説明

液体充填装置

【課題】開口部を備えた球形の筐体内に効率的に液体を充填できると共に、省スペース化の要請にも合致する液体充填装置を提供する。
【解決手段】開口部56の形成された球状容器48に液体を充填する装置であって、球状容器48の直径よりも大きな径を備え、垂直に立設された管状部材12と、この管状部材12に形成された容器導入口20と、管状部材12の下方に設けられた液体噴出口16と、容器導入口20から管状部材12内に導かれ、液体噴出口16から噴射された液体の圧力を受けて管状部材12内を上昇した球状容器48を受け止める第1の球受け部30を備えた液体充填装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は液体充填装置に係り、特に、開口部を備えた球形の容器に効率的に水等の液体を充填する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水は生物の生存にとって必要不可欠であることはもちろん、農業や工業といった産業上の利用価値も極めて高い物質であるが、現在、地球的規模で水資源の偏在化が問題となっている。すなわち、水害によって大きな被害が発生する地域がある一方、大規模な干ばつによって農作物の生育に深刻な影響が及んでいる地域もある。また、同一地域内であっても、季節によって降水量にバラツキが大きい場合には、水害と水不足を繰り返すこととなる。地球温暖化やエルニーニョ現象等に起因する異常気象の影響で、水資源の偏在性は今後ますます深刻化していくことが予想される。
【0003】
このような水資源の偏在現象は、本来、水資源の豊富な(あるいは過剰な) 地域から欠乏している地域へタイムリーに移送したり、雨期における雨水を乾期まで保存しておくことができれば解消することである。
しかしながら、水には、(1)様々な物質が溶け込みやすい、(2)微生物等が繁殖しやすい、(3)流出や蒸発によって消失しやすい、といった特性があるため、品質や状態を維持したまま長距離を輸送したり長時間保管するには大きなコストが掛かることとなる。
もちろん、現在でも自国の豊富な水資源を重要な戦略物質と位置付け、水不足に悩む国や地域に積極的に輸出する動きがみられるが、このような高価な水を購入できるのは産油国等の一部の富裕国に限られ、先進国の援助に頼る発展途上国の住民が入手することは困難である。
また、現在行われている水の輸出は、大型タンカー等を利用して大きな水の塊として取り引きされているため、例え発展途上国に搬送されたとしても、個々の住民レベルまで行き渡らせるためには、上水道施設や給水車等を手配する必要があり、大きな資金が必要となる。
初めからペットボトルやポリタンク等に水を小分けして発展途上国に搬送すれば、通常の鉄道輸送やトラック輸送によって住民に届けることができるが、水を個々の容器に充填させる時点で大きな手間とコストが掛かることとなる。
さらに、内部の水を使用し終えた後には、大量の容器の処分問題が生じることとなり、不法投棄による環境破壊が懸念される。
【0004】
このような問題意識に立ち、本発明者は先に「水資源貯蔵器」を出願し(特願2001−195496)、その一部については既に特許が成立している。
【特許文献1】特許第3822069号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1に記載した水資源貯蔵器は、水源からの流水を取り込むための開口部を備えた球形の筺体と、該筺体内に滑動自在に収納された球形の錘玉と、上記開口部と反対側に設けられた浮き部材とを備え、上記筺体及び浮き部材は生分解性プラスチックよりなり、上記錘玉は、上記開口部が下方に位置する際には当該開口部に嵌合してこれを閉塞すると共に、上記開口部が上方に位置する際には浮き部材側に位置して当該開口部を開放し、上記浮き部材は、水に浮かべられた状態で上記筺体内に水が一定以上充填され、水流の圧力及び水充填に伴う浮力の低下によって筺体が一旦水中に沈降した際に、これを転回して再浮上させうる浮力を少なくとも備えたことを特徴としている。
【0006】
この水資源貯蔵器にあっては、水に浮かべた状態で開口部に向けて流水を上から導くだけで容易に水を筺体内に充填することができ、しかも充填完了後には流水の影響で沈降→ 転回→ 再浮上を果たし、その過程で開口部を錘玉によって自動的に封止することが可能となり、極めて効率的かつ低コストで液体を充填できる利点を備えている。
