説明

液体収容体

【課題】封止機能を持って強固に固着された封止体から封止機能を除去する際に、格別の困難がなく容易にその封止機能を除去することができる液体収容体を提供する。
【解決手段】液体収容体としての廃インクタンク30は、水分を含むインクを収容する。廃インクタンク30には、インクに晒される部位である上端開口30bが、ポリエチレンテレフタレートを材料として形成された上側フィルム層34aと、ポリカーボネートとポリ乳酸とを混合したものを材料として形成した下側フィルム層34bとで構成される第1フィルム部材34により封止されるように固着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット式プリンタ等の液体噴射装置に装着される液体収容体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録ヘッド(液体噴射ヘッド)からインク(液体)をターゲットに対して噴射する液体噴射装置として、インクジェット式プリンタ(以下、単に「プリンタ」と言う)が知られている。このプリンタは、往復移動するキャリッジ上に記録ヘッドを搭載し、この記録ヘッドにプリンタの所定箇所(例えばキャリッジ上)に着脱可能に装着されたインクカートリッジ(液体収容体)からインクを供給し、そのインクを記録ヘッドからターゲットに噴射することにより印刷を行うようになっている。
【0003】
このようなプリンタに装着されるインクカートリッジとして、従来から、例えば特許文献1に記載のインクカートリッジが知られている。このインクカートリッジは、内部にインク収容室が形成された容器本体を有し、その容器本体の背面側には、インク収容室に連通する凹部が形成されると共に、その凹部の開口を閉塞して封止するプラスチック製のフィルム部材(封止体)が固着されている。そして、従来、この特許文献1のようなインクカートリッジを廃棄する際には、容器本体からフィルム部材を引き剥がして、容器本体とフィルム部材とを分別して廃棄するようにしていた。
【特許文献1】特開2003−127410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のインクカートリッジでは、容器本体に丈夫なフィルム部材が熱溶着等により固着されているため、容器本体からフィルム部材を引き剥がすことが非常に困難であった。また、特許文献1のインクカートリッジにおいて、例えば、この丈夫なフィルム部材を、出荷段階でのインクカートリッジのインク供給口を封止するために用いた場合には、プリンタへ装着する際に記録ヘッド側に連通するインク供給針で該フィルム部材を突き破るときに大きな力を要していた。このように、従来は、封止機能を持ってインクカートリッジに固着されたフィルム部材をインクカートリッジから剥がしたり破ったりすることで封止機能を除去しようとする際に、多大な困難を被っていた。
【0005】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、封止機能を持って強固に固着された封止体から封止機能を除去する際に、格別の困難がなく容易にその封止機能を除去することができる液体収容体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の液体収容体は、水分を含む液体を収容する液体収容体であって、前記液体に晒される部位に、少なくともポリ乳酸を含む材料により構成された封止体を固着した。
【0007】
ポリ乳酸は、加水分解性を有するため、水分に晒されると分解されて脆弱化する。この点、この発明によれば、封止体が少なくともポリ乳酸を含む材料により構成されているため、封止体が水分を含む液体に晒されることで脆弱化されるようになる。したがって、封止機能を持って強固に固着された封止体から封止機能を除去する際に、格別の困難がなく容易にその封止機能を除去することが可能となる。
【0008】
本発明の液体収容体は、前記封止体が薄膜状に形成されたフィルム部材よりなる。
この発明によれば、封止体が嵩張らないので、液体収容体の小型化に寄与することが可能となる。
【0009】
本発明の液体収容体は、前記フィルム部材が、前記液体を収容する液体収容部の開口を封止するように固着されている。
この発明によれば、フィルム部材は、液体に晒されることで脆弱化する。このため、液体収容部の開口をフィルム部材により封止した場合において、そのフィルム部材による封止機能を除去する場合には、該フィルム部材を容易に破断して封止機能を除去することが可能となる。
【0010】
本発明の液体収容体は、前記フィルム部材が複数のフィルム層を積層してなるとともに、該各フィルム層のうち少なくとも前記液体に晒される側に位置するフィルム層を、少なくともポリ乳酸を含む材料により構成した。
【0011】
この発明によれば、例えば、フィルム部材を、液体に晒される側に位置する少なくともポリ乳酸を含む材料により構成されたフィルム層に、該フィルム層の液体に晒される面とは反対側の面に合成樹脂製の別のフィルム層を積層した2層構造とすることで、液体に晒される側に位置するフィルム層が脆弱化する。このため、液体収容体の廃棄時にフィルム部材を容易に引き剥がして分別することが可能となる。
【0012】
本発明の液体収容体は、前記封止体が、前記液体に晒される部位から引き剥がされることにより液体封止機能が除去されるものである。
