説明

液体クロマトグラフ装置

【課題】1次元目に分取LCを用いた2次元型LCにおいて、2次元目のLCに注入する試料液の量を過不足なく適切に且つ自動的に設定する。
【解決手段】1次元目のLC分析時に、目的成分のピークの開始点で指定のバイアルへの分取を開始するともにその開始時間を記憶し(S2〜S4)、そのピークの終了点で分取を終了するとともにその終了時間を記憶し、終了時間と開始時間との差、及び移動相の流量から分取容量を計算する(S5〜S8)。そして、バイアル番号、分取開始/終了時間、分取容量等の分取情報をPCに通知する(S9)。1次元目のLC分析が終了すると、PCは収集した各バイアルの分取容量に基づいて、2次元目のLC分析のスケジュールにける試料注入量を設定する。これにより、バイアル毎に分取容量が相違しても、過不足なく試料注入量を決めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体クロマトグラフ装置(以下、LCと略す)に関し、特に、1段目(1次元目)のLCで分取した成分をさらに2段目(2次元目)のLCで分析する2次元型のLCに関する。
【背景技術】
【0002】
LCでは、試料中に含まれる各種成分をカラムにより時間方向に分離して検出することができる。しかしながら、測定対象である試料に非常に多くの成分が含まれている場合や似通った性質をもつ複数の成分が含まれている場合には、1種類のカラムを用いては、或いは1種類の分析条件の下では、各成分を十分に分離できないことがある。こうした試料を分析するために、従来、2次元(多次元)型LCと呼ばれるLCが用いられている(特許文献1など参照)。2次元型LCでは、1次元目のLCで分画された溶出液を、1次元目のLCとは異なる分離条件を設定した2次元目のLCに導入し、1次元目のLCで分離しきれなかった複数の成分を分離して検出することができる。
【0003】
こうした2次元型LCの中で、1次元目のLCに分取LCを用いたものが知られている。以下の説明では、1次元目に分取LCを用いた2次元型LCを単に2次元型LCということとする。この種の2次元型LCでは、まず、1次元目の分取LCにより、目的成分が検出された区間(ピークの開始点から終了点までの期間)の溶出液をバイアルなどの容器に分取する。次いで、目的成分を含む溶出液が収容されたバイアルから該溶出液を採取して2次元目のLCに導入しLC分析を実行する。特許文献2には、1次元目のLCで分取された溶出液を2次元目のLCに導入するためにリキッドハンドラを用いた装置が開示されている。リキッドハンドラは、通常、1次元目のLCによる分取位置までプローブが移動して分取された溶出液を吸入した後に、そのプローブが2次元目のLCのインジェクションポートまで移動して先に吸入した溶出液を吐出して試料注入を行う構成を有している。
【0004】
上記2次元型LCで2次元目のLCの分析を行うためには、分析条件として試料の注入量を指定する必要がある。上述したように目的成分が検出された区間の溶出液をバイアルに分取するような分取制御を行う場合、バイアルに採取される溶出液の量はピークの大きさなどにより相違するため一定ではない。そのため、予め一定の試料注入量を指定した上で2次元目のLCによる分析を行うと、1次元目の分取LCで分取された溶出液の量が注入量に比べてかなり多い場合や逆に足りない場合が起こり得る。前者の場合には、分取された溶出液が余ることになり、効率的に試料を利用することができない。一方、後者の場合には、不足する分量の空気が流路に導入されてしまい、検出データ上でノイズとなるのみならず、流路途中に空気が溜まって抜けなくなることもあり、それ以降の分析に支障をきたす。
【0005】
こうした問題を避けるには、1次元目の分取LCで分取された溶出液の容量に合わせて2次元目のLCの試料注入量を決める必要がある。しかしながら、そのためには、1次元目のLCの分取結果(例えば分取の開始時間や終了時間など)を分析者が確認し、実際に分取された溶出液の容量を計算により求めなければならなかった。そのため、分析者にとって非常に面倒であるのみならず、1次元目のLC分析終了から2次元目のLC分析開始までに時間が掛かりスループットが下がるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−254955号公報
【特許文献2】特開2004−355241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、1次元目の分取LCで分取される溶出液の量に依らず、2次元目のLCに適切な量の試料(溶出液)を導入することができる2次元型のLCを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明は、1次元目の液体クロマトグラフ分析により試料中の成分を分離して該成分を含む試料液を異なる容器に分取し、該容器に分取された試料液を2次元目の液体クロマトグラフに導入して分析を実行する2次元型の液体クロマトグラフ装置であって、