この結果、水が有り余っている時期・地域において水資源貯蔵器内に水を充填した上で保管・移送し、水の不足する時期・地域において利用することにより、水資源の偏在性を緩和することが可能となる。
【0007】
ただし、従来の水資源貯蔵器の場合には、予め多数の水資源貯蔵器を水に浮かべておくために、比較的広いスペースを要するという問題があった。
もちろん、天然の滝壺をそのまま利用する場合には問題ないが、例えば都市部において各ビル単位で雨水を充填するような場合には、スペースファクタを無視することはできない。
【0008】
この発明は上記の問題を打開するために案出されたものであり、小さな開口部を備えた球形の筐体内に効率的に液体を充填できると共に、省スペース化の要請にも合致する液体充填装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載した装置は、開口部の形成された球状容器に液体を充填する装置であって、上記球状容器の直径よりも大きな径を備えた管状部材と、この管状部材に形成された容器導入口と、この管状部材の下方に設けられた液体噴出口と、上記容器導入口から管状部材内に導かれ、上記液体噴出口から噴射された液体の圧力を受けて管状部材内を移動した球状容器を受け止める球受け部とを備えたことを特徴としている。上記「球受け部」としては、例えば上記管状部材の一方の端部を閉塞する天井部が該当する。あるいは、上記管状部の一方の端部側を、閉塞することなく単に「く」の字型に屈曲させ、その内壁面を「球受け部」として機能させることもできる。
【0010】
請求項2に記載した液体充填装置は、請求項1に記載の装置であって、さらに上記管状部材に形成された容器排出口と、上記管状部材内に回動可能に設けられた振分部材とを備えており、この振分部材が以下の(1)〜(4)の構成を備えたことを特徴としている。
(1)通常時には、上に乗せられた球状容器を上記容器排出口に案内できるように、傾斜部を有する。
(2)上記球状容器が上記管状部材内を上昇する際に、球状容器に下から押されて回動し、この球状容器が上記球受け部方向に移動することを許容する。
(3)球状容器が通過した後は、反対方向に回動して元の位置に復帰する。
(4)元の位置に復帰した際に、液体噴出口から噴射された液体の通過を許容するための圧液通過部を有する。
【0011】
請求項3に記載した液体充填装置は、請求項2に記載の装置であって、さらに上記容器導入口の開放/閉塞を実現する蓋部材と、上記容器導入口に向けて複数の球状容器を付勢する手段と、上記管状部材に設けられた液体排出口と、複数の貯水室を備えた水車と、上記液体排出口から管状部材の外部に導出された液体を上記水車の貯水室に導く導水路と、この水車の外周面に設けられた複数の当接片と、上記蓋部材に設けられた係合部とを備え、上記水車の少なくとも一つの貯水室に液体が所定量溜まった時点で上記水車が回転し、その当接片が上記蓋部材の係合部を上に押し上げる結果、蓋部材が上昇して容器導入口を開放し、蓋部材が一定量上昇した時点で当接片と係合部との係合が外れて蓋部材が降下し、容器導入口を閉塞することを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載した液体充填装置は、請求項2に記載の装置であって、さらに上記容器導入口の開放/閉塞を実現する蓋部材と、上記容器導入口に向けて複数の球状容器を付勢する手段と、この蓋部材の開放/閉塞を切り替える電動の駆動手段と、上記駆動手段の動作を制御する制御手段とを備え、この制御手段は、上記蓋部材を一定時間解放した後に閉塞する動作を必要回数繰り返すことを特徴としている。
【0013】
請求項5に記載した液体充填装置は、請求項2に記載の装置であって、さらに上記容器導入口の開放/閉塞を実現する蓋部材と、上記容器導入口に向けて複数の球状容器を付勢する手段と、この蓋部材の開放/閉塞を切り替える電動の駆動手段と、上記管状部材の液体噴出口に対する液体の供給の開始/停止を切り替える電磁バルブと、上記駆動手段及び電磁バルブの動作を制御する制御手段とを備え、この制御手段は、以下の(1)〜(3)のタイミング制御を必要回数繰り返すことを特徴としている。
(1)上記蓋部材を一定時間解放後、閉塞する。
(2)上記電磁バルブを開にして液体の供給を開始する。
