液体内で固体、液体又は気体物質を分散させるデバイス
本発明は、少なくとも1つの液体入口40と、少なくとも1つの物質入口30と、少なくとも1つの出口35とを有する少なくとも1つの分散チャンバ10を備える、液体内で物質を分散させるデバイスに関する。少なくとも1つの駆動手段12は、分散チャンバ内に設置され、一方、分散チャンバ内の液体が、運動状態になるようにさせ、それによって、変動する容積を有する少なくとも1つのキャビティ50〜56が、液体内に形成されて、物質が、物質入口を通して吸込まれ、液体で浸潤された物質が、出口を通して放出されるようにするのに役立つ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体内で物質を分散させるデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプのデバイスは、液体内で物質を微粒状に分布させることによって、分散物を形成するのに役立つ。物質は、固相、液相、又は気相として、或いは、異なる相の混合としても存在することができる。混合プロセス中に物質を湿潤させ、均質に分布させることは、問題となることが多い。物質が粉末である場合、環境内で好ましくないことに形成される未湿潤粉末を含む粉末状物のリスクも存在する。
【0003】
物質の微粒状分布を達成するために、液体と物質を分散チャンバに供給し、分散ツールが、液体と物質に集中的に作用することが知られている(たとえば、同一出願人による、特許明細書EP−B1−436 462及びEP−B1−648 537又は特許明細書EP−B1−587 714を参照されたい)。しかし、物質を液体で湿潤させることは、問題となり、分散物の好ましくない不均質性をもたらす可能性があることが示された。たとえば、粉末状物質が供給される場合、混合ゾーン、すなわち、物質が液体と接触するゾーン内で、塊が形成される可能性があり、これらの塊は、物質供給ラインを詰まらせるか、又は、液体内での物質の均質な分布を妨げる。知られている分散デバイスは、吸込み能力が、出口における液体スループットと圧力に依存するという欠点も有しており、結果として、吸込み能力が、低過ぎて、分散するべき十分な量の物質を、吸込み、湿潤させることができない場合がある。
【0004】
気体と液体の分散物を生成するデバイスは、特許明細書US−A−3,119,339及びUS−A−3,932,302から知られている。これらのデバイスは、ピニオンとかみ合う内部歯及び三日月形状のインサートを有する偏心して配置されたギア・ホイールを備える。このタイプのデバイスは、とりわけ、粉末状物質の分散に適さないという欠点を有する。粉末状物質が、実際上圧縮できないため、内部歯とピニオンとのかみ合いは、大きな力を生成するため、デバイスが、損傷を受けることになる、たとえば、歯又はピニオン或いはおそらく軸受けの壁が損傷を受けることになる。スループット、したがって、単位時間当たりの生産可能な分散物容積が、比較的低いことも欠点である。
【0005】
可変作用容量を生成する、半径方向に変位可能な翼を有するデバイスは、特許明細書US−A−3,936,246及びUS−B1−6,616,325から知られている。この特許は、分散されるべき物質の蓄積を引き起こす可能性がある狭い隙間が形成されるという欠点を有する。特に、物質が粉末である場合、この蓄積は、ガイド内での翼のジャミング、最終的には、デバイスの故障をもたらす可能性がある。
【0006】
乳濁液の生成のために、管内で回転する円筒を有するデバイスは、特許出願US−A1−2002/0089074から知られている。デバイスは、とりわけ、これらの物質を導入するために、複雑な設計の圧送手段を設けなければならないために、粉末物質の分散にあまり適さないという欠点を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
こうした従来技術で始めたが、本発明の目的は、単純化され、かつ、改良された方法で、物質が、吸込まれ、できる限り均質に液体内で分布させることを可能にするデバイスを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するデバイスは、請求項1に述べられる。好ましい開発は、残りの請求項に述べられる。
【0009】
本発明は、好ましい実施例を使用し、図面を参照して、以下で述べられるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1及び図2を見てわかるように、分散デバイスは、好ましくは、横方向に円筒壁11で境界を付けられた分散チャンバ10を備える。分散チャンバ10は、液体が、それによって運動状態にさせられることができる駆動手段12を含む。駆動手段は、好ましくは、インペラ12として形成される。インペラ12は、回転軸16を中心に回転可能であり、複数の翼14が、その上に取り付けられるハブ13を備える。インペラ12は、回転軸16が、分散チャンバ10の中心18に隣接して存在するように、分散チャンバ10内で偏心して配置される。この配置構成のため、翼14のベース15と分散チャンバ10の壁11との間の距離が、インペラ12の回転中に、最小値と最大値との間で周期的に変わる。地点16と18を通過する軸は、実質的に、中性領域に延び、吸込み効果も分散チャンバ10内で生成されず、圧送効果も顕著でない。
【0011】
インペラ12は、駆動装置(図示せず)によって回転状態にされることができる軸19に固定される。図1に示す実施例では、軸19は、垂直に配置される。分散デバイスを、異なる位置に、たとえば、軸19が水平に配置されるように設置することも可能である。
【0012】
分散チャンバ10は、物質を分散チャンバ10内に導入する物質入口30を含むカバー29と、生成物を分散チャンバ10から放出する出口35とを有する上部に設けられる。物質入口30及び出口35は、それぞれ、送りライン31及び36に接続される。先に述べたように、軸19が水平に配置される場合、物質入口30を出口35より高いところに配設することが有利である。
【0013】
図2を見てわかるように、物質入口30及び出口35は、物質入口30の縁32と33との距離が回転方向17に増加し、出口35の縁37と38との距離が回転方向17に減少するように、実質的に鎌形状である。物質入口30の内縁32と出口35の内縁37は、インペラ12の回転軸16上にその中心が存在する、ほぼ円上に存在する。出口35の外縁38は、分散チャンバ10の壁と実質的に同心に位置する(locate)円39上に存在する。物質入口30の外縁33は、同様に、実質的に円のように形成され、また、円39内に存在するように配置される。動作中、この配置構成は、分散チャンバ10から物質入口30内へ液体が侵入するリスク、及び、供給される物質が塊を形成するリスクをなくす。
【0014】
物質入口30につながる送りライン31が、円筒形を有する場合、送りライン31から物質入口30の鎌形への遷移部は、必要である場合、乱流が大きくても、分散チャンバ10から物質入口30内に、液体が噴射することができないように、最適化されることができる。この目的のために、遷移部は、断面の急な変化はないが、たとえば、流れ方向に見ると、物質入口の中央部が、その2つの端部より高いところに存在するような、ランプの形態である。
【0015】
