説明

液体収容容器及び画像形成装置

【課題】液体収容容器の底部に供給チューブを接続して内部の液体収容部に液体を供給する構成にあっては、チューブの這い回しが複雑になる。
【解決手段】ヘッドタンク35は、外部から供給チューブ36を介して供給されたインクを収容するインク収容部200を形成するタンクケース201を有し、タンクケース201は、上部に供給チューブ36が接続されるインク供給口部207を有し、インク供給口部207からインク収容部200に至るインク導入経路210が設けられ、インク導入経路210は、インク収容部200の周囲の一部に沿って配置され、インク収容部の底部側でインク収容部200に開口する開口部210aを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体収容容器及び画像形成装置に関し、特に液滴を吐出する記録ヘッドに液体を供給する液体収容容器及び同容器を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。
【0003】
このような画像形成装置において、記録ヘッドにインクを供給するヘッドタンク(サブタンク、バッファタンクとも称される。)を備え、装置本体側に着脱自在に装着されるメインタンク(インクカートリッジとも称する)からヘッドタンクに対してインクを供給する方式のものが知られている。
【0004】
従来のメインタンクとして、例えば、インクを収納するインク収納室と、インク収納室内壁の底部に設けられた、インク収納室内のインクを外部へ供給するためのインク供給口と、インク収納室の底部に設けられインク収納室内に大気を導入するための大気導入口と、インク収納室の底部に連続する少なくとも1つの斜面とを有するインク収納容器が知られている(特許文献1)。
【0005】
また、ヘッドタンクとして、タンクケースの上部からインク収容部にインクを供給する供給口部を有し、タンクケースの上部にインク収容部のインクを検知する複数の電極ポンを設け、またタンクケースの上部にインク収容部を大気に開放する大気開放路を含む大気開放機構を備えたものが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−223159号公報
【特許文献2】特開2010−221598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したようにインクタンクの底部に外部からのインク供給口を設ける構成にあっては、供給経路を形成する部材(供給経路部材)、例えば可撓性の供給チューブの這い回しが複雑になり、組み付け性が悪くなるという課題がある。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、供給経路部材の液体収容容器に対する組み付け性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体収容容器は、
液滴を吐出する記録ヘッドに液体を供給する液体収容容器であって、
外部からに供給経路部材を介して供給された前記液体を収容する液体収容部を形成する容器本体を有し、
前記容器本体は、上部に前記供給経路部材が接続される液体供給口部を有し、
前記液体供給口部から前記液体収容部に至る液体導入経路が設けられ、
前記液体導入経路は、前記液体収容部の周囲の一部に沿って配置され、前記液体収容部の底部側で前記液体収容部に開口している
構成とした。
【0010】
ここで、前記液体導入経路は、前記容器本体に形成された溝を蓋部材で覆って形成されている構成とできる。
【0011】
また、前記容器本体の上部には、前記液体収容部内を大気に開放する開閉可能な大気連通路が設けられている構成とできる。
【0012】
また、前記液体収容容器の上部には、前記大気連通路を挟んで、前記液体収容部内の液体を検知する少なくとも2本の電極ピン部材が設けられている構成とできる。
【0013】
また、前記容器本体の側面方向から見て、前記液体収容部は円形状に形成され、前記液体導入経路は円弧状に形成されている構成とできる。
【0014】
本発明に係る画像形成装置は、
前記液体を収容する交換可能なメインタンクと、
前記メインタンクから前記液体が供給される請求項1ないし5のいずれかに記載の液体収容容器からなるヘッドタンクと、を備えている
構成とした。
【0015】
ここで、前記メインタンクと前記ヘッドタンクとの間に可逆型ポンプが配置され、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクに液体を供給するときには、前記ヘッドタンクから前記メインタンクに所定量の液体を逆送し、
前記ヘッドタンクから前記メインタンクに液体を供給するときには、前記メインタンクから前記ヘッドタンクに所定量の液体を送液する
構成とできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る液体収容容器によれば、外部から供給経路部材を介して供給された液体を収容する液体収容部を形成する容器本体を有し、容器本体は、上部に供給経路部材が接続される液体供給口部を有し、液体供給口部から液体収容部に至る液体導入経路が設けられ、液体導入経路は、液体収容部の周囲の一部に沿って配置され、液体収容部の底部側で液体収容部に開口している構成としたので、供給経路部材の液体収容容器に対する組み付け性が向上する。
【0017】
本発明に係る画像形成装置によれば、本発明に係る液体収容容器を備えているので、供給経路部材の液体収容容器に対する組み付け性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る画像形成装置の機構部の側面説明図である。
【図2】同機構部の要部平面説明図である。
