説明

液体タンク

【課題】 液体タンクがあらゆる姿勢で振動や衝撃等を付与された場合であっても、液体が液体タンク外部に漏れ出ることを防ぎ、信頼性を向上する。
【解決手段】 インクを吸収保持するインク保持部材16と、内部にインク保持部材16を収容しインクジェットヘッド10にインクを供給するためのインク供給口15を有するタンクケース13と、タンクケース13の内部と外部の大気とを連通させる大気連通口12と、大気連通口12とインク保持部材16との間に設けられインク保持部材16から流出したインクを一時的に貯留するバッファ空間17と、バッファ空間17内に設けられ大気連通口12に連通された大気連通管21とを備える。そして、大気連通管21は、インク保持部材16側の開口端面21aよりもインク保持部材16が鉛直上方に位置させた状態で、この開口端面21aが鉛直上方以外を向くように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインク等の液体を吸収保持する液体保持部材が内部に収容され、内部と外部とを連通させる大気連通口が設けられた液体タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインクタンクとしては、インクジェットヘッドにインクを供給するインク供給口と、外部と連通された大気連通口とを有し、内部にインク保持部材が収納され、このインク保持部材にインクを含浸させることで、所定の負圧を発生させる構成が開示されている(特許文献1参照。)。
【0003】
図9に、特許文献1に開示されている従来のインクタンクについて、(a)に正面図、(b)に側面図、(c)に底面図、(d)に平面図を示す。
【0004】
図9に示すように、従来のインクタンクは、内部にインク保持部材124が収容されたタンクケース121と、このタンクケース121の開口部を閉塞するフタ部材122とを有している。タンクケース121に設けられたインク供給口123の近傍には、インク保持部材124が収納されており、インク供給口123からインクジェットヘッドにインクを供給する。 また、フタ部材122には、タンクケース121内のインク保持部材124の位置を規制するリブ125と、インクタンクの内外を通気させるためにの大気連通口126とが設けられている。大気連通口126は、インク保持部材124を間に挟んでインク供給口123と略対向する位置に設けられている。インク保持部材124と大気連通口126との間には、気圧、温度等の環境変化やインクタンクへの衝撃によってインク保持部材124から溢れ出るインクや飛散するインクを受容するためのバッファ空間127が形成されている。
【0005】
大気連通口126は、インク保持部材124に対してバッファ空間127を間に挟んで配置され、フタ部材122の対向面の中心近傍に配置されている。大気連通口126は、インク保持部材124のバッファ空間127側の対向面に対して略垂直な円筒状に形成されている。大気連通口126は、円筒部に開口された穴を介して、インクタンクの内外を連通させている。大気連通口126は、バッファ空間127側に凸形状にされることで、インクタンク全体の姿勢が大気連通口126側を鉛直下方に向けた状態のときに、環境変化等でインク保持部材124から染み出たインクがバッファ空間127に到達し、大気連通口126からインクが漏れ出すことを抑えている。
【0006】
大気連通口126の外部側には、インクが大気連通口126から漏れ出した場合であっても、インクタンク外部にまでインクを流出し難くするために迷路構造の空間128が設けられており、この空間128の端部に外部へと連通する連通孔129が設けられている。
【0007】
また、従来の他のインクタンクとしては、大気連通口側にインクが流動することを抑える構成が開示されている(特許文献2参照。)。
【0008】
図10に、特許文献2に開示されている従来のインクタンクの内部構成を説明する図を示す。(a)にインクタンクの断面図、(b)にフタ部材の断面図、(c)にインク保持部材側から見たフタ部材の平面図を示す。
【0009】
