説明

液体収容容器

【課題】液体収容室に液体を注入する際の空気室流通口への注入液体の浸入を阻止し、大気開放孔からの液体漏出しを防止することができる良好な液体収容容器を提供する。
【解決手段】容器本体21は、インク室43に連通するインク供給部29と、インク室43内のインクの消費に伴って外部に開口した大気開放孔から大気をインク室43に導入する大気開放流路102と、大気開放流路102に浸入したインクを貯留可能な空気室45と、液体供給部29に連通するインク室流通口51と、インク室43に連通する空気室流通口49とを備える。インク室流通口51と空気室流通口49とが、インク室43にインクを注入する状態で、インク供給部29の端面29aを含む平面Sからの距離が近く且つインク室43における同一辺の内側壁47に近接して配置されると共に、インク室流通口51から空気室流通口49に向かう注入インクの流れの途中には、注入インクの流れを制御する流れ制御部67が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体収容室と大気開放孔との間に空気室を備えた液体収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタに着脱可能に装着して用いられるインクカートリッジ(液体収容容器)としては、そのインク室(液体収容室)の内圧を適切な状態に保持するために、インク室を外部に連通して大気開放する為の大気開放流路を備えたものが知られている。そして、この種の大気開放流路では、大気開放孔からのインク漏れを防止する工夫が必要とされる。
【0003】
従って、従来のインクカートリッジにおける大気開放流路の構成では、インク(液体)を収容するインク室と、浸入したインクを貯留可能な空気室と、インク室を外部に連通させて該インク室のインク消費に伴って外部の空気をインク室に導入するための大気開放孔とが順次配設される。
【0004】
上記空気室は、環境温度の変化等でインク室の空気が熱膨張し、この空気の熱膨張によってインク室のインクが大気開放口へ向かって逆流するとき、このインクを貯留して外部に漏洩することを防止する。また、空気室に貯留されたインクが、インク室のインク消費時若しくは空気の熱収縮時に速やかにインク室に戻ることができるように、インク室に連通する空気室の空気室流通口と、インク供給部(液体供給部)に連通するインク室のインク室流通口(液体収容室流通口)とは、インクカートリッジ使用状態でインク室の下方に位置する同一辺の内側壁に近接して配置されるのが一般的である。
【0005】
一方、インクカートリッジの製造時には、種々の方法でインク室にインクが充填される(例えば特許文献1,2参照)。
例えば、インク室に連通する専用のインク注入孔を予め容器本体に形成しておき、このインク注入孔を使ってインク室へのインクの充填を行う方法がある。この場合、インクの充填が終了した後、開口しているインク注入孔をシールフィルムの貼付等によって封止する必要があり、製造工程の増加によるコストアップを招く。
【0006】
そこで、インク供給部を利用して通常のインク供給方向と逆方向でインク注入を行う充填方法が考えられる。この場合、インクカートリッジを通常使用状態とは天地逆にセットしてインク供給部を上に向けた状態で、インク供給部からインクを注入することにより、インクがインク供給部に連通するインク室のインク室流通口を経てインク室内に注入される。
このようにインク供給部からインク室にインクを注入する場合には、専用のインク注入孔を容器本体に設ける必要がなく、インク充填後にインク注入孔を封止する工程も不要となるので、コスト低減を図ることができる。
【0007】
【特許文献1】特開平6−106729号公報
【特許文献2】特開2002−192741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、インク供給部からインク室にインクを注入する際には、インク注入速度を速めて生産性を向上させるため、例えば大気開放流路を介してインク室内を減圧した状態でインクの注入が行われる。この為、インク注入時のインクは、インク供給部に連通するインク室のインク室流通口から勢い良くインク室内に吹き出る。