【図3】同装置のインク供給排出系の模式的説明図である。
【図4】本発明に係るヘッドタンクの外観斜視説明図である。
【図5】同ヘッドタンクの分解斜視説明図である。
【図6】同ヘッドの検知フィラを取り外した状態の側面説明図である。
【図7】従前のヘッドタンクに対するインク充填動作の説明に供する模式的説明図である。
【図8】同ヘッドタンクにおけるインク供給時の空気の巻き込み現象の説明に供する模式的説明図である。
【図9】同ヘッドタンクにおけるインク供給時の泡立ち現象の説明に供する模式的説明図である。
【図10】同ヘッドタンクにおけるインク供給時の濃度変化現象の説明に供する模式的説明図である。
【図11】同ヘッドタンクにおけるインク液面傾きの説明に供する模式的説明図である。
【図12】同ヘッドタンクにおける各現象解決手段の説明に供する模式的説明図である。
【図13】同ヘッドタンクにおける各現象解決手段の説明に供する模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の機構部の側面説明図、図2は同装置の要部平面説明図である。
この画像形成装置はシリアル型インクジェット記録装置であり、装置本体1の左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド31、32でキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、後述する主走査モータによってタイミングベルトを介してキャリッジ主走査方向に移動走査する。
【0020】
このキャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0021】
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
【0022】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのヘッドタンク35a、35b(区別しないときは「ヘッドタンク35」という。)を搭載している。このヘッドタンク35には、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される各色のメインタンクであるインクカートリッジ10y、10m、10c、10kから、供給ポンプユニット24によって各色の供給経路部材である供給チューブ36を介して、各色のインクが補充供給される。
【0023】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0024】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0025】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、後述する副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0026】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0027】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0028】
さらに、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのワイパ部材(ワイパブレード)83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、キャリッジ33をロックするキャリッジロック87などとを備えている。また、このヘッドの維持回復機構81の下方側には維持回復動作によって生じる廃液を収容するための廃液タンク100が装置本体に対して交換可能に装着される。
【0029】
また、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
【0030】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0031】
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0032】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0033】
そして、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動して、キャップ部材82によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0034】
次に、この画像形成装置におけるインク供給系について図3を参照して説明する。
まず、インクカートリッジ(メインタンク)10からヘッドタンク35に対するインク供給は、供給ユニット24の送液手段である送液ポンプ241によって供給チューブ36を介して行なわれる。
【0035】
なお、供給ポンプ241は、チューブポンプなどで構成した可逆型ポンプであり、インクカートリッジ10からヘッドタンク35にインクを供給する動作(送液動作)と、ヘッドタンク35からインクカートリッジ10にインクを戻す動作(逆送動作)とを行なえるようにしている。
【0036】
ここで、チュービングポンプからなる可逆型ポンプ241を使用した場合、チュービングポンプはチューブを潰すことによるシール機能を持っており、稼動しない時はインクの移送は行わない。そのため、インクを移送する際に、潰していた部分を均すために、インクカートリッジ10からヘッドタンク35に供給(送液)するときには一定量のインクをヘッドタンク35からインクカートリッジ10に戻す予備吸引を、ヘッドタンク35からインクカートリッジ10に戻す(逆送)するときには、一定量のインクをインクカートリッジ10からヘッドタンク35に供給する予備供給を行う必要がある。
