説明

液体タンク用のストレーナ

【課題】 容易に取り付けや取り外しが可能であり、かつ、液体タンクに貯留された液体の波立ち等も抑制することができる液体タンク用のストレーナを提供することを主目的とする。
【解決手段】 本発明によるストレーナ(26)は、液体タンク(12)の注入口(22)に脱着可能に取り付けられるものであって、筒状部分(32)と、筒状部分(32)の一端に設けられた濾過部分(34)と、筒状部分(32)の下端に設けられ、液体タンク(12)に貯留される液体の移動に抵抗を与えて消波効果を発揮する抵抗部分(48)とを備える。この構成では、ストレーナ(26)を注入口(22)に取り付けるのみで、抵抗部分(48)の液体タンク(12)内への設置が完了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧機や散布機等に搭載される液体タンクに関し、特に液体タンクの注入口に取り付けられるストレーナに関する。
【背景技術】
【0002】
噴霧機や散布機のような作業機には、農薬等の液体が貯留される液体タンクが搭載されている。薬液噴霧等の作業時には、液体タンク内の液体が揺れ、重心移動が生じて不安定になり易い。特に背負式作業機の場合には、作業者に背負われた状態で使用されるため、作業者の歩行等によって上記の問題が生じ易い。
【0003】
特許文献1には、このような問題を解消するため、液体タンク内に消波板を組み付けるという技術が説明されている。消波板は、安定状態おける液体タンク内の液体の液面に対して概ね直角に設置されるため、液体が揺れた場合にその移動に抵抗を与える。これにより、液体の波立ちが防止され、液体タンクの重心移動が減殺される。
【0004】
かかる消波板は、液体タンクの内部形状に対応した可撓性の板材から構成されている。消波板を組み付ける際には、消波板を撓ませて液体タンクの注入口から差し込み、内部で撓みを解放する。解放された消波板は、液体タンク内の保持用凸部に引っ掛かり組み付けられた状態となる。
【特許文献1】特開2003−290611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の消波板を、液体タンクの注入口に差し込むことができる程度まで撓ませるには、比較的大きな力を要する。更に、撓んだ消波板を液体タンク内で解放する場合、液体タンク内に設けた保持用凸部の位置に合わせて撓みを解放する必要がある。そのため、消波板の組み付け作業は、手間がかかり、作業慣れが必要であるという問題がある。同様に、消波板を液体タンクから取り外すことも困難である。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、液体タンクに貯留された液体の波立ち等を抑制することができ、かつ、容易に取り付けや取り外しが可能である手段を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、液体タンク(12)の注入口(22)に脱着可能に取り付けられるストレーナ(26)であって、注入口(22)内で保持される筒状部分(32)と、筒状部分(32)に設けられた濾過部分(34)と、筒状部分(32)に設けられ、筒状部分(32)を注入口(22)に保持した状態において液体タンク(12)に貯留される所定量の液体に接し、当該液体の流動に抵抗を与える抵抗部分(48)とを備えるものを特徴とする。
【0008】
この構成では、抵抗部分(48)は液体タンク用のストレーナ(26)の一構成要素となっている。そのため、ストレーナ(26)を液体タンク(12)の注入口(22)に取り付けることによって抵抗部分(48)の取り付けも完了する。このようにして液体タンク(12)内に配置された抵抗部分(48)は、液体タンク(12)内の所定量の液体に接し、これに抵抗を与えることとなるので、液体の波立ちや重心移動を抑制することができる。
【0009】
また、筒状部分(32)が注入口(22)から外れるのを規制する抜け止め手段(56)を備えていることが好ましい。例えば、液体タンク(12)内に発泡性の液体を入れる場合、液体から発せられる気泡によってストレーナ(26)が浮き上がろうとするが、抜け止め手段(56)によりストレーナ(26)の抜け出しが防止されるからである。
