説明

液体吐出ヘッドユニット及び画像形成装置

【課題】樹脂材料からなる分配タンクのタンクケース内に空気が浸透する。
【解決手段】分配タンク54は、内部に仕切り部201aを有し、両側に開口部を有する樹脂材料からなるヘッド配列方向と直交する方向の断面が矩形状であるタンクケース201を備え、このタンクケース201の両側の開口部を含む周面(ヘッド配列方向と直交する方向の側面及びヘッド取り付け面と反対側の面)全体を1枚のシート部材である可撓性を有するガスバリアフィルム202で覆うことで、内部に一面が可撓性のフィルム202で形成された流路(収容部)203a、203bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッドユニット及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、液体吐出記録方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0004】
特に、ライン型画像形成装置(以下、単に「インクジェット記録装置」ともいう。)において、複数のヘッドを並べて構成した記録ヘッドと、記録ヘッドの各ヘッドにインクを分配供給する分配タンクとを備えるものが知られている。
【0005】
従来、液体収納容器として、負圧を与えるためのバネを有し、且つ変形可能なシートと該シートを固定させ、形状を保持するためのフレームと外部にインクを供給するための液体供給口を有する、インクを貯蔵するための液体収納容器であって、フレームの外側表面は、ガスバリア性の優れた材料で保護されているものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−53992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したライン型画像形成装置にあっては、例えば、メインタンクから供給されたインクは、サブタンク、ディストリビュータ(分配タンク)を経て、各ヘッドに供給され、ヘッドの上流側にはフィルタが設置されてインク中の不純物をろ過してヘッドに供給する。
【0008】
ここで、ヘッドのノズルは非常に微細(例えばφ24μm)であり、インク内の溶存酸素量が高いと酸素が徐々にたまり、吐出不良を発生するおそれがあることから、インク供給経路内のインク中に空気が入り込まないように、タンク等の材質は、ガスバリア性が高い材料で形成される。
【0009】
例えば、メインタンクやサブタンクはアルミパック、各タンクをつなぐ経路は、EVOHを含む三層構造のガスバリア性が高いチューブが使用される。また、分配タンクは、主に、ポリエチレンで形成され、吐出時の圧力変動を吸収するためにその側面にはフィルムが溶着されている。このフィルムも、EVOHや、NYを含む三層構造のガスバリア性が高いものが使用されている。
【0010】
上述したように、分配タンクには、吐出時の圧力変動や、外部振動による圧力変動を吸収するためのダンパ機能、スプリングを内部に設置して負圧形成をする機能等を持たせるために可撓性のフィルムで壁面の一部を形成するようにしている。
【0011】
この場合、可撓性フィルを設けるには、接着、ネジ止めなどの方法があるが、接着は、強度不足やインクとの相性で使用できなかったり、経時的に剥がれてしまったりするおそれがあり、ネジ止めは、リークの可能性や、ネジの設置部分が大きくなってタンクが大型かすることになる。そのため、フィルムをタンクケースに溶着するようにしているが、溶着は同種の材料でなければ適用できない。
【0012】
そこで、分配タンクのタンク本体(タンクケース)は、主に耐溶剤性の高いポリエチレンや、ポリプロピレンが使用されている。例えば、タンクケースがPEであるときには、PE/アルミナ/NY、あるいは、PE/EVOH/NYの三層構造フィルムなどを、、タンクケースがPPであるときには、PP/シリカ/PET、あるいは、PP/EVOH/NYなどの三層構造フィルムを使用するというように、EVOH、NY、PETなどのガスバリア性の高い材料を含んだ三層構造のフィルムを使用することで、PE同士、あるいはPP同士を合せて170度〜250度程度の加熱を行うことで溶着している。
【0013】