図10に示すように、インクタンクは、インク保持部材131が内部に設けられたタンクケース132と、このタンクケース132の開口部を閉塞するフタ部材133とが接合されて構成されている。フタ部材133には、大気連通口134が形成されている。インク保持部材131と大気連通口134の間には、バッファ空間が形成されている。このバッファ空間には、インク保持部材131から飛散したインクが直接大気連通口134側へ流動するのを抑えるためのガード部材135が接合されている。ガード部材135は、複数の空気室136を有しており、各空気室136が連通路137を介して互いに連通されている。したがって、インクタンク内部は、空気室136を経由し大気連通口34を通じて外部と連通されている。
【特許文献1】特開平7−148937号公報
【特許文献2】特開平10−95128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、インクジェット記録装置は、近年、小型化、容積効率の向上が求められており、それに伴いインクジェットカートリッジやインクタンクにおいても、カートリッジ体積やインクタンク体積に対して、使用できるインクがより一層多くすることが求められている。
【0011】
インクタンクのサイズを大きくせずに使用できるインクを多くするためには、インク保持部材に含浸させるインク量を増やすことが必要となる。しかしながら、より多くの量のインクを含浸させた場合、インク保持部材に含浸されたインクは、インク保持部材のインク保持許容量内であっても、インクタンクへの衝撃等によってインク保持部材から容易に飛散してしまう不都合が生じる。
【0012】
また、インクジェット記録装置の小型化に伴って、モバイルプリンタ等の持ち運び可能な携帯型の記録装置も多くなり、このような記録装置に搭載されたインクタンクにおいても様々な姿勢で放置される可能性が増加している。
【0013】
しかしながら、上述した従来のインクタンクでは、インクタンクに衝撃が加わり、かつ様々な姿勢にさらされることによって、インク保持部材に含浸されて保持されていたインクが大気連通口内に進入してしまう可能性がある。
【0014】
図9に示したように、特許文献1に開示された従来のインクタンクの構成では、大気連通口126の開口部がインク保持部材124に対向されているので、大気連通口126がインク保持部材124よりも鉛直下方に位置された姿勢では、大気連通口126の開口部が鉛直上向きとなり、飛散したインクを直接受ける構成となる。つまり、インク保持部材124に含浸させたインク量が比較的多い場合には、インクタンクに衝撃等が付与されたときに、インク保持部材124からインクが飛散し、大気連通口126の開口部に直接付着してしまう可能性がある。このように、大気連通口126の開口部に付着したインクは、インク付着後に大気連通口126が鉛直下向きになる姿勢でインクタンクが保持されたり、様々な姿勢で受ける更なる衝撃等によって、開口部に付着したインクが連通路を辿ってインクタンク外部まで到達してしまうおそれがある。
【0015】
また、特許文献1に開示された従来のインクタンクは、インクの漏れを防止するために、上述のように迷路構造の空間128を備えているが、インクタンクが様々な姿勢にされて振動や衝撃が付与された場合に、インクが空間128の端部のエッジ等を伝ってインクタンク外部に流出してしまう可能性がある。
【0016】
また、図10に示したように、特許文献2に開示された従来のインクタンクの構成では、上述のように大気連通口134とインク保持部材131との間にガード部材135と空気室136が設けられているので、大気連通口134に直接インクが飛散することがない。しかしながら、この従来のインクタンクも特許文献1に開示された従来のインクタンクと同様に、インクタンクが様々な姿勢にされて衝撃等を付与された場合には、インクが空気室136のエッジ等を伝わって大気連通口134に到達してしまうおそれがあり、インクタンクの外部へのインク漏れを発生する可能性がある。
【0017】
そして、従来のインクタンクでは、上述したインクの飛散および大気連通口からのインク垂れが、インクタンクの物流時や使用時だけでなく、記録装置等の製造工程でも同様にインクタンクへの衝撃や姿勢によっては発生し得るものであり、記録装置等の製造時にも不都合を招く。
