説明

液体タンク

【課題】車両へ搭載する際の作業性を向上させることができる液体タンクを得る。
【解決手段】ガイド突起24をウォッシャタンク本体14の膨出部22に設けると共に、注液パイプ12の延出端部32にガイド溝34を設けた。この、ガイド突起24とガイド溝34とが嵌合することにより、注液パイプ12がウォッシャタンク本体14の接続孔22B周りに回転することを規制することができる。その結果、液体タンク10を車両へ搭載する際の作業性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体タンクに係り、特にタンク本体に注液パイプが接続されることにより構成された液体タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のエンジンルーム等に設置されたウォッシャタンク等の液体タンクにおいて、タンク本体と注液パイプとがそれぞれ別体で形成され、該タンク本体に該注液パイプが接続されることにより構成された液体タンクが知られている。例えば、下記特許文献1には、ウォッシャタンク本体に設けられた円形の接続孔に筒状の注液パイプが接続されることにより構成されたウォッシャタンクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−245788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構成では、液体タンクを車両へ搭載する際に、タンク本体と注液パイプとを所定の姿勢にて接続しなければ、注液パイプの上部に設けられた車体への固定部と車体に設けられた注液パイプ固定部との位置が合わないことがあった。この場合、作業者はタンク本体に対する注液パイプの姿勢を調整しながらの作業となり、液体タンクを車両へ搭載する際の作業性が低下するという課題があった。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、車両へ搭載する際の作業性を向上させることができる液体タンクを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明に係る液体タンクは、円形の接続孔が開口形成されると共に内部に液体を貯留するタンク本体と、一方の端部に前記タンク本体の前記接続孔に挿入されて接続される円筒状の接続部を有すると共に他方の端部に液体が注入される注入口を有する長尺状の注液パイプと、前記タンク本体の前記接続孔に隣接して設けられた第1係合部と、前記注液パイプの前記接続部に隣接して設けられかつ前記第1係合部と係合することにより前記注液パイプが前記タンク本体の前記接続孔周りに回転することを規制する第2係合部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
ところで、タンク本体と注液パイプとが分割構造とされた液体タンクにおいては、輸送効率を高めるためにタンク本体と注液パイプとが別々に梱包されて工場に搬入される。次いで、タンク本体に注液パイプを取付けるという工程を経た後に、該タンク本体及び該注液パイプを含んで構成された液体タンクが車両のエンジンルーム等に取付けられる。この場合、注液パイプがタンク本体の接続孔周りに回転することにより、タンク本体に対する注液パイプの位置にずれが生じてしまうことが考えられる。この場合、作業者はタンク本体に対する注液パイプの姿勢を調整しながらの作業となる。即ち、液体タンクを車両へ搭載する際の作業性が低下する。
【0008】
しかしながら、請求項1記載の本発明では、上記第1係合部と第2係合部とが係合することによりタンク本体に対する注液パイプの位置のずれが生じてしまうことが抑制される。その結果、液体タンクを車両のエンジンルーム等に取付ける際に、作業者はタンク本体に対する注液パイプの姿勢を調整する必要がない。即ち、液体タンクを車両へ搭載する際の作業性を向上させることができる。
【0009】
請求項2記載の本発明に係る液体タンクは、請求項1記載の液体タンクにおいて、前記第1係合部及び前記第2係合部のうちいずれか一方は前記注液パイプが前記接続孔に挿入される方向に沿って突出形成されたガイド突起とされ、前記第1係合部及び前記第2係合部のうちいずれか他方は前記タンク本体に対する前記注液パイプの位置を所定の位置に案内すると共に前記ガイド突起と係合することにより前記タンク本体に対する前記注液パイプの位置を所定の位置に規制するガイド溝とされたことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の本発明では、上記構成のガイド突起及びガイド溝を備えている。そのため、注液パイプの接続部をタンク本体の接続孔に接続する際に、タンク本体に対する注液パイプの位置が多少ずれていたとしても、ガイド突起がガイド溝に挿入されることにより、タンク本体に対する注液パイプの位置が所定の位置に案内される。即ち、請求項2記載の本発明では、タンク本体に注液パイプを取付けるという工程の作業性を向上させることができる。
