説明

液体収容容器

【課題】容器本体に対する衝撃や慣性力、内外圧変化に対して強く、空気室に溜まった液体が大気流入側の連通口から流出する時間を遅延させることができる良好な液体収容容器を提供する。
【解決手段】インクカートリッジは、容器本体21内に設けられインクを収容するインク収容室23と、インク収容室23に連通するインク供給部25と、インク収容室23内のインクの消費に伴って外部に開口した大気開放孔から大気をインク室23に導入する大気開放流路102と、大気開放流路102の途中に設けられて該大気開放流路102に浸入したインクを貯留可能な空気室31aと、を備える。空気室31aの大気流入側における連通口79が、該空気室31aの内壁面から突出した突起95の先端面に開口されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体収容部と大気開放孔との間に空気室を介装した液体収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタのキャリッジに着脱可能に装着して用いられるインクカートリッジ(液体収容容器)としては、そのインク室(液体収容部)の内圧を適切な状態に保持するために、インク室を外部に連通して大気開放する為の大気開放流路を備えたものが知られている。そして、この種の大気開放流路では、大気開放孔からのインク漏れを防止する工夫が必要とされる。
【0003】
そこで、従来のインクカートリッジにおける大気開放流路の構成では、インク(液体)を収容するインク室と、蛇行状態に形成した連通路部分(ヘビ道)と、浸入したインクを貯留可能な空気室(インクトラップとも云う)と、インク室を外部に連通させて該インク室のインク消費に伴って外部の空気をインク室に導入するための大気開放孔とが順次配設されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
例えば図10に示すように、従来のインクカートリッジにおける大気開放流路の空気室1は、図示しないインク室に連通している大気開放溝2の大気開放孔側の端2aに連通している。空気室1は、ケース蓋(容器本体)3を表面3aから直交する方向に掘り下げた所定深さの円筒状の凹部5で形成されており、上端開口がケース蓋3の表面3aに露出している。この凹部5の円形下端面の中心には小径の連通口7が同軸状態に形成されており、この連通口7の下端が大気開放孔側のインクトラップ9に連通している。
ケース蓋3の表面3aにおける凹部5が形成されている部分には、封止ラベル(封止部材)11が貼り付けられている。これにより、凹部5は上端開口が封止され、空気室1として区画形成される。
【0005】
この空気室1は、環境温度の変化等でインク室の空気が熱膨張し、この空気の熱膨張によってインク室のインクが図示しない大気開放孔へ向かって逆流するとき、インクが外部に漏洩することを防止するために設けられている。
そこで、毛細管引力により大気開放溝2の隅部を伝わって空気室1に溜まったインクは、連通口7に浸入しメニスカスを形成することで、インクトラップ9への浸入が阻止される。
【0006】
【特許文献1】特開2005−22340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のように連通口7に形成されたメニスカスは、インクカートリッジの落下、着脱による衝撃や移動時の姿勢変化、キャリッジ動作による慣性力、インク室の空気膨張などによって簡単に壊れてしまう。
一方、メニスカス力を強力にするためには、連通口7の穴径を数10μm以下にする必要があり、現実的ではない。
【0008】
従って、本発明の目的は上記課題を解消することに係り、容器本体に対する衝撃や慣性力、内外圧変化に対して強く、空気室に溜まった液体が大気流入側の連通口から流出する時間を遅延させることができる良好な液体収容容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、容器本体内に設けられ液体を収容する液体収容部と、前記液体収容部に連通する液体供給部と、前記液体収容部内の液体の消費に伴って外部に開口した大気開放孔から大気を前記液体収容部に導入する大気開放流路と、前記大気開放流路の途中に設けられて該大気開放流路に浸入した液体を貯留可能な空気室と、を備えた液体収容容器であって、