(3)所定時間経過後、上記電磁バルブを閉にして液体の供給を停止する。
【0014】
請求項6に記載した液体充填装置は、請求項1〜5に記載の装置であって、さらに上記球受け部が、ボールベアリングを備えていることを特徴としている。
【0015】
請求項7に記載した液体充填装置は、請求項1〜5に記載の装置であって、さらに上記球受け部が、水流溝を備えていることを特徴としている。
【0016】
請求項8に記載した液体充填装置は、請求項1〜5に記載の装置であって、さらに上記球受け部が、湾曲面状に形成された管状部材の天井部であることを特徴としている。
【0017】
請求項9に記載した液体充填装置は、請求項8に記載の装置であって、さらに上記湾曲面状に形成された天井部の少なくとも一部に、円柱状の突起部が複数形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載した液体充填装置の場合、管状部材内に装填された球状容器に対して下方から液体を噴射し、その圧力によって管状部材内を上昇した球状容器を球受け部で受け止め、球状容器の開口部から内部に液体を圧入させる方式であるため、特許文献1の従来例に比べて狭い設置スペースでも効率的に液体を球状容器内に充填できる利点を備えている。
【0019】
請求項2に記載した液体充填装置の場合、充填の完了した球状容器を振分部材によって容器排出口に導くことが可能となり、多数の球状容器に対して効率的に液体を充填可能となる。
【0020】
請求項3〜5に記載した液体充填装置によれば、多数の球状容器に対する液体の充填を自動化することが可能となる。
【0021】
請求項6〜9に記載した液体充填装置によれば、球受け部における球状容器の回転を促進することができ、その開口部を液体噴出口側に効率的に向かせることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、この発明に係る液体充填装置10の全体構成を示す縦断面図であり、図2は横断面図である。
この液体充填装置10は、垂直に立設された管状部材12と、この管状部材12の下端開口部に水密に接続された底板部14と、この底板部14の中央に設けられた液体噴出口16と、この液体噴出口16から離れた位置に設けられた4つの液体排出口18と、管状部材12の底板部14側に設けられた容器導入口20と、この容器導入口20の外側に上下動自在に設けられた蓋部材22と、管状部材12の中間付近に設けられた容器排出口24と、容器排出口24の下端部近傍に設けられた振分部材26と、管状部材12の上端を閉塞する天井部28と、この天井部28に設けられた第1の球受け部30と、管状部材12の下部内面に設けられた一対の当接板32とを備えている。
【0023】
上記振分部材26は、例えば断面円形のステンレス製の棒や針金を複数回直角に折り曲げることによって形成されており、図2に示すように、コ字型のフレーム部34と、フレーム部34の両端に形成された回転軸部36とを備えている。
この振分部材26のフレーム部34に外側から力を加えて内側方向にやや変形させた状態で、各回転軸部36を容器排出口24の下辺における左右両端に形成された軸受部38に内側から挿入することにより、振分部材26は管状部材12の内部に回動自在に係合される。
【0024】
ただし、管状部材12の内壁面には一対のストッパ片40が突設されており、それぞれが振分部材26のフレーム部34に下側から当接しているため、振分部材26は上方向にのみ回動可能となされ、下方向に対する回動は規制されている。
この振分部材26は、平時にはこのストッパ片40に当接する結果、容器排出口24側が低くなり、その反対側が高くなるように傾斜している。
また、フレーム部34に囲まれた領域全体が圧液通過部を構成するため、液体噴出口16から噴射された液体の上昇が振分部材26によって阻害されることはない。
【0025】
上記第1の球受け部30は、円柱状のベース部42と、その下面に埋設された複数のボールベアリング44よりなる。
【0026】
容器導入口20の外側には、容器案内用のスロープ46が設けられており、複数の球状容器48が整列配置されている。
スロープ46上の各球状容器48は、引力によって容器導入口20側に付勢されているが、蓋部材22が容器導入口20を閉塞しているため、管状部材12の内部に進入できない。
【0027】