図1も示すように、分散チャンバ10の底部は、分散チャンバ10内に液体を導入する液体入口40を有する円盤41を含む。図2を見てわかるように、液体入口40は、実質的に、物質入口30と出口35との間に配置され、回転方向17で見ると、物質入口30は、液体入口40の上流に配置され、液体入口40は、出口35の上流に配置される。図2に示す例では、液体入口40は、実質的に円形を有する。より明確にするために、図1では、液体入口40の位置は、図2に示す位置に対して90°回転して示される。
【0016】
円盤41は、好ましくは、液体入口40の位置が、地点16と18を通過する中性軸に対して可変であるように回転可能に配置される。分散デバイスはまた、液体入口40を通して分散チャンバ10内に液体を運ぶ圧送手段61を備える。
【0017】
ここまで説明した分散デバイスは、以下の通りに機能する。
【0018】
インペラ12は、図2に示す方向17で、回転状態にされ、液体は、圧送手段61によって、液体入口40を通して分散チャンバ10内に圧送される。液体はまた、回転するインペラ12によって回転状態になり、遠心力によって外側に押しやられ、その結果、液体は、ハブ13から持ち上がり、分散チャンバ10の壁11と実質的に同心である回転液体リング47を形成する。図2では、回転する液体リング47と液体減少内部領域との間の遷移部は、一点鎖線39で示される。以下で説明するように、内部領域内に位置する液体が、圧送効果によって出口35を通して運ばれるため、この遷移部39の位置、したがって、液体リング47の厚さは、実質的に、出口35の外縁38の位置によって決まる。
【0019】
隣接翼14のベース15と液体リング47との間に、それぞれのキャビティ50〜57が形成され、その容積は、インペラ12の回転によって、周期的に増減し、それにより、圧送効果が発生する。たとえば、図2で参照数字50を与えられるキャビティが、開始地点と考えられ、まず第1に、キャビティが、キャビティ51の位置の方に移動すると、キャビティ容積が増加する。この容積増加は、圧力の減少を生じ、圧力の減少は、物質入口30を通して分散チャンバ10内に物質が吸込まれ、最後に、液体で浸潤され、液体と混合する効果を有する。発生した吸込み効果によって、物質は、物質入口30内に依然として存在する間に、液体とは接触せず、塊を形成することによって物質入口30を詰まらせないことが確実になる。
【0020】
キャビティ50は、その後、図2で参照数字52及び53で指定されるキャビティの領域を通過し、そこでは、キャビティの容積は、ほとんど変化せず、その結果、吸込み効果も、圧送効果も発生しない。液体入口40は、この中性ゾーンに配置される。キャビティ50は、その後、キャビティ54の位置の方に移動し、その結果、キャビティの容積が、再び減少し、キャビティ内に含まれる液体と物質からなる生成物は、出口35を通して放出される。キャビティ50は、その後、キャビティ55と56の領域内の圧力側と吸込み側との間のさらなる中性ゾーンを通過する。
【0021】
分散チャンバ10は、流れの状況が、通常、乱流であり、液体内での物質の微粒状の分布が助長されるように設計される。
【0022】
物質と液体の混合比は、円盤41を回転させることによって調整することができる。そのため、液体入口40の位置は、単位時間当たりに分散チャンバ10内に流れる液体量が、相応して調節されるように、圧力側の方により大幅に、又は、吸込み側の方により大幅に変位する。
【0023】
駆動手段12の回転によって、分散チャンバ10内の物質は、集中的に湿潤される。その結果、特に、粉末状物質の場合、塊を形成するリスクが事実上なくなる。このリスクは、分散チャンバ10を、狭いアパーチャ又は他の狭い隙間が無いように設計することができることによっても、効果的に回避される。特に、翼14は、半径方向に変位可能に配置される必要があるのではなく、ハブ13に固定して接続されることができる。さらに、動作中に、高い吸込み能力と同時に高い負圧が生成され、これは、実質的に、液体スループットによらず、また、ある程度まで、出口35の圧力にもよらない。こうして、特に、粉末状物質の場合、液体内への粉末状物の無い取込みが確保される。発生する吸込み能力は、重い粉末、たとえば、金属含有粉末が吸込まれることができるほどに十分に高いことが示された。
【0024】
生成されるキャビティは、とりわけ、液体自体によって境界付けされる液体減少領域である(図2の一点鎖線39を参照)。したがって、可変作用容積を生成するために、ギア・ホイールがピニオンとかみ合う、知られている分散デバイスにおいて生じる問題などの密閉問題又は潤滑問題は起こらない。
【0025】
本明細書で述べた分散デバイスの吸込み及び圧送効果は、水環ポンプと同じ方法で生成される。しかし、これらのポンプと違って、本明細書で使用される分散デバイスは、最適な方法で、液体内において、物質を吸込み、物質を湿潤させ、物質を分散させる機能を有する。この目的のために、分散デバイスは、リング内の液体が、動作中に常に置き換わるような、液体入口40を有する。対照的に、水環ポンプは、作動チャンバ内に永久的に残る作用流体として水を含む。
【0026】
分散デバイスの第1の開発形態では、出口35は、液体入口40に流体接続される。これは、液体が、分散チャンバ10を通して繰り返し流されることを可能にする。この再循環によって、たとえば、液体内での物質の濃度の徐々の増加を実現すること、及び/又は、液体内での物質の、特に均質な分布を得ることが可能である。後者の場合、物質入口30は、有利には、たとえば、弁によって閉じ、分散物は、分散チャンバ10を通して繰り返し流される。
【0027】
図1にも示される分散デバイスの第2の開発形態では、第2分散チャンバ60が設けられる。第2分散チャンバ60は、液体入口40を介して第1分散チャンバ10に流体接続され、図1に示すように、第1分散チャンバ10の下に位置する。第2分散チャンバ60内には、少なくとも1つの分散ツール61が配置され、圧送手段の役をし、また、液体内で特に微粒子状に物質を分布させる作用手段の役をする。
【0028】
分散ツール61は、回転子62と固定子63を備え、回転子62は、有利には、インペラ12と同じ軸19に取り付けられる。これは、インペラ12及び分散ツール61を運動させるのに同じ駆動装置を使用することを可能にする。
【0029】
図3は、回転子62を形成する2つの歯付きリング62a及び62b、並びに、固定子63を形成する2つの歯付きリング63a及び63bを有する分散ツール61の例を示す。歯付きリング62a、62b、63a、63bは、スロット64を有し、スロット64内に含まれる液体と物質は、スロット64を通過することができる。歯付きリング62a、62b、63a、63bの数及び構成は、意図される用途に応じて選択される。分散ツール61の内部領域は、供給チャンバ70に流体接続された通路69を装備する。図1に示すように、この供給チャンバ70は、分散ツール61の下に位置し、入口71を備える。分散物が、再循環される場合、第1分散チャンバ10の出口35は、入口71に接続される。
【0030】