このように、分配タンクの材料としてのポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)はガスバリア性が低く、EVOHやNYと同等のガスバリア性を得るためには、その厚さを30mm以上にする必要があるが、対溶剤性が高く、ガスバリア性の高い三層構造のフィルムを設置(溶着)しやすいことからこれらの材料が使用されている。
【0014】
しかしながら、分配タンクのタンクケースをPEやPPで形成していることから、ガスバリア性が低い、つまり、内部に空気が浸透することになるという課題は残っている。
【0015】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で、分配タンクのガスバリア性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出する複数のヘッドと、
前記複数のヘッドに液体を分配して供給する樹脂材料からなる分配タンクと、を備え、
前記分配タンクの外周面は、前記樹脂材料よりもガスバリア性の高いシート部材で覆われ、
前記シート部材で覆わせている面積が前記シート部材覆われていない面積よりも広い
構成とした。
【0017】
ここで、前記分配タンクはヘッド配列方向と直交する方向の断面形状が矩形状であり、前記分配タンクの前記ヘッドと接続する面以外の面が前記シート部材で覆われている構成とできる。
【0018】
また、前記分配タンクはヘッド配列方向と直交する方向の断面形状が三角形状であり、前記分配タンクの前記ヘッドと接続する面以外の面が前記シート部材で覆われている構成とできる。
【0019】
また、前記分配タンクはヘッド配列方向と直交する方向の断面形状が半円形又は半楕円形状であり、前記分配タンクの前記ヘッドと接続する面以外の面が前記シート部材で覆われている構成とできる。
【0020】
本発明に係る液体吐出ヘッドユニットは、
液滴を吐出する複数のヘッドと、
前記複数のヘッドに液体を分配して供給する樹脂材料からなる分配タンクと、を一体にし、
前記分配タンクの外周面は、前記樹脂材料よりもガスバリア性の高いシート部材で覆われ、
前記シート部材で覆わせている面積が前記シート部材覆われていない面積よりも広い
構成とした。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る画像形成装置、液体吐出ヘッドユニットによれば、分配タンクは樹脂材料で形成され、分配タンクの外周面は、樹脂材料よりもガスバリア性の高いシート部材で覆われ、シート部材で覆わせている面積がシート部材覆われていない面積よりも広い構成としたので、簡単な構成で分配タンクのガスバリア性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の全体構成を説明する概略構成図である。
【図2】同装置の模式的平面説明図である。
【図3】同装置のインク供給系の説明に供する説明図である。
【図4】本発明の第1実施形態におけるヘッドユニットの側面説明図である。
【図5】図4のA−A線に沿う断面説明図である。
【図6】タンクケースの斜視説明図である。
【図7】タンクケースへのフィルムの溶着の説明に供する説明図である。
【図8】本発明の第2実施形態におけるヘッドユニットの側面説明図である。
【図9】図8のB−B線に沿う断面説明図である。
【図10】タンクケースの斜視説明図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る画像形成装置の模式的平面説明図である。
【図12】同装置のインク供給系の説明図である。
【図13】本発明の第3実施形態におけるヘッドユニットの側面説明図である。
【図14】図13のC−Cに沿う断面説明図である。
【図15】タンクケースの斜視説明図である。
【図16】本発明の第4実施形態におけるヘッドユニットの側面説明図である。
【図17】図16のD−D線に沿う断面説明図である。
【図18】タンクケースの斜視説明図である。
【図19】本発明の第5実施形態におけるヘッドユニットの側面説明図である。
【図20】図19のE−E線に沿う断面説明図である。
【図21】タンクケースの斜視説明図である。
【図22】本発明の第6実施形態におけるヘッドユニットの側面説明図である。
【図23】図22のF−F線に沿う断面説明図である。
【図24】タンクケースの斜視説明図である。
