液体収容体の製造方法
【課題】液体収容室に液体が収容されてなる液体収容体を製造する際に、液体収容室に液体を簡便に且つ効率良く注入できると共に、液体供給不良となる程度まで液体残量が減少した液体収容体についてはその再利用を可能ならしめて資源の有効利用に貢献することができる液体収容体の製造方法を提供する。
【解決手段】インク供給口24側の負圧が一定以上となった際には開弁状態になる差圧弁37が設けられ、インク収容室内には容器本体12の外部から注入されたインクが収容されてなるインクカートリッジ11の製造方法であって、差圧弁37を閉弁状態に付勢している付勢力に抗して、差圧弁37を強制的に開弁状態にする強制開弁工程と、差圧弁37の強制開弁状態を維持しながら、インク供給口24からインク流路を介してインク収容室にインクを注入する液体注入工程とを備えた。
【解決手段】インク供給口24側の負圧が一定以上となった際には開弁状態になる差圧弁37が設けられ、インク収容室内には容器本体12の外部から注入されたインクが収容されてなるインクカートリッジ11の製造方法であって、差圧弁37を閉弁状態に付勢している付勢力に抗して、差圧弁37を強制的に開弁状態にする強制開弁工程と、差圧弁37の強制開弁状態を維持しながら、インク供給口24からインク流路を介してインク収容室にインクを注入する液体注入工程とを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体が液体収容室に収容されてなる液体収容体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の液体収容体として、例えばインクジェット式プリンタ等の液体噴射装置に装着されて使用されるインクカートリッジが知られている(例えば特許文献1参照)。このインクカートリッジは、液体噴射装置が有するカートリッジホルダに対して着脱自在に形成された略扁平箱形の容器本体と、この容器本体の表裏両面に貼着されるフィルムとを主体として構成されている。
【0003】
容器本体には、液体噴射装置のカートリッジホルダに装着された場合に、カートリッジホルダ側に設けられたインク供給針等のインク受け部と接続されるインク供給口が設けられている。また、容器本体内には、インクを収容するインク収容室と、インク収容室内を大気に連通させる大気連通路と、インク収容室とインク供給口との間を連通するインク流路とが、複数の仕切壁と前記フィルムとにより壁面を構成するようにして区画形成されている。そして、インク流路の途中には、常には閉弁状態に付勢される一方でインク供給口側の負圧が一定以上になった場合に開弁状態となる差圧弁が介装されている。
【0004】
そのため、このインクカートリッジでは、液体噴射装置のカートリッジホルダへの装着状態において、液体噴射装置でのインクの消費に伴いインク供給口側の負圧が一定以上になると、差圧弁が開弁状態となりインク収容室内に収容されているインクがインク流路を介してインク供給口側に供給され、液体噴射装置におけるインクの消費に供される。その一方、このインクカートリッジでは、液体噴射装置へ装着されていない状態、又は、装着された状態であってもインク供給口側の負圧が一定未満であるときは、差圧弁が閉弁状態を維持するため、インク収容室側からインク供給口側へのインクの流れが遮断されることになり、インク供給口から不要にインクが流出しないようになっている。
【特許文献1】特開2003−94682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、こうしたインクカートリッジは、インク収容室内のインク残量が微量又は零となるまで減少して良好なインク供給ができなくなると、使用済みインクカートリッジとして回収され、その容器本体からフィルムが剥がされるなど、廃棄処理態様が異なる構成部材毎に分別されて廃棄されるのが一般的であった。そのため、従来から、インクカートリッジについては、インク供給不良となる程度までインク残量が減少した場合には、使用済みインクカートリッジとして廃棄されることから、資源の無駄になるという問題が指摘されていた。
【0006】
また、従来、インクカートリッジの製造段階では、インク収容室内にインクを注入するためのインク注入専用孔を容器本体に形成しておき、そのインク注入専用孔からインクをインク収容室に注入する方法が一般的であった。しかし、この製造方法による場合には、インク注入に使用したインク注入専用孔をインクの注入後においてシールフィルムの貼付等によって封止する必要があり、インクカートリッジの製造工程が煩雑になると共に部品点数が増えるという問題がある。
【0007】
そのため、近時は、インク収容室にインクが収容されてなるインクカートリッジを製造するに際して、インク注入専用孔を使用することなく、インク収容室にインクを簡便に且つ効率良く注入することができると共に資源の有効利用に貢献できるインクカートリッジの製造方法が希求されていた。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。その目的は、液体収容室に液体が収容されてなる液体収容体を製造する際に、液体収容室に液体を簡便に且つ効率良く注入できると共に、液体供給不良となる程度まで液体残量が減少した液体収容体についてはその再利用を可能ならしめて資源の有効利用に貢献することができる液体収容体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、液体収容体の製造方法に係る本発明は、容器本体に、液体を収容可能な液体収容室と、その液体収容室内を大気に連通する大気連通路と、前記液体収容室に収容されている液体を前記容器本体の外部へ供給可能な液体供給口と、前記液体収容室と液体供給口との間を連通する液体流路と、その液体流路の途中に介在して常には閉弁状態に付勢される一方で前記液体供給口側の負圧が一定以上となった際には開弁状態になる差圧弁とが設けられ、前記液体収容室内には容器本体の外部から注入された液体が収容されてなる液体収容体の製造方法であって、前記差圧弁を閉弁状態に付勢している付勢力に抗して、前記差圧弁を強制的に開弁状態にする強制開弁工程と、前記差圧弁の強制開弁状態を維持しながら、前記液体供給口から前記液体流路を介して前記液体収容室に液体を注入する液体注入工程とを備えた。
【0010】
この発明によれば、液体収容室に液体を注入するにあたっては、液体注入専用孔を使用することなく、本来は液体噴射装置への液体供給用に使用される液体供給口を液体収容室への液体注入用にも兼用できるようになる。そして、液体収容室内の液体残量が液体供給不良となる程度まで減少した場合には、その液体供給口から液体を液体収容室に再注入すれば、液体収容体を再利用することも可能となり、使用済みの液体収容体として回収・廃棄しなくてもよくなる。したがって、液体収容室に液体が収容されてなる液体収容体を製造する際に、液体収容室に液体を簡便に且つ効率良く注入できると共に、液体供給不良となる程度まで液体残量が減少した液体収容体についてはその再利用を可能ならしめて資源の有効利用に貢献することができる。
【0011】
また、本発明では、前記強制開弁工程において、前記差圧弁は、前記容器本体の液体供給口から容器本体内に差し入れられた治具を用いて強制的に開弁状態にされる。
この発明によれば、液体供給口へ差し入れることが可能な治具を用意し、そうした治具を液体供給口から容器本体内へ差し入れるだけで、差圧弁を強制的に開弁状態にできる。そして、液体供給口からの液体注入後には、液体供給口に差し入れられている治具を引き抜くだけで、差圧弁を元の閉弁状態に付勢復帰させることができる。したがって、差圧弁を強制的に開弁状態にするための設備コストが嵩むことを抑制できる。
【0012】
また、本発明において、前記治具は、長尺状をなしており、その先端が閉弁状態にある差圧弁の弁体と該弁体が着座する弁座との間に割り込んで前記弁体を開弁方向へ移動させるように前記液体供給口内へ差し入れられる。
【0013】
この発明によれば、液体供給口から長尺状の治具を差し入れるだけで、その治具の先端が差圧弁の弁体と弁座との間に割り込んで弁体を開弁方向へ移動させるので、簡便且つ迅速に差圧弁を強制的に開弁状態にできるようになる。
【0014】
また、本発明は、前記液体注入工程の前段階に、前記液体収容室内を減圧する減圧工程を更に備えた。
この発明によれば、減圧工程で液体収容体内が減圧されるため、その後に液体注入工程を実行した場合に、液体が効率良く液体収容室内に注入される。
【0015】
また、本発明において、前記減圧工程では前記大気連通路を介して前記液体収容室内を吸引する。
この発明によれば、液体収容室内を減圧するにあたり、減圧専用孔を容器本体に設けなくても、大気連通路を減圧時に兼用することができるため、容器本体の構成を複雑化することなく剛性を良好に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明を液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンタ(以下、「プリンタ」と略称する。)に装着されて使用されるインクカートリッジに具体化した第1の実施形態を図1〜図9を参照しながら説明する。なお、本明細書中の以下の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は、図1〜図4において矢印で示す前後方向、左右方向、上下方向をそれぞれ示すものとする。
【0017】
図1〜図4に示すように、本実施形態におけるインクカートリッジ(液体収容体)11は、例えばポリプロピレン(PP)等の合成樹脂からなる前面(一面)側が開口した扁平略矩形箱形状の容器本体12を有している。容器本体12の前面には、その開口部12aの略全面を覆うように熱溶着可能な材料からなる前フィルム(フィルム部材)13が貼着されると共に、その前フィルム13の外側(前面側)から開口部12aを隠蔽するように蓋体14が着脱可能に取着されている。また、容器本体12の後面及び上面には、それら後面及び上面の略全体を覆うように熱溶着可能な材料からなる後フィルム15が貼着されている。
【0018】