分散デバイスが動作状態にされると、液体は、最初に、分散ツール61によって、供給チャンバ70から吸出され、液体入口40を介して、第1分散チャンバ10内に圧送され、第1分散チャンバ10内で、先に述べたように、液体リングが形成される。物質は、物質入口30を通して吸込まれ、液体内で分散される。得られる分散物は、出口35及び入口71を介して、元の供給チャンバ70内に戻される。スロット64を通過することによって、スロット64内に含まれる液体と物質は、回転子62と固定子63によって相応して作用を受けて、改善され、かつ、均質化された物質の分布が生成される。液体は、所望の物質濃度に達するまで、かつ/又は、十分に均質な分散物が得られるまで、第1分散チャンバ10と第2分散チャンバ60との間で繰り返し循環する。
【0031】
2つの分散チャンバ10及び60を設けることは、物質を液体で湿潤させるプロセスと分散ツール61によって作用を受けるプロセスが、別個のチャンバ内で実施され、したがって、2つのプロセスが、互いに影響を及ぼさないという利点を有する。こうして、粉末状物質の場合に、塊形成の問題及び/又は好ましくない粉末状物の形成の問題が無い状態で、特に均質な分散物を生成することができる。
【0032】
図4は、分散デバイスの第3の開発形態を概略形態で示す。参照数字80を持つ長方形は、第1分散チャンバ10と、駆動手段12と、(設けられている場合)第2分散チャンバ60と、分散ツール61とを備える分散ユニットを概略的に示す。それに応じて、参照数字81は、第2分散チャンバ60が設けられない場合、液体入口40を示し、又は、第2分散チャンバ60が設けられる場合、入口71を示す。分散されるべき物質を保持する供給コンテナ83は、ライン84によって物質入口30に接続される。気体及び/又は非分散物質を分離するのに役立つ、コンテナ86は、分散ユニット80の出口35を入口81に接続する再循環ライン85内に配置される。分離された気体又は分離された物質をフィードバックするために、分離コンテナ86を供給コンテナ83に接続する戻りライン87は、図4の破線で示すように、任意選択で設けることができる。入口81に接続される供給ライン88は、液体を供給するのに役立つ。再循環ライン85に結合する放出ライン89は、液体と物質から生成された分散物を放出するのに役立つ。それぞれの通路を開閉することができるように弁90、91、及び92を有するライン84、88、及び89は、知られている方法で設けられる。
【0033】
分散ツール61が設けられる場合、できる限り少量の空気が、作用を受ける液体に含まれるように、対策がとられなければならない。空気の割合が大き過ぎると、歯付きリング内のスロット64を通して、もはや液体が運ばれなくなる可能性があり、その結果、動作が中断される。物質に加えて、出口35を出る液体が、周囲空気も含む場合、周囲空気が、分離コンテナ86内で分離され、分散ツール61の信頼性のある動作が確保されることができる。
【0034】
環境とのガス交換を防止するように、分散デバイスを閉じた系として形成することも可能である。この場合、供給コンテナ83及び分離コンテナ86は、閉じた構成を有する。
【0035】
閉じた系の使用は、たとえば、分散されるべき物質が、非常に微細な粉末であるときに、有利であり、環境内での好ましくない粉末付着が回避される。粉末が、分散するのが難しい、かつ/又は、非常に微細である場合、分離コンテナ86内の空気は、やはり、非分散粉末を含む場合がある。これは、戻りライン87を介して供給コンテナにフィードバックされることができる。
【0036】
閉じた系の使用はまた、粉末状物質の分散が、粉末状物の爆発的増加(explosion)のリスクを伴うときに有利である。この場合、分散デバイス内、特に、供給コンテナ83及び分離コンテナ86内の空気は、不活性ガス、たとえば、窒素で置き換えられる。動作中、不活性ガスは、分離コンテナ86内で分離され、戻りライン87を介して供給コンテナ83にフィードバックされる。
【0037】
図5は、バッチ動作用の分散デバイスの変形を示す。図4及び図5では、同じ部品は、同じ参照数字が与えられる。参照数字82を持つ長方形は、液体が、その中で保持されるコンテナを概略的に示す。気体及び/又は非分散物質の分離が必要でない場合、分離コンテナ86を、省略することができる。
【0038】
液体内に物質を取込むために、コンテナは、ライン88’を介して入口81に、ライン89’及び85’を介して出口35に接続される。液体は、所望の物質濃度及び均質性に達するまで、供給コンテナ83からの物質が添加される分散ユニット80を通して、また、コンテナ82を通して繰り返し流される。最後に、こうして生成した分散物は、コンテナ82内に収集され、コンテナ82は、分散ユニット80から分離される。こうして、分散物の所定のバッチが、単純な方法で生成されることができる。
【0039】
意図される用途によっては、分散ユニット80を通る液体又は分散物の再循環が、絶対に必要であるわけではない。分散ユニット80は、たとえば、液体が入口81を通して分散ユニット80内に絶えず送られ、物質が入口30を通して分散ユニット80内に絶えず送られ、液体と物質が混合され、得られる分散物が、出口35を介してさらなる処理のために供給される、処理ライン内に配置されることができる。
【0040】
図6は、分散デバイスのさらなる実施例を示し、実施例は、液体入口40’’及び出口35’’が置き換えられた点で、また、圧送効果が、出口35’’から71’’まで生成可能であるように、分散ツール61’が配置される点で、図1に示す実施例と本質的に異なる。
【0041】
液体入口40’’は、カバー29内に配設され、中性ゾーン又は圧力側に、すなわち、図2に示す地点16及び18を通して延びる中性軸の領域又は中性軸の左に位置する。液体入口40’’又は、分散チャンバ10内で横方向に開くように、分散チャンバ10の壁11内に配置されることもできる。
【0042】
出口35’’は、第1分散チャンバ10とチャンバ70’との間に位置する内部開口である。出口35’’の形状と半径方向位置は、第1の実施例の出口35について図2で示したように選択される。
【0043】
動作中、液体は、液体入口40’’を通して分散チャンバ10内に流され、分散チャンバ10内で、物質が、物質入口30を通して吸込まれ、液体内に分散されるように、液体リング及びキャビティが形成される。分散物は、出口35’’及びチャンバ70’を介して第2分散チャンバ60’内に圧送され、第2分散チャンバ60’内で、分散物は、分散ツール61によって作用を受け、最後に、出口71’を介して放出される。したがって、分散物が、単一パスで生成可能であるように、第1分散チャンバ10内での湿潤後に、第2分散チャンバ60’内での微粒子状分散が起こる。
【0044】
しかし、好都合である場合、図7に示すように、再循環を設けることもできる。液体が、液体入口40’’を通過して分散チャンバ10内に入ることを可能にするために、たとえば、フィード・ポンプの形態の、又は、圧力差を生成するために異なる液体水位を設けることによる、圧送手段94が必要である。参照数字80’は、第1分散チャンバ10と、駆動手段12と、(設けられている場合)第2分散チャンバ60’と、分散ツール61’とを備える分散ユニットを概略的に示す。参照数字95は、第2分散チャンバ60’が設けられない場合、出口35’’を示し、又は、第2分散チャンバ60’が設けられる場合、出口71’を示す。他の参照数字は、図4による図と同じ意味を有する。
【0045】
分散物が、単一パスで生成される場合、図8による油圧図に示す配置構成で十分である。
【0046】
