液体充填方法

【課題】インク等の液体を内部に注入したときに、インク供給口等の開口の付近における空気を効果的に除去することが可能な液体充填方法を提供する。
【解決手段】インクカートリッジ10の背面102を下に向けた状態で、インク注入口159からインクを注入して、孔275、バイパス270、孔272、バルブ収容室120、連通孔181、インク供給室175、連通孔182(図5参照)を順次経てインク室170に至るインク流路(矢印47,48)を経てインクをインク室170に流入させる。これにより、バルブ収容室120内の空気がインクに入れ換えられ、その空気は、弁190を通り抜けてインク供給室175を経てインク室170へ移動する。そして、インク室170内の空気は、バイパス260、大気連通バルブ131を通って開口132から外部へ排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体容器にインクなどの液体を充填する液体充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インクジェット方式の記録装置(以下「記録装置」と略称する。)が知られている。この記録装置には、インクカートリッジが着脱可能に設けられる。インクカートリッジは、インクが収容されるインク室や、インク室からインクを外部へ供給するためのインク供給口などが設けられている。インク供給口を通じてインク室に収容されたインクが記録装置の記録ヘッドへ供給される。この種のインクカートリッジの一例が、特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−270130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前掲の特許文献1に記載のインクカートリッジには、インク供給口を閉塞するためのバルブ(弁体)が設けられている。このバルブは、インクカートリッジ内において、インク室から隔てられた筒状の収容室内に収容されている。このように構成された従来のインクカートリッジでは、インクカートリッジの製造過程において空のインク室にインクを注入すると、上記収容室の内部がインクで満たされず、上記収容室の内部に空気が残留する。インク供給口から流出されるインクに混ざって空気が記録ヘッド付近に入り込むと、記録ヘッド付近に空気が滞留することにより空吐出の原因となる。したがって、インクカートリッジにおいて、インク供給口付近に残留する空気を除去する必要性は極めて高い。
【0005】
インク供給口付近の空気を除去する手段として、予めインク室内を減圧状態にしてからインク室にインクを充填する方法がある。この充填方法によれば、インク供給口付近の空気を減少させることが可能である。しかしながら、完全にインク室内の空気を排除するには、インク室内を完全な真空状態にする必要があるが、完全な真空状態にするのは事実上不可能であるため、上記充填方法を用いた場合でも、インク室内の空気、特にインク供給口付近の空気を除去することはできない。なお、かかる問題は、インクカートリッジに限られず、液体を収容することが可能な容器全般に起こり得る。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、インク等の液体を内部に注入したときに、インク供給口等の開口の付近における空気を効果的に除去することが可能な液体充填方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明は、液体容器に液体を充填する液体充填方法である。液体容器には、液体が注入される液体注入部と液体を外部へ導出する液体導出部とが設けられている。本液体充填方法は、上記液体注入部に注入された液体を、上記液体容器内の第1空間から隔離された第1流路を通じて上記液体導出部に流入させ、上記液体導出部を液体で満たした後に、上記第1空間と上記液体導出部との間に形成された第2流路を通じて上記液体導出部内の液体を上記第1空間に流入させる。
【0008】
液体注入部に液体を注入すると、その液体は第1流路を通じて液体導出部に流入する。このとき、液体導出部に流入した液体の体積に相当する空気が液体導出部から第2流路を通じて第1空間に移動する。更に液体が液体導出部に流入されて、液体導出部が液体で満たされると、液体導出部内の液体が第2流路を通じて第1空間に流入する。このようなインクの注入を継続することにより、第1空間にインクを充填させることができる。このように、液体容器の第1空間に液体を充填する際に、液体導出部からインクが充填されるため、液体導出部内の空気(気泡)を効果的に除去することができる。
【0009】
(2) 上記液体導出部は、上記液体容器の所定の壁面に設けられ、液体を上記本体の外部へ導出する第1孔と、上記第1孔を含む壁面との間で上記第1空間から隔離された第2空間を区画する区画壁と、上記区画壁に設けられ、上記第1空間と上記第2空間とを連通する第2孔とを有する。上記第1流路は、上記液体注入部から上記第2空間まで連結されている。この場合、上記第1流路を通じて上記液体注入部から上記第2空間に液体を流入させることが望ましい。
【0010】
(3) 上記第2空間から上記第1空間への液体の流通を制限する弁が上記第2孔に設けられ、上記第1空間と連通する第3孔が上記液体注入部若しくは上記第1流路に設けられている場合は、上記第2空間が液体で満たされるまで上記第2孔及び上記第3孔を通じて第1空間に液体を注入し、上記第2空間が液体で満たされたときに上記弁で上記第2空間から上記第1空間への液体の流通を制限し、その後は、上記第3孔のみを通じて上記第1空間に液体を注入するようにしてもよい。
【0011】
空の液体容器に対して液体注入部に液体が注入されると、第3孔を通じて第1空間に液体が流入するとともに、上記第1流路を通じて第2空間に液体が流入する。上記第2空間内が液体で満たされて第2空間内の空気が全て第1空間に移動すると、弁によって第2空間から第1空間への液体の流通が制限される。このとき、上記第3孔のみから液体が第1空間に流入する。これにより、第1流路を流通する際の流路抵抗がなくなるため、液体の流通が良好となる。
【0012】
(4) 上記第2孔の中心軸を鉛直方向に略一致させた状態で上記液体注入部に液体を注入することが望ましい。これにより、液体を充填する過程において第2空間内に発生した気泡がその浮力によって上昇して、第2孔から第1空間へ移動する。これにより、第2空間内の空気を確実に除去することが可能となる。
【0013】
(5) 本液体充填方法は、次の液体容器に好適に用いられる。即ち、液体が収容される第1空間を有する本体と、上記本体の所定の壁面に設けられ、液体を上記本体の外部へ導出する第1孔と、上記第1孔を含む壁面との間で上記第1空間から隔離された第2空間を区画する区画壁と、上記第2空間に収容され、上記第1孔を開閉する蓋体及び上記第1孔を閉じる方向へ上記蓋体を押し付ける弾性部材を有するバルブ機構と、上記区画壁に設けられ、上記第1空間と上記第2空間とを連通する第2孔と、上記第1空間から隔離された第3空間を有し、上記第1空間に液体を注入するための液体注入部と、上記液体注入部に設けられ、上記第1空間と上記第3空間とを連通する第3孔と、上記第3空間から上記第2空間に延設され、上記第1空間から隔離された第1流路と、を具備する液体容器に好適である。このような液体容器に対して、本液体充填方法は、上記液体注入部に注入された液体を上記第3空間から上記第1流路を通じて上記第2空間に流入する第1工程と、上記第2空間から上記第2孔を通じて上記第1空間に液体を流入する第2工程と、上記第3空間から上記第3孔を通じて上記第1空間に液体を流入する第3工程とを備える。