【0018】
そこで、本発明は、液体タンクがあらゆる姿勢で振動、衝撃等を付与された場合であっても、液体保持部材から飛散した液体が大気連通口内へ進入することを抑え、液体が液体タンク外部に漏れ出ることを防ぎ、信頼性を向上することができる液体タンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述した目的を達成するため、本発明に係る液体タンクは、液体を吸収保持する液体保持部材と、内部に液体保持部材を収容し液体吐出ヘッドに液体を供給するための液体供給口を有するタンクケースと、タンクケースの内部と外部の大気とを連通させる大気連通口と、大気連通口と液体保持部材との間に設けられ液体保持部材から流出した液体を一時的に貯留するバッファ空間と、このバッファ空間内に設けられ大気連通口に連通された大気連通管とを備える。そして、大気連通管は、液体保持部材側の開口端面よりも液体保持部材が鉛直上方に位置させた状態で、開口端面が鉛直上方以外を向くように設けられている。
【発明の効果】
【0020】
上述したように、本発明に係る液体タンクによれば、大気連通管の開口端面を、液体保持部材から液体が飛散する方向以外に向けることで、液体タンクがどのような姿勢で振動や衝撃等が付与された場合であっても、液体保持部材から飛散した液体が大気連通口内に進入することを抑え、液体タンク外部へ液体が漏れ出ることを防ぎ、信頼性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態のインクタンクを示す断面図であり、インクタンクの姿勢が大気連通口を鉛直上方に向けた状態を示している。
【0023】
図2は、インクタンクの姿勢が大気連通口を鉛直下方に向けた状態を示した断面図であり、図3(a),(b)は、インクタンクの姿勢が大気連通口を水平方向に向けた状態を示す断面図である。
【0024】
図1に示すように、インクタンクは、インク供給口15を有するタンクケース13と、このタンクケース13の開口部を閉塞するフタ部材14とが接合されて構成されている。タンクケース13の内部には、インク保持部材16が収納されている。インク供給口15には、インクを吐出する複数の吐出口が配列されたインクジェットヘッド10が、このインクジェットヘッド10側のインク流路に連通されて設けられている。
【0025】
フタ部材14には、インク保持部材16に対向する位置に、大気連通口12が設けられており、この大気連通口12に、可撓性を有する円管状のチューブからなる大気連通管21が連結されている。フタ部材14には、大気連通管21の基端部が連結される管状の根元部22が一体に突出して形成されており、この根元部22に、大気連通管21の基端部が圧入されて固定されている。したがって、フタ部材14に設けられた大気連通管21は、インク保持部材16に対向する位置に配置されている。大気連通は、インクタンク内部の大気連通管21のインク保持部材16側の開口端面21aから大気連通口12へ大気連通管21の内部を通って行われる。
【0026】
インク保持部材16は、フタ部材14に設けられたリブ18によって移動が規制されている。インク保持部材16と大気連通口12との間には、環境変化等によってインク保持部材16から溢れ出たインクを一時的に貯留するバッファ空間17が設けられている。
【0027】
図1に示すように、インクタンクの姿勢が大気連通口12を鉛直上方に向けた状態では、大気連通管21は、略直線状になり、大気連通管21の開口端面21aが鉛直上方を向かない。
【0028】
インクタンクは、大気連通管21が可撓性を有しているので、この大気連通管21が、インクタンクの姿勢に応じて変形部20が自重で湾曲し、図2に示すように、大気連通口12を鉛直下方に向けた姿勢、すなわち、インク保持部材16側の開口端面21aよりもインク保持部材16が鉛直上方に位置させた状態で、大気連通管21の自由端である開口端面21aが僅かに鉛直下方に向けて垂れ下がる。したがって、大気連通管21の開口端面21aは、鉛直上方を向かず、且つインク保持部材16におけるバッファ空間17に隣接する側面に対して非平行にされ、この側面に対向されていない。