本発明による分散デバイスは、液体内で物質を分散させるためのいろいろな方法で使用されることができる。物質は、固相、液相、又は気相として、或いは、異なる相の混合としても存在することができる。本発明による分散デバイスは、自由に流れる固体物質、たとえば、粉末、染料、充填剤、食品産業からの物質、及び/又は、不溶性物質、一般に、たとえば、金属粉末などの湿潤性に乏しい粉末の分散に特に適する。
【0047】
先の説明から始めたが、特許請求項に規定される本発明の範囲から逸脱することなく、多くの変更が当業者に利用可能である。たとえば、以下の変更又は範囲拡張が可能である。
【0048】
−インペラの構成は、分散チャンバ内で生成される流量に適合する。図9及び図10は、翼93が、回転軸に対して斜めに配置されるインペラ12’の変形を示す。この配置構成は、分散チャンバ10内において特に乱れた流れを生成することを可能にし、それにより、液体内での物質の混合に有利である。
−開口30、35、及び40の形状は、まさに図2に示す通りである必要はない。図11は、物質入口30’及び出口35’が鎌形状であり、それぞれの前縁34、44が実質的に真っ直ぐである、変形を示す。液体入口40’は、実質的に四角形である。
−圧力増加ゾーン又は圧力減少ゾーン或いは中性ゾーンに適した方法で配置される、複数の物質入口30、30’、出口35、35’、35’’、及び/又は、液体入口40、40’、40’’を設けることも可能である。
−インペラ12、12’の偏心配置構成の代わりに、壁11を楕円形に形成すること、及び、インペラ12、12’を中央に配置することも可能である。分散チャンバ10のこの構成は、吸込み効果も圧送効果も生成されない4つの中性ゾーン、及び、圧力増加と圧力減少の2つのゾーンを生ずる。
−分散チャンバ10の壁11は、でこぼこにされる、かつ/又は、窪み及び/又は突出要素の形態の付加的な障害物を装備することができる。こうして、乱流が、壁11の付近で生成されることができ、それにより、液体リング47内での液体交換に都合がよい。液体リング47の外側領域内での濃度の増加が回避されるため、これは重い物質の場合に特に有利である。
−要求によれば、適した方法で、分散ツール内に含まれた液体と物質に作用することができるために、1つの分散ツール61、61’の代わりに、複数の分散ツールを使用することが必要である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明によるデバイスの部分側断面図である。
【図2】断面II−IIにおける図1によるデバイスを示す図である。
【図3】断面III−IIIにおける図1によるデバイスを示す図である。
【図4】本発明によるデバイスの油圧図を示す図である。
【図5】本発明によるデバイスの油圧図の別の変形を示す図である。
【図6】本発明によるデバイスのさらなる実施例の部分側断面図である。
【図7】図6によるデバイスの油圧図を示す図である。
【図8】図6によるデバイスの油圧図の別の変形を示す図である。
【図9】本発明によるデバイスのための駆動手段のさらなる実施例の側面図である。
【図10】図9による駆動手段の斜視図である。
【図11】断面II−IIにおける、図1によるデバイス内の開口30’、35’、及び40’の別の変形を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体内で物質を分散させるデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプのデバイスは、液体内で物質を微粒状に分布させることによって、分散物を形成するのに役立つ。物質は、固相、液相、又は気相として、或いは、異なる相の混合としても存在することができる。混合プロセス中に物質を湿潤させ、均質に分布させることは、問題となることが多い。物質が粉末である場合、環境内で好ましくないことに形成される未湿潤粉末を含む粉末状物のリスクも存在する。
【0003】
物質の微粒状分布を達成するために、液体と物質を分散チャンバに供給し、分散ツールが、液体と物質に集中的に作用することが知られている(たとえば、同一出願人による、特許明細書EP−B1−436 462及びEP−B1−648 537又は特許明細書EP−B1−587 714を参照されたい)。しかし、物質を液体で湿潤させることは、問題となり、分散物の好ましくない不均質性をもたらす可能性があることが示された。たとえば、粉末状物質が供給される場合、混合ゾーン、すなわち、物質が液体と接触するゾーン内で、塊が形成される可能性があり、これらの塊は、物質供給ラインを詰まらせるか、又は、液体内での物質の均質な分布を妨げる。知られている分散デバイスは、吸込み能力が、出口における液体スループットと圧力に依存するという欠点も有しており、結果として、吸込み能力が、低過ぎて、分散するべき十分な量の物質を、吸込み、湿潤させることができない場合がある。
【0004】
気体と液体の分散物を生成するデバイスは、特許明細書US−A−3,119,339及びUS−A−3,932,302から知られている。これらのデバイスは、ピニオンとかみ合う内部歯及び三日月形状のインサートを有する偏心して配置されたギア・ホイールを備える。このタイプのデバイスは、とりわけ、粉末状物質の分散に適さないという欠点を有する。粉末状物質が、実際上圧縮できないため、内部歯とピニオンとのかみ合いは、大きな力を生成するため、デバイスが、損傷を受けることになる、たとえば、歯又はピニオン或いはおそらく軸受けの壁が損傷を受けることになる。スループット、したがって、単位時間当たりの生産可能な分散物容積が、比較的低いことも欠点である。
【0005】
可変作用容量を生成する、半径方向に変位可能な翼を有するデバイスは、特許明細書US−A−3,936,246及びUS−B1−6,616,325から知られている。この特許は、分散されるべき物質の蓄積を引き起こす可能性がある狭い隙間が形成されるという欠点を有する。特に、物質が粉末である場合、この蓄積は、ガイド内での翼のジャミング、最終的には、デバイスの故障をもたらす可能性がある。
【0006】
乳濁液の生成のために、管内で回転する円筒を有するデバイスは、特許出願US−A1−2002/0089074から知られている。デバイスは、とりわけ、これらの物質を導入するために、複雑な設計の圧送手段を設けなければならないために、粉末物質の分散にあまり適さないという欠点を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
こうした従来技術で始めたが、本発明の目的は、単純化され、かつ、改良された方法で、物質が、吸込まれ、できる限り均質に液体内で分布させることを可能にするデバイスを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するデバイスは、請求項1に述べられる。好ましい開発は、残りの請求項に述べられる。
【0009】
本発明は、好ましい実施例を使用し、図面を参照して、以下で述べられるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1及び図2を見てわかるように、分散デバイスは、好ましくは、横方向に円筒壁11で境界を付けられた分散チャンバ10を備える。分散チャンバ10は、液体が、それによって運動状態にさせられることができる駆動手段12を含む。駆動手段は、好ましくは、インペラ12として形成される。インペラ12は、回転軸16を中心に回転可能であり、複数の翼14が、その上に取り付けられるハブ13を備える。インペラ12は、回転軸16が、分散チャンバ10の中心18に隣接して存在するように、分散チャンバ10内で偏心して配置される。この配置構成のため、翼14のベース15と分散チャンバ10の壁11との間の距離が、インペラ12の回転中に、最小値と最大値との間で周期的に変わる。地点16と18を通過する軸は、実質的に、中性領域に延び、吸込み効果も分散チャンバ10内で生成されず、圧送効果も顕著でない。