前記空気室の大気流入側における連通口が、該空気室の内壁面から突出した突起の先端面に開口されていることを特徴とする液体収容容器により達成される。
【0010】
上記構成の液体収容容器によれば、液体収容部の液体が空気室の大気流出側の連通口を通過して空気室に溜まっても、大気流入側の連通口に液体が到達するまでの時間は突起の高さ分遅くなる。
すなわち、大気流入側の連通口が鉛直方向を向いている容器放置状態では、空気室に流入した液体が突起の高さまで溜まった後、突起先端面に開口する大気流入側の連通口から流出する。これにより、大気流入側の連通口から液体が流出するまでの時間が遅延される。
【0011】
また、容器本体の落下、着脱による衝撃や移動時の姿勢変化、キャリッジ動作による慣性力、液体収容部の空気膨張などによって簡単に壊れてしまう従来の連通口に形成されるメニスカスとは違い、空気室における大気流入側の連通口からの液体の漏れを安定的に阻止することができる。
【0012】
尚、上記構成の液体収容容器において、前記空気室より大気開放孔側における前記大気開放流路の途中に、気体の通過を許容し液体の通過を許容しない気液分離膜が設けられていることが望ましい。
このような構成の液体収容容器によれば、気液分離膜によって液体の外部への漏洩を確実に防止することができる。更に、空気室からの液体の漏れが安定的に阻止されているので、気液分離膜は液体に接触して通気性能が悪化するまでの時間を稼ぐことができ、長期間にわたって安定した通気性能を維持することができる。
【0013】
また、上記構成の液体収容容器において、前記気液分離膜より大気開放孔側における前記大気開放流路の途中に、蛇行状態に形成した連通路部分が設けられていることが望ましい。
このような構成の液体収容容器によれば、蛇行状態に形成した連通路部分によって液体の外部への漏洩を遅らせる効果が期待できると共に、気液分離膜と大気開放孔との間の空気流通を疎遠にする事で、液体の蒸発を少なくすることができる。
また、空気室からの液体の漏れを遅らせると共に、気液分離膜によって液体の外部への漏洩が確実に防止されているので、連通路部分に液体が入り込んで液体供給部に対する動圧を著しく変化させることもない。
【0014】
また、上記構成の液体収容容器において、前記空気室が複数個設けられ、隣接する各空気室同士が連通されていることが望ましい。
このような構成の液体収容容器によれば、容器本体内の限られたスペースにおいても、液体を貯留する為の空気室全体の容積確保が容易になる。
また、それぞれの空気室の大気流入側における連通口が、各空気室の内壁面から突出した突起の先端面に開口されるので、最も大気流入側の連通口から液体が流出するまでの時間を更に遅延させることができる。更に、それぞれの連通口を適宜異なる方向へ開口させることによって、色々な容器放置姿勢への対応が可能となり、空気室からの液体の漏洩を確実に阻止することができる。
【0015】
また、上記構成の液体収容容器において、前記空気室の大気流出側における連通口が、該空気室の内壁面と同一平面上に開口されていることが望ましい。
このような構成の液体収容容器によれば、空気室における大気流入側の連通口が液体を流出させ難いトラップ構造となっているのに対し、大気流出側の連通口は液体の浸入が容易な構造となる。そこで、空気室に溜まった液体は、浸入の容易な大気流出側の連通口を通過して再び液体収容部へ回収され易くなる。
【0016】
また、上記構成の液体収容容器において、前記突起の先端面と前記突起の側面とが交わるエッジ部は、断面が角になっていることが望ましい。
このような構成の液体収容容器によれば、突起が鉛直方向を向いている容器放置状態では、表面張力により突起の側面を上方へ這い上がった液体が、エッジ部の角によって突起の先端面への回り込みを阻止される。そこで、空気室に液体が溜まっても、突起の突出高さまでは液体が大気流入側の連通口に浸入することはない。尚、断面が角とは、突起の先端面と側面とが交わるエッジ部にRや面取りの無い事である。
【0017】
また、上記構成の液体収容容器において、前記突起の突出高さは、前記液体によるメニスカスが対向内壁面との間に生じない間隙を残す高さとされることが望ましい。
