説明

液体吐出ヘッド及び画像形成装置

【課題】高密度化に伴って液室間隔壁の剛性が低下して隣接クロストークや全体クロストークが発生しやすくなり、滴吐出性能が低下する。
【解決手段】加圧液室6は、壁面部材である振動板部材2に対向する天面31と、液室間隔壁30の側壁面32a、32bと、振動板部材2の振動領域2aとで画成され、加圧液室6の壁面には、天面31と側壁面32a又は側壁面32bとを二つの面とする三角錐形状の凸部33が、液体の流れ方向に沿って所要の間隔で複数(個)設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッド及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、液体吐出記録方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0004】
このような液体吐出記録方式の画像形成装置に使用される液体吐出ヘッドは、一般に、液滴を吐出する複数のノズル列を有し、各ノズルが連通した複数の個別液室(加圧室、圧力室、個別液室、加圧液室、加圧液室などとも称される。以下、「加圧液室」という。)を有し、複数の加圧液室に共通液室(共通流路)から供給路部を介してインクを供給する構成とされている。
【0005】
ところで、画像形成装置としては、より高品位な画像を、より速い印刷速度で出力できることが求められるようになっている。そのため、ノズルの数及び配列密度共に増加する傾向にあり、その結果、加圧液室間の間隔が狭くなり、また駆動周波数も高くなる傾向にある。
【0006】
このようにノズル数の増加、ノズル配列の高密度化に伴って加圧液室間隔が狭くなると、所望の加圧液室に滴吐出を行う圧力を加えたときに、他の隣接する加圧液室にも圧力変動が生じる相互干渉(これを「隣接クロストーク」という。)が発生しやすくなる。隣接クロストークが生じると、滴吐出を行わない加圧液室に対応するノズルから滴吐出が行われたり、吐出する滴の吐出状態が不安定になって、画像品質が低下することになる。
【0007】
この隣接クロストークを抑制するためには加圧液室とノズルとの間を連通するノズル連通路(連通管)を細くし、連通管間隔壁の剛性を高め、あるいは加圧液室の高さを低くして加圧液室間隔壁の剛性を高める必要があるが、連通管を細くした場合には加圧液室を含めた液室のインピーダンスが高くなり、吐出特性が低下したり、加工に時間がかかるようになる。また、加圧液室の内部圧力により加圧液室などの流路を形成する流路板全体が変形し、滴吐出特性が低下するクロストーク(これを「全体クロストーク」という。)に関して、加圧液室の高さを低くすることで内部圧力が更に高くなって滴吐出特性が低下することになる。
【0008】
そこで、従来、液室間隔壁に曲率を持たせることで隔壁の剛性を上げることが知られている(特許文献1)。また、流路基板と振動板との間に、振動板で構成される空間部を有し、該空間部の幅よりも流路基板上の圧力発生室の空間部の方を狭くする構成が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−155472号公報
【特許文献2】特開2002−103618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されているように、隔壁に曲率を持たせた液室構造を製作するためには、陽極化成法を用いる必要があり、新たな設備投資による高コスト化を招くと共に、高精度に液室を形成することが困難であるという課題がある。
【0011】
また、特許文献2に記載されているように、振動板による空間部により圧電素子の変位領域を確保しても、液体の流れる流路基板の流路の幅が狭く、流体抵抗値が高くなってしまうため、吐出性能が低下してしまうという課題がある。
【0012】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、簡単な構成でクロストークを抑制し、滴吐出性能を確保できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体吐出ヘッドは、
液滴を吐出する複数のノズルが形成されたノズル部材と、
前記ノズルが連通する溝状の複数の個別液室が形成された流路部材と、
前記個別液室の一面を形成する壁面部材と、を有し、
前記個別液室には、前記壁面部材と反対側の面を天面とし、複数の個別液室間の隔壁の面を側壁面としたとき、前記天面及び側壁面を二つの面とする三角錐形状又は前記天面及び側壁面を二つの面とし前記側壁面と平行な面を有する三角錐台形状の凸部が設けられている
【0014】
ここで、前記凸部は、前記個別液室の天面及び壁面に沿う方向に複数設けられている構成とできる。
【0015】
また、前記凸部は、前記個別流路の両側壁面に設けられ、かつ、液体の流れの方向において交互に配置されている構成とできる。
【0016】
また、前記複数の凸部は、隣接する個別液室間の隔壁の両側に液体の流れの方向において交互に配置されている構成とできる。
【0017】
また、前記複数の個別液室は形状が同じであり、
隣接する前記個別液室はノズル配列方向に千鳥状に配置され、
前記凸部は、各個別液室で液体の流れの方向において同じ位置に配置されている
構成とできる。
【0018】
また、前記凸部は、前記壁面部材と接していない構成とできる。
【0019】
本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る液体吐出ヘッドによれば、個別液室には、壁面部材と反対側の面を天面とし、複数の個別液室間の隔壁の面を側壁面としたとき、天面及び側壁面を二つの面とする三角錐形状又は天面及び側壁面を二つの面とし側壁面と平行な面を有する三角錐台形状の凸部が設けられている構成としたので、簡単な構成で液室間隔壁の剛性を高めてクロストークを抑制することができ、滴吐出性能を確保することができる。
【0021】
