説明

液体吐出ヘッド及びその製造方法。

【課題】積層体の位置合わせの精度が比較的高い。
【解決手段】プレート122上にアクチュエータユニットを接着する際の位置合わせ用のマーカである凹部180a(180b)がプレート122及び123に形成されている。凹部180a(180b)においてプレート123に形成された部分である底部182は、プレート122に形成された部分である貫通孔181を平面視において内部に含むように形成されている。これにより、凹部180a(180b)の開口181aと凹部180a(180b)の内底面182aとを結ぶ仮想線分Aを引いたとき、この仮想線分Aが凹部180a(180b)の内表面181b及び182bと交差することなく開口181aと内底面182aを繋いでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの部材が互いに積層された積層体を有する液体吐出ヘッド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの部材を積層して液体吐出ヘッドを構成する場合、部材同士の位置合わせのためのマークを一方の部材に形成することがある。特許文献1では、部材表面に形成されたアライメントマークをCCDカメラで撮像して認識し、部材同士を位置合わせしている。このアライメントマークは断面が階段状になるように形成されており、一段目の段差面と比べて内側の円穴のエッジには接着剤が付着しにくくなっている。これにより、段差面まで接着剤が達しても円穴のエッジの形状が接着剤によって不明確になることが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−305851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、位置合わせ用のマークが外部から段差面が視認可能に形成されている場合、CCDカメラの撮像に段差面に到達した接着剤が写り込んだ結果、全体として画像が認識されづらくなるおそれがある。画像が認識されないと位置合わせの精度が低下する。
【0005】
本発明の目的は、積層体の位置合わせの精度が比較的高い液体吐出ヘッド及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出ヘッドは、第1の部材が第2の部材に積層された積層体を有する液体吐出ヘッドであって、前記第1の部材が積層された表面である積層表面に開口端縁を有する開口と、前記開口と対向した内底面と、前記内底面の外周縁と前記開口端縁とを結ぶ内表面とによって画定された凹部が前記第2の部材に形成されており、前記内底面が、前記積層体の積層方向から見て前記開口を内部に含み、前記積層方向に沿って前記開口と前記内底面とを結ぶいずれの仮想線分も前記内表面と交差しない。
【0007】
本発明の液体吐出ヘッドによると、凹部が、開口より内底面が大きくなるように形成されており、開口から内底面までの直線経路が凹部の内表面に妨害されることなく形成されている。よって、凹部を撮像した際、特許文献1のようにCCD等による撮像に段差面が写りこんだりしない。また、接着剤等を使用した場合にも、開口よりも大きい内底部にその接着剤等が流れ込むため、画像内に接着剤等が写りこみにくい。これらにより、凹部の開口を画像認識しやすい。
【0008】
また、本発明においては、前記第1の部材と前記第2の部材とが接着剤を介して積層されており、前記積層表面に沿って前記凹部から離隔する方向と交差する方向に延びる第1の溝が、前記開口の近傍に形成されていることが好ましい。これによると、積層表面に接着剤を塗布した際、接着剤が溝に流れ込むので、凹部側に接着剤が侵入するのを抑制できる。
【0009】
また、本発明においては、前記開口は、前記積層体の積層方向から見て円形の開口端縁を有し、前記第1の溝は、前記積層表面において前記開口端縁を全周に亘って囲い、前記開口端縁の中心に関して点対称の外形形状を有していることが好ましい。これによると、第1の溝が全周に亘って形成されているので、塗布した接着剤の開口内への流れ込みが、平面内のいずれの方向においても規制されることになる。これにより、過大な接着剤の流れ込みがなくなる。
【0010】
また、本発明においては、前記第2の部材が、前記積層方向に積層された複数のプレートの積層体から構成され、前記凹部が、複数の前記プレートに跨って形成されていることが好ましい。凹部の底面が鏡面反射することで撮像を解析した際、凹部を認識しにくくなることがある。上記の構成によると、複数のプレートに亘って凹部を形成するため、1枚のプレートのみに形成する場合と比べて深い凹部となるので、撮像した際、内底面での鏡面反射が写りこみにくい。
【0011】
また、本発明においては、前記プレートの少なくともいずれかが金属製であり、前記凹部において前記内底面が、金属製の前記プレートに対するハーフエッチングで形成されていることが好ましい。これによると、ハーフエッチングにより内底面が乱反射しやすくなるため、撮像した際、内底面での鏡面反射が写りこむのを抑制できる。
【0012】
また、本発明においては、前記プレート同士が接着剤を介して積層されており、前記プレートの接着面に沿って前記凹部から離隔する方向と交差する方向に延びる第2の溝が、前記接着面における前記凹部の近傍に形成されていることが好ましい。これによると、プレート同士を接着する際の接着剤が凹部側に侵入するのを抑制できる。
【0013】
また、本発明においては、前記凹部が、2以上の前記プレートにそれぞれ形成された貫通孔を含んでおり、前記貫通孔のそれぞれが、前記積層表面側に配置された他の前記貫通孔を、前記積層方向から見て全て内部に含むように形成されていてもよい。
【0014】
また、本発明においては、前記凹部と当該凹部の近傍に形成された前記第1の溝とが複数組形成されており、一の前記凹部及び第1の溝の組が、前記積層方向に沿った軸に関して回転させると、他の前記凹部及び第1の溝の組と形状が一致するように形成されていることことが好ましい。これによると、凹部及び溝が回転させると互いに一致する形状になっているため、画像認識に必要な参照画像の数を減らすことができる。
【0015】
また、本発明においては、前記第2の部材が、液体を吐出する吐出口が形成された流路ユニットであり、前記流路ユニットにおいて、前記吐出口が形成された表面とは反対側の表面が前記積層表面であることが好ましい。これによると、吐出口とは反対側の表面に凹部が開口しており、貫通孔ではなく凹部として形成されているため、吐出口から吐出された液体が積層表面側に侵入してくるのを抑制できる。
【0016】
別の観点では、本発明の液体吐出ヘッドは、第1の部材が第2の部材に積層された液体吐出ヘッドであって、前記第2の部材が、互いに積層された複数枚のプレートからなる積層体を有しており、前記積層体において前記第1の部材と最も近接したプレートには、当該プレートの一方の表面から他方の表面に向かって施されたエッチング処理によって蝕刻された第1の部分と、当該プレートの他方の表面から一方の表面に向かって施されたエッチング処理によって蝕刻された第2の部分とが連結した貫通孔が形成されており、前記積層体において前記最も近接したプレート以外の部分には、前記積層体の積層方向から見て前記貫通孔を内部に含む内底面を有し前記貫通孔と連通する凹部が形成されており、前記積層方向に沿って前記第1及び第2の部分の境界面と前記内底面とを結ぶいずれの仮想線分も、前記凹部において前記内底面以外の内表面とも前記貫通孔の内表面とも交差しない。
