説明

液体リザーバ

【課題】駆動液ポンプの使用状態に関わらず、常に駆動液ポンプ側に駆動液を供給することができること。
【解決手段】駆動液50を吸引して吐出するポンプ部27に着脱自在でポンプ部27に供給する駆動液50を蓄える駆動液リザーバ12であって、ポンプ部27に向けて駆動液50を供給する液体供給口12dから駆動液リザーバ12内壁に沿って延在し駆動液リザーバ12に蓄えられる駆動液50を吸液する吸液部材51を備え、吸液部材51を介して駆動液50をポンプ部27に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駆動液あるいは薬液である液体を吸引して吐出するポンプに着脱自在で該ポンプに供給する前記液体を蓄える液体リザーバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、浸透圧ポンプ(非特許文献1参照)を用いて、10ml程度の微量の薬液を、たとえば1週間程度の比較的長い所定時間をかけて連続的に投与することが行われていた。
【0003】
また、上述した微量の薬液を供給する場合、電気浸透流ポンプが用いられる(特許文献1参照)。この電気浸透流ポンプは、電気浸透材(多孔質体)の細孔内の表面がマイナスに帯電し、表面近傍では、プラスイオンが過剰になり、外部から加えられた電界によりプラスイオンが力を受けて移動し、駆動液に流れを生じさせることによって、駆動液を吐出するものである。このため、電気浸透流ポンプは、電界の強度を変化させることによって、駆動液の吐出量を変化させることができる。
【0004】
【非特許文献1】Theewes F and Yum SI.Principles of the operation of genericosmotic pump for the delivery of semisolid or liquid drug formulations.Ann Biomed Eng 1976,4(4):343-353
【特許文献1】特開2006−311796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した電気浸透流ポンプは、駆動液を蓄える駆動液リザーバに接続され、この駆動液リザーバから供給される駆動液を吸引・吐出するものである。ここで、駆動液リザーバから駆動液を吸引する吸引口が鉛直上部側に位置した場合などのように、吸引口と駆動液とが接しない状態になると、電気浸透流ポンプは、駆動液を吐出することができないという問題点があった。換言すれば、電気浸透流ポンプを用いる場合、駆動液リザーバの配置状態を考えて、吸引口と駆動液とが常に接触する状態となるようにして、駆動液がポンプ側に供給される状態で使用しなければならず、電気浸透流ポンプの使用状態が制限されるという問題点があった。
【0006】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ポンプの使用状態に関わらず、常にポンプ側に駆動液あるいは薬液である液体を供給することができる液体リザーバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる液体リザーバは、駆動液あるいは薬液である液体を吸引して吐出するポンプに着脱自在で該ポンプに供給する前記液体を蓄える容器である液体リザーバであって、前記ポンプに向けて前記液体を供給する液体供給口から当該液体リザーバ内壁に沿って延在し当該液体リザーバに蓄えられる液体を吸液する吸液部材を備え、該吸液部材を介して前記液体を前記ポンプに供給することを特徴とする。ここで、上記液体供給口は必ずしも上記吸液部材によって全面的に覆われる必要はない。
【0008】
このようにすれば、上記吸液部材が上記液体を上記液体供給口に導くので、液体リザーバの姿勢が変化しても、安定的に上記液体を上記液体供給口に供給できる。なお、液体リザーバは壁面を有して内部に液体を保持できる容器であるが、硬質の容器でもよいし、軟性の容器でもよい。
【0009】
また、この発明にかかる液体リザーバは、上記の発明において、当該液体リザーバは、筒状の筐体をなし、前記吸液部材は、少なくとも前記液体供給口および一部の内壁側面を覆うことを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる液体リザーバは、上記の発明において、当該液体リザーバ内壁断面が多角形状である筒状の筐体をなし、前記吸液部材は、少なくとも前記液体供給口、および1つの側壁面に隣接する両側の側壁面を覆うことを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる液体リザーバは、上記の発明において、当該液体リザーバ内壁断面が多角形状である筒状の筐体をなし、前記吸液部材は、少なくとも前記液体供給口、および側壁面間の角部を覆うことを