【0014】
(6) 上記液体容器は、互いに対向する第1側面及び第2側面の少なくともいずれか一方が開口されたフレームと、上記開口を覆う被覆部材とを有している場合は、上記フレームに形成された溝と上記被覆部材とにより形成された上記第1流路を通じて上記液体注入部から上記液体導出部に液体を流入させることが望ましい。
【0015】
(7) 本発明の液体充填方法は、上記第1空間に所定容積の空気層を形成する水位まで該第1空間に液体を流入させることが望ましい。これにより、例えば、液体容器を減圧状態で包装袋に収容する場合に、上記空気層が減圧空間の役割を果す。そのため、包装袋内の減圧状態を長期間安定させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、液体充填過程において、液体導出部内の空気を効果的に除去することができる。これにより、液体容器内に液体を充填したときに液体導出部内に空気が残留することはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、適宜図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明が具体化された一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係るインクカートリッジ10の外観構成を模式的に示す斜視図であり、(a)には、インクカートリッジ10の背面102側の構成が示されており、(b)には、インクカートリッジ10の正面101側の構成が示されている。図2は、正面101から見て左側の面(左側面)105を示す図である。図3は、正面101から見て右側の面(右側面)106を示す図である。図4は、バルブ収容室120の断面構造を示す部分断面図である。図5は、インクカートリッジ10の下部の構成を示す部分拡大図であり、(a)に、左側面105側の構成が示されており、(b)に右側面106側の構成が示されている。なお、図2及び図3では、大気連通バルブ131及びインク供給バルブ200(本発明のバルブ機構に相当)がインクカートリッジ10から取り外された状態が示されている。また、図4では、インク供給バルブ200が省略されており、図2から図5では、フィルム70が省略されている。以下、図1から図5を参照して、インクカートリッジ10の構成について説明する。
【0019】
図1に示されるように、インクカートリッジ10は、扁平形状の略6面体として構成されている。詳細には、インクカートリッジ10は、幅方向(矢印51の方向)に細く、高さ方向(矢印52の方向)及び奥行き方向(矢印53の方向)が上記幅方向よりも長い略直方体形状に形成されている。したがって、インクカートリッジ10の一対の左側面105及び右側面106(本発明の第1側面及び第2側面に相当)が6面体の最大面積となっている。インクカートリッジ10は、図1に示された起立状態で、図中の下側の面を底面104とし、図中の上側の面を上面103として、背面102側から図示しない記録装置のカートリッジ収容部)に装着される。
【0020】
インクカートリッジ10は、大別して、本体100(本発明の本体に相当)と、センサーアーム90(図2及び図3参照)と、大気連通バルブ131と、インク供給バルブ200とにより構成されている。これらの各要素は、樹脂材料により構成されている。したがって、金属材料が使用されていないので、廃棄処分の際に焼却することができる。例えば、樹脂材料としては、ナイロン、ポリエチレンやポリプロピレンなどが該当する。なお、インクカートリッジ10として、例えば、本体100の略全体を覆うケースや、インク供給バルブ200などを覆うプロテクタなどが備えられたものにも本発明は適用可能である。
【0021】
本体100は、フレーム部110(本発明のフレームに相当)とフィルム70(本発明の被覆部材に相当)とによって構成されている。フレーム部110は、インクカートリッジ10の筐体を構成する部材であり、インクカートリッジ10の六面101〜106を形成する。したがって、インクカートリッジ10の各面101〜106は、フレーム部110の各面に一致する。以下において、インクカートリッジ10の各面に付された符号(101〜106)を用いてフレーム部110の各面を示す。
【0022】
フレーム部110は、透光性のある樹脂材料で構成されており、例えば、樹脂材料を射出成形することにより得られる。フレーム部110は、透光性を有するものであれば如何なる樹脂で構成されていてもよく、例えば、透明或いは半透明の樹脂で構成することも可能である。このフレーム部110は、大別して、複数の壁部材(後述する外周壁111や隔壁156,隔壁157等)と、インク注入部150(本発明の液体注入部に相当)と、検知窓140と、バルブ収容室120と、バルブ収容室130とを備える。
【0023】
図2及び図3に示されるように、フレーム部110は、外周壁111を備える。外周壁111は、フレーム部110として一体に形成されており、インクカートリッジ10の左側面105から右側面106に渡って設けられている。外周壁111は、その内側に空間を形成するように、正面101、上面103、背面102、底面104に概ね沿って環状に形成されている。これにより、フレーム部110の左側面105に開口114aが形成され、右側面106に開口114bが形成される。
【0024】
フレーム部110の側面105,106それぞれに、透明な樹脂で構成された薄肉状のフィルム70(図1参照)が貼り付けられている。具体的には、フィルム70は、外周壁111の側面105,106の外縁部分に、超音波溶着によって溶着されている。このフィルム70によって開口114a及び開口114bが閉塞される。これにより、外周壁111とフィルム70とによって囲まれた空間がインク室170(本発明の第1空間に相当)として区画される。このように区画されたインク室170にインクが収容される。なお、本実施形態では、フレーム部110とフィルタ70とによってインク室170を形成することとしたが、例えば、フレーム部110自体を直方体の容器状に形成することによってその内部にインク室170を形成してもかまわない。
【0025】
インク注入部150は、インクをインク室170に注入するためのものである。このインク注入部150は、フレーム部110の正面101に設けられている。具体的には、インク注入部150は、フレーム部110の正面101の中段付近よりやや下側に配設されている。当該インク注入部150の構成については、後段で詳細に説明する。
【0026】