また、図1及び図3に示すように、容器本体12の右側面には、このインクカートリッジ11がプリンタに設けられたカートリッジホルダ(図示略)に対して誤装着されることを防ぐための誤装着防止凸条16が上下方向に沿って延びるように形成されている。この誤装着防止凸条16は、インク色の種類毎に異なる形状とされており、それら各インク色の誤装着防止凸条16と個別対応するようにプリンタのカートリッジにはインク色の種類毎に異なる形状の誤装着防止凹条(図示略)が設けられている。すなわち、インクカートリッジ11は、プリンタのカートリッジホルダがインク色を異にする複数のインクカートリッジを装着可能である場合にも、そのインクカートリッジ11における誤装着防止凸条16とのみ嵌合関係を有する誤装着防止凹条が形成された適正な装着箇所以外の不適正な他の装着箇所には装着できないようになっている。
【0019】
一方、図1〜図4に示すように、容器本体12の左側面における上部からは、弾性変形可能に形成された係合レバー17が右斜め上方に向けて延設され、その係合レバー17の表面となる右側面の略中央部には係止爪17aが水平方向に沿うように突設されている。したがって、インクカートリッジ11は、プリンタのカートリッジホルダに装着された場合、係合レバー17が弾性変形すると共に、その係止爪17aがカートリッジホルダ側の一部に係止することにより、カートリッジホルダに対して位置決め状態で係止されるようになっている。
【0020】
また、図4に示すように、同じく容器本体12の左側面において係合レバー17よりも下方となる位置にはセンサ収容室18が凹設されている。センサ収容室18内には、振動を発し、その残留振動を検出することよりインクの有無を検出するセンシング部材(図示略)を備えたセンサユニット19と、このセンサユニット19をセンサ収容室18の内壁面に押し付けて固定するコイルばね20が収納されている。また、センサ収容室18の右側面側の開口はカバー部材21により閉塞されている。
【0021】
カバー部材21の表面側には半導体記憶素子を実装した回路基板22が設けられ、その半導体記憶素子にはインクカートリッジ11に関する各種情報(例えば、インク色情報、インク残量情報など)が記憶されている。そして、回路基板22は、その表面に露出した端子22aが、インクカートリッジ11がプリンタのカートリッジホルダに装着された際に、そのカートリッジホルダ側に設けられた接続端子と接触することにより、プリンタ側の制御装置(図示略)との間で各種情報を受け渡しするようになっている。
【0022】
また、図4に示すように、容器本体12の下面には、容器本体12の内部に大気中から空気を導入するための大気開放孔23と、インクカートリッジ11がプリンタのカートリッジホルダに装着された際に、そのカートリッジホルダに設けられたインク供給針(図示略)が嵌入されるインク供給口(液体供給口)24とが開口形成されている。すなわち、このインクカートリッジ11は、大気開放孔23から容器本体12内に空気を導入しつつインク供給口24からインク(液体)をプリンタ側(すなわち、容器本体12外)に導出して供給する開放型のインクカートリッジとして構成されている。
【0023】
図2及び図4に示すように大気開放孔23は封止フィルム25により封止されている。この封止フィルム25は、インクカートリッジ11をプリンタのカートリッジホルダに装着して使用状態とする前に、ユーザによって剥がされる。そして、この封止フィルム25の剥離により、大気開放孔23が外部に露出し、インクカートリッジ11の容器本体12内が大気に連通されるようになっている。また、同様にインク供給口24も封止フィルム26により封止されている。そして、この封止フィルム26は、インクカートリッジ11がプリンタのカートリッジホルダに装着されたときに、そのカートリッジホルダに設けられているインク供給針によって突き破られることになる。
【0024】
図3及び図4に示すように、インク供給口24内には、カートリッジホルダ側のインク供給針のインク供給口24内への嵌入を許容するエラストマ等からなる環状のシール部材27と、このシール部材27に着座する供給弁28と、この供給弁28をシール部材27に向けて付勢するコイルばね29とが収容されている。すなわち、インク供給口24は、コイルばね29に付勢された供給弁28がシール部材27に圧接することにより、常には容器本体12外へのインクの流出が規制された閉塞状態となる。その一方、カートリッジホルダ側のインク供給針がインク供給口24内に嵌入されたときには、そのインク供給針に押されて供給弁28がコイルばね29の付勢力に抗してインク供給口24の内奥へ移動し、シール部材27から離間することにより、インク供給口24は、容器本体12外へのインクの流出が許容された開放状態となる。
【0025】
また、同じく容器本体12の下面において、大気開放孔23の左側にはインクカートリッジ11にインクを注入する前段階で容器本体12内から空気を吸引して減圧するための減圧孔30が開口形成されている。そして、この減圧孔30は、封止フィルム31により封止されている。また、大気開放孔23とインク供給口24との間にはインク収容室36からインク供給口24に至るインク流路(液体流路)の一部を構成する凹部32が形成され、その凹部32も同様に封止フィルム33により封止されている。また、インク供給口24の右側にはセンサ収容室18の下面側開口18aが形成されており、この開口18aも封止フィルム34により封止されている。
【0026】
次に、インクカートリッジ11における容器本体12の内部構造について説明する。
図3及び図5に示すように、容器本体12の開口部12a内には、その容器本体12の厚さ方向(前後方向)に開口部12aの底面から立設された複数のリブ(仕切壁)35によりインク収容室(液体収容室)36などの複数の室及び流路(若しくは通路)が区画形成されている。一方、図4及び図6に示すように、容器本体12の後面(背面)側には、差圧弁37を収容する円形凹状の差圧弁収容室38と、矩形凹状の気液分離室39とが形成されている。
【0027】
差圧弁収容室38内には、弾性変形可能な略円盤状の膜弁(弁体)40と、差圧弁収容室38の開口を覆う弁蓋41と、この弁蓋41と膜弁40との間に配されるコイルばね42とが収納されている。差圧弁収容室38はインク収容室36とインク供給口24との間に位置しているため、差圧弁37は、インク収容室36とインク供給口24との間を連通するインク流路の途中に介在することになる。
【0028】
気液分離室39の内底面には、その内側面に沿って矩形環状の突条43が形成され、この突条43の頂部に整合するように矩形状をなす気液分離膜44が貼着されている。この気液分離膜44は、気体を通過させる一方で、液体の通過は遮断する素材からなり、気体(空気)と液体(インク)とを分離する機能を有している。すなわち、この気液分離膜44は大気開放孔23とインク収容室36との間を連通する大気連通路60(図6参照)の途中に介在して、インク収容室36内のインクが大気連通路60を経て大気開放孔23から容器本体12外へ流出しないようにしている。
【0029】
次に、図5及び図6を参照しながら、インク収容室36からインク供給口24に至るまでのインク流路の構成について説明する。
図5に示すように、容器本体12の前面側には、リブ35により上部インク収容室45と下部インク収容室46とに分割されたインク収容室36が区画形成されている。また、上部インク収容室45と下部インク収容室46との間に位置するようにしてバッファ室として機能する略矩形状の収容室側流路部47が区画形成されると共に、この収容室側流路部47と下部インク収容室46との間に位置するようにして縦長の供給口側流路部48が区画形成されている。
【0030】
上部インク収容室45の最下方となる位置には容器本体12の厚さ方向(前後方向)へ貫通孔49が形成されると共に、この貫通孔49の下方であって下部インク収容室46の最下方となる位置には貫通孔50が形成されている。図6に示すように、貫通孔49と貫通孔50とは容器本体12の後面側に形成された連絡流路51に連通しており、この連絡流路51を介して上部インク収容室45からインクが下部インク収容室46に流れるようになっている。
【0031】
また、図5に示すように、容器本体12の前面側において下部インク収容室46の側方には、図示しない貫通孔を介して下部インク収容室46に連通する連絡流路52が設けられている。そして、この連絡流路52は、図示しない貫通孔を介して前述したセンサ収容室18内に連通している。なお、この連絡流路52は三次元的な迷路構造をなす流路であり、その迷路構造にてインク中の気泡などを捕捉することにより、下流側へ気泡などがインクと一緒に流れないようにしている。
【0032】
また、図5に示すように、容器本体12の前面側において収容室側流路部47には貫通孔53が形成される一方、図6に示すように、容器本体12の後面側にはセンサ収容室18から前述した収容室側流路部47の貫通孔53まで延びる連絡流路54(図6参照)が形成されている。さらに、収容室側流路部47において貫通孔53よりも下方となる位置には貫通孔55が形成され、この貫通孔55は供給口側流路部48内の上方位置であって且つ差圧弁収容室38の中心に形成された弁孔56と差圧弁収容室38を介して連通している。
【0033】
そして、図5に示すように、供給口側流路部48内の下方位置には貫通孔57が形成され、この貫通孔57を介して供給口側流路部48がインク供給口24に連通されている。以上のように、本実施形態では、インク収容室36(下部インク収容室46)からインク供給口24まで至るインク流路(液体流路)が、前述した連絡流路52、連絡流路54、収容室側流路部47、及び供給口側流路部48により構成されている。なお、これらのインク流路及びインク収容室36などは、容器本体12の前面側及び後面側にそれぞれ貼着される前述した前フィルム13及び後フィルム15を壁面の一部として各々形成される。
【0034】
次に、図5及び図6を参照しながら、大気開放孔23からインク収容室36に至るまでの大気連通路60の通路構造について説明する。