このような構成の液体収容容器によれば、容器本体の落下、着脱による衝撃や移動時の姿勢変化、キャリッジ動作による慣性力等により空気室に溜まった液体が突起の先端面に接触しても、液体が毛細管引力によって対向内壁面との間隙にメニスカスを形成することがなく、先端面に開口する連通口へは液体が浸入し難くなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る液体収容容器によれば、液体収容部の液体が空気室の大気流出側の連通口を通過して空気室に溜まっても、大気流入側の連通口に液体が到達するまでの時間を突起の高さ分遅くすることができる。
また、本発明に係る液体収容容器は、容器本体の落下、着脱による衝撃や移動時の姿勢変化、キャリッジ動作による慣性力、液体収容部の空気膨張などによって簡単に壊れてしまう従来の連通口に形成されるメニスカスとは違い、空気室における大気流入側の連通口からの液体の漏れを安定的に阻止することができる。
従って、容器本体に対する衝撃や慣性力、内外圧変化に対して強く、空気室に溜まった液体が大気流入側の連通口から流出する時間を遅延させることができる良好な液体収容容器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面に基づいて本発明に係る液体収容容器の好適な実施形態を詳細に説明する。
図1は本発明に係る液体収容容器の外観斜視図、図2は図1に示した液体収容容器を表面側から見た分解斜視図、図3は図1に示した液体収容容器を背面側から見た分解斜視図、図4は容器本体の内部を表面側から見た模式図、図5は図4のA−A断面矢視図、図6は容器本体の内部を背面側から見た模式図、図7は大気開放流路の概念図、図8は大気流入側の連通口の拡大断面図、図9は大気流入側の連通口の変形例を表す拡大断面図である。
【0020】
本実施形態に係るインクカートリッジ100は、不図示のインクジェット式プリンタにおいて、液体噴射部である印刷ヘッドが搭載されたキャリッジ上のカートリッジ装着部に装着される液体収容容器である。
このインクカートリッジ100は、図1乃至図3に示すように、容器本体21内に設けられインク(液体)を収容するインク室(液体収容部)23と、カートリッジ装着部側の印刷ヘッドに接続されるインク供給部(液体供給部)25と、インク室23に貯留したインクをインク供給部25に誘導するインク誘導路27と、インク室23内のインクの消費に伴って外部に開口した大気開放孔29から大気をインク室23に導入する大気開放流路102と、大気開放流路102の途中に設けられて該大気開放流路102に浸入したインクを貯留可能な複数の空気室31a,31b,31cと、を備える大気開放タイプのインクカートリッジである。
【0021】
更に、本実施形態の大気開放流路102は、空気室31cと大気開放孔29との間に設けられる通気フィルム(気液分離膜)33aを貼設した気液分離部33と、気液分離部33と大気開放孔29との間に蛇行状態に形成した連通路部分であるヘビ道35と、を備える。そこで、大気開放流路102は、インク室23のインクの消費に伴って、大気開放孔29、ヘビ道35、気液分離部33、空気室31a,31b,31cを順次通過させた大気をインク室23へ導入する。
【0022】
図2及び図3に示すように、一体成形された容器本体21の表裏には、隔壁37a,37b,37c,37d・・・等に密接してフィルム(封止部材)39a,39bが貼着され、フィルム39a,39bは容器本体21の表裏開放部を塞いでインク室23、空気室31a,31b,31c、インク誘導路27等を区画形成する。また、フィルム39aに封止された容器本体21の表面には、さらに蓋部材41が係着される。
【0023】
筒状に形成されたインク供給部25は、内部に弁体43が内設され、供給開口45aを有した供給蓋45によって閉鎖される。
弁体43はコイルバネ47によって供給蓋45側に付勢されることで、供給開口45aを閉鎖している。この供給蓋45は、封止フィルム49によって供給開口45aが封止されている。
【0024】
なお、本実施形態のインクカートリッジ100は、受圧板収容部61、コイルバネ63及び受圧板65から成る圧力調整手段を有すると共に、キャリッジ上のカートリッジ装着部にインクカートリッジ100を着脱するためのレバー51や、インク消費量等を書き込むための記憶手段53や、大気開放孔29を塞ぐ剥離可能な封止フィルム55を有している。
【0025】