【0017】
上記別の観点によると、エッチング処理の方式上、貫通孔の内表面に突出部が形成される場合があるが、その突出部は小さいものに収まることが多く、CCD等の撮像において貫通孔を認識する際に問題になったり、接着剤の移り込みが問題になったりしにくい。
【0018】
本発明の液体吐出ヘッドの製造方法は、第1及び第2の部材を有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、前記第2の部材の一表面に開口する凹部を、前記一表面に直交する直交方向から見て前記凹部の開口を内部に含む内底面を有し、且つ、前記直交方向に沿って前記凹部の開口と前記内底面とを結ぶいずれの仮想線分も前記凹部の内表面と交差しないように形成する工程と、前記凹部の開口を撮像する工程と、取得された撮像に基づいて、前記第1の部材を前記第2の部材に対して前記一表面に沿った方向に関して位置合わせする工程と、位置合わせされた前記第1の部材を前記一表面に積層する工程とを備えている。これによると、凹部の開口の位置に基づいて第1の部材を第2の部材に対して位置合わせできる。
【0019】
また、本発明の液体吐出ヘッドの製造方法においては、前記凹部の開口を撮像する工程に先立って、前記開口を全周に亘って囲い、前記開口の中心に関して点対称の外形形状を有する囲い溝を形成する工程を備え、前記凹部を形成する工程において、前記開口を前記直交方向から見て円形に形成することが好ましい。これによると、開口が円形であって、開口を囲う囲い溝が、開口の中心に関して点対称に形成されているので、撮像装置に対してヘッドがθ方向にずれていても、開口と囲い溝の組を1つのパターンとして認識しやすく、プレート間の位置合わせを迅速且つ正確に実行できる。
【発明の効果】
【0020】
凹部が、開口より内底面が大きくなるように形成されており、開口から内底面までの直線経路が凹部の内表面に妨害されることなく形成されている。よって、凹部を撮像した際、特許文献1のようにCCD等による撮像に段差面が写りこんだりしない。また、接着剤等を使用した場合にも、開口よりも大きい内底部にその接着剤等が流れ込むため、画像内に接着剤等が写りこみにくい。これらにより、凹部の開口を画像認識しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態に係るインクジェットプリンタの内部構成を概略的に示す模式図である。
【図2】図1のヘッド本体の平面図である。
【図3】流路ユニットを構成する一のプレートの平面図である。
【図4】図3において一点鎖線に囲まれた領域の拡大図である。
【図5】流路ユニットを構成する他のプレートの平面図である。
【図6】副マニホールド流路から各吐出口までを繋ぐ個別インク流路に沿った流路ユニットの断面図である。
【図7】図6中に一点鎖線で示した領域の拡大断面図及び個別電極の平面図である。
【図8】図8(a)及び図8(b)は、図4の凹部周辺の拡大図であり、図8(c)は、平面視において凹部と重なる領域周辺の図5の拡大図である。
【図9】凹部周辺の流路ユニットの断面図であり、図8(a)のIX−IX線に沿った断面図である。
【図10】ヘッド本体の製造工程の流れを示すフロー図である。
【図11】流路ユニットと流路ユニットを撮像する画像センサの斜視図である。
【図12】本実施形態の凹部に代わる第1の変形例に係る凹部の断面図である。
【図13】本実施形態の凹部に代わる第2の変形例に係る凹部の断面図である。
【図14】本実施形態の凹部に代わる第3の変形例に係る凹部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施の形態に係るインクジェットヘッドを含むインクジェットプリンタの内部構成を示す模式図である。図1に示すように、インクジェットプリンタ101は直方体形状の筐体101aを有している。筐体101a内には、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクをそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッド1(液体吐出ヘッド;以下、ヘッド1とする)、及び、搬送機構16が配置されている。また、筐体101aの天板内面には、ヘッド1や搬送機構16等の動作を制御する制御部100が取り付けられている。天板の上部には、排紙部15が設けられており、画像が形成された用紙Pが排出される。搬送機構16の下方には、筐体101aに対して着脱可能な給紙ユニット101bが配置されている。給紙ユニット101bの下方には、筐体101aに対して着脱可能なインクタンクユニット101cが配置されている。
【0024】
インクジェットプリンタ101の内部には、図1に示す太矢印に沿って用紙搬送経路が形成されており、用紙Pが給紙ユニット101bから排紙部15に向けて搬送される。
給紙ユニット101bは、給紙トレイ11と、給紙ローラ12とを有している。給紙トレイ11は、上方に向かって開口した箱形状を有しており、複数枚の用紙Pが積層された状態で収納される。給紙ローラ12は、給紙トレイ11の最も上方にある用紙Pを送り出す。
送り出された用紙Pは、ガイド13a、13bによりガイドされ且つ送りローラ対14によって挟持されつつ搬送機構16へと送られる。
【0025】
搬送機構16は、2つのベルトローラ6、7と、搬送ベルト8と、テンションローラ10と、プラテン18とを有している。搬送ベルト8は、両ローラ6、7の間に架け渡されるように巻回されたエンドレスのベルトである。テンションローラ10は、搬送ベルト8の下側ループにおいて、その内周面に接触しつつ下方に付勢されており、搬送ベルト8にテンションを付加している。プラテン18は、搬送ベルト8の内側領域に配置され、ヘッド1と対向する位置において、搬送ベルト8が下方に撓まないように搬送ベルト8を支持している。ベルトローラ7は、駆動ローラであって、その軸に搬送モータ19から駆動力が与えられることで、図1中時計回りに回転する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、ベルトローラ7の回転により搬送ベルト8が走行することによって、図1中時計回りに回転する。なお、搬送モータ19の駆動力は、複数のギアを介してベルトローラ7に伝達される。
【0026】
搬送ベルト8の外周面8aは、シリコーン処理が施されることによって粘着性を有している。ベルトローラ6と対向する位置には、ニップローラ4が配置されている。ニップローラ4は、給紙ユニット101bから送り出された用紙Pを搬送ベルト8の外周面8aに押さえ付ける。用紙Pは、その粘着力によって外周面8a上に保持されながら用紙搬送方向(図1中右方であって副走査方向)へと搬送される。