図6に示すように、容器本体12の後面側において大気開放孔23の近傍には、貫通孔61が大気開放孔23に連通するように形成されている。この貫通孔61からは前述した気液分離室39に連通する蛇行状の細溝62が上方に向けて形成され、気液分離室39の内底面には貫通孔63が形成されている。この貫通孔63は容器本体12の前面側に区画形成された連絡通路64の下方位置に連通し、その連絡通路64の上方位置には貫通孔65aが形成されている。貫通孔65aの真横には貫通孔65bが形成され、これら両貫通孔65a,65bの間を連絡するように、容器本体12の後面には、途中に折り返し部66aを有する連絡通路66が形成されている。
【0035】
図5に示すように、容器本体12における前面側の右上隅には、矩形状をなすインクトラップ室67が前述した貫通孔65bに連通するように区画形成されている。インクトラップ室67の下方には逆L字状をなす連絡バッファ室68が区画形成され、これらの両室67,68が切欠部67aを介して連通されている。連絡バッファ室68の下方位置には貫通孔69が形成され、この貫通孔69は容器本体12の後面側にL字状をなすように形成された連絡通路70を介して上部インク収容室45に開口する貫通孔71に連通している。そして、本実施形態では、以上の細溝62、気液分離室39、連絡通路64、連絡通路66、インクトラップ室67、連絡バッファ室68、及び連絡通路70により、大気開放孔23からインク収容室36(上部インク収容室45)に至る大気連通路60が構成されている。
【0036】
次に、差圧弁37の機能について、図7(a)(b)を参照しながら説明する。
図7(a)に示すように、差圧弁37は、その膜弁40が常にはコイルばね42の付勢力により弁孔56を閉塞して、インク収容室36側からインク供給口24側へのインクの流れを遮断する閉弁状態に付勢されている。その一方で、インク供給口24からプリンタ側へのインクの供給に伴いインク供給口24側の負圧が一定以上となった場合には、差圧弁収容室38内の圧力(膜弁40の背圧)も同様に負圧が一定以上となる。そのため、図7(b)に示すように、差圧弁37は、膜弁40がコイルばね42の付勢力に抗して弾性変形し、弁孔56を包囲する弁座56aから離間した開弁状態となり、インク収容室36側からインク供給口24側へのインクの流れを許容することになる。なお、図7(b)においては、インクの流れを示す矢印を記載した関係上、インク供給口24の内部のシール部材27、供給弁28、及びコイルばね29の図示を省略している。
【0037】
そこで次に、本実施形態のインクカートリッジ11の製造方法について、より詳しくはインク収容室36内に容器本体12の外部から注入されたインクが収容されてなるインクカートリッジ11の製造方法について以下説明する。
【0038】
なお、本実施形態のインクカートリッジ11には、インク注入専用のインク注入孔なるものが設けられていない。そのため、インク収容室36内にインクを初期注入する場合、及び、インク収容室36内のインク残量がインク供給不良となる程度まで減少したときにインクを補充するべく再注入する場合の何れの場合も、本来はプリンタへのインク供給用に使用されるインク供給口24がインク注入用に兼用される。
【0039】
さて、インクカートリッジ11のインク収容室36にインクを注入する場合には、図8に示すように、インク注入装置85が使用される。インク注入装置85は、インクカートリッジ11のインク供給口24に気密に接続されるインク注入管86と、インクカートリッジ11の減圧孔30に気密に接続される真空吸引管87とを有している。そして、インク注入管86にはインク注入手段88が設けられる一方、真空吸引管87には真空吸引手段89が設けられている。
【0040】
インク注入手段88は、インク注入管86を開閉するバルブ90と、インクを貯留した大型のインクタンク91と、インクタンク91からインクをインク注入管86に圧送するためのポンプ92とを備えてなり、バルブ90の開閉動作によりインクの注入を許容及び遮断できるようになっている。一方、真空吸引手段89は、真空吸引管87を開閉するバルブ93と、真空吸引管87を介して真空引きする真空ポンプ94と、バルブ93と真空ポンプ94との間に配されて真空吸引管87内に流入したインクを捕集するインクトラップ95とを備えている。
【0041】
ところで、上記のインク注入装置85を使用してインク供給口24内へ単純にインクを圧送したとしても、インク供給口24とインク収容室36との間には閉弁状態に付勢された差圧弁37が介在しており、インクの流れが遮断されている。したがって、本実施形態では、インク注入工程(液体注入工程)の前段階で、次のような工程を実行するようにしている。
【0042】
まず、初期注入の場合には、容器本体12の前面(一面)に前フィルム13を貼着するときに、供給口側流路部48を取り囲むリブ35の頂面と前フィルム13との間に隙間が形成されるようにする。すなわち、図5に示すように、供給口側流路部48を取り囲むリブ35の頂面には所定間隔をおいて複数の凸部35aが形成されていることから、これら各凸部35a間の頂面に対しては前フィルム13を未貼着とする。すると、その未貼着部分には、リブ35における各凸部35a間の頂面と前フィルム13との間にインクの流れを許容する隙間が形成される。
【0043】
その結果、その隙間により、供給口側流路部48からリブ35を乗り越えて差圧弁37を迂回するようにして収容室側流路部47にインクが流入することを許容するバイパス流路80が形成されることになる。そして、このようにバイパス流路80を形成するバイパス形成工程が終了したら、次にはインクカートリッジ11にインク注入装置85を接続する。
【0044】
すなわち、インク注入装置85のインク注入管86をインク供給口24に接続すると共に、インク注入装置85の真空吸引管87を減圧孔30に接続する。なお、この接続作業を行うときに、インク供給口24内からシール部材27、供給弁28、及びコイルばね29を取り外しておくとよい。また、このとき大気開放孔23は封止フィルム25で封止されていることが必要である。
【0045】
そして、まずインク注入手段88のバルブ90は閉めた状態で真空吸引手段89のバルブ93を開いた状態とし、その状態で真空ポンプ94を駆動させる減圧工程を実行する。すると、インク収容室36の内圧が所定の圧力まで減圧される。そして、この減圧工程が終了したら、上記のインク注入装置85を使用したインク注入工程を実行する。
【0046】
すなわち、今度は真空吸引手段89のバルブ93は閉めた状態でインク注入手段88のバルブ90を開いた状態とし、その状態でインク注入手段88のポンプ92を駆動させる。すると、インクタンク91からインク注入管86へ圧送されたインクがインク供給口24内に流入し、供給口側流路部48とバイパス流路80と収容室側流路部47とを介してインク収容室36内に注入される。
【0047】
そして、このインク注入工程(初期注入工程)が終了したら、最後にバイパス流路80を閉塞するバイパス閉塞工程を実行する。すなわち、加熱ごて等の治具を用いて供給口側流路部48を取り囲むリブ35上の各凸部35aを前フィルム13の上から押圧加熱する。すると、供給口側流路部48を取り囲むリブ35上の凸部35aが溶融し、そのリブ35の頂面に前フィルム13が熱溶着により貼着される。そして、バイパス流路80が閉塞されて閉塞部81(図8参照)となり、これでインクの初期注入が終了して、インク収容室36内にインクが収容されてなるインクカートリッジ11の製造作業が終了する。
【0048】
一方、このインクカートリッジ11がプリンタに装着されて使用された結果、インク収容室36内のインク残量が微量又は零となったときには、次のようにしてインクの再注入が行われ、インクカートリッジ11が再利用できるようになる。すなわち、インクの再注入の場合は、インク注入工程に先立ち、差圧弁37を強制的に開弁状態にする強制開弁工程を実行する。
【0049】
まず、図9(a)に示すように、インク供給口24内からシール部材27、供給弁28、及びコイルばね29を取り外し、次に、長尺状の治具(例えば、長尺板片など)75をインク供給口24内に差し入れる。そして、その治具75の先端75aをインク供給口24の内奥から更に差圧弁収容室38内まで差し入れ、その先端75aを膜弁40と弁座56aとの間に割り込ませる。
【0050】
すると、この治具75の先端75aの割り込みにより、膜弁40がコイルばね42の付勢力に抗して弁座56aから離間する開弁方向へ浮き上がるように移動し、弁孔56が開放された開弁状態となる。そして、その状態を維持しつつ、前述したインク注入装置85を使用して初期注入時と同様のインク注入工程を実行する。
【0051】
勿論、このときも、インク注入工程の前段階では、初期注入の場合と同様に減圧工程を実行する。また、大気開放孔23についても、封止フィルム25又はその他の封止手段により封止されている必要がある。
【0052】
そして、減圧工程の終了後にインク注入工程が始まると、インク注入装置85のインクタンク91からインク注入管86に圧送されたインクがインク供給口24内に流入する。そして、供給口側流路部48からインクが弁孔56及び貫通孔55を通過して収容室側流路部47内に流入し、その後、インク収容室36内に注入される。
【0053】
なお、このインク注入工程(再注入工程)が終了したら、インク供給口24内から治具75を引き出し、そのインク供給口24内にシール部材27、供給弁28、及びコイルばね29を元通りに組み付ける。
【0054】
ところで、このインク再注入時において、特に強制開弁工程では、治具75の先端75aと膜弁40とが接触することになるが、この接触により膜弁40が損傷することは見た目では殆どない。仮に傷ついたとしても、通常は、顕微鏡などで拡大して見た場合に検証できる程度の傷であるため、以後における差圧弁37の弁機能には殆ど支障もない。
【0055】
したがって、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)インク収容室36にインクを注入するにあたっては、インク注入専用孔に依らなくても、本来はプリンタへのインク供給に使用されるインク供給口24をインク注入用にも兼用できる。したがって、インク注入専用孔を省略する等してインクカートリッジ11の構造の簡素化を図れば、製品コストの低減に貢献することができる。