【図25】本発明の第7実施形態の異なる例における分配タンクの断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を説明する概略構成図、図2は同装置の模式的平面説明図である。
【0024】
この画像形成装置はライン型画像形成装置であり、装置本体1と、用紙Pを積載し給紙する給紙トレイ2と、印刷された用紙Pを排紙積載する排紙トレイ3と、用紙Pを給紙トレイ2から排紙トレイ3まで搬送する搬送ユニット4と、搬送ユニット4によって搬送される用紙Pに液滴を吐出し印字する記録ヘッドを構成するヘッドユニット51を含む画像形成ユニット5と、印刷終了後又は所要のタイミングで画像形成ユニット5の各記録ヘッドの維持回復を行う維持回復機構であるヘッドクリーニング装置6と、ヘッドクリーニング装置6を開閉する搬送ガイド部7と、画像形成ユニット5にインクを供給するサブタンクで構成されるインクタンクユニット8と、インクタンクユニット8にインクを供給するメインタンクユニット9とを備えている。
【0025】
装置本体1は、図示しない前後側板及びステーなどで構成されており、給紙トレイ2上に積載されている用紙Pは、分離ローラ21及び給紙ローラ22によって1枚ずつ搬送ユニット4に給紙される。
【0026】
搬送ユニット4は、搬送駆動ローラ41Aと搬送従動ローラ41Bと、これらのローラ41A、41B間に掛け回された無端状の搬送ベルト43とを備えている。この搬送ベルト43の表面には複数の図示しない吸引孔が形成されており、搬送ベルト43の下部には用紙Pを吸引する吸引ファン44が配置されている。また、搬送駆動ローラ41A、搬送従動ローラ41B上部には、それぞれ搬送ガイドローラ42A、42Bが図示しないガイドに保持されて、自重にてベルト43に当接している。
【0027】
搬送ベルト43は、搬送駆動ローラ41Aが図示しないモータにより回転されることで周回移動し、用紙Pは搬送ベルト43上に吸引ファン44により吸い付けられ、搬送ベルト43の周回移動によって搬送される。なお、搬送従動ローラ41B、搬送ガイドローラ42A、42Bは搬送ベルト43に従動して回転する。また、搬送ベルト43の下側には空吐出で搬送ベルト43に付着した空吐出滴を除去する空吐出クリーニング装置45が配置されている。
【0028】
搬送ユニット4の上部には用紙Pに印字する液滴を吐出する複数のヘッドユニット51で構成される画像形成ユニット5が矢示A方向(及び逆方向)に移動可能に配置されている。この画像形成ユニット5は、維持回復動作時(クリーニング時)にはクリーニング装置6上方まで移動され、画像形成時には図1の位置に戻される。
【0029】
画像形成ユニット5は、液滴を吐出する複数のヘッド101と各ヘッド101にインクを分配供給する分配タンク54を一体化(一体化とは直接固定されること及びチューブなどで接続されていることのいずれも含む。)した本発明に係る液体吐出ヘッドユニット(以下「ヘッドユニット」という。)51A、51B、51C、51Dが、用紙搬送方向に沿って並べてラインベース部材(ヘッド連結部材)52に取付けられて配置されている。
【0030】
ここでは、ヘッドユニット51A、51Bの2つのノズル列の一方でイエロー(Y)の液滴を、他方でマゼンタ(M)の液滴を吐出し、また、ヘッドユニット51C、51Dの2つのノズル列の一方でシアン(C)の液滴を、他方でブラック(K)の液滴を吐出する。つまり、この画像形成ユニット5は、同じ色の液滴を吐出する2つのヘッドユニット51が用紙搬送方向に並べて配置され、2つのヘッドユニット51で用紙幅相当の1列分のノズル列が構成されている構成としている。
【0031】
そして、ヘッドユニット51の分配タンク54の上流側にはサブタンク81が配置されて供給チューブ82を介して接続されている。サブタンク81には上流側には、インクを貯蔵するメインタンク91が配置され、メインタンク91とサブタンク81とは供給チューブ92による供給経路にて接続されている。
【0032】
搬送ユニット4の下流側には用紙Pを排紙トレイ3に排紙する搬送ガイド部7が設けられている。搬送ガイド部7にて案内されて搬送される用紙Pは排紙トレイ3に排紙される。排紙トレイ3は、用紙Pの幅方向を規制する対のサイドフェンス31と用紙Pの先端を規制するエンドフェンス32を備えている。
【0033】
