説明

液体フタロニトリルの連続的水素化による、キシリレンジアミンの製造方法

本発明は、液体フタロニトリルを、反応器中で、不均一系触媒上で、液体アンモニアの存在下で連続的に水素化させ、その際、反応器搬出物の一部を、液体循環流として連続的に反応器入口に再循環させる(循環様式)キシリレンジアミンの製造方法に関し、この場合、この方法は、フタロニトリル溶融物流を液体の形で、混合ユニットを用いて水素化反応器周囲の循環流中に導入し、その際、反応器中のフタロニトリル変換率はシングルパスで99%を上廻り、かつ循環流は93質量%を上廻る量の液体アンモニアおよびキシリレンジアミンから成り、かつさらにフタロニトリルのための任意の他の溶剤を含有することはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応器中で、液体アンモニアの存在下で、不均一系触媒上で、液体フタロニトリルを連続的に水素化することにより、キシリレンジアミンを製造するための方法に関し、この場合、この方法は、反応器搬出物の一部を、循環流として、反応器入口に再循環させる(循環様式)。
【0002】
キシリレンジアミン(ビス(アミノメチル)ベンゼン)は、たとえば、ポリアミドの製造のために、エポキシ硬化剤またはイソシアネート製造のための中間体として、有用な出発材料である。
【0003】
用語「キシリレンジアミン」(XDA)は、3個の異性体、オルト−キシリレンジアミン、メタ−キシリレンジアミン(MXDA)およびパラ−キシリレンジアミンを包含する。
【0004】
用語「フタロニトリル」(PDN)は、3個の異性体1,2−ジシアンベンゼン=o−フタロニトリル、1,3−ジシアンベンゼン=イソフタロニトリル=IPDNおよび1,4−ジシアンベンゼン=テレフタロニトリルを包含する。
【0005】
フタロニトリルは固体(たとえば、イソフタロニトリル(IPDN)は161℃で溶解)であり、かつ有機溶剤中で、相対的に乏しい溶解性を示す。
【0006】
キシレンのアンモ酸化および得られたフタロニトリルの引き続いての水素化によるキシリレンジアミンの二段階合成が知られている。未変換のジニトリルは、XDAからの留去が極めて困難である。
【0007】
US−A−4482741(UOP Inc.)では、アンモニア、特定の触媒および溶剤としてのXDAの存在下での、PDNの水素化が記載されている。
【0008】
MXDAにおいて、IPDNの溶解性は70℃で約20質量%である。
【0009】
EP−A2−1193247およびEP−A1−1279661(双方ともにMitsubishi Gas Chem. Comp.)は、イソフタロニトリル(IPDN)を精製するための方法および精製したXDAを製造するための方法に関する。
【0010】
EP−A2−1193244(Mitsubishi Gas Chem. Comp.)では、フタロニトリルの水素化によりXDAを製造するための方法が記載されており、この場合、このフタロニトリルは、すぐ前の工程でキシレンのアンモ酸化により合成されるものであって、その際、アンモ酸化工程の蒸気の形の生成物は、直接的に液体の有機溶剤と接触させ(クエンチング)、かつ得られたクエンチング溶液または懸濁液を、水素化に供給する。
【0011】
好ましい有機溶剤は、C〜C12芳香族炭化水素、たとえばキシレンおよびプソイドクミンである(第6欄、段落[0027]および[0028])。
【0012】
US−A−3069469(Californis Research Corp.)では、芳香族ニトリル、たとえばPDNの水素化のための溶剤として、芳香族炭化水素、キシレン、ジオキサンおよび脂肪族アルコールを教示している。
【0013】
DE−A−2164169(Mitsubishi Gas Chemical.Co., Inc.)では、第6頁、最終パラグラフにおいて、IPDNをNi−および/またはCo−触媒の存在下で、溶剤としてのアンモニア中で水素化することにより、メタ−XDAとすることが記載されている。
【0014】
GB−A−852972(対応:DE−A−1119285)(BASF AG)では、溶剤としてアンモニアおよびXDAを、PDNの水素化に使用することが開示されている。エダクト溶液は、固体PDNから出発して、抽出工程で別個の容器中で製造される(たとえば、第2頁、第119行〜第120行)。
【0015】
JP−A−2003−327563(Mitsubishi Gas Chemical.Co., Inc.)は、芳香族ジニトリルの固定床水素化方法に関し、この場合、芳香族ニトリルを1〜10質量%溶液として使用している。
【0016】
文献番号10341615.3、10341632.3、10341614.5、10341633.1、10341612.9および10341613.7(BASF AG、2003年、9月10日)を有する6個のドイツ特許出願はそれぞれXDAの製造方法に関する。
