説明

液体中に短寿命の物理的特性を有するガスを溶解させるための方法

本発明は液体中に短寿命の物理的特性を有するガスを溶解するための方法に関し、短寿命の物理的特性を有するガスを準備するステップ、液体を準備するステップ、短寿命の物理的特性を有するガスを液体中に入れるステップを含み、この方法は、短寿命の物理的特性を有するガスが半透性の、ガス透過性のメンブレンを介して液体に供給されることを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体中に短寿命の物理的特性を有するガスを溶解させるための方法に関する。
【0002】
短寿命の物理的特性を有するガスは例えば放射性ガス又は過分極ガス(hyperpolarisierte Gase)である。放射性ガスはいわゆる放射性核種乃至はラジオアイソトープを含むガスである。このようなガスはとりわけポジトロンエミッショントモグラフィー(PET)において使用される。
【0003】
核磁気共鳴分光学(NMR)ならびに磁気共鳴トモグラフィー(MRT)のような磁気共鳴に基づくイメージング方法は、他の物質のほかに過分極ガスをコントラスト剤として使用する。所定の適用事例において信号発生器として過分極ガスの使用により改善された信号/雑音比が磁気共鳴に基づく上記の方法によって得られる。
【0004】
NMR又はMRT技術に対する過分極希ガスの使用が例えばUS6491895B2、US2001/0041834A1又はUS6696040B2に記述されている。
【0005】
溶液中の過分極ガスの使用における問題はこれらのガスの急速な脱分極及びこれに結びついた僅少な半減期であり、これらの半減期は数秒の範囲内にある。脱分極によって同時に改善された信号発生器としてのガスの特性が消滅してしまう。
【0006】
US6488910B2はマイクロバブルによって液体中に過分極化されたHe及び129Xeを入れるための方法を記述している。液体は過分極化されたHe及び129Xeに対する非常に僅少な可溶性を有する。この場合マイクロバブルの過分極化されたHe及び129Xeの液体中への移行は大きく阻止されるか又は少なくとも妨害され、この結果、脱分極は最小化され、緩和時間が改善される。
【0007】
EP098000B1はマイクロベシクルから成る磁気共鳴に基づく分析方法に対する使用のための血液循環に注射可能なコントラスト剤調製物を開示しており、これらのマイクロベシクルは過分極希ガスと高い分子量を有する不活性ガスとの混合物によって満たされている。不活性ガスの存在が過分極希ガスを安定化させ、ベシクル膜を貫く過分極ガスの離脱が回避され、過分極ガスがマイクロベシクル内にとどまる。
【0008】
従来技術によれば、短寿命の物理的特性を有するガス、とりわけ過分極ガスを液体中に入れ、液体のガスの溶解によって半減期の低下を最小化するためにガスがさらに気相において存在するようにさせることが比較的コスト高な方法によって試みられている。
【0009】
本発明の課題は、短寿命の物理的特性を有するガスを簡単かつ同時に効率的なやり方で溶解させることができる方法を使用できるようにすることである。
【0010】
上記課題は、液体中に短寿命の物理的特性を有するガスを溶解させるための方法であって、短寿命の物理的特性を有するガスを準備するステップ、液体を準備するステップ、短寿命の物理的特性を有するガスを液体中に入れるステップを含む方法において、この方法は、短寿命の物理的特性を有するガスが半透性の、ガス透過性のメンブレンを介して液体に供給されることを特徴とすることによって解決される。
【0011】
まったく驚くべきことに、半透性の、ガス透過性のメンブレンを有する本発明の方法は、短寿命の物理的特性を有するガスの半減期を、液体中にガスを直接的に溶解させる方法よりも明らかに僅少な程度に制御することが示された。短寿命の物理的特性を有するガスの半減期は本発明の方法によって高いレベルのままにしておかれる。これは過分極ガスに対してとりわけ当てはまる。なぜなら、半透性のガス透過性メンブレンが過分極ガスをほんの少しだけしか脱分極しないことが明らかになったからである。
【0012】