a)1次元目の液体クロマトグラフ分析における分取の際に得られる分取の開始時間及び終了時間の情報に基づいて1乃至複数の容器に分取された試料液の液量を算出する液量算出手段と、
b)前記1乃至複数の容器に分取された試料液の液量を用いて2次元目の液体クロマトグラフ分析における各試料液の注入量を設定する分析条件設定手段と、
を備えることを特徴としている。
【0009】
通常、1次元目のLC(分取LC)では、検出器により得られる信号、つまりはクロマトグラム信号に基づいて分取の開始及び終了のタイミングを決定する。例えばクロマトグラム信号を所定の閾値と比較して、或いは、クロマトグラム信号の時間的な変化量(クロマトグラムカーブの傾き)を閾値と比較して、目的とする成分のピークの開始点と終了点とを検知し、ピークの開始点から終了点までの区間に得られる試料液を1つの容器に分取する。液量算出手段は、そうした分取制御の際の開始時間及び終了時間の情報を取得するとともに、1次元目のLCの移動相の送液流量に関する情報(これは1次元目のLCの分析条件として与えられる)を取得し、これら情報から容器に分取される試料液の容量を計算する。複数の容器に試料液が分取される場合には、容器毎に試料液の容量を求める。
【0010】
分析条件設定手段は、2次元目のLCでの分析条件を設定する際に、液量算出手段で算出された液量の情報を参照して試料液の注入量を設定する。例えば或る容器に分取された試料液を2次元目のLCで分析する場合には、分取された試料液の液量と同量を試料液の注入量に設定すればよい。つまり、1次元目のLCで分取された試料液の液量が多ければそれだけ2次元目のLCへの注入量も多くなり、1次元目のLCで分取された試料液の液量が少なければそれだけ2次元目のLCへの注入量も少なくなる。
【0011】
但し、例えば試料液の吸引・吐出などに伴う試料液のロス、試料液の揮発などを考慮すると、容器に収容されている試料液の全量が必ずしも利用できるとは限らない。そこで、本発明の一態様による液体クロマトグラフ装置において、前記分析条件設定手段は、分取容量に1未満の所定の係数を乗じて注入量を求めるようにするとよい。この係数は例えば0.95〜0.98程度の範囲で適宜に決めておけばよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る液体クロマトグラフ装置によれば、1次元目の分取LCにおいて容器に分取される試料液の液量が一定でない場合でも、常に適切な、即ち、過不足のない量の試料液を2次元目のLCに注入することができる。それによって、試料の有効利用が図れるとともに、試料注入時における流路への不所望の空気の注入を防止することができる。また、分析者自らが面倒な分取容量の計算を行う必要もなく、1次元目のLCでの分取が終了するとほぼ同時に分取容量が求まるので、分析者の負担が軽減され、分析のスループットも向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例による2次元型LCの概略構成図。
【図2】本実施例の2次元型LCにおける1次元目の分取LC動作のフローチャート。
【図3】本実施例の2次元型LCにおける1次元目の分析結果を利用した2次元目の分析スケジュール自動作成のフローチャート。
【図4】本実施例の2次元型LCにおいて処理されるバイアルの配列を示す模式図。
【図5】本実施例の2次元型LCにおける特徴的な動作を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施例である2次元型LCについて、添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1は本実施例の2次元型LCの概略構成図である。この2次元型LCは、流路を切り替えるために図中の実線と点線との二状態に切り替え可能な6方バルブ3を備える。6方バルブ3のaポートには第1移動相容器1から移動相を吸引・送給する第1送液ポンプ2が接続され、cポートには第2移動相容器8から移動相を吸引・送給する第2送液ポンプ9が接続されている。6方バルブ3のbポートとeポートとの間の流路には、該流路中に試料液を注入するインジェクタ5を含むオートサンプラ4が設けられている。さらに、6方バルブ3のfポートには第1カラム6を介して第1検出器7が接続され、dポートには第2カラム10を介して第2検出器11が接続されている。第1検出器7は試料液を消費しない検出器であればその種類は問わないが、紫外可視分光検出器などを用いることが多い。一方、第2検出器11は試料液を消費する検出器でも構わないことから、紫外可視分光検出器などのほか、質量分析計を用いることもできる。
