説明

液体処理設備におけるすすぎ手順の決定方法およびコンピュータプログラム

【課題】タンクおよびそれに接続された送液管網を含む液体処理設備におけるすすぎ効率の改善に有利な方法およびツールを提供する。
【解決手段】薬液でタンク10およびタンク10に接続された送液管網50を洗浄した後に水でタンク10および送液管網50をすすぐすすぎ手順において、前記タンク10に水を供給排出する単純タンクすすぎ工程、前記タンク10を含むタンク循環経路を水を循環させながらすすぐ循環タンクすすぎ工程、および、前記送液管網50の残液を押し出して水を循環させながらすすぐ送液管網すすぎ工程のいずれかをオペレータからの指示にしたがってコンピュータが選択する選択工程と、前記選択工程で選択されたすすぎ工程を実行すべき前記すすぎ手順における順番をオペレータからの指示に従って前記コンピュータが決定する順番決定工程と、を繰り返しながら前記すすぎ手順を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
タンクおよびそれに接続された送液管網を含む液体処理設備の洗浄に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール飲料やノンアルコール飲料等の飲料製品の製造において、種々のタンクが使用される。例えば、ビールや発泡酒の製造においては、仕込釜、仕込槽、濾過槽、煮沸釜、発酵タンク、熟成タンク等が使用されうる。これらのタンクは、処理等を終えた半製品(例えば、麦汁)又は完成品を送り出した後に洗浄される。
【0003】
タンクの洗浄工程は、残液の排出、水による予備すすぎ、アルカリ洗浄液(苛性ソーダ)によるアルカリ洗浄、水によるすすぎ、タンクに接続された送液管網のすすぎ等を含みうる。
【特許文献1】特開2002−356790号公報
【特許文献2】特開2007−167716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飲料製品の製造工場において、タンクの配置や大きさ並びにタンクに接続される送液管網の配置などは様々である。このような状況において、薬液(アルカリ洗浄液)でタンクおよび送液管網を洗浄した後に水でタンクおよび送液管網をすすぐためのすすぎ手順を一律に決定すると、すすぎの効率が悪いことが経験的に分かってきた。本発明者は、タンクの配置や大きさ並びにタンクに接続される送液管網の配置に応じて個々にすすぎ手順を決定することがすすぎの効率改善に有効であることを見出した。 本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、例えば、タンクおよびそれに接続された送液管網を含む液体処理設備におけるすすぎ効率の改善に有利な方法およびツール(コンピュータプログラム)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の側面は、タンクおよび前記タンクに接続された送液管網を含む液体処理設備において薬液で前記タンクおよび前記送液管網を洗浄した後に水で前記タンクおよび前記送液管網をすすぐためのすすぎ手順をコンピュータによって決定する決定方法に係り、前記決定方法は、前記タンクに水を供給するとともに前記タンクから水を排出させながら前記タンクをすすぐ単純タンクすすぎ工程、前記タンクを含むタンク循環経路を前記タンクのほか前記送液管網の一部で構成し前記タンク循環経路において水を循環させながら前記タンクをすすぐ循環タンクすすぎ工程、および、前記送液管網の残液を押し出してその後に前記タンクを通らない送液管網循環経路を前記送液管網で構成し前記送液管網循環経路において水を循環させながら前記送液管網をすすぐ送液管網すすぎ工程のいずれかをオペレータからの指示にしたがって前記コンピュータが選択する選択工程と、前記選択工程で選択されたすすぎ工程を実行すべき前記すすぎ手順における順番をオペレータからの指示に従って前記コンピュータが決定する順番決定工程と、を繰り返しながら前記すすぎ手順を決定する、ことを特徴とする。
【0006】