【0009】
上述したように、空気室の空気室流通口とインク室のインク室流通口とは、インク室にインクを注入する状態で、インク供給部の端面を含む平面からの距離が近く且つインク室における同一辺の内側壁に近接して配置されているので、インク室流通口からインク室内に吹き出たインクが前記内側壁に沿って空気室流通口へ向かう。このように注入インクが高速で空気室流通口へ浸入することは、大気開放孔からのインク漏出の可能性を伴うため好ましくない。
そこで、インク注入時の空気室へのインク浸入を防止する方法として、インク室流通口から噴出する注入インクが空気室流通口へ直撃しないように、障壁リブをインク室の内側壁に垂設することが考えられる。
【0010】
しかしがら、インクカートリッジをインクジェットプリンタに装着する際、空気室流通口とインク室流通口とが近接して配置された上記内側壁は、通常使用状態において底面となる向きにセットされる。そのため、障壁リブには内側壁との間に切欠き開口を形成し、この切欠き開口を介して内側壁と障壁リブとの間に溜まったインクをインク室流通口から流下できるようにする必要がある。
【0011】
即ち、インク室の内側壁に垂設した障壁リブには、内側壁との間に切欠き開口が形成され、インク注入時にはこの切欠き開口を通過した注入インクがそのまま空気室流通口まで達してしまう。その結果、インク漏れを生じさせる虞があり、障壁リブを設けるのみでは不十分であるので、インク注入速度を遅くしなければならず、高い生産性を得ることができなかった。
【0012】
従って、本発明の目的は上記課題を解消することに係り、液体収容室に液体を注入する際の空気室流通口への注入液体の浸入を阻止し、大気開放孔からの液体漏出しを防止することができる良好な液体収容容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記目的は、容器本体内に設けられ液体を収容する液体収容室と、前記液体収容室に連通する液体供給部と、前記液体収容室内の液体の消費に伴って外部に開口した大気開放孔から大気を前記液体収容室に導入する大気開放流路と、前記大気開放流路の途中に設けられて該大気開放流路に浸入した液体を貯留可能な空気室と、前記液体供給部に連通する前記液体収容室の液体収容室流通口と、前記液体収容室に連通する前記空気室の空気室流通口と、を備えた液体収容容器であって、
前記液体収容室流通口と前記空気室流通口とが、前記液体収容室に液体を注入する状態で、前記液体供給部の端面を含む平面からの距離が近く且つ前記液体収容室における同一辺の内側壁に近接して配置されると共に、
前記液体収容室流通口から前記空気室流通口に向かう注入流体の流れの途中には、前記注入流体の流れを制御する流れ制御部が配置されることを特徴とする液体収容容器により達成される。
【0014】
但し、液体収容室流通口と空気室流通口の液体供給部の端面を含む平面からの距離が近いとは、例えば液体注入後における液体収容室内の空気層の高さ範囲内に、これら液体収容室流通口と空気室流通口とが位置する事である。
【0015】
上記構成の液体収容容器によれば、液体収容室に液体が注入される際、液体収容室流通口から噴出した注入液体が、液体収容室に設けた流れ制御部によって制御される。そこで、液体収容室流通口から噴出した注入液体は、空気室流通口を直撃することがなく、空気室流通口への注入液体の浸入が阻止される。
【0016】
尚、上記構成の液体収容容器において、前記流れ制御部は、前記液体収容室流通口に対面し、前記空気室流通口に接近するにしたがって前記内側壁に徐々に近づく入側傾斜面と、前記空気室流通口に対面し、前記空気室流通口に接近するにしたがって前記内側壁から徐々に離れる出側傾斜面と、前記内側壁との間に隙間を有した状態で、前記入側傾斜面と前記出側傾斜面とを連結する頂部面と、を備えることが望ましい。
【0017】
但し、頂部面が内側壁との間に有する隙間とは、内側壁と頂部面との間に液体によるメニスカスが生じない間隔以上であり、液体収容室流通口の大きさ(開口面積等)より狭い間隔である。
【0018】