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる液体リザーバは、上記の発明において、前記吸液部材が覆われない内壁面は、平面、あるいは内側に凸となり前記吸液部材側に向かって低くなる曲面または錐体表面であることを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる液体リザーバは、上記の発明において、前記液体供給口に対向する内壁面は、平面、あるいは内側に凸となり前記吸液部材側に向かって低くなる曲面または錐体表面であることを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる液体リザーバは、上記の発明において、前記曲面または錐体表面は、疎液性であることを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる液体リザーバは、上記の発明において、前記吸液部材は、シート状部材であり、当該液体リザーバ内壁面に取り付けられることを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる液体リザーバにおいて、上記シート状部材は1枚のシート状部材で構成されていることを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる液体リザーバは、上記の発明において、前記吸液部材は、前記液体供給口側に向かって逐次密度が高く形成され、逐次前記液体の伝達性を高くしたことを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる液体リザーバは、上記の発明において、前記液体供給口の吸液部材は、内側表面から出口側に向かって逐次密度が高く形成され、逐次前記液体の伝達性を高くしたことを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる液体リザーバは、上記の発明において、前記液体供給口の吸液部材は、弾性部材であることを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる液体リザーバは、上記の発明において、前記液体供給口の吸液部材の外表面は、外側に向かって凸形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、ポンプが液体を吸引する液体供給口から当該液体リザーバ内壁に沿って延在し当該液体リザーバに蓄えられる液体を吸液する吸液部材を備え、該吸液部材を介して前記液体が液体供給口に供給されるようにしているので、液体リザーバの姿勢が傾いても、ポンプ側に液体を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して、この発明にかかる液体リザーバの好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態)
図1は、この発明の実施の形態にかかる薬液リザーバを有した薬液投与装置が人体などの生体に適用された状態を示す図である。図1において、この薬液投与装置1は、先端部分が癌などの患部である処置対象2に対して薬液を導くカニューラ本体が生体3内に埋め込まれ、生体3の体表面S上にその基部が配置されるカニューラ1bと、カニューラ1bの基部25に対して着脱可能であってカニューラ1bに薬液を送出する薬液部1aとを有する。この薬液投与装置1は、生体3内の癌などの処置対象2に対して、数十ml程度の薬液、たとえばフルオロウラシル(5−FU)などの抗癌剤を、1週間程度の長期間にわたり連続的かつ集中的に吐出して投与するものである。
【0024】
図2は、図1に示した薬液投与装置1の分解斜視図である。また、図3は、図1に示した薬液投与装置1の断面図である。さらに、図4は、図1に示した薬液投与装置1の分解断面図である。図2〜図4において、薬液投与装置1は、上述したように、大きくは薬液部1aとカニューラ1bとからなる。薬液部1aは、コイル状のパイプが二重に密に巻き付けられ、このパイプの中に薬液を溜めた円筒状の薬液リザーバ10と、この円筒状の薬液リザーバ10の内部空間に設けられ、略円筒状の筐体に覆われ、少なくとも、薬液を押し出す駆動液を溜めた液体リザーバとしての駆動液リザーバ12を有する駆動液部11と、薬液リザーバ10の内部空間であって駆動液部11に隣接して配置され、少なくとも、薬液を押し出すための駆動液を押し出す電気浸透流ポンプ12によって実現されるポンプ部27を有し、略円筒状の筐体に覆われた駆動部20と、を有する。
【0025】
駆動液部11、駆動部20および基部25は、それぞれ略円柱状をなし、薬液リザーバ10が形成する円柱状の内部空間の軸方向でカニューラ1b側に向かって順次組み付けられる。なお、駆動液部11と薬液リザーバ10とは、薬液駆動部41として一体形成され、薬液駆動部41は、駆動部20に対して着脱可能である。