メンブレンの使用によって同時に液体中における短寿命の物理的特性を有するガスの直接的な分子状溶液が達成される。このような溶液の使用のためにしばしば非常に重要なことは、ガスの安定した溶液を達成することである。ガスバブル、それもミクロスコピック的に小さいガスバブル及び包接化合物は不安定状態にあるか又はガスを分子の中に包み込んでいるかのいずれかである。分子の中に包み込まれたガスの場合、緩和時間はなるほど比較的長いが、自由拡散率は失われ、このことがコントラスト剤としての使用を強く制限してしまう。さらに、不安定な溶液の使用の下でガスを添加された液体のコントラスト剤としての適用は、比較的大きなガスバブルの自然発生的な形成の危険及びこれにより容器閉塞及び塞栓の危険を含み、これから適用における明らかな制限が結果的に生じる。さらに、分子状溶液によって泡形成が回避される。溶液は迅速かつ確実に生成可能であり、取り扱いしやすい。メンブレンによって、連続的に、それゆえ時間単位当たりに、ガスバブルを液体に入れることにより可能であるよりも大きなガス量が液体中に溶解される。さらに、注目すべきは、ガス乃至は液体と接している全表面がその磁化率において僅かな差異を有するできるだけ清浄な不活性物質から成ることである。
【0013】
短寿命の物理的特性を有するガスとしては本発明の枠内ではその特有の物理的特性が時間とともに減衰し、それも数ミリ秒から数時間の間の半減期を有するようなものであるとみなす。
【0014】
これには、冒頭ですでに言及したように、放射性ガス又は過分極ガスが含まれる。放射性ガスは例えばポジトロンエミッショントモグラフィー(PET)において使用される。放射性ガスはいわゆる放射性同位体乃至は放射性核種を含む。
【0015】
過分極ガスは核磁気共鳴スペクトロスコピー(NMR)又は核スピントモグラフィー乃至は磁気共鳴トモグラフィー(MRT)において使用される。過分極ガスの使用によって、信号/雑音比が明らかに改善される。ここではとりわけキセノン同位体129Xe乃至は131Xe又はヘリウム同位体3Heが使用される。
【0016】
さらにガス化合物に対するまだ次の様な同位体が重要なものとして挙げられる:
【表1】

【0017】
さらにパラ12又はオルト22との二重乃至は三重結合を有する適当な分子の水素化による分子ガス(いわゆるPHIP乃至はPASADENA実験)も利用できる。水素同位体の分極はこの場合には低磁場(ALTADENA効果)において核スピンを有する別の同位体にも伝達される(例えば13C又は19F)。
【0018】
有利な実施形態では、本発明の方法は、短寿命の物理的特性を有するガスがバブルなしでメンブレンを介して液体に供給される。これによって短寿命の物理的特性を有するガスの分子状溶液が得られ、しかもこの溶液の中の泡形成が生じない。よって、本発明の方法は極めて様々な液体、溶液及び部分的には強い泡形成への傾向を持つエマルジョン(両親媒性物質、プロテイン溶液、血漿、脂肪エマルジョン、etc)に適している。液体はこの場合できるだけ常磁性の及び強磁性の不純物が混ざっていないべきである。なぜなら、これらは過分極ガスの急激な脱分極を引き起こすからである。それゆえ、溶解したO2の除去を顧慮するべきである。
【0019】
本発明の方法の更に別の有利な実施形態では、メンブレンはケーシングの中に埋め込まれており、このケーシングはメンブレンによって液体のための少なくとも1つのスペース及びガスのための少なくとも1つのスペースに分割され、液体のためのスペースは少なくとも1つのインレット及びアウトレットを有し、ガスのためのスペースはガスのための少なくとも1つのインレットを有し、このインレットを介してメンブレンにガスが導かれる。ガスと液体の連続的な対向流がとりわけ有利であり、この連続的な対向流によってガスが溶液中に増加される。
【0020】
本発明の方法において使用されるメンブレンはフラットメンブレン又は少なくとも中空ファイバメンブレンである。有利には中空ファイバメンブレンが使用され、これらの中空ファイバメンブレンは1つの束にまとめられる。
【0021】
30μmと3000μmとの間の、有利には50μmと500μmとの間の外径を有するような中空ファイバメンブレンがとりわけ有利である。有利には中空ファイバメンブレンの壁厚は5μmと150μmとの間であり、とりわけ10μmと100μmとの間の厚さが有利である。
【0022】
本発明の方法において使用されるメンブレンは、一方の側面に短寿命な物理的特性を有するガスに対して充分に透過性を有し、もう一方の側面において充分な期間に亘ってガスが供給される液体に対して不透過でなければならない。
【0023】
本発明により使用されるメンブレンは親水性又は疎水性である。