【0017】
ドイツ特許出願(02.09.04、BASF AG)では、反応器中で液体アンモニアの存在下で、不均一系触媒上での、液体PDNの連続的水素化による、XDAの製造方法に関し、その際、フタロニトリル溶融物流を、混合ユニットにより液体の形で、液体アンモニア流中に導入し、かつ液体混合物を、水素化反応器中に供給する。
【0018】
フタロニトリル製造のための種々の方法において、これらは固体としてまたは溶剤たとえばプソイドクミン中に溶解された形、あるいは溶融物として生じる。固体の取り扱いは、通常困難でありかつ手間がかかる。溶剤、たとえばo−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、プソイドクミン、メシチレン、エチレンベンゼンまたはメチルピリジン中でのフタロニトリルの低い溶解性の理由から、溶剤中でのさらなる処理が、水素化後に一般には留去すべき極めて多量の溶剤が要求され、この場合、これらは、大きい装置および大きい質量流に応じて高いエネルギー入力が必要とされる。
【0019】
また、引き続いての蒸留において水でのPDNの抽出が可能である。さらにこれはエネルギー入力が大きく、それというのも水を留去しなければならず、かつ溶剤は、少なくとも部分的に再生しなければならないためである。
【0020】
したがって本発明は、キシリレンジアミン、特にメタ−キシリレンジアミンの経済的に改善された製造方法に関し、この場合、この方法は、高い選択率、高い収率および高い空時収量(STY)で見出すことができ、この場合、これは、規模の減少および/または少ない装置および機械、減少した流、特に再循環流を含む溶剤流により、従来技術に匹敵する流量で可能にするものである。
【0021】
したがって液体フタロニトリルを、反応器中で、不均一系触媒上で、液体アンモニアの存在下で連続的に水素化させ、その際、反応器搬出物の一部を、液体循環流として連続的に反応器入口に再循環させる(循環様式)キシリレンジアミンの製造方法が見出され、この場合、この方法は、フタロニトリル溶融物流を液体の形で、混合ユニットを用いて水素化反応器周囲の循環流中に導入し、その際、反応器中のフタロニトリル変換率はシングルパスで99%を上廻り、かつ循環流は93質量%を上廻る量の液体アンモニアおよびキシリレンジアミンから成り、かつさらにフタロニトリルのための任意の他の溶剤を含有することはない。
【0022】
好ましくは本発明による方法は、イソフタロニトリル(IPDN)の、水素化によるメタ−キシリレンジアミン(MXDA)を製造するための使用を見出したものであって、この場合、イソフタロニトリル(IPDN)は、特にすぐ前の工程で、メタ−キシレンのアンモ酸化によって合成される。
【0023】
溶融されたフタロニトリルは、たとえば、アンモ酸化工程、蒸発濃縮工程または蒸留カラムの後続に連結されたクエンチから生じてもよく、かつ、フタロニトリルは、たとえば溶融物として、これらの熱的分離装置の塔底を介して、たとえばドイツ特許出願10341633.1(BASF AG、9月10日、2003年)に記載されているように、それぞれ除去することができる。
【0024】
また、本発明による方法において、予め存在する溶融PDNを固体として使用することができる。溶融は、たとえば押出機により実施することができる。
【0025】
水素化反応器周囲の循環流中に溶融物としてPDNを計量供給することの利点は、計量供給中でのかなり高い希釈率、混合後の急速な冷却およびこれによるニトリルと生成物であるアミンとの間の反応回避である。これは、副生成物形成を減少させる。
【0026】
高い希釈率はさらに反応中での利点を有し、それというのも、反応熱を伝導的に除去することができるためである(たとえば、加熱された反応器搬出物により)。これにより反応器中での温度上昇はかなり制限される。反応器供給温度および循環流量の調整は、反応器の温度プロフィールを左右する。したがって、低い反応器温度は、選択率のさらなる増加を導く。
【0027】
循環流でのPDNの希釈によって、PDNに対する高いアンモニア濃度が達成され、この場合、これらは、さらにその選択率において有利な効果を示す。にもかかわらず、極めて少量の新鮮なNH流のみが必要とされ、かつ、キシリレンジアミンと一緒に反応回路から除去されたアンモニアを回収および再循環するための小さいアンモニアカラムのみである。循環流を用いない場合に同様の反応条件を設定するには、より多くのアンモニアを供給し、かつその後に留去しなければならない。
【0028】
循環溶液(循環流)中のフタロニトリル溶融物の供給および溶解には、混合ユニット、好ましくはミキサノズルが必要とされ、この場合、これらは、最も簡単な場合にパイプラインT−ピース(Rohrleitung-T-Stueck)により実施される。ノズル口は狭いものが好ましい。
【0029】
