説明

液体収容容器

【課題】隅部や、構造の複雑な部位に液体が残り難く、かつ液体収容部内の空気が下流に入り込み難い液体収容容器を提供する。
【解決手段】インクカートリッジは、インクジェット式プリンタのカートリッジ装着部に着脱可能な容器本体3内に、インクを貯留するインク収容部と、プリンタ側に接続されるインク供給部と、インク収容部に貯留したインクをインク供給部に誘導するインク誘導路と、インク収容部内のインクの消費に伴って外部から大気をインク収容部内に導入する大気連通孔と、を備える。インク収容部の下部貯留部5bには、底面35と、該底面35に交わる側壁面37と、該側壁面37に近接した底面35に穿設されて液体収容部をインク誘導路に連通させるインク収容部出口27とが、設けられ、インク収容部に収容されるインク41によって底面35と側壁面37との隅部39に形成されるメニスカス43の一部が、インク収容部出口27を液封する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェットプリンタに着脱可能なインクカートリッジとして好適な大気開放タイプの液体収容容器に関し、特に、良好なインク掃けが得られると共に、気泡流出が抑止される改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、共通のインク室とノズル開口とに連通する圧力発生室に圧力を印加してノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式印字ヘッドと、印字ヘッドにインクを供給するインクカートリッジとをキャリッジに搭載し、キャリッジを往復動させながら印刷データに一致させてインク滴を記録用紙に吐出させるように構成されている。
【0003】
ところで、印字ヘッドのノズル開口は、インクカートリッジのインク液面よりも低い箇所に位置している。このことから、ノズル開口には水頭圧が作用するため、通常はインクカートリッジ内に多孔質体を収容し、多孔質体による表面張力によりインクカートリッジの圧力がノズル開口よりも若干低くなるように構成して、ノズル開口からのインクの滲み出しを防止する対策がとられている。
【0004】
ところが、インクの消費が進んで多孔質体に吸収されているインクの量が少なくなると、多孔質体の表面張力が大きくなって印字ヘッドへのインクの供給が滞りやすくなり、カートリッジ内のインクを完全に消費できないという問題があった。また、多孔質体の実質的な体積の分だけ、カートリッジに収容できるインクが少なくなるため、インクカートリッジが大型化するという問題もあった。
【0005】
このような不具合の解消を図ったものに、例えば特許文献1に開示されるインクジェットプリンタ用インクカートリッジがある。
このインクジェットプリンタ用インクカートリッジは、底面にインク供給口の設けられた容器を、中心部に通孔の設けられた弾性薄膜からなる膜弁座により上部にインク室、また下部にインク供給室を形成するように分割するとともに、通孔に対向する位置に、インク室とインク供給室との圧力差により膜弁座が当接する弁体を設けている。
【0006】
これにより、膜弁座が広い面積で差圧を受けて僅かなインクの消費に対応してインク室からインク供給室への流路を開き、印字ヘッドに過度な負圧を作用させることなくインクを印字ヘッドに排出し、また、インク供給室の圧力上昇分を膜弁座の変形によりインク室に吸収する構成としている。したがって、多孔質体を使用することなく、インク室のインクを安定かつ確実に印字ヘッドに供給可能としている。
【0007】
【特許文献1】特開平8−174860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した従来のインクジェットプリンタ用インクカートリッジは、膜弁座を設け、液体収容部内を多くの隔壁で仕切って流路を構成することにより、液体収容部に多孔質体を入れることなく負圧を発生させ、インク収容量を多くしているため、液体収容部の隅部や、構造の複雑な部位にインクが残り易く、残インクが生じ易いという問題があった。また、多孔質体を廃止したため、使用中のインクカートリッジがキャリッジから外されて振られた場合や、誤ってインクカートリッジを落下させた場合には、液体収容部内の空気が下流に入り込み易く、印字ヘッドに気泡を流してしまう耐気泡流出性が低いという問題があった。
【0009】