【0056】
(2)また、インク収容室36内のインク残量が微量又は零まで減少した場合には、そのインク供給口24からインクを再注入すれば、インクカートリッジ11の再利用も可能となり、使用済みのインクカートリッジとして回収・廃棄しなくてもよくなる。
【0057】
(3)したがって、インク収容室36にインクが初期注入又は再注入により収容されてなるインクカートリッジ11を製造する際において、インク供給口24を利用してインク注入を行うようにすれば、インク注入専用孔を使用する場合と異なり、封止フィルムの引き剥がし及び再貼着といった煩雑な手作業を不要にできる。したがって、簡便に且つ効率良くインク収容室36にインクを注入することができる。
【0058】
(4)また、インク供給不良となる程度までインク残量が減少したインクカートリッジ11については、インク供給口24からのインクの再注入により、そのインクカートリッジ11の再利用を可能にできるため、無駄な廃棄を抑制して資源の有効利用に貢献することができる。
【0059】
(5)また、常には閉弁状態に付勢されている差圧弁37を、インク供給口24へ差し入れ可能な治具75を用意し、そうした治具75をインク供給口24から差圧弁収容室38内まで差し入れるだけで、差圧弁37を強制的に開弁状態にできる。その一方で、インク注入後には、そのインク供給口24から治具75を引き抜くだけで、差圧弁37を元の閉弁状態に付勢復帰させることができる。したがって、差圧弁37を強制的に開弁状態にするために大掛かりな設備が必要となるわけでもないので、製造設備のコストが嵩むことを抑制できる。
【0060】
(6)しかも、インク供給口24から長尺状の治具75を差し入れるだけで、その治具75の先端75aが膜弁40と弁座56aとの間に割り込んで膜弁40を開弁方向へ移動させるので、簡便且つ迅速に差圧弁37を強制的に開弁状態にできるようになる。
【0061】
(7)インク注入工程の前段階の減圧工程でインク収容室36内が減圧されるため、その後におけるインク注入工程ではインクを効率良くインク収容室36内に注入することができる。
【0062】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した第2の実施形態について図10〜図13を参照しながら説明する。なお、本実施形態のインクカートリッジ(液体収容体)111は、その基本的構成が第1の実施形態のインクカートリッジ11とほぼ同じであり、その付随的構成の一部が第1の実施形態とは異なっている。したがって、第1の実施形態のインクカートリッジ11と機能が同一又は共通する基本的構成の部分については第1の実施形態のインクカートリッジ11の各構成要素に付した符号(二桁数字)を下二桁数字とする三桁数字の符号を付けて対応関係を示すこととし、その重複説明を省略することにする。
【0063】
ちなみに、第1の実施形態のインクカートリッジ11と相違する付随的構成を説明すると、図10、図12、図13に示すように、後フィルム115は、容器本体112の後面のみを覆うように貼着され、容器本体112の上面まで跨るようには貼着されていない。そして、その代わりに容器本体112の上面には、そのインクカートリッジ111のインク色の種類等を示す帯状の識別ラベル115aが貼着されている。
【0064】
また、図13に示すように、容器本体112の下面には、下部インク収容室(図示略)に連通する第1インク注入孔195aと上部インク収容室(図示略)に連通する第2インク注入孔195bが開口形成されている。すなわち、このインクカートリッジ111ではインク収容室にインクを初期注入する際に、これら両インク注入孔195a,195bのうち何れかが使用される。さらに、このインクカートリッジ111の場合、大気開放孔は容器本体112の後面側に蛇行状をなすように形成された細溝の先端が、その先端と対応する位置で後フィルム115に孔空けがされることで形成されるようになっている。
【0065】
また、同じく容器本体112の下面において、第1インク注入孔195aの左横には、開口166が形成されている。この開口166の内部は、図12に示すように、大気連通路の一部を構成する連通室167とされており、その連通室167内には略円柱状の押圧部材119aが収容されている。また、連通室167の上側には壁を隔てて同じく大気連通路の一部を構成する連通室168が形成され、この連通室168内には容器本体112の前面側から大気弁119とコイルばね120が収容されている。
【0066】
以上のような本実施形態のインクカートリッジ111においても、第1の実施形態のインクカートリッジ11の場合と同様に、インク供給口124から長尺状の治具(図示略)を差し入れることにより、差圧弁137を付勢力に抗して強制的に開弁状態にできるようになっている。したがって、この第2実施形態のインクカートリッジ111においても、第1の実施形態における前記(1)〜(7)と同様の効果を享受することができる。
【0067】
なお、上記各実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・ 減圧工程においては、減圧孔30を使用することなく、減圧孔30は封止したままで大気開放孔23に真空吸引管87を接続し、大気連通路60を介してインク収容室36内を吸引して減圧するようにしてもよい。このように構成した場合には、容器本体12に減圧孔30を形成しなくてもよくなるため、インクカートリッジ11の構成の簡素化を図ることができる。
【0068】
・ インク注入時のインク注入圧を高くすることにより、減圧しなくてもインク収容室36内へのインクの注入が支障なくできるのであれば、減圧工程は省略してもよい。
・ 治具75の形状は、差圧弁収容室38まで届くだけの長尺状のものであれば、その形状は板片に限らず、針金などの棒状のものであってもよい。
【0069】
・ 治具75は、例えば先端75aが二股状をなす形状であったり、先端75aに手元で開閉操作可能な一対の挟持片を有するものであったりしてもよい。すなわち、膜弁40と弁座56aとの間に先端75aが割り込んで開弁させるのではなく、膜弁40を把持又は挟持して膜弁40を弁座56aから離間する方向へ移動させるものであってもよい。
【0070】
・ 膜弁40の一部に磁性体を取り付けておき、差圧弁収容室38と対応する位置で、容器本体12の後面側から磁力により膜弁40を吸引して開弁させるようにしてもよい。
・ インク供給口24を使用したインク注入は、インク残量が減少して再利用する場合の再注入のときに限らず、そのインクカートリッジ11に対するインクの初期注入のときに適用してもよい。
【0071】
・ インクジェット式プリンタに装着されて使用されるインクカートリッジに限らず、例えば、ファクシミリや複写機等に用いられる印刷装置や、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ、あるいは面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの液体を噴射する他の液体噴射装置に装着される液体収容体に適用してもよい。また、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、さらには精密ピペットとしての試料噴射装置に装着されて使用される液体収容体に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】第1の実施形態のインクカートリッジの前面側斜視図。
【図2】同インクカートリッジの後面側斜視図。
【図3】同インクカートリッジの前面側分解斜視図。
【図4】同インクカートリッジの後面側分解斜視図。
【図5】同インクカートリッジの正面(前面)図。
【図6】同インクカートリッジの背面(後面)図。
【図7】同インクカートリッジの模式断面図であり、(a)は差圧弁が閉弁状態時を示す説明図、(b)は差圧弁が開弁状態時を示す説明図。
【図8】インク注入工程を説明するためのブロック図。
【図9】インクカートリッジの模式断面図であり、(a)(b)はそれぞれ強制開弁工程の手順を示す説明図。
【図10】第2の実施形態のインクカートリッジの前面側斜視図。
【図11】同インクカートリッジの後面側斜視図。
【図12】同インクカートリッジの前面側分解斜視図。
【図13】同インクカートリッジの後面側分解斜視図。
【符号の説明】
【0073】
11,111…インクカートリッジ(液体収容体)、12,112…容器本体、20…インク収容室(液体収容室)、24,124…インク供給口(液体供給口)、37,137…差圧弁、41…膜弁(弁体)、47…液体流路を構成する収容室側流路部、48…液体流路を構成する供給口側流路部、52,54…液体流路を構成する連絡流路、56a…弁座、60…大気連通路、75…治具、75a…先端。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体が液体収容室に収容されてなる液体収容体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の液体収容体として、例えばインクジェット式プリンタ等の液体噴射装置に装着されて使用されるインクカートリッジが知られている(例えば特許文献1参照)。このインクカートリッジは、液体噴射装置が有するカートリッジホルダに対して着脱自在に形成された略扁平箱形の容器本体と、この容器本体の表裏両面に貼着されるフィルムとを主体として構成されている。
【0003】
容器本体には、液体噴射装置のカートリッジホルダに装着された場合に、カートリッジホルダ側に設けられたインク供給針等のインク受け部と接続されるインク供給口が設けられている。また、容器本体内には、インクを収容するインク収容室と、インク収容室内を大気に連通させる大気連通路と、インク収容室とインク供給口との間を連通するインク流路とが、複数の仕切壁と前記フィルムとにより壁面を構成するようにして区画形成されている。そして、インク流路の途中には、常には閉弁状態に付勢される一方でインク供給口側の負圧が一定以上になった場合に開弁状態となる差圧弁が介装されている。
【0004】