容器排出口24の外側にも、容器案内用のスロープ50が設けられている。
液体噴出口16の外側には、液体供給管52が連通接続されている。
また、液体排出口18の外側には、液体排出管54が連通接続されている。
【0028】
液体を充填させる球状容器48は、例えば生分解性プラスチックより構成されており、少なくとも一つの開口部56が形成されている。
開口部56の大きさに特に限定はないが、球状容器48全体がピンポン球程度の大きさとした場合に、直径5mm程度の円形開口部56を設けることが望ましい。
【0029】
つぎに、図3〜図6に従い、この液体充填装置10の基本動作について説明する。
まず、図3に示すように、蓋部材22を上方向に開いて容器導入口20を開放すると、各球状容器48がスロープ46を転がり落ち、先頭の球状容器48が管状部材12の内部に進入する。
この際、球状容器48が当接板32に接触するため、管状部材12の中心部に配置される。
また、次の球状容器48の一部も管状部材12内に入るが、再び蓋部材22が下方向に閉められると、次の球状容器48は管状部材12の外側に追いやられる。
【0030】
この状態で、図4に示すように、液体噴出口16から液体(例えば水)を所定の圧力で噴射させると、球状容器48は水圧に押されて管状部材12の内部を上昇する。
この途中で球状容器48は振分部材26に下方向から衝突するが、これを上に跳ね上げ天井部28に向かって上昇する。
球状容器48が通過した後は、図5に示すように、振分部材26は自重によって元の位置に復帰する。
【0031】
一方、球状容器48は下から圧水を受けると共に、上には第1の球受け部30のボールベアリング44が接触しているため、当初はクルクルと回転しているが、その中に開口部56が圧水の直撃を受ける位置にくると、圧水が開口部56から容器内部に充填される。この際、球状容器48は回転を停止する。
また、球状容器48内に充填され損なった液体は、管状部材12の底板部14に形成された液体排出口18及び液体排出管54を介して外部に排出される。
【0032】
つぎに、球状容器48内に十分な量の液体が充填されるタイミングを見計らって圧水の供給を停止すると、図6に示すように、球状容器48は自重で振分部材26の上に落下する。
上記の通り、振分部材26はストッパ片40によって上方向にのみ回動し、下方向には回動しないように規制されているため、球状容器48は振分部材26の上を転がって容器排出口24から管状部材12の外部に排出される。
そして、スロープ50によって所定の格納場所(図示省略)に案内される。
【0033】
上記のようにして、最初の球状容器48に対する液体の充填工程が完了した時点で、次の球状容器48に対する図3〜図6の充填工程が繰り返され、必要な数の球状容器48に対する液体の充填が実行される。
【0034】
十分な量の水が充填された球状容器48は、開口部56を閉塞しなくても容易に内部の水が漏れ出ることはないが、長距離の移送や長期間の保存を前提とする場合には、防水性の粘着シール等、適当な蓋で開口部を閉塞することが望ましい。
【0035】
上記においては、球状容器48を容器導入口20側に付勢する手段としてスロープ46を設けた例を示したが、他の付勢手段を用いることも可能である。
例えば、図示は省略したが、コイルバネを仕込んだマガジン内に複数の球状容器48を装填しておき、このコイルバネの圧縮力によって球状容器48を容器導入口20側に付勢することが該当する。
【0036】
また、振分部材26を上記のようにステンレス棒や針金を折り曲げることによって形成する代わりに、プラスチック等よりなる板状部材によって構成することもできる。
ただし、板状部材には液体噴出口16から噴射された圧水の通過を阻害しないように、比較的大きな貫通孔(圧液通過部)を設けておく必要がある。
この場合も、板状部材に設けられた一対の係合軸を軸受部38に挿入することにより、管状部材12の内部に回動自在に係合される。
【0037】
上記の通り、この液体充填装置10にあっては、液体の噴出/停止のタイミングと、蓋部材22の開閉のタイミングを制御することにより、複数の球状容器48に対して連続的に液体の供給を行うことが可能となる。
【0038】
このタイミング制御は人間が行っても勿論よいが、自動制御することもできる。
図7はその一例として、制御部60と、直動ソレノイド62と、電磁弁64と、電動ポンプ66とを備えたタイミング制御システム68を示している。
