説明

液体供給装置、液体噴射装置及び液体収容器

【課題】液体を貯留する液体貯留部の容積効率を向上させ、かつ、液体貯留部からの液体の漏れを抑制しつつ、液体を攪拌する。
【解決手段】液体供給装置は、導電性成分を含む液体を貯留する液体貯留部と、液体貯留部の外部に配置され、液体貯留部に対して磁束を照射する磁性体と、貯留部と磁性体とのうち少なくとも一方を移動させ、貯留部と磁性体との相対的な位置関係を変化させる移動機構と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に液体を供給する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料系インクを用いたプリンターでは、インク中の顔料粒子の比重が大きいため、印刷を行わない期間において顔料粒子が沈降するという問題があった。そこで、インクタンク内に羽根状の攪拌子を配置して、電源がオンした際に攪拌子を回転させてインクを攪拌するプリンター(画像記録装置)が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−138488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の攪拌子を用いたインク攪拌技術では、攪拌子をインクタンク内に配置するために、インクタンクの容積効率が低下するという問題があった。また、インクタンクにおいて、攪拌子に接続された回転軸が貫通する箇所からインクが漏れるおそれがあった。さらに、上記の攪拌子を用いた技術では、インクタンク以外の部分(例えば、インク流路内)に貯留されているインクを攪拌できないという問題があった。これらの問題は、インクジェット型プリンターに限らず、潤滑油や樹脂液等の液体を噴射する任意の液体噴射装置において起こり得る。
【0005】
本発明は、液体を貯留する液体貯留部の容積効率を向上させ、かつ、液体貯留部からの液体の漏れを抑制しつつ、液体を攪拌することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]液体供給装置であって、導電性成分を含む液体を貯留する液体貯留部と、前記液体貯留部の外部に配置され、前記液体貯留部に対して磁束を照射する磁性体と、前記液体貯留部と前記磁性体とのうち少なくとも一方を移動させ、前記液体貯留部と前記磁性体との相対的な位置関係を変化させる移動機構と、を備える、液体供給装置。
【0008】
適用例1の液体供給装置は、液体貯留部と磁性体との相対的な位置関係を変化させながら液体貯留部に対して磁束を照射できるので、液体に含まれる導電性成分において渦電流を生じさせて、この渦電流により導電性成分を移動させることができる。したがって、この導電性成分の移動により液体を攪拌することができる。また、磁性体は液体貯留部の外部から液体貯留部に磁束を照射するので、液体貯留部の容積効率を向上させ、かつ、液体貯留部からの液体の漏れを抑制することができる。
【0009】
[適用例2]適用例1または適用例2に記載の液体供給装置において、前記移動機構は、前記液体貯留部と前記磁性体とのうち少なくとも一方を連続的に移動させる、液体供給装置。
【0010】
このような構成により、液体に含まれる導電性成分において渦電流を連続的に発生させることができ、液体を連続的に攪拌することができる。
【0011】
[適用例3]適用例2に記載の液体供給装置において、さらに、支持部材を備え、前記磁性体は前記支持部材に配置され、前記移動機構は、モーターを有し、前記モーターを用いて前記支持部材を回転させる、液体供給装置。
【0012】
このような構成により、支持部材を回転させることにより、液体貯留部に収容された液体における磁束の照射位置を回転移動させることができる。したがって、液体において広い範囲に磁束を照射することができ、液体全体を均一な濃度とすることができる。
【0013】
[適用例4]適用例1ないし適用例3のいずれか一例に記載の液体供給装置において、さらに、前記液体を噴射する記録ヘッドと、前記液体を収容する液体タンクと、前記液体タンクと前記記録ヘッドとを接続する液体流路と、を備え、前記液体貯留部は、少なくとも前記液体流路を含む、液体供給装置。
【0014】
このような構成により、少なくとも液体流路に貯留する液体を攪拌することができる。
【0015】
[適用例5]適用例1ないし適用例4のいずれか一例に記載の液体供給装置において、前記液体は、顔料粒子を含むインクである、液体供給装置。
【0016】