【0037】
また、維持回復機構81は、前述したように記録ヘッド34のノズル面をキャッピングする吸引キャップ82aと、吸引キャップ82aに接続された吸引ポンプ812を有し、キャップ82aでキャッピングした状態で吸引ポンプ812を駆動することで吸引チューブ811を介してノズルからインクを吸引することによってヘッドタンク35内のインクを吸引することができる。なお、吸引された廃インクは廃液タンク100に排出される。
【0038】
また、装置本体側にはヘッドタンク35の後述する大気解放機構221を開閉する押圧部材である大気開放ソレノイド302が配設され、この大気開放ソレノイド302を作動させることで大気開放機構221を開放することができる。さらに、装置本体側にはヘッドタンク35の変位部材205を検知する光学センサからなるセンサ301が設けられている。
【0039】
次に、本発明に係る液体収容容器であるヘッドタンク35の一例について図4ないし図6を参照して説明する。なお、図4は同ヘッドタンクの外観斜視説明図、図5は同じく分解斜視説明図、図6は同じく検知フィラ及びフィルム状部材を取り外した状態の側面説明図である。
【0040】
ヘッドタンク35は、インクを収容保持するための一側部が開口した液体収容部であるインク収容部200を形成する容器本体であるタンクケース201を有している。
【0041】
このタンクケース201のインク収容部200の開口部を可撓性フィルム状部材203で密閉し(可撓性フィルム状部材203でインク収容部200の一部の壁面を形成し)ている。そして、可撓性フィルム状部材203と対向するインク収容部200の壁面と可撓性フィルム状部材203との間に弾性部材としてのバネ204が配設されている。そして、タンクケース201にはフィルム状部材203の変位に応じて変位する変位部材(検知フィラ)205を揺動可能に装着している。
【0042】
また、タンクケース201の上部には、インク収容部200内にインクを供給するためのインク供給口部207が設けられて、供給経路部材である供給チューブ36が連結部材208で連結される。そして、インク供給口部207からインク収容部200内にインクを導入する液体導入経路であるインク導入経路210が設けられている。このインク導入経路210は、インク収容部200の周囲の一部に沿って配置され、インク収容部200の底部側でインク収容部200に開口する開口部210aを有している。
【0043】
ここでは、タンクケース201を側面から見て、インク収容部200は円形状に形成され、インク導入経路210はインク収容部200の外周側に沿って円弧状に形成されている。また、インク導入経路210は、タンクケース201に形成した溝211をフィルム状部材203で覆うことによって形成している。このとき、フィルム状部材203は溝211を覆う蓋部材を兼ねている。
【0044】
また、インク収容部200から記録ヘッド34へインクを供給する供給流路213が設けられている。
【0045】
また、タンクケース201の上部にはインク収容部200を大気に開放するための大気開放通路220が設けられ、この大気開放通路220を開閉する大気開放機構221を備えている。
【0046】
大気開放機構221は、タンクケース201の上部側方に大気開放通路220に通じる中空のホルダ取付け部222を設け、ホルダ取付け部222にシール部材223を介してホルダ部材224を装着している。そして、ホルダ部材224内には、バルブ部材225、バルブ部材225を閉じる方向に付勢するスプリング226を収納している。また、ホルダ部材224の先端部側にはバルブ部材225へのゴミの侵入を防止するゴムキャップ227が被されている。
【0047】
この大気開放機構221においては、装置本体側に進退可能に配設された押圧部材(大気開放ソレノイド)302によってゴムキャップ227を介してバルブ部材225を内方に押圧することで、大気開放通路220を開いた状態になり、押圧が解除されることで大気開放通路220を閉じた状態になる。
【0048】
また、タンクケース201の上部には、インク収容部200内のインクを検知する2本の電極ピン231a、231bが取り付けられている。インクは電導性を持っており、電極ピン231aと231bの所までインクが到達すると、電極ピン231aと231b間に電流が流れて両者の抵抗値が変化するため、インク液面高さが所定高さ以下になった、言い換えれば、インク収容部200内の空気量が所定量以上になった、或いは、インク収容部200の液体残量が所定量以下になったことを検出することができる。
【0049】
ここでは、大気開放通路220のインク収容部200への開口部220aは、円形状のインク収容部200の中心を通る垂直線上に配置され、2つの電極ピン231a、231bは大気開放通路220の開口部220aを挟んで取り付けられている。
【0050】
次に、本実施形態に係るヘッドタンク35の作用効果との比較に供するため、比較例である従来のヘッドタンクについて図7ないし図11を参照して説明する。なお、本実施形態と対応する部分には同じ符号を付して説明する。
【0051】
まず、比較例のヘッドタンクは、図7に示すように、タンクケース201に矩形状のインク収容部200を有し、タンクケース201の上部に設けたインク供給口部207はインク収容部200内の中間部まで下方に延ばして設けられている。また、タンクケース201の上部には大気開放通路220が設けられ、この大気開放通路220から離間して電極ピン231a、231bが設けられている。
【0052】