そのため、このインクカートリッジでは、液体噴射装置のカートリッジホルダへの装着状態において、液体噴射装置でのインクの消費に伴いインク供給口側の負圧が一定以上になると、差圧弁が開弁状態となりインク収容室内に収容されているインクがインク流路を介してインク供給口側に供給され、液体噴射装置におけるインクの消費に供される。その一方、このインクカートリッジでは、液体噴射装置へ装着されていない状態、又は、装着された状態であってもインク供給口側の負圧が一定未満であるときは、差圧弁が閉弁状態を維持するため、インク収容室側からインク供給口側へのインクの流れが遮断されることになり、インク供給口から不要にインクが流出しないようになっている。
【特許文献1】特開2003−94682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、こうしたインクカートリッジは、インク収容室内のインク残量が微量又は零となるまで減少して良好なインク供給ができなくなると、使用済みインクカートリッジとして回収され、その容器本体からフィルムが剥がされるなど、廃棄処理態様が異なる構成部材毎に分別されて廃棄されるのが一般的であった。そのため、従来から、インクカートリッジについては、インク供給不良となる程度までインク残量が減少した場合には、使用済みインクカートリッジとして廃棄されることから、資源の無駄になるという問題が指摘されていた。
【0006】
また、従来、インクカートリッジの製造段階では、インク収容室内にインクを注入するためのインク注入専用孔を容器本体に形成しておき、そのインク注入専用孔からインクをインク収容室に注入する方法が一般的であった。しかし、この製造方法による場合には、インク注入に使用したインク注入専用孔をインクの注入後においてシールフィルムの貼付等によって封止する必要があり、インクカートリッジの製造工程が煩雑になると共に部品点数が増えるという問題がある。
【0007】
そのため、近時は、インク収容室にインクが収容されてなるインクカートリッジを製造するに際して、インク注入専用孔を使用することなく、インク収容室にインクを簡便に且つ効率良く注入することができると共に資源の有効利用に貢献できるインクカートリッジの製造方法が希求されていた。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。その目的は、液体収容室に液体が収容されてなる液体収容体を製造する際に、液体収容室に液体を簡便に且つ効率良く注入できると共に、液体供給不良となる程度まで液体残量が減少した液体収容体についてはその再利用を可能ならしめて資源の有効利用に貢献することができる液体収容体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、液体収容体の製造方法に係る本発明は、容器本体に、液体を収容可能な液体収容室と、その液体収容室内を大気に連通する大気連通路と、前記液体収容室に収容されている液体を前記容器本体の外部へ供給可能な液体供給口と、前記液体収容室と液体供給口との間を連通する液体流路と、その液体流路の途中に介在して常には閉弁状態に付勢される一方で前記液体供給口側の負圧が一定以上となった際には開弁状態になる差圧弁とが設けられ、前記液体収容室内には容器本体の外部から注入された液体が収容されてなる液体収容体の製造方法であって、前記差圧弁を閉弁状態に付勢している付勢力に抗して、前記差圧弁を強制的に開弁状態にする強制開弁工程と、前記差圧弁の強制開弁状態を維持しながら、前記液体供給口から前記液体流路を介して前記液体収容室に液体を注入する液体注入工程とを備えた。
【0010】
この発明によれば、液体収容室に液体を注入するにあたっては、液体注入専用孔を使用することなく、本来は液体噴射装置への液体供給用に使用される液体供給口を液体収容室への液体注入用にも兼用できるようになる。そして、液体収容室内の液体残量が液体供給不良となる程度まで減少した場合には、その液体供給口から液体を液体収容室に再注入すれば、液体収容体を再利用することも可能となり、使用済みの液体収容体として回収・廃棄しなくてもよくなる。したがって、液体収容室に液体が収容されてなる液体収容体を製造する際に、液体収容室に液体を簡便に且つ効率良く注入できると共に、液体供給不良となる程度まで液体残量が減少した液体収容体についてはその再利用を可能ならしめて資源の有効利用に貢献することができる。
【0011】
また、本発明では、前記強制開弁工程において、前記差圧弁は、前記容器本体の液体供給口から容器本体内に差し入れられた治具を用いて強制的に開弁状態にされる。
この発明によれば、液体供給口へ差し入れることが可能な治具を用意し、そうした治具を液体供給口から容器本体内へ差し入れるだけで、差圧弁を強制的に開弁状態にできる。そして、液体供給口からの液体注入後には、液体供給口に差し入れられている治具を引き抜くだけで、差圧弁を元の閉弁状態に付勢復帰させることができる。したがって、差圧弁を強制的に開弁状態にするための設備コストが嵩むことを抑制できる。
【0012】
また、本発明において、前記治具は、長尺状をなしており、その先端が閉弁状態にある差圧弁の弁体と該弁体が着座する弁座との間に割り込んで前記弁体を開弁方向へ移動させるように前記液体供給口内へ差し入れられる。
【0013】
この発明によれば、液体供給口から長尺状の治具を差し入れるだけで、その治具の先端が差圧弁の弁体と弁座との間に割り込んで弁体を開弁方向へ移動させるので、簡便且つ迅速に差圧弁を強制的に開弁状態にできるようになる。
【0014】
また、本発明は、前記液体注入工程の前段階に、前記液体収容室内を減圧する減圧工程を更に備えた。
この発明によれば、減圧工程で液体収容体内が減圧されるため、その後に液体注入工程を実行した場合に、液体が効率良く液体収容室内に注入される。
【0015】
また、本発明において、前記減圧工程では前記大気連通路を介して前記液体収容室内を吸引する。
この発明によれば、液体収容室内を減圧するにあたり、減圧専用孔を容器本体に設けなくても、大気連通路を減圧時に兼用することができるため、容器本体の構成を複雑化することなく剛性を良好に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明を液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンタ(以下、「プリンタ」と略称する。)に装着されて使用されるインクカートリッジに具体化した第1の実施形態を図1〜図9を参照しながら説明する。なお、本明細書中の以下の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は、図1〜図4において矢印で示す前後方向、左右方向、上下方向をそれぞれ示すものとする。
【0017】
図1〜図4に示すように、本実施形態におけるインクカートリッジ(液体収容体)11は、例えばポリプロピレン(PP)等の合成樹脂からなる前面(一面)側が開口した扁平略矩形箱形状の容器本体12を有している。容器本体12の前面には、その開口部12aの略全面を覆うように熱溶着可能な材料からなる前フィルム(フィルム部材)13が貼着されると共に、その前フィルム13の外側(前面側)から開口部12aを隠蔽するように蓋体14が着脱可能に取着されている。また、容器本体12の後面及び上面には、それら後面及び上面の略全体を覆うように熱溶着可能な材料からなる後フィルム15が貼着されている。
【0018】
また、図1及び図3に示すように、容器本体12の右側面には、このインクカートリッジ11がプリンタに設けられたカートリッジホルダ(図示略)に対して誤装着されることを防ぐための誤装着防止凸条16が上下方向に沿って延びるように形成されている。この誤装着防止凸条16は、インク色の種類毎に異なる形状とされており、それら各インク色の誤装着防止凸条16と個別対応するようにプリンタのカートリッジにはインク色の種類毎に異なる形状の誤装着防止凹条(図示略)が設けられている。すなわち、インクカートリッジ11は、プリンタのカートリッジホルダがインク色を異にする複数のインクカートリッジを装着可能である場合にも、そのインクカートリッジ11における誤装着防止凸条16とのみ嵌合関係を有する誤装着防止凹条が形成された適正な装着箇所以外の不適正な他の装着箇所には装着できないようになっている。
【0019】
一方、図1〜図4に示すように、容器本体12の左側面における上部からは、弾性変形可能に形成された係合レバー17が右斜め上方に向けて延設され、その係合レバー17の表面となる右側面の略中央部には係止爪17aが水平方向に沿うように突設されている。したがって、インクカートリッジ11は、プリンタのカートリッジホルダに装着された場合、係合レバー17が弾性変形すると共に、その係止爪17aがカートリッジホルダ側の一部に係止することにより、カートリッジホルダに対して位置決め状態で係止されるようになっている。
【0020】
また、図4に示すように、同じく容器本体12の左側面において係合レバー17よりも下方となる位置にはセンサ収容室18が凹設されている。センサ収容室18内には、振動を発し、その残留振動を検出することよりインクの有無を検出するセンシング部材(図示略)を備えたセンサユニット19と、このセンサユニット19をセンサ収容室18の内壁面に押し付けて固定するコイルばね20が収納されている。また、センサ収容室18の右側面側の開口はカバー部材21により閉塞されている。
【0021】
カバー部材21の表面側には半導体記憶素子を実装した回路基板22が設けられ、その半導体記憶素子にはインクカートリッジ11に関する各種情報(例えば、インク色情報、インク残量情報など)が記憶されている。そして、回路基板22は、その表面に露出した端子22aが、インクカートリッジ11がプリンタのカートリッジホルダに装着された際に、そのカートリッジホルダ側に設けられた接続端子と接触することにより、プリンタ側の制御装置(図示略)との間で各種情報を受け渡しするようになっている。
【0022】