このような構成により、一般に比較的比重が大きく沈降し易い顔料粒子を含むインクを攪拌することができ、インクの濃度を均一にすることができる。
【0017】
[適用例6]適用例1ないし適用例5のいずれか一例に記載の液体供給装置を備える、液体噴射装置。
【0018】
このような構成により、攪拌されて濃度が均一となった液体を、液体噴射装置を用いて噴射することができる。
【0019】
[適用例7]液体収容器であって、導電性成分を含む液体を収容する液体貯留部と、前記液体貯留部の外部に配置され、前記液体貯留部に対して磁束を照射する磁性体と、前記磁性体を移動させる移動機構と、を備える、液体収容器。
【0020】
適用例7の液体収容器は、液体貯留部と磁性体との相対的な位置関係を変化させながら液体貯留部に対して磁束を照射できるので、液体に含まれる導電性成分において渦電流を生じさせて、この渦電流により導電性成分を移動させることができる。したがって、この導電性成分の移動により液体を攪拌することができる。また、磁性体は液体貯留部の外部から液体貯留部に磁束を照射するので、液体貯留部の容積効率を向上させ、かつ、液体貯留部からの液体の漏れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の液体供給装置を適用したインクジェット型プリンターの一例を示す斜視図である。
【図2】インク攪拌部100の動作を示す説明図である。
【図3】第2の実施例における液体供給装置を適用したインクジェット型プリンターを示す斜視図である。
【図4】第3の実施例における液体供給装置を適用したインクジェット型プリンターを示す斜視図である。
【図5】第4の実施例における液体供給装置を適用したインクジェット型プリンターを示す斜視図である。
【図6】第5の実施例における液体供給装置を適用したインクジェット型プリンターを示す斜視図である。
【図7】第5の実施例におけるインク攪拌部100と4つのインクカートリッジ421〜424との位置関係を示す説明図である。
【図8】変形例1におけるインク攪拌部100a及びカートリッジホルダ402の構成を示す説明図である。
【図9】変形例2におけるインクカートリッジ411aの構成を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
A.第1の実施例:
図1は、本発明の液体供給装置を適用したインクジェット型プリンターの一例を示す斜視図である。プリンター500は、インクカートリッジがキャリッジ以外の場所に搭載される、いわゆるオフキャリッジタイプのプリンターである。なお、図1の例では、プリンター500が載置された状態において、鉛直方向上向きが+Z方向と一致する。
【0023】
プリンター500は、本体フレーム300と、プラテン310と、ガイド部材340と、一対のプーリー312,314と、タイミングベルト320と、キャリッジモーター332と、キャリッジ200と、インク補給チューブ210と、カートリッジホルダ400と、第1インクカートリッジ411と、第2インクカートリッジ412と、インク攪拌部100とを備えている。
【0024】
プラテン310は、本体フレーム300に配置されている。ガイド部材340は、プラテン310の長手方向に沿って配置されており、キャリッジ200を移動可能に支持している。一対のプーリー312,314は、本体フレーム300に配置されている。タイミングベルト320は、無端ベルトであり、一対のプーリー312,314に架け渡されている。キャリッジモーター332は、本体フレーム300の外側に配置されており、プーリー314を回転駆動する。このプーリー314の回転駆動によってタイミングベルト320は駆動する。
【0025】
キャリッジ200は、タイミングベルト320と接続されており、タイミングベルト320を介して往復運動する。キャリッジ200の底面には記録ヘッド(図示省略)が取り付けられており、キャリッジ200は、印刷用紙PP上を往復しながら記録ヘッドからインクを噴射することによって印刷を実行する。このとき、印刷用紙PPは、図示しない紙送り機構により搬送される。キャリッジ200にはインク補給チューブ210が接続されており、このインク補給チューブ210を介してキャリッジ200にインクが供給される。インク補給チューブ210は、本体フレーム300に設けられた孔330を貫通して配置され、キャリッジ200とカートリッジホルダ400とを接続する。
【0026】
