの変化に比例した信号をゼロ電圧または基準電圧と比較し、差電圧に比例する直流電流を検出コイルに流すことによってダイヤフラムの変位を抑えることができる。この際、ダイヤフラムは磁気ヒステレシスが小さい軟磁性材料で作られることが好ましい。
なお、コイルに流す直流電流の値は、コイルと直列に小さな抵抗を挿入し、抵抗の両端の電圧を測定することによって求められる。
【0030】
また、リラクタンス変化を検出するための検出コイルとは独立して設けたコイル或いは電磁石に直流電流を流し、ダイヤフラムの付近に磁場を発生させてもよい。
【0031】
磁気引力はダイヤフラムの材質やコイルの巻数、電流やヨークの形状などに依存する。リラクタンス変化を検出する検出コイルとは独立した変位抑制コイルを設ける場合には、差圧の測定範囲に応じて最適なコイルの巻数を選択することができるが、電流による発熱に起因して温度差が生じないように、最大電流を流したときの発熱量が数ワット以下になるようにコイルの抵抗値が選択されることが好適である。
【0032】
ここで、電気抵抗を持つコイルに直流電圧を加えることにより、オームの法則による直流電流が流れるため、直流電流を加える場合には、電流アンプと電圧アンプのいずれを選択してもよい。
【0033】
溶離液中の溶解成分がすべて粘度を押し上げる場合のように、差圧が一方(中点40側)だけに振れる場合には、一方のコイル(中点42側)だけに直流電流を加え、差圧が高まるに応じて、より大きな直流電流を流せばよい。また、差圧が正負の両方向に振れる場合には、正方向に振れたときと負方向に振れたときで直流電流を流すコイルを切り替えて、常にダイヤフラムの変位を抑えるようにしてもよい。
【0034】
差圧がゼロの付近で信号の直線性を改善するために、基準電圧をゼロでない電圧とし、差圧がゼロでも小さな吸引力が働くように設定することも好ましい。また、差圧が正方向と負方向の両方向に振れる場合には、差圧が正負の最大値をとったとしても直流電流の向きが一定方向であり、一方のコイルだけに電流が流れるように、基準電圧を大きな電圧に設定することも好適である。このとき、直流電流を与える電圧をシフトさせることによって、差圧に比例する差圧信号を得ることができる。
以下、本発明のより具体的な実施例について説明する。
【0035】
(実施例1)
図3には本発明の実施例1にかかる粘度検出装置が示されており、前記図2と対応する部分には符号100を加えて示し説明を省略する。
【0036】
同図(A)に示す粘度検出装置124において特徴的なことは、変位抑制手段148として永久磁化されたダイヤフラム144と、トランスデューサー146の出力に基づき変位が抑制されるまで抑制力を上昇させる抑制力算出回路50と、差圧トランスデューサー146全体を内包したソレノイドコイル154とその駆動回路156を有することである。そして、差圧トランスデューサー146の出力する変位信号に基づき、駆動回路156はソレノイドコイル154に通電し、変位が抑制されるのに必要な電圧値あるいは電流値の大きさから粘度演算手段152は粘度を求める。また、電流を流す方向を変えることにより、粘度の増加量と減少量を検出することができる。
【0037】
なお、本実施例においてはダイヤフラム144を永久磁化させたが、ダイヤフラム144に別途、永久磁石を貼着し、磁場の中でダイヤフラム144に対し引力あるいは斥力が働くようにしてもよい。
【0038】
本実施例においては、流量が0.1ml/分、あるいは0.2ml/分のとき、細管は内径0.1mm、長さ450mmのものを用い、粘度調整管138には内径21mm、長さ220mmのカラムに、直径0.2mmのガラスビーズを充填したものを用いたが、これに限定されるものではない。
【0039】
また、図3(B)に示す変形例のように、ダイヤフラム144の左右にコイルまたは電磁石154a,154bを設け、いずれか一方に電流を導通させることにより、変位抑制力を生じさせてもよい。この場合には、ダイヤフラム144は磁性体であることは必要であるが、永久磁化させておく必要はない。
【0040】
(実施例2)
図4には本発明の実施例2にかかる粘度検出装置が示されており、前記図2と対応する部分には符号200を加えて示し、説明を省略する。