この発明によれば、封止体が液体に晒されて脆弱化するため、該封止体を液体に晒される部位から容易に引き剥がしてその液体封止機能を除去することが可能となる。
【0013】
本発明の液体収容体は、前記封止体が、前記液体を噴射する液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置の液体収容体装着部に設けられた液体供給針に突き破られることにより、液体封止機能が除去されるものである。
【0014】
この発明によれば、封止体が液体に晒されて脆弱化するため、液体収容体の液体収容体装着部への装着時に、液体供給針によって容易に突き破られるようにすることが可能となる。すなわち、この場合、液体供給針によって封止体を小さな力で突き破ることが可能となるとともに、突き破られた封止体の破片が液体供給針の針穴に詰まり難くすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の液体噴射装置をインクジェット式プリンタに具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」をいう場合は、特に説明がない限り、図1を基準とした場合の「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」と一致するものとする。
【0016】
図1に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ11は、平面視矩形状をなすフレーム12を備えている。フレーム12内には、左右方向に延びるプラテン13が架設されるとともに、該プラテン13上には、フレーム12の背面下部に設けられた紙送りモータ14を有する紙送り機構により記録用紙Pが後方側から給送されるようになっている。また、フレーム12内におけるプラテン13の上方には、該プラテン13の長手方向(左右方向)と平行に棒状のガイド部材15が架設されている。
【0017】
このガイド部材15には、キャリッジ16が、該ガイド部材15の軸線方向(左右方向)に沿って往復移動可能に支持されている。キャリッジ16は、フレーム12内の後面に設けられた一対のプーリ17a間に張設されたタイミングベルト17を介してフレーム12の背面上部に設けられたキャリッジモータ18に駆動連結されている。そして、キャリッジ16は、キャリッジモータ18の駆動によりガイド部材15に沿って往復移動されるようになっている。
【0018】
キャリッジ16の下面には、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド19が搭載されるとともに、該記録ヘッド19の下面は、図2に示すように、複数(本実施形態では4つ)のノズル20が形成されたノズル形成面19aとされている。また、キャリッジ16における記録ヘッド19の上側は、液体収容体としての複数(本実施形態では4つ)のインクカートリッジ21がそれぞれ着脱可能に装着される液体収容体装着部としてのカートリッジホルダ22とされている。
【0019】
カートリッジホルダ22には、該カートリッジホルダ22にインクカートリッジ21が装着された際に、該インクカートリッジ21と接続されるとともに、インクカートリッジ21内の水分を含む液体としてのインクを記録ヘッド19に導くための液体供給針としてのインク供給針65(図7参照)が立設されている。そして、インクカートリッジ21内のインクは、記録ヘッド19に備えられた図示しない圧電素子の駆動により、インクカートリッジ21から記録ヘッド19へと供給され、該記録ヘッド19の各ノズル20からプラテン13上に給送された記録用紙Pに噴射されて印刷が行われるようになっている。また、フレーム12内の右端部に位置するホームポジション領域(非印刷領域)には、非印刷時に記録ヘッド19のメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット23が設けられている。
【0020】
次に、メンテナンスユニット23について説明する。
図2に示すように、メンテナンスユニット23は、有底四角箱状をなすキャップ24と、該キャップ24を昇降させるための昇降装置25とを備えている。そして、このメンテナンスユニット23は、キャリッジ16をホームポジション領域に移動させた状態で、キャップ24を昇降装置25により上昇させることで、記録ヘッド19のノズル形成面19a(各ノズル20)をキャップ24により封止するようになっている。また、キャップ24の底壁からは突部27が下方に向かって突設されるとともに、該突部27内には、キャップ24内からインクを排出するための排出路27aが上下方向に貫通形成されている。
【0021】
突部27には、可撓性材料よりなる排出チューブ29の基端側(上流側)が接続されるとともに、該排出チューブ29の他端側(下流側)は、有底四角箱状をなす液体収容体としての廃インクタンク30内に、該廃インクタンク30の右壁に形成された貫通孔30aを介して挿入されている。また、キャップ24と廃インクタンク30との間における排出チューブ29の中間部には、キャップ24側から廃インクタンク30側へ向かってキャップ24内を吸引するための吸引ポンプ31が配設されている。
【0022】