図2及び図3に示した容器本体21に形成される大気開放流路102を模式的に表すと図4〜図6に示す通りとなる。
すなわち、インク室23の連通口71は、容器本体21の背面側に設けた連通流路72を介して表面側に設けた連通流路73の連通口75に通じ、連通流路73は連通口77を介して空気室31aに通じる。
【0026】
空気室31aは連通口79を介して背面側の空気室31bに通じ、空気室31bは連通口81を介して表面側の連通流路83に通じる。
連通流路83は連通口85を介して背面側の空気室31cに通じ、空気室31cは連通口87を介して表面側の連通流路89に通じる。
連通流路89は連通口91を介して背面側の連通流路90に通じ、連通流路90は表面側の連通流路91を介して背面側の気液分離部33に通じる。
そして、通気フィルム33aを備えた気液分離部33はヘビ道35に通じ、その末端で大気開放孔29となって大気開放される。
【0027】
このような大気開放流路102を更に概念的に表すと図7の通りとなる。ここで、例えば空気室31a(空気室31b,31cも同様)の大気流入側における連通口79(連通口81,87も同様)は、図8に示すように、空気室31aの内壁面93から突出した円柱状の突起95の先端面95aに開口されている。尚、突起95は円柱状に限るものではなく、先端面が内壁面から適宜離れていれば多角柱状、円錐状或いは多角錐状に形成することもできる。
【0028】
このような構成のインクカートリッジ100によれば、インク室23のインクが空気室31aの大気流出側の連通口77を通過して空気室31aに溜まっても、大気流入側の連通口79にインクが到達するまでの時間は突起95の高さ分遅くなる。
即ち、大気流入側の連通口79が鉛直方向を向いている容器放置状態では、空気室31aに流入したインクが突起95の高さhまで溜まった後、突起95の先端面95aに開口する大気流入側の連通口79から流出する。これにより、大気流入側の連通口79からインクが次の空気室31bに流出するまでの時間が遅延される。
【0029】
また、容器本体の落下やカートリッジ装着部への着脱による衝撃、移動時の姿勢変化やキャリッジ動作による慣性力、或いはインク室内の空気膨張などによって簡単に壊れてしまう従来のインクカートリッジの連通口7に形成されるメニスカス(図10参照)とは違い、本実施形態のインクカートリッジ100は空気室31aにおける大気流入側の連通口79からの液体の漏れを安定的に阻止することができる。
【0030】
更に、本実施形態のインクカートリッジ100に係る大気開放流路102においては、複数個の空気室31a,31b,31cが設けられ、隣接する各空気室同士が連通口79,80及び連通流路83により連通されている。
そこで、容器本体21内の限られたスペースにおいても、インクを貯留する為の空気室全体の容積確保が容易になる。
【0031】
また、それぞれの空気室31a,31b,31cの大気流入側における連通口79,81,87が、各空気室の内壁面から突出した突起(例えば、図8の突起95参照)の先端面に開口されている。
そこで、最も大気流入側の連通口87からインクが流出するまでの時間を更に遅延させることができる。
【0032】
更に、それぞれの連通口79,81,87を適宜異なる方向へ開口させることによって、色々な容器放置姿勢への対応が可能となり、空気室31a,31b,31cからのインクの漏洩を確実に阻止することができる。
例えば、本実施形態のインクカートリッジ100のように、容器本体21が偏平な略直方体に形成される薄型カートリッジの場合、ユーザーによって最も置かれる可能性が高い方向というのは、容器本体21の広い面(表裏面の何れか)を下にした姿勢(すなわち、厚み方向を鉛直方向とする姿勢)であるので、容器本体21内部の突起95が鉛直方向を向く。そこで、容器本体21の厚み方向に突起95を突出させることで、インクのトラップ率を高くすることができる。
【0033】
更に、それぞれの空気室31a,31b,31cの突起95を互い違いの方向に突出させることで、インクカートリッジ100の最も広い表裏面のどちらかが下になるように置かれた際には、何れかの空気室31a,31b,31cにおける突起95が溜まったインクの液面から突出し、何れかの先端面95aの連通口79,85,87がインク液面の上に配置されることとなる。これにより、インクのトラップ率を一律に高くすることができる(図5参照)。