【0026】
駆動液部11内の駆動液リザーバ12は、駆動部20の略中央に設けられた駆動液取水部22によって駆動部20のポンプ部27に組み立て時に結合される。駆動部20内のポンプ部27の出力側は、駆動部20内の流路F21および駆動液排出部21、ならびに駆動液部11内の流路F11を介して薬液リザーバ10の入力側に接続される。薬液リザーバ10のパイプは、図3上、上部左の上部外側→下部外側→下部内側→上部右の上部内側に繋がっており、駆動液が、駆動部20の流路F21、駆動部20内の駆動液排出部21、駆動液部11の流路F11を介して薬液リザーバ10に吐出されることによって、薬液リザーバ10内の薬液が、駆動液部11の流路F12、駆動部20内の薬液連結部43、ならびに基部25に設けられた薬液受入部23aを介してカニューラ1bに送出される。この薬液受入部23aには、薬液駆動部41を取り外したときに、体内側の圧が高いために生体3側からの薬液が逆流するのを防止する逆止弁として機能する一方向弁23を設けている。
【0027】
駆動部20内には、ポンプ部27を駆動制御するポンプ駆動部26を有する。また、駆動液部11の上部には、バッテリ13を有する。駆動部20と駆動液部11との接合面には、電極24が設けられ、バッテリ13が供給するエネルギーは、少なくとも電極24を介してポンプ駆動部26に供給される。
【0028】
駆動液リザーバ12と薬液リザーバ10との間には、上述したように、薬液を押し出すための駆動液を押し出す電気浸透流ポンプによって実現されるポンプ部27を有する。電気浸透流ポンプの動作原理は、上述したように、電気浸透材(多孔質体)の細孔内の表面がマイナスに帯電し、表面近傍では、プラスイオンが過剰になり、外部から加えられた電界によりプラスイオンが力を受けて移動し、駆動液に流れを生じさせることによって、駆動液を吐出する。したがって、電界の強度を変化させることによって、駆動液の吐出量を変化させることができる。なお、駆動液は、電解質溶液であればよく、超純水等を用いることが望ましい。
【0029】
ポンプ部27は、駆動液リザーバ12から駆動液を取得し、この駆動液を薬液リザーバ10内に押し出すことによって薬液リザーバ10外のカニューラ25に間接的に薬液を押し出すようにしている。なお、駆動液と薬液との間には、互いに混じらないようにするため、空気層やオイルが設けられ、駆動液と薬液とを分離している。
【0030】
ここで、薬液リザーバ10および駆動液部11が一体形成されて駆動部20に対して着脱可能であるため、薬液リザーバ10内の薬液、駆動液リザーバ12内の駆動液およびバッテリ13などの消耗品を一体として容易に交換することができる。
【0031】
なお、薬液リザーバ10は、薬液の投与量に関する薬液投与情報であって、当該薬液リザーバに固有の薬液投与情報を入力する情報入力部33を有し、ここでは、溜められている薬液の薬液投与情報を3ビット情報として示す3つの突起を有して組み付けられる。ここで、薬液投与情報の例としては、単位時間当たりの薬液の標準投与量(ml/h)、最大投与量、薬液の有効量などがあるが、これに限らない。もちろん、情報入力部33は、3つの突起以外にも、様々な態様が可能である。
【0032】
薬液投与情報は、薬液の投与量を示す情報を3ビットで表しており、電極24を介してポンプ駆動部26に入力される。ポンプ駆動部26は、この入力された薬液投与情報をもとにポンプ部27を制御することによって薬液投与量を制御する。なお、薬液投与量情報には、薬液投与量に関する時間プロファイル情報を示すものであってもよい。ここで、ポンプ駆動部26は、入力される薬液投与量情報であるビット情報に対応する具体的な薬液投与量情報を記憶しておくことが好ましい。また、上述した3ビットでは、8種類の薬液投与情報を示すものであったが、これに限らず、さらに多いビット数に対応した情報入力部と情報検出部とを持たせるようにしてもよい。また、薬液接続部32や駆動液接続部31の取付位置を、情報入力部33の突起位置(ビット位置)に対応させる構成をとることによって、薬液投与情報を入力するようにしてもよい。なお、上述した情報入力部33は、物理的な接触によって薬液投与情報を入力するようにしていたが、電気的な接触によって薬液投与情報を入力するようにしてもよいし、予め薬液リザーバ10側に薬液投与情報を示すビット情報を記憶するメモリチップあるいはビットスイッチを設け、薬液リザーバ10の装着時に電気的な接触をもってポンプ後方部26がビット情報を読み出すようにしてもよい。ここで、従来の浸透圧ポンプでは薬液の変更が困難であったが、この実施の形態では、薬液の変更ができ、しかも薬種が変わった際に、新たな用量に対応することができる。そして、上述したように、薬液投与情報を備えることにより、薬液の変更を行う場合に、ヒューマンエラーによる用量設定ミスを防ぐことができる。
【0033】