従って、本発明の目的は上記課題を解消することに係り、隅部や、構造の複雑な部位に液体が残り難く、かつ液体収容部内の空気が下流に入り込み難い液体収容容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、液体消費装置に装着される容器本体内に、液体収容部と、前記液体消費装置に接続される液体供給部と、前記液体収容部に貯留した液体を前記液体供給部に誘導する液体誘導路と、前記液体収容部内の液体の消費に伴って外部から大気を前記液体収容部内に導入する大気連通孔と、を備える大気開放タイプの液体収容容器であって、
前記液体収容部には、第1の内壁面と、該第1の内壁面に交わる第2の内壁面と、該第2の内壁面に近接した前記第1の内壁面に穿設されて前記液体収容部を前記液体誘導路に連通させる液体収容部出口と、を設けることを特徴とする液体収容容器により達成される。
【0011】
上記構成の液体収容容器によれば、液体収容部内で液量が少なくなると、第1の内壁面と第2の内壁面とに挟まれて形成される隅部に、毛管現象による表面張力によって残液が集まり易くなり、この隅部における第1の内壁面に液体収容部出口が配設されている。
そこで、残液が液体収容部出口を介して液体誘導路へ排出され易くなる。また、液体収容部の液体が徐々に減少した場合、残液が液体収容部出口に集まり易く、残留液が液体収容部に存在する状態で、先に空気が液体収容部出口から排出され難くなる。
【0012】
さらに、液体収容部の内部空間が上下に延在する扁平空間である場合(すなわち、高さ方向に広く、幅方向に狭い場合)、液体収容部の底面を第2の内壁面とすれば、当該扁平空間を挟む両側壁の一方が第1の内壁面となって液体収容部出口が設けられるので、手による容器本体の攪拌時に、攪拌による衝撃の加わりにくい幅方向の側壁に液体収容部出口が開口し、気泡を一層流出し難くできる。
【0013】
尚、上記構成の液体収容容器において、前記液体収容部出口が、前記液体収容部に収容される液体によって前記第1の内壁面と前記第2の内壁面との隅部に形成されるメニスカスより内側の領域に設けられることが望ましい。
このような構成によれば、液体収容部出口が、液体収容部に収容される液体の物性(特に粘度等)により異なった形状・大きさで隅部に形成されるメニスカスの内側に配置される。そこで、表面張力により隅部に集められる液体が確実に抜き取り可能となり、収容液体に応じた最適な排出効果が得られる。
【0014】
また、本発明の上記目的は、液体消費装置に着脱可能な容器本体内に、液体収容部と、前記液体消費装置に接続される液体供給部と、前記液体収容部に貯留した液体を前記液体供給部に誘導する液体誘導路と、前記液体収容部内の液体の消費に伴って外部から大気を前記液体収容部内に導入する大気連通孔と、を備える大気開放タイプの液体収容容器であって、
前記液体収容部には、第1の内壁面と、該第1の内壁面に交わる第2の内壁面と、該第2の内壁面に近接した前記第1の内壁面に穿設されて前記液体収容部を前記液体誘導路に連通させる液体収容部出口とが、設けられ、
前記液体収容部に収容される液体によって前記第1の内壁面と前記第2の内壁面との隅部に形成可能なメニスカスの一部が、前記液体収容部出口を液封することを特徴とする液体収容容器により達成される。
【0015】
上記構成の液体収容容器によれば、液体収容部内で液量が少なくなると、第1の内壁面と第2の内壁面とに挟まれて形成される隅部に、毛管現象による表面張力によって残液が集まってメニスカスが形成され、この隅部における第1の内壁面に液体収容部出口が配設されている。
そこで、残液が液体収容部出口を介して液体誘導路へ排出され易くなる。また、液体収容部の液体が徐々に減少した場合、残液によるメニスカスの一部が液体収容部出口を液封するように集まり易く、残留液が液体収容部に存在する状態で、先に空気が液体収容部出口から排出され難くなる。
【0016】
さらに、液体収容部の内部空間が上下に延在する扁平空間である場合(すなわち、高さ方向に広く、幅方向に狭い場合)、液体収容部の底面を第2の内壁面とすれば、当該扁平空間を挟む両側壁の一方が第1の内壁面となって液体収容部出口が設けられるので、手による容器本体の攪拌時に、攪拌による衝撃の加わりにくい幅方向の側壁に液体収容部出口が開口し、気泡を一層流出し難くできる。
【0017】
また、液体収容部出口が、液体収容部に収容される液体の物性(特に粘度等)により異なった形状・大きさで隅部に形成されるメニスカスの一部で液封される。そこで、表面張力により隅部に集められる液体が確実に抜き取り可能となり、収容液体に応じた最適な排出効果が得られる。