本発明の第2の側面は、複数のタンクおよび前記複数のタンクに接続された送液管網を含む液体処理設備において薬液で前記タンクおよび前記送液管網を洗浄した後に水で前記タンクおよび前記送液管網をすすぐためのすすぎ手順をコンピュータによって決定するためのコンピュータプログラムに係り、前記コンピュータプログラムは、前記コンピュータに、前記タンクに水を供給するとともに前記タンクから水を排出させながら前記タンクをすすぐ単純タンクすすぎ工程、前記タンクを含むタンク循環経路を前記タンクのほか前記送液管網の一部で構成し前記タンク循環経路において水を循環させながら前記タンクをすすぐ循環タンクすすぎ工程、および、前記送液管網の残液を押し出してその後に前記タンクを通らない送液管網循環経路を前記送液管網で構成し前記送液管網循環経路において水を循環させながら前記送液管網をすすぐ送液管網すすぎ工程のいずれかをオペレータからの指示にしたがって選択する選択工程と、前記選択工程で選択されたすすぎ工程を実行すべき前記すすぎ手順における順番をオペレータからの指示に従って決定する順番決定工程と、を繰り返し実行させながら前記すすぎ手順を決定させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、例えば、複数のタンクおよび前記複数のタンクに接続された送液管網を含む液体処理設備におけるすすぎの効率の改善に有利な方法およびツールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。
【0009】
図1は、液体処理設備を概略的に示す図である。液体処理設備1は、複数のタンク10、20、30および該複数のタンク10、20、30に接続された送液管網50を含む。液体処理設備1は、例えば、アルコール飲料やノンアルコール飲料等の飲料製品を製造するために使用されうる。例えば、ビールや発泡酒の製造設備においては、タンク10、20、30の例としては、仕込釜、仕込槽、濾過槽、煮沸釜、発酵タンク、熟成タンク等を挙げることができる。
【0010】
タンク10、20、30は、処理等を終えた半製品(例えば、麦汁)又は完成品を排出した後に洗浄される。タンク10、20、30の洗浄工程は、例えば、残液の排出、水による予備すすぎ、薬液(例えば、苛性ソーダ等のアルカリ洗浄液)による洗浄、水によるすすぎ、タンクに接続された送液管網のすすぎ等を含みうる。
【0011】
以下では、タンク10、20、30のうち洗浄対象のタンクがタンク10であるものとして説明する。液体処理設備1では、薬液(例えば、アルカリ洗浄液)によってタンク10および送液管網50が洗浄された後に、水でタンク10および送液管網50がすすがれる。
【0012】
本発明の好適な実施形態では、薬液(例えば、アルカリ洗浄液)による洗浄の後のすすぎ工程は、タンク10に水を供給するとともにタンク10から水を排出させながらタンク10をすすぐ単純タンクすすぎ工程(すすぎ工程1)と、タンク10を含むタンク循環経路をタンク10のほか送液管網50の一部で構成し該タンク循環経路内で水を循環させながらタンク10をすすぐ循環タンクすすぎ工程(すすぎ工程2)と、送液管網50内の残液を押し出してその後にタンク10を通らない送液管網循環経路を送液管網50で構成し該循環経路内で水を循環させながら送液管網50をすすぐ送液管網すすぎ工程(すすぎ工程3)とを任意の順に並べて構成されうる。
【0013】
図2は、単純タンクすすぎ工程(すすぎ工程1)の様子を模式的に示している。系外からCIP(Cleaning In Place;定置洗浄)ユニット60に水が供給され、その水は、送液管網50の一部を使ってCIPユニット60から洗浄対象のタンク10にポンプ52によって供給される。タンク10では、シャワーボール12を通してタンク10の内壁に向けて水が噴射される。タンク10の底に溜まった水は、送液管網50の一部を使ってポンプ54によってブロー(系外に排出)される。
【0014】