流は別個に導入され、かつ、取り付けられた管中で、主要な乱流に基づいて混合およびホモジナイズされる。有利には、スタティックミキサを下流に接続することができる。しかしながら、ここで付加的な装置、たとえば、(固体または液体の)フタロニトリルを溶剤中に溶解させるための撹拌槽は必要とされない。
【0030】
好ましくは、混合ユニットは、循環流中へのフタロニトリル供給箇所で、使用されるフタロニトリルの融点を1〜40℃、好ましくは5〜25℃上廻る範囲の温度に加熱する。
【0031】
好ましくは、PDNを実際の反応圧で供給する。特に好ましくはPDN−供給を、設定した混合温度で蒸発が生じることなく、むしろ混合物が液体のままである程度に実施する。
【0032】
特に好ましくは、混合ユニットとしてミキサノズルを用いて、循環流中に液体フタロニトリルを噴霧する。
【0033】
ミキサノズルの好ましい実施態様は図2に示す。ミキサノズルは、たとえば蒸気、熱キャリアオイルを用いてか、あるいは、電気的に加熱することができる。
【0034】
循環溶液の供給は、1種またはそれ以上の放射状または接線に固定されたノズルを介して実施し、この場合、これらは、たとえば図3に示す。
【0035】
局所的に高い流速(高いインパルス流および乱流)は重要であり、これにより迅速な混合(ホモジナイズ)が生じる。積層流の場合には、物質移動はホモジナイズには十分ではなく、かつこの流は十分には混合されない(すじ形成)。
【0036】
適したミキサノズルは、たとえばUlmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第5版.第B4巻、第565頁〜第569頁に記載されている。
【0037】
水素化反応器中のフタロニトリル変換率は、シングルパスで、好ましくは99.5%を上廻って、さらに好ましくは99.9%を上廻って、殊に好ましくは99.95%を上廻って、特に好ましくは99.97%を上廻って生じる。水素化反応器中では、反応条件の適切な設定(圧力、温度、PDN、NHおよびHのモル比、触媒、物質流速、反応器中の滞留時間)により、実際の全変換を達成することが可能になる。
【0038】
好ましくは、液体循環流は94質量%を上廻り、さらに好ましくは95質量%を上廻り、特に好ましくは96質量%を上廻る液体アンモニアおよびキシリレンジアミンから構成され、その際、残余は副次的成分により形成される。
【0039】
液体循環流中の副次的成分は、反応において形成された副生成物であってもよく、さらにはフタロニトリルと一緒に供給された、溶解されたガスおよび副次的成分であってもよいが、しかしながら他の溶剤、たとえばフタロニトリルのための有機溶剤を含有することはない。
【0040】
好ましくは、循環流は25〜90質量%、好ましくは30〜70質量%、特に好ましくは45〜60質量%の液体アンモニアを含有する。
【0041】
反応器入口に連続的に循環流として再循環される液体搬出物の一部は、好ましくは、20〜95質量%、さらに好ましくは50〜92質量%、特に好ましくは75〜90質量%の全液体反応器搬出物を生じる。
【0042】
フタロニトリル供給流と循環流との質量比は、好ましくは0.03〜1.0、さらに好ましくは0.05〜0.5、特に好ましくは0.07〜0.2である。
【0043】
反応温度は、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは60〜135℃、特に好ましくは70〜130℃である。
【0044】
循環流の量および反応器供給温度は、反応器出口温度が、好ましい最大値(たとえば130℃)を超えることがないように調整され、それというのも、温度が増加するにつれて副生成物形成が増加するためである。この反応器供給温度は、反応が十分に迅速に進行し、かつ完全な変換率を達成するよう調整される(たとえば、付加的な熱キャリアまたは好ましくは混合する流の温度の適切な調整による)。循環する物質流速を変化させることによって、反応器の入口および出口温度の双方を調整するのが可能になり、かつ、反応進行を最適に調整し、それによってXDA収率を最適化する。
【0045】
水素化は、好ましくは100〜300バールの範囲、さらに好ましくは120〜220バール、特に好ましくは150〜200バールの範囲の絶対圧で実施する。
【0046】
水素化に関して、公知の触媒および反応器(特に管型反応器または管束反応器、固定床方法または懸濁様式)を使用することができる。
【0047】
触媒固定床方法の場合には、液相およびトリクル様式の双方が可能である。好ましくはトリクル様式である。
【0048】
反応器を断熱的に操作することが好ましく、それと同時に生じる反応熱を、循環系中に組み込まれた冷却器を介して、さらに場合によっては使用される冷却ガスを用いて除去する。これらは、さらに副生成物を抑制することによって、反応の選択率を付加的に増加させる。しかしながら冷却された反応器、たとえば管束反応器を使用することも可能である。