検知窓140は、インク室170に収容されているインクの量を視覚的或いは光学的に検知するためのものである。検知窓140は、フレーム部110に一体に形成されている。したがって、検知窓140は、フレーム部110と同じ材質、つまり、透光性のある樹脂材料で構成されている。そのため、検知窓140は、外部からの光を透過することができる。検知窓140は、図示しない記録装置のべートリッジ収容部に取り付けられたフォトインタラプタなどの光センサによって検出光が照射される的にされる。本実施形態では、上記検出光は、側壁140bに照射される。なお、少なくとも検知窓140が透光性を有していればよいため、必ずしもフレーム部110全体を透光性のある樹脂材料で構成する必要はない。
【0027】
検知窓140は、フレーム部110の中段付近から外向き(例えば、図2の左向き)へ突出している。具体的には、検知窓140は、背面102に平行で、この背面102から外向きに所定距離だけ離間した矩形状の前壁140aと、この前壁140aの幅方向の二辺を含む一対の側壁140b(図1参照)と、前壁140aの上下の二辺を含む上壁140c及び底壁140d(図2及び図3参照)とにより区画されている。これにより、検知窓140の内部に空間142が形成される。なお、前壁140aの幅、つまり、検知窓140の幅(図1の矢印51方向の寸法)は、インクカートリッジ10の背面102の幅よりも小さく形成されている。
【0028】
図4に示されるように、空間142は、インク室170に連続している。空間142に、センサーアーム90のインジケータ部92が進入或いは退出する。なお、図2から図4では、インジケータ部92が空間142に進入した姿勢が破線で示されている。
【0029】
センサーアーム90は、インク室170に収容されたインクの液量を検知するための部材である。センサーアーム90の一方端に、空間142に進入或いは退出されるインジケータ部92が設けられている。センサーアーム90の他方端に、内部が中空状に形成されたフロート部93が設けられている。このセンサーアーム90は、外周壁111の幅方向(図1の矢印51の方向)の中心に立設されたリブ94に揺動可能に支持されている。フロート部93は浮力体の役割を担っており、インク量に応じて上下に変位する。これにより、フロート部93の変位量に応じてセンサーアーム90が回動する。リブ94は板状に形成されており、背面102及び底面104で形成されるコーナー付近の外周壁111に、高さ方向(矢印52の方向)へ向けて立設されている。このリブ94に、センサーアーム90を軸支する支持部97が形成されている。
【0030】
センサーアーム90は、インク室170内に十分な量のインクが収容されている場合は、図2及び図3に示されるようにインジケータ部92が空間142に進入した姿勢を維持する。一方、インクが所定量未満になるとフロート部93が下降して、インジケータ部92が空間142から退出した姿勢を維持する。空間142におけるインジケータ部92の有無を検知窓140の外部からフォトインタラプタなどの光センサで監視することで、インク室170内のインクの液量が所定量以下であることを検知することができる。
【0031】
図2及び図3に示されるように、フレーム部110の背面102の上部、言い換えれば、検知窓140の上方に、円形の開口132が設けられている。開口132に連続してフレーム部110の内部に円筒状のバルブ収容室130が設けられている。このバルブ収容室130は、インク室170から隔離されており、略円筒状に形成された側壁138によって区画されている。バルブ収容室130は、その奥部で、後述するバイパス260を通じてインク室170に連通している。このバルブ収容室130に、大気連通バルブ131が収容される。
【0032】
大気連通バルブ131は、開口132からインク室170に至る経路を開放又は遮断する弁機構であり、主として、バルブ本体137やバネ136、シール部材133、ロッド134、カバー135などの部材で構成されている。大気連通バルブ131は、常時は、バネ136の付勢力によって上記経路を遮断する方向にバルブ本体137が押し付けている。ロッド134は、背面102側に突出している。このロッド134が上記付勢力に抗して開口132の奥部へ押圧されることにより、上記経路が開放される。
【0033】
図3に示されるように、側壁138の右側面106側から正面101側へバイパス260が形成されている。バイパス260は、インク室170から隔離されており、一端がバルブ収容室130に接続されている。また、バイパス260の他端には開口264が形成されており、この開口264は、正面101と上面103とにより形成されるコーナー付近で開放されている。このバイパス206は、インク室170内の空気をバルブ収容室130を経て開口132から外部へ排出する排気経路として構成されている。
【0034】
外周壁111のうち、インク室170の上面を構成する部分(以下「上壁」と称する)262に、溝263が形成されている。この溝263は、上壁262の右側面106側の外縁部分に形成されている。本実施形態では、バイパス260は、外周壁111の右側面106側の外縁部分にフイルム70が溶着されることで、溝263とフイルム70とによって区画される。したがって、バイパス260は、図示されるように、右側面106の開口104bを覆うフィルム70に隣接している。
【0035】
図2及び図3に示されるように、フレーム部110の背面102の下部、言い換えれば、検知窓140の下方に、円形の開口122が設けられている。この開口122に連続してフレーム部110の内部側に、バルブ収容室120及びインク供給室175(いずれも本発明の第2空間に相当)が形成されている。
【0036】
図4に示されるように、バルブ収容室120は、開口122から本体100の奥行き方向(矢印53の方向)に沿ってフレーム部110の内側へ延設されている。バルブ収容室120は、図示されるように、外周壁111の外側に設けられている。一方、インク供給室175は、背面102側から見てバルブ収容室120の奥側に設けられている。このインク供給室175は、外周壁111の内側に設けられている。つまり、インク供給室175とバルブ収容室120とは、外周壁111によって仕切り分けるように隔離されている。以下、外周壁111において、インク供給室175とバルブ収容室120とを仕切り分ける部分を隔壁179と称する。隔壁179には、連通孔181が形成されている。この連通孔181を通じてインク供給室175とバルブ収容室120とが連通している。
【0037】
バルブ収容室120は、略円筒状に形成された側壁124(図4参照)によってその側面が区画され、隔壁179によってその奥面が区画されている。バルブ収容室120内の奥側には、連通孔181に隣接するようにして円筒状の弁収容部126が設けられている。この弁収容部126に弁190が収容され、バルブ収容室120の内部にインク供給バルブ200が収容される。なお、弁190及びインク供給バルブ200の詳細な構成については後述する。
【0038】
図5(b)に示されるように、バルブ収容室120を区画する側壁124に、孔272が形成されている。孔272は、本発明の液体流路に相当するバイパス270とバルブ収容室120とを連通するものである。この孔272は、側壁124をインクカートリッジ10の右側面106側の方向(図5(b)の紙面に垂直な方向)に貫通している。