ここで、駆動液リザーバ12の内部壁面であって、駆動液取水部22側の内部底面および内部側面には、駆動液を吸液して駆動液取水部22側に駆動液を供給する吸液部材51が設けられている。
【0034】
図5は、駆動液リザーバ12およびポンプ部27の構成を示す断面図である。図5において、駆動液リザーバ12は、略円柱状の空間が形成され、上述したように駆動液取水部22側の内部底面12cおよび内部側面12bに吸液部材51が各面に取り付けられている。このように吸液部材51は、ポンプ部27に向けて駆動液を供給する液体供給口12dから駆動液リザーバ12の内壁(内部底面12や内部側面12b)に沿って連続して敷設されている。すなわち、図6に示すような底部を有した円筒状の吸液部材51が設けられている。また、内部上面12aは、略円形の平面が形成されている。なお、内部上面12aには空気孔60が設けられている。
【0035】
吸液部材51は、たとえば、ガラス繊維紙、パルプ、あるいは合成繊維などのシート状の多孔質材によって実現され、柔軟性、吸液性、親水性、および保液性を有する材質であることが好ましい。もちろん、多孔質セラミックスであってもよい。吸液部材51は、この多孔質による毛細管現象によって駆動液50を吸液し、駆動液取水部22に駆動液50を導く。
【0036】
一方、ポンプ部27は、流路内に入口電極53および出口電極55に挟まれた電気浸透流材54を有し、入口電極53および出口電極55には、ポンプ駆動部26から直流電流あるいはパルス電流が印加され、駆動液50の吐出流量が制御される。なお、入口電極53、出口電極55、および電気浸透流材54は、多孔質材で形成されている。入口電極53側の入口チャンバー57には、駆動液取水部22と入口電極53とを接続する多孔質材の吸液部材52が設けられて、駆動液50を入口電極53側に導いている。この吸液部材52は、吸液部材51と同様な多孔質材で形成され、駆動液部11すなわち駆動液リザーバ12が駆動部20に装着される際に吸液部材51に結合する。なお、駆動液取水部22に対応する吸液部材51,52の露出部分は、装着前では、保護シートが貼られており、装着時に保護シートが剥がされる。また、出口電極55側の出口チャンバー58の出口側には、バブル隔離部材59が設けられ、駆動液50の通過を可能にするとともに、ガスや異物の通過を阻止するようにしている。バブル隔離部材59は、ガラス繊維や親水性ナイロン(R)などのポリアミド系高分子材料からなる親水性を有する膜である。さらに、入口チャンバー57および出口チャンバー58の側面には、発生気体排出口56a〜56dが形成され、発生したガスのみを外部に排出している。なお、上述した空気孔60を含め、発生気体排出口56a〜56dは、PTFEなどの疎水性かつガス透過性を有する膜やシートを用いて形成してもよい。
【0037】
このように駆動液リザーバ12の内面に吸液部材51を貼り付けておくことによって、たとえば図7に示すように、駆動液取水部22が鉛直上方に位置し、駆動液50が少ない場合であっても、駆動液50は、吸液部材51を流路として機能させ、確実にポンプ部27側に供給される。すなわち、駆動液リザーバ12がどのような使用状態に置かれても常にポンプ部27側に駆動液50が供給され、ポンプ部27から駆動液50が吐出される。なお、上面12aに吸液部材51を貼り付けてもよい。また、上面12aに吸液部材51を貼り付けない場合、上面12aの表面は、疎水性を有することが好ましい。たとえば、フッ素樹脂などをコーティングしておくことが好ましい。
【0038】
また、駆動液取水部22近傍の吸液部材51は、駆動液50の流れ方向に向かって逐次密度が高く形成され、逐次駆動液50の伝達性を高くすることが好ましい。たとえば、図8に示すように底面12cに沿って、吸液部材51a→51b→51cの順に順次密度が高い多孔質材で形成し、駆動液50の伝達性を高める。なお、逐次密度を高く形成することは、毛細管現象による駆動液吸引力を低→高に並べることである。これによって、吸液部材51内にミクロのポンプが形成され、吸液部材51のみによって駆動液50の吸液性および伝達性が高まる。なお、図8では、密度を段階的に配置したが、これに限らず、連続的な密度傾斜を持たせるようにしてもよい。また、図9に示すように、底面12cに直交する流れ方向に、吸液部材61a→61b→61cを順次密度が高くなるように多層配置して、駆動液50の伝達性を高めるようにしてもよい。
【0039】
ところで、上述した実施の形態では、駆動液取水部22における吸液部材51,52は、駆動液リザーバ12の装着時に結合されるとしたが、この結合部分の結合を確実に行うため、図10に示すように吸液部材52に対応する吸液部材72の結合部分側を凸形状にし、吸液部材51の結合部分を弾性部材によって形成された吸液部材73とし、吸液部材72と吸液部材73との結合時に、吸液部材72の押圧によって吸液部材73との結合を確実かつ密となるようにすることが好ましい。なお、吸液部材73を剛性の板状部材とし、吸液部材72の凸形状部分を弾性部材によって形成してもよい。また、吸液部材73側を凸形状にし、吸液部材72側を平面形状としてもよい。