【0029】
また、インクタンクのその他の姿勢については図3(a),(b)に示すように、大気連通口12が水平方向に向けた横向きの状態では、大気連通管21の開口端面21aが、鉛直下方を向き且つインク保持部材16のバッファ空間17に隣接する側面にも対向されていない。
【0030】
次に、大気連通管21について、図4および図5を参照して説明する。図4(a),(b),(c)および図5(a),(b)は、インクタンクの姿勢が、大気連通口12を鉛直下方に向けた状態を示す断面図である。図4(c)は、大気連通管21の管軸方向に直交する断面図である。
【0031】
大気連通管21の開口端部を、更に安定的に垂れ下がらせるために、図4(a)に示すように、大気連通管21の開口端部に重量が比較的大きい錘部材26が設けられる構成が採られてもよい。すなわち、大気連通管21の変形部20の可撓性が低い場合には、錘部材26が設けられることによって、大気連通管21の自由端部である開口端部が円滑に垂れ下げられるので、大気連通管21の開口端面21aを鉛直下方側に良好に向けることができる。
【0032】
但し、錘部材26の重量が過剰に大きい場合には、図4(b)に示すように、大気連通管21の変形部20が折れ曲がり連通路を閉塞するおそれがあるので、錘部材26の重量を適宜設定する必要がある。このような大気連通管21の連通路の閉塞を防止する対策としては、図4(c)に示すように、大気連通管21の変形部20の内壁に規制凸部27が設けられることで防ぐことも可能である。図4(c)は、大気連通管21の管軸方向に直交する断面図である。規制凸部27は、大気連通管21の断面の中心方向に向けて突出され、対向する位置に設けられている。規制凸部27は、大気連通管21の変形部20が折れ曲がることで、内部空間の潰れを生じた場合であっても、大気連通管21の内壁や対向する規制凸部27が当接することで、大気連通管21の内部が完全に潰れずに空間が確保される。このため、大気連通管21は、連通路が閉塞することなく、大気の連通状態が保たれる。
【0033】
次に、インク保持部材16からインクが飛散する状態について説明する。
【0034】
インクタンク内のインクが少量で、インク保持部材16のインク供給口15近傍部分のみにインクが含浸されて、インク保持部材16のバッファ空間17に隣接する側面にインクが含浸されていない場合には、インクタンクが振動や衝撃等を受けることでインクの移動が多少生じても、インクがインク保持部材16のバッファ空間17に隣接する側面に達しなければ、バッファ空間17に飛散しない。
【0035】
しかしながら、インク含浸量が多く、インクがインク保持部材16のバッファ空間17に隣接する側面に及んでいる場合には、インク保持部材16のバッファ空間17に隣接する面のインク含浸部分からインクがバッファ空間17内へ飛散してしまう。インク保持部材16から飛び出したインクは、インク保持部材16よりも下方に位置するタンク内壁面等に付着する。そのとき、大気連通管21の開口端面21aがインク保持部材16に対向していた場合には、インクが大気連通管21の開口端面21aに直接付着し、連通路内へ進入してしまう。
【0036】
しかしながら、本実施形態のインクタンクでは、大気連通管21の開口端面21aが、鉛直上方以外に向けられるので、この開口端面21aにインクが直接飛散することがなく、連通路内へインクが進入することを良好に防ぐことができる。
【0037】
また、飛散したインクが大気連通管21の外周に付着し、大気連通管21の外周部を伝って大気連通管21の開口端面21aに到達するインクに関して、インクタンクの姿勢が大気連通口12を鉛直下方に向けた状態以外では、大気連通管21の開口端面21aが鉛直下方を向いた状態になるので、大気連通管21の開口端面21a近傍のインクが大気連通管21内に進入し難くされている。
【0038】
図2に示すように、インクタンクの姿勢が大気連通口12を鉛直下方に向けた状態では、大気連通管21の開口端面21aが、水平方向よりも僅かでも鉛直下方を向いていれば、大気連通管21の開口端面21aが鉛直下方側を向くように下向きに傾斜されていることになるので、大気連通管21の開口端面21a近傍にインクが到達した場合であっても、大気連通管21の内部にインクが進入することが抑えられる。