カートリッジホルダ400は、本体フレーム300の外側に配置されており、2つのインクカートリッジ411,412を収容する。第1インクカートリッジ411は、メタリックインクを収容する。メタリックインクとしては、例えば、顔料として、平均厚みが30nm以上100nm以下であり、50%体積平均粒子径が1.0μm以上4.0μm以下であり、かつ、粒度分布における最大粒子径が12μm以下の金属箔片(例えば、アルミニウム箔片等)を用いたインクを採用することができる。
【0027】
第2インクカートリッジ412は、カラーインクを収容する。カラーインクとしては、例えば、顔料系シアンインクと、顔料系マゼンタインクと、顔料系イエロインクと、顔料系ブラックインクとを採用することができる。各色のインクは、第2インクカートリッジ412内に設けられた各色のインク室(図示省略)に収容されている。なお、前述のように、本実施例において「カラーインク」とは、ブラックインクを含むインクを意味する。印刷が実行され、キャリッジ200においてインクが消費されると、消費された分量のインクが、図示しないポンプにより、インク補給チューブ210を介して2つのインクカートリッジ411,412からキャリッジ200へと供給される。
【0028】
インク攪拌部100は、第1インクカートリッジ411内に貯留されているメタリックインクを攪拌するために用いられる。インク攪拌部100は、本体フレーム300の外側において、カートリッジホルダ400と所定の距離(例えば、5mm)だけ離れて配置されている。インク攪拌部100は、円盤10と、シャフト20と、駆動部30とを備えている。円盤10は、端面が円形状の薄板部材であり、例えば、SUS(ステンレス)等の金属薄板で形成することができる。円盤10には、図示しない磁性体が配置されている。シャフト20は、円盤10と駆動部30とを接続する。駆動部30は、図示しないモーターを備えており、このモーターによりシャフト20を介して円盤10を回転駆動させる。
【0029】
なお、円盤10の回転駆動は、メタリックインクに含まれるインク組成物(顔料や有機溶剤や定着樹脂等)の沈降が起き得る状況で実行することができる。具体的には、例えば、プリンター500の電源がオンした状態において、印刷が行われない場合に定期的に実行することもできる。また、プリンター500の電源がオンする際に実行することもできる。プリンター500の電源がオンする際に円盤10を回転駆動させるのは、一般に電源がオフの状態においては、プリンター500は長期間放置されてインク組成物が沈降している可能性が高いからである。
【0030】
図2(A)は、インク攪拌部100の動作を示す第1の説明図である。図2(B)は、インク攪拌部100の動作を示す第2の説明図である。図2(A)では、円盤10が回転駆動している際に第1インクカートリッジ411側から見たインク攪拌部100を表わしている。また、図2(B)は、図2(A)に示すインク攪拌部100を、Y軸に沿った方向から見た図を表わしている。
【0031】
図2(A),(B)に示すように、円盤10の端面(第1インクカートリッジ411と対向する面)には磁性体15が配置されている。磁性体15としては、例えば、永久磁石を採用することができる。磁性体15から第1インクカートリッジ411に向かう方向に磁界が生じており、図2(B)に示すように、磁束Bが第1インクカートリッジ411を貫いている。なお、他の方向にも磁束は照射されているが、図2(B)の例では、第1インクカートリッジ411に向かう磁束のみを模式的に表わしている。円盤10の回転に伴って磁性体15も回転するため、図2(B)に示すように、磁束Bも円を描くように移動することとなる。
【0032】
ここで、第1インクカートリッジ411内のメタリックインク41は、導電性を有する金属箔片を含有しているので、磁束Bの変位に伴って各金属箔片では磁束の変化を打ち消すように渦電流が生じる。具体的には、各金属片において、磁束Bが近づく側では磁束Bとは反対向きの磁束を生じるように電流が流れ、磁束Bが遠ざかる側では磁束Bと同じ方向の磁束を生じるように電流が流れる。そして、磁束B及び渦電流により生じた磁束によって、磁性体15と金属箔片との間において、磁束Bが近づく側では引力が生じ、磁束Bが遠ざかる側では斥力が生じる。これら引力及び斥力により、各金属箔片は、磁束Bの移動に伴い弧を描くように移動することとなる。そして、この金属箔片の移動によりメタリックインク41は攪拌され、インク組成物の沈降は抑制される。
【0033】