【0027】
ベルトローラ7と対向する位置には、剥離プレート5が設けられている。剥離プレート5は、用紙Pを外周面8aから剥離する。剥離された用紙Pは、ガイド29a、29bによりガイドされ、且つ二組の送りローラ対28によって挟持されつつ搬送される。そして用紙Pは、筐体101aの上部に形成された排出口22から、筐体101aの天板上面に設けられた排紙凹部(排紙部)15へと排出される。
【0028】
4つのヘッド1は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有している。これらのヘッド1は、用紙Pの搬送方向に沿って配列されて固定されている。つまり、このプリンタ101はライン式のプリンタであり、搬送方向と主走査方向とは互いに直交する関係にある。
【0029】
各ヘッド1は、インクを吐出する複数の吐出口108(図6参照)が形成されたヘッド本体2を下部に有している。4つのインクタンク17には互いに異なる色のインクが貯留されている。インクタンク17からヘッド本体2へと、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクが供給される。
【0030】
吐出口108は、ヘッド本体2の下面である吐出面2aに開口しており、ヘッド本体2に供給されたインクが到達する。搬送される用紙Pが4つのヘッド1のすぐ下方を通過する際に、用紙Pの上面に向けて吐出口108から各色のインクが順に吐出される。これにより、用紙Pの上面、すなわち、印刷面に所望のカラー画像が形成される。
【0031】
以下、ヘッド本体2について説明する。図2はヘッド本体2の平面図である。図3は、ヘッド本体2(流路ユニット9)を構成するプレートの一枚であるプレート122の平面図である。図4は、図3において一点鎖線に囲まれた領域の拡大図である。図5は、ヘッド本体2(流路ユニット9)を構成するプレートの他の一枚であるプレート123の平面図である。図6は、副マニホールド流路105aから各吐出口108までを繋ぐ個別インク流路132に沿った流路ユニット9の断面図である。
【0032】
ヘッド本体2は、図2に示すように、流路ユニット9、及び、流路ユニット9(第2の部材)の上面(積層表面)に接着された8つのアクチュエータユニット21(第1の部材)を含んでいる。流路ユニット9の内部にはインク流路が形成されており、アクチュエータユニット21はインク流路内のインクに吐出エネルギーを付与する機能を有する。
【0033】
流路ユニット9の上面には、インクタンク17からのインクが供給される計18個のインク供給口105bが開口している。流路ユニット9の内部には、図2に示すように、インク供給口105bに連通するマニホールド流路105及びマニホールド流路105から分岐した副マニホールド流路105aが形成されている。マニホールド流路105は、平面視でアクチュエータユニット21の台形の斜辺に沿って延びている。アクチュエータユニット21の下方には4本の副マニホールド流路105aが主走査方向に沿って延びている。これら4本の副マニホールド流路105aは、アクチュエータユニット21の一方の斜辺側においてマニホールド流路105から分岐し、主走査方向に沿って延び、他方の斜辺側において別のマニホールド流路105と合流している。
【0034】
流路ユニット9は、図6に示すように、9枚のステンレス鋼からなる金属製のプレート122〜130が積層された積層体から構成されている。このうち、最上層のプレート121の上面には圧力室110が開口しており、最下層のプレート130の下面には、多数の吐出口108が開口している。各圧力室110は1つの吐出口108にそれぞれ対応して形成されている。
【0035】
プレート122の上面(流路ユニット9の上面)には、図4に示すように複数の圧力室群151が形成されている。圧力室群151は、それぞれ多数の圧力室110が集まって形成されている。圧力室群151内には、主走査方向に沿って圧力室110が配列された複数本の圧力室列161が形成されている。圧力室列161のそれぞれに含まれる圧力室110は、副走査方向に関して一方側から他方側に向かって次第に少なくなるように配置され、圧力室群151が全体として台形の平面形状となるように配列されている。吐出口108も、圧力室列161と対応する複数の吐出口列を形成するように配置されている。これらの吐出口列は、平面視で副マニホールド流路105aを避けるように互いに平行に配列されている。
【0036】
圧力室群151は、図3に示すように、インク供給口105bが形成された領域を避ける位置に、主走査方向に沿って4個ずつ2列に配列されている。一方の列に配列された4個の圧力室群151は、他方の列に配列された4個の圧力室群151を主走査方向に挟んでおり、8個の圧力室群151は、斜辺同士が互いに平行に対向する位置関係で配置されている。2つの隣り合う圧力室群151同士は、図4に示すように、圧力室群151の間の点Q(矢印Qの先端の点)について点対称に配置されている。図4に示されていない圧力室群151についても同様に、圧力室群151間の点に関して対称である。
【0037】
プレート122の上面には、圧力室群151を取り囲む接着剤の逃がし溝171及び172がハーフエッチングで形成されている。逃がし溝171は各圧力室群151の上底及び下底のそれぞれの近傍に形成されている。逃がし溝171は主走査方向に沿って並んだ複数の矩形状の逃がし溝171aと、逃がし溝171a同士を数珠繋ぎに連結する直線状の逃がし溝171bとから構成されている。逃がし溝172は、各圧力室群151の斜辺に沿って形成され、圧力室群151の斜辺に沿った辺を有する複数の平行四辺形状の逃がし溝172a(第1の溝;囲い溝)を有している。これらの逃がし溝172aは、圧力室群151の斜辺に沿って数珠繋ぎに互いに連結されている。逃がし溝171と逃がし溝172とは互いに連結されており、これにより圧力室群151の全体を取り囲んでいる。本実施形態においては、逃がし溝172は、図4に示すように、圧力室群151間の点Qに関して点対称に形成されている。図4に示されていない逃がし溝172についても同様に、圧力室群151間の点に関して対称である。
【0038】
逃がし溝171及び172は、プレート122の上面にアクチュエータユニット21を接着する工程において圧力室110内に侵入する接着剤を規制する役割を果たす。圧力室110内に接着剤が侵入すると、インク流路の特性が変化し、吐出口108からのインクの吐出特性に変化が生じるおそれがある。逃がし溝171及び172は、圧力室110内に侵入する接着剤を規制することにより、吐出特性に変化が生じるのを抑制する。
【0039】
プレート122の次の層であるプレート123の上面には、圧力室110と連通する多数の流路孔113及び114(図6参照)からなる複数の流路孔群152が形成されている。流路孔113及び114は、平面視において圧力室110とそれぞれ重なる位置に配置されているため、流路孔群152も圧力室群151と同様、台形の平面形状を有しており、圧力室群151と同様に配置されている。また、プレート123には、マニホールド流路105の一部である流路孔105cが形成されている。各流路孔105cは、平面視においてインク供給口105bと重なり合う形状と大きさを有しており、インク供給口105bと連通している。