【0039】
さらに、大気連通管21の開口端部の錘部材26を、図4(a)に示すように、大気連通管21の外周から突出させたつば状に形成することで、大気連通管21の外周をインクが伝わって開口端面に達することが抑えられるので、大気連通管21内へのインクの進入を更に良好に防ぐことができる。
【0040】
また、大気連通管21は、図5(a)に示すように、必要に応じて、変形部20が蛇腹形状に形成されてもよい。この構成によれば、変形部を、インクタンクの姿勢に応じて円滑に変形させることが可能になる。
【0041】
また、図5(b)に示すように、大気連通管21の変形部20の外周部の周回りに凹部28が形成されてもよく、この構成でも同様に、変形部を円滑に変形させることが可能になる。凹部28は、大気連通管21の周方向を一周する環状の
形状を複数箇所に配置すれば、変形個所が分散されて大気連通管21が折れ曲がることによる閉塞を発生し難くすることができる。また、凹部28は、大気連通管21の外周に亘って螺旋状に形成されてもよい。
【0042】
上述したように、本実施形態のインクタンクによれば、大気連通管21に変形部20が設けられ、大気連通管21の開口端面21aを鉛直上方に向けないように構成されることによって、インクタンクが様々な環境や姿勢で、振動や衝撃等が加えられた場合であっても、大気連通口12からインクタンク外方へインクが漏れ出ることが抑制され、ユーザーの手を汚したりすることを防ぎ、信頼性を向上することができる。したがって、このインクタンクによれば、インク保持部材16に保持許容範囲内でより多くの量のインクを良好に含浸させることが可能になる。
【0043】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態のインクタンクを示す断面図であり、インクタンクの姿勢が大気連通口を鉛直上方に向けた状態を断面図である。図7は、インクタンクの姿勢が大気連通口を鉛直下方に向けた状態を示す断面図であり、図8(a),(b)は、インクタンクの姿勢が大気連通口を水平方向に向けた状態を示す断面図である。
【0044】
なお、第2の実施形態のインクタンクは、大気連通管を除く他の構成が、第1の実施形態のインクタンクと同一であるので、同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0045】
図6に示すように、第2の実施形態のインクタンクは、フタ部材14に大気連通管31が設けられており、この大気連通管31がインク保持部材16に対向する位置に配置されている。大気連通は、インクタンク内部の大気連通管31の開口端面31aから大気連通口12へ大気連通管31の内部を通って行われる。
【0046】
大気連通管31は、剛性を有する材料によって開口端部側が湾曲されて形成されており、基端部が、フタ部材14の根元部22の軸回りに回転自在に取り付けられている。図7に示すように、インクタンクの姿勢が大気連通口12を鉛直下方に向けた状態では、大気連通管31の開口端部側が湾曲されているため、大気連通管31の開口端面31aが鉛直上方を向かず且つインク保持部材16におけるバッファ空間17に隣接する側面にも対向されていない。
【0047】
また、インクタンクの他の姿勢については、図8(a),(b)に示すように、大気連通口12が水平方向に向けた横向きの状態では、インクタンクの姿勢に応じてフタ部材14に対して大気連通管31が回転することによって、大気連通管31の開口端面31aが常に鉛直下方を向き且つインク保持部材16のバッファ空間17に隣接する側面にも対向されない。
【0048】
また、図6に示すように、インクタンクの姿勢が大気連通口12が鉛直上向きにした状態では、大気連通管31の開口端部が湾曲されているので、大気連通管31の開口端面31aが水平方向側を向き、鉛直下方を向かず且つインク保持部材16のバッファ空間17に隣接する側面にも対向されない。
【0049】