【0018】
また、本発明の上記目的は、液体消費装置に装着される容器本体内に、液体収容部と、前記液体消費装置に接続される液体供給部と、前記液体収容部に貯留した液体を前記液体供給部に誘導する液体誘導路と、前記液体収容部内の液体の消費に伴って外部から大気を前記液体収容部内に導入する大気連通孔と、を備える大気開放タイプの液体収容容器であって、
前記液体収容部には、第1の内壁面と、該第1の内壁面に交わって互いに対向する一対の内壁面と、前記一対の内壁面の間における前記第1の内壁面に穿設されて前記液体収容部を前記液体誘導路に連通させる液体収容部出口と、を設けることを特徴とする液体収容容器により達成される。
【0019】
上記構成の液体収容容器によれば、液体収容部内で液量が少なくなると、近接して対向する一対の内壁面の間には毛管現象による表面張力よって残液が集まり易くなり、この一対の内壁面の間における第1の内壁面に液体収容部出口が配設されている。
そこで、残液が液体収容部出口を介して液体誘導路へ排出され易くなる。また、液体収容部の液体が徐々に減少した場合、残液が液体収容部出口に集まり易く、残留液が液体収容部に存在する状態で、先に空気が液体収容部出口から排出され難くなる。
【0020】
尚、上記構成の液体収容容器において、前記液体収容部出口の流入液上流側には、液流入間隙を隔てて対向壁が設けられることが望ましい。
このような構成によれば、使用中の容器本体が液体消費装置から脱着され、手によって振られ、液体収容部内の気液が攪拌された場合であっても、攪拌により流動する気液の殆どが対向壁に衝突し、衝突により液体収容部出口に直接的に加わる衝撃が低減され、液体収容部出口からの気泡流出を効果的に防止できる。
【0021】
また、発明の上記目的は、液体消費装置に着脱可能な容器本体内に、液体収容部と、前記液体消費装置に接続される液体供給部と、前記液体収容部に貯留した液体を前記液体供給部に誘導する液体誘導路と、前記液体収容部内の液体の消費に伴って外部から大気を前記液体収容部内に導入する大気連通孔と、を備える大気開放タイプの液体収容容器であって、
前記液体収容部には、第1の内壁面と、該第1の内壁面に交わって互いに対向する一対の内壁面と、前記一対の内壁面の間における前記第1の内壁面に穿設されて前記液体収容部を前記液体誘導路に連通させる液体収容部出口とが、設けられ、
前記液体収容部に収容される液体によって前記一対の内壁面の間に形成可能なメニスカスの一部が、前記液体収容部出口を液封することを特徴とする液体収容容器により達成される。
【0022】
上記構成の液体収容容器によれば、液体収容部内で液量が少なくなると、第1の内壁面と第2の内壁面とに挟まれて形成される隅部に、毛管現象による表面張力によって残液が集まってメニスカスが形成され、この隅部における第1の内壁面に液体収容部出口が配設されている。
そこで、残液が液体収容部出口を介して液体誘導路へ排出され易くなる。また、液体収容部の液体が徐々に減少した場合、残液によるメニスカスの一部が液体収容部出口を液封するように集まり易く、残留液が液体収容部に存在する状態で、先に空気が液体収容部出口から排出され難くなる。
【0023】
さらに、液体収容部の内部空間が上下に延在する扁平空間である場合(すなわち、高さ方向に広く、幅方向に狭い場合)、液体収容部の底面を第2の内壁面とすれば、当該扁平空間を挟む両側壁の一方が第1の内壁面となって液体収容部出口が設けられるので、手による容器本体の攪拌時に、攪拌による衝撃の加わりにくい幅方向の側壁に液体収容部出口が開口し、気泡を一層流出し難くできる。
【0024】
また、液体収容部出口が、液体収容部に収容される液体の物性(特に粘度等)により異なった形状・大きさで隅部に形成されるメニスカスの一部で液封される。そこで、表面張力により隅部に集められる液体が確実に抜き取り可能となり、収容液体に応じた最適な排出効果が得られる。
【0025】
また、本発明の上記目的は、液体消費装置に着脱可能な容器本体内に、液体収容部と、前記液体消費装置に接続される液体供給部と、前記液体収容部に貯留した液体を前記液体供給部に誘導する液体誘導路と、前記液体収容部内の液体の消費に伴って外部から大気を前記液体収容部内に導入する大気連通孔と、を備える大気開放タイプの液体収容容器であって、