【0039】
孔272の周縁に、隔壁273が設けられている。隔壁273は、孔272をインク室から隔離するとともに、バイパス270をバルブ収容室120の内部に連結するための経路を形成するものである。隔壁273は、側壁124の外面に右側面106側へ向けて立設されている。この隔壁273は、図5(b)に示されるように、側面視で下方に開口が形成されており、孔272の左右側及び上側を囲む形状に形成されている。隔壁273の右側面106側の外縁部分にもフィルム70が溶着される。右側面106の開口114bがフィルム70で閉塞されることにより、バイパス270がバルブ収容室120に接続される。なお、バイパス270については後述する。
【0040】
インク供給室175は、隔壁177(本発明の区画壁に相当)と、隔壁179と、底壁118と、フレーム部110の両側面105,106を覆うフィルム70(図1参照)とによって区画されている。具体的には、隔壁177、隔壁179、及び底壁118の側面105,106側の外縁部分にフィルム70が溶着されることによって、隔壁177、隔壁179、底壁118、及びフィルム70で囲まれた空間がインク供給室175として構成される。このインク供給室175は、バルブ収容室120より小さい体積となるように形成されている。なお、底壁118は、外周壁111の一部を構成するものであり、インク室170の底面の一部を形成している。
【0041】
インク供給室175は、図4に示されるように、バルブ収容室120から奥行き方向(矢印53の方向)へ向かうにつれて先細り形状に形成されている。インク供給室175とバルブ収容室120とは、隔壁179を間に介在させてフレーム部110の奥行き方向(矢印53の方向)に隣接している。
【0042】
隔壁179には、インク供給室175とバルブ収容室120とを連通する連通孔181が形成されている。この連通孔181は、後述するインク供給口210(本発明の第1孔に相当)と同じように、バルブ収容室120の円筒中心線176に一致するように形成されている。
【0043】
隔壁177は、連通孔181を囲むように設けられている。詳細には、隔壁179と底壁118との連結部を中心にして略半アーチ状に形成されており、一端が隔壁179に連結され、他端が底壁118に連結されている。隔壁177のうち、底壁118側の端部には、インク室170とインク供給室175とを連通する連通孔182(本発明の第2孔に相当)が形成されている。この連通孔182は、連通孔181及びインク供給口210それぞれの中心を通る円筒中心線176から下方へずらされた箇所に設けられている。
【0044】
連通孔181は、隔壁177の左側面105側の外縁部分に形成された切り欠きと、上記外縁部分に溶着されたフィルム70とによって形成される。上記切り欠きを略コの字状とすることにより、連通孔181の断面を矩形状(四角形状)に形成することができる。もちろん、上記切り欠きの形状如何によって、連通孔182の断面形状を三角形状等の他の多角形状や、半円状、略円形状、略楕円形状などに形成することができる。連通孔182は、後述するインク供給口210或いは連通孔181よりも小さい断面積に形成されている。したがって、インク供給口210から外部へインクが流出された場合に、連通孔182におけるインクの流速は、インク供給口210及び連通孔181における流速よりも大きい。そのため、インク供給時に、連通孔182付近で気泡が滞留し難くなる。
【0045】
インク室170の底面171には、凹陥部117が設けられている。凹陥部117は、外周壁111の一部を構成する底壁118を部分的に凹陥状に陥没させることにより形成される。本実施形態では、図4に示されるように、この凹陥部117で区画される凹部空間119に、連通孔182のインク室170側の開口が配置されている。このように連通孔182が配置されているため、凹陥部117に溜められたインクの液面が下がって連通孔182に達するまでの間、空気を連通孔182に入り込ませることなく、インクをインク供給室175に供給することができる。なお、本実施形態では、凹陥部117は、リブ94より左側面105側のみに設けられており(図2参照)、リブ94より右側面106側には設けられていない(図3参照)。
【0046】
本実施形態では、隔壁177は、インク室170とバルブ収容室120とをインク供給室175で隔てるように設けられている。即ち、インク供給室175は、インク室170との連通を連通孔182のみで行い、バルブ収容室120との連通を連通孔181のみで行う。したがって、後述するインク供給口210がインク供給バルブ200によって開放されると、図5(a)の破線矢印45で示されるように、インク室170に収容されたインクが、凹陥部117から連通路182を通ってインク供給室175に流入し、インク供給室175から連通孔181を通ってバルブ収容室120に流入する。そして、バルブ収容室120からインク供給口210を通って外部へインクが流出される。
【0047】
次に、図5を参照して、インク注入部150及びその周辺の構成について詳述する。インク注入部150は、上述したように、フレーム部110の正面101において、中段付近よりやや下側に配設されている。このインク注入部150は、フレーム部110に一体に成形されている。
【0048】
図5に示されるように、インク注入部150は、筒部152を備える。筒部152は、正面101からインク室170側に穿設された略円筒状の孔であり、内部に筒状の内部空間(本発明の第3空間に相当)が形成されている。筒部152の奥部は、外周壁111で閉塞されている。筒部152の正面101側の開口は、本体100の外部に開放されたインク注入口159である。インク注入口159から筒部152の内部にインクが注入される。
【0049】
図5(a)に示されるように、筒部152の左側面105側の側壁に、連通孔153(本発明の第3孔に相当)と、隔壁156とが設けられている。連通孔153は、筒部152の側壁をインクカートリッジ10の左側面105側に貫通している。この連通孔153は、筒部152とインク室170との間を連通するために設けられている。
【0050】
隔壁156は、連通孔153をインク室170から隔離するとともに、後述する注入路158を形成するものである。隔壁156は、筒部152の外面に左側面105側へ向けて立設された横向き略U字状のリブ部材からなり、インクカートリッジ10の高さ方向(矢印52の方向)に延設された細長形状を呈する。隔壁156の左側面105側の外縁部分にもフィルム70(図1参照)が溶着される。左側面105の開口114aがフィルム70で閉塞されることにより、隔壁156及びフィルム70で囲まれた部分に、インクが流通する注入路158が形成される。
【0051】
筒部152の上側の外周壁111には、正面101から内部側へ離間する方向へ緩く下り傾斜された傾斜面163が形成されている。以下、外周壁111において傾斜面163を形成する部分を傾斜壁164と称する。傾斜壁164には、該傾斜壁164を上下方向(矢印52の方向)へ貫通する孔161が形成されている。隔壁156は傾斜壁164まで延設されており、その終端が孔161の周縁部に連結されている。これにより、注入路158が傾斜壁164を抜けてインク室170側へ連通する。