【0040】
なお、上述した実施の形態では、駆動液リザーバ12の内部形状が円柱形状である場合について説明したが、これに限らず、内部形状が角柱形状であってもよい。この場合、たとえば、図11に示すように上面のみを開放し、底面を有した四角柱形状を有した吸液部材81を駆動液リザーバ内壁に貼り付けるようにする。
【0041】
さらに、この場合、図12および図13(図12の平面図)に示すように、多角柱形状の側壁面は、1つの露出する側壁面に隣接する両側の側壁面を覆う吸液部材91aのみとしてもよい。このような構成であっても、駆動液リザーバの使用状態がどんな状態であっても、確実に駆動液50を供給することができる。特に、駆動液リザーバに貼付される吸液部材は、シート状で一体形成されることが好ましいが、図12および図13に示す吸液部材91では、1つの長方形のシート部材を折り畳むのみで形成することができ、吸液部材の形成が容易となる。
【0042】
また、多角柱状の駆動液リザーバである場合、駆動液取水部22およびこの駆動液取水部22から延在する側壁面の角部のみに吸液部材を設け、その他の側壁面を露出するようにしてもよい。たとえば、図14に示す四角柱状の駆動液リザーバである場合、四隅の角部および底面のみに吸液部材92aを設けるようにしてもよい。さらに、この場合、図15に示すように、四隅に吸液部材93aを設けるとともに、駆動液リザーバの露出する側壁面の断面が凸形状とすることが好ましく、各表面11aが疎水性であることが好ましい。
【0043】
ここで、上述した実施の形態では、内部形状が柱状の駆動液リザーバについて説明したが、これに限らず、たとえば、駆動液取水部22に対応する底部101aを有したすり鉢状あるいは駆動液取水部22側が凸となる錐状であってもよく、この場合、図16に示すように、内部形状に応じた吸液部材101を底部101aおよび側壁面に沿って形成すればよい。また、駆動液リザーバは、たまご型のように、上部も閉じた形状(錐状)であってもよく、この場合、内部側壁面全面に吸液部材を設ける。
【0044】
また、上述した実施の形態では、駆動液リザーバの上面12aが平面であるとして説明したが、これに限らず、上面102を凸形状、あるいは錐状形状とすることが好ましい。特に、駆動液リザーバが鉛直逆さまに配置された場合であっても、駆動液50は、凸形状の底部の角部に駆動液50が集まり、この角部には、吸液部材51が配置されているため、確実に駆動液50を駆動液取水部22側に導くことができる。なお、この上面102の表面は疎水性であることが好ましい。
【0045】
さらに、上述した実施の形態では、駆動液部11と薬液リザーバ10とが一体形成されるものとして説明したが、これに限らず、図18および図19に示すように、駆動液部11と薬液リザーバ10とがさらに分離可能であってもよい。
【0046】
なお、上述した実施の形態では、駆動水などの駆動液を蓄積する駆動液リザーバと駆動液を吐出する電気浸透流ポンプであるポンプ部とを例にあげて説明したが、これに限らず、駆動液リザーバに替えて薬液リザーバとポンプ部とを直接接続してポンプ部が薬液リザーバ内の薬液を直接、吐出するようにしてもよい。また、ポンプ部も電気浸透流ポンプに限らず、ペリスタポンプを用いてもよい。
【0047】
また、上述した実施の形態では、駆動水を吸液部材を用いて液体供給開口に導く例を示した。しかし、本発明は駆動水でなく、薬液を液体供給開口に導く用途にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明の実施の形態にかかる薬液リザーバを有する薬液投与装置が生体に適用された状態を示す模式図である。
【図2】図1に示した薬液投与装置の分解斜視図である。
【図3】図1に示した薬液投与装置の断面図である。
【図4】図1に示した薬液投与装置の分解断面図である。
【図5】薬液リザーバおよびポンプ部の構成を示す断面図である。
【図6】吸液部材の構成を示す斜視図である。
【図7】駆動液取水部が鉛直上部側に位置した場合における駆動液の供給状態を示す図である。
【図8】吸液部材によるミクロなポンプを実現する一例を示す模式図である。
【図9】吸液部材によるミクロなポンプを実現する他の例を示す模式図である。
【図10】駆動液リザーバとポンプ部との吸液部材間の結合状態を示す断面図である。
【図11】駆動液リザーバが四角柱状である場合における吸液部材の構成の一例を示す斜視図である。
【図12】駆動液リザーバが四角柱状である場合における吸液部材の構成の他の例を示す斜視図である。
【図13】図12に示した吸液部材の平面図である。
【図14】駆動液リザーバが四角柱状である場合における吸液部材の構成の他の例を示す平面図である。
【図15】図4に示した吸液部材の配置に対する駆動液リザーバの変形例を示す平面図である。