このような構成の液体収容容器によれば、液体収容室に液体が注入された際、液体収容室流通口から噴出した注入液体は、流れ制御部の入側傾斜面に沿って流路が徐々に狭められながら頂部面へと向かう。そこで、流れは入側傾斜面の横方向へ広がり、流速を遅めながら内側壁と頂部面との間の隙間へ進入する。そして、隙間を通過した注入液体は、出側傾斜面に沿って流路が徐々に広げられて減圧されながら進み、流速がさらに減速される。その結果、液体収容室流通口から噴出した注入液体が、空気室流通口を直撃することはなく、空気室流通口への注入液体の浸入が阻止される。
【0019】
また、上記構成の液体収容容器において、前記流れ制御部は、前記入側傾斜面を有する一片部と、前記出側傾斜面を有する他片部と、前記頂部面を有する頂部と、を備えた断面V字型リブで形成されることが望ましい。
このような構成の液体収容容器によれば、注入液体の流れを横方向へ広げて流速を遅める入側傾斜面と、流路を広げて減圧しながら流速を減速する出側傾斜面とを容易に形成することができる。
【0020】
また、上記構成の液体収容容器において、前記液体収容室と前記大気開放流路が、前記容器本体に形成した凹部と、前記容器本体に貼着されて前記凹部の開口面を塞ぐシート部材とで区画形成されると共に、
前記断面V字型リブは、前記他片部が前記シート部材と溶着され、前記一片部が前記シート部材との間に間隙を有することが望ましい。
【0021】
このような構成の液体収容容器によれば、液体収容容器の使用時において、内側壁が底面となる向きで容器本体がセットされた際、断面V字型リブの内側に溜まった液体は、一片部とシート部材との間の間隙を通過して底面へ流下することができる。そこで、断面V字型リブの内側での液体の残留を防止できる。なお、底面に流下した液体は、液体収容室流通口から排出される。
【0022】
また、液体収容容器の液体注入時には、内側壁と頂部面との間の隙間を通過しない注入液体の一部は、一片部とシート部材との間の間隙を通過して他片部の背面に当たり、他片部の背面に沿って内側壁から離れる方向へ導かれるので、空気室流通口へ浸入することはない。
【0023】
また、上記構成の液体収容容器において、前記流れ制御部は、前記断面V字型リブと前記空気室流通口との間に、基端が前記内側壁に連続し、先端が前記空気室流通口に接近するにしたがって前記内側壁から徐々に離れる傾斜面を有する傾斜リブを備え、
前記傾斜リブの少なくとも基端部分が、前記シート部材との間に間隙を有することが望ましい。
【0024】
このような構成の液体収容容器によれば、流れ制御部には、上記断面V字型リブに加えて、内側壁と頂部面との間の隙間を通過した液体流を内側壁から離れる方向に導く傾斜面を有する傾斜リブが設けられる。
そこで、空気室流通口に向かう液体流は殆どなくなり、液注入時における空気室流通口への注入液の浸入を確実に防止できる。
【0025】
また、上記構成の液体収容容器において、前記液体収容室と前記液体供給部との間に、前記液体供給部を介して外部に供給する液体圧力を調整すると共に前記液体供給部側から前記液体収容室への液体の逆流を阻止する圧力調整手段と、液体注入時に前記圧力調整手段を迂回して前記液体供給部を前記液体収容室流通口に連通させるバイパス流路と、前記バイパス流路を閉塞可能とするバイパス閉塞部と、を備えることが望ましい。
【0026】
このような構成の液体収容容器によれば、液体注入時に液体供給部から注入された液体は、バイパス流路を介して液体収容室流通口から液体収容室へ流入する液体と、バイパス流路を通過せずに圧力調整手段へ向かう液体とに分けられる。この際、液体収容室流通口から噴出した注入液体は、上記流れ制御部によって空気室流通口を直撃することがなく、空気室流通口への注入液体の浸入が阻止されているので、液体供給部から注入する液体の注入速度を速めることができる。
そこで、圧力調整手段へも液体を高速で流れ込ませることができ、圧力調整手段内に気泡が残留し難くなる。これにより、高品質の液体収容容器を生産することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る液体収容容器によれば、液体収容室に液体が注入される際、液体収容室流通口から噴出した注入液体が、空気室流通口を直撃することはなく、該空気室流通口への注入液体の浸入が阻止されて大気開放孔からの液体漏出しを防止することができる。