親水性メンブレンが使用される場合には、これは有利には液体貫流に対しては密な、しかしガス透過性のある分離層を有する。有利には本発明により使用されるメンブレンは疎水性メンブレンである。有利な実施形態ではこの疎水性メンブレンは連続してマイクロ多孔質の構造をその壁に亘って有する。このようなメンブレンは例えばDE2833493C3、DE3205289C2又はGB2051665に記述されている。
【0024】
更に別の有利な実施形態では疎水性メンブレンはマイクロ多孔質の支持層及びこの支持層と境を接する密な又はナノ多孔質の分離層を有する一体として非対称的な構造を有する。密な又はナノ多孔質の分離層を有するこのようなメンブレンは例えばEP299381A1、WO99/04891又はWO00/43114に記述されている。
【0025】
液体の中に短寿命の物理的特性を有するガスを溶解させるためのメンブレンは有利にはポリオレフィンに基づくポリマーから成る。これは単独のポリオレフィン又はいくつかのポリオレフィンの混合物である。
【0026】
液体中に短寿命の物理的特性を有するガスを溶解させるためには、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテンならびにこれらに基づく変形、コポリマー又は配合物又はこれらのポリオレフィン同士の混合物又は他のポリオレフィンとの混合物から作られるようなメンブレンがとりわけ有利である。
【0027】
さらに、シリコーン化合物から成る又はシリコーンコーティングを有するメンブレンが本発明の方法には適している。さらに例えばポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン又はポリアリールエーテルスルフォンのような芳香族スルフォンポリマーに基づくポリマーから成るメンブレンが適当であるとしてあげられる。
【0028】
短寿命の物理的特性を有するガスを液体中に溶解させるための方法はとりわけ過分極化されたガスの溶解に適している。
【0029】
有利には本発明の方法は、過分極ガスがキセノンであることを特徴とする。
【0030】
短寿命の物理的特性を有するガスを溶解させるために極めて様々な液体が使用されうる。例としては既に挙げた液体のほかにリポフンディン(Lipofundin)、血漿、グルコース溶液又はハロゲン化された血液代替物(ペルフルオロカーボン(Perfluorcarbone))が挙げられる。有利には過分極ガスが溶解される液体は生理学的な液体である。
【0031】
とりわけ有利な方法では過分極ガスが溶解される液体は血液である。
【0032】
液体中の過分極ガスの溶液は、本発明の方法によって作られ、磁気共鳴に基づく分析方法のためのコントラスト剤として使用される。磁気共鳴に基づく分析方法のための過分極ガスのコントラスト剤としての利用は詳細にUS特許6630126B2に記述されている。
【0033】
本発明の方法によりつくられる液体中の過分極ガスの溶液は同様に次の場合に使用されうる。すなわち、
・巨大分子の構造乃至はプロテインのダイナミクスを解明するためのバイオテクノロジの分野におけるXe-NMR乃至はSPINOE-NMR、
・生物メンブレンにおける又は薄い層における複雑なバイオ分子の表面敏感Xe−SPINOE又はCP−NMR[9]、
・生物における高及び低磁場MRT及びファンクショナルMRT。
【0034】
しばしば水を溶媒として使用するとりわけ生物物理的検査において、これまでは水の中の不十分な濃度の過分極キセノンしか実現できなかった。本発明の方法によって、水又は水溶液の中の過分極キセノンの濃度を大幅に高めることが可能であり、水中での検査のためにコントラスト剤として使用できる。これは、過分極キセノンが高い圧力下で有利には中空ファイバメンブレンによって導入されることによって達成される。有利には過分極キセノンはこの場合バブルなしで溶解される。
【0035】
液体の中に過分極ガスを溶解させるための本発明の方法は、核スピントモグラフィー乃至は磁気共鳴トモグラフィー(MRT)のようなイメージング分析方法にも磁気共鳴スペクトロスコピー(NMR)のような磁気共鳴に基づくスペクトロスコピックな分析方法にも適している。
【0036】
とりわけ有利なのは、人間の又は動物の器官及び組織に対する使用のために磁気共鳴に基づく分析方法に対するコントラスト剤として本発明の方法により作られる液体の中の過分極ガスの溶液を使用することである。
【0037】
本発明を次の例に基づいて詳しく説明する。しかし、本発明の範囲はこれによって制限されるものではない。
【0038】