維持回復機構(ヘッドクリーニング装置)6は、画像形成ユニット5の各ヘッドユニット51に対応して、4列分のクリーニング手段61A〜61Dが配置され、1つのクリーニング手段61は、ヘッドユニット51の各ヘッド101に対応してノズル面をキャッピングするキャップ部材62及びノズル面を払拭するワイピング部材(ワイパ部材)64などで構成されている。なお、各クリーニング手段61のキャップ部材62は各列毎に独立して上下動させることができる構成としている。さらに、クリーニング手段61の下方には、キャップ部材62でヘッド101のノズル面をキャッピングした状態でノズルからインクを吸引するための吸引手段である吸引ポンプ63A〜63Dが配置されている。
【0034】
また、この画像形成装置においては、印刷終了後、液滴を吐出するヘッドユニット51の各ヘッド101のノズル面をクリーニング手段61でキャッピングした状態でノズルからインクを吸引する場合、あるいは、ヘッドユニット51の各ヘッド101のノズル面に付着したインクをワイピング部材で清掃する場合は、図1にも示すように、印刷停止後、搬送ユニット4全体が搬送従動ローラ41Bを支点に矢印B方向に回動し、画像形成ユニット5との間の空間を画像形成時よりも大きくすることで、画像形成ユニット5の移動スペースを確保するようにしている。このとき、ヘッドクリーニング装置6上部に配置されている搬送ガイド部7の搬送ガイド板71も支点72にて矢印C方向上方に回動され、ヘッドクリーニング装置6の上方が開放される。
【0035】
そして、搬送ユニット4と搬送ガイド部7がそれぞれ解放(解除)された後に、画像形成ユニット5が用紙通紙方向(矢示A方向)に移動し、ヘッドクリーニング装置6上方で停止され、クリーニング手段61が上昇して各ヘッドユニット51のクリーニング動作(維持回復動作)に移行する。
【0036】
次に、この画像形成装置のヘッドユニットを含むインク供給系の詳細について図3及び図4を参照して説明する。
サブタンク81とヘッドユニット51の分配タンク54とは供給チューブ82を介して接続され、サブタンク81とヘッド101のノズル面との水頭差(−20〜−70mmAq)によって、ヘッド101のノズルのメニスカスを保持するのに適切な負圧を発生させている。
【0037】
このサブタンク81は、パック式のサブタンクで構成している。すなわち、サブタンク81はインクを収容する可とう性を有するパック83を密閉ケース84内に収納してなる。パック式サブタンクは、インクと大気を直接触れさせないようにして、インクの水分蒸発による粘度上昇を防ぎ、また、インク中の溶存酸素量を一定に保ち、ヘッド101内に気泡が溜まるのを防ぐことができる。
【0038】
このサブタンク81には、パック83とケース84との間を加圧する加圧ポンプ85がチューブなどを介して接続されている。放置後の印刷前に行うメンテナンス動作の時には、加圧ポンプ85でサブタンク81のケース84内を加圧して、インクをヘッド101に送り、ヘッド101のノズルからインクを吐出させてメンテナンスを行うことになる。なお、このメンテナンス動作は画像形成ユニット5がクリーニング装置6の上部に移動してから行われることになる。
【0039】
サブタンク81の上流側にはインクを貯蔵するメインタンク91が配置され、メインタンク91とサブタンク81とは供給チューブ92による供給経路にて接続され、供給径路内には電磁弁93が設けられ、この電磁弁93を開閉制御して、メインタンク91からサブタンク81へのインク供給を制御する。
【0040】
分配タンク54上部には図示しない廃液タンクに通じるエアー排出経路を形成するチューブ155と、エアー排出経路155を開閉する電磁弁156が設けられている。分配タンク54に初期充填するときのエアー抜き、分配タンク54内にエアーが溜まってきたときのエアー抜きを行うときには、電磁弁156を開いてエアーを排出する。
【0041】
なお、メインタンク91、サブタンク81の材質は、アルミパック、各供給チューブ92、82の材質は、PE(内側)/EVOH/ポリウレタンの三層構造のチューブであり、共にガスバリア性が高い材料を使用している。。
【0042】
次に、本発明の第1実施形態における分配タンクについて図4ない図7を参照して説明する。なお、図4はヘッドユニットの側面説明図、図5は図4のA−A線に沿う断面説明図、図6はタンクケースの斜視説明図、図7はタンクケースへのフィルムの溶着の説明に供する説明図である。
【0043】