このヘッドタンクに対するインク供給動作について説明する。インク供給動作には、大気解放機構221を開いてインク供給を行う大気開放充填と、大気開放機構221を開かないでインク供給を行う通常充填とがある。
【0053】
大気開放充填では、図7(a)の状態から同図(b)に示すように大気解放機構221を開き、インクカートリッジ10からヘッドタンク35へのインク供給(充填)をおこなう。このとき、インク供給口部207からインク収容部200内に実線矢示に示すようにインク500が供給され、インク収容部200内の空気が破線矢印で示すように大気開放通路220から排出される。
【0054】
そして、同図(c)に示すように電極ピン231によってインク液面501が検知されたときにインク供給を停止し、大気開放機構221を閉じた後、同図(d)に示すように、ヘッドタンク内のインクを吸引所要の負圧を形成する。
【0055】
そこで、この比較例のヘッドタンクにおけるインク供給時の空気の巻き込み現象について図8を参照して説明する。
図8(a)に示すように、装置を長期間使用しない状態が続くと、インクカートリッジ10の交換などによって供給チューブ36やインク供給口部207(両者を併せて「供給経路」という。)内に溜まった空気がヘッドタンク35に送り込まれ、ヘッドタンク35内のインク液面501が例えば仮想線図示の位置から次第に低下し、電極ピン231よりも下にインク液面501が低下する。
【0056】
ここで、同図(b)に示すように、大気解放機構221を開き、インクカートリッジ10からヘッドタンク35にインクを供給しようとすると、大気解放機構221を開くことで更にインク液面501が低下し、前述した予備吸引(ヘッドタンクからインクカートリッジへの逆送)を行うために、同図(c)に示すように、ヘッドタンク内の空気(気泡)502を供給経路内に巻き込んでしまう。
【0057】
この状態で、インクカートリッジ10からヘッドタンクへのインク送液を行うと、ヘッドタンク内に気泡502が多く送り込まれることになる。
【0058】
さらに、同図(d)に示すように、インク供給によるインク液面501の上昇に伴って気泡502が大気開放通路220内に侵入し、大気開放機構221を封止してしまう現象が生じることがある。
【0059】
また、同図(e)に示すように、ヘッドタンク内に気泡502が残り、電極ピン231による液面検知不良が発生し、あるいは、気泡502がはじけたときにインク液面501が低下して、再度大気解放機構221を開いてインク供給を行うことになる。
【0060】
次に、インク供給時のインクの泡立ち現象について図9を参照して説明する。
図9(a)に示すように、インク供給口部207の開口端からインク収容部200の底部までの距離が長いと、インクの初期充填やヘッドタンク内のインクが空になった状態でのインク充填を行うとき、インク供給口部207から落下したインクがインク収容部200の底面に衝突して泡立ちによる気泡502が発生することがある。この場合にも、前述した図8(e)、(f)で説明したと同様な不都合が生じる。
【0061】
次に、インク供給時のインクの濃度変化という現象について図10を参照して説明する。
図10(a)に示すように、長期間ヘッドタンク内のインク500が使用されない場合、インク500内の顔料成分が沈殿し、インク濃度にムラが発生し、下側のインク500aが濃く、中間のインク500b、上側のインク500cほど薄くなる。インク500は、インク収容部200の底部の濃いインク500aから順に使用されるため、状況によっては印刷中に濃度ムラが発生する。
【0062】
この現象は、インク供給口部207の長さ(インク収容部200に進入している部分の長さ)によって異なる。例えば、同図(b)に示すように、同図(a)の例よりも短い場合、上側に新しいインクが供給されるが、すぐに濃度が分散されるわけではないため、しばらくの間は濃度ムラが生じたままとなる。
【0063】
一方、例えば、同図(c)に示すように、同図(a)の例よりも長い場合、下側に新しいインクが供給されるため、濃度ムラが生じたままとなる。
【0064】
次に、ヘッドタンクの傾きによるインク液面の傾きによる誤検知について図11を参照して説明する。
装置本体が傾けられると、ヘッドタンクのインク液面501も傾くためにインク無しと誤検知されることがある。例えば、図11(a)に示す状態から同図(b)に示すようにヘッドタンク35が傾いてインク液面501が傾くと、電極ピン231がインク液面501に接触しなくなり、インク無しと検知される。
【0065】
この場合、同図(c)に示すように、電極ピン231を長くすることで、あるいは、同図(d)に示すように、電極ピン231cを追加することなどで対応できるものの、コストが高くなる。
【0066】
以上の比較例のヘッドタンクにおける各種現象の解決策として、例えば図12に示すように、インク供給口部207をインク収容部200の底部近傍まで延ばすことが考えられる。しかしながら、このような構成にすると、樹脂成型で作製する場合に金型の破損につながるおそれがあり、また、インク濃度ムラの発生に対しては対応できない。
【0067】
そのため、従来知られているように、図13に示すように、インク収容部200の底部にインク供給口部207を設けることも考えられるが、この構成では、供給チューブの36の這い回しが難しく、特に、ヘッドを取り付けたヘッドタンクに適用することは困難である。
【0068】
これに対し本実施形態においては、図6に示すように、インク供給口部207からインク収容部200の底部までタンクケース201に形成したインクを導入するインク導入経路210を設けたので、供給チューブ36の這い回しを複雑にすることなく、前述した空気の巻き込みの課題、泡立ちの課題を解決することができる。
【0069】