【0016】
第1検出器7の出口側にはフラクションコレクタ12が接続されている。フラクションコレクタ12は、分取バルブ122、分取ノズル123等を含む分取部121と、分取制御部125と、A/D変換器126と、を含む。また、各部の動作を統括的に制御するため及びデータ処理を行うために、パーソナルコンピュータ(PC)により具現化される制御・処理部20を備え、制御・処理部20にはキーボードなどの操作部21や表示部22が接続されている。
【0017】
なお、フラクションコレクタ12において、分取制御部125は第1検出器7で得られる検出信号(クロマトグラム信号)に基づいて分取部121の動作を制御する機能を有しているが、この機能は制御・処理部20に内蔵させることも可能である。また、本実施例では、後述するように分取容量を算出する機能も分取制御部125が有しているが、これについても制御・処理部20に内蔵させることができることは明らかである。
【0018】
また、図1では、それぞれバイアルに用意された複数の試料の中から指定されたバイアルを選択し、該バイアル中の試料液を吸引してインジェクタ5に与える機能を持つオートサンプラ4と、予め多数用意されたバイアルの中から選択された1つのバイアルに溶出液(試料液)を注入する機能を持つフラクションコレクタ12の分取部121とを分けて記載しているが、これらの機能は1台のリキッドハンドラで実現することが可能である。
【0019】
本実施例の2次元型LCの特徴的な分析動作について、図2〜図5を参照して説明する。図2は1次元目の分取LC動作のフローチャート、図3は1次元目の分析結果を利用した2次元目の分析スケジュール自動作成のフローチャート、図4は例えば上記のリキッドハンドラで取り扱われるバイアルの配列を示す模式図、図5は特徴的な動作を説明するための模式図である。
【0020】
分析実行前に、分析者は操作部21により1次元目のLC分析のスケジュールを入力設定する。図5(a)は1次元目の分析スケジュールの一例である。この例は、オートサンプラ4のラックに用意されたバイアル番号「1」中の試料液を10μL注入し、「Method1」と名付けられた分析条件ファイルに記載の条件の下でLC分析を実行し、目的成分を分取容器「101」〜「103」に分取するものである。図4に示すように、分取容器は試料液が用意されたバイアルと同じラックに配列されており、その中の一部が1次元目のLC分析に供される試料、それ以外が1次元目のLC分析で試料液が分取される容器であるとともに2次元目のLC分析に供される試料となっている。
【0021】
分析条件ファイルには、移動相の送液流量などの分離条件のほかに、ピークの検出条件などの分取条件も含まれる。一般に、ピーク検出方法としては、クロマトグラムの信号レベルが規定の閾値LEVELを超えたときにピークであると判定する方法と、クロマトグラムのカーブの上向きの傾きが所定値を超えた場合にピークが出現したと判断し、該カーブの下向きの傾きが所定値を超えた状態から所定値以下になったときにピークが終了したと判断するという方法とがあり、いずれか1つの方法、又は両方法の併用によりピーク検出が実施される。ここでは、説明を簡単にするために、閾値LEVELに対する信号レベルの単純な大小判定によってピーク検出を行うものとして説明するが、ピーク検出方法はこれに限るものではない。
【0022】
1次元目のLC分析が開始されると、制御・処理部20の制御の下に、第1送液ポンプ2は第1移動相容器1から移動相を吸引し、インジェクタ5を介して第1カラム6に略一定流量でその移動相を送給する。オートサンプラ4は分析スケジュールに従った試料液を規定量用意(図5(a)の例の場合、バイアル番号「1」のバイアル中の試料液を10μLだけ用意)し、所定のタイミングでインジェクタ5が移動相中に試料液を注入する。注入された試料液は移動相の流れに乗って第1カラム6に導入され、第1カラム6を通過する過程で試料液中の各種成分が分離される。但し、目的成分に類似した性質を持つ夾雑成分は目的成分に重なってしまう。第1カラム6から時間的にずれて溶出した成分を含む溶出液(試料液)は第1検出器7に導入され、第1検出器7は導入された成分の濃度に応じた強度の検出信号を出力する。第1検出器7を通過した試料液はそのままフラクションコレクタ12に導入される。
【0023】