【0040】
この他、図6に示すように、プレート124には絞りとして機能するアパーチャ112が、プレート126〜128には副マニホールド流路105aを構成する流路孔が、プレート123〜130には、圧力室110と副マニホールド流路105aとを連通させる流路孔、及び、圧力室110と吐出口108とを連通させる流路孔がそれぞれ形成されている。そして、プレート122〜130は、互いに位置合わせされつつ接着剤を介して積層されることによってこれらの流路孔が互いに連通し、インク供給口105bからマニホールド流路105、マニホールド流路105から副マニホールド流路105a、そして副マニホールド流路105aの出口から圧力室110を経て吐出口108に至る多数の個別インク流路132がそれぞれ形成されている。
【0041】
以上の通りに構成された流路ユニット9において、インクの流れは以下の通りである。インク供給口105bを介して流路ユニット9内に供給されたインクは、マニホールド流路105から副マニホールド流路105aに分岐される(図2)。副マニホールド流路105a内のインクは、各個別インク流路132に流れ込み、アパーチャ112及び圧力室110を介して吐出口108に至る(図6)。
【0042】
次に、アクチュエータユニット21について説明する。図2に示すように、8つのアクチュエータユニット21は、インク供給口105bを避けるよう千鳥状に配置されている。さらに、各アクチュエータユニット21の平行対向辺は流路ユニット9の長手方向に沿っており、隣接するアクチュエータユニット21の斜辺同士は流路ユニット9の幅方向(副走査方向)に関して互いにオーバーラップしている。
【0043】
図7(a)及び図7(b)は、図6中に一点鎖線で示した領域の拡大断面図及び個別電極の平面図である。
【0044】
図7(a)に示すように、アクチュエータユニット21は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなる3枚の圧電シート141〜143から構成されている。圧電シート141〜143は、いずれも複数の圧力室110に跨る形状とサイズを有した一枚のシートからなっている。最下層の圧電シート143の下面が流路ユニット9(プレート122)に固定される固定面となっている。また、最上層の圧電シート141の上面は、配線が施された平型の柔軟基板と対向している。圧電シート141の上面の圧力室110に対向する位置には、個別電極135が形成されている。柔軟基板は、後述のように個別電極135に接続される。圧電シート141とその下側の圧電シート142との間には、これらのシートの全面に亘って一体に形成された共通電極134が介在している。
【0045】
個別電極135は、図7(b)に示すように、圧力室110と相似な角の丸い菱形の平面形状を有する。平面視で、個別電極135の大部分は、圧力室110の領域内にある。個別電極135の菱形形状における鋭角部の一方は圧力室110の外に延出されている。延出方向の先端には、上方に突出した個別バンプ136が設けられ、個別電極135と電気的に接続されている。圧電シート141上には、共通電極用の個別バンプも形成されている。共通電極134は、圧電シート141に形成されたスルーホール内の導電体(図示せず)を介して上記の個別バンプと電気的に接続されている。
【0046】
共通電極134には、上記の個別バンプを介して、すべての圧力室110に対応する領域において等しくグランド電位が付与されている。一方、個別電極135は、柔軟基板に実装されたドライバICの各出力端子と柔軟基板に形成された配線を介して電気的に接続されており、ドライバICからの駆動信号が選択的に供給されるようになっている。
【0047】
アクチュエータユニット21は、個別電極135と圧力室110とで挟まれた部分が、個別のアクチュエータとして働く。圧力室110から離れた圧電シート141が活性部を含む層であり、圧力室110に近い2枚の圧電シート142、143が自発的に変形しない非活性層である。アクチュエータユニット21は、いわゆるユニモルフタイプのアクチュエータの集合体であって、個別のアクチュエータが、少なくとも圧力室110の数だけ作りこまれている。圧電シート141はその厚み方向に分極されている。個別電極135を共通電極134と異なる電位にして圧電シート141に対してその分極方向に電界を印加すると、個別電極135に対応した電界印加部分が圧電効果により歪む活性部として働く。例えば、分極方向と電界の印加方向とが同じであれば、活性部は分極方向と直交する方向(平面方向)に縮む。
【0048】
このとき、圧電シート142、143には、電界による自発的歪みが生じない。そのため、圧電シート141の電界印加部分と圧電シート142、143との間で平面方向への歪みに差が生じる。さらに、図7(a)に示すように、圧電シート141〜143は圧力室110を区画するプレート122の上面に固定されているため、圧電シート141における電界印加部分とその下方の圧電シート142、143との間で平面方向への歪みに差が生じると、圧電シート141〜143全体が圧力室110側へ凸になるように変形(ユニモルフ変形)する。これにより、圧力室110内のインクに圧力が印加され、吐出口108からインクが吐出される。
【0049】
ところで、アクチュエータユニット21は水平方向に関して位置合わせされた後、流路ユニット9の上面に接着される。そこで、流路ユニット9の最上層のプレート122の上面には、図4に示すように、アクチュエータユニット21の位置合わせのためのマーカ(凹部180a及び180b)が形成されている。以下、凹部180a及び180bについて、図4、5、8及び9を参照しつつ説明する。
【0050】
図8(a)は、図4の凹部180a周辺の拡大図であり、図8(b)は、図4の凹部180b周辺の拡大図であり、図8(c)は、平面視において凹部180a又は180bと重なる領域周辺の図5の拡大図である。図9は、凹部180a周辺の流路ユニット9の断面図であり、図8(a)のIX−IX線に沿った断面図である。
【0051】
凹部180a及び180bは、圧力室群151ごとに1組、合計で8組形成されている。凹部180a及び180bの各組は、図4に示すように、圧力室群151を主走査方向に挟む位置に形成されている。凹部180a(180b)は、図9に示すようにプレート122に形成された円柱状の貫通孔181と、プレート123に形成された凹部状の底部182とから構成されている。貫通孔181は、図8(a)及び図8(b)に示すように、平面視において平行四辺形状の逃がし溝172aの中心に開口しており、円形の開口端縁を有している。貫通孔181の開口は、図4に示すように、圧力室群151間の点Qに関して互いに点対称となるように配置されている。図4に示されていない開口についても同様に、圧力室群151間の点に関して対称である。
【0052】