そして、記録ヘッド19のノズル形成面19a(各ノズル20)をキャップ24により封止した状態で吸引ポンプ31を駆動することで、各ノズル20から増粘したインクが気泡等とともに吸引され、キャップ24及び排出チューブ29を介して廃インクタンク30内に排出される、いわゆるクリーニングが行われるようになっている。廃インクタンク30の内部はクリーニングによって排出されたインクを収容する液体収容部としての排出インク収容部32とされるとともに、該排出インク収容部32にはクリーニングによって排出されたインクを吸収保持する廃インク吸収材33が収容されている。
【0023】
廃インクタンク30の上面には、該廃インクタンク30の上端開口30b(液体収容部の開口)を封止する封止体としての薄膜状に形成された第1フィルム部材34が接着剤によって固着されている。第1フィルム部材34は、複数(本実施形態では2つ)のフィルム層を積層することで構成されている。すなわち、第1フィルム部材34は、上側に位置する上側フィルム層34aと、該上側フィルム層34aの下側に一体に積層された下側フィルム層34bとにより構成されている。したがって、第1フィルム部材34は、下側フィルム層34bにおいて接着剤により廃インクタンク30の上面に固着されている。このため、第1フィルム部材34は、下側フィルム層34bにおいて、廃インクタンク30内のインクまたは該インクの蒸気に晒される。
【0024】
なお、上側フィルム層34aは、ポリエチレンテレフタレート(PET)を材料として形成されるとともに、下側フィルム層34bは、ポリカーボネート(PC)とポリ乳酸とを重量比1:1で混合したものを材料として形成されている。
【0025】
次に、インクカートリッジ21の構成について詳述する。
図3に示すように、インクカートリッジ21は、右面が開口された略直方体状の本体ケース40と、該本体ケース40の右面開口を封止する略四角板状の蓋体41とを備えている。図4に示すように、インクカートリッジ21内、すなわち本体ケース40内は、インクが貯留される液体収容部としてのインク収容室43となっている。インク収容室43内には、該インク収容室43内を上下に区画する枠状の第1区画壁44が設けられている。そして、インク収容室43内における下側は、下側インク収容室45とされるとともに、インク収容室43内における上側は、上側インク収容室46とされている。
【0026】
上側インク収容室46内には、該上側インク収容室46内を前後に区画する第2区画壁47が設けられている。そして、上側インク収容室46内における後側は、バッファ室48とされるとともに、上側インク収容室46内における前側は、負圧発生手段収容室49とされている。そして、下側インク収容室45とバッファ室48とは連通管50を介して連通されるとともに、バッファ室48と負圧発生手段収容室49とは第2区画壁47に形成された連通口47aを介して連通されている。
【0027】
負圧発生手段収容室49内には円環状の第3区画壁51が形成されるとともに、該第3区画壁51内の空間は円板状の第4区画壁52により左右に区画されている。すなわち、第3区画壁51内の空間において、第4区画壁52よりも右側の空間がフィルタ室53とされるとともに、第4区画壁52よりも左側の空間が差圧弁(図示略)を収容する差圧弁収容室54(図5参照)とされている。また、第4区画壁52には、図4及び図5に示すように、フィルタ室53と差圧弁収容室54とを連通する上下一対の貫通孔52aが形成されている。
【0028】
そして、図5に示すように、差圧弁収容室54は、インクカートリッジ21がカートリッジホルダ22に装着された際に、インク導出路55を介してインク供給針65(図7参照)と接続されるインク供給接続部材56に連通している。なお、インクカートリッジ21内のインクはインク導出路55まで達しているため、該インク導出路55もインク収容室43に含まれる。また、本体ケース40の左面上には、インクカートリッジ21がカートリッジホルダ22に装着された際に、大気と連通する凹部57が形成されている。そして、図6に示すように、本体ケース40の左面上には、凹部57を含むほぼ全体を覆うように、接着剤により薄膜状に形成された略矩形状の封止体としての第2フィルム部材58が固着される。
【0029】
この第2フィルム部材58は、第1フィルム部材34と同じ材質からなる2層構造をなしているとともに、本体ケース40の左面上に固着される側(右側)に、ポリカーボネート(PC)とポリ乳酸とを重量比1:1で混合したものを材料として形成した層が配設されている。
【0030】
図7に示すように、円筒状のインク供給接続部材56内において、インク導出路55の下端開口55a(液体収容部の開口)は、封止体としての薄膜状に形成された第3フィルム部材59により封止されている。したがって、第3フィルム部材59は、常にインクに晒された状態となっている。なお、この第3フィルム部材59は、ポリカーボネート(PC)とポリ乳酸とを重量比1:1で混合したものを材料として形成された1層のフィルム部材である。
【0031】
インク供給接続部材56内における第3フィルム部材59の下側には、円環状のゴム製のパッキン60が配設されている。パッキン60の内周縁には、該パッキン60の内径がインク導出路55の下端開口55aの径よりも小さくなるように、内側に突出する突出部60aが形成されている。この突出部60aの上面は、第3フィルム部材59の下面に接触している。
【0032】