制御部60は、マイクロコンピュータと、メモリと、タイマと、ドライバ回路とを備えており、メモリ内には予め1個の球状容器48内に十分な量の液体を充填するのに要する平均的な時間が設定されている。
電磁弁64と電動ポンプ66は、液体貯蔵タンク70と管状部材12とを結ぶ液体供給管52の途中に介装されている。
また、直動ソレノイド62の駆動軸は、蓋部材22に接続されている。
【0039】
以下、図8のフローチャートに従い、タイミング制御の手順について説明する。
まず、図示しないメインスイッチがONされると(S10)、制御部60の指令を受けて直動ソレノイド62が作動し、蓋部材22を一旦開かせる(S12)。そして、所定の時間経過した時点で、制御部60の指令を受けて直動ソレノイド62が逆方向に作動し、蓋部材22が閉じられる(S14)。
つぎに、制御部60の指令を受けて電動ポンプ66がONすると同時に電磁弁64が開き(S16、S18)、液体貯蔵タンク70内の液体が管状部材12の液体噴出口16に供給される。
予め設定された時間が経過した時点で(S20/Y)、制御部60の指令を受けて電磁弁64が閉じると同時に電動ポンプ66がOFFし(S22、S24)、管状部材12への液体の供給が停止される。
以後、S12〜S24の工程を必要回数繰り返すことにより(S26)、多数の球状容器48に対する液体の充填を自動的に実行することが可能となる。
【0040】
上記においては、液体噴出口16からの液体の噴射を一旦停止した後、蓋部材22を開放して次の球状容器48を管状部材12内に導入する例を説明したが、液体の噴射を継続したまま次の球状容器48を管状部材12内に導入することもできる。
この場合、次の球状容器48が管状部材12内に導入されると、液体噴出口16からの圧水供給が邪魔され、管状部材12の上部に浮上している前の球状容器48への水圧が弱まることとなる。しかも、この時点で前の球状容器48には十分な量の液体が充填されているため、その重量によってすぐに振分部材26上に落下し、管状部材12の外部に排出される。
【0041】
上記のような制御システム68を設ける代わりに、液体排出口18から外部に取り出された液体が一定量に達した時点で、その重量を利用して蓋部材22の開閉を機械的に制御するように構成してもよい。
図9はその一例を示す模式図であり、蓋部材22に接続された駆動ロッド72と、この駆動ロッド72が挿通されたガイド管73と、駆動ロッド72の上端に接続された係合部74と、軸75を中心に回転自在に配置された水車76と、この水車76の外周面に放射状に突設された複数の当接片77とを備えている。
上記水車76の内部には、仕切板78によって区切られた6つの貯水室79が設けられており、液体排出管54から落下した液体が、右上の貯水室79に徐々に溜まるように仕組まれている。
【0042】
この貯水室79に液体が所定量溜まると、その重さによって水車76が右方向に60度回転し、当接片77の一つが係合部74と接触して蓋部材22を上方向に引き上げる。
そして、蓋部材22が所定量引き上げられた時点で、係合部74と当接片77とが外れる結果、蓋部材22は自重によって元の位置に落下し、容器導入口20を閉塞する。
また、水車76の回転に伴って貯水室79がαの位置からβの位置まで移動すると、内部に溜められた液体は外部に排出される。
【0043】
以上の動作を繰り返すことにより、一切の動力を用いることなく、また複雑な制御システムを用いることなく、球状容器48を順番に管状部材12内に導入することが可能となる。
なお、図示は省略したが、水車76の軸75に公知のラチェット機構等よりなる逆転防止手段を設けることにより、水車が60度単位で右方向にのみ回転するように規制することが望ましい。
【0044】
この液体充填装置10の場合、噴射された液体の圧力を受けて球状容器48が管状部材12の天井部28まで上昇した際に、球状容器48の開口部56が液体噴出口16とは反対側を向いたまま天井部28に貼り付いてしまうと液体の充填が進まなくなる。
このため、上記のようにボールベアリング44を備えた第1の球受け部30を管状部材12の天井部28中央に設けることにより、球状容器48がスムーズに回転して開口部56が圧液の直撃を受け得る位置に素早く移動する仕組みを設けている。
【0045】