ヘッドユニット51は、数個のヘッド(この例では5個)101がヘッド連結部材52に固定され、ヘッド101の上にはフィルタ部53を介して分配タンク54が分配タンク固定部材55で固定されている。この分配タンク固定部材55は、図の上下に押し付けるような板バネであり、分配タンク53はヘッド101側に押し付けられて固定される(板バネではなく、ネジ等で固定してもよい。)。
【0044】
分配タンク54は、内部に仕切り部201aを有し、両側に開口部を有する樹脂材料からなるヘッド配列方向と直交する方向の断面が矩形状であるタンクケース201を備え、このタンクケース201の両側の開口部を含む周面(ヘッド配列方向と直交する方向の側面及びヘッド取り付け面と反対側の面)全体を1枚のシート部材である可撓性を有するガスバリアフィルム202で覆うことで、内部に一面が可撓性のフィルム202で形成された流路(収容部)203a、203bが形成されている。
【0045】
そして、収容部203a、203b内には仕切り部201aとフィルム202との間に弾性部材であるバネ204が介装され、フィルム202を外方へ付勢することで、ダンパ機能と負圧発生機能を持たせている。また、タンクケース201の下部にはヘッド101のインク供給口205が形成されている。
【0046】
ガスバリアフィルム202は、図7に示すように内層202a/中間層202b/外層202cの三層構造フイルム、例えばPE/アルミナ/NYの三層構造のフィルムからなる。なお、他のフィルムとしては、PE/EVOH/NY、PP/シリカ/PETなど、EVOH、NY、PETのようなガスバリア性の高い材料を含むものであればよい。また、分配タンク54のタンクケース201の材質は、溶着の関係からフィルム202と同様の材料が好ましく、ここではPE、PP等を使用している。
【0047】
そして、タンクケース201のヘッド配列方向と直交する方向の両側面及び上面(ヘッド取り付け面以外の面)には、図6及び図7に示すように、断面が三角形(幅0.8〜1mm、高さ0.5〜1mm)の溶着リブ206が設けられ、この部分に高温(150〜200℃)の溶着コテで1〜2秒間、上記フィルム202を押し付ける(0.1〜0.2MPa)ことでタンクケース201に溶着させる。
【0048】
このように、この分配タンク54では、樹脂材料からなるタンクケース201のほぼ全面を、当該樹脂材料よりもガスバリア性の高いシート部材である一枚のガスバリアフィルム202で覆うことにより、タンクケース201はフィルム202で覆われている外周面の面積がフィルム202で覆われていない面積よりも広くなる。
【0049】
これにより、分配タンク全体のガスバリア性を高めることができ、樹脂材料からなるタンクケースの表面からの空気の浸透を抑制できる。る。
【0050】
なお、タンクケース201の開口部を覆う可撓性フィルムと上面(ヘッド取り付け面側と反対側の面)を覆うフィルムとを別部材とすることもできる。
【0051】
本発明の第2実施形態における分配タンクについて図8ない図10を参照して説明する。なお、図8はヘッドユニットの側面説明図、図9は図8のB−B線に沿う断面説明図、図10はタンクケースの斜視説明図である。
【0052】
ここでは、タンクケース201をヘッド配列方向と直交する方向の断面で三角形状としたものである。これにより、タンクケース201の樹脂材料(PEなど)が露出している面を少なくすることができ、工程、部品点数を増やすことなく、タンクケース201の表面からの空気の浸透を抑制できる。
【0053】
次に、本発明の他の実施形態に係る画像形成装置について図11及び図12を参照して説明する。なお、図11は同画像形成装置の模式的平面説明図、図12は同装置のインク供給系の説明図である。
【0054】
この画像形成装置の基本的構成は前記実施形態と同様であるが、インク供給系の配置構成を異にしている。メインタンク191は、加圧ポンプ195によりカートリッジケース196内を加圧することでインク袋197内のインクが供給チューブ192及び電磁弁193を介してサブタンク181側に送液される。4色のインクタンク191は、装置の電源投入後、一斉に加圧ポンプ195により所定の圧力で加圧される。
【0055】
サブタンク181は、図示しない検知手段によってインク量が検知され、必要に応じて電磁弁192が開閉してメインタンク191からサブタンク181にインクが供給される。
【0056】