【0010】
筒状部分(32)は、注入口(22)内で保持された状態において当該筒状部分(32)の中心軸線を中心にして回転可能となっていることが好ましい。筒状部分(32)を回転させると、抵抗部分(48)も回転し、液体タンク(12)内の液体を攪拌できるからである。この回転操作を容易化すべく、筒状部分(32)を回転させるつまみ(58)を設けることが有効である。
【0011】
更に、抵抗部分(48)を、筒状部分(32)の開放端とは反対側の端部に設け、開放端から筒状部分(32)の内部空間に挿入することのできる外形を有するものとすることができる。この構成では、一のストレーナ(26)における抵抗部分(48)を他のストレーナ(26)における筒状部分(32)の内部に収容させた状態で、複数のストレーナ(26)を重ね合わせることができ、保管のためのスペースが少なくて済む。
【0012】
抵抗部分(48)は種々の構成が考えられるが、例えば、筒状部分(32)の開放端とは反対側の端部に板状体(52)を配設したものが簡易な構成であり、好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、液体タンク(12)の注入口(22)にストレーナ(26)を取り付けることによって、同時に抵抗部分(48)の液体タンク(12)内への設置も完了する。すなわち、前述したような従来の消波板を液体タンクに取り付けたり取り外したりするのに要する手間が不要となる。
【0014】
また、このようにして取り付けられた抵抗部分(48)により液体の波立ちや重心移動が抑制されるため、この液体タンク(12)が搭載された作業機、特に背負式作業機により作業を行っている作業者への負担が軽減されるという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明によるストレーナの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において、上下、高さ等の語は、図1に示す状態を基準として用いている。
【0016】
図1は、本発明によるストレーナが適用可能な背負式動力噴霧機を水平面に置いた状態で示す概略側面図であり、液体タンク内を一部破断して示している。なお、図1における一点鎖線は、液体タンク内の液面を想定している。図示の背負式動力噴霧機10は、農薬等の液体を貯留する液体タンク12と、この液体タンク12内の液体を吸引して噴霧ノズル(図示せず)に圧送するポンプ14と、ポンプ14を駆動するための原動機としての内燃エンジン16と、内燃エンジン16の燃料を貯留する燃料タンク18とを備えている。これらは背負枠20に配設されており、使用者はこの背負枠20を背負って作業を行う。
【0017】
このような背負式動力噴霧機10の液体タンク12は、半透明の合成樹脂からなり、内部の液体の量を外部から視認することができる。液体タンク12の上部には、液体タンク12の内部に液体を注入するための注入口22が形成されている。注入口22は液体タンク12から突設された略円筒体であり、その外周面にはねじ部が形成されている。このねじ部に、注入口22を閉じるためのキャップ24が螺合される。
【0018】
液体タンク12の注入口22は、本発明による液体タンク用のストレーナ26が脱着可能に装着されるようになっている。注入口22の内周面には、ストレーナ26を支える支持部28が設けられている。支持部28は、注入口22の開放端(上端面)よりも下方の位置にて、径方向内方に向けて突出形成されている。また、支持部28は、注入口22の周辺部の平面図である図2に示すように、同一円周上において均等に複数に分割(図示実施形態では四分割)された各位置に配設されている。隣り合う支持部28,28同士の間には一定の間隔30が形成されている。ストレーナ26には、後に詳述する筒状部分32が設けられており、筒状部分32が支持部28に掛かって支持され、ストレーナ26が保持された状態になる。
【0019】
ストレーナ26は、図3に示すように、注入口22に挿入される略円筒形の筒状部分32と、この筒状部分32の下端に設けられた濾過部分34とを備え、これらは好ましくは合成樹脂から一体成形されている。なお、図3は本実施形態に係るストレーナ26を濾過部分34側から見た状態を示す斜視図である。