【0049】
好ましくは、触媒は、非担持型触媒としてかまたは不活性担体上で、コバルトおよび/またはニッケルおよび/または鉄を含有するものである。特に好ましくは、水素化は、マンガンをドープしたコバルト−非担持型触媒上で実施する。
【0050】
適した触媒は、たとえばラネーニッケル、ラネーコバルト、Co非担持型触媒、担体上のチタンドープコバルト(JP-A-2002 205980)、SiO担体上のNi(WO-A-2002/046179)、SiO担体上のCo/Ti/Pd(CN-A-1285343、CN-A-1285236)および二酸化ジルコニウム担体上のニッケルおよび/またはコバルト(EP-A1-1262232)である。
【0051】
他の適した触媒の例は、たとえばGB−A−852972(対応DE-A-1119285、BASF AG)、DE−A−1259899(BASF AG)およびUS特許3069469(California Research Corp.)および4482741(UOP Inc.,)で見出すことができる。
【0052】
特に好ましい触媒は、Mn、Pおよびアルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)でドーピングされたコバルト非担持型触媒であり、この場合、これらはEP−A1−742045(BASF AG)で開示されている。水素での還元前に、これら触媒の触媒的に活性の組成物は55〜98質量%、好ましくは75〜95質量のコバルト、0.2〜15質量%のリン、0.2〜15質量%のマンガンおよび0.05〜5質量%のアルカリ金属、特にナトリウムから構成されるものであって、この場合、これらは、それぞれ酸化物として算定される。
【0053】
他の適した触媒は、EP−A−963975(BASF AG)で開示された触媒であり、この場合、これらの触媒の触媒的に活性な組成物は、水素での処理の前に、22〜40質量%のZrO、1〜30質量%の銅の酸素含有化合物、その際、CuOとして算定されたもの、15〜50質量%のニッケルの酸素含有化合物、その際、NiOとして算定されたもの、この場合、Ni:Cuのモル比は1を上廻り、15〜50質量%のコバルトの酸素含有化合物、その際、CoOとして算定されたもの、0〜10質量%のアルミニウムおよび/またはマンガンの酸素含有化合物、その際、Al2OまたはMnOとして算定されたもの、を含有し、かつモリブデンの酸素含有化合物を含有することはなく、たとえば上記引用の第17頁で開示された触媒Aは、33質量%のZr、その際ZrOとして算定されたもの、28質量%のNi、その際NiOとして算定されたもの、11質量%のCu、その際CuOとして算定されたもの、および28質量%のCo、その際CoOとして算定されたものを有し、EP−A−696572 (BASF AG)で開示された触媒は、これらの触媒的活性組成物は、水素での還元の前に20〜85質量%のZrO、1〜30質量%の銅の酸素含有化合物、その際、CuOとして算定されたもの、30〜70質量%のニッケルの酸素含有化合物、その際、NiOとして算定されたもの、0.1〜5質量%のモリブデンの酸素含有化合物、その際、MoOとして算定されたもの、および0〜10質量%のアルミニウムおよび/またはマンガンの酸素含有化合物、その際、AlまたはMnOとして算定されたもの、を含有し、たとえば上記引用中第8頁に開示された触媒は、31.5質量%のZrO、50質量%のNiO、17質量%のCuOおよび1.5質量%のMoOを含有するものであり、かつWO−A−99/44984 (BASF AG)で記載され、かつ(a)鉄または鉄をベースとする化合物またはこれらの混合物、(b)(a)に対して0.001〜0.3質量%の、Al、Si、Zr、Ti、Vの群から選択された2、3、4または5個の元素をベースとする促進剤、(c)(a)に対して0〜0.3質量%の、アルカリ金属またはアルカリ土類金属をベースとする化合物ならびに(d)(a)に対して0.001〜1質量%のマンガンを含有する触媒である。
【0054】
本発明による方法は、たとえば以下のようにして実施される:
図1は、循環系および伝熱体を備えた水素化反応器の1個の可能な配置を示す。フタロニトリル溶融物は、流[1]として水素化工程に供給され、かつ循環流[4]と一緒に混合される。アンモニア[2]を液体の形で添加する。これは、フタロニトリル溶融物(たとえば、図1に示すもの)との混合箇所の上流またはこれらの下流で実施することができる。水素および場合によっては循環ガスを供給し、かつ場合によっては伝熱体を用いて望ましい反応器供給温度に加熱する。さらにガスおよび液体は別個に反応器中に供給することができる。好ましくは、伝熱体を用いて、混合後に他の伝熱体が必要とされない程度に、混合すべき流の温度を設定する。