【0011】
請求項3記載の本発明に係る液体タンクは、請求項2記載の液体タンクにおいて、前記ガイド溝は、前記ガイド突起の挿入方向に向けて次第に幅狭となって前記ガイド突起を所定の位置に案内するガイド部と、前記ガイド突起と係合することにより前記注液パイプが前記タンク本体の前記接続孔周りに回転することを規制する規制部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の本発明では、ガイド溝は、幅狭構成とされたガイド部と規制部とを備えている。そのため、ガイド突起がガイド溝に挿入される際に、ガイド突起がガイド溝に設けられたガイド部上を摺動することにより、ガイド突起がガイド溝の規制部へと案内される。そして、規制部に案内された注液パイプをさらに挿入することでガイド突起が規制部と係合して接続孔周りの注液パイプの回転を規制する。このように、請求項3記載の本発明では、熟練者でなくともタンク本体の接続孔に注液パイプを挿入して取付けるだけで、タンク本体に対して注液パイプを所定の姿勢で安定して組付けることができ、作業性を向上させることができる。
【0013】
請求項4記載の本発明に係る液体タンクは、請求項2又は請求項3記載の液体タンクにおいて、前記タンク本体はタンク上部とタンク下部とを含んで構成された分割構造とされかつ該タンク上部と該タンク下部とはフランジ部を介して接合されると共に、前記ガイド突起は前記タンク上部に設けられかつ前記ガイド突起の基端部は前記フランジ部に接続されたことを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の本発明では、ガイド突起の基端部がタンク本体のフランジ部に接続されている。そのため、ガイド突起をガイド溝に挿入する際に、ガイド突起に作用する荷重をフランジ部で受け止めることができる。
【0015】
請求項5記載の本発明に係る液体タンクは、請求項2乃至請求項4いずれか1項に記載の液体タンクにおいて、前記タンク本体は該タンク本体の一部が膨出形成された膨出部を備えると共に前記接続孔が該膨出部の上壁に開口形成されかつ前記ガイド突起が該膨出部の側壁に形成されたことを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の本発明では、接続孔がタンク本体に設けられた膨出部の上壁に設けられている。そのため、タンク本体が液体で満たされた状態(所謂満タン状態)において、膨出部の内側には注液パイプの接続部、膨出部の上壁、膨出部の側壁及び液体の液面に囲まれた空間が形成される。即ち、この空間には空気が残る。また、この状態で液体タンク内の液体が凍結して固体になると、その過程で体積膨張を伴う。しかしながら、請求項5記載の本発明では、上記空間において液体タンク内の液体が固体になる際の体積膨張を吸収することができる。換言すると、液体タンク内の液体が凍結することによって液体タンクが破損することを抑制することができる。
【0017】
請求項6記載の本発明に係る液体タンクは、請求項5記載の液体タンクにおいて、前記膨出部は円筒状に形成されると共に、前記注液パイプは該注液パイプの外周面から径方向外側に延出形成された基部と該基部の先端から前記注液パイプの挿入方向に延出形成されかつ前記膨出部の前記側壁に対向して配置された延出端部とを備え、前記ガイド溝が前記延出端部に形成されたことを特徴とする。
【0018】
請求項6記載の本発明では、注液パイプに設けられたガイド溝がタンク本体の膨出部の側壁に対向する位置までオフセットしている。そのため、ガイド突起の位置を膨出部の側壁の周方向の360度の範囲にて適宜設定することができる。その結果、膨出部の側壁に設けられたガイド突起の位置を変更することにより、注液パイプの共用化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態に係るウォッシャタンクを示す斜視図である。
【図2】(A)はウォッシャタンク上部を示す斜視図であり、(B)はウォッシャタンク上部に設けられた膨出部を示す拡大断面図である。
【図3】ウォッシャタンク下部を示す斜視図である。
【図4】(A)は注液パイプ全体を示す斜視図であり、(B)は注液パイプの接続部付近の拡大断面図である。