前記液体収容部には、第1の内壁面と、該第1の内壁面に交わって互いに対向する一対の内壁面と、前記一対の内壁面の間における前記第1の内壁面に穿設されて前記液体収容部を前記液体誘導路に連通させる液体収容部出口とが、設けられ、
前記液体収容部に収容される液体によって前記一対の内壁面の間に形成可能なメニスカスの一部が、前記液体収容部出口を液封することを特徴とする液体収容容器により達成される。
【0026】
上記構成の液体収容容器によれば、液体収容部内で液量が少なくなると、近接して対向する一対の内壁面の間には毛管現象による表面張力よって残液が集まってメニスカスが形成され、この一対の内壁面の間における第1の内壁面に液体収容部出口が配設されている。
そこで、残液が液体収容部出口を介して液体誘導路へ排出され易くなる。また、液体収容部の液体が徐々に減少した場合、残液によるメニスカスの一部が液体収容部出口を液封するように集まり易く、残留液が液体収容部に存在する状態で、先に空気が液体収容部出口から排出され難くなる。
【0027】
尚、上記構成の液体収容容器において、前記液体収容部出口の流入液上流側には、液流入間隙を隔てて対向壁が設けられることが望ましい。
このような構成によれば、使用中の容器本体が液体消費装置から脱着され、手によって振られ、液体収容部内の気液が攪拌された場合であっても、攪拌により流動する気液の殆どが対向壁に衝突し、衝突により液体収容部出口に直接的に加わる衝撃が低減され、液体収容部出口からの気泡流出を効果的に防止できる。
【0028】
また、上記構成の液体収容容器において、前記第1の内壁面が、前記液体消費装置に前記容器本体を装着した姿勢における前記液体収容部の底面であることが望ましい。
このような構成によれば、第1の内壁面が液体収容部の底面となることで、残液の最も残り易い面が第1の内壁面となる。これにより、最後の残液まで液体収容部出口へ誘導でき、残液の抜き取り性を向上させることができる。また、液体の掃け性も向上する。
【0029】
また、上記構成の液体収容容器において、前記液体収容部出口が、前記液体収容部に貯留される液体によってメニスカスが形成される程度に小さい丸穴であることが望ましい。
このような構成によれば、液体収容部出口に表面張力によって強いメニスカスが形成され、液体収容部内の残液が少なくなり、かつ手によって振られ、液体収容部内の気液が攪拌された場合であっても、液体収容部出口に形成されたメニスカスが障壁となり、液体収容部出口からの気泡流出を防止できる。
【0030】
また、上記構成の液体収容容器において、前記液体誘導路には、当該液体誘導路への気体の流入を検知することで前記液体収容部の液体が消尽されたことを検出する液体検出部が設けられることが望ましい。
このような構成によれば、液体誘導路に液体検出部が設けられる場合であっても、液体掃けの悪さや使用中の気泡による誤検出を防止でき、液体検出部の検出精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る液体収容容器によれば、液体収容部内で液量が少なくなると、第1の内壁面と第2の内壁面とに挟まれて形成される隅部、或いは、互いに対向する一対の内壁面に、毛管現象による表面張力によって残液が集まってメニスカスが形成され、この隅部における第1の内壁面に液体収容部出口が配設されている。
【0032】
そこで、残液が液体収容部出口を介して液体誘導路へ排出され易くなる。また、液体収容部の液体が徐々に減少した場合、残液によるメニスカスの一部が液体収容部出口を液封するように集まり易いので、残液が液体収容部に存在する状態で先に空気が液体収容部出口から排出され難くなる。
したがって、液体収容容器内に液体が残り難くなり、かつ液体収容部内の空気が下流に入り込み難くなる。この結果、液体収容容器の液体掃け性及び耐気泡流出性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、添付図面に基づいて本発明の一実施形態に係る液体収容容器を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る液体収容容器の外観斜視図、図2は図1に示した液体収容容器の分解斜視図、図3は図2に示した液体収容容器の要部拡大斜視図、図4は図3に示した液体収容容器の拡大断面図、図5は図4のV−V線における断面図、図6は図4における液体収容部出口近傍の拡大断面図である。
【0034】