底部182は、図9に示すように、プレート123の上面(プレート122との接着面)に開口する凹部であり、ハーフエッチングで形成されている。底部182は、図8(c)に示すように、平面視において貫通孔181を内部に含む円形に形成されている。底部182の内底面182aはほぼ水平に形成されている。
【0053】
以上のように、凹部180a(180b)は、開口181aの端縁から内底面182aの外周縁までを結ぶ内表面181b及び182b、開口181a、並びに、内底面182aによって画定されている。そして、凹部180a(180b)は、図9において、開口181aと内底面182aとを両端とする鉛直方向に沿った仮想線分Aを引いたとき、このようないずれの仮想線分Aも凹部180a(180b)の内表面181bや182bと交差することなく開口181aと内底面182aとを結ぶように形成されている。つまり、凹部180a(180b)は、鉛直上方からの視線が内表面181bや182bに遮断されることなく、内底面182aに到達するように形成されている。
【0054】
逃がし溝172aは、プレート122の上面に沿って凹部180a及び180bの開口181aから離隔する方向(例えば、図8(a)の二点鎖線の矢印方向)に交差する方向に沿っている。これにより、アクチュエータユニット21を接着するためプレート122の上面に接着剤が塗布された際、余剰の接着剤が逃がし溝172aに流れ込み、凹部180aや180bに接着剤が侵入するのが抑制される。また、逃がし溝172aは、凹部180a及び180bをそれぞれ全周に亘って取り囲んでいるので、塗布された接着剤の凹部180a及び180bへの流れ込みが、平面内のいずれの方向においても規制されることになる。
【0055】
凹部180a及び180bの底部182は、プレート123の上面に図8(c)のように開口しており、その開口の周囲を環状に取り囲む逃がし溝183(第2の溝)が形成されている。また、逃がし溝183のさらに外側には、プレート123の上面に沿って底部182の開口から離隔する方向(二点鎖線の矢印方向)に交差するように2本の弧状の逃がし溝184(第2の溝)が形成されている。逃がし溝183及び184は、プレート122及び123同士を接着する際、接着剤が凹部180aや180b内に侵入するのを抑制する。特に、逃がし溝183は、凹部180a及び180bをそれぞれ全周に亘って取り囲んでいるので、塗布された接着剤の凹部180a及び180への流れ込みが、平面内のいずれの方向においても規制されることになる。また、逃がし溝183は、底部182の開口端縁から等距離に形成されており、接着剤の流れ込みを均一に規制する。
【0056】
以下、ヘッド本体2の製造工程について説明する。図10は、ヘッド本体2の製造工程の流れを示すフロー図である。
【0057】
まず、流路ユニット9を構成するプレート122〜130のそれぞれが作製される。各プレートには、圧力室110やアパーチャ112、流路孔113及び114などの、インク流路を構成する複数の流路孔がエッチングにより形成される(S1)。次に、プレート122とプレート123に凹部180a及び180bが形成される(S2)。プレート122には、凹部180a及び180bの上部を構成する貫通孔181がエッチングにより形成される。プレート123には、平面視において貫通孔181を含む位置に底部182が、ハーフエッチングにより形成される。少なくともプレート122、123は金属部材(この場合、ステンレス鋼)の圧延により形成されている。そのため、底部182のエッチング面は、プレート122の圧延面に比べて滑らかさがなくなり、粗な表面となっている。
【0058】
次に、プレート122や123などの表面に、逃がし溝171、172、183及び184などの接着剤の逃がし溝が、ハーフエッチングにより形成される(S3)。プレート122や123以外のプレートにも、流路孔の開口の周囲を取り囲むように逃がし溝が形成されることが好ましい。そして、各種の流路孔や凹部180a等が形成されたプレート122〜130が接着剤を介して積層され、互いに接着される。このとき、プレート122とプレート123とは、貫通孔181の開口中心を通る軸が、底部182の開口中心を通るように位置合わせされている。これにより流路ユニット9が完成する(S4)。
【0059】
ここで、貫通孔181の開口径より底部182の開口径が大きいので、接着剤による接着時に、プレート122とプレート123間で余剰接着剤が生じても、接着剤は底部182の側面部に広がる程度である。そのため、後述の画像センサ191による撮像時に、広がった接着剤を撮像することがなく、参照画像データとの比較が適切にできる。なお、接着剤の広がりを確実に撮像範囲外に止めるという観点から、各プレートの積層時には、鉛直方向に関して、プレート122の情報からプレート123を積層するとよい。これによって、余剰接着剤の広がりが、撮像される表面と反対側の面に限定されることになる。
【0060】
次に、流路ユニット9の上面に、アクチュエータユニット21を接着するための接着剤が塗布される(S5)。そして、流路ユニット9の上面がCCD(Charge Coupled Devices)カメラなどの画像センサによって撮像される(S6)。なお、画像センサによる撮像に先立って、流路ユニット9は、支持台上に支持されて、撮像時に予めマーカが画像センサのほぼ正面に位置するように配置されている。
【0061】
図11は、流路ユニット9と、流路ユニット9の上面を撮像する画像センサ191の斜視図である。図11のXY座標は水平面に沿った座標である。画像センサ191による撮像データは、アクチュエータユニット21の位置合わせを制御する位置決め制御装置192に送信される。位置決め制御装置192は、画像センサ191からの撮像データが示す画像を解析する画像解析部193と、アクチュエータユニット21の位置を調整する位置調整部194とを有している。
【0062】
画像解析部193は、位置合わせ用のマーカである凹部180a又は180bが画像センサ191からの撮像データ中に写りこんでいるかどうかを解析するための参照画像データを保持している。参照画像データは、例えば、図8(a)や図8(b)において一点鎖線に囲まれた領域に対応する画像データである。具体的には、参照画像データとして、平面視で円形の貫通孔181とこれに隣接した平行四辺形の逃がし溝172aとに対応したパターン情報が記憶されている。画像センサ191は、流路ユニット9の表面からの反射光をとらえる。このとき、貫通孔181に対向した底部182の表面は、ハーフエッチングで形成された面であり、圧延面とは入射光に対する反射率に差がある。そのため、貫通孔181が、円形パターンとして確実に識別される。
【0063】
画像解析部193は、画像センサ191からの撮像データと参照画像データとを比較し、よく一致する部分があるか否かを判定する。画像解析部193は、参照画像データが示す画像をXY座標平面に沿って任意の角度で回転させたものと画像センサ191からの撮像データとを比較できるように構成されている。
【0064】
