説明

液体収容容器、および、液体噴射システム

【課題】液体注入口と大気開放口が別々に設けられている液体収容容器において、液体注入口から液体が液体収容容器内部に注入される場合に大気開放口から液体が溢れ出す可能性を低減する技術を提供する。
【解決手段】液体噴射装置に液体を供給するための液体収容容器であって、液体を収容するための液体収容室と、液体収容室と連通し、液体収容室の液体の消費に伴って外部の空気を液体収容室内に導入するための空気収容室と、外部からの空気を空気収容室に導入するための大気開放口と、液体収容室に液体を注入するための液体注入口であって、液体収容室に液体を注入する際の液体収容容器の注入姿勢において、大気開放口よりも低い位置に配置された液体注入口と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体収容容器、および、液体収容容器を備えた液体噴射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置の一例であるプリンターは、記録ヘッドからインクを記録対象物(例えば、印刷用紙)に吐出し印刷を行う。記録ヘッドへのインク供給技術として、記録ヘッド上に配置されたインクカートリッジから記録ヘッドにインクを供給すると共に、液体噴射装置の外側に配置されたインクタンクからチューブを介してインクカートリッジやヘッドにインクを供給する技術が知られている(例えば、特許文献1〜3)。インクタンクはインクカートリッジに比べ、大容量のインクを収容可能である。また、インクタンクはインク注入口を備え、利用者は容易にインク注入口からインクを注入(補充)できる。
【0003】
例えば、特許文献1の技術では、インクタンク(インク貯蔵タンク)はインク排出口を備え、インク排出口及びフレキシブルパイプを介して印字ヘッドにインクが供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−219483号公報
【特許文献2】特開2005−1284号公報
【特許文献3】特開2005−199693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクタンクは、インク注入口とは別に、インクの消費に伴って内部に空気(大気)を導入するための大気開放口を備えている場合がある。この場合において、利用者はインク注入口からインクを注入するため、利用者はインク注入口に着目する傾向にある。このため、インク注入口と大気開放口の位置関係によっては、インクタンク内部に所定量以上のインクが収容された場合に、インク注入口からインクが溢れ出していなくても、大気開放口からインクが溢れ出す事態が生じる。さらに、利用者は大気開放口からインクが溢れ出ていることに気付かない可能性がある。
【0006】
また、大気開放口が気液分離機能を有するシート部材で覆われていた場合、大気開放口からインクが溢れ出るとシート部材がインクで濡れる。シート部材がインクで一旦濡れると、シート部材の本来の機能が損なわれ、シート部材を介して外部へインクが漏れ出す場合がある。また、シート部材の通気性が低下し、大気開放口からインクタンク内部に空気が導入されない場合がある。なお、このような問題は、インクタンクに限らず、液体噴射装置が噴射する液体を内部に収容するための液体収容容器であって、液体注入口と大気開放口とが別々に設けられている液体収容容器に共通する問題であった。
【0007】
従って、本発明は、液体注入口と大気開放口が別々に設けられている液体収容容器において、液体注入口から液体が液体収容容器内部に注入される場合に大気開放口から液体が溢れ出す可能性を低減する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することができる。
【0009】
[適用例1]液体噴射装置に液体を供給するための液体収容容器であって、
前記液体を収容するための液体収容室と、
前記液体収容室と連通し、前記液体収容室の前記液体の消費に伴って外部の空気を前記液体収容室内に導入するための空気収容室と、
外部からの空気を前記空気収容室に導入するための大気開放口と、
前記液体収容室に前記液体を注入するための液体注入口であって、前記液体収容室に前記液体を注入する際の前記液体収容容器の注入姿勢において、前記大気開放口よりも低い位置に配置された液体注入口と、を備える、液体収容容器。
適用例1の液体収容容器によれば、注入姿勢において、液体注入口は大気開放口よりも低い位置に配置されている。よって、液体注入口から液体が液体収容室に注入される場合に、大気開放口から液体が溢れ出る可能性を低減することができる。また、液体注入時において、利用者は液体注入口に着目しているため、液体注入口から液体が溢れ出る可能性は低減できる。
【0010】
[適用例2]適用例1に記載の液体収容容器であって、さらに、
前記大気開放口と外部とを区画するためのシート部材であって、気体を透過すると共に液体を透過しないシート部材を備える、液体収容容器。
適用例2の液体収容容器によれば、シート部材によって液体収容室に収容される液体が大気開放口から外部に溢れ出す事態を防止できる。さらに、液体注入口は大気開放口よりも低い位置に配置されていることから、液体注入時に大気開放口から液体が溢れ出す可能性を低減できる。これにより、液体注入時にシート部材が液体で濡れることを防止し、シート部材の機能を損なう可能性を低減できる。
【0011】
[適用例3]適用例1又は適用例2に記載の液体収容容器であって、
さらに、一端部が前記空気収容室内で開口し、他端部が前記液体収容室内で開口することで前記空気収容室と前記液体収容室を連通させる連通部を備え、
前記注入姿勢において、
前記液体注入口は、前記一端部である前記開口よりも低い位置に配置されている、液体収容容器。
適用例3の液体収容容器によれば、液体注入時に液体が空気収容室に導入される可能性を低減できる。これにより、液体注入時に大気開放口から液体が溢れ出す可能性をより低減できる。
【0012】
[適用例4]適用例1乃至適用例3のいずれか1つに記載の液体収容容器であって、さらに、
前記液体注入口を塞ぐ弾性を有する栓部材であって、前記液体注入口から脱着可能な栓部材を備え、
前記注入姿勢において、前記液体収容室は、
前記液体注入口の上端開口まで前記液体が達する程度に前記液体が前記液体収容室に注入された場合に、容積V1の空気を貯留可能な空気貯留部を有し、
前記液体噴射装置に液体を供給する際の前記液体収容容器の使用姿勢において、前記液体収容室の部分のうち、前記液体注入口が位置する高さ以上の位置を占める注入口隣接部の容積をV2とした場合、
V1≧V2を満たす、液体収容容器。
適用例4の液体収容容器によれば、例えば、液体注入口から溢れ出す程の液体が液体収容容器に注入された場合でも、液体収容室は所定量の容積(容積V1)の空気を空気貯留部によって貯留することができる。この容積V1は、注入口隣接部の容積V2以上であることから、液体注入後に液体収容容器を使用姿勢にした場合に、栓部材が液体収容室の液体に晒される可能性を低減できる。よって、栓部材の一部が液体中に不純物として混じる等の液体の品質低下が発生する可能性を低減できる。
【0013】
[適用例5]適用例4に記載の液体収容容器であって、
前記空気貯留部は、前記液体収容室を形成する壁面によって形成された凹状形状であって、前記注入姿勢において鉛直下方向に向かって開口している、液体収容容器。
適用例5に記載の液体収容容器によれば、鉛直下方向に向かって開口する凹状形状とすることで、容易に空気貯留部を形成することができる。
【0014】
[適用例6]適用例1乃至適用例5のいずれか1つに記載の液体収容容器であって、
前記液体噴射装置に前記液体を供給する際の前記液体収容容器の使用姿勢において、
前記大気開放口は、前記空気収容室の部分のうち底面よりも上面に近い側に配置されている、液体収容容器。
適用例6に記載の液体収容容器によれば、液体注入の際に、液体が空気収容室の一部にまで注入された場合でも、液体収容容器を使用姿勢にした場合に大気開放口から液体が溢れ出す可能性を低減できる。
【0015】
[適用例7]液体噴射システムであって、
適用例1乃至適用例6のいずれか1つに記載の液体収容容器と、
対象物に前記液体を噴射するためのヘッドを有する液体噴射装置と、
前記液体収容容器と前記液体噴射装置とを接続し、前記液体収容室の前記液体を前記液体噴射装置に流通させる流通管と、を備える、液体噴射システム。
適用例7に記載の液体噴射システムによれば、注入時に大気開放口から液体が溢れ出す可能性を低減した液体収容容器を備えた、液体噴射システムを提供することができる。
【0016】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、上述した液体収容容器、液体噴射装置と液体収容容器を備えた液体噴射システムのほか、上述した液体収容容器の製造方法、上述した液体噴射システムを用いた液体噴射方法等の態様で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】参考例の液体収容容器90を説明するための図である。
【図2】第1実施例の液体噴射システム1を説明するための図である。
【図3】インクタンク30の外観斜視図である。
【図4】インクタンク30を更に説明するための図である。
【図5】インクタンク30の分解斜視図である。
【図6】空気の流れを説明するための図である。
【図7】インクタンク30の詳細を説明するための図である。
【図8】インク供給を説明するための図である。
【図9】インクタンク30を説明するための図である。
【図10】インクタンク30へのインクの注入状態を示す図である。
【図11】第2実施例のインクタンク30aを説明するための図である。
【図12】第2実施例の効果を説明するための図である。
【図13】第1変形例のインクタンク30bを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態を以下の順序で説明する。
A.参考例:
B.実施例:
C.変形例:
【0019】
A.参考例:
実施例の理解を容易にする為に、実施例の説明する前に参考例を説明する。図1は、参考例の液体収容容器90を説明するための図である。図1には、方向を特定するために互いに直交するXYZ軸が図示されている。なお、これ以降の図についても、必要に応じてXYZ軸が図示されている。液体収容容器90はインクタンク90とも呼ばれる。インクタンク90の液体導出部906から流通管であるホース24を介してプリンター(液体噴射装置)内のサブタンク(図示せず)にインクが供給される。インクをサブタンクに供給する際のインクタンク90の姿勢(使用姿勢)は、Z軸負方向が鉛直下方向となる。
【0020】
インクタンク90は、液体収容室940と空気収容室930とを有する。液体収容室940と空気収容室930は連通部950を介して連通している。液体収容室940はインクを収容する。収容されているインクは液体出口949から液体導出部906、ホース24を介してサブタンクに供給される。なお、インクをサブタンクに供給するインク供給時には、インクを注入するための液体注入口904は栓部材(図示せず)で塞がれている。
【0021】
液体収容室940のインクの消費と共に、連通部950を介して空気収容室930から空気が液体収容室940に導入される。インクタンク90は、空気収容室930を大気と連通させるための大気開放口918を有する。大気開放口918には、インクが外部に漏れ出すことを防止するための気液分離膜916が貼られている。
【0022】
インクタンク90にインクを注入する場合、図1に示すようにX軸負方向が鉛直下方向となるようにインクタンク90は所定の水平面上に設置される。図1に示すインクタンクの姿勢を「注入姿勢」ともいう。参考例のインクタンク90は、注入姿勢において液体注入口904は、大気開放口918よりも高い位置に配置されている。よって、利用者が液体注入口904からインクを液体収容室940に注入した場合、注入量によっては大気開放口918から溢れ出す可能性がある。また、利用者はインク注入時に液体注入口904に着目しているため、大気開放口918からインクが溢れ出していることに気付かない恐れもある。
【0023】
また、参考例のように、大気開放口918と外部とを区画するように気液分離膜916が貼られている場合、大気開放口918から溢れ出たインクにより気液分離膜916が濡れてしまう。気液分離シート916が一旦インクで濡れると、その機能が低下し、インクが気液分離シート916を透過し外部に漏れ出す事態や、空気が気液分離シート916を透過できず、インクタンク90内部に空気が導入されない事態が生じ得る。
【0024】
B.実施例:
B−1.第1実施例:
B−1−1.液体噴射システムの構成:
図2は、第1実施例の液体噴射システム1を説明するための図である。図2(A)は液体噴射システム1の外観斜視図である。図2(B)は、液体噴射システム1の外観斜視図であり、本発明の第1実施例の液体収容容器30を示した図である。
【0025】
図2(A)に示すように、液体噴射システム1は、液体噴射装置としてのインクジェットプリンター12(単に「プリンター12」ともいう。)と、タンクユニット50とを備える。プリンター12は、用紙給紙部13と、用紙排出部14と、キャリッジ16と、4つのサブタンク20と、を備える。4つのサブタンク20は色の異なるインクを収容している。具体的には、4つのサブタンク20は、ブラックインクを収容するサブタンク20Bkと、シアンインクを収容するサブタンク20Cnと、マゼンダインクを収容するサブタンク20Maと、イエローインクを収容するサブタンク20Ywである。4つのサブタンク20は、キャリッジ16に搭載されている。
【0026】
用紙給紙部13にセットされた印刷用紙は、プリンター12内部に搬送され、印刷後の印刷用紙が用紙排出部14から排出される。
【0027】
キャリッジ16は、主走査方向(紙巾方向)に移動可能である。この移動は、ステッピングモーター(図示せず)の駆動によりタイミングベルト(図示せず)を介して行われる。キャリッジ16の下面には、記録ヘッド(図示せず)が備え付けられている。この記録ヘッドの複数のノズルからサブタンク20に収容されているインクが印刷用紙上に噴射され印刷が行われる。なお、タイミングベルトやキャリッジ16等のプリンター12を構成する各種部品は、ケース10内部に収容されていることで保護されている。
【0028】
タンクユニット50は、上面ケース54と、第1の側面ケース56と、第2の側面ケース58と、を備える。さらに、図2(B)に示すように、タンクユニット50は、ケース54,56,58内部に4つの液体収容容器としてのインクタンク30を備える。ケース54,56,58によってタンクユニット50がより安定して所定の場所(例えば、机や棚)に設置される。4つのインクタンク30は、4つのサブタンク20が収容する色に対応したインクを収容している。すなわち、4つのインクタンク30は、ブラックインク、シアンインク、マゼンダインク、イエローインクをそれぞれ収容する。なお、インクタンク30は、サブタンク20よりも多くの量のインクを収容できる。
【0029】
各色を収容したインクタンク30は、対応した色のインクを収容するサブタンク20にホース24によって接続されている。記録ヘッドからインクが噴射されサブタンク20のインクが消費されると、ホース24を介してインクタンク30のインクがサブタンク20に供給される。これにより、液体噴射システム1は、プリンター12の中断動作なしに連続して印刷を続けることができる。ホース24は、合成ゴム等の弾性を有する部材で形成されている。なお、サブタンク20を設けずに、ホース24を介して直接にインクタンク30から記録ヘッドにインクを供給しても良い。
【0030】
図3は、インクタンク30の外観斜視図である。インクタンク30は栓部材302を有する。栓部材302は液体注入口304に装着されている。栓部材302は液体注入口304から取り外し可能であり、取り外すことで液体注入口304からインクタンク30内部にインクを注入(補充)することができる。インクタンク30は、第1の嵌合部324と第2の嵌合部325とを有する。第1の嵌合部324は突起形状である。第2の嵌合部325は、貫通孔325aを有する。第1と第2の嵌合部324、325を用いて、隣り合うインクタンク30が連結される。
【0031】
図4は、インクタンク30を更に説明するための図である。図4は、タンクユニット50の斜視図であり、説明の容易のために上面ケース54(図2(A))の図示は省略している。隣り合うインクタンク30の第2の嵌合部325の貫通孔325aと第1の嵌合部324とが嵌め合わされることで、隣り合うインクタンク30同士が連結される。タンクユニット50は、プリンター12が噴射するインク色の数に応じて、インクタンク30を新たに追加したり、取り外したりすることができる。インクタンク30のインクをプリンター12側へ供給する際のインクタンクの使用姿勢は、Z軸負方向が鉛直下方向となり、Z軸正方向が鉛直上方向となる。
【0032】
B−1−2.インクタンク30の詳細構成:
図5は、インクタンク30の分解斜視図である。インクタンク30は、タンク本体32と、栓部材302と、複数のシート部材34,316,322(「フィルム34,316,322」ともいう。)と、を備える。タンク本体32は、ポリプロピレン等の合成樹脂により成形されている。また、タンク本体32は、半透明であり外部から内部のインクの量を確認できる。タンク本体32の形状は、一側面が開口した凹状形状である。タンク本体32の凹部には様々な形状のリブ362が形成されている。なお、説明の便宜上、タンク本体32について、Z軸正方向側の面を上面fa、Z軸負方向側の面を底面fbとする。また、使用姿勢におけるタンク本体32の4つの側面について、X軸正方向側の面を右側面fc、X軸負方向側の面を左側面fd、Y軸正方向側の面(すなわち、開口が形成された面)を正面fe,Y軸負方向側の面を後面ffとする。
【0033】
フィルム34は、リブ362の端面、および、タンク本体32の外枠の端面に隙間が生じないように緻密に貼り付けられている。これにより複数の小部屋が形成されている。具体的には、主に、空気収容室330、液体収容室340、連通部350、液体収容室340の一部分である液体保持部345と、が形成される。なお、これらの各部屋(各構成)の詳細は後述する。
【0034】
タンク本体32の右側面fcには、液体注入口304が形成されている。また、右側面fcには、気液分離室312と、大気導入口317と、連通流路314,320と、連通口318,319a,319bとが形成されている。気液分離室312の形状は凹状形状であり、凹状の底面に連通口319aが形成されている。連通口318は、大気開放口318とも呼び、空気収容室330と連通し、外部の空気を空気収容室330に導入する。
【0035】
気液分離室312の底面を囲む内壁の全周には土手313が形成されている。シート部材316は、土手313に粘着されている。このシート部材316は、気体を透過すると共に液体を透過しない性質を有する。フィルム322は、連通流路320、気液分離室312、連通流路314、連通口318,319a,319bを覆うように右側面fcに粘着されている。これにより、連通流路314、320を形成すると共に、インクタンク30内部のインクが外部へ漏れ出すことを防止している。
【0036】
液体注入口304は、液体収容室340と連通している。栓部材302は弾性をする部材(例えば、ゴム)であり、外力により液体注入口304から取り外しが可能である。栓部材302が液体注入口304から取り外されることで、液体注入口304から液体収容室340にインクが注入(補充)される。空気収容室330と液体収容室340とは連通部350によって連通している。具体的には、連通部352の一端部351は空気収容室330と連通し、他端部352は液体収容室340(詳細には、液体保持部345)と連通している。すなわち、一端部351は空気収容室330内で開口し、他端部352は液体収容室340内で開口している。
【0037】
タンク本体32の使用姿勢における最下部近傍(底面fb側)には、液体導出部306が形成されている。液体導出部306は、筒状であり内部に流路が形成されている。液体導出部306の一端部(図示せず)は、液体収容室340と連通し、他端部348は外部へ向かって開口している。液体導出部306にはホース24(図2参照)が取り付けられる。
【0038】
次に、図6を用いて大気導入口317から大気開放口318までの流路を説明する。図6は、大気導入口317から大気開放口318までの空気の流れを説明するための図である。図6は、図5をX軸正方向側から見た図であり、大気導入口317から大気開放口318までの空気の流れを模式的に矢印で示している。なお、シート部材316、322の図示は省略している。
【0039】
図6に示すように、大気導入口317と連通流路320は、連通流路320の一端部320aとタンク本体32の内側に形成された内部流路を介して連通している。連通流路320と気液分離室312は他端部320bを介して連通している。連通流路320は大気導入口317から気液分離室312までの距離を長くするために、気液分離室312の外周に沿って形成されている。これにより、タンク本体32内部のインク中の水分が大気導入口317から外部へ蒸発することを抑制できる。なお、水分蒸発抑制の観点から、連通流路の距離を長くするために連通流路320を蛇行状の流路としても良い。
【0040】
他端部320b、気液分離室312、連通口319aへと流れる空気は、その途中で土手313に粘着されたシート部材316(図5)を通過することになる。気液分離室312と連通流路314は、連通口319a,319b及びタンク本体の内部に形成された内部流路を介して連通している。連通流路314は、大気開放口318を介して空気収容室330と連通している。以上の説明からも理解できるように、シート部材316(図5)は、大気開放口318と外部とを区画している。これにより、タンク本体32内部に収容されるインクが外部へ漏れ出すことを抑制できる。
【0041】
図7は、インクタンク30の詳細を説明するための図である。図7(A)は、図5のタンク本体32内部をY軸正方向側から見た図である。図7(B)は、図7(A)の液体導出部306付近を拡大した図である。なお、実際には液体導出部306は、紙面奥側に位置するが、説明の容易のために、液体導出部306が液体収容室340に連通している様子を図示している。さらに、説明の容易のために、大気開放口318とそれに関連する構成(例えばシート部材316や気液分離室312等)、及び、液体注入口304は概念的に図示している。但し、図7における、大気開放口318の高さ位置と液体注入口304の高さ位置は、実際の高さ位置と同じ関係になるように図示している。
【0042】
図7(A)に示すように、注入姿勢においてインクタンク30は、左側面fdが鉛直下方向(X軸負方向)となるようにインクタンク30は設置される。すなわち、液体注入口304や大気開放口318が形成された面と対向する面fdが底面となるようにインクタンク30は設置される。
【0043】
液体収容室340は、液体導出部306と連通している。液体収容室340の液体は、液体収容室340の液体出口349から液体導出部306へと流通可能である。なお、液体出口349は、液体導出部306の一端とも言えるため、液体出口349を液体導出部306の一端部349ともいう。液体収容室340は、注入姿勢において底面部346から上方に向かって所定長さ延びる区画壁部342を有する。区画壁部342は、液体収容室340内部をY軸方向(幅方向)全域に亘って形成されている。すなわち、区画壁部342は、底面部346を2つの領域に仕切っている。
【0044】
図7(B)に示すように、注入姿勢において、液体保持部345の高さT2(すなわち、区画壁部342の高さT2)は、一端部349の高さT1よりも高い。これにより、液体収容室340のインク残量が少なくなり、インクタンク30を使用姿勢から注入姿勢に姿勢を変化させた場合でも、液体保持部345を高さT1以上のインクで満たすことができる。すなわち、注入姿勢において、液体保持部345が所定量のインクを保持することで、液体導出部306内のインクと液体保持部345内のインクが空気を介さず連続する状態を維持できる。言い換えれば、一端部349が空気と接することなく、インクと接する状態を維持できる。
【0045】
区画壁部342は、区画壁部342の上端部が液体収容室340の上面部347に接触し、液体収容室340において液体保持部345と他の部分との間のインクの流通を遮断することがないように形成されている。また、区画壁部342の底面部346の配置位置は特に限定されないが、一端部349の近傍に配置することが好ましい。すなわち、より少ないインク残量において、液体保持部345が高さT1以上のインクを保持できるように、液体保持部345の底面積をより小さくするように区画壁部342を配置することが好ましい。ここで、「近傍」とは、液体収容室340のインクが液体導出部306を介してプリンター12に供給される際に、液体収容室340のインクが流通可能な程度(閉塞しない程度)の最小限の隙間(流路)を設けて区画壁部342が配置されていることをいう。
【0046】
図7(A)に戻ってインクタンク30の説明を続ける。連通部350は、細長い流路状である。液体収容室340内の空気が熱膨張し、液体収容室340のインクが連通部350に流入した場合に、空気収容室330はインクを収容することでインクが大気開放口318と介して外部に漏れ出すことを防止する。また、液体収容室340のインクがサブタンク20に供給されるに伴って、空気収容室330の空気が連通部350を介して液体収容室340に導入される。この詳細は後述する。
【0047】
連通部350は空気収容室330や液体収容室340に比べ、流路断面積が小さく流路抵抗が大きな部分である。これにより、連通部350ではメニスカス(液体架橋)が発生する。
【0048】
空気収容室330は、大気開放口318を介して外部の大気と連通している。大気開放口318は、使用姿勢における、空気収容室330の底面部330sよりも上面部330tに近い側に形成されている。
【0049】
ここで、注入姿勢において、液体注入口304は大気開放口318よりも低くなるように、液体注入口304はタンク本体32に形成されている。すなわち、注入姿勢において、液体注入口304の高さH1は、大気開放口318の高さH2よりも小さい。ここで、液体注入口304と大気開放口318との高さの比較は、注入姿勢におけるそれぞれの上端面を基準にしている。
【0050】
図8は、インクタンク30からサブタンク20へのインク供給を説明するための図である。図8は、インクタンク30、ホース24、プリンター12の内部の様子を模式的に示している。液体噴射システム1は、所定の水平面sf上に設置されている。インクタンク30の液体導出部306と、サブタンク20の液体受入部202は、ホース24を介して接続されている。サブタンク20は、ポリスチレンやポリエチレン等の合成樹脂により成形されている。サブタンク20は、インク貯留室204と、インク流動路208と、フィルター206とを備える。インク流動路208には、キャリッジ16のインク供給針16aが挿入されている。フィルター206は、インクに異物等の不純物が混入していた場合に、その不純物を捕捉することで記録ヘッド17への不純物の流入を防止する。インク貯留室204のインクは、記録ヘッド17からの吸引によって、インク流動路208、インク供給針16aを流れて、記録ヘッド17に供給される。記録ヘッド17に供給されたインクは、ノズルを介して外部(印刷用紙)へ向かって噴射される。
【0051】
注入姿勢で液体注入口304からインクを液体収容室340に注入した後に、液体注入口304を栓部材302で密封し使用姿勢にした場合、液体収容室340内の空気が膨張し、液体収容室340は負圧に維持される。また、空気収容室330は大気開放口318と連通することで大気圧に維持されている。
【0052】
使用姿勢において、メニスカスを形成する他端部352は、記録ヘッド17よりも低い位置になるように配置される。これにより、水頭差d1が発生する。なお、使用姿勢において、他端部352にメニスカスが形成された状態での水頭差d1を「定常時水頭差d1」とも呼ぶ。
【0053】
インク貯留室204のインクが記録ヘッド17によって吸引されることで、インク貯留室204は所定の負圧以上となる。インク貯留室204が所定の負圧以上になると、液体収容室340のインクがホース24を介してインク貯留室204に供給される。すなわち、インク貯留室204には、記録ヘッド17に流出した量のインクが液体収容室340から自動的に補充されることになる。言い換えれば、インクタンク30内の空気収容室330と接するインク液面と、記録ヘッド(詳細にはノズル)との鉛直方向の高さの差によって発生する水頭差d1よりも、プリンター12側からの吸引力(負圧)が大きくなることでインクが液体収容室340からインク貯留室204へ供給される。
【0054】
液体収容室340のインクが消費されると、空気収容室330の空気G(「気泡G」ともいう。)が連通部350を介して液体収容室340に導入される。これにより液体収容室340の液面は低下する。
【0055】
図9は、インクタンク30を説明するための図である。図9は、図7(A)に示すインクタンク30を使用姿勢にした状態を示している。また、図9は、使用姿勢において、インクタンク30がホース24を介してサブタンク20にインクを供給している状態(使用状態)を示す図である。
【0056】
図9に示すように、液体収容室340のインクが所定量以下となると、プリンター12の不具合の発生(ドット抜け等)を防止するために、利用者はインクの補充を行う。例えば、タンク本体32にインク注入時期の目安となるリミット線を付しておき、リミット線よりもインクの水位が下回った場合に利用者はインクを補充する。ここで、図9に示す状態でインクの水位がリミット線を下回ったものとする。インクを液体収容室340に注入する際には、矢印YRで示すように、液体注入口304が鉛直上向きを向くようにインクタンク30が回転される。
【0057】
図10は、インクタンク30へのインクの注入状態を示す図である。図10(A)は、図9に示すインク残量状態でインクタンク30を使用姿勢から注入姿勢に変化させた場合の図である。図10(B)は、液体収容室340にインクを正常量注入した状態を示す図である。図10(C)は、液体収容室340にインクを過多に注入した状態を示す図である。「液体収容室340にインクを正常量注入」とは、所定量未満のインクが液体収容室340に収容されていることを言う。例えば、液体注入口304よりも下方にインクの液面が位置する程度にインクが液体収容室340に注入されたことをいう。また、「液体収容室340にインクを過多に注入」とは、液体収容室340に所定量以上のインクが収容されるまでインクが注入されたことを言う。例えば、液体注入口304にまでインクが到達する程度にインクが液体収容室340に注入されたことを言う。
【0058】
図10(A)に示すように、インクを注入する場合、液体注入口304に装着されている栓部材302(図9)を取り外し、液体注入口304からインクを注入する。また、インクの注入は、ホース24によりインクタンク30とサブタンク20が接続された状態で行われる。記録ヘッド17(図8)のノズルにはメニスカス(液面架橋)が形成されており、外力(ピエゾ素子がインクに加える圧力)が加わらなければインクはノズルから噴射されない構成となっている。すなわち、記録ヘッド17のノズルは一定の力でインクを保持しているため、ノズルと連通する液体導出部306内のインクは液体収容室340側へ逆流することなく、液体導出部306内に保持される。
【0059】
図10(A)に示すように、インク残量が少ない状態で使用姿勢から注入姿勢に姿勢を変化させた場合において、液体保持部345はインクが液体収容室340の他の部分に流れ出すことを抑制する。すなわち、区画壁部342は、一端部349から離れる方向(Z軸正方向)へのインクの流れを堰き止める。このため、注入姿勢において、液体保持部345では他の部分よりも水位を高く維持することができる。より詳細には、区画壁部342によって、液体保持部345の水位を一端部349の高さ以上に維持することが可能となる。これにより、インク残量が少ない場合でも、液体導出部306内のインクと液体保持部345のインクとは空気を介さず連続して存在することが可能となる。よって、インク注入時に空気(気泡)が一端部349から液体導出部306に流入し、ホース24を介してサブタンク20へ流入する可能性を低減することができる。これにより、インク注入時に記録ヘッド17(図5)側に空気が流れ込まないため、空打ちによるドット抜けを抑制し、印字品質の低下を抑制することができる。
【0060】
図10(B)に示すように、液体収容室340に正常量のインクが注入された場合、注入姿勢において、液体収容室340のインク液面Lf1は液体注入口304よりも下方に位置する。ここで、注入姿勢において、液体注入口304の高さH1は、大気開放口318の高さH2よりも低いことから、液体収容室340に正常量のインクが注入された場合に、インクが大気開放口318から溢れ出ることを防止できる。
【0061】
また、図10(C)に示すように、インクが過多に注入され、インクの水位が液体注入口304まで到達した場合であっても、大気開放口318からインクが溢れ出すことを防止できる。また、インク注入時にシート部材316全面がインクで濡れる可能性を低減できるため、シート部材316の機能を長期にわたり維持することが可能となる。
【0062】
このように、第1実施例のインクタンク30は、注入姿勢において液体注入口304が大気開放口318よりも低くなっている。よって、インク注入時に大気開放口318からインクが溢れ出る可能性を低減することができる。また、液体保持部345を有することから、インク残量が少なくなりインクタンク30を使用姿勢から注入姿勢に変化させた場合でも、液体導出部306内のインクと液体保持部345のインクが連続した状態を維持することができる(図10(A))。これにより、インクを液体収容室340に注入した場合に、液体導出部306、ホース24を介して記録ヘッド17に空気が流入する可能性を低減できる。
【0063】
B−2.第2実施例:
図11は第2実施例のインクタンク30aを説明するための図である。図11(A)、(B)は、第1実施例の図7(A)に相当する図である。図11(A)は、第2実施例のインクタンク30aの構成を説明するための図である。図11(B)は、インク注入量多過時のインクタンク30aの状態を説明するための図である。第1実施例のインクタンク30との違いは、液体収容室340aの構成と、注入姿勢における液体注入口304aの高さ位置である。その他の構成は第1実施例と同様であるため、同一符号を付すと共に説明を省略する。また、第2実施例のインクタンク30aも第1実施例のインクタンク30と同様に、液体噴射システム1に用いられる(図2)。なお、図11(A)には、理解の容易のために、栓部材302を破線で図示している。
【0064】
図11(A)に示すように、注入姿勢において、液体注入口304aは大気開放口318よりも低く、かつ、連通部350の一端部351である開口351よりも低くなるようにタンク本体32に形成されている。すなわち、注入姿勢において、液体注入口304aの高さH1は、大気開放口318の高さH2と一端部351の高さH3よりも小さい。
【0065】
さらに、液体収容室340は容積V1を有する空気貯留部341を備える。空気貯留部341は、注入姿勢において液体収容室340の部分のうち、液体注入口304aの一端側である開口304m(「下端開口304m」ともいう。)であって、液体収容室340aの壁面に形成された開口304mよりも高い位置に設けられた部分である。空気貯留部341は、液体収容室340aを形成する壁面によって形成された凹状形状であって、注入姿勢において鉛直下方向に向かって開口している。言い換えれば、空気貯留部341は、注入姿勢において、鉛直下向き以外の周囲(方向)を液体収容室340の壁面により囲まれた凹状形状である。空気貯留部341は、注入姿勢において、液体注入口304aの上端開口304pまで達する程度に液体収容室340内に過多にインクを注入した場合でも所定量の空気(容積V1)を貯留可能である。言い換えれば、空気貯留部341は、注入姿勢においてインクの注入量に拘わらず、少なくとも所定量の容積(容積V1)の空気を貯留可能である。ここで、使用姿勢において、液体収容室340の部分のうち、液体注入口304aが位置する高さ以上の位置を占める部分を注入口隣接部343と規定する。すなわち、注入口隣接部343は、使用姿勢において、液体注入口304aの底部304f以上の高さに位置する。ここで、注入口隣接部343の容積をV2とした場合、インクタンク30aは、V1≧V2を満たす。
【0066】
図11(B)に示すように、例えば、インクを液体注入口304aに達するまで液体収容室340aにインクを過多に注入した場合であっても、H1<H3であることから空気収容室330にインクは導入されない。また、液体収容室340aにインクを過多に注入した場合でも、液体収容室340aには、空気貯留部341によって容積V1の空気が貯留されていることになる。
【0067】
図12は、第2実施例の効果を説明するための図である。図12は、使用姿勢における液体噴射システム1の内部の状態を図示している。また、図12は、図11(B)のインクを過多に注入した後にインクタンク30aを使用姿勢にした直後のインクの状態を示している。
【0068】
図11(B)に示すように、インクを液体収容室340aに過多に注入した場合でも、空気収容室330へはインクが到達していないため、図12に示すように使用姿勢にした場合、空気収容室330へはインクは殆ど流入しない。よって、インク注入直後の空気収容室330の液面位置は、符号Lf1bとなる。このとき、水頭差d2が発生する。この水頭差d2を「過多時水頭差d2」ともいう。インクタンク30aのインクがサブタンク20に供給されるに伴い、液面Lf1bは低下する。最終的には他端部352でメニスカスが形成される位置まで低下する(図8)。もしインクを注入する際に空気収容室330にまでインクが導入されていた場合、インク注入直後の使用姿勢において、空気収容室330のインク液面は、液面Lf1bよりも高い位置(例えば液面Lf2b)となる。すなわち、定常時水頭差d1から大きくずれた水頭差となる。これに対し、本実施例のように、高さH1が高さH3よりも小さいことで(図11(A))、インク注入時に空気収容室330にインクが導入されない。よって、定常時水頭差d1からの過多時水頭差d2のずれを低減することができる。言い換えれば、水頭差を所定の範囲内に維持することができる。これにより、サブタンク20のインク貯留室204に収容されているインクの消費に伴って、インクをインクタンク30aからサブタンク20に安定して供給することができる。
【0069】
また、空気貯留部341の容積V1は、注入口隣接部343の容積V2以上であることから、インクを過多にインクタンク30aに注入した場合であっても、使用姿勢において注入口隣接部343にはインクは存在しないことになる。これにより、栓部材302がインクと接触する可能性を低減でき、栓部材302の不純物がインクに混じる可能性を低減できる。なお、本実施例は第1実施例と同様に、注入姿勢において液体注入口304aが大気開放口318よりも低くなっていることから(図11)、インク注入時に大気開放口318からインクが溢れ出る可能性を低減することができる。
【0070】
C.変形例:
なお、上記実施例における構成要素の中の、特許請求の範囲の独立項に記載した要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、本発明の上記実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0071】
C−1.第1変形例:
図13は、第1変形例のインクタンク30bを説明するための図である。図13は、上記実施例の図7(A)や図11(A)に相当する図である。上記第1実施例と異なる点は、連通部350bの構成と、液体保持部345bの構成である。その他の構成については、上記第1実施例と同様の構成であるため、同一符号を付すと共に説明を省略する。
【0072】
第1変形例のインクタンク30bは、連通部350bの形状が、細長い流路状ではなく、孔状である。また、連通部350bはメニスカスを形成できる程度の開口面積を有する。また、液体収容室340内には、一端部349を塞ぐように多孔質部材345bが配置されている。この多孔質部材345bが液体保持部として機能し、インクを所定量保持できる。また、液体収容室340aのインクをサブタンク20に供給する場合において、液体収容室340aのインクを液体導出部306に向けて流通可能なように、多孔質部材345bは内部を貫通した流路を形成している。多孔質部材345bとしては、例えばスポンジを用いることができる。
【0073】
このように、連通部350bを孔状にすることで、インクタンク30bの構成をより単純化することができる。また、多孔質部材345bにより、液体導出部306内のインクと多孔質部材345b内のインクは空気を介さず連続する状態を維持できる。よって、インク注入時に空気(気泡)が一端部349から液体導出部306、ホース24を介してサブタンク20に流入する可能性を低減することができる。また、第1変形例のインクタンク30aは、上記実施例と同様に、インク注入時に大気開放口318からインクが溢れ出る可能性を低減することができる。
【0074】
なお、第1変形例において、連通部350bを上記実施例の流路状の連通部350の構成に置き換えても良い。また、第1変形例において、多孔質部材345bに代えて区画壁部342を設けて液体保持部345を形成しても良い。このようにしても、上記実施例と同様に、インク注入時に大気開放口318からインクが溢れ出る可能性を低減できると共に、インク注入時に空気がサブタンクへ流入する可能性を低減できる。また、区画壁部342を設けると共に、多孔質部材345bを配置しても良い。こうすることで、液体導出部306内のインクと液体保持部345内のインクが空気を介さず連続した状態をより良好に維持することができる。
【0075】
C−2.第2変形例:
上記第2実施例では、容積V1の空気貯留部341を備えていたが(図11(A))、容積V1の空気貯留部341を設けなくても良い。すなわち、注入姿勢において、液体注入口304aが連通部350の一端部351よりも低い位置に形成されていれば良い。このようにしても、液体収容室340aにインクが過多に注入されても空気収容室330にインクが導入されないため、使用姿勢における水頭差を所定の範囲内に維持することができる。
【0076】
C−3.第3変形例:
上記実施例では、インクタンク30、30aは、液体保持部345を有していたが、液体保持部345を有さなくても良い。すなわち、液体収容室340,340a内に区画壁342を設けなくても良い。このようにしても、上記実施例と同様に、インク注入時に大気開放口318からインクが溢れ出る可能性を低減することができる。
【0077】
C−4.第4変形例:
上記実施例及び変形例では、液体収容容器としてプリンター12に用いられるインクタンク30,30a,30bを例に説明を行ったが、これに限定されるものではなく、例えば液晶ディスプレー等の色材噴射ヘッドを備えた装置、有機ELディスプレー、面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッドを備えた装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドを備えた装置、精密ピペットとしての試料噴射ヘッドを備えた装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等の液体噴射装置に液体を供給可能な液体収容容器に本発明は適用できる。ここで、液体収容容器は、液体を注入する液体注入口と、液体収容容器内部に空気を導入するための大気開放口とが別に設けられている。上記の各種の液体噴射装置に液体収容容器を使用する際には、各種の液体噴射装置が噴射する液体の種類に応じた液体(色材,導電ペースト,生体有機物等)を、液体収容容器内部に収容すれば良い。また、各種液体噴射装置と各種液体噴射装置に対応した液体収容容器を備える液体噴射システムとしても本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0078】
1…液体噴射システム
10…ケース
12…インクジェットプリンター
13…用紙給紙部
14…用紙排出部
16…キャリッジ
16a…インク供給針
17…記録ヘッド
20…サブタンク
20Bk…サブタンク
20Ma…サブタンク
20Cn…サブタンク
20Yw…サブタンク
24…ホース
30…インクタンク
30a…インクタンク
30b…インクタンク
32…タンク本体
34…シート部材
50…タンクユニット
54…上面ケース
56…第1の側面ケース
58…第2の側面ケース
90…液体収容容器(インンタンク)
202…液体受入部
204…インク貯留室
206…フィルター
208…インク流動路
302…栓部材
304…液体注入口
304a…液体注入口
304p…上端開口
304m…下端開口
306…液体導出部
312…気液分離室
313…土手
316…シート部材
317…大気導入口
318…大気開放口
320…連通流路
322…フィルム
324…第1の嵌合部
325…第2の嵌合部
325a…貫通孔
330…空気収容室
330s…底面
330t…上面
340…液体収容室
340a…液体収容室
341…空気貯留部
342…区画壁
343…注入口隣接部
345…液体保持部
345b…液体保持部(吸水部材)
349…液体出口(一端部)
350…連通部
350b…連通部
351…一端部
352…他端部
362…リブ
904…液体注入口
906…液体導出部
916…気液分離膜
918…大気開放口
930…空気収容室
940…液体収容室
949…液体出口
950…連通部
G…空気
fa…上面
fb…底面
fc…右側面
fd…左側面
fe…正面
ff…後面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体噴射装置に液体を供給するための液体収容容器であって、
前記液体を収容するための液体収容室と、
前記液体収容室と連通し、前記液体収容室の前記液体の消費に伴って外部の空気を前記液体収容室内に導入するための空気収容室と、
外部からの空気を前記空気収容室に導入するための大気開放口と、
前記液体収容室に前記液体を注入するための液体注入口であって、前記液体収容室に前記液体を注入する際の前記液体収容容器の注入姿勢において、前記大気開放口よりも低い位置に配置された液体注入口と、を備える、液体収容容器。
【請求項2】
請求項1に記載の液体収容容器であって、さらに、
前記大気開放口と外部とを区画するためのシート部材であって、気体を透過すると共に液体を透過しないシート部材を備える、液体収容容器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の液体収容容器であって、
さらに、一端部が前記空気収容室内で開口し、他端部が前記液体収容室内で開口することで前記空気収容室と前記液体収容室を連通させる連通部を備え、
前記注入姿勢において、
前記液体注入口は、前記一端部である前記開口よりも低い位置に配置されている、液体収容容器。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の液体収容容器であって、さらに、
前記液体注入口を塞ぐ弾性を有する栓部材であって、前記液体注入口から脱着可能な栓部材を備え、
前記注入姿勢において、前記液体収容室は、
前記液体注入口の上端開口まで前記液体が達する程度に前記液体が前記液体収容室に注入された場合に、容積V1の空気を貯留可能な空気貯留部を有し、
前記液体噴射装置に液体を供給する際の前記液体収容容器の使用姿勢において、前記液体収容室の部分のうち、前記液体注入口が位置する高さ以上の位置を占める注入口隣接部の容積をV2とした場合、
V1≧V2を満たす、液体収容容器。
【請求項5】
請求項4に記載の液体収容容器であって、
前記空気貯留部は、前記液体収容室を形成する壁面によって形成された凹状形状であって、前記注入姿勢において鉛直下方向に向かって開口している、液体収容容器。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の液体収容容器であって、
前記液体噴射装置に前記液体を供給する際の前記液体収容容器の使用姿勢において、
前記大気開放口は、前記空気収容室の部分のうち底面よりも上面に近い側に配置されている、液体収容容器。
【請求項7】
液体噴射システムであって、
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の液体収容容器と、
対象物に前記液体を噴射するためのヘッドを有する液体噴射装置と、
前記液体収容容器と前記液体噴射装置とを接続し、前記液体収容室の前記液体を前記液体噴射装置に流通させる流通管と、を備える、液体噴射システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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