図1に示すように、本実施形態に係るインクカートリッジ1は、不図示のインクジェット式プリンタにおいて、液体噴射部である印字ヘッドが搭載されたキャリッジ上のカートリッジ装着部に着脱可能な液体収容容器である。
このインクカートリッジ1は、図2に示すように、インクジェット式プリンタ(液体消費装置)のカートリッジ装着部に着脱可能な容器本体3内に、インク(液体)を貯留する上部貯留部5aと下部貯留部5bからなるインク収容部(液体収容部)5と、プリンタ側の印字ヘッドに接続されるインク供給部(液体供給部)7と、インク収容部5に貯留したインクをインク供給部7に誘導するインク誘導路(液体誘導路)9と、インク収容部5内のインクの消費に伴って外部から大気をインク収容部5内に導入する大気連通孔4と、を備える大気開放タイプのインクカートリッジである。
【0035】
本実施形態の場合、インク誘導路9のインク供給部7に近接した位置には、当該インク誘導路9への気体の流入を検知することでインク収容部5のインクが消尽されたことを検出するインク終端センサ(液体検出部)11が設けられている。このインク終端センサ11は、圧電振動体からなるセンサをインク誘導路9に形成したセンサ室内に臨ませて配置したものであり、インクの消費に伴って大気連通孔4からインク収容部5に導入された外気がセンサの検出位置に到達すると、インク誘導路9に形成したセンサ室がインクで満たされている場合とセンサの周囲に空気が接触している場合における振動特性の変化から、インク残量がゼロになったことを検出する。
【0036】
容器本体3には、中間壁13を挟んで表裏に隔壁15a,15b,15c,15d・・・等が形成され、隔壁15a,15b,15c,15d・・・等はインク収容部5や、インク流路であるインク誘導路9を形成する。これらインク収容部5やインク誘導路9は、中間壁13に穿設された不図示の貫通孔によって容器本体3の表裏に亘って連通形成される。
【0037】
容器本体3の表裏には、隔壁15a,15b,15c,15d・・・等に密接してフィルム17a,17bが貼着され、フィルム17a,17bは容器本体3の表裏開放を塞いでインク収容部5やインク誘導路9を形成する。また、フィルム17aに封止された容器本体3の表面には、さらに蓋部材19が係着される。なお、図中、容器本体3の外面には、キャリッジ上のカートリッジ装着部にインクカートリッジ1を着脱するためのレバー21が設けられている。
【0038】
図3及び図4に示すように、下部貯留部5bには前室形成壁23が形成され、前室形成壁23はインク誘導路9のインク入り口部25に連通するインク収容部出口(液体収容部出口)27を覆っている。前室形成壁23には切欠開口29が形成され、下部貯留部5bのインクは、切欠開口29を通過して前室31内へ流入する。前室31に流入したインクは、インク収容部出口27から迷路流路26を通ってインク入り口部25へ抜け、インク誘導路9を流れて液体流入開口33へ入り、インク終端センサ11を通過する。
【0039】
即ち、下部貯留部5bには、インク収容部5の一部分を構成する前室31が設けられている。前室31内には、図5に示すように、第1の内壁面である底面35と、この底面35に交わる第2の内壁面である側壁面37とによって隅部39が形成される。そして、インク収容部出口27は、この側壁面37に近接して底面35に穿設されている。
【0040】
尚、この側壁面37に近接して底面35に穿設されるインク収容部出口27の具体的な穿設位置としては、図5に示すように、インク収容部5の下部貯留部5bに収容されるインク41によって隅部39に形成されるメニスカス43より内側の領域が挙げられる。
即ち、下部貯留部5bでは、インク量が少なくなると、底面35と側壁面37とに挟まれて形成される隅部39に、毛管現象による表面張力により残ったインク41が集まってメニスカス43が形成される。
【0041】
そして、この隅部39に形成されるメニスカス43より内側の領域における底面35にインク収容部出口27が配設されることで、残ったインク41がインク収容部出口27を介してインク誘導路9へ排出され易くなる。また、下部貯留部5bのインク41が徐々に減少した場合、残ったインク41のメニスカス43の一部がインク収容部出口27を液封するように集まり易く、インク41が下部貯留部5bに存在する状態で、先に空気がインク収容部出口27から排出され難くなる。
【0042】