【0052】
図5(a)に示されるように、傾斜壁164には、傾斜面163に平行な隔壁157が設けられている。この隔壁157は、孔161をインク室170から隔離するとともに、後述する注入路166を形成するものである。隔壁157は、孔161から正面101側へ延設されている。隔壁157は、幅方向(図1の矢印51の方向)の断面が略逆L字状に形成されており、右側面106側が閉塞された壁面157aを有する(図5(b)参照)。隔壁157の左側面105側の外縁部分にもフィルム70(図1参照)が溶着される。左側面105の開口114aがフィルム70で閉塞されることで、隔壁157及びフィルム70で囲まれた部分に、インクが流通する注入路166が形成される。隔壁157の正面101側の終端には、上面103側の壁面157bに連通孔154が設けられている。この連通孔154によって、注入路166が正面101側でインク室170に連通している。
【0053】
図5(b)に示されるように、筒部152の右側面106側の側壁からバルブ収容室120に渡ってバイパス270が形成されている。このバイパス270は、上述の注入路158及び注入路166とは別のインク流路として構成されている。バイパス270は、インク室170から隔離されたインク流路として構成されている。筒部152の奥面を形成する外周壁111に、孔275が設けられている。バイパス270は、孔275からインク室170の底面171側へ下り、その後、インクカートリッジ10の底面104と略平行に背面102側へ延設されている。このバイパス270の背面102側の端部は孔272に接続されている。つまり、バイパス270は、孔272を通じてバルブ収容室120に連通している。
【0054】
インク室170の底面171付近の外周壁111(底壁118を含む)には、溝277が形成されている。この溝277は、外周壁111の右側面106側の外縁部分に形成されている。本実施形態では、バイパス270は、外周壁111の右側面106側の外縁部分にフイルム70が溶着されることで、溝277とフイルム70とによって区画される。したがって、バイパス270は、右側面106の開口104bを覆うフィルム70(図1参照)に隣接している。
【0055】
このように、インクカートリッジ10には、上述の注入路158、注入路166、及びバイパス270が設けられいるため、インク注入口159から注入されたインクは、注入路158及び注入路166を通る経路(図5(a)の矢印49参照)と、バイパス270及びバルブ収容室120を通る経路(図5(b)の矢印47,48参照)とに分かれてインク室170へ導かれる。即ち、インク供給口210が閉塞された状態でインク注入口159からインクが注入されると、注入されたインクは、矢印46に示されるように、筒部152の内部から連通孔153及び孔275それぞれに流れ込む。
【0056】
連通孔153を通過したインクは、矢印49に示されるように、注入路158に流れ込み、注入路158を通って孔161に至る。そして、インクは、孔161から注入路166に流れ込む。注入路166内のインクは、正面101側へ導かれ、そして、連通孔154を通ってインク室170に流入する。この経路を通ることにより、インクは正面101側からインク室170に流入する。
【0057】
一方、孔275を通過したインクは、矢印47に示されるように、バイパス270に流れ込み、バイパス270を通って背面102側へ導かれる。そして、バイパス270の終端から孔222を通ってバルブ収容室120へインクが流入する。バルブ収容室120内のインクは、図5(a)及び(b)の矢印48に示されるように、連通孔181を通ってインク供給室175へ導かれる。そして、連通孔182を通ってインク室170に流入する。この経路を通ることにより、インクはバルブ収容室120を経てインク室170に流入する。
【0058】
次に、図6を参照して、弁190の構成について詳述する。ここに、図6は、弁190の構成を示す分解斜視図である。この弁190は、空気中においては、連通孔181における空気の流通を許容し、液中においては、インク室170から連通孔181を通じてバルブ収容室120へのインクの流通を許容するものの、バルブ収容室120からインク供給室175へのインクの流通を阻止するものである。
【0059】
図6に示されるように、弁190は、弁体191と、弁体191を受ける弁座192と、弁座192との間で弁体191を覆うカバー193とを備えている。これらの各部材は、ポリプロピレンやシリコンゴムなどの樹脂で構成されている。
【0060】
カバー193は、逆止弁収容部126(図4参照)の内孔に嵌め入れられている。カバー193は、底部を有する略円筒状に形成されており、底部に孔245が設けられている。この孔245にインクが流通される。孔245に弁体191の軸部240が挿入される。また、カバー193の内孔246は、弁体191の傘部241の外径より大きいサイズに形成されている。したがって、カバー193の内部に傘部241が収容可能である。
【0061】
弁体191は、傘部241と軸部240とを有し、側面視(図2の紙面に垂直な方向)で略傘形状に形成されている。傘部241は、カバー193の内孔246に対応させて円形状に形成されている。軸部240は棒状の部材であり、傘部241の中心から垂直方向に立設されている。弁体191は、軸部240側からカバー193の内孔246に挿入されると、軸部240が孔245に挿通される。そして、傘部241がカバー193の内孔246に挿入される。
【0062】
傘部241は、軸部240との連結部から外周端に渡って薄肉に形成されている。傘部241の周縁部と孔245の周縁部とが弾性的に当接することにより、孔245が傘部241によって閉塞される。これにより、孔245を通るインク流路が遮断される。また、傘部241の周縁部と孔245の周縁部とが離間することにより、孔245が開放される。これにより、孔245を通るインク流路が確保される。
【0063】
弁座192は、弁座基部194と弁体受け部195とを備えて構成されており、その外観が略円盤状に形成されている。弁座基部194は、弁座192の底面199(インク供給バルブ200に当接される面)を形成する。この弁座基部194がインク供給バルブ200に当接される。弁座基部194の底面199には2つのリブ197が設けられている。このリブ197で囲まれた空間197aに、後述する第2バネ206bの頂部332(図8参照)が収容される。このとき、頂部332の外周面とリブ197の内面とが当接することで、第2バネ206bは、軸心方向57に直交する方向への移動が規制される。弁座基部194には弁座192の表裏を貫通する複数の孔196が形成されている。この孔196にインクが流通する。
【0064】
弁体受け部195は、弁体191を受ける部分である。弁体受け部195は、複数のリブ状部材で構成されている。弁体受け部195は、弁座基部194の上面に設けられた複数の溝198によって構成されている。孔196は、弁座基部194の底面199から溝198の底部に貫通している。したがって、弁体受け部195で弁体191を受けたとしても、孔197は塞がれない。
