説明

液体加熱装置

【課題】 発熱体の発熱量を増加させるとともに液体に対する熱伝導性を向上させ、発熱体の寿命を長くする。
【解決手段】 液体を加熱する液体加熱装置Sであって、一端側に液体が流入される液体流入口2が設けられ他端側に液体を流出させる液体流出口3が設けられた液体加熱管1と、液体加熱管1の管内に挿通され液体加熱管1の一端及び他端から突出する端子11を有し通電されて液体を加熱する発熱体10とを備えた液体加熱装置Sにおいて、発熱体10を、ニッケルインジウム酸化化合物を主材料として構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を加熱する液体加熱装置に係り、例えば、液体としての水を加熱して浴槽に給水する浴槽システムに用いられる液体加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を加熱する液体加熱装置としては、例えば、特許文献1(特開平6−331214号公報)に記載されたものが知られている。
図7に示すように、この液体加熱装置Saは、一端側に液体が流入される液体流入口101が設けられ他端側に液体を流出させる液体流出口102が設けられた液体加熱管100と、液体加熱管100の管内に挿通され液体加熱管100の一端及び他端から突出する端子111を有し通電されて液体を加熱する発熱体110とを備えて構成されている。発熱体110は、ニクロム線や白金線で構成されている。
【0003】
液体流入口101から液体加熱管100内に液体を流入させると、液体加熱管100内に挿通されている発熱体110から発せられる熱が液体に伝導され、これによって液体が加熱され、液体流出口102からは加熱された液体が流出するようになる。このとき、液体加熱管100内において、発熱体110を液体に直接接触させることにより、発熱体110の液体に対する熱伝導性を向上させている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−331214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この従来の液体加熱装置Saにおいては、発熱体110がニクロム線や白金線で構成されているため、発熱量や熱伝導性等が必ずしも十分でなく、また、寿命も短いという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、発熱体の発熱量を増加させるとともに液体に対する熱伝導性を向上させ、発熱体の寿命を長くした液体加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するため、本発明の液体加熱装置は、液体を加熱する液体加熱装置であって、一端側に液体が流入される液体流入口が設けられ他端側に液体を流出させる液体流出口が設けられた液体加熱管と、該液体加熱管の管内に挿通され該液体加熱管の一端及び他端から突出する端子を有し通電されて液体を加熱する発熱体とを備えた液体加熱装置において、上記発熱体を、ニッケルインジウム酸化化合物を主材料として構成している。
【0008】
これにより、液体加熱管の液体流入口から管内に流入された液体は、液体流入口から液体流出口へ向けて流動していく。この液体加熱管内において、発熱体から発せられる熱が液体に伝導され、これによって液体は加熱される。加熱された液体は、液体加熱管の液体流出口から流出される。
【0009】
この液体加熱管内に挿通されている発熱体は、ニッケルインジウム酸化化合物を主材料として構成されており、ニッケルインジウム酸化化合物は、電子が極在化せずに自由に移動することで高温発熱し、また、キャリア電子を増やすことにより、より一層導電性が向上するという特性を持っているので、従来のニクロム線や白金線で構成されている発熱体と比較して、発熱体から発せられる熱量が増加されるとともに、液体に対する熱伝導性を向上させることができ、また、発熱体の寿命を長くすることができる。
【0010】
そして、必要に応じ、上記液体加熱管をその長手方向が平行になるように複数本設けて液体加熱管群を形成し、前位の液体加熱管の液体流出口と後位の液体加熱管の液体流入口とを接続管で接続した構成としている。これにより、液体加熱管の液体流入口から流入された液体は、加熱されて液体流出口から流出し、この流出した液体は、1つ後位の液体加熱管の液体流入口から管内に流入され、この液体加熱管において、更に加熱される。即ち、液体加熱管群の最前位の液体加熱管の液体流入口から流入された液体は、複数の液体加熱管において発熱体によって加熱されるので、液体加熱管群の最後位の液体加熱管の液体流出口から流出する液体を、任意の温度まで加熱することができる。また、液体加熱管群は、複数の液体加熱管を接続することにより形成され、各液体加熱管夫々に発熱体が挿通されているので、液体加熱管や発熱体が破損したり故障したりした場合でも、破損や故障した液体加熱管及び発熱体だけを液体加熱管群から取外して交換することができ、そのため、全部の液体加熱管及び発熱体を交換しなくても良いので、それだけ、メンテナンスが容易になる。
