説明

液体収納容器

【課題】可撓性袋の位置を安定させるとともに、可撓性袋が均一に収縮できるようにする。
【解決手段】液体収納容器1は、二つのケース10,20が組み合わせられて内部空間を形成してなる組み体と、重ねられた二枚の可撓性シート41,42の縁部分が接合されてなり、その縁部分がケース10,20の組み体の内面に接合され、ケース10,20の組み体の内部空間を二つの室13,23に区切り、液体を収納する可撓性袋40と、可撓性袋40に設けられ、可撓性袋40内からケース10,20の組み体の外に通じた液体取出口43と、ケース10,20の組み体に設けられ、室13からケース10,20の組み体の外に通じたインレットポート14と、ケース10,20の組み体に設けられ、室23から組み体の外に通じた排気口25と、組み体の内側に設けられ、室13,23に通じた開口45,46と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、携帯電話機、ノート型パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、腕時計、PDA(Personal Digital Assistance)、電子手帳等といった小型電子機器がめざましい進歩・発展を遂げている。電子機器の電源として一次電池又は二次電池を用いるのが一般的であるが、エネルギー利用効率のよい燃料電池を電子機器の電源に用いるための研究開発が行われている。電子機器に用いる燃料電池として、直接燃料方式と呼ばれるものや、改質方式と呼ばれるものがある。直接燃料方式とは、燃料電池に直接供給された燃料の電気化学反応により発電する方式である。一方、改質方式とは、燃料を水素にいったん改質し、燃料電池に供給された水素の電気化学反応により発電する方式である。何れの方式にしても液体燃料が必要であるため、液体燃料を収納する容器が電子機器に必要となる。
【0003】
液体燃料の収納容器には、可撓性の袋体を用いたものがある。例えば、特許文献1に記載されているように、可撓性袋(7)が剛性容器(6)の内側に配設され、可撓性袋(7)には液体燃料が貯留され、可撓性袋(7)の外側であって剛性容器(6)の内側には、燃料電池で生成された生成物が回収される。
【特許文献1】特開2006−49032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、小型電子機器に配置された液体燃料の収容容器は、可撓性袋の位置が安定しないため、小型電子機器の配置方向や、小型電子機器を携帯して移動させることによって、可撓性袋が剛性容器内で移動してしまう。そうすると、剛性容器に設けられた圧力調整穴が可撓性容器で塞がれたり、回収した生成物が可撓性袋に押されて圧力調整穴から漏れたりすることがある。
また、可撓性袋内の液体燃料が減少する過程で、可撓性袋の一部が極端に収縮するので、その収縮した部分に液体燃料が残留したり、その収縮した部分によって可撓性袋の口が塞がれて液体燃料を使い切れなかったりする。
そこで、本発明の課題は、可撓性袋の位置を安定させるとともに、可撓性袋が均一に収縮できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1に係る発明によれば、
複数のケースが組み合わせられて内部空間を形成してなる組み体と、
重ねられた二枚の可撓性シート又は二つ折りにされた可撓性シートの縁部分が接合されてなり、前記縁部分が前記組み体の内面に接合され、前記組み体の内部空間を二つの室に区切り、液体を収納する可撓性袋と、
前記可撓性袋に設けられ、前記可撓性袋内から前記組み体の外に通じた取出口と、
前記組み体に設けられ、前記二つの室のうち一方の室から前記組み体の外に通じたポートと、
前記組み体に設けられ、前記二つの室のうち他方の室から前記組み体の外に通じた排気口と、
前記組み体の内側に設けられ、前記二つの室に通じた連通路と、を備えることを特徴とする液体収納容器が提供される。
【0006】
請求項2に係る発明によれば、
前記可撓性袋の縁部分が前記ケースに挟持されていることによって、前記可撓性袋の縁部分が前記組み体の内面に接合されていることを特徴とする請求項1に記載の液体収納容器が提供される。
【0007】
請求項3に係る発明によれば、
前記組み体に設けられ、前記一方の室から前記組み体の外に通じた第2のポートと、