そこで、空気室への液体の浸入を防止しながら、注入速度を高めることが可能となり、液体収容容器の生産性を向上させることもできる。
従って、液体収容室に液体を注入する際の空気室流通口への注入液体の浸入を阻止し、大気開放孔からの液体漏出しを防止することができる良好な液体収容容器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、添付図面に基づいて本発明の一実施形態に液体収容容器を詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る液体収容容器の外観斜視図、図2は図1に示した液体収容容器を表面側から見た分解斜視図、図3は図1に示した液体収容容器の底面図、図4は図2に示した容器本体の内部を表した正面図、図5は図4のC−C矢視断面図、図6は図4のD−D矢視断面図である。
【0029】
本第1実施形態に係るインクカートリッジ100は、不図示のインクジェット式プリンタにおいて、液体噴射部である印刷ヘッドが搭載されたキャリッジ上のカートリッジ装着部に装着される液体収容容器である。
このインクカートリッジ100は、図1乃至図5に示すように、容器本体21内に設けられインク(液体)を収容するインク室(液体収容室)43と、カートリッジ装着部側の印刷ヘッドに接続されるインク供給部(液体供給部)29と、インク室43に貯留したインクをインク供給部29に誘導するインク誘導路59と、インク室43内のインクの消費に伴って外部に開口した大気開放孔31から大気をインク室43に導入する大気開放流路102と、大気開放流路102の途中に設けられて該大気開放流路102に浸入したインクを貯留可能な空気室45と、を備える大気開放タイプのインクカートリッジである。
【0030】
図2に示すように、一体成形された容器本体21の表裏には、隔壁37a,37b・・・等に密接してフィルム(シート部材)41a,41bが貼着され、フィルム41a,41bは容器本体21の表裏面における凹部37を塞いでインク室43、大気開放流路102、空気室45、インク誘導路59等を区画形成する。また、フィルム41aに封止された容器本体21の表面には、さらに蓋部材41が係着される。
【0031】
筒状に形成されたインク供給部29は、内部に弁体53が内設され、供給開口54aを有した供給蓋54によって閉鎖される。
弁体53はコイルバネ55によって供給蓋54側に付勢されることで、供給開口54aを閉鎖している。この供給蓋54は、封止フィルム33によって供給開口54aが封止されている。
【0032】
本実施形態のインクカートリッジ100は、受圧板収容部61、コイルバネ63及び受圧板64から成る圧力調整手段60を有すると共に、キャリッジ上のカートリッジ装着部にインクカートリッジ100を着脱するためのレバー25や、インク消費量等を書き込むための記憶手段27や、大気開放孔31を塞ぐ剥離可能な封止フィルム35を有している。
【0033】
インク供給部29に連通したインク誘導路59は、圧力調整手段60を介してインク室43のインク室流通口51に連通している。そこで、インク室43のインクは、インク室流通口51から圧力調整手段60を通過してインク供給部29から排出される。
【0034】
容器本体21の一つの内側壁47に交わる空気室45側の隔壁39aには、内側壁47とフィルム41aに隣接する空気室流通口49が開口され、内側壁47に交わるインク誘導路59側の隔壁39bには、内側壁47とフィルム41aに隣接するインク室流通口(液体収容室流通口)51が開口されている。
即ち、インク室流通口51と空気室流通口49とは、インク室43にインクを注入する状態(図4に示す状態)で、インク供給部29の端面29aを含む平面Sからの距離が近く且つインク室43における同一辺の内側壁47に近接して配置されている。
【0035】