【0065】
このように弁190が構成されているため、インクがバルブ収容室120からインク供給室175へ逆流した場合は、孔196を抜け出たインクによって傘部241の外面242が押圧され、傘部241がカバー193側へ移動する。これにより、バルブ収容室120からインク供給室175へのインクの逆流が制限される。また、インクがインク供給室175からバルブ収容室120へ流れる場合は、インクによって傘部241の内面243が押圧されて、傘部241の周縁部と孔245の周縁部とが離間する。これにより、孔245が開放されて、インク供給室175からバルブ収容室120へのインクの流通が可能となる。
【0066】
一方、バルブ収容室120からインク供給室175へ空気が移動する場合は、空気はインクよりも軽く、またその粘度も低いため、孔245をカバー193側へ抜け出た空気は四方へ分散されて傘部241の外面242から内面243へ回り込む。このとき、傘部241の外面242が空気によってカバー193側へ押圧されるものの、その押圧力は極めて小さく、傘部241の摺動抵抗を超えるものではない。そのため、傘部241はカバー193側へ移動しない。つまり、弁190は、孔181における空気の流通を許容可能に構成されている。
【0067】
次に、図7を参照して、インク供給バルブ200の構成について詳述する。ここに、図7は、インク供給バルブ200の構成を示す分解斜視図である。インク供給バルブ200は、インク室170に収容されたインクを外部へ流出させるためのバルブである。図示されるように、インク供給バルブ200は、カバー205と、シール部材204と、バルブ本体207(本発明の蓋体に相当)と、第1バネ206a(本発明の弾性部材に相当)と、スライダ208と、第2バネ206b(本発明の弾性部材に相当)とを備えて構成されている。これらの各部材は、ポリアセタールやシリコンゴムなどの樹脂で構成されている。
【0068】
インク供給バルブ200は、上記各要素(カバー205、シール部材204、バルブ本体207、第1バネ206a、スライダ208、第2バネ206b)がその順序で係合されることによって構成される。上記各要素のうち、バルブ本体207、第1バネ206a、スライダ208、及び第2バネ206bがバルブ収容室120に収容される。また、カバー205とシール部材204は、開口122の周縁に装着される。
【0069】
開口122の外縁部にシール部材204を介してカバー205が取り付けられている(図4参照)。カバー205及びシール部材204それぞれには、後述する孔214,215が設けられている。このカバー205が上記外縁部に取り付けられることにより、孔214,215によってインク供給口210が形成される。このインク供給口210にインクニードル65(図8参照)が挿入され得る。インク供給口210は、その中心がバルブ収容室120の円筒中心線176(図4参照)に一致するように形成されている。また、円筒中心線176は、インク供給バルブ200の軸心方向58に一致する。なお、インクニードル65は、図示しない記録装置のカートリッジ収容部に設けられている。
【0070】
シール部材204は、本体100の外部からバルブ収容室120にインクニードル65(図8参照)を挿通するものである。なお、インクニードル65は、記録装置の記録ヘッドから導出されたインク管の先端に設けられた針状の樹脂管である。シール部材204は、密封性を高めるべく、ゴムなどの樹脂で構成されている。シール部材204は、バルブ収容室120の内径及び開口122(図4参照)の形状に合わせて、円環状に形成されている。詳細には、シール部材204は、バルブ収容室120の内周面に嵌め入れられる第1円柱部218と、開口122の周縁に当接される第2円柱部219とを有する。また、シール部材204には、第1円柱部218及び第2円柱部219の中心を貫通する孔215が形成されている。孔215にインクニードル65が挿通される。孔215は、インクニードル65の外径よりもやや小さく形成されている。したがって、孔215にインクニードル65が挿通されると、インクニードル65の外周面が孔132の内面を押圧して密着する。これにより、インクニードル65は、バルブ収容室120と外部との密封状態を維持したまま、バルブ収容室120へ挿通される。
【0071】
カバー205は、開口122(図4参照)を覆うとともにインクニードル65(図8参照)をバルブ収容室120へ導くものである。カバー205は、奥面を構成する円盤状の壁222と、壁222に形成された孔214と、カバー205の側面を形成する筒状の側壁224とを有する。側壁224には複数の長孔226(本実施形態では2つ)が形成されている。バルブ収容室120を形成する側壁124の周面に突起状の爪123(図2参照)が設けられており、この爪123が長孔226に挿嵌される。これにより、開口122の周縁に対してカバー205が固定される。
【0072】
バルブ本体207は、円盤状の壁228と、壁228の周縁から立設された筒状の側壁229とを有する。壁228には、複数の孔230(本実施形態では4つ)が周方向に設けられている。孔230は、壁228の周縁に設けられている。壁228がシール部材204に当接することにより、壁228の中央部分(孔が形成されていない部分)が孔215を塞ぐ。なお、孔215が開放されているときは、壁228の孔230を通ってバルブ本体207の内部をインクが流通する。
【0073】
側壁229で囲まれたバルブ本体207の内部に第1バネ206aが収容される。このとき、第1バネ206aは壁228をバネ座としてバルブ本体207内に配設される。つまり、壁228は、第1バネ206aを受けるバネ座を兼ねる。側壁229の軸心方向58の端部には、軸心方向58に突出した複数の突出片231(本実施形態では2つ)が設けられている。この突出片231の先端に鉤状のフック232が設けられている。このフック232がスライダ208の底板233に係合することで、バルブ本体207とスライダ208とが連結される。
【0074】
バルブ本体207は、バルブ収容室120内において、バルブ収容室120の奥行き方向(図4の矢印53の方向)へスライド可能に設けられている。このバルブ本体207は、側壁229とバルブ収容室120の内面との間に所定寸法の隙間を形成しつつスライドする。この隙間及び孔230によってインク流路が形成されている。
【0075】
第1バネ206a及びは第2バネ206bは、略椀形状(又は略中空円錐形状)に形成されており、バネ206a,206bの底面(直径の大きい方の端部)を形成する環状の底部331と、その底部331の直径より小さな直径に形成されると共に、バネ206a,206bの上面(直径の小さい方の端部)を形成する環状の頂部332と、その頂部332と底部331との間に連接されると共に、インク供給バルブ200の軸心方向58(図7参照)に荷重がかかった場合に屈曲変形する胴部333とを主に備えている。バネ206a,206bは、シリコンゴムで構成されている。バネ206a,206bは、中空状に形成されており、その中空部にインク流路が形成されている。
【0076】