また、図4に示すように、容器本体12の下面には、容器本体12の内部に大気中から空気を導入するための大気開放孔23と、インクカートリッジ11がプリンタのカートリッジホルダに装着された際に、そのカートリッジホルダに設けられたインク供給針(図示略)が嵌入されるインク供給口(液体供給口)24とが開口形成されている。すなわち、このインクカートリッジ11は、大気開放孔23から容器本体12内に空気を導入しつつインク供給口24からインク(液体)をプリンタ側(すなわち、容器本体12外)に導出して供給する開放型のインクカートリッジとして構成されている。
【0023】
図2及び図4に示すように大気開放孔23は封止フィルム25により封止されている。この封止フィルム25は、インクカートリッジ11をプリンタのカートリッジホルダに装着して使用状態とする前に、ユーザによって剥がされる。そして、この封止フィルム25の剥離により、大気開放孔23が外部に露出し、インクカートリッジ11の容器本体12内が大気に連通されるようになっている。また、同様にインク供給口24も封止フィルム26により封止されている。そして、この封止フィルム26は、インクカートリッジ11がプリンタのカートリッジホルダに装着されたときに、そのカートリッジホルダに設けられているインク供給針によって突き破られることになる。
【0024】
図3及び図4に示すように、インク供給口24内には、カートリッジホルダ側のインク供給針のインク供給口24内への嵌入を許容するエラストマ等からなる環状のシール部材27と、このシール部材27に着座する供給弁28と、この供給弁28をシール部材27に向けて付勢するコイルばね29とが収容されている。すなわち、インク供給口24は、コイルばね29に付勢された供給弁28がシール部材27に圧接することにより、常には容器本体12外へのインクの流出が規制された閉塞状態となる。その一方、カートリッジホルダ側のインク供給針がインク供給口24内に嵌入されたときには、そのインク供給針に押されて供給弁28がコイルばね29の付勢力に抗してインク供給口24の内奥へ移動し、シール部材27から離間することにより、インク供給口24は、容器本体12外へのインクの流出が許容された開放状態となる。
【0025】
また、同じく容器本体12の下面において、大気開放孔23の左側にはインクカートリッジ11にインクを注入する前段階で容器本体12内から空気を吸引して減圧するための減圧孔30が開口形成されている。そして、この減圧孔30は、封止フィルム31により封止されている。また、大気開放孔23とインク供給口24との間にはインク収容室36からインク供給口24に至るインク流路(液体流路)の一部を構成する凹部32が形成され、その凹部32も同様に封止フィルム33により封止されている。また、インク供給口24の右側にはセンサ収容室18の下面側開口18aが形成されており、この開口18aも封止フィルム34により封止されている。
【0026】
次に、インクカートリッジ11における容器本体12の内部構造について説明する。
図3及び図5に示すように、容器本体12の開口部12a内には、その容器本体12の厚さ方向(前後方向)に開口部12aの底面から立設された複数のリブ(仕切壁)35によりインク収容室(液体収容室)36などの複数の室及び流路(若しくは通路)が区画形成されている。一方、図4及び図6に示すように、容器本体12の後面(背面)側には、差圧弁37を収容する円形凹状の差圧弁収容室38と、矩形凹状の気液分離室39とが形成されている。
【0027】
差圧弁収容室38内には、弾性変形可能な略円盤状の膜弁(弁体)40と、差圧弁収容室38の開口を覆う弁蓋41と、この弁蓋41と膜弁40との間に配されるコイルばね42とが収納されている。差圧弁収容室38はインク収容室36とインク供給口24との間に位置しているため、差圧弁37は、インク収容室36とインク供給口24との間を連通するインク流路の途中に介在することになる。
【0028】
気液分離室39の内底面には、その内側面に沿って矩形環状の突条43が形成され、この突条43の頂部に整合するように矩形状をなす気液分離膜44が貼着されている。この気液分離膜44は、気体を通過させる一方で、液体の通過は遮断する素材からなり、気体(空気)と液体(インク)とを分離する機能を有している。すなわち、この気液分離膜44は大気開放孔23とインク収容室36との間を連通する大気連通路60(図6参照)の途中に介在して、インク収容室36内のインクが大気連通路60を経て大気開放孔23から容器本体12外へ流出しないようにしている。
【0029】
次に、図5及び図6を参照しながら、インク収容室36からインク供給口24に至るまでのインク流路の構成について説明する。
図5に示すように、容器本体12の前面側には、リブ35により上部インク収容室45と下部インク収容室46とに分割されたインク収容室36が区画形成されている。また、上部インク収容室45と下部インク収容室46との間に位置するようにしてバッファ室として機能する略矩形状の収容室側流路部47が区画形成されると共に、この収容室側流路部47と下部インク収容室46との間に位置するようにして縦長の供給口側流路部48が区画形成されている。
【0030】
上部インク収容室45の最下方となる位置には容器本体12の厚さ方向(前後方向)へ貫通孔49が形成されると共に、この貫通孔49の下方であって下部インク収容室46の最下方となる位置には貫通孔50が形成されている。図6に示すように、貫通孔49と貫通孔50とは容器本体12の後面側に形成された連絡流路51に連通しており、この連絡流路51を介して上部インク収容室45からインクが下部インク収容室46に流れるようになっている。
【0031】
また、図5に示すように、容器本体12の前面側において下部インク収容室46の側方には、図示しない貫通孔を介して下部インク収容室46に連通する連絡流路52が設けられている。そして、この連絡流路52は、図示しない貫通孔を介して前述したセンサ収容室18内に連通している。なお、この連絡流路52は三次元的な迷路構造をなす流路であり、その迷路構造にてインク中の気泡などを捕捉することにより、下流側へ気泡などがインクと一緒に流れないようにしている。
【0032】
また、図5に示すように、容器本体12の前面側において収容室側流路部47には貫通孔53が形成される一方、図6に示すように、容器本体12の後面側にはセンサ収容室18から前述した収容室側流路部47の貫通孔53まで延びる連絡流路54(図6参照)が形成されている。さらに、収容室側流路部47において貫通孔53よりも下方となる位置には貫通孔55が形成され、この貫通孔55は供給口側流路部48内の上方位置であって且つ差圧弁収容室38の中心に形成された弁孔56と差圧弁収容室38を介して連通している。
【0033】
そして、図5に示すように、供給口側流路部48内の下方位置には貫通孔57が形成され、この貫通孔57を介して供給口側流路部48がインク供給口24に連通されている。以上のように、本実施形態では、インク収容室36(下部インク収容室46)からインク供給口24まで至るインク流路(液体流路)が、前述した連絡流路52、連絡流路54、収容室側流路部47、及び供給口側流路部48により構成されている。なお、これらのインク流路及びインク収容室36などは、容器本体12の前面側及び後面側にそれぞれ貼着される前述した前フィルム13及び後フィルム15を壁面の一部として各々形成される。
【0034】
次に、図5及び図6を参照しながら、大気開放孔23からインク収容室36に至るまでの大気連通路60の通路構造について説明する。
図6に示すように、容器本体12の後面側において大気開放孔23の近傍には、貫通孔61が大気開放孔23に連通するように形成されている。この貫通孔61からは前述した気液分離室39に連通する蛇行状の細溝62が上方に向けて形成され、気液分離室39の内底面には貫通孔63が形成されている。この貫通孔63は容器本体12の前面側に区画形成された連絡通路64の下方位置に連通し、その連絡通路64の上方位置には貫通孔65aが形成されている。貫通孔65aの真横には貫通孔65bが形成され、これら両貫通孔65a,65bの間を連絡するように、容器本体12の後面には、途中に折り返し部66aを有する連絡通路66が形成されている。
【0035】
図5に示すように、容器本体12における前面側の右上隅には、矩形状をなすインクトラップ室67が前述した貫通孔65bに連通するように区画形成されている。インクトラップ室67の下方には逆L字状をなす連絡バッファ室68が区画形成され、これらの両室67,68が切欠部67aを介して連通されている。連絡バッファ室68の下方位置には貫通孔69が形成され、この貫通孔69は容器本体12の後面側にL字状をなすように形成された連絡通路70を介して上部インク収容室45に開口する貫通孔71に連通している。そして、本実施形態では、以上の細溝62、気液分離室39、連絡通路64、連絡通路66、インクトラップ室67、連絡バッファ室68、及び連絡通路70により、大気開放孔23からインク収容室36(上部インク収容室45)に至る大気連通路60が構成されている。
【0036】
次に、差圧弁37の機能について、図7(a)(b)を参照しながら説明する。
図7(a)に示すように、差圧弁37は、その膜弁40が常にはコイルばね42の付勢力により弁孔56を閉塞して、インク収容室36側からインク供給口24側へのインクの流れを遮断する閉弁状態に付勢されている。その一方で、インク供給口24からプリンタ側へのインクの供給に伴いインク供給口24側の負圧が一定以上となった場合には、差圧弁収容室38内の圧力(膜弁40の背圧)も同様に負圧が一定以上となる。そのため、図7(b)に示すように、差圧弁37は、膜弁40がコイルばね42の付勢力に抗して弾性変形し、弁孔56を包囲する弁座56aから離間した開弁状態となり、インク収容室36側からインク供給口24側へのインクの流れを許容することになる。なお、図7(b)においては、インクの流れを示す矢印を記載した関係上、インク供給口24の内部のシール部材27、供給弁28、及びコイルばね29の図示を省略している。
【0037】
そこで次に、本実施形態のインクカートリッジ11の製造方法について、より詳しくはインク収容室36内に容器本体12の外部から注入されたインクが収容されてなるインクカートリッジ11の製造方法について以下説明する。
【0038】