フラクションコレクタ12において分取制御部125は、導入された試料液が廃液流路に流れるように分取バルブ122を切り替えておく(分取ノズル123へ向かう側のバルブをオフしておく)。第1検出器7による検出信号(クロマトグラム信号)はA/D変換器126でデジタル値に変換されて分取制御部125に入力される。分析開始に伴って、分取制御部125は所定のサンプリング時間間隔でクロマトグラム信号レベルの読み取りを実行し(ステップS1)、その信号レベルを閾値LEVELと比較することによりピーク開始点であるか否かを判定する(ステップS2)。なお、保持時間が既知である目的成分のみを分取したい場合には、その保持時間を分取条件に含めておき、その保持時間付近に現れたピークのみを検出するようにすればよい。
【0024】
ステップS2でピークの開始点でないと判定されると、分取制御部125はピークの終了点であるか否かを判定する(ステップS5)。ピーク終了点の判断もクロマトグラム信号レベルを閾値LEVELと比較することで行われる。ピーク開始点、終了点のいずれでもないと判定されると、定められたサンプリング時間だけ待って(ステップS10)、分析終了か否かを判定し(ステップS11)、分析終了でなければステップS1へと戻る。
【0025】
目的成分を含む試料液が第1検出器7に到達し始めると、クロマトグラム信号レベルが上昇し、ステップS2でピークの開始点であると判定される。すると、分取制御部125は分取バルブ122を切り替え(分取ノズル123側のバルブをオンし)、指定されたバイアルに試料液を注入する(ステップS3)。即ち、1つ目の目的成分のピークに対しては「101」の番号が付された分取容器に試料液が注入される。また分取制御部125は分取の開始時間を内部メモリに記憶し(ステップS4)、上述したステップS10へと進む。
【0026】
上記のようにピーク開始点であると判断された後にサンプリング時間だけ待機するとステップS1に戻り、ピーク終了点に至るまではステップS1→S2→S5→S10→S11を繰り返す。第1検出器7に導入される試料液中に上記目的成分がなくなると、ステップS5でピーク終了点であると判断され、分取制御部125は試料液が廃液流路側に流れるように分取バルブ122を切り替える(ステップS6)。これにより、1番目のバイアルへの試料液の分取が終了し、分取制御部125は分取の終了時間を内部メモリに記憶する(ステップS7)。その後、分取制御部125は記憶した分取終了時間から分取開始時間を差し引くことで分取に要した時間T[min]を計算し、この時間Tに第1送液ポンプ2による移動相の送出流量P[mL/min]を乗じることにより、直前に分取された試料液の量、つまり分取容器(バイアル)「101」に対する分取容量を計算する(ステップS8)。そして、バイアル番号、分取の開始/終了時間、分取容量を含む分取情報を制御・処理部20へ通知した上で(ステップS9)、ステップS10へ進む。
【0027】
クロマトグラムに目的成分のピークが出現する毎に、ピーク開始点ではステップS3、S4、ピーク終了点ではステップS6〜S9の処理が実行され、「101」〜「103」の番号のバイアルに、各ピークに対応した試料液が分取される。即ち、図4に示すように、「1」の番号を有するバイアル中の試料液由来の成分を含む試料液が「101」〜「103」の番号を有する3本のバイアルに分取される。また、ピーク毎に分取情報が制御・処理部20へ通知される。制御・処理部20は通知された分取情報をHDD等の記憶装置に蓄える。
【0028】
1次元目のLC分析が終了した段階で(又はそれ以降の任意の時点で)分析者が操作部21で分取レポートの作成を指示すると、制御・処理部20は、記憶装置に蓄えた分取情報に基づいて、図5(b)に示すような形式の分取レポートを作成して表示部22の画面上に表示する。即ち、この分取レポートには、各分取容器にそれぞれ分取された実際の試料液の液量(分取容量)が示される。これによって、分析者は自らが計算することなく、分取容量を正確に知ることができる。
【0029】
続いて制御・処理部20では、図3に示すフローチャートに従って2次元目の分析スケジュールを自動的に作成する。即ち、まずカウンタ値iを1に設定し(ステップS21)、次に1次元目の分析結果を全て参照したか否かを判定する(ステップS22)。未だ参照していない分析結果がある場合にはステップS23へ進み、1次元目のLC分析結果におけるi番目のバイアル番号及びそれに対応した分取容量を、2次元目の分析スケジュールのバイアル番号及び試料注入量に設定する。そして、カウンタ値iをインクリメントし(ステップS24)、ステップS22へ戻る。ステップS22でYesと判定されるまで、上記処理を繰り返すことにより、図5(b)に示した分取レポート中の数値(分取容器の番号及び分取容量)が、図5(c)に示すような2次元目の分析スケジュール中の各欄(バイアル番号及び注入量)に設定される。
【0030】