【0011】
インペラ12は、駆動装置(図示せず)によって回転状態にされることができる軸19に固定される。図1に示す実施例では、軸19は、垂直に配置される。分散デバイスを、異なる位置に、たとえば、軸19が水平に配置されるように設置することも可能である。
【0012】
分散チャンバ10は、物質を分散チャンバ10内に導入する物質入口30を含むカバー29と、生成物を分散チャンバ10から放出する出口35とを有する上部に設けられる。物質入口30及び出口35は、それぞれ、送りライン31及び36に接続される。先に述べたように、軸19が水平に配置される場合、物質入口30を出口35より高いところに配設することが有利である。
【0013】
図2を見てわかるように、物質入口30及び出口35は、物質入口30の縁32と33との距離が回転方向17に増加し、出口35の縁37と38との距離が回転方向17に減少するように、実質的に鎌形状である。物質入口30の内縁32と出口35の内縁37は、インペラ12の回転軸16上にその中心が存在する、ほぼ円上に存在する。出口35の外縁38は、分散チャンバ10の壁と実質的に同心に位置する(locate)円39上に存在する。物質入口30の外縁33は、同様に、実質的に円のように形成され、また、円39内に存在するように配置される。動作中、この配置構成は、分散チャンバ10から物質入口30内へ液体が侵入するリスク、及び、供給される物質が塊を形成するリスクをなくす。
【0014】
物質入口30につながる送りライン31が、円筒形を有する場合、送りライン31から物質入口30の鎌形への遷移部は、必要である場合、乱流が大きくても、分散チャンバ10から物質入口30内に、液体が噴射することができないように、最適化されることができる。この目的のために、遷移部は、断面の急な変化はないが、たとえば、流れ方向に見ると、物質入口の中央部が、その2つの端部より高いところに存在するような、ランプの形態である。
【0015】
図1も示すように、分散チャンバ10の底部は、分散チャンバ10内に液体を導入する液体入口40を有する円盤41を含む。図2を見てわかるように、液体入口40は、実質的に、物質入口30と出口35との間に配置され、回転方向17で見ると、物質入口30は、液体入口40の上流に配置され、液体入口40は、出口35の上流に配置される。図2に示す例では、液体入口40は、実質的に円形を有する。より明確にするために、図1では、液体入口40の位置は、図2に示す位置に対して90°回転して示される。
【0016】
円盤41は、好ましくは、液体入口40の位置が、地点16と18を通過する中性軸に対して可変であるように回転可能に配置される。分散デバイスはまた、液体入口40を通して分散チャンバ10内に液体を運ぶ圧送手段61を備える。
【0017】
ここまで説明した分散デバイスは、以下の通りに機能する。
【0018】
インペラ12は、図2に示す方向17で、回転状態にされ、液体は、圧送手段61によって、液体入口40を通して分散チャンバ10内に圧送される。液体はまた、回転するインペラ12によって回転状態になり、遠心力によって外側に押しやられ、その結果、液体は、ハブ13から持ち上がり、分散チャンバ10の壁11と実質的に同心である回転液体リング47を形成する。図2では、回転する液体リング47と液体減少内部領域との間の遷移部は、一点鎖線39で示される。以下で説明するように、内部領域内に位置する液体が、圧送効果によって出口35を通して運ばれるため、この遷移部39の位置、したがって、液体リング47の厚さは、実質的に、出口35の外縁38の位置によって決まる。
【0019】
隣接翼14のベース15と液体リング47との間に、それぞれのキャビティ50〜57が形成され、その容積は、インペラ12の回転によって、周期的に増減し、それにより、圧送効果が発生する。たとえば、図2で参照数字50を与えられるキャビティが、開始地点と考えられ、まず第1に、キャビティが、キャビティ51の位置の方に移動すると、キャビティ容積が増加する。この容積増加は、圧力の減少を生じ、圧力の減少は、物質入口30を通して分散チャンバ10内に物質が吸込まれ、最後に、液体で浸潤され、液体と混合する効果を有する。発生した吸込み効果によって、物質は、物質入口30内に依然として存在する間に、液体とは接触せず、塊を形成することによって物質入口30を詰まらせないことが確実になる。
【0020】
キャビティ50は、その後、図2で参照数字52及び53で指定されるキャビティの領域を通過し、そこでは、キャビティの容積は、ほとんど変化せず、その結果、吸込み効果も、圧送効果も発生しない。液体入口40は、この中性ゾーンに配置される。キャビティ50は、その後、キャビティ54の位置の方に移動し、その結果、キャビティの容積が、再び減少し、キャビティ内に含まれる液体と物質からなる生成物は、出口35を通して放出される。キャビティ50は、その後、キャビティ55と56の領域内の圧力側と吸込み側との間のさらなる中性ゾーンを通過する。
【0021】
分散チャンバ10は、流れの状況が、通常、乱流であり、液体内での物質の微粒状の分布が助長されるように設計される。
【0022】
物質と液体の混合比は、円盤41を回転させることによって調整することができる。そのため、液体入口40の位置は、単位時間当たりに分散チャンバ10内に流れる液体量が、相応して調節されるように、圧力側の方により大幅に、又は、吸込み側の方により大幅に変位する。
【0023】
駆動手段12の回転によって、分散チャンバ10内の物質は、集中的に湿潤される。その結果、特に、粉末状物質の場合、塊を形成するリスクが事実上なくなる。このリスクは、分散チャンバ10を、狭いアパーチャ又は他の狭い隙間が無いように設計することができることによっても、効果的に回避される。特に、翼14は、半径方向に変位可能に配置される必要があるのではなく、ハブ13に固定して接続されることができる。さらに、動作中に、高い吸込み能力と同時に高い負圧が生成され、これは、実質的に、液体スループットによらず、また、ある程度まで、出口35の圧力にもよらない。こうして、特に、粉末状物質の場合、液体内への粉末状物の無い取込みが確保される。発生する吸込み能力は、重い粉末、たとえば、金属含有粉末が吸込まれることができるほどに十分に高いことが示された。
【0024】
生成されるキャビティは、とりわけ、液体自体によって境界付けされる液体減少領域である(図2の一点鎖線39を参照)。したがって、可変作用容積を生成するために、ギア・ホイールがピニオンとかみ合う、知られている分散デバイスにおいて生じる問題などの密閉問題又は潤滑問題は起こらない。
【0025】
本明細書で述べた分散デバイスの吸込み及び圧送効果は、水環ポンプと同じ方法で生成される。しかし、これらのポンプと違って、本明細書で使用される分散デバイスは、最適な方法で、液体内において、物質を吸込み、物質を湿潤させ、物質を分散させる機能を有する。この目的のために、分散デバイスは、リング内の液体が、動作中に常に置き換わるような、液体入口40を有する。対照的に、水環ポンプは、作動チャンバ内に永久的に残る作用流体として水を含む。