前記一方の室内に配設され、前記第2のポートを塞いだイオン交換樹脂と、を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体収納容器が提供される。
【0008】
請求項4に係る発明によれば、
前記一方の室内に配設され、前記イオン交換樹脂に接触した吸収体を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の液体収納容器が提供される。
【0009】
請求項5に係る発明によれば、
前記組み体に設けられ、前記一方の室から前記組み体の外に通じた第2のポートと、
前記一方の室内に配設された吸収体と、を更に備えることを特徴とする請求項1又は2の何れか一項に記載の液体収納容器が提供される。
【0010】
請求項6に係る発明によれば、
前記吸収体が前記第2のポートを塞ぐことを特徴とする請求項5に記載の液体収納容器が提供される。
【0011】
請求項7に係る発明によれば、
前記連通路は、前記可撓性袋の縁部分に形成され且つ前記組み体の内部空間に配設された開口であることを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の液体収納容器が提供される。
【0012】
請求項8に係る発明によれば、
前記連通路は、前記組み体の内面に形成された溝であることを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の液体収納容器。
【0013】
請求項9に係る発明によれば、
前記排気口を塞いだ気液分離膜を更に備えることを特徴とする請求項1から8の何れか一項に記載の液体収納容器が提供される。
【0014】
請求項10に係る発明によれば、
前記連通路を塞いだ気液分離膜を更に備えることを特徴とする請求項1から9の何れか一項に記載の液体収納容器が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、可撓性袋の縁部分が組み体の内面に接合されているので、可撓性袋に張力が作用するので、可撓性袋内の液体が減少する過程における可撓性袋の収縮を均一にすることができる。そのため、可撓性袋内の液体を使い切ることができるようになる。とくに、可撓性袋が重ねられた二枚のシート又は二つ折りにされたシートからなるものであるため、その効果が相乗する。
また、可撓性袋の縁部分が組み体の内面に接合されているから、可撓性袋の位置が安定する。そのため、可撓性袋によって排気口やポートが塞がれたり、可撓性袋の外側であって組み体の内側にある液体等が可撓性袋によって圧縮されてポートや排気口から排出されたりすることを防止することができる。
また、可撓性袋によって区切られた二つの室が連通路によって通じているのみであるから、ポートから一方の室に入ってきた液体を一箇所に収集することが出来る。また、その液体が他方の室に流れ込みにくいため、排気口から液体が漏れにくくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0017】
〔第1の実施の形態〕
図1は、液体収納容器1の縦断面を示した断面図である。図2は、図1に示されたII−IIに沿った横断面を示した断面図である。図1は、図2に示されたI−Iに沿った縦断面を示したものである。
【0018】
液体収納容器1は内部に液体99を収納するものであって、本体に着脱可能な交換用のカートリッジである。この液体収納容器1においては、剛性の下ケース10の上面側に剛性の上ケース20が組み合わせられ、下ケース10と上ケース20によって内部空間が形成され、その内部空間が可撓性袋40によって上下に分けられている。
【0019】
下ケース10の上側が凹んだ状態に設けられ、これにより下ケース10が上面側で開口した箱状に設けられている。上ケース20の下側が凹んだ状態に設けられ、これにより上ケース20が下面側で開口した箱状に設けられている。下ケース10及び上ケース20は、ポリプロピレン、ポリカーボネートといった樹脂又はアルミニウム、マグネシウムといった金属で形成されている。
【0020】
可撓性袋40は、二枚の可撓性シート41,42を重ねてこれらの縁部分を接合して袋状にしたものである。可撓性シート41,42の接合は例えば溶接、溶着又は接着によるものである。なお、一枚の可撓性シートを二つ折りにして、その縁部分を接合して袋状にし、それを可撓性袋40として用いてもよい。
【0021】
可撓性シート41,42には、ポリエチレン、ナイロン、アルミ等が積層されてなるラミネートフィルムを用いる。なお、他の素材のシートを可撓性シート41,42に用いてもよい。