同図に示す粘度検出装置224において特徴的なことは、変位抑制手段248として微量液体吐出ポンプ258およびその駆動回路256を備え、該ポンプ258により中点242の圧力調整を行っていることである。
【0041】
すなわち、ポンプ258はモータ260および該モータ260により駆動するシリンジ262を有し、差圧トランスデューサー246の出力に基づき抑制力算出回路250は駆動回路256に指示を与え、モータ260、シリンジ262を駆動する。シリンジの吐出端は中点242に接続されており、シリンジ262より吐出あるいは吸引される溶離液264により中点242部分の圧力制御が行われ、ダイヤフラムの変位抑制が行われる。したがって、抑制力算出回路250の指示、すなわちモータ260の回転数、シリンジ262の溶離液吐出速度あるいは吸引速度は、抑制力を加えない時に生じる中点242と中点240の差圧に比例し、この吐出速度あるいは吸引速度より粘度を求めることができる。
【0042】
なお、ポンプ258としては、液体を微量づつ吐出可能なものが好ましく、シリンジポンプのような間欠送りポンプでも、シリンジの一ストロークで液体クロマトグラフで一の試料を分析するために必要な液量を流すことができればよい。
【0043】
(実施例3)
図5には本発明の実施例3にかかる粘度検出装置が示されており、前記図2と対応する部分には符号300を加えて示し説明を省略する。
本実施例において特徴的なことは変位抑制手段348として区間Bに配置された圧力調整弁366を設けたことであり、図5においては細管332の後段に調整弁366を設置している。
【0044】
すなわち、本実施例における圧力調整弁366は図6にその断面を詳細に示すように、弁体366aと、該弁体366aを図中上下方向に駆動可能なソレノイドコイル366bと、を備える。そして、流入孔366cを細管332に接続し、流出孔366dを流出路336に接続する。この結果、ソレノイドコイル366bの励磁状態により弁体366aの押し付け力を制御し、細管332の出口圧力、すなわち中点342の圧力を調整することができる。
【0045】
そして、ソレノイドコイル366bの励磁力(励磁電流値)は粘度に比例する為、粘度演算手段352は励磁電流値を抑制力算出回路より取得し、粘度信号を出力することができる。
【0046】
(実施例4)
図7および図8には本発明の実施例4にかかる粘度検出装置が示されており、前記図2と対応する部分には符号400を加えて示し説明を省略する。
【0047】
本実施例にかかる粘度検出装置424は、図7に示すようにダイヤフラム444を軟質磁性材料により形成し、その両面に逆極性のボビン付コイル468,470を配置している。そして、図8に示すように、トランスデューサー446は交流変圧トランス446aと、該トランス446aの二次巻線側に直列接続されたコイル468,470と、を有する。そして、コイル468,470は実質的に同特性ではあるが逆極性であるため、ダイヤフラムがちょうど中間地点にあるときには電圧を発生しないが、磁路を形成するダイヤフラム444がどちらのコイルに近づくかにより、コイル468,470の実質的なインダクタンスに変化を生じ、両コイル468,470の接続点と該トランス446bの二次巻線の中点との間に交流電圧が発生する。そこで生じた交流電圧を差動増幅回路446bで増巾し、さらにこの差分信号を位相検波回路446cによりリップルを有さないリアクタンス変化として出力する。したがって、このリアクタンス信号の変化は、ダイヤフラム444の変位を示すことになる。
【0048】
本実施例において、変位抑制手段448は、このリアクタンス変動信号をゼロ電圧と比較し(差動増幅回路448a)、その増幅出力を直流電流の状態でチョークコイル448bを介してコイル468に重畳させ、リアクタンス変動信号がゼロとなるようにフィードバック制御する。
【0049】
そして本実施例にかかる粘度検出装置424によれば、差動増幅回路448aの出力はダイヤフラム444の変位抑制に要する出力と比例し、これを粘度信号として出力する。
【0050】
(実施例5)
図9は本発明の実施例5にかかる粘度検出装置が示されており、前記図8と対応する部分には符号100を加えて示し説明を省略する。
【0051】