なお、本実施形態のインクカートリッジ11には、インク注入専用のインク注入孔なるものが設けられていない。そのため、インク収容室36内にインクを初期注入する場合、及び、インク収容室36内のインク残量がインク供給不良となる程度まで減少したときにインクを補充するべく再注入する場合の何れの場合も、本来はプリンタへのインク供給用に使用されるインク供給口24がインク注入用に兼用される。
【0039】
さて、インクカートリッジ11のインク収容室36にインクを注入する場合には、図8に示すように、インク注入装置85が使用される。インク注入装置85は、インクカートリッジ11のインク供給口24に気密に接続されるインク注入管86と、インクカートリッジ11の減圧孔30に気密に接続される真空吸引管87とを有している。そして、インク注入管86にはインク注入手段88が設けられる一方、真空吸引管87には真空吸引手段89が設けられている。
【0040】
インク注入手段88は、インク注入管86を開閉するバルブ90と、インクを貯留した大型のインクタンク91と、インクタンク91からインクをインク注入管86に圧送するためのポンプ92とを備えてなり、バルブ90の開閉動作によりインクの注入を許容及び遮断できるようになっている。一方、真空吸引手段89は、真空吸引管87を開閉するバルブ93と、真空吸引管87を介して真空引きする真空ポンプ94と、バルブ93と真空ポンプ94との間に配されて真空吸引管87内に流入したインクを捕集するインクトラップ95とを備えている。
【0041】
ところで、上記のインク注入装置85を使用してインク供給口24内へ単純にインクを圧送したとしても、インク供給口24とインク収容室36との間には閉弁状態に付勢された差圧弁37が介在しており、インクの流れが遮断されている。したがって、本実施形態では、インク注入工程(液体注入工程)の前段階で、次のような工程を実行するようにしている。
【0042】
まず、初期注入の場合には、容器本体12の前面(一面)に前フィルム13を貼着するときに、供給口側流路部48を取り囲むリブ35の頂面と前フィルム13との間に隙間が形成されるようにする。すなわち、図5に示すように、供給口側流路部48を取り囲むリブ35の頂面には所定間隔をおいて複数の凸部35aが形成されていることから、これら各凸部35a間の頂面に対しては前フィルム13を未貼着とする。すると、その未貼着部分には、リブ35における各凸部35a間の頂面と前フィルム13との間にインクの流れを許容する隙間が形成される。
【0043】
その結果、その隙間により、供給口側流路部48からリブ35を乗り越えて差圧弁37を迂回するようにして収容室側流路部47にインクが流入することを許容するバイパス流路80が形成されることになる。そして、このようにバイパス流路80を形成するバイパス形成工程が終了したら、次にはインクカートリッジ11にインク注入装置85を接続する。
【0044】
すなわち、インク注入装置85のインク注入管86をインク供給口24に接続すると共に、インク注入装置85の真空吸引管87を減圧孔30に接続する。なお、この接続作業を行うときに、インク供給口24内からシール部材27、供給弁28、及びコイルばね29を取り外しておくとよい。また、このとき大気開放孔23は封止フィルム25で封止されていることが必要である。
【0045】
そして、まずインク注入手段88のバルブ90は閉めた状態で真空吸引手段89のバルブ93を開いた状態とし、その状態で真空ポンプ94を駆動させる減圧工程を実行する。すると、インク収容室36の内圧が所定の圧力まで減圧される。そして、この減圧工程が終了したら、上記のインク注入装置85を使用したインク注入工程を実行する。
【0046】
すなわち、今度は真空吸引手段89のバルブ93は閉めた状態でインク注入手段88のバルブ90を開いた状態とし、その状態でインク注入手段88のポンプ92を駆動させる。すると、インクタンク91からインク注入管86へ圧送されたインクがインク供給口24内に流入し、供給口側流路部48とバイパス流路80と収容室側流路部47とを介してインク収容室36内に注入される。
【0047】
そして、このインク注入工程(初期注入工程)が終了したら、最後にバイパス流路80を閉塞するバイパス閉塞工程を実行する。すなわち、加熱ごて等の治具を用いて供給口側流路部48を取り囲むリブ35上の各凸部35aを前フィルム13の上から押圧加熱する。すると、供給口側流路部48を取り囲むリブ35上の凸部35aが溶融し、そのリブ35の頂面に前フィルム13が熱溶着により貼着される。そして、バイパス流路80が閉塞されて閉塞部81(図8参照)となり、これでインクの初期注入が終了して、インク収容室36内にインクが収容されてなるインクカートリッジ11の製造作業が終了する。
【0048】
一方、このインクカートリッジ11がプリンタに装着されて使用された結果、インク収容室36内のインク残量が微量又は零となったときには、次のようにしてインクの再注入が行われ、インクカートリッジ11が再利用できるようになる。すなわち、インクの再注入の場合は、インク注入工程に先立ち、差圧弁37を強制的に開弁状態にする強制開弁工程を実行する。
【0049】
まず、図9(a)に示すように、インク供給口24内からシール部材27、供給弁28、及びコイルばね29を取り外し、次に、長尺状の治具(例えば、長尺板片など)75をインク供給口24内に差し入れる。そして、その治具75の先端75aをインク供給口24の内奥から更に差圧弁収容室38内まで差し入れ、その先端75aを膜弁40と弁座56aとの間に割り込ませる。
【0050】
すると、この治具75の先端75aの割り込みにより、膜弁40がコイルばね42の付勢力に抗して弁座56aから離間する開弁方向へ浮き上がるように移動し、弁孔56が開放された開弁状態となる。そして、その状態を維持しつつ、前述したインク注入装置85を使用して初期注入時と同様のインク注入工程を実行する。
【0051】
勿論、このときも、インク注入工程の前段階では、初期注入の場合と同様に減圧工程を実行する。また、大気開放孔23についても、封止フィルム25又はその他の封止手段により封止されている必要がある。
【0052】
そして、減圧工程の終了後にインク注入工程が始まると、インク注入装置85のインクタンク91からインク注入管86に圧送されたインクがインク供給口24内に流入する。そして、供給口側流路部48からインクが弁孔56及び貫通孔55を通過して収容室側流路部47内に流入し、その後、インク収容室36内に注入される。
【0053】
なお、このインク注入工程(再注入工程)が終了したら、インク供給口24内から治具75を引き出し、そのインク供給口24内にシール部材27、供給弁28、及びコイルばね29を元通りに組み付ける。
【0054】
ところで、このインク再注入時において、特に強制開弁工程では、治具75の先端75aと膜弁40とが接触することになるが、この接触により膜弁40が損傷することは見た目では殆どない。仮に傷ついたとしても、通常は、顕微鏡などで拡大して見た場合に検証できる程度の傷であるため、以後における差圧弁37の弁機能には殆ど支障もない。
【0055】
したがって、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)インク収容室36にインクを注入するにあたっては、インク注入専用孔に依らなくても、本来はプリンタへのインク供給に使用されるインク供給口24をインク注入用にも兼用できる。したがって、インク注入専用孔を省略する等してインクカートリッジ11の構造の簡素化を図れば、製品コストの低減に貢献することができる。
【0056】
(2)また、インク収容室36内のインク残量が微量又は零まで減少した場合には、そのインク供給口24からインクを再注入すれば、インクカートリッジ11の再利用も可能となり、使用済みのインクカートリッジとして回収・廃棄しなくてもよくなる。
【0057】
(3)したがって、インク収容室36にインクが初期注入又は再注入により収容されてなるインクカートリッジ11を製造する際において、インク供給口24を利用してインク注入を行うようにすれば、インク注入専用孔を使用する場合と異なり、封止フィルムの引き剥がし及び再貼着といった煩雑な手作業を不要にできる。したがって、簡便に且つ効率良くインク収容室36にインクを注入することができる。
【0058】
(4)また、インク供給不良となる程度までインク残量が減少したインクカートリッジ11については、インク供給口24からのインクの再注入により、そのインクカートリッジ11の再利用を可能にできるため、無駄な廃棄を抑制して資源の有効利用に貢献することができる。
【0059】
(5)また、常には閉弁状態に付勢されている差圧弁37を、インク供給口24へ差し入れ可能な治具75を用意し、そうした治具75をインク供給口24から差圧弁収容室38内まで差し入れるだけで、差圧弁37を強制的に開弁状態にできる。その一方で、インク注入後には、そのインク供給口24から治具75を引き抜くだけで、差圧弁37を元の閉弁状態に付勢復帰させることができる。したがって、差圧弁37を強制的に開弁状態にするために大掛かりな設備が必要となるわけでもないので、製造設備のコストが嵩むことを抑制できる。
【0060】
(6)しかも、インク供給口24から長尺状の治具75を差し入れるだけで、その治具75の先端75aが膜弁40と弁座56aとの間に割り込んで膜弁40を開弁方向へ移動させるので、簡便且つ迅速に差圧弁37を強制的に開弁状態にできるようになる。
【0061】
(7)インク注入工程の前段階の減圧工程でインク収容室36内が減圧されるため、その後におけるインク注入工程ではインクを効率良くインク収容室36内に注入することができる。
【0062】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した第2の実施形態について図10〜図13を参照しながら説明する。なお、本実施形態のインクカートリッジ(液体収容体)111は、その基本的構成が第1の実施形態のインクカートリッジ11とほぼ同じであり、その付随的構成の一部が第1の実施形態とは異なっている。したがって、第1の実施形態のインクカートリッジ11と機能が同一又は共通する基本的構成の部分については第1の実施形態のインクカートリッジ11の各構成要素に付した符号(二桁数字)を下二桁数字とする三桁数字の符号を付けて対応関係を示すこととし、その重複説明を省略することにする。