【0022】
可撓性袋40には液体99が収納され、可撓性袋40内が液体99によって充填されている。可撓性袋40は、つまり、可撓性シート41,42は、伸縮性を有してもよいし、伸縮性を有していなくてもよい。可撓性シート41,42が伸縮性を有している場合、可撓性袋40内に液体99が充填されているときには、可撓性シート41,42が伸張して可撓性袋40が膨張している。一方、可撓性シート41,42が伸縮性を有していない場合、可撓性袋40内に液体99が充填されているときには、可撓性シート41,42が殆ど伸張せずに可撓性袋40が膨張している。
【0023】
可撓性袋40の縁部分、つまり、可撓性シート41,42の接合された部分には、開口45,46が形成されている。開口45,46は、切欠きであってもよいし、穴であってもよい。開口45,46が可撓性袋40の内側に至っていないので、可撓性袋40内の液体99が開口45,46より漏れることはない。
【0024】
可撓性シート41,42の縁部分は一部を除いて全周にわたって接合され、その接合されていない部分が液体取出口43となる。液体取出口43には管材44が差し込まれ、この管材44が可撓性袋40に取り付けられている。液体取出口43は、開口45,46から離れた位置にある。
【0025】
管材44には一方向弁が栓として取り付けられていてもよい。一方向弁は可撓性袋40の内側から液体取出口43を通って外に向かった液体の流れを阻止するものであり、一方向弁が強制的に開かれることによって可撓性袋40の内側の液体が外に向かって流れ得る。具体的には、一方向弁は、可撓性・弾性を有する材料をダックビル状に形成したダックビル弁であり、この一方向弁はそのダックビル状の先端を可撓性袋40の内側に向けた状態で管材44に嵌め込まれている。
【0026】
上ケース20の周壁21と下ケース10の周壁11が突き合わせられ、周壁21と周壁11の間に可撓性袋40の縁部分が挟まれて、上ケース20と下ケース10が接合されている。可撓性袋40の縁部分が全周にわたって上ケース20の周壁21と下ケース10の周壁11との間に挟まれていてもよいし、可撓性袋40の縁部分の一部が上ケース20の周壁21と下ケース10の周壁11との間に挟まれていてもよい。可撓性袋40の縁部分が全周にわたって上ケース20の周壁21と下ケース10の周壁11との間に挟まれていれば、可撓性袋40の位置がずれずに安定する。可撓性袋40の縁部分の一部が上ケース20の周壁21と下ケース10の周壁との間に挟まれている場合、液体取出口43が設けられている部分(辺)とその反対側の部分(辺)が周壁11,21の間に挟まれていれば、可撓性袋40の位置がずれずに安定する。
【0027】
上ケース20と下ケース10の接合は、例えばネジ、爪又は接着剤によるものである。図1では、接着剤50によって上ケース20と下ケース10が接合されている。そして、この接着剤50が周壁11,21の全周にわたってこれらの隙間に充填されているので、接着剤50が液体と気体の外部への漏洩を防ぐシール材として機能する。
【0028】
管材44が下ケース10の周壁11と上ケース20の周壁21との間に挟まれている。管材44が塞がれていないので、液体取出口43が上ケース20と外ケース10の組み体の外面で開口している。
【0029】
上ケース20と下ケース10の組み体による内部空間は、可撓性袋40によって、上ケース20側の室23と下ケース11側の室13に区分けされている。可撓性袋40の縁部分に形成された開口45,46の一部又は全体が周壁11,21よりも内側に配設され、室13,23が開口45,46によって通じている。そのため、開口45,46が連通路となっている。開口45,46が、後述する気液分離膜70と同じもしくは同等機能の膜47,48によって閉塞されている。なお、膜47,48がなくてもよい。
【0030】
下ケース10の周壁11には、インレットポート14が設けられている。このインレットポート14は、下側の室13に通じている。
【0031】
下ケース10の周壁11であって下ケース10の底近傍には、アウトレットポート15が設けられている。アウトレットポート15は、下ケース10の底近傍において下側の室13に通じている。
【0032】
室13内には吸収体60が配設されている。具体的には、下ケース10の底に吸収体60が貼着されている。吸収体60はその毛管力により液体を吸収し得るものである。吸収体60は、親水性を有するスポンジであって、具体的にはポリウレタン発泡体である。吸収体60は予め圧縮された状態で室13内の底に配設されている。