【図16】駆動液リザーバがすり鉢状である場合における吸液部材の構成を示す斜視図である。
【図17】駆動液リザーバの上部壁面の変形例の構成を示す断面図である。
【図18】図1に示した薬液投与装置の変形例の分解斜視図である。
【図19】図1に示した薬液投与装置の変形例の断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 薬液投与装置
1a 薬液部
1b カニューラ
2 処置対象
3 生体
10 薬液リザーバ
11 駆動液部
12d 液体供給口
12 駆動液リザーバ
13 バッテリ
20 駆動部
21 駆動液排出部
22 駆動液取水部
23 一方向弁
23a 薬液受入部
24 電極
25 基部
26 ポンプ駆動部
27 ポンプ部
33 情報入力部
41 薬液駆動部
43 薬液連結部
50 駆動液
51,52,51a〜51c,61a〜61c,62a,72,73,81,91,91a,92a,93a,101 吸液部材
53 入口電極
54 電気浸透流材
55 出口電極
56a〜56d 発生気体排気口
57 入口チャンバー
58 出口チャンバー
59 バブル隔離部材
60 空気孔
F11,F12,F21 流路
S 体表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動液あるいは薬液である液体を吸引して吐出するポンプに着脱自在で該ポンプに供給する前記液体を蓄える容器である液体リザーバであって、
前記ポンプに向けて前記液体を供給する液体供給口から当該液体リザーバ内壁に沿って延在し当該液体リザーバに蓄えられる液体を吸液する吸液部材を備え、該吸液部材を介して前記液体を前記ポンプに供給することを特徴とする液体リザーバ。
【請求項2】
当該液体リザーバは、筒状の筐体をなし、前記吸液部材は、少なくとも前記液体供給口および一部の内壁側面を覆うことを特徴とする請求項1に記載の液体リザーバ。
【請求項3】
当該液体リザーバ内壁断面が多角形状である筒状の筐体をなし、前記吸液部材は、少なくとも前記液体供給口、および1つの側壁面に隣接する両側の側壁面を覆うことを特徴とする請求項1または2に記載の液体リザーバ。
【請求項4】
当該液体リザーバ内壁断面が多角形状である筒状の筐体をなし、前記吸液部材は、少なくとも前記液体供給口、および側壁面間の角部を覆うことを特徴とする請求項1または2に記載の液体リザーバ。
【請求項5】
前記吸液部材が覆われない内壁面は、平面、あるいは内側に凸となり前記吸液部材側に向かって低くなる曲面または錐体表面であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の液体リザーバ。
【請求項6】
前記液体供給口に対向する内壁面は、平面、あるいは内側に凸となり前記吸液部材側に向かって低くなる曲面または錐体表面であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の液体リザーバ。
【請求項7】
前記曲面または錐体表面は、疎液性であることを特徴とする請求項5または6に記載の液体リザーバ。
【請求項8】
前記吸液部材は、シート状部材であり、当該液体リザーバ内壁面に取り付けられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の液体リザーバ。
【請求項9】
前記吸液部材のシート状部材は、1枚のシート状部材のみで構成されていることを特徴とする請求項8に記載の液体リザーバ。
【請求項10】
前記吸液部材は、前記液体供給口側に向かって逐次密度が高く形成され、逐次前記液体の伝達性を高くしたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の液体リザーバ。
【請求項11】
前記液体供給口の吸液部材は、内側表面から出口側に向かって逐次密度が高く形成され、逐次前記液体の伝達性を高くしたことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載の液体リザーバ。
【請求項12】
前記液体供給口の吸液部材は、弾性部材であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の液体リザーバ。
【請求項13】
前記液体供給口の吸液部材の外表面は、外側に向かって凸形状であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の液体リザーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−273514(P2009−273514A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125144(P2008−125144)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】