【図5】注液パイプの接続部がウォッシャタンク本体に設けられた接続孔に接続された状態を示す拡大断面図である。
【図6】注液パイプの接続部がウォッシャタンク本体に設けられた接続孔に接続された状態において、ガイド突起がガイド溝に係合した状態を示す側面図である。
【図7】ガイド突起がガイド溝に係合した状態における注液パイプの注入口の位置を示す正面図である。
【図8】(A)は変形例に係る回止手段を示す側面図であり、(B)は変形例に係る回止手段を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1〜図6を用いて、本発明の実施形態に係る液体タンクとしてのウォッシャタンクについて説明する。なお、ウォッシャタンクが車体に搭載された状態における車両上下方向を矢印UPで示す。
【0021】
図1に示されるように、ウォッシャタンク10は、注液パイプ12がウォッシャタンク本体14に取付けられることにより構成されている。また、ウォッシャタンク本体14にはポンプ16が取付けられており、該ポンプ16を駆動することによりウォッシャタンク本体14に注入されたウィンドウォッシャ液を車体に設けられたウォッシャノズルに圧送する構成である。以下、ウォッシャタンク10の主要な要素であるウォッシャタンク本体14と注液パイプ12について説明し、次いで本発明の要部である注液パイプ12がウォッシャタンク本体14の接続孔22B(図2(A)参照)周りに回転することを規制する回止手段17について説明する。
【0022】
(ウォッシャタンク本体14)
ウォッシャタンク本体14は、ウォッシャタンク上部18とウォッシャタンク下部20とを含んで構成された分割構造とされている。
【0023】
図2(A)に示されるように、ウォッシャタンク上部18は、樹脂系の材料を用いて射出成型にて形成されており、車両に搭載された状態において車両上下方向と直交する方向に延在する略矩形平板状の上壁18A及び該上壁18Aの端部から車両下方側に屈曲して延在する側壁18Bを備えている。また、ウォッシャタンク上部18は、側壁18Bの端部から車両上下方向と直交する方向かつウォッシャタンク本体14の外側に向けて延在するフランジ部18Cを備えている。
【0024】
また、ウォッシャタンク上部18には、上壁18Aから車両上方側に膨出形成された円筒状の膨出部22が形成されている。この膨出部22の上壁22Aには、車両上下方向に開口した円形の孔が形成されており、この孔が後述する注液パイプ12の接続部12A(図4参照)が接続される接続孔22Bとされている。さらに、この接続孔22Bに隣接した膨出部22の周壁22Cには後述する第2係合部としてのガイド溝34(図4参照)と係合する第1係合部としてのガイド突起24が形成されている。また、ウォッシャタンク上部18には、ウォッシャタンク10を車体に固定するための固定部18Dが形成されている。さらに、図2(B)に示されるように、ウォッシャタンク上部18は、膨出部22の車両下方側の端部から同下方側に延出形成された円筒状のスカート部18Eを備えている。また、このスカート部の下端部は、後述する注液パイプ12がウォッシャタンク本体14に取付けられた状態における(図5参照)注液パイプ12の接続部12Aの端部よりも、車両下方側に延出している。
【0025】
図3に示されるように、ウォッシャタンク下部20は、樹脂系の材料を用いて射出成型にて形成されており、車両上方側に開口したバスタブ形状とされている。具体的には、ウォッシャタンク下部20は、車両上下方向と直交する方向に延在する略矩形平板状の下壁(図示省略)及び該下壁の端部から車両上方側に延在する側壁20Aを備えている。また、ウォッシャタンク下部20は、側壁20Aの端部から車両上下方向と直交する方向かつウォッシャタンク本体14の外側に向けて延在するフランジ部20Bを備えている。さらに、ウォッシャタンク下部20の側壁20Aには、ポンプ16の取付孔20Cが形成されている。また、ウォッシャタンク下部20の側壁20A及び下壁には、ウォッシャタンク10を車体に固定するための固定部20Dが形成されている。
【0026】
以上説明した、ウォッシャタンク上部18のフランジ部18Cとウォッシャタンク下部20のフランジ部20Bとが重ね合わされて熱溶着により接合されることによりウォッシャタンク本体14が形成され、さらにウォッシャタンク下部20の取付孔20Cにポンプ16が取付けられることにより、ウィンドウォッシャ液がウォッシャタンク本体14に貯留することが可能となる構成である。
【0027】
(注液パイプ12)