【0026】
分散デバイスの第1の開発形態では、出口35は、液体入口40に流体接続される。これは、液体が、分散チャンバ10を通して繰り返し流されることを可能にする。この再循環によって、たとえば、液体内での物質の濃度の徐々の増加を実現すること、及び/又は、液体内での物質の、特に均質な分布を得ることが可能である。後者の場合、物質入口30は、有利には、たとえば、弁によって閉じ、分散物は、分散チャンバ10を通して繰り返し流される。
【0027】
図1にも示される分散デバイスの第2の開発形態では、第2分散チャンバ60が設けられる。第2分散チャンバ60は、液体入口40を介して第1分散チャンバ10に流体接続され、図1に示すように、第1分散チャンバ10の下に位置する。第2分散チャンバ60内には、少なくとも1つの分散ツール61が配置され、圧送手段の役をし、また、液体内で特に微粒子状に物質を分布させる作用手段の役をする。
【0028】
分散ツール61は、回転子62と固定子63を備え、回転子62は、有利には、インペラ12と同じ軸19に取り付けられる。これは、インペラ12及び分散ツール61を運動させるのに同じ駆動装置を使用することを可能にする。
【0029】
図3は、回転子62を形成する2つの歯付きリング62a及び62b、並びに、固定子63を形成する2つの歯付きリング63a及び63bを有する分散ツール61の例を示す。歯付きリング62a、62b、63a、63bは、スロット64を有し、スロット64内に含まれる液体と物質は、スロット64を通過することができる。歯付きリング62a、62b、63a、63bの数及び構成は、意図される用途に応じて選択される。分散ツール61の内部領域は、供給チャンバ70に流体接続された通路69を装備する。図1に示すように、この供給チャンバ70は、分散ツール61の下に位置し、入口71を備える。分散物が、再循環される場合、第1分散チャンバ10の出口35は、入口71に接続される。
【0030】
分散デバイスが動作状態にされると、液体は、最初に、分散ツール61によって、供給チャンバ70から吸出され、液体入口40を介して、第1分散チャンバ10内に圧送され、第1分散チャンバ10内で、先に述べたように、液体リングが形成される。物質は、物質入口30を通して吸込まれ、液体内で分散される。得られる分散物は、出口35及び入口71を介して、元の供給チャンバ70内に戻される。スロット64を通過することによって、スロット64内に含まれる液体と物質は、回転子62と固定子63によって相応して作用を受けて、改善され、かつ、均質化された物質の分布が生成される。液体は、所望の物質濃度に達するまで、かつ/又は、十分に均質な分散物が得られるまで、第1分散チャンバ10と第2分散チャンバ60との間で繰り返し循環する。
【0031】
2つの分散チャンバ10及び60を設けることは、物質を液体で湿潤させるプロセスと分散ツール61によって作用を受けるプロセスが、別個のチャンバ内で実施され、したがって、2つのプロセスが、互いに影響を及ぼさないという利点を有する。こうして、粉末状物質の場合に、塊形成の問題及び/又は好ましくない粉末状物の形成の問題が無い状態で、特に均質な分散物を生成することができる。
【0032】
図4は、分散デバイスの第3の開発形態を概略形態で示す。参照数字80を持つ長方形は、第1分散チャンバ10と、駆動手段12と、(設けられている場合)第2分散チャンバ60と、分散ツール61とを備える分散ユニットを概略的に示す。それに応じて、参照数字81は、第2分散チャンバ60が設けられない場合、液体入口40を示し、又は、第2分散チャンバ60が設けられる場合、入口71を示す。分散されるべき物質を保持する供給コンテナ83は、ライン84によって物質入口30に接続される。気体及び/又は非分散物質を分離するのに役立つ、コンテナ86は、分散ユニット80の出口35を入口81に接続する再循環ライン85内に配置される。分離された気体又は分離された物質をフィードバックするために、分離コンテナ86を供給コンテナ83に接続する戻りライン87は、図4の破線で示すように、任意選択で設けることができる。入口81に接続される供給ライン88は、液体を供給するのに役立つ。再循環ライン85に結合する放出ライン89は、液体と物質から生成された分散物を放出するのに役立つ。それぞれの通路を開閉することができるように弁90、91、及び92を有するライン84、88、及び89は、知られている方法で設けられる。
【0033】
分散ツール61が設けられる場合、できる限り少量の空気が、作用を受ける液体に含まれるように、対策がとられなければならない。空気の割合が大き過ぎると、歯付きリング内のスロット64を通して、もはや液体が運ばれなくなる可能性があり、その結果、動作が中断される。物質に加えて、出口35を出る液体が、周囲空気も含む場合、周囲空気が、分離コンテナ86内で分離され、分散ツール61の信頼性のある動作が確保されることができる。
【0034】
環境とのガス交換を防止するように、分散デバイスを閉じた系として形成することも可能である。この場合、供給コンテナ83及び分離コンテナ86は、閉じた構成を有する。
【0035】
閉じた系の使用は、たとえば、分散されるべき物質が、非常に微細な粉末であるときに、有利であり、環境内での好ましくない粉末付着が回避される。粉末が、分散するのが難しい、かつ/又は、非常に微細である場合、分離コンテナ86内の空気は、やはり、非分散粉末を含む場合がある。これは、戻りライン87を介して供給コンテナにフィードバックされることができる。
【0036】
閉じた系の使用はまた、粉末状物質の分散が、粉末状物の爆発的増加(explosion)のリスクを伴うときに有利である。この場合、分散デバイス内、特に、供給コンテナ83及び分離コンテナ86内の空気は、不活性ガス、たとえば、窒素で置き換えられる。動作中、不活性ガスは、分離コンテナ86内で分離され、戻りライン87を介して供給コンテナ83にフィードバックされる。
【0037】
図5は、バッチ動作用の分散デバイスの変形を示す。図4及び図5では、同じ部品は、同じ参照数字が与えられる。参照数字82を持つ長方形は、液体が、その中で保持されるコンテナを概略的に示す。気体及び/又は非分散物質の分離が必要でない場合、分離コンテナ86を、省略することができる。
【0038】
液体内に物質を取込むために、コンテナは、ライン88’を介して入口81に、ライン89’及び85’を介して出口35に接続される。液体は、所望の物質濃度及び均質性に達するまで、供給コンテナ83からの物質が添加される分散ユニット80を通して、また、コンテナ82を通して繰り返し流される。最後に、こうして生成した分散物は、コンテナ82内に収集され、コンテナ82は、分散ユニット80から分離される。こうして、分散物の所定のバッチが、単純な方法で生成されることができる。
【0039】
意図される用途によっては、分散ユニット80を通る液体又は分散物の再循環が、絶対に必要であるわけではない。分散ユニット80は、たとえば、液体が入口81を通して分散ユニット80内に絶えず送られ、物質が入口30を通して分散ユニット80内に絶えず送られ、液体と物質が混合され、得られる分散物が、出口35を介してさらなる処理のために供給される、処理ライン内に配置されることができる。
【0040】