以上説明したように、第1の実施例のプリンター500では、磁性体15を回転させることにより、照射位置を移動させながらメタリックインク41に対して磁束Bを照射する。したがって、各金属箔片において渦電流を生じさせることができるので、この渦電流により各金属箔片を移動させてメタリックインク41を攪拌することができる。それゆえ、第1インクカートリッジ411内におけるインク組成物の沈降を抑制でき、噴射するメタリックインク41の濃度を均一にできる。加えて、カートリッジホルダ400から所定の距離だけ離れて磁束Bを照射してメタリックインク41を攪拌するので、第1インクカートリッジ411からのメタリックインク41の漏れを抑制でき、かつ、第1インクカートリッジ411の容積効率を向上させることができる。また、磁性体15を回転させることにより、磁束Bの照射位置を回転移動させるので、磁束Bを第1インクカートリッジ411全体に照射することができる。したがって、第1インクカートリッジ411に収容されたメタリックインク全体を均一な濃度とすることができる。
【0034】
なお、メタリックインク41は、請求項における液体に相当する。また、第1インクカートリッジ411は請求項における液体貯留部に、駆動部30は請求項における移動機構に、円盤10は請求項における支持部材に、インク攪拌部100とカートリッジホルダ400と第1インクカートリッジ411とインク補給チューブ210とは請求項における液体供給装置に、プリンター500は請求項における液体噴射装置に、それぞれ相当する。
【0035】
B.第2の実施例:
図3は、第2の実施例における液体供給装置を適用したインクジェット型プリンターを示す斜視図である。第2の実施例のプリンター500aは、インク攪拌部100の配置位置において、プリンター500(図1,2)と異なり、他の構成は第1の実施例と同じである。
【0036】
第2の実施例のプリンター500aでは、インク攪拌部100は、本体フレーム300の内部において、円盤10(磁性体15)がインク補給チューブ210から所定の距離(例えば、5mm)だけ離れて位置するように配置されている。ここで、インク補給チューブ210には、印刷を行わない状態においてメタリックインク及びカラーインクが充填(貯留)されている。したがって、インク攪拌部100が駆動し、磁性体15が回転すると、インク補給チューブ210内に貯留されているメタリックインクは攪拌されることとなる。
【0037】
以上の構成を有する第2の実施例のプリンター500aでは、照射位置を変化させながらインク補給チューブ210に対して磁束Bを照射するので、インク補給チューブ210内のメタリックインクにおいて渦電流を生じさせて金属箔片を移動させることができる。したがって、インク補給チューブ210内のメタリックインクを攪拌できるので、インク組成物の沈降を抑制でき、噴射するメタリックインクの濃度を均一にできる。加えて、第1の実施例と同様に、第1インクカートリッジ411からのメタリックインクの漏れを抑制でき、かつ、第1インクカートリッジ411の容積効率を向上させることができる。なお、インク補給チューブ210は、請求項における液体流路に相当する。
【0038】
C.第3の実施例:
図4は、第3の実施例における液体供給装置を適用したインクジェット型プリンターを示す斜視図である。第3の実施例のプリンター500bは、インクカートリッジがキャリッジに搭載されたいわゆるオンキャリッジタイプのプリンターである点と、インク攪拌部100がキャリッジに搭載されている点とにおいて、プリンター500(図1,2)と異なり、他の構成は第1の実施例と同じである。
【0039】
第3の実施例の500bでは、第1インクカートリッジ411及び第2インクカートリッジ412は、キャリッジ201に搭載されている。また、インク攪拌部100は、キャリッジ201の筐体内部において第1インクカートリッジ411の隣に配置され、円盤10(磁性体15)は第1インクカートリッジ411と対向している。なお、インク攪拌部100への電源供給は、例えば、プリンター500b本体が備える電源供給部(図示省略)とキャリッジ201との間を電源ケーブルで接続して供給する構成を採用することができる。また、例えば、キャリッジ201内部に電池を配置して供給する構成を採用することができる。この構成によると、プリンター500内部のレイアウトをシンプルにできる。
【0040】
以上の構成を有する第3の実施例のプリンター500bは、第1の実施例と同様な効果を有する。加えて、インク攪拌部100をキャリッジ201の筐体内部に配置するので、プリンター500bを小型化することができる。
【0041】
D.第4の実施例:
図5は、第4の実施例における液体供給装置を適用したインクジェット型プリンターを示す斜視図である。第4の実施例のプリンター500cは、いわゆるオンキャリッジタイプのプリンターである点と、インク攪拌部100の配置位置が本体フレーム300内部である点とにおいて、プリンター500(図1,2)と異なり、他の構成は第1の実施例と同じである。