大気連通管31の構成は、図示しないが、例えば、湾曲した大気連通管31を管軸方向に2分割し、フタ部材14に設けられた大気連通管31の根元部22を覆うように2分割した大気連通管31が組み合わされて接合される。この際、大気連通管31を回転可能に支持する根元部22の外周部には、大気連通管31が脱落することを防止する凸部が周方向に突出して設けられ、大気連通管31側にも抜け防止のために管中心方向に突出した凸部を根元部22近傍に設けられる。また、大気連通管31と根元部22との固定は、接着でもよいしボスと穴のはめ込みによる嵌合でもよい。
【0050】
大気連通管31の開口端部側を、更に安定的に垂れ下がるようにするために、図4(a)に示したように、大気連通管31の開口端部に重量が比較的重い錘部材26が設けられる構成が採られてもよい。大気連通管31の開口端部に錘部材26が設けられることによって、大気連通管31を根元部33の周回りに回転させる力が大きくなり、大気連通管31の開口端面31aを更に安定して下方側に向けることができる。
【0051】
次に、インク保持部材16からインクが飛散する状態について説明する。
【0052】
インクタンク内のインクが少量で、インク保持部材16のインク供給口15近傍のみにインクが含浸されて、インク保持部材16のバッファ空間17に隣接する側面にはインクが含浸されていない場合には、インクタンクが衝撃を受けたときにインクが多少流動しても、インク保持部材16におけるバッファ空間17に隣接する側面にインクが到達しなければ、バッファ空間17にインクが飛散することがない。
【0053】
一方、インク含浸量が多くインクがインク保持部材16のバッファ空間17に隣接する側面に及んでいる場合には、この側面のインク含浸部分から、インクがバッファ空間17側へ飛散してしまう。インク保持部材16の側面から飛び出たインクは、インク保持部材16の上述の側面よりも鉛直下方に位置するタンクケース13の内壁面等に付着する。
【0054】
このとき、大気連通管31の開口端面31aが、インク保持部材16のバッファ空間17に隣接する側面に対向されていた場合には、インクが大気連通管31の開口端面31aにインクが直接付着し、連通路内へ進入してしまう。しかしながら、本実施形態のインクタンクでは、大気連通管31の開口端面31aが、鉛直上方を向かないため、インクが直接飛散することがなく、連通路内にインクが進入することを防ぐことができる。
【0055】
また、飛散したインクが大気連通管31の外周面に付着し、大気連通管31の外周面を伝って大気連通管31の開口端面31aに到達するインクに対しては、インクタンクの姿勢が大気連通口12を鉛直上方に向けた状態以外では、大気連通管31の開口端面部が鉛直下方を向くので、大気連通管31の開口端面31a近傍のインクが大気連通管31内に進入し難くされている。
【0056】
インクタンクの姿勢が大気連通口12を鉛直上方に向けた状態では、大気連通管31の開口端部が湾曲されているので、大気連通管31の開口端面31aが大気連通管31の最下点にならず、また大気連通管31が円筒状に形成されているので、インクが湾曲部分に向かうので、大気連通管31の開口端面31aにインクが到達し難くされている。さらに、大気連通管31の開口端部に設けられた錘部材26は、図4(a)に示すように、大気連通管31の外周部から突出するつば状に形成されることで、大気連通管31の外周部を伝わるインクが開口端面31aに進入することを更に良好に防ぐことができる。
【0057】
上述したように、インクタンクの大気連通管31を湾曲させて回転自在に設けられることで、大気連通管31の開口端面31aが鉛直上方を向かず、インクタンクが様々な環境や姿勢で衝撃や振動等が加えられた場合であっても、大気連通口12からインクタンク外方へインクが漏れ出ることを防ぎ、ユーザーの手を汚したりしない信頼性が高いインクタンクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第1の実施形態のインクタンクを示すにおける大気連通口を下向き姿勢時断面図である。
【図2】インクタンクの姿勢が大気連通口を鉛直上方に向けた状態を示す断面図である。