このように、インク収容部出口27が、インク収容部5に収容されるインク41の物性(特に粘度等)により異なった形状・大きさで形成されるメニスカス43の内側に配置されることで、毛管現象による表面張力によって隅部39に集まるインク41が確実に抜き取り可能となり、インク41に応じた最適な排出効果が得られる。
【0043】
また、本実施形態に係るインクカートリッジ1は、第1の内壁面がインクジェット式プリンタのカートリッジ装着部に容器本体3を装着した姿勢のインク収容部5の底面35であり、残インクの最も残り易い底面35にインク収容部出口27が穿設されている。
そこで、最後の残インクまでインク収容部出口27へ誘導でき、残インクの抜き取り性を向上させることができる。また、残インクの掃け性も向上する。
【0044】
ここで、インク収容部出口27は、インク収容部5に収容されるインク41によってメニスカスの形成される程度に小さい丸穴であることが好ましい。具体的には、一般的な物性値を有するインク41が用いられた場合、その直径が0.8mm程度となる。このような丸穴とすることで、インク収容部出口27に表面張力によって強いメニスカスが形成され、インク収容部5内の残液が少なくなり、かつ手によって振られ、インク収容部5内の気液が攪拌された場合であっても、インク収容部出口27に形成されたメニスカスが障壁となり、インク収容部出口27からの気泡の流出を防止できる。
【0045】
更に、上記実施形態に係るインクカートリッジ1の前室31内には、図4及び図6に示すように、第1の内壁面である底面35に交わって互いに対向する一対の側壁面(一対の内壁面)45,47が設けられている。そして、インク収容部出口27は、これら一対の側壁面45,47の間における底面35に穿設されている。
具体的には、一般的な物性値を有するインク41が用いられた場合、一対の側壁面45,47の間隔が2mm程度となる。このように、一対の側壁面45,47が互いに対向して近接配置されることで、一対の側壁面45,47の間にメニスカス43が生じ易くなり、インク収容部5内の残ったインク41のメニスカス43の一部が毛管現象によってインク収容部出口27を液封するよう誘導され易くなる。つまり、インク41の抜き取り効果を一層高めることができる。
【0046】
さらに、本実施形態に係るインクカートリッジ1は、図6に示すように、インク収容部出口27の流入液上流側に、液流入間隙Sを隔てて対向壁51が配設されている。
この対向壁51は、前室形成壁23の一部分とすることができる。つまり、前室形成壁23は、図3に示したように、切欠開口29がインク収容部出口27とずれて配設されている。
【0047】
このような構成とすることで、使用中の容器本体3がインクジェット式プリンタから脱着され、手によって振られ、インク収容部5内の気液が攪拌された場合であっても、攪拌により流動する気液の殆どが対向壁51に衝突し、衝突によりインク収容部出口27に直接的に加わる衝撃が低減され、気泡の流出を効果的に防止できるようになっている。
したがって、このインクカートリッジ1によれば、インク収容部5をインク誘導路9に連通させるインク収容部出口27が、インク収容部5の底面35に交わる側壁面37及び内壁面45,47に囲まれた底面35に穿設されているので、インク収容部5内でインク41が少なくなると、これら側壁面37及び内壁面45,47に囲まれたインク収容部出口27の近傍に、毛管現象による表面張力によってインク41が集まり易くなる。
【0048】
そこで、インク収容部5に残ったインク41は、インク収容部出口27を介してインク誘導路9へ排出され易くなる。また、インク収容部5のインクが徐々に減少した場合、残ったインク41によるメニスカス43の一部がインク収容部出口27を液封するように集まり易いので、インク41がインク収容部5に存在する状態で先に空気がインク収容部出口27から排出され難くなる。
したがって、インクカートリッジ1内にインク41が残り難くなり、かつインク収容部5内の空気が下流に入り込み難くなる。この結果、インクカートリッジ1のインク掃け性、耐気泡流出性を向上させることができる。
【0049】
更に、以上のような構成を有することで、インク誘導路9への空気の流入を検知することでインク収容部5のインクが消尽されたことを検出するインク終端センサ11が設けられたインクカートリッジ1の場合、インク掃けの悪さから、一旦インク終了が検知されたインク収容部5内に多量の残インクが生じるのを防止したり、使用中の気泡による誤検出を防止したりしてインク終端センサ11の検出精度を向上させることができる。