本実施例にかかる粘度検出装置524は、変位抑制手段548の 比較回路548aにおいて、リアクタンス信号と大きな基準電圧を比較しており、常時、抑制電流をコイル568に印加している。位相検波器の位相信号、増幅器の正負、直流電流を流すコイルは、直流電流がダイヤフラムの変位を抑制する方向に磁気引力を与えるように適宜選択する。
【0052】
基準電圧の大きさは差圧の全範囲で電流の値がゼロを横切らないように選択する。差圧がゼロの時にもゼロでない電流値を有するので、オフセット分をシフトさせて差圧に比例する出力信号を得る(差分回路548c)。
【0053】
本実施例では、ダイヤフラムは常に一定量だけ変位した位置に保持される。差圧が正から負、或いは逆に変わった場合でも、ダイヤフラムには常に同じ向きの磁気引力が付加され直線性が維持されるとともに、ハンチングを生じることもなく安定しているという利点を有する。
【0054】
(実施例6)
図10は本発明の実施例6にかかる粘度検出装置が示されており、前記図8と対応する部分には符号200を加えて示し説明を省略する。
【0055】
本実施例にかかる粘度検出装置624は、変位抑制手段648が、リアクタンス信号とゼロ電圧を比較する比較回路648aと、該比較回路648aの出力が正の時に第一チョークコイル648bに直流電流を供給する第一ダイオード648cと、比較回路648aの出力が負の時に第二チョークコイル648dに直流電流を供給する第二ダイオード648eと、を備え、第一チョークコイル648bはコイル668に直流電流を供給可能に接続され、また第二チョークコイル648dはコイル670に直流電流を供給可能に接続されている。
【0056】
このように本実施形態にかかる粘度検出装置624によれば、溶離液に対し試料含有液が高粘度となる場合のみならず、低粘度となる場合であっても、適切に変位抑制を行い、粘度信号出力を行うことが可能となる。
【0057】
(実施例7)
図11は本発明の実施例7にかかる粘度検出装置が示されており、前記図7と対応する部分には符号300を加えて示し説明を省略する。
【0058】
本実施例にかかる粘度検出装置724は、変位抑制手段748が、リアクタンス信号が正の場合と負の場合とで、それぞれ直流電流を出力する一組の差動増幅回路748a,748bと、ダイオード748c,748d、チョークコイル748e,748fを備える。この場合、各差動増幅回路748a,748bの出力電流が重複作動領域が生じないでスムーズにつながるように、ゼロ電圧に近いそれぞれの基準電圧を用いて電圧値を調整するか、或いはそれぞれの差動増幅回路のオフセットを調整することが好ましい。あるいはまた、出力電流が重複し、両社の合計が一定値になるように調整する事ができる。
【0059】
なお、位相検出器の位相信号、増幅器の正負は、直流電流がダイヤフラムの変位を抑制する方向に磁気引力を発生するように、適宜選択する。
また、本実施例では、差分回路748gを有し、正方向の信号と負方向の信号の差分により粘度信号を出力している。
【0060】
(実施例8)
図12及び図13は本発明の実施例8にかかる粘度検出装置を示しており、前記図7及び図8と対応する部分には符号400を加えて示し説明を省略する。
本実施例においては、変位抑制手段848による抑制電流をコイル868に供給するのではなく、検出コイル868と独立したコイル848bに供給している。
【0061】
なお、コイル848bは、ダイヤフラムの片側に設置してもよく、また両側に設けてもよい。片側だけにコイル848bを設置する場合には、リアクタンス特性のバランスをとるため、他方にはダミーコイル848dを設置させることも好適である。また、両側に設置した場合には、前記実施例6ないし7のように差圧が正の場合と負の場合で直流電流を流す電流供給コイルを切り替えればよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明にかかる粘度検出装置が適用された液体クロマトグラフの概念図である。
【図2】本発明にかかる粘度検出装置の概念図である。
【図3】本発明の実施例1にかかる粘度検出装置の構成図である。
【図4】本発明の実施例2にかかる粘度検出装置の構成図である。
【図5】本発明の実施例3にかかる粘度検出装置の構成図である。
【図6】本発明の実施例3にかかる粘度検出装置に用いられる圧力調整弁の説明図である。