【0042】
第4の実施例のプリンター500cでは、第1インクカートリッジ411及び第2インクカートリッジ412は、キャリッジ202に搭載されている。また、インク攪拌部100は、本体フレーム300の内部においてホームポジション(印刷を行わない場合にキャリッジ201が配置される位置)Hの下方に配置されている。円盤10(磁性体15)は、キャリッジ202がホームポジションHにおいて停止している場合に、キャリッジ202の底面(記録ヘッド)と対向する。このとき、円盤10(磁性体15)は、キャリッジ202の底面(記録ヘッド)から所定の距離(例えば、5mm)だけ離れて位置する。したがって、印刷を行わない場合において、磁性体15は、キャリッジ202に対して下方から磁束を照射するため、記録ヘッド(図示省略)及び第1インクカートリッジ411を貫いてメタリックインクに磁束を照射することができる。このとき、円盤10(磁性体15)が回転駆動することにより、第1の実施例と同様にメタリックインクは攪拌されることとなる。
【0043】
以上の構成を有する第3の実施例のプリンター500cは、第1の実施例のプリンター500と同様な効果を有する。加えて、キャリッジ202がホームポジションHに配置されている間において、第1インクカートリッジ411内のメタリックインクを攪拌することができる。
【0044】
E.第5の実施例:
図6は、第5の実施例における液体供給装置を適用したインクジェット型プリンターを示す斜視図である。第5の実施例のプリンター500dは、メタリックインクを用いない点と、4色のカラーインク(シアン,マゼンタ,イエロー,ブラック)が導電性を有するインク組成物を含む点とにおいて、プリンター500(図1,2)と異なり、他の構成は第1の実施例と同じである。
【0045】
第5の実施例のプリンター500dでは、カートリッジホルダ401は、各インク色に応じた4つのインクカートリッジ421,422,423,424を、縦2つ横2つのマトリクス状に収容している。各インクカートリッジ421〜424に収容されているインクはいずれも導電性を有するインク組成物を含んでいる。インク組成物としては、例えば、導電性を有する無機顔料(アルミナや酸化チタンや酸化亜鉛等)を採用できる。なお、各色のインクにおいて、導電率を高めるために、電解質(例えば、塩化アンモニウムや塩化ナトリウムや硝酸リチウム等)を含む構成を採用することもできる。
【0046】
図7は、第5の実施例におけるインク攪拌部100と、4つのインクカートリッジ421〜424との位置関係を示す説明図である。図7に示すように、インク攪拌部100は、円盤10の中心(シャフト20の中心軸)が4つのインクカートリッジ421〜424の中心と一致し、円盤10が各インクカートリッジ421〜424と対向するように配置されている。磁性体15は、円盤10が回転駆動されると、4つのインクカートリッジ421〜424に対してこの順序で磁束を照射することとなる。このとき、各インクカートリッジ421〜424に収容されている各インクでは、無機顔料粒子において渦電流を生じ、磁束の移動と共に無機顔料粒子が移動する。したがって、この無機顔料粒子の移動により各色のインクは攪拌されることとなり、インク組成物の沈降は抑制される。
【0047】
F.変形例:
なお、上記各実施例における構成要素の中の、独立クレームでクレームされた要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0048】
F1.変形例1:
上述した各実施例において、インク攪拌部100の円盤10に取り付けられた磁性体15の数は1つであったが、任意の数の磁性体を取り付けることができる。
【0049】
図8(A)は、変形例1におけるインク攪拌部100a及びカートリッジホルダ402の構成を示す第1の説明図である。図8(B)は、変形例1におけるインク攪拌部100a及びカートリッジホルダ402の構成を示す第2の説明図である。なお、図8(B)は、図8(A)に示すインク攪拌部100aを、Y軸に沿った方向から見た図を表わしている。
【0050】
変形例1におけるインク攪拌部100aでは、円盤10には、4つの磁性体16〜19が配置されている。具体的には、円盤10において、一方の端面S1には2つの磁性体16,17が配置され、他方の端面S2には2つの磁性体18,19が配置されている。カートリッジホルダ402は、互いに対向する2つのインクカートリッジの組を上下2段に収容する。具体的には、図8(B)に示すように、カートリッジホルダ402は、互いに所定の距離(例えば、2cm)だけ離れて対向する2つのインクカートリッジ431,432を上段に収容し、互いに所定の距離(例えば、2cm)だけ離れて対向する2つのインクカートリッジ433,434を下段に収容している。ここで、4つのインクカートリッジ431〜434に収容されているインクは、いずれも、第5の実施例と同様に導電性を有するインク組成物を含む。