【0033】
室13内であってアウトレットポート15近傍には、化学フィルタ65が設けられている。具体的には、化学フィルタ65は、室13内においてアウトレットポート15を閉塞するように設けられている。また、化学フィルタ65は吸収体60に接触している。化学フィルタ65は、液体に含まれる不純物(例えば、イオン化した電解質)を吸着することで不純物を除去し、液体を純化する機能を有する。化学フィルタ65は、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とで構成されたイオン交換樹脂である。
なお、化学フィルタ65がなく、吸収体60がアウトレットポート15を塞ぐように室13内に配設されていてもよい(図3参照)。こうすれば、吸収体60に吸収された液体がアウトレットポート15から排出されやすい。
【0034】
上ケース20の上面であってインレットポート14、アウトレットポート15、液体取出口43から離れた位置には、排気口25が形成され、この排気口25が室23に通じている。排気口25に気液分離膜70が設けられ、排気口25が気液分離膜70によって閉塞されている。気液分離膜70は気体を透過する性質と、液体を遮蔽する性質とを併せ持つ。気液分離膜70は、例えば、ポリテラフルオロエチレン(PTFE)の多孔質膜である。
【0035】
この液体収納容器1の使用方法について説明する。
初期には、可撓性袋40内に液体99が満たされており、可撓性袋40が膨張している。また、吸収体60が圧縮されている。
【0036】
液体収納容器1を本体に装着すると、本体に設けられた管等が液体取出口43に挿入される。液体取出口43に一方向弁が設けられている場合には、その管等が一方向弁に差し込まれ、一方向弁が強制的に開かれる。また、本体に設けられたポートがインレットポート14、アウトレットポート15にそれぞれ接続される。
【0037】
そして、可撓性袋40内の液体99が液体取出口43を通って流れ出て、本体に供給される。可撓性袋40内の液体99が減少していくと、可撓性袋40が収縮し、可撓性袋40内の容積が減っていく。
【0038】
一方、可撓性袋40内の液体99が減少する過程で、蒸気を含むガス及び液体等が本体からインレットポート14を通って室13に送り込まれる。室13に送り込まれるガスや液体の圧力によって可撓性袋40が圧縮され、可撓性袋40内の液体99が効率よく減少し、可撓性袋は均一に収縮していく。
【0039】
また、室13内に送り込まれた液体及びそれに含まれる微粒子(例えば、カーボン粉などの固形物)が吸収体60の毛管力によって吸収体60に吸収される。液体等が吸収体60に吸収されることで、吸収体60が膨張する。吸収体60が予め圧縮されていたので、可撓性袋40内の液体99の消費に伴う可撓性袋40の体積変化に応じて、吸収体60自体が膨張できる。
【0040】
吸収体60に吸収された液体は化学フィルタ65に浸透し、化学フィルタ65では、液体中のイオン成分が除去される。そして、純化した液体がアウトレットポート15を通って流れ出て、本体に供給される。具体的には、本体側にポンプが設けられ、吸収体60に吸収された液体がそのポンプによって化学フィルタ65及びアウトレットポート15を通過して、本体に供給される。
【0041】
以上のように室13に送られた液体が吸収体60に吸収されるが、吸収体60に吸収されなかった少量の液体やガス等は開口45,46を通って室23に至る。ここで、液体は気液分離膜70を透過せず、ガスが気液分離膜70を透過して、外部に排出される。
【0042】
室13内に液体が貯留されるが、液体99の消費に伴って室13の容積が増える上、吸収体60に吸収された液体がアウトレットポート15を通じて本体に供給されるから、室13内の液体が溢れることなく、安全に長時間連続してシステムを駆動することができる。
【0043】
以上のように、本実施形態によれば、可撓性袋40が剛体の上ケース20と剛体の下ケース10の組み体内にあるので、可撓性袋40が保護される。
また、上ケース20と下ケース10の組み体が剛性であるから、単なる可撓性袋と比較して取り扱いが容易であり、本体への液体収納容器1の装着・組み付けを容易に行うことができる。
また、可撓性袋40の縁部分を上ケース20と下ケース10の縁部分に挟み込むという簡単な組み立て工程で、液体収納容器1を作成することができる。