ところで、本実施形態におけるインクカートリッジ100は、インク供給部29を利用して通常のインク供給方向と逆方向(図4中、矢印A方向)でインク注入を行う。本実施形態の場合、インク供給部29とインク室43との間のインク誘導路59には、圧力調整手段60が介在するため、この圧力調整手段60を迂回するためのバイパス流路65が設けられる。
【0036】
バイパス流路65は、容器本体21に対するフィルム41aの溶着領域(図4中ハッチング部分)の一部領域を未溶着部として残すことにより、容器本体21とフィルム41aとの間に区画形成される。そこで、インク注入時には、インク供給部29から注入されたインクが、バイパス流路65を通り直接インク室流通口51からインク室43へ注入可能となる。
そして、インク注入後には未溶着部を溶着処理することで、バイパス流路65がインク誘導路59から遮断されて閉塞される。即ち、未溶着部がバイパス流路を閉塞可能とするバイパス閉塞部として機能する。
【0037】
更に、本実施形態における容器本体21内のインク室43には、図4に示すように、インク室流通口51から空気室流通口49に向かう注入流体の流れの途中である内側壁47の近傍に、注入流体の流れを制御する流れ制御部67が配置されている。
【0038】
本実施形態に係る流れ制御部67は、インク室流通口51に対面し、空気室流通口49に接近するにしたがって内側壁47に徐々に近づく入側傾斜面71を有する一片部69と、空気室流通口49に対面し、空気室流通口49に接近するにしたがって内側壁47から徐々に離れる出側傾斜面75を有する他片部73と、内側壁47との間に隙間81を有した状態で入側傾斜面71と出側傾斜面75とを連結する頂部面79を有する頂部83と、を備えた断面V字型リブ77で形成されている(図6参照)。
【0039】
更に、前記断面V字型リブ77は、図6に示すように、他片部73がフィルム41aと溶着され、一片部69がフィルム41aとの間に間隙85を有している。
そこで、インクカートリッジ100の使用時において、内側壁47が底面となる向きで容器本体21がセットされた際、断面V字型リブ77の内側に溜まったインクは、一片部69とフィルム41aとの間の間隙85を通過して底面へ流下することができる。従って、断面V字型リブ77の内側でのインクの残留を防止できる。なお、底面に流下したインクは、インク室流通口51から排出される。
【0040】
即ち、本実施形態のインクカートリッジ100によれば、インク室43にインクが注入された際、インク室流通口51から噴出した注入インクは、流れ制御部67を構成している一片部69の入側傾斜面71に沿って流路が徐々に狭められながら頂部面79へと向かう。
そこで、流れは入側傾斜面71の横方向(凹部37の深さ方向;図6中矢印B方向)へ広がり、流速を遅めながら内側壁47と頂部面79との間の隙間81へ進入する。
【0041】
そして、隙間81を通過した注入インクは、他片部73の出側傾斜面75に沿って流路が徐々に広げられて減圧されながら進み、流速がさらに減速される。
その結果、インク室流通口51から噴出した注入インクが、空気室流通口49を直撃することはなく、空気室流通口49への注入インクの浸入が阻止される。
【0042】
また、内側壁47と頂部面79との間の隙間81を通過しない注入インクの一部も、一片部69とフィルム41aとの間の間隙85を通過して他片部73の背面(出側傾斜面75の背面)に当たり、他片部73の背面に沿って内側壁47から離れる方向へ導かれるので、空気室流通口49へ浸入することはない。
【0043】
また、インクカートリッジ100の使用時には、図4に示す向きと上下が反転してカートリッジ装着部にセットされるが、内側壁47が底面となる向きでセットされた場合には、隔壁39aと流れ制御部67との間に残留したインクは、隙間81を通過してインク室流通口51から排出可能となっている。ここで、隙間81は、内側壁47と頂部面79との間にインクによるメニスカスが生じない間隔以上が望ましく、インク室流通口51の大きさ(開口高さ等)より狭い間隔とされる。
【0044】
更に、本実施形態のインクカートリッジ100は、上述のようにインク供給部29とインク室43のインク室流通口51との間に、圧力調整手段60と、インク注入時に圧力調整手段60を迂回してインク供給部29をインク室流通口51に連通させるバイパス流路65と、を備えている。