【0050】
なお、上記実施形態では、底面35と側壁面37とが垂直に交わる場合を例示したが、図7に示すように、底面35と側壁面37aとが鋭角に交わり、鋭角の隅部39Aを形成するように構成してもよい。
この場合、鋭角の隅部39Aを形成することにより、より強い表面張力によって、残ったインク41を底面35と側壁面37aとの隅部39Aに集めてメニスカス43を形成することが可能となる。
【0051】
また、上記実施形態のインクカートリッジ1では、底面35を第1の内壁面としてインク収容部出口27を穿設したが、例えば図8に示すように、側壁面49を第1の内壁面としてインク収容部出口27を穿設し、側壁面49に交わる第2の内壁面を底面35とすることもできる。
【0052】
この場合、インク収容部出口27を底面35に設けた上記実施形態の構成と同様の良好なインク抜き効果、気泡流出抑止効果が得られる。これに加えて、インク収容部5の内部空間が上下に延在する扁平空間である場合(すなわち、図2に示したように、高さ方向に広く、幅方向に狭い場合)、第1の内壁面を底面35とすることで、当該扁平空間を形成する側壁面49にインク収容部出口27が設けられることとなる。
即ち、手による容器本体3の攪拌時に、攪拌による衝撃の加わりにくい幅方向の側壁面49にインク収容部出口27が開口し、気泡を一層流出し難くできる。
【0053】
なお、本発明に係る液体収容容器における容器本体、液体収容部、液体供給部、液体誘導路、大気連通孔、第1の内壁面、第2の内壁面及び液体収容部出口等の構成は、上記各実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の形態を採りうることは云うまでもない。
【0054】
また、本発明の液体収容容器の用途は、上述したインクジェットプリンタのインクカートリッジに限らない。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体消費装置に流用可能である。
液体消費装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレー等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッドを備えた装置、有機ELディスプレー、面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッドを備えた装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドを備えた装置、精密ピペットとしての試料噴射ヘッドを備えた装置、捺染装置やマイクロデスペンサ等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体収容容器の外観斜視図である。
【図2】図1に示した液体収容容器の分解斜視図である。
【図3】図2に示した液体収容容器の要部拡大斜視図である。
【図4】図3に示した液体収容容器の拡大断面図である。
【図5】図4のV−V線における断面図である。
【図6】図4における液体収容部出口近傍の拡大断面図である。
【図7】第2の内壁面が第1の内壁面と鋭角に交わる変形例の断面図である。
【図8】液体収容部出口が側壁に設けられた変形例の断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1…インクカートリッジ(液体収容容器)、3…容器本体、4…大気連通孔、5…インク収容部(液体収容部)、7…インク供給部(液体供給部)、9…インク誘導路(液体誘導路)、11…インク終端センサ(液体終端センサ)、27…インク収容部出口(液体収容部出口)、35…底面(第1の内壁面)、37…側壁面(第2の内壁面)、39…隅部、41…インク(液体)、43…メニスカス、45…側壁面(一対の内壁面)、47…側壁面(一対の内壁面)、S…液流入間隙、51…対向壁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体消費装置に装着される容器本体内に、液体収容部と、前記液体消費装置に接続される液体供給部と、前記液体収容部に貯留した液体を前記液体供給部に誘導する液体誘導路と、前記液体収容部内の液体の消費に伴って外部から大気を前記液体収容部内に導入する大気連通孔と、を備える大気開放タイプの液体収容容器であって、