このサブタンク181の上流側にはフィルタ部186が設置されている。ここに、フィルタ部186を設置することで、ヘッド側のフィルタをなくすることができる。
【0057】
つまり、前記第1実施形態では、ヘッド101上に10μmの異物を除去できる(10μmメッシュ)のフィルタ53を配置しているが、この10μmメッシュのフィルタ53は、気泡を通過させにくく、分配タンク54の上部から排出するようにしている。この10μmのフィルタ53が不要になることで、気泡はヘッド101のノズルから排出することができる。つまり、気泡は、メインタンク191を加圧することで、サブタンク181、供給チューブ182、分配タンク54、ヘッド101と順に送られて、ヘッド101のノズルから排出される。
【0058】
ここで、フィルタ186は、下からインクが加圧供給されるため気泡を通過させやすくなっている(インクの加圧、気泡は上昇しやすいという作用を利用したものである。)。なお、ヘッド101側に粗い(例えば20〜100μmのメッシュの)フィルタを設けることもできる。また、ヘッドの内部流路にメッシュ板などのフィルタ部材を配設する構成とすることもできる。
【0059】
このように、フィルタをサブタンクの前に配置することで、分配タンクの大きさを小さくでき、その表面積を小さくできる。その結果、装置サイズも小型化できる。また、ヘッドと分配タンクとの間にフィルタを配置した場合、フィルタ部からの空気の浸透も生じるが、サブタンク側にフィルタを備えることで、フィルタ部における空気の浸透をなくし、あるいは低減でき、結果として供給系全体のガスバリア性を高めることができる。
【0060】
サブタンク181は、ガスバリア性の高いパック、例えばアルミパック183内にスプリング184(板バネなどでもよい)が設置されて、負圧を形成できるようにされている。このようにスプリング方式は、サブタンクとヘッドの位置を規制する水頭差方式ではないため、サブタンク181を適当な場所に配置することができ、装置サイズを小さくできる。
【0061】
また、分配タンク154は、1つに1色のインクが供給されるようにしているが、前記実施形態の画像形成装置と同様に、内部を分割して、1ヘッドで2色にする構成としてもよい。
【0062】
次に、本発明の第3実施形態における分配タンクについて図13ない図15を参照して説明する。なお、図13はヘッドユニットの側面説明図、図14は図13のC−Cに沿う断面説明図、図15はタンクケースの斜視説明図である。
【0063】
ここでは、分配タンク154のタンクケース201は、上面を開放した箱型形状として、タンクケース201の上もガスバリア性の高いフィルム202を溶着している。
【0064】
この分配タンク154は、上部に気泡抜き経路やそのための傾斜を設けていないことから小型化できる。その結果、フィルム202が溶着されていない部分の面積を更に小さくすることができ、ガスバリア性を高めることができる。
【0065】
次に、本発明の第4実施形態における分配タンクについて図16ない図18を参照して説明する。なお、図16はヘッドユニットの側面説明図、図17は図16のD−D線に沿う断面説明図、図18はタンクケースの斜視説明図である。
ここでは、分配タンク154のタンクケース201は、上部部分の厚みを他の部分よりも厚くしている。なお、タンクケース201内にスプリング支持部材207が配設されている。
【0066】
ここでも、分配タンク154上部に気泡抜き経路やそのための傾斜を設けていないことから小型化できる。その結果、フィルム202が溶着されていない部分の面積を更に小さくすることができ、ガスバリア性を高めることができる。また、フィルム202が溶着されていない部分の樹脂材料(PEあるいはPP)の部分の厚みを増すことで、フィルム202で覆わないでも、ガスバリア性を高めることができる。
【0067】
次に、本発明の第5実施形態における分配タンクについて図19ない図21を参照して説明する。なお、図19はヘッドユニットの側面説明図、図20は図19のE−E線に沿う断面説明図、図21はタンクケースの斜視説明図である。
【0068】
ここでは、分配タンク154のタンクケース201は、ヘッド配列方向と直交する方向の断面において蒲鉾形状をなし、内部にはフィルム202を支持する支柱部215がヘッド配列方向に沿って設けられ、上部がガスバリア性の高いフィルム202で覆われている。なお、内部にスプリングを配設してダンパ効果を高めることもできる。