反応器中で、水素化は、実際には定量的に進行し、したがって、実際には反応器搬出物中にもはやフタロニトリルは存在しない。その後に反応器搬出物を冷却することができ、かつガスおよび液体を、高圧分離装置中で、加圧下で分離する。液体を後処理することなく部分的に循環させ(流[4])、かつ部分的に後処理を実施する(流[9])。ガスの一部を排出することで、不活性ガスの集積を回避した(CO、N、CH、希ガス等)。ガスの大部分を、コンプレッサーを介して反応器入口に再循環させた。反応器中の圧力損失を高くしないために、さらに好ましくは、この目的のためにエジェクタノズル(ウオータージェットポンプ)を使用することができる。全体的に、循環ガスの量は広範囲で可変であってもよく、この場合、新鮮なガスの数倍から0までで(循環ガスなしの様式)あってもよい。循環ガス様式は、反応器を良好な物質移動に関して十分なガス側を導入するため、および不活性ガスの十分な連行流を提供するために有利である。さらに、反応熱の一部を、ガス流を用いて除去する。増加した温度で、増加したアンモニア量を蒸発させ、この場合、これは循環ガスの冷却効果を増大させる。その後に反応器搬出物(流[9])を、最初に加圧蒸留器中に提供し、その際、液体アンモニアを、塔頂を介して(流[10])、かつさらに本質的にアンモニア不含の粗キシリレンジアミンを、塔底を介して(流[11])得て、かつ、アンモニアを凝縮した形でさらに水素化工程に返送することができる。粗キシリレンジアミンは、たとえば蒸留によってさらに精製される。
【0055】
本発明による方法は、循環流が多くなればなるほど、選択されたジニトリルとアンモニアとの新鮮供給物の質量比(たとえば図1によれば、流[1]と[2]との比)が大きくなる。好ましくはジニトリルとアンモニアとの質量比は1:0.5〜1:10、好ましくは1:0.6〜1:5、特に好ましくは1:0.9〜1:3.5に達する。
【0056】
XDAsの単離:
水素化後に、使用されたアンモニアを、たとえば蒸留により除去する。
【0057】
好ましくは、キシリレンジアミンの精製を、低沸点の副生成物を塔頂で留去し(同様の圧力で)、かつ高沸点の不純物を、塔底を介して蒸留的に除去することによりおこなう。
【0058】
特に好ましくは、水素化後に、アンモニアおよび任意の低沸点副生成物を塔頂で留去し、その後に、高沸点不純物をキシリレンジアミンから塔底を介して蒸留的に除去する
一つの好ましい実施態様において、低沸点および高沸点の副生成物の除去を、さらに側留または分離壁カラム中で実施し、その際、純粋なキシリレンジアミンを液体またはガス上の側留を介して得る。
【0059】
好ましい純度により、生成物(XDA)は付加的に有機溶剤、好ましくは脂肪族炭化水素、さらに好ましくは脂環式炭化水素、特に好ましくはシクロヘキサンまたはメチルシクロヘキサンを用いて抽出する。
【0060】
抽出によるこれらの精製は、たとえばDE−A−1074592 (BASF AG)によって実施することができる。
【0061】
実施例
90g/hの溶融IPDN(市販のペレット型IPDN、この場合、これらは約170℃に加熱することにより溶融されたもの)を、パイプラインT−ピース(Rohrleitung-T-Stueck)を用いて、反応器搬出物の液体再循環流および90g/hの新鮮なアンモニアから成る循環流(約1000g/h)中に導入した。得られた反応混合物を、連続的に、コバルト−非担持型触媒を備えた管型反応器中で、90℃および200バールで水素化した。反応器搬出物の除去された部分を、主要量のアンモニアから、アンモニアカラム中で分離し、かつGCで分析した。使用されたIPDNの完全変換(たとえば、99.95%を上廻る変換率/GCによればエダクトは検出されない)で、93%の選択率であった。
【0062】
後続の蒸留工程で、最初に残留アンモニアおよび低沸点副次的成分を除去した。高沸点不純物を、塔底を介して分離した後に、蒸留カラムの塔頂生成物として、MXDAは99.9質量%を上廻る純度で得られた。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】循環系および熱伝導体を備えた水素化反応器の可能な配置を示す図
【図2】ミキサノズルの好ましい実施態様を示す図
【図3】放射状または接線に固定されたノズルを介しての循環溶液の供給を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器中で、液体アンモニアの存在下で、不均一系触媒上で、液体フタロニトリルを連続的に水素化し、その際、反応器搬出物の一部を液体循環流として、連続的に反応器入口に再循環(循環様式)させる、キシリレンジアミンの製造方法において、混合ユニットを用いて、フタロニトリル溶融物の流を液体の形で、水素化反応器周囲の循環流に導入し、その際、反応器中のフタロニトリル変換率はシングルパスで99%を上廻り、かつ循環流は、93質量%を上廻る液体アンモニアおよびキシリレンジアミンから成り、かつフタロニトリルのための他の溶剤を含有することはないことを特徴とする、キシリレンジアミンの製造方法。