図3は、循環タンクすすぎ工程(すすぎ工程2)の様子を模式的に示している。まず、系外からCIPユニット60に水が供給される。その水は、送液管網50の一部を使ってCIPユニット60から洗浄対象のタンク10にポンプ52によって供給される。タンク10では、シャワーボール12を通してタンク10の内壁に向けて水が噴射される。タンク10の底に溜まった水は、送液管網50の一部を使ってポンプ54によってCIPユニット60に戻され、再び洗浄対象のタンク10にポンプ52によって供給される。すなわち、循環タンクすすぎ工程では、送液管網50の一部によって洗浄対象のタンク10を含むタンク循環経路が形成され、このタンク循環経路内で水を循環させながら洗浄対象のタンク10がすすがれる。
【0015】
図4、図5は、送液管網すすぎ工程(すすぎ工程3)の様子を模式的に示している。まず、図4に模式的に示すように、系外からCIPユニット60に水が供給され、その水は、送液管網50を通してポンプ52、54によって系外に押し出される。これによって、送液管網50内の残液が系外に押し出される。次いで、図5に模式的に示すように、タンク10、20、30を通らないように送液管網50で構成された送液管網循環経路内でポンプ52、54によって水を循環させながら送液管網50がすすがれる。
【0016】
図6は、本発明の好適な実施形態のコンピュータの構成を概略的に示す図である。本発明の好適な実施形態のコンピュータ100は、薬液(例えば、アルカリ洗浄液)で送液管網50を洗浄した後に水で洗浄対処のタンク10および送液管網50をすすぐためのすすぎ手順をオペレータからの指示にしたがってコンピュータ100が決定する。換言すると、コンピュータ100は、すすぎ手順を決定するための作業を支援する装置である。
【0017】
コンピュータ100は、典型的には、パーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータにコンピュータプログラム145をインストールして構成されうる。コンピュータ100は、例えば、CPU110と、主メモリ(例えば、DRAM)120と、オペレータからの指示を受ける入力装置(例えば、キーボード、マウス等)130、HD(ハードディスク装置)140と、ディスプレイ150とを含んで構成されうる。コンピュータプログラム145は、典型的には、HD140に格納されうる。
【0018】
図7は、コンピュータプログラム145がインストールされたコンピュータ100によってすすぎ工程の詳細(内容)を決定する処理の流れを示すフローチャートである。図8は、すすぎ工程の決定処理を実行しているときのディスプレイ150の表示画面150aを例示する図である。
【0019】
まず、ステップS71(選択工程)では、コンピュータ100は、単純タンクすすぎ工程(すすぎ工程1)、循環タンクすすぎ工程(すすぎ工程2)、および、送液管すすぎ工程(すすぎ工程3)のいずれかをオペレータからの指示にしたがって選択する。なお、表示画面150aにおいて、ボックス211は単純タンクすすぎ工程(すすぎ工程1)、ボックス212は循環タンクすすぎ工程(すすぎ工程2)、ボックス213は送液管すすぎ工程(すすぎ工程3)を示している。オペレータは、マウス(入力装置130)によっていずれかのボックス(つまり、すすぎ工程)をクリック操作することによってそれを選択することができる。
【0020】
ステップS72(順番決定工程)では、コンピュータ100は、ステップS71(選択工程)で選択されたすすぎ工程を実行すべき順番(すすぎ手順における順番)をオペレータからの指示に従って決定する。具体的には、ステップS71(選択工程)でクリック操作によってすすぎ工程が選択された後に、表示画面150aにおける”ステップ1”〜”ステップ10”のいずれかのボックスがクリック操作されることによって、そのクリック操作されたボックスに、ステップS71(選択工程)で選択されたすすぎ工程が割り当てられる。図8に示す例では、”ステップ1”(すなわち、最初に実行すべきステップ)として、送液管網すすぎ工程(すすぎ工程3)が割り当てられている。
【0021】
ステップS73では、コンピュータ100は、すすぎ工程の選択および順番の割り当てが終了したかどうかをオペレータからの指示にしたがって判断し、終了していない場合にはステップS71に処理を戻して、ステップS71、S72の処理を繰り返し、終了した場合には、ステップS74に進む。
【0022】
ステップS74では、コンピュータ100は、ステップS71、S72からなる処理の繰り返しによって決定されたすすぎ手順を洗浄対象のタンク10のすすぎ手順として設定する。