また、インク導入経路210をタンクケース201に形成した溝211とこれを覆うフィルム状部材203で形成することで、金型の破損などの問題も生じない。
【0070】
また、インク収容部200の底部にインク導入路210を通じて導入されるインクは底部から上方向に向かって供給されるので、インクの濃度ムラの課題も解決される。
【0071】
さらに、インク収容部200を円形状とし、中心部を通る垂直線上に大気開放通路220の開口部220aを設け、この開口部220aを挟んで電極ピン231a、231bを配置することで、電極ピン231a、231bによって検知可能なヘッドタンク35のインク液面の傾き角度を大きくすることができる。電極ピン231の長さにもよるが、同じであるとした場合、前記従来のインクタンクの構成では30°の傾きまでしか検知できなかったものが、約60°傾いても検知できることが確認された。
【0072】
このように、外部から供給経路部材を介して供給された液体を収容する液体収容部を形成する容器本体を有し、容器本体は、上部に供給経路部材が接続される液体供給口部を有し、液体供給口部から液体収容部に至る液体導入経路が設けられ、液体導入経路は、液体収容部の周囲の一部に沿って配置され、液体収容部の底部側で液体収容部に開口している構成としたので、供給経路部材の液体収容容器に対する組み付け性が向上する。
【0073】
そして、画像形成装置にこの液体収容容器を備えることで、供給経路部材の液体収容容器に対する組み付け性が向上する。
【0074】
また、画像形成装置としては、前述したように、可逆型ポンプを使用して予備吸引と予備供給を行うようにすることで、泡の発生を低減することができる。
【0075】
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0076】
「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0077】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0078】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0079】
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。
【符号の説明】
【0080】
10 インクカートリッジ(メインタンク)
33 キャリッジ
34、34a、34b 記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
35 ヘッドタンク(液体収容容器)
81 維持回復機構
200 インク収容部
201 タンクケース
203 可撓性フィルム状部材
204 ばね(弾性部材)
207 インク供給口部(液体供給口部)
210 インク導入経路(液体導入経路)
220 大気開放通路
221 大気開放機構
231a、231b 電極ピン
241 送液ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する記録ヘッドに液体を供給する液体収容容器であって、
外部から供給経路部材を介して供給された前記液体を収容する液体収容部を形成する容器本体を有し、
前記容器本体は、上部に前記供給経路部材が接続される液体供給口部を有し、
前記液体供給口部から前記液体収容部に至る液体導入経路が設けられ、
前記液体導入経路は、前記液体収容部の周囲の一部に沿って配置され、前記液体収容部の底部側で前記液体収容部に開口している
ことを特徴とする液体収容容器。
【請求項2】
前記液体導入経路は、前記容器本体に形成された溝を蓋部材で覆って形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体収容容器。
【請求項3】
前記容器本体の上部には、前記液体収容部内を大気に開放する開閉可能な大気連通路が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体収容容器。
【請求項4】
前記液体収容容器の上部には、前記大気連通路を挟んで、前記液体収容部内の液体を検知する少なくとも2本の電極ピン部材が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の液体収容容器。
【請求項5】
前記容器本体の側面方向から見て、前記液体収容部は円形状に形成され、前記液体導入経路は円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の液体収容容器。
【請求項6】
前記液体を収容する交換可能なメインタンクと、
前記メインタンクから前記液体が供給される請求項1ないし5のいずれかに記載の液体収容容器からなるヘッドタンクと、を備えている
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記メインタンクと前記ヘッドタンクとの間に可逆型ポンプが配置され、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクに液体を供給するときには、前記ヘッドタンクから前記メインタンクに所定量の液体を逆送し、
前記ヘッドタンクから前記メインタンクに液体を供給するときには、前記メインタンクから前記ヘッドタンクに所定量の液体を送液する
ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−245672(P2012−245672A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118168(P2011−118168)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】