【0020】
筒状部分32はその軸線方向に沿って3つの部分、すなわち図1及び図3に示すように上部36、中間部38及び下部40に区分されている。上部36の外径は中間部38の外径よりも大きく、下部40の外径は中間部38の外径よりも小さい。より具体的には、中間部38の外径は、注入口22に形成された支持部28の内縁により画成される円の直径よりも若干小さく、上部36の外径は注入口22の開放端の外径よりも若干小さく、かつ、前記円の直径よりも大きい。従って、筒状部分32を下部40から注入口22に挿入すると、下部40及び中間部38は支持部28で囲まれる領域を通過するが、中間部38と上部36との間の段差41が支持部28に載置され、筒状部分32が注入口22内で回転可能に保持される(図1参照)。この状態において、筒状部分32の上端は開放されているので、そこから液体を筒状部分32に注入し、濾過部分34にて液体に含まれている異物を濾過することが可能となる。
【0021】
なお、図1の状態で筒状部分32の開放端(上端)が注入口22の開放端よりも上方に突出しないよう、筒状部分32の上部36の高さは、支持部28の上面から注入口22の開放端までの高さ以下とされている。これにより、ストレーナ26を注入口22に保持したままの状態でキャップ24を注入口22に螺合することが可能となる。また、注入口22に螺合されたキャップ24の裏面(内側の天井面)は、保持状態にある筒状部分32の上端面に当接し、筒状部分32を下方に押圧するよう構成することが好ましい。この場合、筒状部分32(すなわちストレーナ26)は、支持部28とキャップ24に挟まれた状態で注入口22に回転不能の状態で固定されるからである。
【0022】
濾過部分34は、筒状部分32の下端面を周方向に均等に区画するように設けられた複数本(図示実施形態では6本)の骨部材42と、これらの骨部材42によって区画された複数の扇状開口部44と、扇状開口部44に設けられ液体タンク12に注入される液体に含まれる異物を捕捉するメッシュ46とを備えている。
【0023】
濾過部分34の下方には抵抗部分48が配設されている。抵抗部分48は、液体タンク12内の液体に抵抗を与えるものであり、筒状部分32及び濾過部分34とともに一体成形されることが好ましい。図示実施形態における抵抗部分48は、濾過部分34の中心点、すなわち複数本の骨部材42の交点から筒状部分32と同軸に下方に延びている軸芯50と、この軸芯50から放射状に延びる複数枚(図示実施形態では6枚)の略長方形状の板状体52とを備えている。板状体52は周方向に均等に配設され、それぞれ対応の骨部材42に結合されている。板状体52を均等配設したのは、後述するが、液体を攪拌する場合のバランス等を考慮したものである。更に、各板状体52の外側縁部54は中間部38と下部40との間の段差55まで上方に延び、筒状部分32の下部40の外周面に結合している。この結果、板状体52を軸芯50及び骨部材42のみと結合させた場合に比し、板状体52の剛性が向上することとなる。
【0024】
軸芯50の中心軸線から外側縁部54までの長さ(水平寸法)は、筒状部分32における中間部38の外周面の半径以下とされている。抵抗部分48も注入口22に容易に挿入できるようにするためである。また、抵抗部分48の高さ(板状体52の上下方向寸法)については、抵抗部分48の主機能が液体の流動に抵抗を与えるものであるので、図1に示すように、ストレーナ26を注入口22に装着した状態において、抵抗部分48の少なくとも一部が液体タンク12内の一定量の液体に浸漬され得る大きさである必要がある。
【0025】
ここで、本実施形態におけるストレーナ26は図4に示すような積み重ね収納を考慮した構成となっていることに留意されたい。すなわち、本実施形態では、一のストレーナ26における筒状部分32の下部40と抵抗部分48とを、他の同形のストレーナ26における筒状部分32の内部に、比較的ガタの少ない状態で嵌合させることが可能となっている。かかる構成を得るために、簡単には、ストレーナ26における筒状部分32の下部40と抵抗部分48を筒状部分32の中心軸線を中心に回転させた場合に形成される回転体の外形形状が、筒状部分32の内周面及び底面で画成される形状と概ね一致するように形状及び寸法が定められている。