【図7】本発明の実施例4にかかる粘度検出装置に用いられる差圧トランスデューサー(変位検出手段)の構成図である。
【図8】本発明の実施例4にかかる粘度検出装置の構成図である。
【図9】本発明の実施例5にかかる粘度検出装置の構成図である。
【図10】本発明の実施例6にかかる粘度検出装置の構成図である。
【図11】本発明の実施例7にかかる粘度検出装置の構成図である。
【図12】本発明の実施例8にかかる粘度検出装置に用いられる差圧トランスデューサー(変位検出手段)の構成図である。
【図13】本発明の実施例8にかかる粘度検出装置の構成図である。
【符号の説明】
【0063】
10 液体クロマトグラフ
12 分析カラム
14 検出器
24,124,224,324,424,524,624,724,824
粘度検出装置
26〜32,126〜132,226〜232,326〜332
細管
44,144,244,344,444,544,644,744,844
ダイヤフラム
46,146,246,346,446,546,646,746,846
差圧トランスデューサー
48,148,248,348,448,548,648,748,848
変位抑制手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流入路及び流体流出路と、実質的に同一の流路抵抗を有する4本の細管と、を有し、前記細管を2本づつ直列に接続し、該細管の直列ペアを流入路−流出路に対し並列に接続し、各直列ペアの中点を、ダイヤフラムを介して圧力的に接続した平衡ブリッジ型粘度検出装置において、
いずれか一方の直列ペア細管の後段細管と中点との間に設置され、前段細管を経由して流入する流体を粘度測定期間中、滞留ないし希釈し、後段細管に基準粘度流体を導入する基準粘度調整手段と、
前記ダイヤフラムの基準位置に対する変位を検出する変位検出手段と、
前記ダイヤフラムの変位を低減するようにダイヤフラムに対し変位抑制力を印加する変位抑制手段と、
前記変位抑制手段による変位抑制力値より流体の粘度を算出する粘度算出手段と、
を備えた平衡ブリッジ型粘度検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、ダイヤフラムは磁性体を含み、また変位抑制手段は、前記ダイヤフラムに近接配置されたソレノイドコイルを含み、変位検出手段による検出結果に基づき前記ソレノイドコイルを励磁し、ダイヤフラムに変位抑制力を印加することを特徴とする平衡ブリッジ型粘度検出装置。
【請求項3】
請求項1記載の装置において、変位抑制手段は流体ポンプを含み、基準粘度調整手段が設置された側の中点の圧力が他方の中点の圧力より低くなったときに該中点に液体を注入し、あるいは該中点の圧力が他方の中点の圧力より高くなったときに該中点から液体を吸引し、ダイヤフラムに変位抑制力を印加することを特徴とする平衡ブリッジ型粘度検出装置。
【請求項4】
請求項1記載の装置において、変位抑制手段は少なくともいずれかの細管直列ペアの後段細管側に配置された圧力調整弁を含み、該圧力調整弁の開度調整によりダイヤフラムに変位抑制力を印加することを特徴とする平衡ブリッジ型粘度検出装置。
【請求項5】
請求項1記載の装置において、
ダイヤフラムは磁性体を含み、
変位検出手段は、ダイヤフラムの両側に配置された検出コイルを含み、ダイヤフラムがいずれの検出コイルに近接したかを磁気的に検出し、
変位抑制手段は、ダイヤフラムの変位に応じて前記いずれかの検出コイルに変位抑制電流を重畳的に印加することを特徴とする平衡ブリッジ型粘度検出装置。
【請求項6】
請求項5記載の装置において、変位抑制手段は、ダイヤフラムの変位に応じて前記いずれかの検出コイルにチョークコイルを介して直流電流を供給することを特徴とする平衡ブリッジ型粘度検出装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかの装置において、細管は0.2mm以下の内径を有することを特徴とする平衡ブリッジ型粘度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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