【0044】
また、可撓性袋40の縁部分が上ケース20と下ケース10の組み体の内面に接合されているので、液体99が減少する過程で可撓性袋40が均一に収縮する。可撓性袋40内の液体99を使い切ることができる。つまり、可撓性袋40の一部が極端に収縮しないので、その部分に液体99が残留するといったことが起こりにくい。特に、その効果は、可撓性袋40が重ねられた二枚のシート41,42からなるものであることによって相乗する。
【0045】
また、可撓性袋40の縁部分が挟まれることで、可撓性袋40の位置が安定するから、可撓性袋40によって各種の流路や穴(例えば、インレットポート14、アウトレットポート15、排気口25)が塞がれることを防止することができる。
【0046】
また、上ケース20と下ケース10の組み体の内部空間が可撓性袋40によって上下に分けられたので、その内部空間を各種の用途に利用することができる。具体的には、液体99とは別の液体を貯留するのに室13を用いることができる。一方、室13に対して仕切られた室23があるので、室23には液体が流入しにくく、気液分離膜70の液体透過を防止するために室23を用いることができる。
【0047】
また、可撓性袋40内に液体99が充填され、液体99が減少してもガスが可撓性袋40内に入り込まないから、液体収納容器1の向きに関わらず、液体99が液体取出口43から排出される。また、室13内に貯留された水は吸収体60に吸収されるから、液体収納容器1の向きにかかわらず、液体がアウトレットポート15から排出される。
【0048】
また、室13と室23は開口45,46によって通じているだけだから、室13内に貯留された液体が室23へ移動しにくく、液体が排気口25から外に漏れにくい。特に、開口45,46が気液分離膜によって閉塞されていると、その効果はさらに強化される。
また、開口45,46がインレットポート14から離れた位置に設けられているから、室13に導入された液体が開口45,46に達する前に、確実に吸収体60に吸収される。
【0049】
なお、可撓性袋40の縁部分が両ケース10,20に挟持されることによって、可撓性袋40の縁部分が両ケース10,20の組み体の内面に接合されているが、他の構成(例えば、接着、溶着、溶接等)により可撓性袋40の縁部分が両ケース10,20の組み体の内面に接合されていてもよい。
【0050】
また、図2の変形例として図4に示すように、可撓性袋40の縁部分に開口45,46を形成せずに、上ケース20及び下ケース10の内面に溝51,52が上下方向に形成されていてもよい。溝51,52は可撓性袋40の縁部分によって塞がれていないうえ、接着剤50が溝51,52に埋め込まれていない。上ケース20と下ケース10の組み体の内面に上下の溝51,52が形成されているので、室13と室23が溝51,52によって通じ、溝51,52が連通路になっている。溝51,52が気液分離膜によって塞がれていてもよいし、塞がれていなくてもよい。
【0051】
また、外容器が二つのケース20,10の組み体であったが、三つ以上のケースの組み体であってもよい。例えば、上ケース20が更に複数のケースに分割され、これらが組み合わせられることで上ケース20が構成され、下ケース10が複数のケースに分割され、これらが組み合わせられることで下ケース10が構成されてもよい。
【0052】
また、液体収納容器1の用途は特に限定されるものではない。例えば、液体99が液体燃料(例えば、メタノール)若しくは水又はこれらの混合液である場合、液体収納容器1を小型燃料電池システムに用いることができる。液体99がインクである場合、液体収納容器1をインクジェットプリンタに用いることができる。
【0053】
〔応用例〕
液体99が液体燃料(例えば、メタノール、もしくはメタノール水溶液)である場合に、この液体収納容器1を用いた燃料電池システムの例について説明する。
【0054】
図5は、液体収納容器1を用いた燃料電池システム100を示したブロック図である。この燃料電池システム100は携帯電話機、ノート型パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、PDA(Personal Digital Assistance)、電子手帳等といった小型電子機器に搭載されている。この燃料電池システム100は液体収納容器1に貯留された液体99を用いて発電を行うものであり、燃料電池システム100で発電した電力によって電子機器本体が動作する。