ここで、参照画像データは、貫通孔181の円形パターン情報に加えて、よりサイズの大きい逃がし溝172aの平行四辺形パターン情報から構成されているので、撮像データとの比較が容易である。また、図4に示されるように、参照画像データに対応した逃がし溝172aは、圧力室群の斜辺部に配置された他の逃がし溝172aに比べても、サイズが大きく、撮像データとの比較をさらに容易にし、比較の精度を高くしている。
【0065】
画像解析部193は、参照画像データとよく一致する部分があると判定した場合、その部分のXY座標系上の位置と、参照画像データを回転させた回転角度とを取得する。このうち、XY座標上の位置は、円形パターン(貫通孔181)の中心位置として決められる。このようにして凹部180a及び180bの位置を取得することにより、凹部180a及び180bに挟まれた圧力室群151のXY座標系上の位置とその回転角度θとを取得する。なお、圧力室群151の回転角度θは、凹部180aのXY座標と凹部180bのXY座標とに基づいて取得されてもよい。
【0066】
次に、位置調整部194は、画像解析部193が取得した圧力室群151のXY座標系上の位置と回転角度θに基づいて、図10のS7において流路ユニット9とは別途作製されたアクチュエータユニット21の位置を調整し、圧力室群151上方の適切な接着位置にアクチュエータユニット21を配置する(S8)。アクチュエータユニット21は図11の白抜き矢印で示す方向に移動可能な治具によって支持されており、位置調整部194はかかる治具を駆動してアクチュエータユニット21の位置を調整する。そして、圧力室群151に対して適切に位置が調整されたアクチュエータユニット21が、流路ユニット9の上面に接合され、接着される(S9)。このように、圧力室群151の位置及び回転角度の取得とアクチュエータユニット21の位置合わせ及び接合が、8回繰り返されることにより、全てのアクチュエータユニット21が流路ユニット9上に接着される。
【0067】
以上説明した本実施形態によると、凹部180aや凹部180bが、開口181aと内底面182aとを両端とする鉛直方向に沿った仮想線分Aを引いたとき、このようないずれの仮想線分Aも凹部180aや180bの内表面181bや182bと交差することなく開口181aと内底面182aとを結ぶように形成されている。つまり、凹部180aや180bは、鉛直上方から見た際、凹部180aや180b内の内表面181bや182bに遮られることなく内底面182aを視認できる。したがって、凹部180aや180bを画像センサ191で撮像した際、内表面181bや182bが写り込んで凹部180aや180bを認識しにくくなることが防止されている。
【0068】
また、凹部180aや180bの底部182が、上部を構成する貫通孔181より平面視で大きく形成されている。このため、仮に凹部180aや180b内に接着剤が入り込んでも、その接着剤は内表面182bに沿って底部182へと流れ込むので、平面視において開口181aに規定される視界から外側へと逃がしやすい。これにより、凹部180aを撮像しても接着剤が写り込みにくくなるため、撮像において凹部180aの開口181aを認識しやすい。
【0069】
また、本実施形態では、底部182をハーフエッチングで形成している。このため、内底面182aに微小な凹凸が形成されやすく、光が乱反射しやすくなる。したがって、凹部180aや180bを撮像した際、内底面182aが鏡面反射して白くなり開口181aを認識しにくくなるのが回避されやすい。つまり、コントラストの高い撮像が可能となる。
【0070】
また、本実施形態では、プレート122及び123の2枚のプレートに亘って凹部180a及び180bを形成している。このように、凹部180aや180bが複数のプレートに亘って形成されていることにより、1枚のプレートのみに形成されている場合と比べて凹部180a及び180bが深くなる。このため、内底面182aが開口181aから遠くなり、仮に内底面182aが鏡面反射したとしても高コントラストの撮像ができる。
【0071】
また、本実施形態では、逃がし溝172も開口181aも、いずれも図4の点Qに関して対称に配置されている。したがって、開口181aとその開口181aを囲む逃がし溝172aとの組は、互いに点Qに関して対称である。例えば、図4の一点鎖線Uで囲まれた領域に含まれる開口181aと逃がし溝172aとの組は、一点鎖線Vで囲まれた領域に含まれる開口181aと逃がし溝172aとの組に対して点Qに関して対称である。
【0072】
このように、本実施形態では、凹部180aや180bの開口181aとその周囲の逃がし溝172aとの組が、互いに点対称の関係にある。したがって、例えば、図8(a)の一点鎖線に囲まれた領域に関する1つの参照画像データを用意すれば、この画像データを水平面内で回転させることにより、いずれの凹部180aの周囲の画像とも一致させることができる。一方、画像解析部193は、参照画像データを任意の角度で回転させて撮像データと比較することができる。このため、画像解析部193は、1つの圧力室群151に対応する1組の凹部180a及び180bの参照画像データを保持していれば、この参照画像データを回転させることにより、その他の全ての圧力室群151に対応して形成された凹部180a及び180bと比較することができる。本実施形態では、このように画像認識に必要な参照画像の数が抑制されている。
【0073】
さらに、本実施形態では、平行四辺形状の逃がし溝172aの中心に凹部180aや180bが開口している。つまり、逃がし溝172aが開口181aの中心に関して点対称に形成されている。このように、開口181aの中心に関して点対称に逃がし溝172aが形成されていると、逃がし溝172aの形状を把握することで、その中心の位置を判定しやすい。したがって、逃がし溝172aが点対称に形成されていることで、開口181aの位置を取得しやすくなっている。なお、この観点からは、平行四辺形以外に、正三角形や正方形などの正多角形、菱形、円形などの形状に逃がし溝を形成し、その中心に開口181aを形成してもよい。
【0074】
また、本実施形態では、凹部180a及び180bが流路ユニット9を貫通していない。これは、貫通孔として形成すると、吐出口108から吐出されたインクによるインクミストなどが流路ユニット9の上面側に侵入してくるおそれがあるからである。つまり、凹部180a及び180bが凹部として形成されていることにより、吐出口108から吐出されたインクが流路ユニット9の上面側へと侵入するのが回避されている。
【0075】
以下、上述の凹部180aや180bに代わる第1〜第3の変形例について説明する。図12は、第1の変形例に係る凹部280の断面図である。凹部280は、プレート122〜125にエッチングで形成された円柱状の貫通孔281〜284と、プレート126にハーフエッチングで形成された円柱状の凹部285とから構成されている。貫通孔281〜284及び凹部285のそれぞれは、上方に位置する他の貫通孔を平面視で全て内部に含む大きさになるように形成されている。
【0076】