【0011】
また、必要に応じ、上記液体加熱管群を収納するケースを備え、該ケースに最前位の液体加熱管の液体流入口に液体を送入する液体送入口を設けるとともに、最後位の液体加熱管の液体流出口から液体を送出させる液体送出口を設け、上記発熱体に通電される電源の電圧を調節する電圧調整部を備えた構成としている。これにより、液体加熱管群がケースに収納されているので、ユニット化され、そのため、本装置の設置が容易になる。また、電圧調整部で電源の電圧を調節することにより発熱体から発せられる熱量を調節できるので、液体を任意の温度に加熱することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液体加熱装置によれば、液体加熱管の液体流入口から管内に流入された液体に液体加熱管内に挿通されている発熱体から発せられる熱が伝導され、これによって液体が加熱され、液体流出口からは加熱された液体が流出するようになる。この発熱体はニッケルインジウム酸化化合物を主材料として構成されており、ニッケルインジウム酸化化合物は、電子が極在化せずに自由に移動することで高温発熱し、また、キャリア電子を増やすことにより、より一層導電性が向上するという特性を持っているので、従来のニクロム線や白金線で構成されている発熱体と比較して、発熱体から発せられる熱量が増加されるとともに、液体に対する熱伝導性を向上させることができ、また、発熱体の寿命を長くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係る液体加熱装置を説明する。
図1乃至図6には、本発明の実施の形態に係る液体加熱装置Sを示している。本装置Sは、例えば、図5に示す浴槽システムYに用いられる。
【0014】
本実施の形態に係る液体加熱装置Sは、一端側に液体が流入される液体流入口2が設けられ他端側に液体を流出させる液体流出口3が設けられた液体加熱管1と、液体加熱管1の管内に挿通され液体加熱管1の一端及び他端から突出する端子11を有し通電されて液体を加熱する発熱体10とを備えて構成されている。
【0015】
液体加熱管1は、図1乃至図4に示すように、直線状に形成され、絶縁体で構成されている。実施の形態では、耐熱塩ビ管で構成されている。
【0016】
この液体加熱管1は、その長手方向が平行になるように複数本設けられ、液体加熱管群Gが形成されている。実施の形態では、12本の液体加熱管1を用いて液体加熱管群Gが形成されている。詳しくは、この液体加熱管群Gは、液体加熱管1が横に4本列設されて接続され、この状態のものが縦に3つ設けられている。即ち、液体加熱管群Gの最前位の液体加熱管1aを含み横に4本列設されて接続される第一列Gaと、第一列Gaの真下に設けられ液体加熱管1が横に4本列設されて接続される第二列Gbと、液体加熱管群Gの最後位の液体加熱管1bを含み横に4本列設されて接続される第三列Gcとで構成され、第一列Gaの最後位の液体加熱管1と第二列Gbの最前位の液体加熱管1とが縦に接続され、第二列Gbの最後位の液体加熱管1と第三列Gcの最前位の液体加熱管1とが縦に接続されている。
【0017】
この複数の液体加熱管1は、前位の液体加熱管1の液体流出口3と後位の液体加熱管1の液体流入口2とが接続管20で接続されている。
この接続管20は、図1乃至図4に示すように、液体加熱管1が挿通される第一筒体21と、軸線が第一筒体21の軸線に直交して設けられ液体流入口2及び液体流出口3上に位置される第二筒体22とで構成され、T字状に形成されている。また、この接続管20は、金属で構成されている。第二筒体22の先端には、表面に雄ネジ23を有した第三筒体24が設けられており、この第三筒体24同士が内側に雌ネジを有したニップル25で螺合されて接続されている。
【0018】
発熱体10は、図1乃至図4に示すように、幅8mm、厚さ0.3mmの帯状に形成され、ニッケルインジウム酸化化合物を主材料として構成されている。実施の形態では、ニッケルインジウム酸化化合物のみで構成されている。
【0019】
また、発熱体10は、その両端部に金属製の端子11を有している。この端子11は、液体加熱管1の一端及び他端から突出しており、電源(図示せず)の電圧を発熱体10に通電させている。
【0020】