本発明の方法の実施のために次に記述される例1及び2において2つの装置が使用され、これらの2つの装置によって過分極キセノンが連続的に溶媒の中へと導入された。これらの装置は互いに液体ポンプの種類によって異なっている。装置1では液体は手動で中空ファイバメンブレンを取り囲む中空ファイバメンブレンモジュールの外部スペース及びこれに結合されたリザーバによる2つの噴射によって往復ポンピングされる。中空ファイバメンブレンモジュールは通常は血液のオキシゲネーションに使用されるマイクロ多孔質ポリプロピレンメンブレンを含む(Oxyphan PP50/280, Membrana GmbH社)。過分極キセノンはメンブレンモジュールの中空ファイバメンブレンの管腔を通してポンピングされ、この際に部分的に液体中に拡散する。ここから溶解されたガスがリザーバの中に輸送され、このリザーバにおいてNMR測定によって検出された。様々な溶媒に対するこの方法の効果を比較するために、リザーバのほかにメンブレンモジュールから流れ出るキセノンガスを有するチューブもNMRコイルの中に導かれた。NMRスペクトルはこうしてガス状キセノンの信号を基準として示される。
【0039】
第2の装置では液体が圧縮空気メンブレンポンプによって実験構造を通って循環するようにポンピングされた。使用されたポンプはいかなる金属性の又は磁気性の部材を含まないので、これは強い磁場においても動作されうる。従って、このプロトタイプによって連続的に過分極キセノン溶液が作られた。ガス容積流は両方の装置において約100mbarのガス超過圧力でほぼ200ml/分であった。液体容積流はほぼ240ml/分に調整された。
【0040】
図1は液体における過分極キセノンの溶解のための第2の装置を概略的に示す。この装置はその端部において封止用コンパウンド2に埋め込まれた中空ファイバ3を有する中空ファイバモジュールから成る。中空ファイバ3の周りの外部スペース4は入口接続部5及び出口接続部6を介して液体によって貫流される。図1に図示された装置では液体はポンプ7を介してポンピングされる。代わりに、装置1に関して記述したように、液体が手動で往復運動されてもよい。管腔側では中空ファイバ3にインレット接続部8及びアウトレット接続部9を介して過分極キセノンが印加される。液体中に溶解した過分極キセノンはNMR測定セル10において検出される。
【0041】
例1:
装置1によって様々な医学的に/生物学的に重要な液体への過分極キセノンの導入のための様々な試みが実施された。使用された溶媒は医学的には懸念のないものであり、既に臨床使用されている。リポフンディン(Lipofundin)20%は脂肪を含む、アルブミンはタンパク質を含む昏睡患者用の栄養溶液である。Gelafundinは高い血液損失の際の血漿増量剤として使用される。グルコース溶液はとりわけ脳におけるイメージングのためのコントラスト剤として関心が高い。全ての実験において過分極キセノンがメンブレンを介して専ら分子形態でそれぞれの液体中に溶解された。どの溶液中にもキセノンはガスとして、すなわち溶解されていない形態では検出できなかった。図2は様々な溶媒中の129Xe NMRスペクトルをグラフィックに表示している。測定され図2に表示されたNMRスペクトルをガス状の過分極キセノンの信号を基準として表示する(0ppmの化学シフト)ために、ガス状の過分極キセノンを外部標準として有する更に別のチューブが測定ボリュームの中に導入された。溶解されたキセノンのNMR信号は各液体の中で192ppmと204ppmとの間の各液体に特有の化学シフトΔにおいて測定された。従って、キセノンをスピン分極の損失なしで、すなわち測定可能な脱分極なしでメンブレンを通して様々な溶媒中に入れることが可能である。溶解された状態のキセノン信号の様々な強度は、物質の様々な濃度及びこれらの物質におけるキセノンの個々の溶解可能性によって説明される。
【0042】
例2:
装置2によって過分極キセノンが中空ファイバメンブレンモジュールを介してリポフンディンの中に入れられた。図3はリポフンディンの中に溶解された過分極キセノンの信号強度をポンプのスイッチオンの後で経過した時間に依存して示している。図3の破線はポンプのスイッチオン時点を示している。第2の線はリポフンディン中に溶解した過分極キセノンの検出された信号曲線を表す。最大信号のほぼ75%への明らかな信号上昇がすでに2秒後に識別される。最大値はほぼ10秒後に到達されている。従って、半透性の、ガス透過性のメンブレンを介して溶液中にもたらされる過分極キセノンは実際にすぐにこの溶液中で使用されることが明らかである。
【0043】
例3及び4、比較例3a及び4a:
例3及び4では129Xeがメンブレンを介して例2と同様にリポフンディン(例3)乃至はDMSO(例4)の中に入れられた。比較のためにこれらの液体は129Xeによってオーバーコートされ、129Xeによってオーバーフローされた。ガスによる液体の単純なオーバーコーティング又はオーバーフローは液体リポフンディン(比較例3a)でもDMSO(比較例4a)でも測定可能な信号を供給しなかったが、これに対してここで記述された本発明によるメンブレンを介して行われる方法は両方の場合において成功した。例3及び比較例3aは図4に示されている。上の信号曲線aは本発明の方法による例3のリポフンディンにおける129Xe信号を示し、下の信号曲線bはオーバーコーティング方法の適用により検出された比較例3aのリポフンディンにおける129Xe信号を示す。例4及び比較例4aは図5に図示されている。図5はDMSOに溶解された129Xe信号の比較を示し、上の信号曲線a(例4)は本発明による方法において検出され、下の信号曲線b(比較例4a)はオーバーコーティング方法において検出された。信号曲線aは両方の場合において溶解された過分極化された129Xeに特有のピークを示し、このピークは信号曲線bでは検出されなかった。
【0044】
例5、比較例5a:
過分極キセノンは高圧中空ファイバモジュールの使用により水に入れられた。中空ファイバを貫流する過分極キセノンのガス圧力は7バールであった。高圧中空ファイバモジュールはタイプX50、Celgard社の中空ファイバメンブレンを含んでいた。ポリプロピレンに基づくこれらの疎水性メンブレンは大抵の場合液体のガス化及び脱ガスに使用される。水へのキセノンの溶解係数は非常に小さい値を有するにもかかわらず、過分極キセノンが本発明の方法によって比較的大量に水に溶解されうることが示された。図6は7バールの高いガス圧における本発明の方法の適用により記録された水の中の過分極キセノンのNMRスペクトル(例5)及び同様に7バールの高いガス圧においてオーバーコーティング方法の適用により記録された水の中の過分極キセノンのNMRスペクトル(例5a)を示す。使用されたガス状の過分極キセノンの検査のためにもとめられた信号は0ppmにあり、水の中に溶解された過分極キセノンの信号はほぼ190ppmにある。上の信号曲線(例5)は本発明の方法の適用によりもとめられた。この曲線では190ppmに溶解された過分極キセノンの強い信号が識別できる。下の曲線(比較例5a)はオーバーコーティング方法の適用によりもとめられた。この場合溶解された過分極キセノンは検出できない。例5及び比較例5aに基づいて、液体に短寿命な物理的特性を有するガスを溶解するための本発明の方法の効率がガス圧の増大によってさらに高められ得ることが示された。これによって水溶液中の両親媒性物質に良好にキセノンが入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】液体における過分極キセノンの溶解のための第2の装置を概略的に示す。
【図2】様々な溶媒中の129Xe NMRスペクトルをグラフィックに表示している。
【図3】リポフンディンの中に溶解された過分極キセノンの信号強度をポンプのスイッチオンの後で経過した時間に依存して示している。
【図4】例3及び比較例3aを示している。
【図5】例4及び比較例4aを示している。
【図6】7バールの高いガス圧における本発明の方法の適用により記録された水の中の過分極キセノンのNMRスペクトル(例5)及び同様に7バールの高いガス圧においてオーバーコーティング方法の適用により記録された水の中の過分極キセノンのNMRスペクトル(例5a)を示す。
【符号の説明】
【0046】
1 中空ファイバモジュール
2 封止用コンパウンド
3 中空ファイバ
4 外部スペース
5 入口接続部
6 出口接続部
7 ポンプ
8 インレット接続部
9 アウトレット接続部
10 NMR測定セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に短寿命の物理的特性を有するガスを溶解させるための方法であって、該方法は、短寿命の物理的特性を有するガスを準備するステップ、液体を準備するステップ、短寿命の物理的特性を有するガスを液体中に入れるステップを含む液体中に短寿命の物理的特性を有するガスを溶解させるための方法において、
短寿命の物理的特性を有するガスが半透性の、ガス透過性のメンブレンを介して液体に供給されることを特徴とする、液体中に短寿命の物理的特性を有するガスを溶解させるための方法。
【請求項2】