スライダ208は、第1バネ206a及び第2バネ206bを受けるものであり、円盤状の底壁233と、底壁233の周縁から表裏面それぞれに垂直な方向へ延びる外周壁234とにより構成されている。底壁233と外周壁234とによって、軸心方向58に隣接する2つの空間が形成される。これら2つの空間うち、一方が第1バネ206aを受ける第1バネ座235aであり、他方が第2バネ206bを受ける第2バネ座235bである。
【0077】
外周壁234の外径は、バルブ本体207の側壁224の内径より小さいサイズに形成されている。したがって、スライダ208は、バルブ本体207の内部に収容可能である。バルブ本体207にスライダ208が収容された状態で、スライダ208がバルブ本体207の内部でスライド可能に支持される。本実施形態では、スライダ208は、第1バネ座235a側からバルブ本体207の内部に挿入される。
【0078】
底壁233の中心部分に孔236(図8参照)が形成されている。この孔236をインクが流通される。スライダ208は、外周壁234の一部が軸心方向58の両端部から底板233まで切り欠かれている。第1バネ座235aに第1バネ206aが支持された状態で、第1バネ座235a側からバルブ本体207が被せられ、そして、外周壁234の切欠部分に突出片231が挿通されると、フック232が底板233に掛け止められる。これにより、内部に第1バネ206aを収容した状態でスライダ208とバルブ本体207とが連結される。このとき、バルブ本体207とスライダ208とが軸心方向58に互いに近接する方向に押圧されると、内部の第1バネ206aが軸心方向に圧縮され、上記押圧が解除されると、第1バネ206aが伸長して、バルブ本体207とスライダ208とが元の位置に戻される。
【0079】
上述の如く構成されたインク供給バルブ200及び弁190が設けられているため、バルブ収容室120からインク室120に至る間においては、図8に示される経路(矢印98,99参照)でインクが流通する。ここに、図8は、バルブ収容室120付近のインク流路を説明するための部分断面図であり、(a)には、インク室120にインクが充填される際のインク流路が示されており、(b)には、インク供給口210からインクが流出される際のインク流路が示されている。
【0080】
図8(a)に示されるように、インク供給口210がインク供給バルブ200で閉塞された状態で、インク注入口159からインクが注入されると、矢印98で示されるインク流路が形成される。矢印98で示されるインク流路は、バイパス270(図5参照)、孔272、弁座192の孔196、カバー193の孔245、インク供給室175、連通孔182を順次通る流路である。
【0081】
また、図8(b)に示されるように、インクニードル65がインク供給口210からバルブ収容室120内に挿入されると、インクニードル65の先端がバルブ本体207を第1バネ206aや第2バネ206bの付勢力に抗して押圧する。このとき、バルブ本体207が奥側へ押し下げられる。これにより、バルブ本体207がシール部材204から離間する。インクニードル65の先端部の側面には、インクが流出入される孔66が設けられている。したがって、バルブ本体207がシール部材204から離間すると、孔66を通じてバルブ収容室120とインクニードル65とが連通する。
【0082】
このとき、バルブ収容室120内では、矢印99で示されるインク流路が形成される。矢印99で示されるインク流路は、カバー193の孔245、弁座192の孔196、第1バネ206aの内部空間、スライダ208の孔236、第2バネ206bの内部空間、バルブ本体207の孔230、インクニードル65の内孔を順次通る流路である。この流路が大半のインクを流通させる主流路となる。また、バルブ本体207とバルブ収容室120の内壁との間に形成された隙間もインク流路となる。
【0083】
次に、図9を参照して、インクカートリッジ10のインク室170にインクを充填させる方法(インク充填方法)について説明する。ここに、図9は、インクが空のインク室170に充填される様子を模式的に示す斜視図であり、(a)には、バルブ収容室120の一部にインクが貯留された状態が示されており、(b)には、バルブ収容室120がインクで満たされた状態が示されており、(c)には、インク室170及びバルブ収容室120にインクが貯留された状態が示されている。なお、図中における網掛け部分は、インクの貯留量を示す。
【0084】
インクカートリッジ10にインクを充填する場合は、図9に示されるように、インクカートリッジ10の背面102を下に向け、正面101を上に向けた状態にインクカートリッジ10をセットする。これにより、連通孔181及び連通孔182の軸が鉛直方向に向けられる。そして、大気連通バルブ131を動作させて、開口132を大気に開放させておく。この状態で、正面101に設けられたインク注入口159からインクを注入する。このとき、図9(a)に示されるように、矢印47,48で示されるインク流路、つまり、孔275、バイパス270、孔272、バルブ収容室120、連通孔181、インク供給室175、連通孔182(図5参照)を順次経てインク室170に至るインク流路を通ってインクがインク室170に流入する。また、インクは、矢印49で示されるインク流路、つまり、連通孔153から分流路158、分流路166(図5参照)を順次経てインク室170に至るインク流路を通ってインク室170に流入する。
【0085】
なお、本実施形態では、背面102が下に向けられた状態では、矢印49のインク流路を通るインクは鉛直上方へ運ばれた後にインク室170に流入する。一方、矢印47で示されるインク流路は、鉛直下方へ延びている。そのため、インク注入口159に注入されたインクの大部分は、矢印47で示されるインク流路に流入することになる。
【0086】
矢印47で示されるインク流路を通ってバルブ収容室120にインクが流入すると、バルブ収容室120内に溜まっていた空気がインクに入れ換えられる。このとき、入れ換えられた空気は、弁190を通り抜けてインク供給室175を経てインク室170へ移動する。そして、インク室170において増加した空気がバイパス260(図3参照)を通って開口264からバルブ収容室130に流入し、大気連通バルブ131を通って開口132(図3参照)から外部へ排出される。
【0087】
更にインクを注入すると、図9(b)に示されるように、バルブ収容室120がインクで満たされる。このとき、弁190が動作して、バルブ収容室120からインク室170へ続く連通孔181を閉塞する。これにより、矢印47,48で示されるインク流路が遮断される。したがって、バルブ収容室120がインクで満たされた後は、矢印49で示されるインク流路のみを通ってインクがインク室170へ流入する。その後、インク室170内において所定体積の空気層が形成される水位までインクを引き続き注入する。これにより、インク室170に空気層が確保された状態のインクカートリッジ10が製造される。
【0088】