また、本実施の形態に係る液体加熱装置Sは、液体加熱管群Gを収納するケース30を備えている。このケース30は、図5に示すように、矩形状の箱型に形成され、最前位の液体加熱管1aの液体流入口2に液体を送入する液体送入口31が設けられるとともに、最後位の液体加熱管1bの液体流出口3から液体を送出させる液体送出口32が設けられており、発熱体10に通電される電源(図示せず)の電圧を調節する電圧調整部33が備えられている。この電圧調整部33は、発熱体10に通電される電源(図示せず)からの電圧量を調整し、発熱体10が発する熱量を調節している。このケース30内には、図6に示すように、液体が所定の管内温度になったとき電流回路を切断する温度スイッチTH及びフロースイッチFSが設けられている。
【0021】
また、本装置Sは、図5に示す浴槽システムYに用いられる。この浴槽システムYは、液体として水を用い、水を加熱して浴槽42に送出するもので、液体加熱装置Sを2つ用い、ポンプ40により液体を液体加熱管1の液体流入口2に送入させる送入経路41と、液体加熱管1の液体流出口3から流出した液体を浴槽42に送出させる送出経路43と、ポンプ40から直接浴槽42へ液体を送給する送給経路44とを備えてなる。送入経路41,送出経路43及び送給経路44には、夫々液体の流動経路を切り換える切換バルブ45が設けられている。また、送出経路43には、液体加熱装置Sから送出される液体の温度を計測する温度計46と、液体の送出量を計測する流量計47とが設けられている。
【0022】
送入経路41は、液体送入口31に接続され、ポンプ40からの液体を最前位の液体加熱管1aの液体流入口2に送入させている。
送出経路43は、液体送出口32に接続され、最後位の液体加熱管1bの液体流出口3から流出する液体を浴槽42に送出させている。
【0023】
従って、この実施の形態に係る液体加熱装置Sを用いた浴槽システムYを作動させるときは、以下のようにする。
ポンプ40からの液体を加熱して浴槽42に送出するときは、先ず、送給経路44の切換バルブ45を閉にし、送入経路41及び送出経路43の切換バルブ45を開にする。これにより、ポンプ40からの液体は送入経路41を通って各液体送入口31から各液体加熱装置Sに送入されるようになる。そして、液体加熱装置Sを起動させるとともに、電圧調整部33により、電源(図示せず)からの電圧量を調節し、発熱体10が発する熱量を調節して、液体の加熱温度を設定する。
【0024】
このとき、各液体加熱装置Sにおいては、液体は最前位の液体加熱管1aの液体流入口2に流入され、この液体に、液体加熱管1内に挿通されている発熱体10から発せられる熱が伝導され、これによって液体が加熱される。
【0025】
詳しくは、最前位の液体加熱管1aの液体流入口2に流入された液体は、液体流出口3に向けて流動していく。このとき、管内において、発熱体10から発せられる熱が液体に伝導されて液体が加熱される。そして、最前位の液体加熱管1a内において加熱された液体は、液体流出口3から流出され、1つ後位の液体加熱管1の液体流入口2に流入される。この液体加熱管1内において、液体は発熱体10によって更に加熱される。この流れを繰り返しながら、液体は液体加熱管群Gを通過していき、12本の液体加熱管1において夫々加熱され、徐々に高温となって設定された温度となり、最後位の液体加熱管1bの液体流出口3から流出される。
【0026】
このとき、液体を加熱する発熱体10には、三相交流が印加される。これは、図6に示すように、液体加熱管群Gの第一列Gaを形成する4本の液体加熱管1に挿通される発熱体10をR1、液体加熱管群Gの第二列Gbを形成する4本の液体加熱管1に挿通される発熱体10をR2、液体加熱管群Gの第三列Gcを形成する4本の液体加熱管1に挿通される発熱体10をR3とすると、各発熱体10(R1,R2,R3)はループ状に接続される関係にあり、第一相R,第二相S,第三相Tが、各発熱体10(R1,R2,R3)に電圧付与できるように接続されている。また、液体が所定の管内温度になったとき電流回路を切断する温度スイッチTH及びフロースイッチFSが設けられており、これらを切断すると、電源(図示せず)を断にできるようにしている。尚、図6中、符号TBは端子台である。
【0027】
発熱体10は、ニッケルインジウム酸化化合物を主材料として構成されており、ニッケルインジウム酸化化合物は、電子が極在化せずに自由に移動することで高温発熱し、また、キャリア電子を増やすことにより、より一層導電性が向上するという特性を持っているので、従来のニクロム線や白金線で構成されている発熱体と比較して、発熱体10から発せられる熱量が増加されるとともに、液体に対する熱伝導性を向上させることができ、また、発熱体の寿命を長くすることができる。また、電圧調整部33で電源の電圧を調節することにより発熱体10から発せられる熱量を調節するので、液体を任意の温度に加熱することができる。更に、液体加熱管群Gは、複数の液体加熱管1を接続することにより形成され、各液体加熱管1夫々に発熱体10が挿通されているので、液体加熱管1や発熱体10が破損したり故障したりした場合でも、破損や故障した液体加熱管1及び発熱体10だけを液体加熱管群Gから取外して交換することができ、そのため、全部の液体加熱管1及び発熱体10を交換しなくても良いので、それだけ、メンテナンスが容易になる。