【0034】
また、本実施形態の大気開放流路102においては、空気室31a(空気室31b,31cも同様)の大気流出側の連通口77(連通口80,85も同様)が、空気室31a(31b,31c)の内壁面97と同一平面上に開口されている(図8参照)。
そこで、空気室31a(31b,31c)における大気流入側の連通口79(81,87)がインクを流出させ難いトラップ構造となっているのに対し、大気流出側の連通口77(80,85)はインクの浸入が容易な構造となり、空気室31a(31b,31c)に溜まったインクは、浸入の容易な大気流出側の連通口77(80,85)を通過して再びインク室23へ回収され易くなる。
【0035】
本実施形態のインクカートリッジ100においては、図3及び図6に示すように、空気室31cより大気開放孔29側における大気開放流路102の途中に、空気の通過を許容しインクの通過を許容しない通気フィルム33aを備えた気液分離部33が設けられ、気液分離部33より大気開放孔29側における大気開放流路102の途中に、蛇行状態に形成した連通路部分であるヘビ道35が設けられている。
そこで、万が一空気室31cからインクが漏れだしたとしても、通気フィルム33aによってインクのカートリッジ外部への漏洩を確実に防止することができる。また、ヘビ道35によっても、インクのインクカートリッジ外部への漏洩を遅らせる効果が期待できると共に、通気フィルム33aと大気開放孔29との間の空気流通を疎遠にする事で、インクの蒸発を少なくすることができる。
また、空気室からの液体の漏れを遅らせると共に、気液分離膜によって液体の外部への漏洩が確実に防止されているので、連通路部分に液体が入り込んで液体供給部に対する動圧を著しく変化させることもない。
【0036】
更に、各空気室31a(31b,31c)からのインクの漏れは、上述したように安定的に阻止されているので、通気フィルム33aはインクに接触して通気性能が悪化するまでの時間を稼ぐことができ、長期間にわたって安定した通気性能を維持することができる。
また、各空気室31a(31b,31c)からのインクの漏れが安定的に阻止されると共に、通気フィルム33aによってインクのカートリッジ外部への漏洩が確実に防止されているので、へび道35にインクが入り込んでインク供給部25に対する動圧を著しく変化させることもない。
【0037】
また、本実施形態のインクカートリッジ100のように、容器本体21が上下金型によって一体成形される場合、上下金型の型開き方向に突起95の突出方向の軸線が平行とされる。これにより、軸線方向任意位置での直交断面形状が同一である突起95は、上金型と下金型の型開き方向と軸線が一致する。そこで、容器本体21を一体成形する際には、突起95を成形する為のスライド金型が必要となることはなく、型抜き性も良好になるので、容器本体21の製造を容易にできる。
【0038】
また、図8に示すように、本実施形態のインクカートリッジ100において、突起95の先端面95aと側面95bとが交わるエッジ部95cは、断面が角になっている。即ち、突起95の先端面95aと側面95bとが交わるエッジ部95cには、Rや面取りが施されていない。
そこで、突起95が鉛直方向を向いている容器放置状態では、表面張力により突起95の側面95bを上方へ這い上がったインクが、エッジ部95cの角によって突起95の先端面95aへの回り込みを阻止される。従って、空気室31aにインクが溜まっても、突起95の突出高さhまではインクが大気流入側の連通口79に浸入することはない。
【0039】
更に、図9に示すように、突起95の突出高さhは、インクによるメニスカスが対向内壁面(フィルム39aや内壁面97)との間に生じない間隙tを残す高さとすることもできる。
この場合、容器本体21の落下やカートリッジ装着部への着脱による衝撃、移動時の姿勢変化やキャリッジ動作による慣性力等により空気室31aに溜まったインクが突起95の先端面95aに接触しても、インクが毛細管引力によって対向内壁面であるフィルム39aとの間にメニスカスを形成することがなく、先端面95aに開口する連通口79へはインクが浸入し難くなる。
【0040】