このように、上述のインク充填方法では、矢印47,48に示されるインク流路を通ってバルブ収容室120に直接インクが流入するため、バルブ収容室120内の空気をほぼ完全にインク室170へ移動させることができる。したがって、バルブ収容室120内に空気が残留することはない。これにより、インク供給口210から記録ヘッドへ供給されるインクに気泡が混入するという不具合が解消される。
【0089】
また、バルブ収容室120がインクで満たされると、弁190が動作して、矢印47,48で示されるインク流路が遮断され、経路長の短い矢印49で示されるインク流路のみでインク室170にインクが流入する。そのため、バイパス270などを通る際の流路抵抗がなくなるため、インク室170へのインクの流通が良好となる。
【0090】
また、上述の充填方法でインクが充填されたインクカートリッジ10は、内部のインク室に空気層が形成される。したがって、インクカートリッジ10を減圧状態で包装袋に収容する場合に、上記空気層が減圧空間となるため、包装袋内の減圧状態を長期間安定させることができる。
【0091】
なお、上述の実施形態では、インクが収容されるインクカートリッジ10を例示して本発明を説明したが、インク以外の液体が収容される液体容器などにも本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は、インクカートリッジ10の外観構成を模式的に示す斜視図であり、(a)に、インクカートリッジ10の背面102側の構成が示されており、(b)にインクカートリッジ10の正面101側の構成が示されている。
【図2】図2は、正面101から見て左側の面(左側面)105を示す図である。
【図3】図3は、正面101から見て右側の面(右側面)106を示す図である。
【図4】図4は、バルブ収容室120の断面構造を示す部分断面図である。
【図5】図5は、インクカートリッジ10の下部の構成を示す部分拡大図であり、(a)に、左側面105側の構成が示されており、(b)に右側面106側の構成が示されている。
【図6】図6は、弁190の構成を示す分解斜視図である。
【図7】図7は、インク供給バルブ200の構成を示す分解斜視図である。
【図8】図8は、バルブ収容室120付近のインク流路を説明するための部分断面図であり、(a)には、インク室120にインクが充填される際のインク流路が示されており、(b)には、インク供給口210からインクが流出される際のインク流路が示されている。
【図9】図9は、インクが空のインク室170に充填される様子を模式的に示す斜視図であり、(a)には、バルブ収容室120の一部にインクが貯留された状態が示されており、(b)には、バルブ収容室120がインクで満たされた状態が示されており、(c)には、インク室170及びバルブ収容室120にインクが貯留された状態が示されている。
【符号の説明】
【0093】
10・・・インクカートリッジ
90・・・センサーアーム
100・・・本体
110・・・フレーム部(フレーム)
117・・・凹陥部
120・・・バルブ収容室(第2空間)
140・・・検知窓
150・・・インク注入部(液体注入部)
153・・・連通孔(第3孔)
160・・・フィルム(被覆部材)
170・・・インク室(第1空間)
175・・・インク供給室(第2空間)
177・・・隔壁
179・・・隔壁
181・・・連通孔
182・・・連通孔(第2孔)
190・・・弁
200・・・インク供給バルブ(バルブ機構)
210・・・インク供給口(第1孔)
270・・・バイパス(液体流路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が注入される液体注入部と液体を外部へ導出する液体導出部とが設けられた液体容器に液体を充填する液体充填方法であって、
上記液体注入部に注入された液体を、上記液体容器内の第1空間から隔離された第1流路を通じて上記液体導出部に流入させ、上記液体導出部を液体で満たした後に、上記第1空間と上記液体導出部との間に形成された第2流路を通じて上記液体導出部内の液体を上記第1空間に流入させる液体充填方法。
【請求項2】
上記液体導出部は、
上記液体容器の所定の壁面に設けられ、液体を上記本体の外部へ導出する第1孔と、
上記第1孔を含む壁面との間で上記第1空間から隔離された第2空間を区画する区画壁と、
上記区画壁に設けられ、上記第1空間と上記第2空間とを連通する第2孔とを有し、
上記第1流路は、上記液体注入部から上記第2空間まで連結されており、上記第1流路を通じて上記液体注入部から上記第2空間に液体を流入させる請求項1に記載の液体充填方法。
【請求項3】
上記第2空間から上記第1空間への液体の流通を制限する弁が上記第2孔に設けられ、
上記第1空間と連通する第3孔が上記液体注入部若しくは上記第1流路に設けられており、
上記第2空間が液体で満たされるまで上記第2孔及び上記第3孔を通じて第1空間に液体を注入し、
上記第2空間が液体で満たされたときに上記弁で上記第2空間から上記第1空間への液体の流通を制限し、上記第3孔のみを通じて上記第1空間に液体を注入する請求項2に記載の液体充填方法。
【請求項4】
上記第2孔の中心軸を鉛直方向に略一致させた状態で上記液体注入部に液体を注入する請求項2又は3に記載の液体充填方法。
【請求項5】
液体が収容される第1空間を有する本体と、
上記本体の所定の壁面に設けられ、液体を上記本体の外部へ導出する第1孔と、
上記第1孔を含む壁面との間で上記第1空間から隔離された第2空間を区画する区画壁と、
上記第2空間に収容され、上記第1孔を開閉する蓋体及び上記第1孔を閉じる方向へ上記蓋体を押し付ける弾性部材を有するバルブ機構と、
上記区画壁に設けられ、上記第1空間と上記第2空間とを連通する第2孔と、
上記第1空間から隔離された第3空間を有し、上記第1空間に液体を注入するための液体注入部と、
上記液体注入部に設けられ、上記第1空間と上記第3空間とを連通する第3孔と、
上記第3空間から上記第2空間に延設され、上記第1空間から隔離された第1流路と、 を具備する液体容器に適用される液体充填方法であって、
上記液体注入部に注入された液体を上記第3空間から上記第1流路を通じて上記第2空間に流入する第1工程と、
上記第2空間から上記第2孔を通じて上記第1空間に液体を流入する第2工程と、
上記第3空間から上記第3孔を通じて上記第1空間に液体を流入する第3工程とを備える液体充填方法。
【請求項6】
上記液体容器は、互いに対向する第1側面及び第2側面の少なくともいずれか一方が開口されたフレームと、上記開口を覆う被覆部材とを有し、
上記フレームに形成された溝と上記被覆部材とにより形成された上記第1流路を通じて上記液体注入部から上記液体導出部に液体を流入させる請求項1から5のいずれかに記載の液体充填方法。
【請求項7】
上記第1空間に所定容積の空気層を形成する水位まで該第1空間に液体を流入させる請求項1から6のいずれかに記載の液体充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−230006(P2008−230006A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−71952(P2007−71952)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】