図4(A)に示されるように、注液パイプ12は樹脂系の材料を用いて射出成型にて形成された筒状の長尺部品であり、一方の端部には上記ウォッシャタンク本体14に設けられた接続孔22Bに挿入されて接続される接続部12Aが形成されており、他方の端部にはウィンドウォッシャ液が注入される注入口12Bが形成されている。また、注液パイプ12は接続部12Aと注入口12Bとを繋ぐ第1パイプ部12C及び第2パイプ部12Dを備えている。この第1パイプ部12Cは接続部12Aと同一軸線上に配置されており、また第2パイプ部12Dは第1パイプ部12Cの上端部から注入口12Bに向けて屈曲して延在している。さらに、第2パイプ部12Dは、注入口12Bに向かうに従って開口面積が増加するように構成されている。また、注入口12Bの近傍の第2パイプ部12Dには、注液パイプ12を車体に固定するための固定部12Eが設けられている。なお、注入口12Bには、異物の混入やウィンドウォッシャ液の蒸発等を防止するためにキャップ26(図1参照)が取付けられ、該キャップ26にはウォッシャタンク10内の圧力を逃がすための図示しないブリージング孔が形成されている。
【0028】
また、図4(B)に示されるように、注液パイプ12の接続部12Aには、返し突起12Fが周方向に沿って形成されている。また、返し突起12Fは、接続部12Aの開口端に向けて突起高さが小さくなる所謂テーパ形状とされている。これにより、注液パイプ12の接続部12Aをウォッシャタンク本体14に設けられた接続孔22Bに挿入することが容易になる。また、注液パイプ12とウォッシャタンク本体14との接続が完了した状態では、返し突起12Fがウォッシャタンク本体14の接続孔22Bに設けられたグロメット28(図5参照)に引っ掛かることにより、注液パイプ12とウォッシャタンク本体14との接続が外れてしまうことが抑制される構成である。
【0029】
さらに、第1パイプ部12Cは、該第1パイプ部12Cの外周面から径方向外側に延出形成された基部30を備えている。また、第1パイプ部12Cは、基部30の先端から注液パイプ12が接続孔22Bに挿入される方向(矢印A方向)に延出形成された延出端部32を備えている。さらに、この延出端部32は、ウォッシャタンク本体14に注液パイプ12が接続された状態において、上記ウォッシャタンク本体14の膨出部22の周壁22Cに対向して配置されている。また、この延出端部32には、上記ウォッシャタンク上部18に形成されたガイド突起24と係合する第2係合部としてのガイド溝34が形成されている。換言すると、ガイド溝34が基部30を介してウォッシャタンク本体14の膨出部22の周壁22Cに対向する位置までオフセットしている構成である。さらに、基部30には、注液パイプ12が接続孔22Bに挿入される方向(矢印A方向)と対向する方向に延在するリブ36が形成されており、このリブ36は第1パイプ部12Cの外周面に接続されている。
【0030】
図5に示されるように、以上説明したウォッシャタンク本体14の接続孔22Bの縁にグロメット28が係止され、次いで注液パイプ12の接続部12Aが接続孔22Bに挿入されることにより、注液パイプ12がウォッシャタンク本体14に接続される。その結果、注液パイプ12の注入口12Bからウォッシャタンク本体14へウィンドウォッシャ液を注入することが可能となる構成である。
【0031】
(回止手段17)
次に本発明の要部である、上記注液パイプ12がウォッシャタンク本体14の接続孔22B周りに回転することを規制する回止手段17について説明する。
【0032】
図6に示されるように、回止手段17はウォッシャタンク本体14に形成されたガイド突起24と注液パイプ12に設けられたガイド溝34とを主要な要素として構成されている。
【0033】
ガイド突起24は注液パイプ12が接続孔22Bに挿入される方向(矢印A方向)を長手として形成されている。また、ガイド突起24は注液パイプ12が接続孔22Bに挿入される方向(矢印A方向)に沿って末広がりに形成されている。さらに、ガイド突起24の基端部24Aはウォッシャタンク上部18のフランジ部18Cに接続されている。
【0034】
ガイド溝34は、注液パイプ12が接続孔22Bに挿入される方向(矢印A方向)に開口したV字状の溝部34A及び該V字状の溝部34Aの閉塞端部34Bから注液パイプ12が接続孔22Bに挿入される方向(矢印A方向)に開口したU字状の溝部34Cによって構成されている。また、V字状の溝部34Aは上記ガイド突起24がガイド溝34に挿入される際に、ガイド突起24がV字状の溝部34A上を摺動することにより、ガイド突起24をガイド溝34のU字状の溝部34Cへと案内するガイド部とされている。さらに、U字状の溝部34Cはガイド突起24が係合されることにより注液パイプ12がウォッシャタンク本体14の接続孔22B周りに回転することを規制する規制部とされている。