【請求項2】
イソフタロニトリルの水素化により、メタ−キシリレンジアミンを製造するための、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
混合ユニットを、循環流へのフタロニトリル供給箇所で、使用されたフタロニトリルの融点を1〜40℃上廻る温度に加熱する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
混合ユニットとしてミキサノズルを用いて、液体フタロニトリルを循環流中に噴霧する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
水素化反応器中のフタロニトリル変換率が、シングルパスで99.5%を上廻る、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
水素化反応器中のフタロニトリル変換率がシングルパスで99.9%を上廻る、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
循環流が、94質量%を上廻る液体アンモニアおよびキシリレンジアミンから成る、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
循環流が、25〜90質量%の液体アンモニアを含有する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
循環流として、反応器入口に連続的に再循環させる液体反応器搬出物の部分が、全液体反応器搬出物の20〜95質量%に相当する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
フタロニトリル供給流と循環流との質量比が、0.03〜1.0である、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
水素化を40〜150℃の温度で実施する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
水素化を100〜300バールの絶対圧で実施する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
水素化を、非担持型触媒としてかまたは不活性担体上でのNi、Coおよび/またはFeを含有する触媒上で実施する、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
水素化を、マンガンをドープしたコバルト非担持型触媒上で実施する、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
触媒を、管型反応器中または管束反応器中で固定床として配置する、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
反応器をトリクル様式で運転する、請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
反応器を断熱的に運転する、請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
冷却器中で熱を循環流から除去する、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
水素化後に、アンモニアおよび場合によっては低沸点の副生成物を、塔頂を介して留去し、かつ高沸点の不純物を、塔底を介して蒸留により分離することにより、キシリレンジアミンの精製をおこなう、請求項1から18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
蒸留後にキシリレンジアミンをさらに精製するために、有機溶剤を用いて抽出する、請求項1から19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
抽出のために、シクロヘキサンまたはメチルシクロヘキサンを使用する、請求項1から20までのいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−505073(P2007−505073A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525765(P2006−525765)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010062
【国際公開番号】WO2005/026098
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】