インク導出路55内における第3フィルム部材59の上側には、弁機構61が配設されている。弁機構61は、弁体62と、該弁体62を下端開口55a側(外側)へ付勢するコイルバネ63と、該コイルバネ63を位置規制する規制壁部64とを備えている。弁体62は、第3フィルム部材59がインク供給針65によって突き破られた後に、コイルバネ63の弾性力により付勢されてパッキン60の突出部60aに、これを弁座として当接することで下端開口55aを塞ぐように閉弁するようになっている。
【0033】
インク供給針65の内部には、記録ヘッド19にインクを供給するためのインク供給路66が形成されている。また、インク供給針65の先端部における周壁には、インク供給針65の内外を貫通する流通孔67が形成されている。
【0034】
次に、インクカートリッジ21のカートリッジホルダ22への着脱動作について説明する。
図7に示すように、インクカートリッジ21をカートリッジホルダ22に装着する場合には、インク供給接続部材56内のパッキン60にインク供給針65の先端部をあてがった状態で、インクカートリッジ21をインク供給針65に押しつけると、インク供給針65により第3フィルム部材59が突き破られる。このとき、第3フィルム部材59は、加水分解性を有するポリ乳酸を含む材料よりなっているため、インクに晒されることで脆弱化されている。
【0035】
このため、インクカートリッジ21をインク供給針65に押しつけてインク供給針65で第3フィルム部材59を突き破るときに必要とする力が少なくなる。特に、複数のインクカートリッジ21を一度に複数のインク供給針65に押しつけてインク供給針65で複数の第3フィルム部材59を突き破るときに必要とする力は飛躍的に少なくなる。
【0036】
そして、インク供給針65により第3フィルム部材59が突き破られると、図8に示すように、弁体62がコイルバネ63の付勢力に抗して押し上げられて開弁されるとともに、インク導出路55内にインク供給針65の先端部が挿入される。これにより、第3フィルム部材59におけるインク導出路55の下端開口55aの封止機能が除去されるとともに、インク導出路55内のインクは、流通孔67を介してインク供給針65内のインク供給路66に流れ込み、該インク供給路66を介して記録ヘッド19に供給される。なお、このとき、インク導出路55の下端開口55aからは、少量ではあるが、インクがカートリッジホルダ22内に漏れ出す。
【0037】
一方、インクカートリッジ21をカートリッジホルダ22から脱着する場合には、インクカートリッジ21をインク供給針65から引き抜けばよい。このとき、インク導出路55の下端開口55aは、弁体62がコイルバネ63の付勢力によりパッキン60の突出部60aに当接されて閉弁される。なお、このとき、インク導出路55の下端開口55aからは、少量ではあるが、インクがカートリッジホルダ22内に漏れ出す。
【0038】
したがって、インクカートリッジ21をカートリッジホルダ22に対して着脱動作を繰り返し行うと、カートリッジホルダ22内にはインクカートリッジ21から漏れ出したインクの水蒸気が漂うことで湿度が高められる。このため、インクカートリッジ21をカートリッジホルダ22に装着している状態では、インクカートリッジ21の表面は、インクの水蒸気に晒される部位となりうる。
【0039】
そして、インクカートリッジ21の表面(左面)には、本体ケース40の左面上に固着される側(右側)に、加水分解性を有するポリ乳酸を含む材料で形成した層を持つ第2フィルム部材58が固着されているため、この層はカートリッジホルダ22内に漏れ出したインクの水蒸気に晒されて脆弱化される。このため、インクカートリッジ21の廃棄時において本体ケース40と第2フィルム部材58とを分別する際には、本体ケース40から第2フィルム部材58を小さい力で容易に引き剥がすことが可能となる。
【0040】
また、廃インクタンク30を廃棄する場合には、該廃インクタンク30と第1フィルム部材34とを分別する必要がある。この場合、第1フィルム部材34の下側フィルム層34bは、加水分解性を有するポリ乳酸を含む材料で形成されているため、廃インクタンク30内のインクまたは該インクの蒸気に晒されて脆弱化される。このため、廃インクタンク30と第1フィルム部材34とを分別する際には、廃インクタンク30から第1フィルム部材34を小さい力で容易に引き剥がすことが可能となる。これにより、第1フィルム部材34における廃インクタンク30の上端開口30bの封止機能が除去される。
【0041】
以上、詳述した実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)ポリ乳酸は、加水分解性を有するため、水分を含むインクに晒されると分解されて脆弱化する。この点、本実施形態によれば、第1フィルム部材34、第2フィルム部材58、及び第3フィルム部材59が少なくともポリ乳酸を含む材料により構成されているため、これら第1フィルム部材34、第2フィルム部材58、及び第3フィルム部材59をインクまたはインクの水蒸気に晒される部位に固着することで脆弱化させることができる。
【0042】
このため、廃インクタンク30と第1フィルム部材34とを分別する際において、廃インクタンク30から第1フィルム部材34を小さい力で容易に引き剥がすことができる。また、インクカートリッジ21の廃棄時において本体ケース40と第2フィルム部材58とを分別する際には、本体ケース40から第2フィルム部材58を小さい力で容易に引き剥がすことができる。さらに、インクカートリッジ21をインク供給針65に押しつけてインク供給針65で第3フィルム部材59を突き破るときに必要とする力を少なくすることができる。さらに、この場合、第3フィルム部材59が脆弱化されることで、突き破られた第3フィルム部材59の破片をインク供給針65の流通孔67に詰まり難くすることができる。