【0026】
より詳細には、筒状部分32の下部40の外径は中間部38の内径よりも小さくされている。また、抵抗部分48における軸芯50の中心軸線から板状体52の外側縁部54までの長さが、筒状部分32の中間部38の内周面における半径よりも僅かに小さくされている。なお、板状体52の下部は筒状部分32の縮径された下部40内に収容されるので、板状体52の外側縁部54の下部は、下部40の内側形状に合わせて略長方形状に切り欠かれている。更に、筒状部分32の中間部38と下部40との間の段差55から抵抗部分48の下端までの寸法(抵抗部分48の高さ)は、筒状部分32の開放端から底面までの寸法(筒状部分32の深さ)と同等又はそれよりも小さくされている。本実施形態では、抵抗部分48の高さは筒状部分32の深さよりも若干小さくされており、一のストレーナ26における中間部38の下端が、他のストレーナ26における開放端に遊びのない状態で嵌合されるようになっている。これにより、重ね合わされたストレーナ26,26同士を確実に連結することが可能となり、取扱いが容易となる。図4に示すように複数のストレーナ26を重ね合わせた場合、全体としてコンパクトとなり、省スペース化につながり輸送や保管に好適である。
【0027】
更に、本実施形態におけるストレーナ26には、液体タンク12の注入口22から上方に移動するのを規制し、ストレーナ26が注入口22から抜け出すことを防止する抜け止め手段が設けられている。この抜け止め手段として、本実施形態では、筒状部分32の中間部38の外周面から外方に板状片56を突出形成している。板状片56は、注入口22の隣り合う支持部28,28同士間で画成される間隔30(図2参照)と実質的に同形であり、間隔30よりも僅かに小さな寸法とされている。また、板状片56は、筒状部分32の上部36と中間部38との間から下方に所定の間隔をおいて配置されており、その間隔は、注入口22の支持部28の厚さよりも大きくされている。従って、ストレーナ26を注入口22に装着する際、板状片56を支持部28,28間を通し、ストレーナ26をその中心軸線を中心にして回転させると、板状片56は支持部28の下側に配置することが可能となり、この状態ではストレーナ26は上方への移動が規制されることとなる。板状片56は、少なくとも1つあれば足りるが、間隔30と同数、すなわち4つ設けられることが好ましい。
【0028】
また、ストレーナ26には、その軸線周りの回転を容易化するために、つまみ58が設けられている(図1参照)。図示のつまみ58は、筒状部分32の上部36の内周面から径方向内方に突出しかつ軸線方向に延びる板形状のものであり、少なくとも1つ、好ましくは複数設けられている。なお、複数のストレーナ26を図4の如く積み重ね収納するために、つまみ58の内縁は筒状部分32の中間部38の内周面よりも径方向外方に配置されている。また、一のストレーナ26における中間部38の下端が、他のストレーナ26における筒状部分32の開放端に嵌合できるよう、つまみ58の上端は筒状部分32の開放端よりも下側に位置している。
【0029】
次に、上記構成のストレーナ26を液体タンク12の注入口22に取り付ける方法及び当該ストレーナ26の作用について、濃縮薬液から所定濃度の薬液を液体タンク12内で作る場合を想定して、説明する。
【0030】
まず、液体タンク12の注入口22からキャップ24を取り外す。次いで、ストレーナ26を装着する前に、所定量を計量した濃縮薬液を注入口22から投入する。濃縮薬液の投入が完了した後、液体タンク12の注入口22にストレーナ26を装着する。ストレーナ26の装着に際しては、ストレーナ26の抵抗部分48、濾過部分34、筒状部分32という順番で注入口22に挿入していく。筒状部分32を挿入する際には、筒状部分32をその軸線周りに回転させ、抜け止め手段である板状片56を注入口22における支持部28,28間の間隔30の位置に合わせる。位置合わせの後、板状片56を間隔30に通す。そのまま筒状部分32の挿入を続けると、筒状部分32の段差41が支持部28に引っ掛かり、ストレーナ26は支持される。この状態は、段差41が支持部28上に載置された状態に過ぎないため、ストレーナ26を自在に回転させることができる。その後、筒状部分32を回転させ、間隔30に対する板状片56の位置をずらす。この回転操作はつまみ58を用いることにより容易に行うことができる。筒状部分32の回転により、板状片56は支持部28の下方に位置するこことなる。この状態では、ストレーナ26を上方に引き上げようとしても、板状片56が支持部28に当接するため、それ以上の上方移動が制限される。
