説明

液体収容容器、液体収容方法及び該容器を搭載した画像形成装置

【課題】収容された液体の漏れを防止でき、しかも部品点数を少なくでき、製造コストの低減が図れるような液体収容容器、製造コストの低減が図れ、収納する液体が変性することのない、液体収容方法およびこの方法により液体を収容した液体収容容器、およびこのような液体収容容器を載置可能とした、均質な画像を形成可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置本体に着脱自在に装着される液体収容容器であって、難接着性樹脂層と酸素吸収剤を含有する樹脂層の少なくとも2層からなる液体収容部2と、液体を当該容器1に出し入れするための口部4とを有し、前記酸素吸収剤を含有する樹脂層を内側の層とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体収容容器、液体収容方法及び該容器を搭載した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタおよびこれらの複合機等の画像形成装置として、インク液滴を吐出する記録ヘッドを用いたインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される紙、OHPなどのシート状の記録材に吐出して、画像形成を行なう。
【0004】
このようなインクジェット記録装置などの画像形成装置では、記録ヘッドにインクを供給するサブタンク、メインのインクカートリッジ(メインタンク)を画像形成装置本体(以下、装置本体ということがある)側に着脱自在に装着し、インクカートリッジから、サブタンクに装置本体側のインクを補充供給するようにしている。
【0005】
このようなインクカートリッジとして、例えば、インク供給口部とインク充填口部を有する保持部材を袋本体に融着などで固定したインク収容袋を、分割されたカートリッジ筐体に収納し、保持部材をカートリッジ筐体の保持手段にて保持したものが知られている(特許文献1、2)。また、内前面下部に開口部を設けたケースと、該開口部に固定される注ぎ口に前縁が接続されたシート状に折りたためるバッグからなるものも知られている(特許文献3)。
【0006】
このような上記ケースに用いられるインクなどの液体収容容器は大量生産に適し、ポリエチレンなどの使用がコストの観点から望ましいが、ポリエチレンは酸素など気体の透過性が高い樹脂であることから容器に収容されるインクなどの液体が運搬や長期間の保存により、物理的あるいは化学的な変質を多少起こし、収容容器を画像形成装置にセットした直後に形成される画像がその影響を受け、使用できないなど無駄になる惧れがある。
【0007】
またインク収容容器に収容されるインクなどの液体は、品質保持のため、収容容器に充填する前に収容すべきインクなどの液体を脱気する必要がある。この液体の脱気度を充分なレベルにするために、脱気工程に多大な時間を要し、歩留まりが悪いという難点を有していた。一方、インク収容容器では、特にプリンターに装着された後の密閉性が未だ不十分であり、特に大容量のカートリッジに関しては、使い切るまでに、容器に収容された液体の所定の品質を保持することはかなり難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した従来技術における問題点に鑑みて成されたものであって、収容された液体の漏れを防止でき、しかも部品点数を少なくでき、製造コストの低減が図れるような液体収容容器を提供することを目的としている。本発明はまた、製造コストの低減が図れ、収容する液体が変性することのない、液体収容方法およびこの方法により液体を収容した液体収容容器、さらに、このような液体収容容器を載置可能とすることで均質な画像を形成可能な画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記したような従来技術の有する課題を解決するために、以下のような解決手段を有することを特徴とする。
(1) 画像形成装置本体に着脱自在に装着される液体収容容器であって、
難接着性樹脂層と酸素吸収剤を含有する樹脂層の少なくとも2層からなる液体収容部と、液体を当該容器に出し入れするための口部とを有し、
前記前記酸素吸収剤を含有する樹脂層を内側の層としたことを特徴とする。
(2) 前記(1)に記載の液体収納容器において、前記酸素吸収剤を含有する樹脂層の内側の層に、さらに前記難接着性樹脂の層が設けられたことを特徴とする。
(3) 前記(1)または(2)に記載の液体収容容器において、さらに最外層に金属層を有することを特徴とする。
(4) 前記(1)〜(3)のいずれかに記載の液体収容容器において、前記口部は前記液体を当該液体収容容器外に取出すためのノズルを受け入れる受け入れ部材を有し、前記受け入れ部材は塞ぐように嵌め込まれて前記口部に固定されることを特徴とする。
(5) 前記(1)〜(4)のいずれかに記載のインク収納容器において、前記受け入れ部材は、少なくともその1部が弾性部材で構成されており、前記ノズルを受け入れて生じた前記受け入れ部材の孔が前記ノズルを抜く際に閉口するように構成されていることを特徴とする。
(6) 前記(1)〜(5)のいずれかに記載の液体収納容器において、 前記ノズルを受け入れる孔は、当該液体収容容器がブロー成形により形成される際のブロー成形ガスの流入孔と連通されることを特徴とする。
(7) 前記(1)〜(6)のいずれかに記載の液体収容容器において、 前記口部は前記液体収容部に接着、融着或いは締め付け部材で固定されるかまたは前記液体収容部を形成する際に前記液体収容部と一体に形成されることを特徴とする。
(8) 前記(1)〜(7)のいずれかに記載の液体収容容器において、 前記口部に固定される前記受け入れ部材を押圧する締め付け部材を設けたことを特徴とする。
(9) 前記(1)〜(8)のいずれかに記載の液体収容容器において、 さらに前記液体収容部に当該容器の容積を縮小する折りたたみ部を設けたことを特徴とする。
(10) 内層に酸素吸収剤を含有する樹脂層を有する容器に液体を口部から収容し、前記液体を収容した後に前記口部を塞ぐようにゴム弾性を有する部材を圧入した後固定する液体収容容器への液体収容方法を特徴とする。
(11) 前記(10)に記載の液体収容方法において、前記液体がインクジェット方式の画像形成装置によって吐出する液体であることを特徴とする。
(12) 前記(1)〜(9)のいずれかに記載の液体収容容器に、前記(10)または(11)に記載の液体収容方法を用いて液体が収容された液体収容容器を特徴とする。
(13) 前記(1)〜(9)または(12)のいずれかに記載の液体収容容器を搭載したインクジェット方式の画像形成装置を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液体収容容器は、酸素を吸収する層を内層として有するため、収容されるインクなどの液体が酸素などによって化学的に変性したり、液体中の揮発成分が蒸散するのを防止できるため粘度の変化も少ない。しかも部品点数が少ないので製造コストの低減が図れ、また製造時のゴミの混入を確実に防止でき、また液体を収容する際にその液体に含まれる気体の脱気工程を省略できるので、製造工程などにおけるコストパフォーマンス性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(A)は本発明のインクなどの液体を収容する液体収容容器の例を示す図であり、(B)は(A)のa−a線(受け入れ部材3の中心を通る線)での断面図である。
【図2】最外層として金属層(酸素遮断層)を設けた例を示す本発明の液体収容容器の外形図である(ただし図中、液体収容容器の上面の点線で示したものはこの収容容器が折れ曲がるのを可能なように設けた折れ曲がり部を示す。)。
【図3】(A)は本発明の液体を収容する液体収容容器の別の例を示す図であり、(B)は(A)のa−a線(受け入れ部材3の中心を通る線)での断面図である。
【図4】液体収容容器1の口部4に設けられた受け入れ部材3からノズルが針入する様子を受け入れ部材3を主として描いた模式的な部分拡大図である。
【図5】本発明の液体収容容器の製造方法とともに説明するための模式的断面図である。
【図6】本発明の液体収容容器において、締め付け部材6として結束バンドを用いた例を示す図である。
【図7】本発明の液体収容容器において、締め付け部材6として針金部材を用いた例を示す図である。
【図8】本発明の液体収容容器において、締め付け部材6を用い、折りたたみ部を設けた例を示す図である。
【図9】本発明の液体収容容器に外殻のハードケースを装着した場合の図である。
【図10】本発明の液体収容容器を搭載可能なインクジェット方式の画像記録装置の1例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すように、本実施形態の液体収容容器1は、液体収容部2と口部4を有している。本実施形態の液体収容容器1は、インクジェットプリンタなどの画像形成装置(以下、記録装置ともいう)本体に着脱自在に装着される。この液体収容容器1は、液体収容部2が、難接着性樹脂層21と、酸素吸収剤を含有する樹脂層22の少なくとも2層からなる。そして酸素吸収剤を含有する樹脂層22が内側の層となっている。
本実施形態の液体収容容器1は、上記した液体収容部2に、液体を流入、流出させるための口部4を有し、この口部4は、画像形成装置本体側から液体を液体収容容器外に取出すためのノズルを受け入れる受け入れ部材3を有している。受け入れ部材3は、液体収容部2に形成された口部4に、これを塞ぐように嵌め込まれて固定される。
【0013】
以下に本実施形態の液体収容容器1を構成する液体収容部2などについて、個々に説明する。
【0014】
<液体収容部2>
本実施形態の液体収容容器1の液体収容部2は、図1(B)に示すように、少なくとも難接着性樹脂層(第1層)21と酸素吸収剤を含む樹脂層(第2層)22の2層を含んで構成されている。そして接液する側に酸素吸収剤を含む第2層22が積層され、第1層である難接着性樹脂層21がこの第2層21を覆うように、たとえば最外層として構成されている。難接着性樹脂層(第1層)21としては、価格やインクとの接液性や強度の面からポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂が好ましいが特に限定されるものではない。これらの樹脂はブロー成形により成形しやすいため、利点が大きいが、難接着性である点が、弾性部材を取り付ける上で障害となりやすい。
また、酸素吸収剤を含む樹脂層(第2層)22に用いる樹脂としては、成形し易い等から、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系の樹脂に鉄粉などの無機系の酸素吸収剤を混練した材料を用いて層として形成されたものが好ましい。この混練は公知の方法、公知の装置(混練装置)を用いて行うことができる。
第1層と第2層の各層を構成する主成分の樹脂種を同じ材料にしておくと、ブロー成形時に条件設定を同じにしても、安定して成形でき、また層間の密着性も向上するのでより好ましい。
第2層22に含まれる酸素吸収剤としては、無機系のものとして、還元鉄や亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
また有機系のものとしては、アスコルビン酸類、ナイロン/コバルト塩触媒系、エチレン系不飽和炭化水素/コバルト塩触媒系、シクロヘキセン側鎖ポリマー系などが挙げられる。特に加工性等を考慮すると、還元鉄がもっとも良好である。
第2層22に含有させる還元鉄の配合量としては、還元鉄の粒径と容器の厚みにも依存するが、樹脂に対して3〜20%の範囲が好ましく、特に好ましくは5〜15%の範囲である。
【0015】
本実施形態の液体収容容器1の層の数としては、2層又は3層以上であることが望ましい。
2層の場合には、外側に酸素吸収剤を含有しない樹脂層21があり、内側に接液層となる酸素吸収剤を含有する樹脂層22を配置する構成とする。この場合、樹脂としては上記したオレフィン系が望ましく、より好ましくはポリエチレンであり、さらに好ましくは高密度ポリエチレンである。
図示しないが3層以上の場合には、上記2層のさらに内側の接液層に酸素吸収剤を含有しない樹脂層を有することが望ましい。この場合、前記2層との接着性(密着性)から、第3層を構成する樹脂として、前記第1層または第2層に用いられる樹脂と同じ樹脂材料を用いることが望ましく、たとえば高密度ポリエチレンでも低密度ポリエチレンでもよく、特に限定されない。
【0016】
また本実施形態の液体収容容器1では、外部からの酸素透過、流入を防ぐために、最外層に、好ましくは液体収容部2の大気に触れる部分全部に非酸素透過性の層(第4層)を更に設けることが好ましい。非酸素透過性層は金属層であって、このような層を形成する方法としては、アルミニウムなどの金属薄膜層を蒸着したり、あるいはラミネートにより形成する方法が挙げられる(図2参照)。
【0017】
本実施形態の液体収容容器1は、上記したいずれかの層構成を有して構成されている。
<受け入れ部材3>
図1〜2に示すように、本実施形態の液体収容容器1では、受け入れ部材(液体流入、流出部)3を有する。この受け入れ部材3は、少なくともその一部が弾性部材であれば特に限定はされない。なお受け入れ部材3の口部と接する部分は前記したポリオレフィンなどの難接着性樹脂であってもよい。
受け入れ部材3に用いられる弾性部材としては、ゴム部材が好適に挙げられ、特にシリコンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム(たとえばEPM、EPDM)などのエラストマーを用いることができる。中でもインクとの接液性を考えた場合、インクの組成にもよるが、ゴム部材として、EPDMが、耐熱性・耐侯性・耐オゾン性の点でも優れるため、好ましい。またインクに長期接する構造の場合には、弾性部材に添加される、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、充填剤、酸化防止剤等にも注意が必要である。
【0018】
図3に示すように、受け入れ部材3は、液体収容部2に形成された口部4がたとえば窪み4’であり、この窪み4’の内径部41の径よりも少し大きいことが好ましい。このようにすることで、インク供給用のノズル9が受け入れ部材3からインク収容部2に形成された窪み4’のパリソンガス流入孔までに貫挿されて取り付けられる(図4参照)。その後にインク供給用のノズル9が抜き差し(抜き出)された場合にも、インク供給部材が取り付けられて受け入れ部材3に生じた孔が閉じるように圧力がかかる。これにより、液体(インク)漏れを防止し、また収容容器1内への酸素の流入を防止したり、液体中の揮発成分を外に排出されるのを防止して、液体の粘度が変わるなどの変性を防ぐ。
上記したように本実施形態の液体収容容器1では、図4に示すようにして受け入れ部材3に、画像形成装置側からノズル9を液体収容容器1に刺し通すことによって、容器1に収容された液体をこの容器1外に取り出す。この通り孔として、パリソンガス流入孔を用いている。
このように液体収容部2に設けた受け入れ部材3に直接保持されて、ノズル9が受け入れ部材3を貫入して液体収容部2の内部に臨む構成とすることで、部品点数が少なくなる。また製造工程において液体収容容器1は密閉状態にあるので異物の侵入を防止することができる。なお上記窪み4’は液体供給を行う孔(パリソンガス流入孔)を有しており、本明細書中で口部4と記載することがある。
【0019】
(液体収容容器の製造工程からの液体充填工程)
本実施形態の液体収容容器1は、ブロー成形法などを用いて製造され、その後液体を充填して、液体を収めた液体収容容器1として製造される。以下にその製造方法について図5を用いて説明する。
図5に示すように、インクなどの液体を収容した液体収容容器1の製造法は、以下の(1)〜(3)の工程に分けることができる。
(1) ブロー成形法を用いて下記のような液体収容部2を作成する(液体収容部製造工程)。
(2) インク収容部2に下記に示すようにインクなどの液体を充填する(液体充填工程)。
(3) そこに下記に示すように受け入れ部材3を圧縮して口部4に圧入し、融着または接着することにより固定する(受け入れ部材3の圧入、固定工程)。
【0020】
これら上記工程を以下に詳細に説明する。
<液体収容部製造工程(1)>
上記したように、図5(A)に示すように、インクなどの液体の液体収容容器1における液体収容部2の製造方法(1)としては、ブロー成形を用いる。この方法によると、大量生産性が向上する。このため、安価に作成することができる。ブロー成形法としては、ダイレクトブロー成形法でもよく、またインジェクションブロー成形法を用いてもよいが、より好ましいのはインジェクションブロー成形法である。なかでも本実施形態では、2種以上の層からなる液体収容容器であるため、2層構造を有するパリソン(有底パリソン)に対し、同時に多層成形する共押し出しインジェクションブロー成形法により製造するのが好ましい。
酸素吸収剤を含有する樹脂材料に関しては、予め還元鉄などの酸素吸収剤と樹脂材料とを混練してペレット化し、これを溶解して共押し出しする方法がとられることが望ましい。
またブロー成形においては、本実施形態の液体収容容器1では、酸素吸収剤としての失活を防止する目的で、窒素などの不活性ガスを送り込んでブロー成形する必要がある。なお不活性ガスとして炭酸ガスなども挙げられるがこのうちコストの面、液体のpHを変化させない点で窒素ガスが好ましい。
【0021】
ブロー成形で形成されるインク収容部2の形状としては、図1に示す形状の物でもよく、また図6〜7に示すような形状のものでもよい。
本実施形態のインクなどの液体収容容器1の層構成としては、前記したように、外層としての難接着性樹脂からなる層(第1層)21と、その内部に酸素吸収剤を含有する層(第2層)22の2層構造でも良く、インクなどの液体への接液性を高める目的で酸素吸収剤を含有する層22の内側に更に接液性の高い樹脂層(第3層)を設けることができる。この層は、酸素吸収性能をより効果的に利用するために、比較的酸素透過性の高い樹脂を用いることが好ましい。また本実施形態の液体収容容器1では、酸素吸収能をより効率よく生かすために、インクなどの液体収容容器1の外部からの酸素透過を防ぐ目的で、換言すれば、収容される液体の保存安定性を高める目的で、最外層に非酸素透過性の層(金属層などの酸素遮断層:第4層)を設けることが好ましい。なお第4層を設ける場合、本実施形態では、前記第3層を省略して3層構成で液体収容容器1の液体収容部2を構成することもできる。
【0022】
また液体収容部2には、インクなどの液体が画像形成装置に供給されて、液体収容容器1に収容された液体の残量が減少するのに追従して、液体収容容器1の体積が減少し、収縮していくことが望ましい。このため本実施形態では、折りたたむための折り目をたとえばブロー成形時に設けることができる。
【0023】
液体収容部2の厚みとしては、充填されるインクなどの液体の品質を確保でき、また外部からの衝撃に耐性のある範囲であれば特に限定はないが、多層全体の厚みが100〜1000μm、好ましくは300〜600μmの範囲になるように調整することが望ましい。
また液体収容容器1は、そのまま記録装置にセットすることが可能であるが、液体収容容器交換時の操作性をあげるため、あるいは外的衝撃を防ぐ目的でハードケースに収容しインクジェット装置などの記録装置(画像形成装置)にセット可能にしても良い。
【0024】
<液体充填工程(2)>
図5(B)に示すように、インクなどの液体を充填する液体充填工程(2)では、液体収容部2を形成後、パリソンの流入孔よりインクなどの液体を充填する方法がとられる。その際、液体収容部2内のガス(窒素)を抜いた後に、脱気されたあるいは未脱気の液体(インク)を充填しても良く、液体収容部2内の窒素を抜きながら、脱気されたあるいは未脱気の液体を充填しても良い。インクなどの液体充填後、液体の流入孔を溶着して液体収容容器1を密閉する。
【0025】
<受入れ部材圧入、固定工程(3)>
図5(C)に示すように、インクなどの液体が充填された液体収容部2の口部4に、ノズル受入れ部材3を圧入する。このとき、ノズル受け入れ部材3の外周は、口部4の内径部42よりも大きくしかも均一に押圧されるように設計されているため、受け入れ部材3を圧縮する形で取り付けることになる。この状態でノズル受け入れ部材3にかかる圧は、ノズルが抜き差しされた時(注射針から点滴針程度の大きさの中空のノズル9が抜き取られた時)のノズル9を突き刺した孔が閉じる圧であることが好ましい。
また、ノズル9が挿入される部分の液体収容部2と受け入れ部材3が接する部分は、溶着されているか、あるいは接着されている必要がある。
【0026】
<締め付け部材6>
本実施形態の液体収容容器1は、ブロー成形で形成されたインク収容部2と、口部4からなる。この口部4には画像形成装置本体側から図4に示すようなノズル9の刺し通しが可能なように、少なくとも一部が弾性部材で形成された受入れ部材3を有している。前記受入れ部材3は少なくとも一部が弾性部材で形成され、かつ、弾性部材が口部4内に圧縮された状態で、固定されるように構成できる。この固定のための締め付け部材6として、図6に示す結束バンド61などの締め付け部材6によって締め付けることができる。なお成形の際に口部4をブロー成形などにより液体収容部2と一体に設けた場合には、締め付け部材6は省略可能である。また本実施形態では、締め付け部材6に弾性を持たせているので、口部4をブロー成形などにより液体収容部2と一体に設けた場合でも、受け入れ部材3の弾性と相まってノズル9が挿入される際にあるいは抜き差し後にノズル9によって生じた孔を、塞ぐ効果も有するので締め付け部材6の使用を省略しなくてもよい。
【0027】
このように、締め付け部材6によって口部4を固定できる。これによって、本実施形態では、液体収容部2と口部4とを別体として形成した場合、難接着性樹脂から形成された液体収容部2に口部4を固定してもよい。この場合、口部4は、液体収容部2の中空ノズル部材が刺さる部分及びその周囲と接着又は溶着(融着)してもよい。これにより、中空ノズル部材の抜き差しによって液体収容部2の中空ノズル部材が刺さる部分からのインク漏れを確実に防止できる。
【0028】
また口部4は、前記した結束バンド61に換えて、図7に示すように、締め付け部材6として変形可能な針金部材62を用いることもできる。これにより、結束バンド61を用いたときと同様にインク収容部2の窪み4’を固定することにより、難接着性樹脂から形成されたインク収容部2に口部4を確実に固定することができる。また図8も本実施形態の液体収容容器1において、締め付け部材6として結束バンド61(図8(A))または針金部材62(図8(B))を用いた例を示す。図8では、液体収容部2と口部4とが、一体で形成された例を示している。この場合に、締め付け部材6が液体収容部2内で固定するように設けられているが、受け入れ部材3が装着される口部4の液体収容部2の先端部またはその近傍に締め付け部材6を設置することもできる。また図8では、折りたたみ部液体収容部2の側面上面に示す点線も折りたたみ部7を表す。この折りたたみ部7は、本実施形態の液体収容容器1を成形して製造する際に、パリソンを挟み込んで成形する金型に、折り目となるように凹凸部分を形成しておき、液体収容容器1の製造の際の成形により形成することができる。この折りたたみ部7は、図8において、口部4を有する面を上面とすると、底面あるいは側面に設けることができ、また側面に折りたたみ部7が設けられる場合、側面の向かい合う2面(たとえば側面のうちの面積が大きい向かい合う2面あるいは小さい2面など)などに、適宜設けることができる。そして折りたたみ部7の少なくとも1部は、それらが設けられる面の対称軸あるいはこの対称軸と平行な辺との間にこれらと平行に設けることができる。また向かい合う2面に折りたたみ部7を設ける場合、それらの2面で、折りたたみ部7が対応するような配置で設けることが望ましい。このように、折りたたみ部7は液体収容容器の内容積が縮む際にコンパクトに折りたためる構成とすることが好ましい。
【0029】
<ハードケース8の使用>
本実施形態の液体収容容器1は、未使用時には、直方体または直方体に近い形状であるため、従来のインク袋と違い、図9に示すような外殻のハードケース8なしで、インクジェットなどの画像記録装置にセットすることが容易である。但し、液体収容容器1の交換時の操作性を上げるため、あるいは外的衝撃を防ぐ目的で図9に示すハードケース(一定の形状を有するもの)8を外殻として、これに液体収容容器1を収容することもできる。ハードケース8は外的な衝撃に強いものであればよく、材質・構造ともに特に限定はないが、液体収容容器1に収容されるインクなどの液体交換時の操作性を上げるために、掴みやすい構造を有するものが望ましい。
【0030】
<インク>
本実施形態のインクなどの液体収容容器1に充填される液体(インク)は、たとえば、色材と浸透剤とを含有する液状のものであり、前記したものである。インクは通常脱気してから液体収容容器1に充填されるのが一般的であるが、脱気にかかる時間は充填にかかる時間のかなりの部分を占めることが多い。また、液体収容容器1がインクジェットなどのプリンター本体に装着されて、液体を吐出するための印字ヘッドまでの供給経路に接続されると、液体収容容器1内の密閉性がかなり低下し、酸素の影響を受けることになる。本実施形態の液体収容容器1によれば、インクの酸素脱気度が不十分であっても、収容容器1内のインクから溶出してくる酸素、あるいは外部から透過してくる酸素を吸収することができ、プリンター本体に装着される前までの液体の未使用時から、プリンター本体に装着された後の液体が収容容器から使用し終わるまでの長期にわたり、液体収容容器1内のインクの安定性を確保することができる。
【0031】
また本実施形態の液体収容方法では、内層に酸素吸収剤を含有する樹脂層を有する容器にインクなどの液体を口部4の孔(パリソンガス供給孔)から収容し、この口部4にある孔を覆うように、ゴム弾性を有する部材を圧入することを特徴とする。この容器としては前記した本実施形態の液体収容容器1であることが好ましい。本実施形態では、このような液体を収容可能な液体収容容器1あるいは液体を収容した液体収容容器1をインクジェットプリンタなどのインクジェット方式の画像形成装置に搭載(セット)することができる。このようなインクジェットプリンタの例を図10に示す。図10において202はシート状のもの(用紙)を収納する給紙カセットであり、装置本体201に装着したまま所定の用紙補給位置まで引出し可能な給紙カセット202と、給紙カセット202の蓋部材を兼ね、装置本体201に揺動可能に装着されて給紙カセット202の上方を開閉可能な排紙トレイ203とを備えている。また装置本体201の前面の一端部側に、インクカートリッジとしての液体収容容器1を装填するためのカートリッジ装填部204を有し、このカートリッジ装填部204の上面に操作ボタンや、液体収容容器がセットされているか、この収容容器の液体が無くなったかなどを表示する表示部などを設ける操作/表示部205を備えていてもよい。なおインクジェット方式の画像形成装置201としては、このような構成以外であってもよい。すなわち液体収容容器1をセット可能であり、この液体収容容器1からインクを供給するためのノズル9がこの液体収容容器1にセットされることによって液体(インク)がこの画像形成装置201の吐出部に送られ、この液体が吐出可能であればよく、本実施形態の液体収容容器1が搭載(セット)できるものであれば足りる。
【0032】
なお本実施形態の液体収容容器1はリサイクルも可能であり、そのリサイクルの際に折りたたんで回収することもできる。またリサイクルした後に前記した液体収容方法の液体充填工程(2)と受入れ部材圧入、固定工程(3)を用いて新たに液体を液体収容容器1に収容することもできる。その際に受け入れ部材3を新しいものと取り替えて口部4に固定することもできる。そのため初回の液体収容方法では締め付け部材6を使用せずに融着して固定するだけとし、2回目以降からはこの固定を締め付け部材6を用いて固定するようにしてもよい。なおこの固定では、口部4に受け入れ部材3を融着により固定することが望ましいが、これを省略してもよい。
【実施例】
【0033】
以下に、本実施形態の液体収容容器1を実施例により、さらに具体的に説明するが、本実施形態は、以下に説明する実施例等に拘束されて解釈されるものではない。なお以下に表記する%、ppmは、特に断らない限り、重量基準で表すものとする。
【0034】
[実施例1]
平均粒経10μmの還元鉄を10%含有させたポリエチレンのペレットと、還元鉄を含有しないポリエチレンのペレットとを作製し、3層構造のバリソンを形成し、窒素ブローさせることにより図1に示すようなインク収容容器を作製した。3層の厚みの合計は0.5mmであった。
収容容器内の窒素ガスを抜きながら、溶存酸素量1.5ppmまで脱気したインクを充填し、その後、インク充填口(ブローガス流入孔)を融着し、その上から窪み部分に弾性部材を圧入し、接着させた。
【0035】
[実施例2]
実施例1と同様に作製したインク収容容器に、容器内の窒素ガスを抜きながら、脱気していないインクを充填した後にインク充填口(ブローガス流入孔)を融着し、その上から窪み部分に弾性部材を圧入し、接着させた。
【0036】
[実施例3]
実施例1と同様に作製したインク収容容器の最外層にアルミニウムのラミネートを施したインク収容容器を作成し、この収容容器内の窒素ガスを抜きながら、溶存酸素量1.5ppmまで脱気したインクを充填し、その後インク充填口(ブローガス流入孔)を融着し、その上から窪み部分に弾性部材を圧入し、接着させた。
【0037】
[比較例1]
還元鉄を含有しないポリエチレンのペレットを作製し、1層構造のバリソンを形成し、窒素ブローさせることにより図1のようなインク収容容器を作製した。インク収容容器の層の厚みは0.4mmであった。
容器内の窒素ガスを抜きながら、溶存酸素量1.5ppmまで脱気したインクを充填し、その後インク充填口(ブローガス流入孔)を融着し、その上から窪み部分に弾性部材を圧入し、接着させた。
【0038】
(評価方法)
実施例1〜3および比較例1のインク収容容器を50℃の恒温槽に入れ、1ヶ月保存した後に容器内からインクを抜き取り、インク中の溶存酸素量とpHとを測定した。結果を表1に示す。
溶存酸素量測定:オートマチックシステムリサーチ社の蛍光式酸素計FOR−21を用いて測定した。
pH:東亜DKK社のpHメータ HM−30Rを用いて測定した。
【0039】
【表1】

【0040】
酸素吸収剤を含有するインク収容容器は、インクを脱気しなくても経時での溶存酸素量が低く抑えられ、保存性も良好(pH変化が少ない)なのがわかる。特に実施例3のものは効果が高い。
【符号の説明】
【0041】
1 液体収容容器、2 液体収容部、3 受け入れ部材、4 口部、
4’ 窪み、6 締め付け部材、7 折りたたみ部、8 ハードケース、9 ノズル、21 第1の層、22 第2の層、42 内径部、61 結束バンド、62 針金部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0042】
【特許文献1】特許第3919734号公報
【特許文献2】特開2004−276538号公報
【特許文献3】特開2004−034696号公報
【特許文献4】実開平02−144438号公報
【特許文献5】特開2005−059482号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置本体に着脱自在に装着される液体収容容器であって、
難接着性樹脂層と酸素吸収剤を含有する樹脂層の少なくとも2層からなる液体収容部と、
液体を当該容器に出し入れするための口部とを有し、
前記酸素吸収剤を含有する樹脂層を内側の層としたことを特徴とする液体収容容器。
【請求項2】
前記酸素吸収剤を含有する樹脂層の内側の層に、さらに前記難接着性樹脂の層が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の液体収容容器。
【請求項3】
さらに最外層に金属層を有することを特徴とする請求項1または2に記載の液体収容容器。
【請求項4】
前記口部は前記液体を当該液体収容容器外に取出すためのノズルを受け入れる受け入れ部材を有し、前記受け入れ部材は塞ぐように嵌め込まれて前記口部に固定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項5】
前記受け入れ部材は、少なくともその1部が弾性部材で構成されており、前記ノズルを受け入れて生じた前記受け入れ部材の孔が前記ノズルを抜く際に閉口するように構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液体収容容器。
【請求項6】
前記ノズルを受け入れる孔は、当該液体収容容器がブロー成形により形成される際のブロー成形ガスの流入孔と連通されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液体収容容器。
【請求項7】
前記口部は前記液体収容部に接着、融着或いは締め付け部材で固定されるかまたは前記液体収容部を形成する際に前記液体収容部と一体に形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の液体収容容器。
【請求項8】
前記口部に固定される前記受け入れ部材を押圧する締め付け部材を設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の液体収容容器。
【請求項9】
さらに前記液体収容部に当該容器の容積を縮小する折りたたみ部を設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の液体収容容器。
【請求項10】
内層に酸素吸収剤を含有する樹脂層を有する容器に液体を口部から収容し、
前記液体を収容した後に前記口部を塞ぐようにゴム弾性を有する部材を圧入した後固定することを特徴とする液体収容容器の液体収容方法。
【請求項11】
前記液体がインクジェット方式の画像形成装置によって吐出する液体であることを特徴とする請求項10に記載の液体収容容器の液体収容方法。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかに記載の液体収容容器に、請求項10または11に記載の液体収容方法を用いて液体が収容された液体収容容器。
【請求項13】
請求項1〜9または12のいずれかに記載の液体収容容器を搭載したインクジェット方式の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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