【0063】
ちなみに、第1の実施形態のインクカートリッジ11と相違する付随的構成を説明すると、図10、図12、図13に示すように、後フィルム115は、容器本体112の後面のみを覆うように貼着され、容器本体112の上面まで跨るようには貼着されていない。そして、その代わりに容器本体112の上面には、そのインクカートリッジ111のインク色の種類等を示す帯状の識別ラベル115aが貼着されている。
【0064】
また、図13に示すように、容器本体112の下面には、下部インク収容室(図示略)に連通する第1インク注入孔195aと上部インク収容室(図示略)に連通する第2インク注入孔195bが開口形成されている。すなわち、このインクカートリッジ111ではインク収容室にインクを初期注入する際に、これら両インク注入孔195a,195bのうち何れかが使用される。さらに、このインクカートリッジ111の場合、大気開放孔は容器本体112の後面側に蛇行状をなすように形成された細溝の先端が、その先端と対応する位置で後フィルム115に孔空けがされることで形成されるようになっている。
【0065】
また、同じく容器本体112の下面において、第1インク注入孔195aの左横には、開口166が形成されている。この開口166の内部は、図12に示すように、大気連通路の一部を構成する連通室167とされており、その連通室167内には略円柱状の押圧部材119aが収容されている。また、連通室167の上側には壁を隔てて同じく大気連通路の一部を構成する連通室168が形成され、この連通室168内には容器本体112の前面側から大気弁119とコイルばね120が収容されている。
【0066】
以上のような本実施形態のインクカートリッジ111においても、第1の実施形態のインクカートリッジ11の場合と同様に、インク供給口124から長尺状の治具(図示略)を差し入れることにより、差圧弁137を付勢力に抗して強制的に開弁状態にできるようになっている。したがって、この第2実施形態のインクカートリッジ111においても、第1の実施形態における前記(1)〜(7)と同様の効果を享受することができる。
【0067】
なお、上記各実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・ 減圧工程においては、減圧孔30を使用することなく、減圧孔30は封止したままで大気開放孔23に真空吸引管87を接続し、大気連通路60を介してインク収容室36内を吸引して減圧するようにしてもよい。このように構成した場合には、容器本体12に減圧孔30を形成しなくてもよくなるため、インクカートリッジ11の構成の簡素化を図ることができる。
【0068】
・ インク注入時のインク注入圧を高くすることにより、減圧しなくてもインク収容室36内へのインクの注入が支障なくできるのであれば、減圧工程は省略してもよい。
・ 治具75の形状は、差圧弁収容室38まで届くだけの長尺状のものであれば、その形状は板片に限らず、針金などの棒状のものであってもよい。
【0069】
・ 治具75は、例えば先端75aが二股状をなす形状であったり、先端75aに手元で開閉操作可能な一対の挟持片を有するものであったりしてもよい。すなわち、膜弁40と弁座56aとの間に先端75aが割り込んで開弁させるのではなく、膜弁40を把持又は挟持して膜弁40を弁座56aから離間する方向へ移動させるものであってもよい。
【0070】
・ 膜弁40の一部に磁性体を取り付けておき、差圧弁収容室38と対応する位置で、容器本体12の後面側から磁力により膜弁40を吸引して開弁させるようにしてもよい。
・ インク供給口24を使用したインク注入は、インク残量が減少して再利用する場合の再注入のときに限らず、そのインクカートリッジ11に対するインクの初期注入のときに適用してもよい。
【0071】
・ インクジェット式プリンタに装着されて使用されるインクカートリッジに限らず、例えば、ファクシミリや複写機等に用いられる印刷装置や、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ、あるいは面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの液体を噴射する他の液体噴射装置に装着される液体収容体に適用してもよい。また、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、さらには精密ピペットとしての試料噴射装置に装着されて使用される液体収容体に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】第1の実施形態のインクカートリッジの前面側斜視図。
【図2】同インクカートリッジの後面側斜視図。
【図3】同インクカートリッジの前面側分解斜視図。
【図4】同インクカートリッジの後面側分解斜視図。
【図5】同インクカートリッジの正面(前面)図。
【図6】同インクカートリッジの背面(後面)図。
【図7】同インクカートリッジの模式断面図であり、(a)は差圧弁が閉弁状態時を示す説明図、(b)は差圧弁が開弁状態時を示す説明図。
【図8】インク注入工程を説明するためのブロック図。
【図9】インクカートリッジの模式断面図であり、(a)(b)はそれぞれ強制開弁工程の手順を示す説明図。
【図10】第2の実施形態のインクカートリッジの前面側斜視図。
【図11】同インクカートリッジの後面側斜視図。
【図12】同インクカートリッジの前面側分解斜視図。
【図13】同インクカートリッジの後面側分解斜視図。
【符号の説明】
【0073】
11,111…インクカートリッジ(液体収容体)、12,112…容器本体、20…インク収容室(液体収容室)、24,124…インク供給口(液体供給口)、37,137…差圧弁、41…膜弁(弁体)、47…液体流路を構成する収容室側流路部、48…液体流路を構成する供給口側流路部、52,54…液体流路を構成する連絡流路、56a…弁座、60…大気連通路、75…治具、75a…先端。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体に、液体を収容可能な液体収容室と、その液体収容室内を大気に連通する大気連通路と、前記液体収容室に収容されている液体を前記容器本体の外部へ供給可能な液体供給口と、前記液体収容室と液体供給口との間を連通する液体流路と、その液体流路の途中に介在して常には閉弁状態に付勢される一方で前記液体供給口側の負圧が一定以上となった際には開弁状態になる差圧弁とが設けられ、前記液体収容室内には容器本体の外部から注入された液体が収容されてなる液体収容体の製造方法であって、
前記差圧弁を閉弁状態に付勢している付勢力に抗して、前記差圧弁を強制的に開弁状態にする強制開弁工程と、
前記差圧弁の強制開弁状態を維持しながら、前記液体供給口から前記液体流路を介して前記液体収容室に液体を注入する液体注入工程と
を備えた液体収容体の製造方法。
【請求項2】
前記強制開弁工程において、前記差圧弁は、前記容器本体の液体供給口から容器本体内に差し入れられた治具を用いて強制的に開弁状態にされる請求項1に記載の液体収容体の製造方法。
【請求項3】
前記治具は、長尺状をなしており、その先端が閉弁状態にある差圧弁の弁体と該弁体が着座する弁座との間に割り込んで前記弁体を開弁方向へ移動させるように前記液体供給口内へ差し入れられる請求項2に記載の液体収容体の製造方法。
【請求項4】
前記液体注入工程の前段階に、前記液体収容室内を減圧する減圧工程を更に備えた請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の液体収容体の製造方法。
【請求項5】
前記減圧工程では前記大気連通路を介して前記液体収容室内を吸引する請求項4に記載の液体収容体の製造方法。
【請求項1】
容器本体に、液体を収容可能な液体収容室と、その液体収容室内を大気に連通する大気連通路と、前記液体収容室に収容されている液体を前記容器本体の外部へ供給可能な液体供給口と、前記液体収容室と液体供給口との間を連通する液体流路と、その液体流路の途中に介在して常には閉弁状態に付勢される一方で前記液体供給口側の負圧が一定以上となった際には開弁状態になる差圧弁とが設けられ、前記液体収容室内には容器本体の外部から注入された液体が収容されてなる液体収容体の製造方法であって、
前記差圧弁を閉弁状態に付勢している付勢力に抗して、前記差圧弁を強制的に開弁状態にする強制開弁工程と、
前記差圧弁の強制開弁状態を維持しながら、前記液体供給口から前記液体流路を介して前記液体収容室に液体を注入する液体注入工程と
を備えた液体収容体の製造方法。
【請求項2】
前記強制開弁工程において、前記差圧弁は、前記容器本体の液体供給口から容器本体内に差し入れられた治具を用いて強制的に開弁状態にされる請求項1に記載の液体収容体の製造方法。
【請求項3】
前記治具は、長尺状をなしており、その先端が閉弁状態にある差圧弁の弁体と該弁体が着座する弁座との間に割り込んで前記弁体を開弁方向へ移動させるように前記液体供給口内へ差し入れられる請求項2に記載の液体収容体の製造方法。
【請求項4】
前記液体注入工程の前段階に、前記液体収容室内を減圧する減圧工程を更に備えた請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の液体収容体の製造方法。
【請求項5】
前記減圧工程では前記大気連通路を介して前記液体収容室内を吸引する請求項4に記載の液体収容体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−44184(P2008−44184A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−220735(P2006−220735)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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