【0031】
このようにしてストレーナ26が注入口22に取り付けられたならば、濃縮薬液を所定濃度に薄めるための水をストレーナ26の開放端から注入する。注入する水の分量確認は、半透明の液体タンク12の外部から液面を眺め、液体タンク12に刻設された目盛り等と対比して行う。また、水に含まれる異物は、ストレーナ26の濾過部分34によって捕捉され、液体タンク12内への異物の混入が防止される。
【0032】
なお、液体タンク12内の薬液が発泡性である場合、水の注入によって気泡が発生し、ストレーナ26を押し上げようとする力が生ずる。しかし、前述したように、本実施形態に係るストレーナ26には板状片56が設けられており、支持部28の直下に配置されているので、ストレーナ26が注入口22から外れることはない。従って、作業者は、ストレーナ26の位置状態を気にする必要がなく、水の注入に専念することが可能となる。
【0033】
水を所定量以上注入すると、薬液(液体)の液面を示す図1の一点鎖線の位置から理解されるように、ストレーナ26の抵抗部分48は液体タンク12内の薬液に浸漬された状態となる。この状態でストレーナ26を回転させると、抵抗部分48の板状体52が軸芯50を中心にして旋回し、薬液を攪拌する。ここで従来技術の如く消波板が組み付けられていれば、液体タンク12を揺らしても波立ちが防止され、十分な攪拌効果を得られない。しかし、本実施形態のストレーナ26によれば、ストレーナ26を回すだけという極めて簡易な方法で薬液を十分に攪拌することが可能となる。これは、薬液噴霧作業時、常に一定の濃度の薬液を噴霧できるという効果を奏するものである。なお、この攪拌の際、作業者はつまみ58をつまむことにより、ストレーナ26をより一層容易に回転させることが可能となる。
【0034】
攪拌が完了したならば、キャップ24を注入口22に螺合する。キャップ24を取り付けると、キャップ24の裏面がストレーナ26の筒状部分32の上端面に当接し、段差41が支持部28に押し付けられる。その結果、ストレーナ26は注入口22に対して固定され、薬液噴霧作業時にストレーナ26が注入口22内でガタ付くことが防止される。
【0035】
キャップ24の装着後、薬液噴霧作業を行う場合、背負式動力噴霧機10は作業者に背負われて用いられるものであるため、作業者の歩行に伴い、液体タンク12が不規則に揺れ、液体タンク12内の薬液に波立ちが生じ易い。しかし、本実施形態に係るストレーナ26を注入口22に取り付けておくと、図1に示すように抵抗部分48が薬液に浸漬しているため、薬液の流動に対して抵抗部分48が抵抗を与え、波立ちの拡大が抑制される。より詳細には、抵抗部分48の板状体52が、図1に示す安定状態における液体タンク12内の薬液の液面に対して略直角に交差して配置されており、かつ、6枚の板状体52が放射状に配置されているため、液体タンク12内の液体が前後左右に揺れ動くと、いずれかの板状体52によりその動きが制限される。これにより、液体の波立ちが抑制されるとともに、液体タンク12の重心位置の移動が抑制されるため、動力噴霧機10を背負って作業を行っている作業員にとり、安定した楽な姿勢で作業を続けることが可能となる。
【0036】
このような消波効果ないし重心移動抑制効果は、ストレーナ26を注入口22に取り付けることのみによって得ることができる。すなわち、ストレーナ26を装着するだけで、抵抗部分48を薬液中に設置することができる。そのため、従来のように消波板の取り付けに見られるような追加的、かつ面倒な作業が不要になる。また、ストレーナ26の取り外しによって抵抗部分48の取り外しも可能になるため、抵抗部分48の交換等のメンテナンス作業も容易となる。
【0037】
なお、液体タンク12内の薬液が減少した場合、抵抗部分48の全体が液面よりも上方に位置することとなるが、かかる状態では重心自体が下方に下がり、また軽量化しているため、重心が前後左右に移動しても作業を良好に継続することができる。