【0035】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0036】
図1に示されるように、ウォッシャタンク本体14と注液パイプ12とが分割構造とされたウォッシャタンク10においては、輸送効率を高めるためにウォッシャタンク本体14と注液パイプ12とが別々に梱包されて工場に搬入される。次いで、ウォッシャタンク本体14にグロメット28を取付けた後、注液パイプ12がウォッシャタンク本体14に接続される。この小組み工程を経た後に、ウォッシャタンク本体14及び注液パイプ12を含んで構成されたウォッシャタンク10が固定部12E,18D,20Dを介して車両のエンジンルームに取付けられる。この場合、注液パイプ12がウォッシャタンク本体14の接続孔22B周りに回転することにより、ウォッシャタンク本体14に対する注液パイプ12の位置にずれが生じてしまうことが考えられる。ウォッシャタンク本体14に対する注液パイプ12の位置にずれが生じてしまった場合、固定部12E,18D,20Dの位置と車体に設けられた取付部との位置が合わなくなり、その結果、作業者はウォッシャタンク本体14に対する注液パイプ12の姿勢を調整しながらの作業となる。即ち、ウォッシャタンク10を車両へ搭載する際の作業性が低下する。
【0037】
しかしながら、本実施形態では注液パイプ12がウォッシャタンク本体14に接続される際に、ウォッシャタンク本体14のガイド突起24が注液パイプ12のガイド溝34に挿入及び係合する。その結果、ウォッシャタンク本体14に対する注液パイプ12の位置が規制されると共に、注液パイプ12がウォッシャタンク本体14の接続孔22B周りに回転することが抑制される。その結果、上記の如く、固定部12E,18D,20Dの位置と車体に設けられた取付部との位置が合わなくなるという問題を招来しない。即ち、本実施形態では、ウォッシャタンク10を車両へ搭載する際の作業性を向上させることができる。
【0038】
また、図6に示されるように、本実施形態では、ガイド溝34がV字状の溝部34A及びU字状の溝部34Cによって構成されている。したがって、注液パイプ12の接続部12Aをウォッシャタンク本体14の接続孔22Bに接続する際に、ウォッシャタンク本体14に対する注液パイプ12の位置が多少ずれていたとしても、ガイド突起24がV字状の溝部34A上を摺動することにより、ガイド突起24がU字状の溝部34Cへ案内される。詳述すると、図7の2点鎖線で示されるように、ウォッシャタンク本体14に対する注液パイプ12の位置が多少ずれていたとしても、注液パイプ12の接続部12Aをウォッシャタンク本体14の接続孔22Bに接続する際に、ウォッシャタンク本体14に対する注液パイプ12位置が実線で示された正規の位置に案内される。このように、本実施形態では、V字状の溝部34Aという簡単な構成のガイド部によって、注液パイプ12をウォッシャタンク本体14に取付ける工程の作業性を向上させることができる。
【0039】
さらに、本実施形態では、ガイド突起24の基端部24Aがウォッシャタンク上部18のフランジ部18Cに接続されているため、ガイド突起24をガイド溝34に挿入する際にガイド突起24に作用する荷重をフランジ部18Cにて受け止めることができる。
【0040】
また、図5には、注液パイプ12の注入口12Bからウィンドウォッシャ液を注入することによって、ウォッシャタンク本体14がウィンドウォッシャ液で満たされた状態(所謂満タン状態)のウィンドウォッシャ液の液面が2点鎖線で示されている。この満タン状態において、ウォッシャタンク本体14の膨出部22の内部には、注液パイプ12の接続部12A、膨出部の上壁22A、膨出部22の周壁22C、スカート部18E及び液面に囲まれた空間Bが形成される。即ち、空間Bには空気が残っている。また、このような空間Bや後述の空間Cの無い満タン状態でウォッシャタンク10内のウィンドウォッシャ液が凍結して固体になると、その過程で体積膨張を伴い、ウォッシャタンク本体14が破損してしまうことが考えられる。しかしながら、本実施形態では、上記空間Bにおいてウォッシャタンク10内のウィンドウォッシャ液が固体になる際の体積膨張を吸収することができる。換言すると、ウォッシャタンク10内のウィンドウォッシャ液が凍結することによってウォッシャタンク本体14が破損することを抑制することができる。
【0041】