【0045】
そこで、インク注入時にインク供給部29から注入されたインクは、バイパス流路65を介してインク室流通口51からインク室へ流入するインクと、バイパス流路65を通過せずに圧力調整手段60へ向かうインクとに分けられる。この際、インク室流通口51から噴出した注入インクは、上記流れ制御部67によって空気室流通口49を直撃することがなく、空気室流通口49への注入インクの浸入が阻止されているので、インク供給部29から注入するインクの注入速度を速めることができる。
【0046】
この結果、圧力調整手段60へもインクを高速で流れ込ませることができ、圧力調整手段60内に気泡が残留し難くなる。これにより、高品質のインクカートリッジを生産することができる。即ち、空気室45へのインクの浸入を防止しながら、注入速度を高めることができ、インクカートリッジ100の生産性を向上させることができる。
【0047】
図7は本発明の第2実施形態に係る液体収容容器における容器本体の内部を表した正面図、図8は図7のE−E矢視断面図である。本第2実施形態に係るインクカートリッジの容器本体221は、上記第1実施形態の容器本体21における流れ制御部67に代えて、流れ制御部267を設けた以外は同様の構成であるので、共通部材については同符号付して詳細な説明を省略する。
【0048】
本第2実施形態の容器本体221における流れ制御部267は、図7及び図8に示すように、断面V字型リブ77と空気室流通口49との間に、基端93が内側壁47に連続し、先端95が空気室流通口49に接近するにしたがって内側壁47から徐々に離れる傾斜面94を有する傾斜リブ91を備える。
そして、この傾斜リブ91は、フィルム41aとの間に間隙97を有している。但し、この間隙97は、傾斜リブ91の全体に設けられる必要はなく、少なくとも基端93部分に設けられていれば良い。
【0049】
即ち、本第2実施形態に係る流れ制御部267によれば、上記断面V字型リブ77に加えて、内側壁47と頂部面79との間の隙間81を通過したインク流を内側壁47から離れる方向に導く傾斜面94を有する傾斜リブ91が設けられている。
そこで、空気室流通口49に向かうインク流は殆どなくなり、インク注入時における空気室流通口49への注入インクの浸入をより確実に防止できる。
【0050】
また、インクカートリッジの使用時において、内側壁47が底面となる向きで容器本体221がセットされた際には、隔壁39aと傾斜リブ91との間の底面上に溜まったインクが、間隙97を通り、インク室流通口51へ排出可能となる。つまり、当該間隙97を設けたことにより、傾斜リブ91と隔壁39aとの間の空間99に、インクが残留することはない。
【0051】
なお、本発明の液体収容容器における容器本体、液体収容室、液体供給部、大気開放流路、空気室、液体収容室流通口、空気室流通口、及び流れ制御部等の構成は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の形態を採りうることは云うまでもない。
例えば、上記実施形態におけるインク室流通口51と空気室流通口49とは、インク室43にインクを注入する状態で、インク供給部29の端面29aを含む平面Sからの距離が内側壁47に沿った略同じ距離とされたが、本発明はこれに限定するものではない。例えば、インク注入後におけるインク室43内の空気層の高さ範囲内となる近い位置であれば、これらインク室流通口51と空気室流通口49との平面Sからの距離が異なっていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態に係る液体収容容器の外観斜視図である。
【図2】図1に示した液体収容容器を表面側から見た分解斜視図である。
【図3】図1に示した液体収容容器の底面図である。
【図4】図2に示した容器本体の内部を表した正面図である。
【図5】図4のC−C矢視断面図である。
【図6】図4のD−D矢視断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る液体収容容器における容器本体の内部を表した正面図である。