【0055】
液体収納容器1が交換品であり、液体収納容器1が燃料電池システム100の本体に対して着脱可能とされており、液体99を消費したら、新たな液体収納容器1を用いる。
【0056】
燃料電池システム本体101には、燃料供給ポート102、排出ポート103及び水供給ポート104が設けられている。液体収納容器1が燃料電池システム100の本体に装着されると、燃料供給ポート102が液体取出口43に接続される。また、排出ポート103はインレットポート14に接続され、水供給ポート104はアウトレットポート15に接続される。
【0057】
燃料供給ポート102にはポンプ105が接続され、可撓性袋40内の液体99がポンプ105によって送液される。ポンプ105の下流に気化器106が設けられている。そのため、可撓性袋40内の液体99が気化器106に送られる。
【0058】
水供給ポート104の下流にはポンプ107が接続されている。ポンプ107の下流に気化器106が設けられている。そのため、吸収体60に吸収された水が化学フィルタ65を介してポンプ107に吸引され、気化器106に送られる。水が化学フィルタ65を透過する際に、水の中の不純物が化学フィルタ65に吸着することで、水が純水化される。気化器106には、液体燃料である液体99と水が適正な割合で混合された液体が流れ込む。
【0059】
気化器106では、水と液体99の混合液が気化される。気化器106で気化した燃料と水の混合気が改質器108に送られる。
【0060】
改質器108では、燃料と水から水素等が触媒により生成される。液体99がメタノールである場合、改質器108では次式(1)に示すような主反応である水蒸気改質反応が起こる。
CH3OH+H2O→3H2+CO2 …(1)
【0061】
また、化学反応式(1)についで逐次的に起こる次式(2)のような副反応によって、副生成物として一酸化炭素が微量に(1%程度)生成される。
2+CO2→H2O+CO …(2)
【0062】
(1)式及び(2)式の反応による生成物が改質器108から一酸化炭素除去器109に送出される。また、一酸化炭素除去器109には外部の空気がエアポンプ110によって供給される。
【0063】
一酸化炭素除去器109には、生成物と空気が混合されたものが投入される。一酸化炭素除去器109は、生成物のうち一酸化炭素を触媒により優先的に酸化させ(式(3)参照)、一酸化炭素を除去するものである。
2CO+O2→2CO2 …(3)
【0064】
一酸化炭素除去器109を経て得られた生成物が燃料電池111のアノードに供給される。一方、エアポンプ110によって吸引された空気は燃料電池111のカソードに供給される。
【0065】
燃料電池111は固体高分子型燃料電池である。つまり、燃料電池111は、セパレータ、アノード、固体高分子電解質膜、カソード、セパレータの順に積層したものである。燃料電池111のアノード側では、一酸化炭素除去器109から送出された生成物中の水素による次式(4)のような反応が起こり、生成した水素イオンが固体高分子電解質膜を透過して酸素極に到達する。
2→2H++2e- …(4)
一方、燃料電池111のカソードでは、固体高分子電解質膜を透過した水素イオンと、空気中の酸素と、電子とにより、次式(5)に示すように水が生成される。
2H++1/2O2+2e-→H2O …(5)
以上により、燃料電池111にて発電が行われる。燃料電池111で生成された電気は二次電池に充電されたり、電子機器の各部に供給されたりする。
【0066】
燃料電池111のアノードではすべての水素が反応するわけでなく、未反応の水素も存在する。その水素は他の生成物とともに触媒燃焼器112に送られる。一方、外部の空気がエアポンプ110によって触媒燃焼器112に送られる。
【0067】
触媒燃焼器112には、燃料電池111のアノードから送られた生成物と空気が混合されたものが投入される。触媒燃焼器112は、水素を触媒により燃焼するものである。触媒燃焼器112で水素燃焼が生じ、その燃焼熱は小型反応装置内に配置されている気化器106、改質器108及び一酸化炭素除去器109の加熱に利用される。
【0068】
触媒燃焼器112で生じた水及び燃料電池111のカソードで生成された水は、残留ガスと共に熱交換器113に送られる。熱交換器113は、供給されたガスと外気との間で熱の交換を行うことで残留ガスの中に含まれる水蒸気を冷却し、凝縮させて水を液化するものである。熱交換器113で液化した水、残留ガスとその他の生成物が熱交換器113から排出ポート103及びインレットポート14を通って室13内に送り込まれる。そして、室13では液体が吸収体60に吸収される。気体の生成物等は気液分離膜70を透過して、外部に排出される。