さらに、本実施形態では、上記の満タン状態において、スカート部18E、ウォッシャタンク上部18の上壁18A、ウォッシャタンク上部18の側壁18B及び液面で囲まれた空間Cが形成される。即ち、上記空間Bと同様にこの空間Cにも空気が残っている。したがって本実施形態では、ウォッシャタンク10内のウィンドウォッシャ液が凍結することによってウォッシャタンク本体14が破損することをより一層抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態では、注液パイプ12に設けられたガイド溝34が基部30を介してウォッシャタンク本体14の膨出部22の周壁22Cに対向する位置までオフセットしている。そのため、ガイド突起24を膨出部22の周壁22Cの周方向の360度の範囲にて適宜設定することができる。即ち、膨出部22の周壁22Cに設けられたガイド突起24の位置を変更することにより、注液パイプ12の共用化を図ることが可能となる。
【0043】
さらに、本実施形態では、上記構成のリブ36が設けられている。そのため、ガイド突起24をガイド溝34に挿入する際にガイド溝34に作用する荷重をリブ36にて受け止めることができると共に、第1パイプ部12Cに対する基部30の支持剛性を向上させることができる。
【0044】
なお、本実施形態では、ウォッシャタンク本体14にガイド突起24を設けると共に注液パイプ12にガイド溝34を設けた例について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、ウォッシャタンク本体14にガイド溝34を設けると共に注液パイプ12にガイド突起24を設けた構成としても良い。
【0045】
また、本実施形態では、ガイド溝34の端部34Aがフランジ部18Cに接続された例について説明してきたが、ガイド溝34の端部34Aがフランジ部18Cに接続されていない構成としても良い。このように、ガイド溝34の端部34Aをフランジ部18Cに接続するか否かについては、ガイド溝の強度等を考慮して適宜設定すればよい。
【0046】
さらに、本実施形態では、ウォッシャタンク上部18に膨出部22を設けた例について説明してきたが、本発明はこれに限定されず膨出部22を設けない構成としても良い。このように、膨出部22を設けるか否かについては、被貯留物である液体の融点等を考慮して適宜設定すればよい。
【0047】
また、本実施形態では、ウォッシャタンク10に本発明を適用した例について説明してきたが、本発明はこれに限定されることは言うまでもない。例えば、冷却水のリザーブタンクやドライサンプ方式を採るエンジンの潤滑油を貯留するオイルタンク等に本発明を適用しても良い。
【0048】
(変形例)
次に、図8を用いて、変形例に係る回止手段について説明する。なお、上記実施形態と同一の部材については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0049】
図8(A)示されるように、変形例に係る回止手段38は、ウォッシャタンク本体14に設けられた第1係合部としての円錐突起42と注液パイプ12に設けられた第2係合部としての貫通孔44とを主要な要素として構成されている。
【0050】
円錐突起42はウォッシャタンク上部18の膨出部22の上壁22Aに設けられており、またこの円錐突起42は注液パイプ12が接続孔22Bに挿入される方向(矢印A方向)と対向する方向に向けて窄まった円錐形状とされている。
【0051】
貫通孔44は第1パイプ部12Cの外周面の径方向外側に延出形成された基部40の先端側に設けられている。具体的には、基部40は注液パイプ12が接続孔22Bに挿入される方向(矢印A方向)と対向する方向に開口した断面U字状に形成されており、更に注液パイプ12が接続孔22Bに挿入される方向(矢印A方向)に貫通した貫通孔44が前記基部40の先端側に形成されている。
【0052】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0053】
図8(A)に示されるように、本変形例では注液パイプ12がウォッシャタンク本体14に接続される際に、ウォッシャタンク本体14の円錐突起42が注液パイプ12の貫通孔44に挿入及び係合する。その結果、図8(B)に示されるように、ウォッシャタンク本体14に対する注液パイプ12の位置が規制されると共に、注液パイプ12がウォッシャタンク本体14の接続部22B周りに回転することが抑制される。従って、本変形例においても上記実施形態と同様に、ウォッシャタンク10を車両へ搭載する際の作業性を向上させることができる。
【0054】