【図8】図7のE−E矢視断面図である。
【符号の説明】
【0053】
21…容器本体、29…インク供給部(液体供給部)、29a…端面、37…凹部、39a,39b…隔壁、41a,41b…フィルム(シート部材)、43…インク室(液体収容室)、45…空気室、47…内側壁、49…空気室流通口、51…インク室流通口(収容室流通口)、60…圧力調整手段、65…バイパス流路、67…流れ制御部、69…一片部、71…入側傾斜面、73…他片部、75…出側傾斜面、77…断面V字型リブ、79…頂部面、81…隙間、83…頂部、85…間隙、102…大気開放流路、100…インクカートリッジ(液体収容容器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体内に設けられ液体を収容する液体収容室と、前記液体収容室に連通する液体供給部と、前記液体収容室内の液体の消費に伴って外部に開口した大気開放孔から大気を前記液体収容室に導入する大気開放流路と、前記大気開放流路の途中に設けられて該大気開放流路に浸入した液体を貯留可能な空気室と、前記液体供給部に連通する前記液体収容室の液体収容室流通口と、前記液体収容室に連通する前記空気室の空気室流通口と、を備えた液体収容容器であって、
前記液体収容室流通口と前記空気室流通口とが、前記液体収容室に液体を注入する状態で、前記液体供給部の端面を含む平面からの距離が近く且つ前記液体収容室における同一辺の内側壁に近接して配置されると共に、
前記液体収容室流通口から前記空気室流通口に向かう注入流体の流れの途中には、前記注入流体の流れを制御する流れ制御部が配置されることを特徴とする液体収容容器。
【請求項2】
前記流れ制御部は、
前記液体収容室流通口に対面し、前記空気室流通口に接近するにしたがって前記内側壁に徐々に近づく入側傾斜面と、
前記空気室流通口に対面し、前記空気室流通口に接近するにしたがって前記内側壁から徐々に離れる出側傾斜面と、
前記内側壁との間に隙間を有した状態で、前記入側傾斜面と前記出側傾斜面とを連結する頂部面と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の液体収容容器。
【請求項3】
前記流れ制御部は、前記入側傾斜面を有する一片部と、前記出側傾斜面を有する他片部と、前記頂部面を有する頂部と、を備えた断面V字型リブで形成されることを特徴とする請求項2に記載の液体収容容器。
【請求項4】
前記液体収容室と前記大気開放流路が、前記容器本体に形成した凹部と、前記容器本体に貼着されて前記凹部の開口面を塞ぐシート部材とで区画形成されると共に、
前記断面V字型リブは、前記他片部が前記シート部材と溶着され、前記一片部が前記シート部材との間に間隙を有することを特徴とする請求項3に記載の液体収容容器。
【請求項5】
前記流れ制御部は、前記断面V字型リブと前記空気室流通口との間に、基端が前記内側壁に連続し、先端が前記空気室流通口に接近するにしたがって前記内側壁から徐々に離れる傾斜面を有する傾斜リブを備え、
前記傾斜リブの少なくとも基端部分が、前記シート部材との間に間隙を有することを特徴とする請求項4に記載の液体収容容器。
【請求項6】
前記液体収容室と前記液体供給部との間に、前記液体供給部を介して外部に供給する液体圧力を調整すると共に前記液体供給部側から前記液体収容室への液体の逆流を阻止する圧力調整手段と、液体注入時に前記圧力調整手段を迂回して前記液体供給部を前記液体収容室流通口に連通させるバイパス流路と、前記バイパス流路を閉塞可能とするバイパス閉塞部と、を備えることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の液体収容容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−30244(P2008−30244A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203874(P2006−203874)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】