図6は、分散デバイスのさらなる実施例を示し、実施例は、液体入口40’’及び出口35’’が置き換えられた点で、また、圧送効果が、出口35’’から71’’まで生成可能であるように、分散ツール61’が配置される点で、図1に示す実施例と本質的に異なる。
【0041】
液体入口40’’は、カバー29内に配設され、中性ゾーン又は圧力側に、すなわち、図2に示す地点16及び18を通して延びる中性軸の領域又は中性軸の左に位置する。液体入口40’’又は、分散チャンバ10内で横方向に開くように、分散チャンバ10の壁11内に配置されることもできる。
【0042】
出口35’’は、第1分散チャンバ10とチャンバ70’との間に位置する内部開口である。出口35’’の形状と半径方向位置は、第1の実施例の出口35について図2で示したように選択される。
【0043】
動作中、液体は、液体入口40’’を通して分散チャンバ10内に流され、分散チャンバ10内で、物質が、物質入口30を通して吸込まれ、液体内に分散されるように、液体リング及びキャビティが形成される。分散物は、出口35’’及びチャンバ70’を介して第2分散チャンバ60’内に圧送され、第2分散チャンバ60’内で、分散物は、分散ツール61によって作用を受け、最後に、出口71’を介して放出される。したがって、分散物が、単一パスで生成可能であるように、第1分散チャンバ10内での湿潤後に、第2分散チャンバ60’内での微粒子状分散が起こる。
【0044】
しかし、好都合である場合、図7に示すように、再循環を設けることもできる。液体が、液体入口40’’を通過して分散チャンバ10内に入ることを可能にするために、たとえば、フィード・ポンプの形態の、又は、圧力差を生成するために異なる液体水位を設けることによる、圧送手段94が必要である。参照数字80’は、第1分散チャンバ10と、駆動手段12と、(設けられている場合)第2分散チャンバ60’と、分散ツール61’とを備える分散ユニットを概略的に示す。参照数字95は、第2分散チャンバ60’が設けられない場合、出口35’’を示し、又は、第2分散チャンバ60’が設けられる場合、出口71’を示す。他の参照数字は、図4による図と同じ意味を有する。
【0045】
分散物が、単一パスで生成される場合、図8による油圧図に示す配置構成で十分である。
【0046】
本発明による分散デバイスは、液体内で物質を分散させるためのいろいろな方法で使用されることができる。物質は、固相、液相、又は気相として、或いは、異なる相の混合としても存在することができる。本発明による分散デバイスは、自由に流れる固体物質、たとえば、粉末、染料、充填剤、食品産業からの物質、及び/又は、不溶性物質、一般に、たとえば、金属粉末などの湿潤性に乏しい粉末の分散に特に適する。
【0047】
先の説明から始めたが、特許請求項に規定される本発明の範囲から逸脱することなく、多くの変更が当業者に利用可能である。たとえば、以下の変更又は範囲拡張が可能である。
【0048】
−インペラの構成は、分散チャンバ内で生成される流量に適合する。図9及び図10は、翼93が、回転軸に対して斜めに配置されるインペラ12’の変形を示す。この配置構成は、分散チャンバ10内において特に乱れた流れを生成することを可能にし、それにより、液体内での物質の混合に有利である。
−開口30、35、及び40の形状は、まさに図2に示す通りである必要はない。図11は、物質入口30’及び出口35’が鎌形状であり、それぞれの前縁34、44が実質的に真っ直ぐである、変形を示す。液体入口40’は、実質的に四角形である。
−圧力増加ゾーン又は圧力減少ゾーン或いは中性ゾーンに適した方法で配置される、複数の物質入口30、30’、出口35、35’、35’’、及び/又は、液体入口40、40’、40’’を設けることも可能である。
−インペラ12、12’の偏心配置構成の代わりに、壁11を楕円形に形成すること、及び、インペラ12、12’を中央に配置することも可能である。分散チャンバ10のこの構成は、吸込み効果も圧送効果も生成されない4つの中性ゾーン、及び、圧力増加と圧力減少の2つのゾーンを生ずる。
−分散チャンバ10の壁11は、でこぼこにされる、かつ/又は、窪み及び/又は突出要素の形態の付加的な障害物を装備することができる。こうして、乱流が、壁11の付近で生成されることができ、それにより、液体リング47内での液体交換に都合がよい。液体リング47の外側領域内での濃度の増加が回避されるため、これは重い物質の場合に特に有利である。
−要求によれば、適した方法で、分散ツール内に含まれた液体と物質に作用することができるために、1つの分散ツール61、61’の代わりに、複数の分散ツールを使用することが必要である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明によるデバイスの部分側断面図である。
【図2】断面II−IIにおける図1によるデバイスを示す図である。
【図3】断面III−IIIにおける図1によるデバイスを示す図である。
【図4】本発明によるデバイスの油圧図を示す図である。
【図5】本発明によるデバイスの油圧図の別の変形を示す図である。
【図6】本発明によるデバイスのさらなる実施例の部分側断面図である。
【図7】図6によるデバイスの油圧図を示す図である。
【図8】図6によるデバイスの油圧図の別の変形を示す図である。
【図9】本発明によるデバイスのための駆動手段のさらなる実施例の側面図である。
【図10】図9による駆動手段の斜視図である。
【図11】断面II−IIにおける、図1によるデバイス内の開口30’、35’、及び40’の別の変形を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの液体入口(40,40’,40’’)と、
少なくとも1つの物質入口(30,30’)と、
少なくとも1つの出口(35,35’,35’’)とを有する少なくとも1つの分散チャンバ(10)を用いて、液体内で物質を分散させるデバイスであって、
前記分散チャンバ内に、少なくとも1つの駆動手段(12)が配置され、前記駆動手段(12)によって、前記分散チャンバ内の液体が、運動状態になることができ、それによって、変動する容積の少なくとも1つのキャビティ(50〜56)が、前記液体内に形成されて、物質が、前記物質入口を通して吸込まれ、液体で浸潤された前記物質が、前記出口を通して放出されるようにすることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記液体入口(40,40’,40’’)又は前記出口(35,35’,35’’)又は両方に流体接続され、かつ、少なくとも1つの分散ツール(61,61’)を備える第2分散チャンバ(60,60’)を備えることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記分散ツール(61,61’)は、回転子(62)及び固定子(63)を備えることを特徴とする請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記分散ツール(61,61’)及び前記駆動手段(12)は、同じ軸(19)上に配置されることを特徴とする請求項2又は3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記駆動手段は、回転可能インペラ(12,12’)を備え、前記インペラ(12,12’)は、回転中に、変動するそれぞれの容積の複数のキャビティ(50〜56)が中に形成される前記分散チャンバ(10)内で、前記液体がリングの形態で溜まるように構築されることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記インペラ(12,12’)は、前記分散チャンバ(10)内に偏心して配置されることを特徴とする請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記インペラ(12’)は、前記インペラの回転軸に対して斜めに配置された翼(93)を備えることを特徴とする請求項5又は6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記出口(35,35’,35’’)又は前記物質入口(30,30’)又は両方は、実質的に鎌形状であることを特徴とする請求項1から7までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