つまり、貫通孔282は、平面視において貫通孔281より大きく、貫通孔281を内部に含むように形成されている。貫通孔283は、平面視において貫通孔281及び282のいずれよりも大きく、これらを内部に含むように形成されている。貫通孔284は、平面視において貫通孔281〜283のいずれよりも大きく、これらを内部に含むように形成されている。さらに、凹部285は、平面視において貫通孔281〜284のいずれよりも大きく、これらを内部に含むように形成されている。
【0077】
また、プレート122〜126の上面には、貫通孔281〜284及び凹部285の開口を取り囲む接着剤の逃がし溝291〜295が形成されている。これにより、アクチュエータユニット21を接着する際やプレートを互いに接着する際に、余剰の接着剤が凹部280内に侵入するのが抑制される。
【0078】
以上の第1の変形例においても、凹部280の開口281aと内底面285aとを両端とする鉛直方向に沿った仮想線分Bを引いたとき、このようないずれの仮想線分も凹部280の内表面と交差することなく開口281aと内底面285aとを結ぶように凹部280が形成されている。つまり、凹部280においても、鉛直上方からの視線が内表面に遮られることなく、内底面285aに到達するように形成されている。
【0079】
また、凹部280は下方の部分ほど大きく形成されている。このため、凹部280内に接着剤が入り込んでも、その接着剤は凹部280の内表面に沿って下部へと流れ込み、平面視において開口281aよりも外側へと向かいやすく、凹部280を撮像しても接着剤が写り込みにくい。
【0080】
また、凹部280は5枚のプレートに跨って形成されているため、上述の実施形態よりも凹部280が深くなる。したがって、凹部280を撮像した際、仮に内底面285aが鏡面反射してもより高いコントラストで撮像できる。
【0081】
図13は、第2の変形例に係る凹部380の断面図である。凹部380は、プレート122に形成された貫通孔381と、プレート123に形成された凹部382とから構成されている。凹部382は、貫通孔381を平面視で内部に含む大きさになるように形成されている。貫通孔381及び凹部382の内側面は下方ほど広がるように傾斜しており、貫通孔381の下端と凹部382の上端は平面視でちょうど重なり合うように形成されている。これにより、貫通孔381の内側面と凹部382の内側面とが滑らかに接続されている。また、プレート122及び123の上面には、貫通孔381及び凹部382の開口を取り囲む接着剤の逃がし溝391及び392が形成されている。
【0082】
以上の第2の変形例においても、凹部380の開口381aと内底面382aとを両端とする鉛直方向に沿った仮想線分Cを引いたとき、このようないずれの仮想線分も凹部380の内表面と交差することなく開口381aと内底面382aとを結ぶように凹部380が形成されている。つまり、凹部380においても、鉛直上方からの視線が内表面に遮られることなく、内底面382aに到達するように形成されている。
【0083】
また、凹部380は下方の部分ほど大きく形成されている。このため、凹部380内に接着剤が入り込んでも、その接着剤は凹部380の内表面に沿って下部へと流れ込むため、凹部380を撮像しても接着剤が写り込みにくい。
【0084】
さらに、貫通孔381の内側面と凹部382の内側面とが滑らかに接続されているので、開口381aから接着剤が入り込んでも、その接着剤が貫通孔381の内側面と凹部382の内側面に沿って、内底面382aの外周縁近傍へと円滑に導入されやすい。
【0085】
図14は、第3の変形例に係る凹部480の断面図である。凹部480は、プレート122に形成された貫通孔481と、プレート123に形成された凹部482とから構成されている。貫通孔481はほぼ円柱の形状を有しており、上部分481a及び下部分481bの2つの部分から構成されている。上部分481aは、プレート122を上面から下面に向かって蝕刻するエッチング処理によって形成され、下部分481bは、プレート122を下面から上面に向かって蝕刻するエッチング処理によって形成されている。このように、2表面のそれぞれから施されるエッチング処理によって1つの貫通孔が形成されるのは、例えばプレート122の厚みが約100マイクロメートルと比較的大きい場合である。このとき、プレート122は、あらかじめ表裏両面が貫通孔481となるべき表面を除いてレジスト膜で被覆される。エッチング処理によって、レジスト膜から露出した表面部分が厚み方向にエッチング(蝕刻)される。エッチングは、等方的に進む。そのため、表面に近い部分では、内部に比べて面方向のエッチングが進展して、上部分481aと下部分481bとの境界面481cには貫通孔481の内側に突出した突出部が残る。また、プレート123は、表の面からのみのエッチング処理が施される。これによって形成される凹部482は、平面視で貫通孔481を内包できるサイズと形状を有し、ほぼ平坦な内底面482aと湾曲した内表面482bとから構成されている。ここでは、凹部482は、平面視で円形である。
【0086】
凹部480は、上部分481a及び下部分481bの境界面481cと内底面482aとを両端とする鉛直方向に沿った仮想線分Dを引いたとき、このようないずれの仮想線分も、凹部482の内底面482a以外の内表面とも貫通孔481の内表面とも交差することがないように形成されている。
【0087】
第3の変形例では、上部分481aと下部分481bの境界において貫通孔481の内表面が内側に突出している。このような場合でも、画像センサ191による撮像時、貫通孔481を認識する上で上記の突出量が解像度以下であれば、ほぼ内表面がストレートな形状を有するとみなすことができ、図9に示す実施形態と同様の機能を果たすことができる。
【0088】
また、上下両方向からエッチング処理によって形成する工程上、貫通孔481内に形成される突出部はそれほど大きいものにはならない。このため、貫通孔481の上端の開口から接着剤が貫通孔481内に流れ込んでも、突出部を乗り越えて凹部482へと流れ込む。
【0089】
<その他の変形例>
以上は、本発明の好適な実施形態についての説明であるが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、課題を解決するための手段に記載された範囲の限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0090】
例えば、上述の実施形態では、凹部180a、180b、280、380が下方の部分ほど大きくなるように形成されている。しかし、鉛直上方からの視線が内表面に遮られることなく内底面に到達するように形成されていれば、部分的に大きさが逆転していてもよい。例えば、第1の変形例においては貫通孔284の径が貫通孔283の径より大きくなっているが、その逆に、貫通孔283の径が貫通孔284の径より大きく形成されていてもよい。
【0091】
さらに、上述の実施形態では、流路ユニット9に対してアクチュエータユニット21を相対移動して位置調整を行ったが、アクチュエータユニット21を固定し、流路ユニット9を載せた支持台を移動して位置調整をしてもよい。
【0092】