【0043】
(2)第1フィルム部材34、第2フィルム部材58、及び第3フィルム部材59は、薄膜状に形成されているため、これらは嵩張ることがない。このため、第1フィルム部材34が固着される廃インクタンク30と、第2フィルム部材58及び第3フィルム部材59が固着されるインクカートリッジ21との小型化に寄与することができる。
【0044】
(変更例)
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・図9に示すように、インクカートリッジ21は、インク導出路55内に配設された弁機構61を省略し、インク供給接続部材56の下端開口を第3フィルム部材59によって封止するようにしてもよい。
【0045】
・第1フィルム部材34の下側フィルム層34b、第2フィルム部材58の本体ケース40の左面上に固着される側(右側)に位置する層、及び第3フィルム部材59を形成するための材料には、ポリ乳酸が含まれてさえいれば、その割合は任意の値でもよい。例えば、ポリ乳酸100%の材料を用いてもよい。
【0046】
・第1フィルム部材34は、下側フィルム層34bが最下端側に配置されれば、3層構造、あるいは4層構造以上にしてもよい。
・上記実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式プリンタ11として具体化したが、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタの製造や、有機ELディスプレイ等の画素形成に利用される液体噴射装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施形態のインクジェット式プリンタの斜視図。
【図2】同プリンタのメンテナンスユニットを示す概略断面図。
【図3】実施形態のインクカートリッジを示す斜視図。
【図4】蓋体を取り外した状態のインクカートリッジを示す斜視図。
【図5】第2フィルム部材を取り除いた状態のインクカートリッジを示す側面図。
【図6】インクカートリッジに第2フィルム部材を固着するときの状態を示す一部分解斜視図。
【図7】インク供給接続部材の要部拡大断面図。
【図8】インク供給接続部材にインク供給針を接続した状態を示す要部拡大断面図。
【図9】変更例のインクカートリッジを示す要部拡大断面図。
【符号の説明】
【0048】
11…液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ、19…液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、22…液体収容体装着部としてのカートリッジホルダ、21…液体収容体としてのインクカートリッジ、30…液体収容体としての廃インクタンク、32…液体収容部としての排出インク収容部、34…封止体としての第1フィルム部材、34a…上側フィルム層、34b…下側フィルム層、43…液体収容部としてのインク収容室、58…封止体としての第2フィルム部材、59…封止体としての第3フィルム部材、65…液体供給針としてのインク供給針。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を含む液体を収容する液体収容体であって、
前記液体に晒される部位に、少なくともポリ乳酸を含む材料により構成された封止体を固着したことを特徴とする液体収容体。
【請求項2】
前記封止体は薄膜状に形成されたフィルム部材よりなることを特徴とする請求項1に記載の液体収容体。
【請求項3】
前記フィルム部材は、前記液体を収容する液体収容部の開口を封止するように固着されていることを特徴とする請求項2に記載の液体収容体。
【請求項4】
前記フィルム部材は複数のフィルム層を積層してなるとともに、該各フィルム層のうち少なくとも前記液体に晒される側に位置するフィルム層を、少なくともポリ乳酸を含む材料により構成したことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の液体収容体。
【請求項5】
前記封止体は、前記液体に晒される部位から引き剥がされることにより液体封止機能が除去されるものであることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の液体収容体。
【請求項6】
前記封止体は、前記液体を噴射する液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置の液体収容体装着部に設けられた液体供給針に突き破られることにより、液体封止機能が除去されるものであることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の液体収容体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−283556(P2007−283556A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−111253(P2006−111253)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】