ガスは泡なしで液体中に溶解されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
メンブレンはケーシングの中に埋め込まれており、このケーシングはメンブレンによって液体のための少なくとも1つのスペース及びガスのための少なくとも1つのスペースに分割され、
液体のためのスペースは少なくとも1つのインレット及びアウトレットを有し、ガスのためのスペースは少なくとも1つのガスのためのインレットを有し、該インレットを介してメンブレンにガスが導かれることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
メンブレンは少なくとも1つの中空ファイバメンブレンであることを特徴とする、請求項1〜3のうちの少なくとも1項記載の方法。
【請求項5】
メンブレンは疎水性であることを特徴とする、請求項1〜4のうちの少なくとも1項記載の方法。
【請求項6】
メンブレンはマイクロ多孔質構造を有することを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
メンブレンは密な又はナノ多孔質の分離層を有することを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
メンブレンは少なくとも1つのポリオレフィンに基づくポリマーから成ることを特徴とする、請求項1〜7のうち少なくとも1項記載の方法。
【請求項9】
ポリマーは少なくとも1つのポリオレフィン又はポリプロピレン又はポリメチルペンテンであることを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
メンブレンはシリコーンメンブレンであるか又はシリコーンコーティングを有することを特徴とする、請求項1〜4のうちの少なくとも1項記載の方法。
【請求項11】
メンブレンは芳香族スルフォンポリマーに基づくポリマーから成ることを特徴とする、請求項1〜7のうち少なくとも1項記載の方法。
【請求項12】
短寿命の物理的特性を有するガスは過分極ガスであることを特徴とする、請求項1〜11のうちの少なくとも1項記載の方法。
【請求項13】
過分極ガスはキセノンであることを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
過分極ガスが溶け込んでいる液体は生理学的な液体であることを特徴とする、請求項12又は13記載の方法。
【請求項15】
生理学的な液体は血漿であることを特徴とする、請求項14記載の方法。
【請求項16】
生理学的な液体は血液であることを特徴とする、請求項14記載の方法。
【請求項17】
磁気共鳴に基づく分析的方法のためのコントラスト剤としての、請求項1〜16のうちの少なくとも1項記載の方法によって生産された液体中の過分極ガスの溶液の使用。
【請求項18】
人間の又は動物の器官及び組織に対する使用のための磁気共鳴に基づく分析的方法のためのコントラスト剤としての、請求項1〜16のうちの少なくとも1項記載の方法によって生産された液体中の過分極ガスの溶液の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−523116(P2009−523116A)
【公表日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515120(P2008−515120)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005349
【国際公開番号】WO2006/131292
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(300083158)メムブラーナ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (14)
【氏名又は名称原語表記】Membrana GmbH
【住所又は居所原語表記】Oehder Strasse 28, D−42201 Wuppertal, Germany
【出願人】(390040420)マックス−プランク−ゲゼルシャフト・ツア・フェルデルング・デア・ヴィッセンシャフテン・エー・ファオ (54)
【氏名又は名称原語表記】Max−Planck−Gesellschaft zur Foerderung der Wissenschaften e.V.
【住所又は居所原語表記】Berlin, Germany
【Fターム(参考)】