【0028】
そして、各液体加熱装置Sの最後位の液体加熱管1bの液体流出口3から流出した液体は、液体送出口32から送出経路43を通って浴槽42へ送出される。
【0029】
また、ポンプ40から直接浴槽42へ液体を送給する場合は、送給経路44の切換バルブ45を開にし、送入経路41及び送出経路43の切換バルブ45を閉にすることで行なうことができる。
【0030】
尚、上記実施の形態において、本装置Sを浴槽システムYに用いたが、必ずしもこれに限定されるものではない。
また、上記実施の形態において、液体加熱管群Gを12本の液体加熱管1で構成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、何本の液体加熱管1で構成しても良く、適宜変更して差支えない。
更に、上記実施の形態において、発熱体10を帯状に形成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、どのような形状でも良く、適宜変更して差支えない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係る液体加熱装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る液体加熱装置を示す側面断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る液体加熱装置を示す横断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る液体加熱管群を示し、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る浴槽システムを示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る発熱体の三相交流回路を示す図である。
【図7】従来の液体加熱装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
S 液体加熱装置
Y 浴槽システム
G 液体加熱管群
1 液体加熱管
2 液体流入口
3 液体流出口
10 発熱体
11 端子
20 接続管
21 第一筒体
22 第二筒体
23 雄ネジ
24 第三筒体
25 ニップル
30 ケース
31 液体送入口
32 液体送出口
33 電圧調整部
40 ポンプ
41 送入経路
42 浴槽
43 送出経路
44 送給経路
45 切換バルブ
46 温度計
47 流量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を加熱する液体加熱装置であって、一端側に液体が流入される液体流入口が設けられ他端側に液体を流出させる液体流出口が設けられた液体加熱管と、該液体加熱管の管内に挿通され該液体加熱管の一端及び他端から突出する端子を有し通電されて液体を加熱する発熱体とを備えた液体加熱装置において、
上記発熱体を、ニッケルインジウム酸化化合物を主材料として構成したことを特徴とする液体加熱装置。
【請求項2】
上記液体加熱管をその長手方向が平行になるように複数本設けて液体加熱管群を形成し、前位の液体加熱管の液体流出口と後位の液体加熱管の液体流入口とを接続管で接続したことを特徴とする請求項1記載の液体加熱装置。
【請求項3】
上記液体加熱管群を収納するケースを備え、該ケースに最前位の液体加熱管の液体流入口に液体を送入する液体送入口を設けるとともに、最後位の液体加熱管の液体流出口から液体を送出させる液体送出口を設け、上記発熱体に通電される電源の電圧を調節する電圧調整部を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の液体加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−113805(P2010−113805A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282675(P2008−282675)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(508329195)株式会社 ラジム (1)
【Fターム(参考)】