分析者が1次元目のLC分析における分取の開始時間、終了時間などから分取容器に採取された試料液の量を計算し、その計算結果に基づいて2次元目のLC分析の試料注入量を決めなくても、1次元目のLC分析で分取された試料液の量に応じた適切な、つまりは過不足のない注入量が2次元目のLC分析に自動的に設定される。それによって、分取した試料液を余らせることなく、また逆に注入すべき試料液が足らずに空気が移動相中に注入されてしまうことも防止することができる。また、こうした設定が自動で行われることで、分析者の負担が軽減され、分析者の計算ミスや設定ミスに起因する注入量の過不足の問題もなくなる。
【0031】
なお、図5(c)に示した例では、分取容器、つまりはバイアルに分取した試料液の全量を2次元目のLCに注入する設定としているが、例えば、試料液がバイアル内面などに付着することや揮発することなどによる液量の減少を考慮すると、試料注入量は分取容量よりも若干少なめにしておくほうが安全である(空気混入を回避できる)。そこで、予め安全係数Kを例えば0.98、0.95などと定めておき、分取容量にこの安全係数Kを乗じた値を2次元目のLC分析の際の注入量に設定するようにすると好ましい。例えばK=0.98である場合に、図5(c)に示した各注入量は、上から1.47、1.61、1.74[mL]となる。
【0032】
上述のように2次元目の分析スケジュールが設定された後に2次元目のLC分析が開始されると、制御・処理部20の制御の下に、6方バルブ3が図1中の点線で示す接続状態に切り替えられ、第2送液ポンプ9は第2移動相容器8から移動相を吸引し、インジェクタ5を介して第2カラム10に略一定流量でその移動相を送給する。オートサンプラ4は分析スケジュールに従った試料液を規定量用意(図5(c)の例の場合、まずバイアル番号「101」のバイアル中の試料液を15μL用意)し、所定のタイミングでインジェクタ5が移動相中に試料液を注入する。注入された試料液は移動相の流れに乗って第2カラム10に導入され、第2カラム10を通過する過程で試料液中の各種成分が分離される。
【0033】
第2カラム10から時間的にずれて溶出した成分を含む溶出液(試料液)は第2検出器11に導入され、第2検出器11は導入された成分の濃度に応じた強度の検出信号を出力する。制御・処理部20はこの検出信号を受けてクロマトグラムを作成し、クロマトグラムに現れるピークに基づいて定性分析、定量分析を行う。バイアル番号「101」のバイアル中の試料液に対する2次元目のLC分析が終了すると、引き続いて、バイアル番号「102」、「103」のバイアル中の試料液に対する2次元目のLC分析が実行される。
【0034】
なお、上記実施例は本発明の一例であり、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
【符号の説明】
【0035】
1…第1移動相容器
2…第1送液ポンプ
3…6方バルブ
4…オートサンプラ
5…インジェクタ
6…第1カラム
7…第1検出器
8…第2移動相容器
9…第2送液ポンプ
10…第2カラム
11…第2検出器
12…フラクションコレクタ
121…分取部
122…分取バルブ
123…分取ノズル
125…分取制御部
126…A/D変換器
20…制御・処理部
21…操作部
22…表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次元目の液体クロマトグラフ分析により試料中の成分を分離して該成分を含む試料液を異なる容器に分取し、該容器に分取された試料液を2次元目の液体クロマトグラフに導入して分析を実行する2次元型の液体クロマトグラフ装置であって、
a)1次元目の液体クロマトグラフ分析における分取の際に得られる分取の開始時間及び終了時間の情報に基づいて1乃至複数の容器に分取された試料液の液量を算出する液量算出手段と、
b)前記1乃至複数の容器に分取された試料液の液量を用いて2次元目の液体クロマトグラフ分析における各試料液の注入量を設定する分析条件設定手段と、
を備えることを特徴とする液体クロマトグラフ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体クロマトグラフ装置であって、
前記分析条件設定手段は、分取容量に1未満の所定の係数を乗じて注入量を求めることを特徴とする液体クロマトグラフ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−33556(P2011−33556A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182075(P2009−182075)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)