【図3】インクタンクの姿勢が大気連通口を水平方向に向けた状態を示す断面図である。
【図4】大気連通管を説明する断面図である。
【図5】大気連通管の他の例を説明する断面図である。
【図6】第2の実施形態のインクタンクを示す断面図である。
【図7】インクタンクの姿勢が大気連通口を鉛直上方に向けた状態を示す断面図である。
【図8】インクタンクの姿勢が大気連通口を水平方向に向けた状態を示す断面図である。
【図9】従来のインクタンクを説明する図である。
【図10】従来の他のインクタンクを説明する図である。
【符号の説明】
【0059】
10 インクジェットヘッド
12 大気連通口
13 タンクケース
14 フタ部材
15 インク供給口
16 インク保持部材
17 バッファ空間
21 大気連通管
21a 開口端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吸収保持する液体保持部材と、
内部に前記液体保持部材を収容し、液体吐出ヘッドに液体を供給するための液体供給口を有するタンクケースと、
前記タンクケースの内部と外部の大気とを連通させる大気連通口と、
前記大気連通口と前記液体保持部材との間に設けられ、前記液体保持部材から流出した液体を一時的に貯留するバッファ空間と、
前記バッファ空間内に設けられ、前記大気連通口に連通された大気連通管とを備え、
前記大気連通管は、前記液体保持部材側の開口端面よりも前記液体保持部材が鉛直上方に位置させた状態で、前記開口端面が鉛直上方以外を向くように設けられていることを特徴とする液体タンク。
【請求項2】
前記大気連通管は、前記開口端面よりも前記液体保持部材が鉛直上方に位置された状態で、前記開口端面が前記液体保持部材の前記バッファ空間に隣接する側面と非平行にされている請求項1に記載の液体タンク。
【請求項3】
前記大気連通管は、前記タンクケースの姿勢に応じて前記開口端面が移動する請求項2に記載の液体タンク。
【請求項4】
前記大気連通管は、前記タンクケースの姿勢に応じて自重で変形する請求項3に記載の液体タンク。
【請求項5】
前記大気連通管には、前記開口端面近傍に錘部材が設けられている請求項4に記載の液体タンク。
【請求項6】
前記大気連通管の内部には、前記大気連通管が折れ曲がったときに連通路が閉塞することを規制するための凸部が設けられている請求項5に記載の液体タンク。
【請求項7】
前記大気連通管は、前記タンクケースの姿勢に応じて前記バッファ空間内で回転するように回転自在に設けられている請求項3に記載の液体タンク。
【請求項8】
前記大気連通管は、管軸方向に対して湾曲して形成されている請求項7に記載の液体タンク。
【請求項9】
前記大気連通管は、前記開口端面が鉛直下方側に向くように設けられている請求項4に記載の液体タンク。
【請求項10】
液体を吸収保持する液体保持部材と、
内部に前記液体保持部材を収容し、液体吐出ヘッドに液体を供給するための液体供給口を有するタンクケースと、
前記タンクケースの内部と外部の大気とを連通させる大気連通口と、
前記大気連通口と前記液体保持部材との間に設けられ、前記液体保持部材から流出した液体を一時的に貯留するバッファ空間と、
前記バッファ空間内に設けられ、前記大気連通口に連通された大気連通管とを備え、
前記大気連通管は、可撓性を有する材料からなり、前記タンクケースの姿勢に応じて自重で変形する液体タンク。
【請求項11】
液体を吸収保持する液体保持部材と、
内部に前記液体保持部材を収容し、液体吐出ヘッドに液体を供給するための液体供給口を有するタンクケースと、
前記タンクケースの内部と外部の大気とを連通させる大気連通口と、
前記大気連通口と前記液体保持部材との間に設けられ、前記液体保持部材から流出した液体を一時的に貯留するバッファ空間と、
前記バッファ空間内に設けられ、前記大気連通口に連通された大気連通管とを備え、
前記大気連通管は、管軸方向に対して湾曲して形成され、前記タンクケースの姿勢に応じて前記バッファ空間内で回転するように回転自在に設けられている液体タンク。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate