説明

液体収容容器及び液体噴射装置

【課題】 液体収容容器単体のときには確実に大気開放機構を閉塞し、記録装置本体に装着するときには大気開放する大気開放機構を備える液体収容容器を提供する。
【解決手段】 液体収容容器としてのインクカートリッジ1Kは、インクが収容されるインク室2Kと、インク室2Kに連通する空気流路16とインクカートリッジ1Kの外部に開口される大気開放孔14とに連通する大気開放室12と大気開放室12の内部に配置され、空気流路16を開閉する移動部材としての球体45とを有する大気開放機構25と、を備え、球体45が、インクカートリッジ1Kの姿勢に対応して空気流路16を開閉する。また、液体噴射装置としてのインクジェット式記録装置100は、前述の大気開放機構25を備えるインクカートリッジ1Kを着脱可能に搭載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体収容容器及び液体噴射装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インク収容室(液体室)と大気開放室とを連通させるための貫通孔を有する容器本体と、この容器本体の貫通孔を開閉可能な弁体及びこの弁体を閉方向に押圧可能な弾性部材を有する大気開放弁とを備え、この大気開放弁を大気開放室内に組み付ける構造であって、弁体を、貫通孔の開口部を閉塞するような位置に配置し、弾性部材をくの字状の屈曲片を展開させて大気開放室内に位置決めし、この弾性部材は、位置決め状態において一方端部が弁体を閉方向に押圧し、且つ他方端部が大気開放室内に固定されている構造において、インクカートリッジ(液体収容容器)をカートリッジホルダ(受容部)に装着されることによって、カートリッジホルダに備えられている作動杆が、インク収容室と大気開放室とを連通させるための貫通孔を開放する方向に弁体を押圧するインクカートリッジが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−145784号公報(第9,10頁、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような特許文献1では、前述したように大気開放機構を構成する部品数が多く、構造が複雑になり、このことから大気開放室内への組み付けも容器本体の内側及び外側の両側から行なわなければならず、組み付け作業が煩雑になりコストが高くなることが考えられる。
また、インク収容室と大気開放室とを連通させるための貫通孔を閉塞する弁体を駆動する作動杆がカートリッジホルダに備えられているために、この大気開放機構は、カートリッジホルダとの組み合わせによって機能するため、カートリッジホルダの構造も複雑になり、カートリッジホルダもコスト高となり、その結果として液体噴射装置のコストが高くなるという課題が考えられる。
【0005】
本発明の目的は、液体収容容器単体のときには確実に大気開放機構を閉塞し、液体噴射装置本体に装着するときには大気開放する、簡単な構造で薄型の液体収容容器と、このような液体収容容器を搭載する液体噴射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体収容容器は、受容部に着脱可能な液体を収容する液体収容容器であって、液体が収容される液体室と、前記液体室に連通する空気流路と前記液体収容容器の外部に開口される大気開放孔とに連通する大気開放室と該大気開放室の内部に配置され前記空気流路を開閉する移動部材とを有する大気開放機構と、を備え、前記移動部材が、前記液体収容容器の姿勢に対応して前記空気流路を開閉することを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、大気開放室の内部に備えられた移動部材が液体収容容器の姿勢に対応して移動し、液体室と大気開放室とを連通する空気流路を開閉するため、部品数が少なく構造が簡単な液体収容容器を提供することができる。
また、大気開放機構は、液体収容容器内において構成されているので、受容部の構造には影響を与えず、受容部の構造も簡単にすることができ、液体収容容器及び受容部ともにコストの低減をすることができる。
また、部品数が少なく、簡単な構造であるため、液体収容容器の薄型化を実現することができる。
【0008】
また、前記空気流路は、前記大気開放室に接続する空気導入口と、前記空気導入口の近傍に、永久磁石または磁性体より成る吸引部材と、を備え、磁性体または永久磁石より成る前記移動部材が、前記吸引部材により吸引されて、前記空気導入口が閉塞されることが好ましい。
ここで、吸引部材が永久磁石から成るときには、移動部材は磁性体からなることが好ましく、吸引部材が磁性体から成るときには、移動部材は永久磁石からなることが好ましい。
また、磁性体としては、例えば、鉄系材料やフェライト系ステンレス鋼等が採用される。
【0009】
このような構造によれば、前記移動部材が磁性体または永久磁石で形成され、空気導入口の近傍に設けられた吸引部材が永久磁石または磁性体で形成されているため、相互の磁気吸引力で移動部材が吸引部材方向に移動され、空気導入口を閉塞するので、部品数が少なく、構造を簡単にすることができる。
【0010】
また、前述した構造では、前記大気開放室が、柱状の空間で構成され、前記大気開放室を略垂直姿勢にしたとき、前記移動部材が自重によって移動して前記空気導入口を開放し、前記大気開放室を略水平姿勢にしたとき、前記移動部材が、前記吸引部材により吸引されて、前記空気導入口を閉塞することが好ましい。
ここで、移動部材の重量は、前述した磁気吸引力よりも大きく設定される。
【0011】
このようにすれば、大気開放室を垂直方向に立てたときには、移動部材の自重によって吸引部材との吸引力から離脱して空気導入口を開放して、液体室の内部を大気開放し、また、水平方向に姿勢を倒した時には、移動部材が吸引部材によって吸引されて空気導入口を閉塞するので、液体収容容器の姿勢によって空気導入口を開閉することができ、簡単な構造の大気開放機構を構成することができる。
【0012】
また、前記大気開放室には、前記空気導入口に向かって傾斜した壁が設けられ、前記大気開放室を略水平姿勢にしたとき、前記移動部材が、前記傾斜した壁に沿って前記空気導入口の方向に移動し、前記吸引部材により前記空気導入口に吸引されて、前記空気導入口が閉塞されることが好ましい。
【0013】
このように、大気開放室を略水平姿勢にしたときには、大気開放室を構成する傾斜された壁に沿って移動部材が自重で移動し、吸引部材近傍に近づくと吸引部材との磁気吸引力によって空気導入口を閉塞するので、移動部材を空気導入口まで移動するための部材が不用であり、部品数が少なく、構造が簡単な大気開放機構を備える液体収容容器を提供することができる。
【0014】
また、前述の構造では、前記移動部材が球体であることが好ましい。
移動部材を球形にすれば、移動部材が、前述した大気開放室の壁に沿って移動する際、移動部材と壁との間に生ずる摩擦力を小さくすることができ、円滑に移動部材の移動をすることができる。
また、移動部材を大気開放室内に組み込むとき、移動部材が球形であるため、移動部材の姿勢を配慮せずに組み込むことができ、組み込み性が向上する。
【0015】
さらに、前記移動部材が、柱状体であることが好ましい。
ここで、柱状体とは、例えば、断面形状が円形の円柱や断面形状が四角形の四角柱等を示す。
【0016】
このように断面形状を円形や四角形にすれば、空気導入口を閉塞する面積が大きいので、空気導入口と移動部材との相対的な位置ずれの影響が受けにくく、確実に空気導入口の閉塞をすることができる。
【0017】
また、前記空気導入口が、弾性を有するシール部材により構成されていることが好ましい。
シール部材としては、例えば、シリコン系ゴム等の材料を採用することができる。
【0018】
このようにすれば、移動部材と空気導入口の気密性を高めることができるとともに、特に、前述した柱状の移動部材においては、移動部材が傾いて磁気吸引されることが考えられるが、空気導入口が弾性を有する材料で形成されているので、移動部材の傾きをこの弾性で吸収し、確実に空気導入口を閉塞することができる。
【0019】
さらに、前記空気導入口が、磁性体または永久磁石から構成されていることが好ましい。
空気導入口が磁性体または永久磁石から構成されているということは、空気導入口が前述した吸引部材の機能を兼ねることを意味する。
【0020】
このようにすれば、前述した永久磁石または磁性体から成る移動部材が磁気吸引される際、空気導入口と移動部材との距離が小さくなり、吸引力が大きくなり、空気導入口を閉塞する力が大きくなり、確実に空気導入口を閉塞することができる。
【0021】
また、少なくとも、前記移動部材の表面には、弾性体または弾性膜が形成されていることが好ましい。
【0022】
このような構造によれば、移動部材は、永久磁石または磁性体から成るが、これらの材料は表面硬度が高いため、空気導入口との密接性が不足することが考えられる。従って、移動部材の表面に弾性体または弾性膜を形成することで、移動部材を吸引部材によって吸引固定する際に、空気導入口との接触面積を増加することができるので、空気導入口との気密性を高め、確実に空気導入口を閉塞することができる。
【0023】
また、本発明では、前記液体収容容器を前記受容部に装着したときに前記移動部材が自重によって移動し、前記空気導入口を開放することが好ましい。
【0024】
詳しくは後述するが、液体収容容器を受容部に装着したときに、前記大気開放室が略垂直姿勢になるため、移動部材は、その自重によって磁気吸引力から開放されて下方に移動し、空気導入口が開放される。従って、液体収容容器の姿勢を変えることで液体室の大気開放を行なうことができる。
【0025】
また、本発明の液体噴射装置は、前述した大気開放機構が備えられる液体収容容器が搭載されることを特徴とする。
このような液体噴射装置は、液体収容容器の着脱が簡単に行なえ、且つ、液体収容容器を受容部に装着するときに液体室が大気開放され、受容部から分離して大気開放室を略水平姿勢にしたときは空気導入口を閉塞することができ大気開放機構を備える液体収容容器を搭載しているので、液体収容容器を含めて製造コストを低減できる。
さらには、前述の大気開放機構は薄型化に適した簡単な構造であり、このことによって、液体収容容器を薄型化することができ、その結果、液体噴射装置を小型化することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図6は本発明の実施形態1の液体噴射装置、液体収容容器及び大気開放機構が示されている。図7には、本発明の実施形態2、図8には、実施形態3、図9には、実施形態4、図10には、実施形態5が示されている。
なお、以下に説明する各実施形態では、液体としてはインクを、液体収容容器としては、インクを収容するインクカートリッジ、また、液体噴射装置としては、インクジェット記録装置を例示して説明する。
(実施形態1)
【0027】
図1〜図6は、本発明に係る実施形態1のインクカートリッジ及びインクジェット式記録装置(以降、単に記録装置または記録装置本体と表すことがある)が示されている。
図1は、本実施形態1の記録装置を示す斜視図である。図1において、記録装置100は、スキャナSCなどとともにコンピュータPCに対して接続された状態で使用される。コンピュータPCに、オペレーティングシステムや所定のプログラムがロードされ、実行されることにより、これらの装置全体が一体で記録装置として機能する。コンピュータPCでは、所定のオペレーティングシステム上でアプリケーションプログラムが動作し、スキャナSCから読み込んだ画像などに対して所定の処理を行いつつCRTディスプレイMTに画像を表示する。使用者は、ディスプレイMT上の画像をレタッチするといった処理を行なったのち、印刷を指示すると、オペレーティングシステムに組み込まれたプリンタドライバが起動し、画像データを記録装置100に転送する。
【0028】
プリンタドライバは、スキャナSCから入力され、処理された原カラー画像データを記録装置100が使用する各色のデータに変換し、記録装置100に出力する。詳細には、原カラー画像データは赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の色成分からなり、これを色変換して、記録装置100に出力する色データであるブラック(K)、シアン(C)、ライトシアン(LC)、マゼンダ(M)、ライトマゼンダ(LM)、イエロー(Y)の各色に変換する処理や、さらにこれをインクドットの有無に置き換えるいわゆる二値化の処理などを行なう。これらの画像処理は、周知のものなので、詳細な説明は省略する。なお、こうした処理は後述する記録装置100側のプリントコントローラ50で行う構成とすることもできる。
【0029】
キャリッジ51は、タイミングベルト52を介してキャリッジ機構53のキャリッジモータ54に接続されており、ガイド部材55に案内されて印刷用紙56の紙幅方向に往復動する。記録装置100は、紙送りローラ57を用いた紙送り機構58も有している。キャリッジ51には印刷用紙56と対向する面、図1に示す例では下面に液体吐出ヘッドとしてのインクジェット式の記録ヘッド60が取り付けられている。記録ヘッド60は、キャリッジ51の上に搭載されているインクカートリッジ1K,1Fからインクの補給を受け、キャリッジ51の移動に合わせて印刷用紙56にインク滴を吐出してドットを形成し、印刷用紙56に文字や画像を印刷する。
【0030】
インクカートリッジ1Kは、黒(K)インク用の独立したカートリッジである。インクカートリッジ1Fは、複数のインクカートリッジ1C,1LC,1M,1LM,1Yを一体化したインクカートリッジである。インクカートリッジ1Fを構成する複数のインクカートリッジ1C,1LC,1M,1LM,1Yは、それぞれが、独立したインクカートリッジとしての構成を有している。インクカートリッジ1Fを構成する複数のインクカートリッジ1C,1LC,1M,1LM,1Yの内部には、それぞれインクを収容する液体室としてのインク室2C,2LC,2M,2LM,2Y(いずれも図示せず)が備えられている。これらのインク室2C,2LC,2M,2LM,2Yには、シアン(C)、ライトシアン(LC)、マゼンダ(M)、ライトマゼンダ(LM)、イエロー(Y)のインクがそれぞれ充填されている。従って、記録ヘッド60には、各色のインクがインク室2C,2LC,2M,2LM,2Yからそれぞれ供給される。これらの各インクはそれぞれ記録ヘッド60から各色のインク滴として吐出されてカラー印刷が実現される。
【0031】
記録装置100の非印刷領域(非記録領域)には、キャッピング装置61が配置され、印刷処理の休止中に記録ヘッド60のノズル開口部を封止する。このキャッピング装置61によって、印刷処理の休止中における、インクの溶媒成分が揮発することに起因するインク粘度の増大、あるいは、インク膜の形成を抑制することができる。従って、印刷処理の休止中におけるノズルの目詰まりを防止することができる。また、キャッピング装置61は、印刷処理実行中に行われるフラッシング動作による記録ヘッド60からのインク滴を受ける。キャッピング装置61の近傍にはワイピング装置62が配置され、このワイピング装置62は、記録ヘッド60の表面をブレードなどでワイピングすることにより、記録ヘッド60の表面に付着したインク滴や紙粉を拭き取る。
【0032】
プリントコントローラ50は、コンピュータからの多値階調情報を含む印刷データなど
を受信するインターフェース部と、多値階調情報を含む印刷データなどの各種データの記憶を行うRAMと、各種データ処理を行うためのルーチンなどを記憶したROMと、CPUなどからなる制御部と、発振回路と、記録ヘッドへの駆動信号COMを発生させる駆動信号発生回路と、ドットパターンデータに展開された印刷データおよび駆動信号をプリントエンジンに送信するなどの機能を果たすパラレル入出力インターフェース等(いずれも図示せず)を備え、記録装置100の制御を司っている。
【0033】
記録装置100において、インクカートリッジ1Fは、インクカートリッジ1Kを複数個並べて一体化した構成を有している。よって、インクカートリッジとしての基本的な構造は共通する。
【0034】
次に、インクカートリッジ、及び受容部としてのインクカートリッジ装着部の構造について説明する。図2は、インクカートリッジおよび記録装置100のインクカートリッジ装着部の概略構造を示す斜視図である。
図2(a)は、インクカートリッジ1Kを示す斜視図である。図2(b)は、キャリッジ51のインクカートリッジ装着部30を示す斜視図である。ここで、図1および図2(a),(b)を参照して、黒用のインクカートリッジ1Kを例にしてインクカートリッジの構造、及びこのインクカートリッジ1Kを記録装置100に装着するための概略構造を説明する。
【0035】
インクカートリッジ1Kは、内部にインクを収容する合成樹脂製のインクカートリッジ本体3と、このインクカートリッジ本体3の側面にインクを収容する液体室としてのインク室(図示せず)を構成する蓋体4が溶着されて略直方体の容器である。インクカートリッジ本体3には、インクを記録装置100に供給する液体供給部としてのインク供給部5と、キャリッジ51上に装着する際に篏合させる突起部6、フック7、及びインクカートリッジの諸情報を記憶した記憶素子8等から構成されている。また、記憶素子8に記憶されているインクカートリッジの諸情報は、インクカートリッジの品番や、インク色、インク容量及び残量等についての情報である。
【0036】
図2(b)は、記録装置100のキャリッジ51におけるインクカートリッジ装着部30の斜視図である。インクカートリッジ装着部30には、インクカートリッジ1Kを装着する空間の底部31に液体供給部材としてのインク供給針32が上向きに植立されている。インク供給針32は、後述するインクカートリッジ1Kのインク供給部5の内部に備えられた弁体80を移動して、インク室2Kとインク供給針32のインク供給路40を連通する(図6、参照)。このインク供給針32の周りは、インクカートリッジ1Kに形成されているインク供給部5を受け入れる凹部33になっている。
【0037】
また、この凹部33の内壁には、インクカートリッジをガイドする溝(図示せず)が複数ヶ所に形成されている。インクカートリッジ装着部30の側面方向の一方の壁34には、コネクタ35が配置されている。コネクタ35は、インクカートリッジ装着部30にインクカートリッジ1Kが装着されたときに、インクカートリッジ1Kの記憶素子8の端子と電気的に接合して、記録装置100との間でインクカートリッジの諸情報を含む各種のデータを授受する。
【0038】
続いて、インクカートリッジ1Kがインクカートリッジ装着部30に装着される前の単体の状態について図3を参照して説明する。
図3は、インクカートリッジ1Kを蓋体4(図2(a)参照)を上方にしておいた状態を平面視した断面図であり、内部の構造を説明するために蓋体4を取り外した状態を示している。図2において、インクカートリッジ本体3は、インクを収容するインク室2Kが設けられた略直方体の容器であり、一方の端部(図中、左下に表す)には、インク供給部5が突設されている。
【0039】
インク供給部5の内部には、インク室2Kと連通するインク供給室11が形成され、中央にインク流路71が開設されたOリング70が圧入されており、このインク流路71のインク供給室側を閉塞する弁体80が備えられている。弁体80には、インク流路71を閉塞する鍔状の閉塞部81が形成されており、コイルばね83によってインク流路71に付勢されている。この状態では、インク流路71が閉塞されているため、インクは、インク室2Kから記録ヘッド(図示せず)に供給されない。また、インク室2Kとインク供給室11との間にはインク室2K内部の負圧制御を行なう負圧発生機構85が備えられている。
【0040】
負圧発生機構85には、図示しないが、インク室2Kとインク供給室11を連通する流路が設けられ、その流路の間に膜弁と膜弁を付勢するばねが備えられており、インクカートリッジ装着部30に備えられたインク供給針32内のインク供給路40(図6、参照)のインク圧力が一定の負圧となるように、膜弁が開閉を繰り返す構造となっている。
一方、インクカートリッジ本体3のインク供給部5とは反対側の端部内側(図中、右上方)には、大気開放機構25が備えられている。
【0041】
大気開放機構25は、基本構成として、インクカートリッジ本体3の側面壁27とインク室2K内部の壁13とに囲まれた柱状の空間を有する大気開放室12と、インク室2Kと大気開放室12とを連通する空気流路16と、空気流路16を閉塞する移動部材としての球体45と、球体45を吸引する吸引部材90とから構成されている。球体45は、鉄系材料やフェライト系ステンレス鋼等の磁性体から構成されており、表面は滑らかに仕上げられている。この図3で示した状態では大気開放室12は水平姿勢にあり、球体45は、吸引部材90に吸引されて、空気流路16の大気開放室12と接続する空気導入口15を閉塞している。空気導入口15の大気開放室12との接続面20は、大気開放室側が球体45の外形と同じ形状で形成され、球体45と密接する形状とされる。
【0042】
インクカートリッジ本体3の側面壁27には、大気開放室12と連通する大気開放孔14が開設されて、大気開放室12の内部は、インクカートリッジ本体3の外部の気圧と同じ圧力となる。吸引部材90は、円盤状に形成された永久磁石であり、インクカートリッジ本体3の空気導入口15を挟んで球体45と対向する位置に固定されている。吸引部材90と球体45との距離は吸引力を適正に保持できる距離に設定される。
【0043】
また、空気流路16は、大気開放室12と接続する空気導入口15と、蛇道17と、空気室18と、空気導入孔19と、から構成された溝であり、封止シール95によって表面が封鎖されており、大気開放室12とインク室2Kとを連通可能にしている。空気流路16については、後述する図4において、さらに詳しく説明する。
【0044】
図4は、空気流路16の構成を示す平面図であり、封止シール95を透視した状態を示している。図3も参照して説明する。図3、図4において、空気流路16は、大気開放室12に接続する空気導入口15から蛇道17、空気室18に連続している。蛇道17は、略U字形状が連続した溝であり、空気流路16の距離を大きくすることで、インク室2K内のインクの乾燥を防止している。空気室18は、断面が通気シール96によって二つの部屋に分割されている。
【0045】
図3において、通気シール96は、撥水性と通気性を有するシールであり、液体であるインクは透過せず、空気は透過する性質を有する。通気シール96によって分割された二つの空気室18のうち、大気開放室12に連通する部屋には、空気が流通し、通気シール96を透過してインク室2Kと連通可能にしている。一方のインク室2K側の部屋は、空気流路の空気導入孔19に接続している。通気シール96は、撥水性を有しているため、インク室2K内のインクは、蛇道17には漏洩しない。
【0046】
続いて、本実施形態1に係る大気開放機構と作用について図5を参照して説明する。
図5は、インクカートリッジ1Kの大気開放機構を示す部分断面図である。図5では、インクカートリッジ1Kを蓋体4を下方にして置いた状態を示している(大気開放室12は水平姿勢にある)。図5において、大気開放室12は、インクカートリッジ本体3と蓋体4で形成された柱状の空間で、蓋体側の大気開放室内の壁21,22は、空気導入口15に向かって球体45が転がるように傾斜されており、空気導入口15に球体45の直径と同じ大きさの円弧で連続している。
【0047】
このように大気開放室12が形成されているので、球体45は、インクカートリッジ1Kが図5のような姿勢のとき、即ち、大気開放室12が略水平姿勢にあるときには、図中、二点鎖線で示した位置から壁21の傾斜に沿って空気導入口15方向に移動する。球体45が、吸引部材90の吸引力の影響を受ける位置にまで移動すると、さらに吸引部材90により円弧部に沿って吸引誘導されて、空気導入口15の接続面20に密接して空気導入口15を閉塞して吸引固定される。
【0048】
インクカートリッジ1Kを蓋体4を上方に置いた状態(図5の天地逆の姿勢)も同様に、球体45は、壁22に沿って吸引誘導されて空気導入口15を閉塞する。球体45は、空気導入口15の接続面20と、壁21または壁22に連続する円弧部とで支持されて空気導入口15を閉塞する状態を維持する。
【0049】
このようにして、インクカートリッジ1Kが単体の状態で、蓋体4が下方向または上方向に置かれた姿勢において、大気開放室12とインク室2Kの間は閉塞されている。
【0050】
次に、インクカートリッジ1Kをインクカートリッジ装着部30に装着した状態について図面に従い説明する。
図6は、インクカートリッジ1Kをインクカートリッジ装着部30に装着した状態を示す断面図である。図6において、インクカートリッジ1Kは、壁34と壁37との間に装着されている。インクカートリッジ1Kの突起部6が、インクカートリッジ装着部30の壁34の嵌合孔36に嵌合し、インクカートリッジ本体3をインクカートリッジ装着部30の底部31側へ押し下げると、フック7がその弾性によりたわみ、フック7部に設けられた爪部10が、インクカートリッジ装着部30の側面方向の壁37に設けられた嵌合孔38と嵌合される。このとき、インク供給針32が弁体80を押し上げるとともに、インク供給針32のインク導入口39がインク供給室11内に開口し、インク室2Kからのインクが記録ヘッド(図示せず)に供給可能となる。
【0051】
インクカートリッジ1Kがインクカートリッジ装着部30に装着されるときには、大気開放室12は、略垂直姿勢となる。このとき、球体45は、自重によって吸引部材90の吸引力に逆らって、図中、二点鎖線で示す位置から図中、実線で示す位置まで移動し、空気導入口15を開放する。すると、大気開放孔14とインク室2Kが連通してインク室2K内に空気が流入する。このような状態で、記録装置を駆動してインクを消費すると、消費したインクの容積分の空気がインク室2K内に流入され、インク室内の圧力が保持されて、安定したインク供給を可能にする。
【0052】
なお、インクカートリッジ1Kをインクカートリッジ装着部30から分離して置くときの姿勢は、インクカートリッジ本体3の側面には、突起部6やフック7が設けられているので(図2(a)も参照)、側面方向を下方向に置いた場合、姿勢が安定せず、前述したような蓋体4を上方向にするか、または、下方向にすることになる。大気開放室12には、壁21,22に斜面を設けているが、壁21と壁22とに挟まれる二方の壁も同様な斜面を設けることができる。
【0053】
また、前述した実施形態1では、移動部材としての球体45が、磁性体で形成され、吸引部材90を永久磁石としたが、球体45を永久磁石にし、吸引部材90を磁性体とすることができる。
【0054】
従って、前述の実施形態1によれば、大気開放室12の内部に備えられた球体45が、インク室2Kと大気開放室12とを連通する空気流路16を開閉するため、部品数が少なく構造が簡単なインクカートリッジ1Kを提供することができる。
また、大気開放機構は、インクカートリッジ本体3の内部に構成されているので、インクカートリッジ装着部30の構造には影響を与えず、インクカートリッジ装着部30の構造も簡単することができ、インクカートリッジ1K及びインクカートリッジ装着部30ともにコストの低減をすることができる。
また、前述したような球体の移動部材を用いることで、インクカートリッジ1Kの薄型化を実現できる。
【0055】
また、球体45が磁性体で形成され、吸引部材90が永久磁石で形成されているため、相互の磁気吸引力で球体45が吸引部材90方向に移動され、空気導入口15を閉塞するので、部品数が少なく、より一層、構造を簡単にすることができる。
【0056】
また、インクカートリッジ1Kをインクカートリッジ装着部30に装着したとき、つまり、大気開放室12が垂直方向にたてられたときには、球体45の自重によって吸引部材90との吸引力から離脱して空気導入口15を開放して、インク室2Kの内部を大気開放し、また、インクカートリッジ1Kをインクカートリッジ装着部30から分離したとき、つまり、大気開放室12を略水平方向の姿勢に倒した時には、球体45が吸引部材90によって吸引誘導されて空気導入口15を閉塞するので、インクカートリッジ1Kの姿勢によって空気導入口15を開閉することができ、簡単な構造の大気開放機構を構成することができる。
【0057】
さらに、移動部材が球体であるため、球体45が、前述した大気開放室12の壁21または22に沿って移動する際、球体45と壁21,22との間に生ずる摩擦力を小さくすることができ、円滑に球体45の移動をすることができる。
また、球体を大気開放室12内に組み込むとき、球体45の姿勢を配慮せずに組み込むことができ、組み込み性が向上する。
【0058】
また、前述した記録装置は、インクカートリッジの着脱が簡単に行なえ、且つ、インクカートリッジをインクカートリッジ装着部に装着するときにインク室が大気開放され、インクカートリッジ装着部30から分離して大気開放室を略水平姿勢にしたときは、空気流路を閉塞することができる大気開放機構を備えるインクカートリッジを搭載することによって、装着部の構造が簡単となり、インクカートリッジを含めて製造コストを低減できる。
また、前述した大気開放機構は、インクカートリッジ内に備えられているため、インクカートリッジ装着部の構造には影響させないので、設計上の制約を少なくすることができる。
さらには、前述の大気開放機構は薄型化に適した構造であり、このことによって、液体収容容器を薄型化することができ、その結果、液体噴射装置を小型化することができるという効果がある。
(実施形態2)
【0059】
続いて、本発明に係る実施形態2について図面に基づき説明する。実施形態2は、大気開放室と空気流路を接続する位置にOリングを備えることに特徴を有し、他の構成は前述の実施形態1と同じため説明を省略し、同じ符号を附与している。
図7は、実施形態2に係る大気開放機構25の部分断面図を示している。図7において、大気開放室12と空気流路16との接続部には、シール部材としてのOリング91が備えられている。Oリング91の中央には、空気導入口93が開設されている。また、Oリング91の大気開放室側の球体45との密接面92は、球体45の外形と略同じ凹部が形成されて、球体45と密接する形状とされる。
【0060】
Oリング91は、弾性と気密性を有するゴム系材料で形成され、球体45が吸引部材90によって吸引されて空気導入口93を閉塞するとき、球体45と接触する部分が球体45の形状に沿って変形し、密接性を高める。
ここで、インクカートリッジ1Kが、インクカートリッジ装着部30に装着されているときには、球体45は、その自重によって移動し(図中、実線で示す位置)、単体で置かれる際には、吸引部材90で吸引誘導され、空気導入口93を閉塞する(図中、二点鎖線で示す)。
【0061】
従って、前述した実施形態2によれば、弾性を有するOリング91が備えられ、球体45が吸引されるため、球体45と空気導入口93の気密性を高めることができ、インクカートリッジ1Kがインクカートリッジ装着部30から分離された単体の状態のときの空気流路の閉塞を確実に行なうことができる。
(実施形態3)
【0062】
次に、本発明に係る実施形態3について図面に基づき説明する。実施形態3は、前述した実施形態1及び実施形態2に比べ、空気導入口に吸引部材を備えることに特徴を有している。
図8は、実施形態3に係る大気開放機構25の部分断面図を示す。図8において、大気開放室12と空気流路16との接続部には、吸引部材101が備えられている。吸引部材101は、永久磁石から構成されたリング状の部材で、中央には、空気導入口103が開設されている。また、吸引部材の大気開放室側の球体45との密接面102は、球体45の外形と略同じ凹部が形成されて、球体45と密接する形状とされる。
【0063】
球体45は、磁性体で形成され、吸引部材101によって吸引誘導されて、吸引部材101と直接接触し、空気導入口103を閉塞する。ここで、インクカートリッジ1Kが、インクカートリッジ装着部30に装着されているときには、球体45は、その自重によって移動し(図中、実線で示す位置)、単体で置かれる際には、吸引部材101で吸引誘導され、空気導入口103を閉塞する(図中、二点鎖線で示す)。この実施形態3における作用は、実施形態2と同じであるため、説明を省略する。
【0064】
なお、本実施形態では、吸引部材101が永久磁石、球体45が磁性体で形成されているが、吸引部材101を磁性体、球体45を永久磁石にすることもできる。
【0065】
従って、前述した実施形態3によれば、球体45が磁気吸引される際、空気導入口103を有する吸引部材101と球体45との距離が小さくなり、吸引力が大きくなり、その結果、空気導入口103を閉塞する力が大きくなり、確実に空気導入口を閉塞することができる。
(実施形態4)
【0066】
次に、本発明に係る実施形態4について図面を参照して説明する。実施形態4は、前述した実施形態に比べ、移動部材としての球体の構成が異なることに特徴を有する。
図9は、本実施形態4に係る移動部材としての球体を示す断面図である。図9において、球体45は、中心の核46の部分が磁性体から成り、その外周部全面に弾性を有する弾性体の層47、または弾性膜47が形成されている。そして、インクカートリッジ本体3に備えられた永久磁石から成る吸引部材90によって吸引誘導されて空気導入口15または93または103を閉塞する。
なお、弾性体の層とは、厚肉の層を意味し、弾性膜とは薄肉の膜を意味するが、共に弾性を有するため、空気導入口と接触した部分が、吸引部材との吸引力に対応して変形する。
【0067】
なお、球体45の核46を永久磁石とし、吸引部材90を磁性体で形成することもでき、前述した実施形態1〜実施形態3の構造にも本実施形態による球体45を組み合わせて使用することができる。
【0068】
従って、前述した実施形態4によれば、移動部材としての球体45の表面に弾性体または弾性膜を形成することで、球体45をを吸引部材によって吸引固定する際に、弾性体の層または弾性膜と空気導入口との接触面積を増加することができるので、空気導入口との気密性を高め、確実に空気導入口を閉塞することができる。
(実施形態5)
【0069】
続いて、本発明に係る実施形態5について図面を参照して説明する。実施形態5は、前述した実施形態と比べ、柱状体の移動部材を採用していることに特徴を有する。
図10(a)は、本実施形態の大気開放機構25の平面方向を視認した断面図、図10(b)は、側面方向を視認した断面図を示す。図10(a),(b)において、移動部材105は、磁性体から成る円柱であり、大気開放室12内に収容されている。大気開放室12は、移動部材105の外形形状に沿った空間で、移動部材105が移動できる程度の間隙を有している。
【0070】
大気開放室12と空気流路16との接続部には、シール部材としてのOリング191が備えられている。Oリング191の中央には、空気導入口193が開設されている。また、Oリング191の大気開放室側の移動部材105との接触部は、リング状に突設された突起部194が形成されている。Oリング191は、弾性と気密性を有するゴム系材料で形成されている。大気開放室12は、図10(b)に示すように、インクカートリッジ本体3と蓋体4で筒状に形成された空間で、蓋体側の大気開放室内の壁21は、空気導入口193に向かって移動部材が摺動するように傾斜されている。
【0071】
このように大気開放室12が形成されているので、移動部材105は、インクカートリッジ1Kが図10(b)のような姿勢のとき、即ち、大気開放室12が略水平姿勢にあるときには、傾斜された壁21の傾斜に沿って空気導入口193方向に移動する。移動部材105は、吸引部材90の吸引力の影響を受ける位置にまで移動すると、さらに吸引部材90により吸引誘導されて、Oリング191の突起部194に密接して空気導入口193を閉塞して吸引固定される。
【0072】
インクカートリッジ1Kを蓋体4を上方に置いた状態(図10(b)で示した状態と天地逆の姿勢)も同様に、移動部材105は、壁22に沿って吸引誘導されて空気導入口15を閉塞する。
【0073】
前述した突起部194は、永久磁石から成る吸引部材90によって移動部材105が吸引されたときに吸引力で変形し、突起部194と移動部材105が密接して空気導入口193が閉塞される。このとき、移動部材105の尾部は、自重で下がり壁21または壁22に接触して僅かに傾斜するが、突起部194の弾性でこの傾斜を吸収し、空気導入口15を閉塞する。
【0074】
インクカートリッジ1Kが、インクカートリッジ装着部30に装着された状態においては、移動部材105は、自重でOリング191から分離し、空気導入口193は開放される。このとき、大気開放孔14も移動部材105の軌跡から開放されている(図10(a)参照)。
【0075】
なお、前記移動部材105は、円柱形状を例示したが、四角柱等の断面形状が多角形の柱状体を採用することができる。
【0076】
また、本実施形態では、大気開放室12内の壁21,22は、傾斜して形成しているが、傾斜を有しない壁とすることができる。このような構造は、インクカートリッジ1Kを図10(a)で示す姿勢にしたときに、移動部材105の重量を吸引部材の吸引力から離脱可能な重量とし、図10(b)で示す状態のときには、移動部材105と吸引部材90との隙間を、吸引部材90の吸引力で移動部材105を吸引できる大きさに設定する。このときの吸引力は、移動部材105と壁21または壁22との摩擦力より大きくすることにより実現できる。
【0077】
また、移動部材105には、図示しないが、前述した実施形態4のように表面に弾性体の層や弾性膜を形成することができる。この場合には、Oリング191は、必ずしも弾性を有しない金属材料で形成することも、実施形態3で説明した吸引部材101を採用することができる。
さらに、移動部材105を永久磁石で形成し、吸引部材90を磁性体で形成することもできる。
【0078】
従って、前述した実施形態5によれば、移動部材105が円柱や四角柱にすれば、空気導入口15を閉塞する面積が大きいので、空気導入口15と移動部材105との相対的な位置ずれの影響を受けにくく、確実に空気導入口15の閉塞をすることができる。
また、Oリング191には、弾性を有する突起部194が設けられているので、移動部材105が傾斜した状態で吸引されても、その傾斜分を吸収することができ、一層、確実に空気導入口15を閉塞することができる。
【0079】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前述の実施形態では、液体収容容器として、インクジェット式記録装置に採用されるインクカートリッジを例にあげ説明したが、本発明による液体収容容器は、インクカートリッジに限らず、水、薬液、油類等の他の液体を収容し、これらの液体を機器に供給する液体収容容器に応用することができる。
【0080】
また、前述の実施形態では、移動部材を吸引部材として永久磁石を採用する例をあげ説明しているが、図示しないが、移動部材を吸引誘導する手段として永久磁石に限らず、例えば、電磁石等の吸引手段を採用することもできる。
このようにすれば、吸引力を高めることができ、移動部材を確実に吸引誘導することができ、一層確実に空気流路を閉塞することができ、また、インクカートリッジを分離する際に、電磁石に供給する電力を遮断すれば、吸引力がなくなるため、移動部材は容易に移動し、インク室の大気開放を行なうことができる。
【0081】
さらに、本発明の技術思想に基づき他の変形例を提案することができる。
例えば、前述した移動部材(球体45または移動部材105)は、磁性体もしくは永久磁石から構成されているが、移動部材として、流動性を有するジェルを採用することが考えられる(図示せず)。ジェル内部には、ゴム系の小径ボールが混在されており、インクカートリッジをインクカートリッジ装着部から分離しておいた際に、ジェルが斜面に沿って移動し、空気導入口を閉塞する。ジェルには、小径ボールが混在されているため、小径ボールに吸着しているため空気流路内には流動しない。
【0082】
インクカートリッジをインクカートリッジ装着部に装着したときには、大気開放室が略垂直になるため、ジェルが下方に流動して、空気導入口を開放する。
なお、このような構造では、大気開放室を構成する壁の内部には、撥水処理等を施し、ジェルの流動性を高めることが好ましい。
このようにすれば、インクカートリッジの構造をより簡素化することができる。
【0083】
従って、前述の実施形態1〜実施形態5では、液体収容容器単体のときには確実に大気開放機構を閉塞し、液体噴射装置本体に装着するときには大気開放する、簡単な構造の大気開放機構を有する薄型の液体収容容器と、このような液体収容容器を搭載する液体噴射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明に係る実施形態1の記録装置を示す斜視図。
【図2】(a)本発明に係る実施形態1のインクカートリッジを示す斜視図。 (b)本発明に係る実施形態1のインクカートリッジ装着部を示す斜視図。
【図3】本発明に係る実施形態1のインクカートリッジを示す平面視の断面図。
【図4】本発明に係る実施形態1のインクカートリッジを示す上面視の平面図。
【図5】本発明に係る実施形態1の大気開放機構を示す部分断面図。
【図6】本発明に係る実施形態1のインクカートリッジをインクカートリッジ装着部に装着した状態を示す平面視の断面図。
【図7】本発明に係る実施形態2の大気開放機構を示す部分断面図。
【図8】本発明に係る実施形態3の大気開放機構を示す部分断面図。
【図9】本発明に係る実施形態4の移動部材を示す断面図。
【図10】(a)本発明に係る実施形態5の大気開放機構を示す部分断面図。 (b)本発明に係る実施形態5の大気開放機構を示す部分断面図。
【符号の説明】
【0085】
1K…インクカートリッジ、2K…インク室、12…大気開放室、14…大気開放孔、16…インク流路、25…大気開放機構、45…移動部材としての球体、100…記録装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受容部に着脱可能な液体を収容する液体収容容器であって、
液体が収容される液体室と、
前記液体室に連通する空気流路と前記液体収容容器の外部に開口される大気開放孔とに連通する大気開放室と該大気開放室の内部に配置され前記空気流路を開閉する移動部材とを有する大気開放機構と、を備え、
前記移動部材が、前記液体収容容器の姿勢に対応して前記空気流路を開閉することを特徴とする液体収容容器。
【請求項2】
請求項1に記載の液体収容容器において、
前記空気流路は、前記大気開放室に接続する空気導入口と、該空気導入口の近傍に、永久磁石または磁性体より成る吸引部材と、を備え、
磁性体または永久磁石より成る前記移動部材が、前記吸引部材により吸引されて、前記空気導入口が閉塞されることを特徴とする液体収容容器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液体収容容器において、
前記大気開放室が、柱状の空間で構成され、
前記大気開放室を略垂直姿勢にしたとき、前記移動部材が自重によって移動して前記空気導入口を開放し、
前記大気開放室を略水平姿勢にしたとき、前記移動部材が、前記吸引部材により吸引されて、前記空気導入口を閉塞することを特徴とする液体収容容器。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の液体収容容器において、
前記大気開放室には、前記空気導入口に向かって傾斜した壁が設けられ、前記大気開放室を略水平姿勢にしたとき、前記移動部材が、前記傾斜した壁に沿って前記空気導入口の方向に移動し、前記吸引部材により前記空気導入口に吸引されて、前記空気導入口が閉塞されることを特徴とする液体収容容器。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載された液体収容容器において、
前記移動部材が球体であることを特徴とする液体収容容器。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載された液体収容容器において、
前記移動部材が柱状体であることを特徴とする液体収容容器。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載された液体収容容器において、
前記空気導入口が、弾性を有するシール部材により構成されていることを特徴とする液体収容容器。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載された液体収容容器において、
前記空気導入口が、磁性体または永久磁石から構成されていることを特徴とする液体収容容器。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載された液体収容容器において、
少なくとも、前記移動部材の表面には、弾性体または弾性膜が形成されていることを特徴とする液体収容容器。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載された液体収容容器において、
前記液体収容容器を前記受容部に装着したときに前記移動部材が自重によって移動し、前記空気導入口を開放することを特徴とする液体収容容器。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載された大気開放機構が備えられる液体収容容器が搭載されることを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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