【0023】
この実施形態は、すすぎ工程の要素を単純タンクすすぎ工程(すすぎ工程1)、循環タンクすすぎ工程(すすぎ工程2)、および、送液管すすぎ工程(すすぎ工程3)に分解し、オペレータがこれらを自由に並べてすすぎ手順を決定することを可能にする。よって、オペレータは、すすぎ手順の決定を迅速に行うことができ、しかも、すすぎ手順として種々の手順を創り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】液体処理設備を概略的に示す図である。
【図2】単純タンクすすぎ工程(すすぎ工程1)の様子を模式的に示す図である。
【図3】循環タンクすすぎ工程(すすぎ工程2)の様子を模式的に示す図である。
【図4】送液管網すすぎ工程(すすぎ工程3)の様子を模式的に示す図である。
【図5】送液管網すすぎ工程(すすぎ工程3)の様子を模式的に示す図である。
【図6】本発明の好適な実施形態のコンピュータの構成を概略的に示す図である。
【図7】プログラムがインストールされたコンピュータによってすすぎ工程を決定する処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】すすぎ工程を決定する処理を実行しているときのディスプレイの表示画面を例示する図である。
【符号の説明】
【0025】
1 液体処理設備
10、20、30 タンク
12、22、32 シャワーボール
50 送液管網
52、54 ポンプ
60 CIPユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクおよび前記タンクに接続された送液管網を含む液体処理設備において薬液で前記タンクおよび前記送液管網を洗浄した後に水で前記タンクおよび前記送液管網をすすぐためのすすぎ手順をコンピュータによって決定する決定方法であって、
前記タンクに水を供給するとともに前記タンクから水を排出させながら前記タンクをすすぐ単純タンクすすぎ工程、前記タンクを含むタンク循環経路を前記タンクのほか前記送液管網の一部で構成し前記タンク循環経路において水を循環させながら前記タンクをすすぐ循環タンクすすぎ工程、および、前記送液管網の残液を押し出してその後に前記タンクを通らない送液管網循環経路を前記送液管網で構成し前記送液管網循環経路において水を循環させながら前記送液管網をすすぐ送液管網すすぎ工程のいずれかをオペレータからの指示にしたがって前記コンピュータが選択する選択工程と、
前記選択工程で選択されたすすぎ工程を実行すべき前記すすぎ手順における順番をオペレータからの指示に従って前記コンピュータが決定する順番決定工程と、
を繰り返しながら前記すすぎ手順を決定する、ことを特徴とする液体処理設備におけるすすぎ手順の決定方法。
【請求項2】
タンクおよび前記タンクに接続された送液管網を含む液体処理設備において薬液で前記タンクおよび前記送液管網を洗浄した後に水で前記タンクおよび前記送液管網をすすぐためのすすぎ手順をコンピュータによって決定するためのコンピュータプログラムであって、前記コンピュータに、
前記タンクに水を供給するとともに前記タンクから水を排出させながら前記タンクをすすぐ単純タンクすすぎ工程、前記タンクを含むタンク循環経路を前記タンクのほか前記送液管網の一部で構成し前記タンク循環経路において水を循環させながら前記タンクをすすぐ循環タンクすすぎ工程、および、前記送液管網の残液を押し出してその後に前記タンクを通らない送液管網循環経路を前記送液管網で構成し前記送液管網循環経路において水を循環させながら前記送液管網をすすぐ送液管網すすぎ工程のいずれかをオペレータからの指示にしたがって選択する選択工程と、
前記選択工程で選択されたすすぎ工程を実行すべき前記すすぎ手順における順番をオペレータからの指示に従って決定する順番決定工程と、
を繰り返し実行させながら前記すすぎ手順を決定させる、ことを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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