【0069】
次に、本発明の第6実施形態における分配タンクについて図22ない図24を参照して説明する。なお、図22はヘッドユニットの側面説明図、図23は図22のF−F線に沿う断面説明図、図24はタンクケースの斜視説明図である。
【0070】
ここでは、分配タンク154は、前記第2実施形態と同様にヘッド配列方向と直交する方向の断面において蒲鉾形状をなしているが、天面側が傾斜面となっていない点で前記第2実施形態と異なり、また、内部には、内部にはフィルム202を支持する支柱部215がヘッド配列方向に沿って設けられ、上部がガスバリア性の高いフィルム202で覆われている。なお、内部にスプリングを配設してダンパ効果を高めることもできる。
【0071】
次に、本発明の第7実施形態の異なる例における分配タンクについて図25を参照して説明する。なお、図25は図5と同様な断面説明図である。
図25(a)の例では、分配タンク54のタンクケース201の上部201cの外周形状を円弧状に形成している。これにより、タンクケース201の三面を1枚のフィルム202で覆うときに各収容部203a、203bの壁面を形成する部分の張力を同じにして貼り易くなる。
【0072】
図25(b)の例では、分配タンク54のタンクケース201の上部201cの外周形状を台形状に形成している。これにより、上記の例と同様に、タンクケース201の周囲を1枚のフィルム202で覆うときに、各収容部203a、203bの壁面を形成する部分の張力を同じにして貼り易くなる。
【0073】
なお、上記実施形態ではライン型画像形成装置に適用した例で説明しているが、シリアル型画像形成装置にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 装置本体
4 搬送ユニット(搬送部)
5 画像形成ユニット
6 クリーニング装置(維持回復機構)
7 搬送ガイド部
8 サブタンクユニット
9 メインタンクユニット
51 ヘッドユニット
54 分配タンク(分配部材)
81 サブタンク
91 メインタンク(インクカートリッジ)
101 ヘッド
201 タンクケース
201 フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する複数のヘッドと、
前記複数のヘッドに液体を分配して供給する樹脂材料からなる分配タンクと、を備え、
前記分配タンクの外周面は、前記樹脂材料よりもガスバリア性の高いシート部材で覆われ、
前記シート部材で覆わせている面積が前記シート部材覆われていない面積よりも広い
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記分配タンクはヘッド配列方向と直交する方向の断面形状が矩形状であり、前記分配タンクの前記ヘッドと接続する面以外の面が前記シート部材で覆われていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記分配タンクはヘッド配列方向と直交する方向の断面形状が三角形状であり、前記分配タンクの前記ヘッドと接続する面以外の面が前記シート部材で覆われていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記分配タンクはヘッド配列方向と直交する方向の断面形状が半円形又は半楕円形状であり、前記分配タンクの前記ヘッドと接続する面以外の面が前記シート部材で覆われていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
液滴を吐出する複数のヘッドと、
前記複数のヘッドに液体を分配して供給する樹脂材料からなる分配タンクと、を一体にし、
前記分配タンクの外周面は、前記樹脂材料よりもガスバリア性の高いシート部材で覆われ、
前記シート部材で覆わせている面積が前記シート部材覆われていない面積よりも広い
ことを特徴とする液体吐出ヘッドユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−192670(P2012−192670A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59082(P2011−59082)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】