また本変形例では、円錐突起42は、注液パイプ12が接続孔22Bに挿入される方向と対向する方向にむけて窄まった円錐形状とされている。従って、注液パイプ12の接続部12A(図4参照)をウォッシャタンク本体14の接続孔22Bに接続する際に、ウォッシャタンク本体14に対する注液パイプ12の位置が多少ずれていたとしても、貫通孔44の開口縁部が円錐突起42の側面上を摺動することにより、貫通孔44の中心がガイド突起24の中心に案内される。従って、本変形例においても上記実施形態と同様に、ウォッシャタンク本体14に注液パイプ12を取付けるという工程の作業性を向上させることができる。
【0055】
なお、上記実施形態において第1係合部としてのガイド突起24及び第2係合部としてのガイド溝34により構成された回止手段17について説明し、また変形例において第1係合部としての円錐突起42及び第2係合部としての貫通孔44により構成された回止手段38について説明してきたが、本発明はこれらの回止手段に限定されるものではない。即ち、第1係合部と第2係合部とが係合することにより、注液パイプがタンク本体の接続孔周りに回転することを規制することができる他の回止手段を適用しても良い。
【0056】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
10 ウォッシャタンク(液体タンク)
12 注液パイプ
12A 接続部
12B 注入口
14 ウォッシャタンク本体(タンク本体)
18 ウォッシャタンク上部(タンク上部)
18C フランジ部
20 ウォッシャ端部下部(タンク下部)
22 膨出部
22A 上壁
22B 接続孔
22C 周壁
24 ガイド突起(第1係合部)
24A 基端部
30 基部
32 延出端部
34 ガイド溝(第2係合部)
34A V字状の溝部(ガイド部)
34C U字状の溝部(規制部)
42 円錐突起(第1係合部)
44 貫通孔(第2係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の接続孔が開口形成されると共に内部に液体を貯留するタンク本体と、
一方の端部に前記タンク本体の前記接続孔に挿入されて接続される円筒状の接続部を有すると共に他方の端部に液体が注入される注入口を有する長尺状の注液パイプと、
前記タンク本体の前記接続孔に隣接して設けられた第1係合部と、
前記注液パイプの前記接続部に隣接して設けられかつ前記第1係合部と係合することにより前記注液パイプが前記タンク本体の前記接続孔周りに回転することを規制する第2係合部と、
を備えた液体タンク。
【請求項2】
前記第1係合部及び前記第2係合部のうちいずれか一方は前記注液パイプが前記接続孔に挿入される方向に沿って突出形成されたガイド突起とされ、前記第1係合部及び前記第2係合部のうちいずれか他方は前記タンク本体に対する前記注液パイプの位置を所定の位置に案内すると共に前記ガイド突起と係合することにより前記タンク本体に対する前記注液パイプの位置を所定の位置に規制するガイド溝とされた請求項1記載の液体タンク。
【請求項3】
前記ガイド溝は、前記ガイド突起の挿入方向に向けて幅狭となって前記ガイド突起を所定の位置に案内するガイド部と、前記ガイド突起と係合することにより前記注液パイプが前記タンク本体の前記接続孔周りに回転することを規制する規制部とを備えた請求項2記載の液体タンク。
【請求項4】
前記タンク本体はタンク上部とタンク下部とを含んで構成された分割構造とされかつ該タンク上部と該タンク下部とはフランジ部を介して接合されると共に、前記ガイド突起は前記タンク上部に設けられかつ前記ガイド突起の基端部は前記フランジ部に接続された請求項2又は請求項3記載の液体タンク。
【請求項5】
前記タンク本体は該タンク本体の一部が膨出形成された膨出部を備えると共に前記接続孔が該膨出部の上壁に開口形成されかつ前記ガイド突起が該膨出部の側壁に形成された請求項2乃至請求項4いずれか1項に記載の液体タンク。
【請求項6】
前記膨出部は円筒状に形成されると共に、前記注液パイプは該注液パイプの外周面から径方向外側に延出形成された基部と該基部の先端から前記注液パイプの挿入方向に延出形成されかつ前記膨出部の前記側壁に対向して配置された延出端部とを備え、前記ガイド溝が前記延出端部に形成された請求項5記載の液体タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−67204(P2013−67204A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205401(P2011−205401)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】