また、上述の実施形態は、ノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドに本発明を適用した一例であるが、本発明を適用可能な対象はこのようなインクジェットヘッドに限られない。例えば、導電ペーストを吐出して基板上に微細な配線パターンを形成したり、あるいは、有機発光体を基板に吐出して高精細ディスプレイを形成したり、さらには、光学樹脂を基板に吐出して光導波路等の微小電子デバイスを形成するための、液滴吐出ヘッドに適用することができる。
【0093】
また、本実施形態では、アクチュエータとして圧電方式のものを用いていたが、静電方式や抵抗加熱による方式のものにも適用可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 インクジェットヘッド(ヘッド)
9 流路ユニット
21 アクチュエータユニット
101 インクジェットプリンタ(プリンタ)
108 吐出口
122〜130 プレート
151 圧力室群
171,172 逃がし溝
180a、180b 凹部
181a 開口
181b,182b 内表面
182a 内底面
183,184 逃がし溝
280 凹部
281a 開口
285a 内底面
291〜295 逃がし溝
380 凹部
381a 開口
382a 内底面
391 逃がし溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材が第2の部材に積層された積層体を有する液体吐出ヘッドであって、
前記第1の部材が積層された表面である積層表面に開口端縁を有する開口と、前記開口と対向した内底面と、前記内底面の外周縁と前記開口端縁とを結ぶ内表面とによって画定された凹部が前記第2の部材に形成されており、
前記内底面が、前記積層体の積層方向から見て前記開口を内部に含み、
前記積層方向に沿って前記開口と前記内底面とを結ぶいずれの仮想線分も前記内表面と交差しないことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記第1の部材と前記第2の部材とが接着剤を介して積層されており、
前記積層表面に沿って前記凹部から離隔する方向と交差する方向に延びる第1の溝が、前記開口の近傍に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記開口は、前記積層体の積層方向から見て円形の開口端縁を有し、
前記第1の溝は、
前記積層表面において前記開口端縁を全周に亘って囲い、前記開口端縁の中心に関して点対称の外形形状を有していることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第2の部材が、前記積層方向に積層された複数のプレートの積層体から構成され、
前記凹部が、複数の前記プレートに跨って形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記プレートの少なくともいずれかが金属製であり、
前記凹部において前記内底面が、金属製の前記プレートに対するハーフエッチングで形成されていることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記プレート同士が接着剤を介して積層されており、
前記プレートの接着面に沿って前記凹部から離隔する方向と交差する方向に延びる第2の溝が、前記接着面における前記凹部の近傍に形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記凹部が、2以上の前記プレートにそれぞれ形成された貫通孔を含んでおり、
前記貫通孔のそれぞれが、前記積層表面側に配置された他の前記貫通孔を、前記積層方向から見て全て内部に含むように形成されていることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記凹部と当該凹部の近傍に形成された前記第1の溝とが複数組形成されており、
一の前記凹部及び第1の溝の組が、前記積層方向に沿った軸に関して回転させると、他の前記凹部及び第1の溝の組と形状が一致するように形成されていることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記第2の部材が、液体を吐出する吐出口が形成された流路ユニットであり、
前記流路ユニットにおいて、前記吐出口が形成された表面とは反対側の表面が前記積層表面であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
第1の部材が第2の部材に積層された液体吐出ヘッドであって、
前記第2の部材が、互いに積層された複数枚のプレートからなる積層体を有しており、
前記積層体において前記第1の部材と最も近接したプレートには、当該プレートの一方の表面から他方の表面に向かって施されたエッチング処理によって蝕刻された第1の部分と、当該プレートの他方の表面から一方の表面に向かって施されたエッチング処理によって蝕刻された第2の部分とが連結した貫通孔が形成されており、
前記積層体において前記最も近接したプレート以外の部分には、前記積層体の積層方向から見て前記貫通孔を内部に含む内底面を有し前記貫通孔と連通する凹部が形成されており、
前記積層方向に沿って前記第1及び第2の部分の境界面と前記内底面とを結ぶいずれの仮想線分も、前記凹部において前記内底面以外の内表面とも前記貫通孔の内表面とも交差しないことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項11】
第1及び第2の部材を有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、
前記第2の部材の一表面に開口する凹部を、前記一表面に直交する直交方向から見て前記凹部の開口を内部に含む内底面を有し、且つ、前記直交方向に沿って前記凹部の開口と前記内底面とを結ぶいずれの仮想線分も前記凹部の内表面と交差しないように形成する工程と、
前記凹部の開口を撮像する工程と、
取得された撮像に基づいて、前記第1の部材を前記第2の部材に対して前記一表面に沿った方向に関して位置合わせする工程と、
位置合わせされた前記第1の部材を前記一表面に積層する工程とを備えている液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項12】
前記凹部の開口を撮像する工程に先立って、
前記開口を全周に亘って囲い、前記開口の中心に関して点対称の外形形状を有する囲い溝を形成する工程を備え、
前記凹部を形成する工程において、前記開口を前記直交方向から見て円形に形成することを特徴とする請求項11に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−16271(P2011−16271A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161550(P2009−161550)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】