液体を、前記液体入口(40,40’,40’’)を通して前記分散チャンバ(10)内に圧送する圧送手段(61,94)を備えることを特徴とする請求項1から8までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記出口(35,35’,35’’)は、気体及び/又は物質を分離するためのコンテナ(86)に接続されることを特徴とする請求項1から9までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記液体入口(40,40’)の位置は、物質と液体の混合比を調整するために、可変に配置されることを特徴とする請求項1から10までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記出口(35,35’,35’’)は、実質的に円(39)上に存在する外縁(38)を備え、前記物質入口(30,30’)は、前記円内に配置されることを特徴とする請求項1から11までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項1】
少なくとも1つの液体入口(40,40’,40’’)と、
少なくとも1つの物質入口(30,30’)と、
少なくとも1つの出口(35,35’,35’’)とを有する少なくとも1つの分散チャンバ(10)を用いて、液体内で物質を分散させるデバイスであって、
前記分散チャンバ内に、少なくとも1つの駆動手段(12)が配置され、前記駆動手段(12)によって、前記分散チャンバ内の液体が、運動状態になることができ、それによって、変動する容積の少なくとも1つのキャビティ(50〜56)が、前記液体内に形成されて、物質が、前記物質入口を通して吸込まれ、液体で浸潤された前記物質が、前記出口を通して放出されるようにすることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記液体入口(40,40’,40’’)又は前記出口(35,35’,35’’)又は両方に流体接続され、かつ、少なくとも1つの分散ツール(61,61’)を備える第2分散チャンバ(60,60’)を備えることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記分散ツール(61,61’)は、回転子(62)及び固定子(63)を備えることを特徴とする請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記分散ツール(61,61’)及び前記駆動手段(12)は、同じ軸(19)上に配置されることを特徴とする請求項2又は3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記駆動手段は、回転可能インペラ(12,12’)を備え、前記インペラ(12,12’)は、回転中に、変動するそれぞれの容積の複数のキャビティ(50〜56)が中に形成される前記分散チャンバ(10)内で、前記液体がリングの形態で溜まるように構築されることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記インペラ(12,12’)は、前記分散チャンバ(10)内に偏心して配置されることを特徴とする請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記インペラ(12’)は、前記インペラの回転軸に対して斜めに配置された翼(93)を備えることを特徴とする請求項5又は6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記出口(35,35’,35’’)又は前記物質入口(30,30’)又は両方は、実質的に鎌形状であることを特徴とする請求項1から7までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
液体を、前記液体入口(40,40’,40’’)を通して前記分散チャンバ(10)内に圧送する圧送手段(61,94)を備えることを特徴とする請求項1から8までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記出口(35,35’,35’’)は、気体及び/又は物質を分離するためのコンテナ(86)に接続されることを特徴とする請求項1から9までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記液体入口(40,40’)の位置は、物質と液体の混合比を調整するために、可変に配置されることを特徴とする請求項1から10までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記出口(35,35’,35’’)は、実質的に円(39)上に存在する外縁(38)を備え、前記物質入口(30,30’)は、前記円内に配置されることを特徴とする請求項1から11までのいずれか一項に記載のデバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2008−525169(P2008−525169A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547132(P2007−547132)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【国際出願番号】PCT/CH2005/000579
【国際公開番号】WO2006/066421
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(591002577)キネマティカ アクチエンゲゼルシャフト (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【国際出願番号】PCT/CH2005/000579
【国際公開番号】WO2006/066421
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(591002577)キネマティカ アクチエンゲゼルシャフト (2)
【Fターム(参考)】
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