【0051】
円盤10は、カートリッジホルダ402の内部において、4つのインクカートリッジ431〜432の中間位置に収容されている。円盤10が停止した状態において、4つの磁性体16〜19は、それぞれ異なるインクカートリッジに対して磁束を照射する。図8(B)の例では、磁性体16はインクカートリッジ432に磁束を照射する。また、磁性体17はインクカートリッジ434に、磁性体18はインクカートリッジ431に、磁性体19はインクカートリッジ433に、それぞれ磁束を照射する。駆動部30は、カートリッジホルダ402の外部に配置され、シャフト20は、カートリッジホルダ402の内側と外側とに亘って配置されている。
【0052】
円盤10が回転すると、端面S1に配置された2つの磁性体16,17は、それぞれ2つのインクカートリッジ432,434に対して交互に磁束を照射する。こうして、2つのインクカートリッジ432,434には、常に2つの磁性体16,17のいずれかが、照射位置を移動させながら磁束を照射する。同様に、端面S2に配置された2つの磁性体18,19は、それぞれ2つのインクカートリッジ431,433に対して交互に磁束を照射する。それゆえ、2つのインクカートリッジ431,433には、常に2つの磁性体18,19のいずれかが、照射位置を移動させながら磁束を照射する。
【0053】
このような構成により、各色のインクに対して常に磁束を移動させながら照射できるので、各色のインクを十分に攪拌することができる。
【0054】
F2.変形例2:
第1,2の実施例では、インク攪拌部100は、カートリッジホルダ400とは別体として構成されていたが、これに代えて、カートリッジホルダ400の内部にインク攪拌部100を収容し、カートリッジホルダ400とインク攪拌部100とを一体として構成することもできる。このような構成により、プリンターを小型化することができる。また、インク攪拌部100をインクカートリッジ内に収容することもできる。
【0055】
図9は、変形例2におけるインクカートリッジ411aの構成を示す分解斜視図である。このインクカートリッジ411aは、ポスターなどの大型の用紙に記録するプリンターにおいて用いられるインクカートリッジである。インクカートリッジ411aは、インクバッグ60と、ケース筐体71と、一対のずれ防止部材73a,73bと、ケース蓋部材72とを備えている。
【0056】
インクバッグ60は、例えば、アルミ箔を中間層として2枚のフィルムを積層したアルミラミネートフィルムにより形成されており、多量のメタリックインク(例えば、500ミリリットル〜10リットル程度)を充填することができる。インクバッグ60は、インク供給部61を備えている。ケース筐体71は、図示しないカートリッジホルダと当接する面74に、厚み方向に貫通する孔75を備えている。ケース筐体71は、インクバッグ60のインク供給部61が孔75に挿入された状態で、インクバッグ60を収容することができる。
【0057】
ここで、面74と対向する面76の近傍には、屈曲した薄板で形成されたインク攪拌部収容部材71aが配置されており、このインク攪拌部収容部材71aとケース筐体71の側面78とで囲まれた空間には、インク攪拌部100が配置されている。なお、インク攪拌部100への電源供給は、例えば、ケース筐体71に配置された電極(図示省略)を介してカートリッジホルダ(図示省略)から給電することにより実現できる。
【0058】
一対のずれ防止部材73a,73bは、インクバッグ60を挟んでケース筐体71とは反対側に配置され、ケース筐体71内におけるインクバッグ60のずれを防止する。ケース蓋部材72は、インクバッグ60及び一対のずれ防止部材73a,73bを収容した状態でケース筐体71を封止する。
【0059】
このような構成を有するインクカートリッジ411aを用いることにより、インクバッグ60に貯留されているメタリックインクをインク攪拌部100により攪拌することができる。したがって、メタリックインク内におけるインク組成物の沈降を抑制できる。また、インクカートリッジ411a内にインク攪拌部100を収容するので、プリンターを小型化できると共に、プリンター自体の製造コストを抑制できる。なお、上述したインクカートリッジ411aは、請求項における液体収容器に相当する。また、インクバッグ60は、請求項における液体貯留部に相当する。