前記液体収容部には、第1の内壁面と、該第1の内壁面に交わる第2の内壁面と、該第2の内壁面に近接した前記第1の内壁面に穿設されて前記液体収容部を前記液体誘導路に連通させる液体収容部出口と、を設けることを特徴とする液体収容容器。
【請求項2】
前記液体収容部出口が、前記液体収容部に収容される液体によって前記第1の内壁面と前記第2の内壁面との隅部に形成されるメニスカスより内側の領域に設けられることを特徴とする請求項1に記載の液体収容容器。
【請求項3】
液体消費装置に着脱可能な容器本体内に、液体収容部と、前記液体消費装置に接続される液体供給部と、前記液体収容部に貯留した液体を前記液体供給部に誘導する液体誘導路と、前記液体収容部内の液体の消費に伴って外部から大気を前記液体収容部内に導入する大気連通孔と、を備える大気開放タイプの液体収容容器であって、
前記液体収容部には、第1の内壁面と、該第1の内壁面に交わる第2の内壁面と、該第2の内壁面に近接した前記第1の内壁面に穿設されて前記液体収容部を前記液体誘導路に連通させる液体収容部出口とが、設けられ、
前記液体収容部に収容される液体によって前記第1の内壁面と前記第2の内壁面との隅部に形成可能なメニスカスの一部が、前記液体収容部出口を液封することを特徴とする液体収容容器。
【請求項4】
液体消費装置に装着される容器本体内に、液体収容部と、前記液体消費装置に接続される液体供給部と、前記液体収容部に貯留した液体を前記液体供給部に誘導する液体誘導路と、前記液体収容部内の液体の消費に伴って外部から大気を前記液体収容部内に導入する大気連通孔と、を備える大気開放タイプの液体収容容器であって、
前記液体収容部には、第1の内壁面と、該第1の内壁面に交わって互いに対向する一対の内壁面と、前記一対の内壁面の間における前記第1の内壁面に穿設されて前記液体収容部を前記液体誘導路に連通させる液体収容部出口と、を設けることを特徴とする液体収容容器。
【請求項5】
前記液体収容部出口が、前記液体収容部に収容される液体によって前記一対の内壁面の間に形成されるメニスカスの領域に設けられることを特徴とする請求項4に記載の液体収容容器。
【請求項6】
液体消費装置に着脱可能な容器本体内に、液体収容部と、前記液体消費装置に接続される液体供給部と、前記液体収容部に貯留した液体を前記液体供給部に誘導する液体誘導路と、前記液体収容部内の液体の消費に伴って外部から大気を前記液体収容部内に導入する大気連通孔と、を備える大気開放タイプの液体収容容器であって、
前記液体収容部には、第1の内壁面と、該第1の内壁面に交わって互いに対向する一対の内壁面と、前記一対の内壁面の間における前記第1の内壁面に穿設されて前記液体収容部を前記液体誘導路に連通させる液体収容部出口とが、設けられ、
前記液体収容部に収容される液体によって前記一対の内壁面の間に形成可能なメニスカスの一部が、前記液体収容部出口を液封することを特徴とする液体収容容器。
【請求項7】
前記液体収容部出口の流入液上流側には、液流入間隙を隔てて対向壁が設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の液体収容容器。
【請求項8】
前記第1の内壁面が、前記液体消費装置に前記容器本体を装着した姿勢における前記液体収容部の底面であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の液体収容容器。
【請求項9】
前記液体収容部出口が、前記液体収容部に貯留される液体によってメニスカスが形成される程度に小さい丸穴であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の液体収容容器。
【請求項10】
前記液体誘導路には、当該液体誘導路への気体の流入を検知することで前記液体収容部の液体が消尽されたことを検出する液体検出部が設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の液体収容容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−182055(P2007−182055A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−220761(P2006−220761)
【出願日】平成18年8月12日(2006.8.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】