図10は、第2の球受け部82を示しており、円柱状の本体部84の下面86に十字状の水流溝88を形成したものである。
この場合、球状容器48の外周を伝わって上昇した液体が、水流溝88を通過する際に乱流を形成し、球状容器48を回転させるきっかけとなる。
【0046】
図11は、管状部材12の天井部28の形状を半球状に形成することにより、天井部28自体を第3の球受け部89としてとして利用する例を示している。
この第3の球受け部89の内面における右半分の領域には、多数の円筒状突起90が形成されている。この結果、半球状の内面に沿って水流が円筒状突起90にぶつかるとカルマン渦による乱流が発生し、球状容器48の回転を促進することが可能となる。
なお、球状容器48の開口部56が円筒状突起90に引っ掛かることを防止するため、円筒状突起90の直径を開口部56の直径よりも大きく設定することが望ましい。
【0047】
上記の球状容器48は、開口部56が形成されている点を除き、完全な球形に近い形状を備えていたが、管状部材12内における回転が阻害されない程度の変形であれば許容できる。
同様に、管状部材12内における回転が阻害されない限りにおいて、球状容器48の表面に突部を形成してもよい。この突部の形状や大きさ、形成位置を慎重に選定することにより、水流の攪乱要因となり、却って管状部材12内における球状容器48の回転を促進させることが可能となる。
【0048】
この液体充填装置10を各ビルの屋上に設置しておき、屋上の貯水槽に溜まった雨水をソフトボール大の球状容器48に次々と充填した後、屋上等に設けた花壇や菜園の水遣り等に利用することができる。
あるいは、雨水を充填した球状容器48をそのまま屋上やベランダに敷き詰めることにより、気化熱を利用した自然空調を実現でき、大都市部におけるヒートアイランド現象を緩和することも期待できる。
もちろん、ビルの屋上以外の場所、例えば海辺や川辺に液体充填装置10を設置し、海水や川の水を無数の球状容器48に充填した後、これを都市部に運搬してビルの屋上等に敷き詰めることにより、ヒートアイランド現象を抑制することも可能である。
【0049】
この発明は、水資源の偏在性を緩和することが出発点であったため、上記にあっては水を球状容器48に充填することを前提に説明を展開したが、球状容器48への充填対象は必ずしも水に限定されるものではなく、他の液体の充填に液体充填装置10を応用することも当然に可能である。
また、球状容器48を生分解性プラスチック以外の素材によって構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】この発明に係る液体充填装置の全体構成を示す縦断面図である。
【図2】液体充填装置の全体構成を示す横断面図である。
【図3】液体充填装置の動作を示す縦断面図である。
【図4】液体充填装置の動作を示す縦断面図である。
【図5】液体充填装置の動作を示す縦断面図である。
【図6】液体充填装置の動作を示す縦断面図である。
【図7】液体充填装置に係るタイミング制御システムを示す概念図である。
【図8】液体充填装置に係るタイミング制御の手順を示すフローチャートである。
【図9】蓋部材の自動開閉機構を示す模式図である。
【図10】球受け部の変形例を示す拡大斜視図である。
【図11】球受け部の他の変形例を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0051】
10 液体充填装置
12 管状部材
14 底板部
16 液体噴出口
18 液体排出口
20 容器導入口
22 蓋部材
24 容器排出口
26 振分部材
28 天井部
30 第1の球受け部
32 当接板
34 フレーム部
36 回転軸部
38 軸受部
40 ストッパ片
42 ベース部
44 ボールベアリング
46 スロープ
48 球状容器
50 スロープ
52 液体供給管
54 液体排出管
56 開口部
60 制御部
62 直動ソレノイド
64 電磁弁
66 電動ポンプ
68 タイミング制御システム
70 液体貯蔵タンク
72 駆動ロッド
73 ガイド管
74 係合部
75 軸
76 水車
77 当接片
78 仕切板
79 貯水室
82 第2の球受け部
84 本体部
86 下面
88 水流溝
89 第3の球受け部