【0060】
F3.変形例3:
第1〜4の実施例では、インク攪拌部100は、メタリックインクを攪拌するために用いられていたが、メタリックインクに代えて、または、メタリックインクに加えて、カラーインクを攪拌するために用いることもできる。例えば、第1の実施例において、第2インクカートリッジ412に収容されるカラーインクを、第5の実施例と同様に導電性を有する構成とする。この場合、図2(B)に示すように、第2インクカートリッジ412内の各色のインクを貫くような強い磁場を持つ磁性体15を採用することが好ましい。このようにすることで、各色のインクについても攪拌することができ、各色のインクにおけるインク組成物の沈降を抑制できる。
【0061】
F4.変形例4:
第4の実施例では、キャリッジ202がホームポジションHの位置で停止している状態において、インク攪拌部100を用いてインクの攪拌を行っていたが、これに代えて、キャリッジ202を往復動させながら、インク攪拌部100を用いてインクの攪拌を行うこともできる。具体的には、キャリッジモーター332を制御することにより、キャリッジ202をホームポジション付近で短い距離だけ往復移動させる。この際、インク攪拌部100は回転駆動させることもでき、また、停止させておくこともできる。このような構成により、キャリッジ202(第1インクカートリッジ411)において磁束が貫かれる位置を移動させることができ、渦電流を生じさせることができる。この構成では、キャリッジモーター332は、請求項における移動機構に相当する。以上の実施例及び変形例からも理解できるように、貯留部と磁性体とのうち少なくとも一方を移動させ、貯留部と磁性体との相対的な位置関係を変化させる移動機構を、本発明の液体供給装置又は液体噴射装置に採用することができる。
【0062】
F5.変形例5:
上述した各実施例では、磁性体15〜19は、回転移動していたが、これに代えて、一定の方向(鉛直方向や水平方向等)に沿った往復運動や、ランダムな動きを行うこともできる。また、連続的な動きに代えて、間欠的に磁性体15〜19を動かすこともできる。
【0063】
F6.変形例6:
第1,2,5実施例では、メタリックインク及びカラーインクの貯留箇所は、2つのインクカートリッジ411,412として構成されていたが、インクカートリッジに代えて、インクタンクとして構成することもできる。また、上述した各実施例では、プリンター500,500a〜500dは、キャリッジ200〜202が往復動を行う、いわゆるシリアルヘッド方式のプリンターであったが、これに代えて、印刷用紙PPの幅方向に多数のノズルが並び、往復動を行わないいわゆるラインヘッド方式のプリンターを採用することもできる。また、シリアルヘッドを複数並べた構成のプリンターを採用することもできる。
【0064】
F7.変形例7:
第1,2の実施例では、用いられるインクの種類は4色であったが、これに代えて任意の種類のインクを用いることができる。例えば、ライトシアンインクや、ライトマゼンタインクや、白色インクを採用することもできる。なお、白色インクを採用した場合、一般に顔料として亜鉛や鉛やチタン等の酸化物が用いられる。したがって、これら顔料が導電性を有するため、渦電流が生じてインクが攪拌されることとなる。
【0065】
F8.変形例8:
上述した第2の実施例では、インク攪拌部100の磁束照射箇所は、インク補給チューブ210のみであったが、インク補給チューブ210に加えてカートリッジホルダ400(第1インクカートリッジ411)にも照射することもできる。同様に、各実施例において、インクカートリッジ411,421,431〜434と共に、インク補給チューブ210にも磁束を照射することができる。すなわち、一般には、少なくとも液体流路を含む液体貯留部に磁束を照射する構成を、本発明の液体供給装置及び液体噴射装置に採用することができる。
【0066】
F9.変形例9:
上述した各実施例では、磁性体15〜19は、永久磁石であったが、これに代えて、電磁石を採用することもできる。すなわち、一般には、磁束を照射可能な任意の磁性体を本発明の液体供給装置及び液体噴射装置に採用することができる。
【0067】
F10.変形例10:
上述した各実施例では、インクジェット型プリンターについて説明したが、本発明は、これに限らず、インク以外の他の液体を噴射する任意の液体噴射装置に適用することができる。例えば、ファクシミリ装置等の画像記録装置や、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッドや、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレーや、面発光ディスプレー (Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材噴射装置や、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を噴射する液体噴射装置や、精密ピペットとしての試料噴射装置や、潤滑油の噴射装置や、樹脂液の噴射装置等にも適用できる。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用しても良い。そして、これら微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置のうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【0068】
なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれば良い。例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施例の形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。
【符号の説明】
【0069】
10…円盤、15〜19…磁性体、20…シャフト、30…駆動部、41…メタリックインク、60…インクバッグ、61…インク供給部、71…ケース筐体、71a…インク攪拌部収容部材、72…ケース蓋部材、73a…ずれ防止部材、74,76…面、78…側面、75…孔、100,100a…インク攪拌部、200〜202…キャリッジ、210…インク補給チューブ、300…本体フレーム、310…プラテン、312,314…プーリー、320…タイミングベルト、330…孔、332…キャリッジモーター、340…ガイド部材、400〜402…カートリッジホルダ、411…第1インクカートリッジ、412…第2インクカートリッジ、411a,421,431〜434…インクカートリッジ、500,500a〜500d…プリンター、B…磁束、H…ホームポジション、S1,S2…端面、PP…印刷用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体供給装置であって、
導電性成分を含む液体を貯留する液体貯留部と、
前記液体貯留部の外部に配置され、前記液体貯留部に対して磁束を照射する磁性体と、
前記液体貯留部と前記磁性体とのうち少なくとも一方を移動させ、前記液体貯留部と前記磁性体との相対的な位置関係を変化させる移動機構と、
を備える、液体供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体供給装置において、
前記移動機構は、前記液体貯留部と前記磁性体とのうち少なくとも一方を連続的に移動させる、液体供給装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液体供給装置において、さらに、
支持部材を備え、
前記磁性体は前記支持部材に配置され、
前記移動機構は、モーターを有し、前記モーターを用いて前記支持部材を回転させる、液体供給装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の液体供給装置において、さらに、
前記液体を噴射する記録ヘッドと、
前記液体を収容する液体タンクと、
前記液体タンクと前記記録ヘッドとを接続する液体流路と、
を備え、
前記液体貯留部は、少なくとも前記液体流路を含む、液体供給装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の液体供給装置において、
前記液体は、顔料粒子を含むインクである、液体供給装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の液体供給装置を備える、液体噴射装置。
【請求項7】
液体収容器であって、
導電性成分を含む液体を収容する液体貯留部と、
前記液体貯留部の外部に配置され、前記液体貯留部に対して磁束を照射する磁性体と、
前記磁性体を移動させる移動機構と、
を備える、液体収容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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