したがって、上記のインクカートリッジ100によれば、容器本体21に対する衝撃や慣性力、内外圧変化に対して強く、空気室31a,31b,31cにそれぞれ溜まったインクが大気流入側の連通口79,81,87から流出する時間を遅延させることができる良好なインクカートリッジを提供できる。
その結果、本実施形態のインクカートリッジ100を用いたインクジェット式プリンタによれば、インク供給部25に対する動圧変化が抑止され、高品質の印刷を維持し続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は本発明に係る液体収容容器の外観斜視図である。
【図2】図1に示した液体収容容器を表面側から見た分解斜視図である。
【図3】図1に示した液体収容容器を背面側から見た分解斜視図である。
【図4】容器本体の内部を表面側から見た模式図である。
【図5】図4のA−A断面矢視図である。
【図6】容器本体の内部を背面側から見た模式図である。
【図7】大気開放流路の概念図である。
【図8】大気流入側の連通口の拡大断面図である。
【図9】大気流入側の連通口の変形例を表す拡大断面図である。
【図10】従来の液体収容容器における大気流入側の連通口の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0042】
21…容器本体、23…インク室(液体収容部)、25…インク供給部(液体供給部)、29…大気開放孔、31a,31b,31c…空気室、33a…通気フィルム(気液分離膜)、35…ヘビ道(蛇行状態に形成した連通路部分)、77,80,85…空気室の大気流出側の連通口、79,81,87…空気室の大気流入側の連通口、93,97…空気室の内壁面、95…突起、95a…先端面、95b…側面、95c…エッジ部、100…インクカートリッジ(液体収容容器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体内に設けられ液体を収容する液体収容部と、前記液体収容部に連通する液体供給部と、前記液体収容部内の液体の消費に伴って外部に開口した大気開放孔から大気を前記液体収容部に導入する大気開放流路と、前記大気開放流路の途中に設けられて該大気開放流路に浸入した液体を貯留可能な空気室と、を備えた液体収容容器であって、
前記空気室の大気流入側における連通口が、該空気室の内壁面から突出した突起の先端面に開口されていることを特徴とする液体収容容器。
【請求項2】
前記空気室より大気開放孔側における前記大気開放流路の途中に、気体の通過を許容し液体の通過を許容しない気液分離膜が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液体収容容器。
【請求項3】
前記気液分離膜より大気開放孔側における前記大気開放流路の途中に、蛇行状態に形成した連通路部分が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の液体収容容器。
【請求項4】
前記空気室が複数個設けられ、隣接する各空気室同士が連通されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の液体収容容器。
【請求項5】
前記空気室の大気流出側における連通口が、該空気室の内壁面と同一平面上に開口されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の液体収容容器。
【請求項6】
前記突起の先端面と前記突起の側面とが交わるエッジ部は、断面が角になっていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の液体収容容器。
【請求項7】
前記突起の突出高さは、前記液体によるメニスカスが対向内壁面との間に生じない間隙を残す高さとされることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の液体収容容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−12823(P2008−12823A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187256(P2006−187256)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】