【0069】
なお、液体収納容器1を燃料直接型の燃料電池システムや、液体燃料を用いる固体酸化物型燃料電池システムにも用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態における液体収納容器を示した縦断面図である。
【図2】上記液体収納容器を示した横断面図である。
【図3】上記液体収納容器に対して一部変更した液体収納容器を示した縦断面図である。
【図4】上記液体収納容器に対して一部変更した液体収納容器を示した縦断面図である。
【図5】上記液体収納容器を用いた燃料電池システムの構成を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0071】
1 液体収納容器
10 下ケース
14 インレットポート
15 アウトレットポート
20 上ケース
25 排気口
40 可撓性袋
41 可撓性シート
42 可撓性シート
43 液体取出口
45、46 開口
47、48 膜
51、52 溝
60 吸収体
65 化学フィルタ
70 気液分離膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のケースが組み合わせられて内部空間を形成してなる組み体と、
重ねられた二枚の可撓性シート又は二つ折りにされた可撓性シートの縁部分が接合されてなり、前記縁部分が前記組み体の内面に接合され、前記組み体の内部空間を二つの室に区切り、液体を収納する可撓性袋と、
前記可撓性袋に設けられ、前記可撓性袋内から前記組み体の外に通じた取出口と、
前記組み体に設けられ、前記二つの室のうち一方の室から前記組み体の外に通じたポートと、
前記組み体に設けられ、前記二つの室のうち他方の室から前記組み体の外に通じた排気口と、
前記組み体の内側に設けられ、前記二つの室に通じた連通路と、を備えることを特徴とする液体収納容器。
【請求項2】
前記可撓性袋の縁部分が前記ケースに挟持されていることによって、前記可撓性袋の縁部分が前記組み体の内面に接合されていることを特徴とする請求項1に記載の液体収納容器。
【請求項3】
前記組み体に設けられ、前記一方の室から前記組み体の外に通じた第2のポートと、
前記一方の室内に配設され、前記第2のポートを塞いだイオン交換樹脂と、を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体収納容器。
【請求項4】
前記一方の室内に配設され、前記イオン交換樹脂に接触した吸収体を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の液体収納容器。
【請求項5】
前記組み体に設けられ、前記一方の室から前記組み体の外に通じた第2のポートと、
前記一方の室内に配設された吸収体と、を更に備えることを特徴とする請求項1又は2の何れか一項に記載の液体収納容器。
【請求項6】
前記吸収体が前記第2のポートを塞ぐことを特徴とする請求項5に記載の液体収納容器。
【請求項7】
前記連通路は、前記可撓性袋の縁部分に形成され且つ前記組み体の内部空間に配設された開口であることを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の液体収納容器。
【請求項8】
前記連通路は、前記組み体の内面に形成された溝であることを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の液体収納容器。
【請求項9】
前記排気口を塞いだ気液分離膜を更に備えることを特徴とする請求項1から8の何れか一項に記載の液体収納容器。
【請求項10】
前記連通路を塞いだ気液分離膜を更に備えることを特徴とする請求項1から9の何れか一項に記載の液体収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−154882(P2009−154882A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331904(P2007−331904)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】