【0038】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは云うまでもない。
【0039】
例えば、上記実施形態では背負式動力噴霧機10における液体タンク用のストレーナ26としているが、他の装置における液体タンクや、駆動部を有しない液体タンク単体のものにも本発明のストレーナを適用することができる。
【0040】
また、抵抗部分は、液体の移動を制限する障害物として機能するものであればどのような構成であってもよく、板状体からなるもの以外にも、棒体や球体等からなるものであってもよい。
【0041】
更に、上記実施形態では、抜け止め手段としての板状片56は注入口22の支持部28,28間を通して支持部28の下側に配置されるようにしている。しかし、抜け止め手段もこれに限られない。例えば、注入口22の内周に環状溝を形成し、筒状部分32の外周面から出没可能であり、かつ突出方向に付勢される弾性部材を設け、この弾性部材を前記環状溝に係合させてストレーナの取り付けを行うようにして、これをもって抜け止め手段とすることもできる。この構成では、弾性部材を環状溝に係合させることで、段差41がなくとも、ストレーナの注入口への装着が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明によるストレーナが適用可能な背負式動力噴霧機を示す概略側面図であり、液体タンク内を一部破断して示している。
【図2】本発明によるストレーナが取り付けられる注入口周辺部を示す平面図である。
【図3】本発明によるストレーナを濾過部側から見た状態を示す斜視図である。
【図4】本発明による二つのストレーナを重ねた状態を示し、一部破断した側面図である。
【符号の説明】
【0043】
10…背負式動力噴霧機、12…液体タンク、22…注入口、24…キャップ、26…ストレーナ、28…支持部、32…筒状部分、34…濾過部分、48…抵抗部分、50…軸芯、52…板状体、56…板状片(抜け止め手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体タンク(12)の注入口(22)に脱着可能に取り付けられるストレーナ(26)であって、
前記注入口(22)内で保持される筒状部分(32)と、
前記筒状部分(32)に設けられた濾過部分(34)と、
前記筒状部分(32)に設けられ、前記筒状部分(32)を前記注入口(22)に保持した状態において前記液体タンク(12)に貯留される所定量の液体に接し、当該液体の流動に抵抗を与える抵抗部分(48)と、
を備える液体タンク用のストレーナ。
【請求項2】
前記筒状部分(32)が前記注入口(22)から外れるのを規制する抜け止め手段(56)を備える請求項1記載の液体タンク用のストレーナ。
【請求項3】
前記筒状部分(32)が、前記注入口(22)内で保持された状態において当該筒状部分(32)の中心軸線を中心にして回転可能となっている請求項1又は2記載の液体タンク用のストレーナ。
【請求項4】
前記筒状部分(32)を回転させるつまみ部(58)が設けられている請求項3記載の液体タンク用のストレーナ。
【請求項5】
前記抵抗部分(48)が、前記筒状部分(32)の開放端とは反対側の端部に設けられ、前記開放端から前記筒状部分(32)の内部空間に挿入することのできる外形を有する請求項1〜4のいずれか1記載の液体タンク用のストレーナ。
【請求項6】
前記抵抗部分(48)が、前記筒状部分(32)の開放端とは反対側の端部に配設された板状体(52)を備える請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体タンク用のストレーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−741(P2006−741A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178843(P2004−178843)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000141174)株式会社丸山製作所 (134)
【Fターム(参考)】