90 円筒状突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部の形成された球状容器に液体を充填する装置であって、
上記球状容器の直径よりも大きな径を備えた管状部材と、
この管状部材に形成された容器導入口と、
この管状部材の下方に設けられた液体噴出口と、
上記容器導入口から管状部材内に導かれ、上記液体噴出口から噴射された液体の圧力を受けて管状部材内を移動した球状容器を受け止める球受け部と、
を備えたことを特徴とする液体充填装置。
【請求項2】
上記管状部材に形成された容器排出口と、
上記管状部材内に回動可能に設けられた振分部材とを備えており、
この振分部材は、以下の(1)〜(4)の構成を備えたことを特徴とする請求項1に記載の液体充填装置。
(1)通常時には、上に乗せられた球状容器を上記容器排出口に案内できるように、傾斜部を有する。
(2)上記球状容器が上記管状部材内を上昇する際に、球状容器に下から押されて回動し、この球状容器が上記球受け部方向に移動することを許容する。
(3)球状容器が通過した後は、反対方向に回動して元の位置に復帰する。
(4)元の位置に復帰した際に、液体噴出口から噴射された液体の通過を許容するための圧液通過部を有する。
【請求項3】
上記容器導入口の開放/閉塞を実現する蓋部材と、
上記容器導入口に向けて複数の球状容器を付勢する手段と、
上記管状部材に設けられた液体排出口と、
複数の貯水室を備えた水車と、
上記液体排出口から管状部材の外部に導出された液体を上記水車の貯水室に導く導水路と、
この水車の外周面に設けられた複数の当接片と、
上記蓋部材に設けられた係合部とを備え、
上記水車の少なくとも一つの貯水室に液体が所定量溜まった時点で上記水車が回転し、その当接片が上記蓋部材の係合部を上に押し上げる結果、蓋部材が上昇して容器導入口を開放し、
蓋部材が一定量上昇した時点で当接片と係合部との係合が外れて蓋部材が降下し、容器導入口を閉塞することを特徴とする請求項2に記載の液体充填装置。
【請求項4】
上記容器導入口の開放/閉塞を実現する蓋部材と、
上記容器導入口に向けて複数の球状容器を付勢する手段と、
この蓋部材の開放/閉塞を切り替える電動の駆動手段と、
上記駆動手段の動作を制御する制御手段とを備え、
この制御手段は、上記蓋部材を一定時間解放した後に閉塞する動作を必要回数繰り返すことを特徴とする請求項2に記載の液体充填装置。
【請求項5】
上記容器導入口の開放/閉塞を実現する蓋部材と、
上記容器導入口に向けて複数の球状容器を付勢する手段と、
この蓋部材の開放/閉塞を切り替える電動の駆動手段と、
上記管状部材の液体噴出口に対する液体の供給の開始/停止を切り替える電磁バルブと、
上記駆動手段及び電磁バルブの動作を制御する制御手段とを備え、
この制御手段は、以下の(1)〜(3)のタイミング制御を必要回数繰り返すことを特徴とする請求項2に記載の液体充填装置。
(1)上記蓋部材を一定時間解放後、閉塞する。
(2)上記電磁バルブを開にして液体の供給を開始する。
(3)所定時間経過後、上記電磁バルブを閉にして液体の供給を停止する。
【請求項6】
上記球受け部が、ボールベアリングを備えていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の液体充填装置。
【請求項7】
上記球受け部が、水流溝を備えていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の液体充填装置。
【請求項8】
上記球受け部が、湾曲面状に形成された管状部材の天井部であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の液体充填装置。
【請求項9】
上記湾曲面状に形成された天井部の少なくとも一部に、円柱状の突起部が複数形成されていることを特徴とする請求項8に記載の液体充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−255941(P2009−255941A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106224(P2008−106224)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(599063309)
【出願人】(599063310)
【Fターム(参考)】