本発明に係る画像形成装置によれば、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えるので、高画質画像を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る液体吐出ヘッドの第1実施形態の外観斜視説明図である。
【図2】同ヘッドの液室長手方向に沿う要部断面説明図である。
【図3】図2のX−X線に沿う液室短手方向の要部断面説明図である。
【図4】同ヘッドの液室構成を説明する平面説明図である。
【図5】同じく凸部部分の要部拡大斜視説明図である。
【図6】本発明の第2実施形態における液室構成を説明する平面説明図である。
【図7】本発明の第3実施形態における液室構成を説明する平面説明図である。
【図8】本発明の第4実施形態における液室構成を説明する凸部部分の要部拡大斜視説明図である。
【図9】本発明に係る画像形成装置の一例を示す全体構成図である。
【図10】同じく要部平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明に係る液体吐出ヘッドの第1実施形態について図1ないし図3を参照して説明する。なお、図1は同ヘッドの外観斜視説明図、図2は同ヘッドの液室長手方向に沿う要部断面説明図、図3は図2のX−X線に沿う液室短手方向の要部断面説明図である。
【0024】
この液体吐出ヘッドは、流路部材としての流路板(流路基板、液室基板)1と、この流路板1の下面に接合した振動板部材2と、流路板1の上面に接合したノズル板3とを有し、これらによって液滴(液体の滴)を吐出する複数のノズル4がノズル連通路(連通管)5を介してそれぞれ連通する個別流路としての複数の加圧液室6が形成され、フレーム部材17に形成した共通液室10から振動板部材2に形成した流入口9を介して各加圧液室6に導入部8及び流体抵抗部である供給路7を介してインクを供給する。ここでノズル板3と流路板1は一体で形成される構成であってもよい。
【0025】
流路板1は、シリコン基板を異方性エッチングして、ノズル連通路5、加圧液室6、供給路部7などの開口部や溝部をそれぞれ形成している。ノズル連通路5及び加圧液室6などを形成するエッチングで残された部分が流路間隔壁(液室間隔壁)30となる。
【0026】
振動板部材2は各液室6及び供給路部7の壁面を形成する壁面部材であり、変形可能な第1層2Aと、第1層2A上に積層した第2層2Bとからなり、各液室6の壁面を形成する変形可能な第1層2Aで形成された振動領域(ダイアフラム部)2aを有し、振動領域2aに第2層2Bで形成した島状凸部2bに、振動領域2aを変形させ、液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての柱状の電気機械変換素子である積層型圧電部材12の圧電素子柱12Aが接合されている。
【0027】
圧電部材12はハーフカットダイシングにより櫛歯状に圧電素子柱12A、12Bを形成したものであり、圧電素子柱12Aは駆動波形を印加する駆動圧電素子柱となり、圧電素子柱12Bは駆動波形を印加しないで流路間隔壁6aを支持する支柱である非駆動圧電素子柱となる。すなわち、圧電素子部材12の圧電素子柱12A、12Bは加圧液室6の配列密度の2倍の密度で配列された所謂バイピッチ構造としている。この圧電素子部材12の下端面はベース部材13に接合している。
【0028】
この圧電部材12は、例えば厚さ10〜50μm/1層のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の圧電層21と、厚さ数μm/1層の銀・パラジューム(AgPd)からなる内部電極層22A、22Bとを交互に積層し、内部電極22を交互に端面の端面電極(外部電極)である個別電極23及び共通電極24にそれぞれ電気的に接続したものである。そして、個別電極23にはFPC15の個別電極ラインが半田接合され、また、共通電極24は圧電部材12の端部に電極層を設けて個別電極23側端面に回し込んでFPC15のGN電極(共通電極ライン)に接続している。FPC15には図示しないドライバICが実装されており、これにより駆動圧電素子柱12Aへの駆動電圧印加を制御している。
【0029】
ノズル板3は、ニッケル(Ni)の金属プレートから形成したもので、エレクトロフォーミング法(電鋳)で製造している。このノズル板3には各加圧液室6に対応して直径10〜35μmのノズル4を形成し、流路板1に接着剤接合している。そして、このノズル板3の液滴吐出側面(吐出方向の表面:吐出面、又は液室6側と反対の面)には撥水層を設けている。
【0030】
また、FPC15を実装した(接続した)圧電素子柱12及びベース部材13などで構成される圧電型アクチュエータの外周側には、エポキシ系樹脂或いはポリフェニレンサルファイトで射出成形により形成したフレーム部材17を接合している。そして、このフレーム部材17には共通液室10を形成し、更に共通液室10に外部からインクを供給するために連結管を介して供給口を形成し、この供給口は更に図示しないサブタンクやインクカートリッジなどのインク供給源に接続される。
【0031】
このヘッドでは、圧電素子柱12は300dpiの間隔でダイシングされており.それが対向して2列配置され、加圧液室6及びノズル4は、1列150dpiの間隔で2列がそれぞれ千鳥配置に整列しており,300dpiの解像度を1スキャンで得ることができる構成としている。
【0032】
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば圧電素子柱12Aに印加する電圧を基準電位から下げることによって圧電素子柱12Aが収縮し、振動板部材2の液室壁面を形成するダイアフラム部が下降して液室6の容積が膨張することで、液室6内にインクが流入し、その後圧電素子柱12Aに印加する電圧を上げて圧電素子柱12Aを積層方向に伸長させ、振動板部材2をノズル4方向に変形させて液室6の容積を収縮させることにより、液室6内のインクが加圧され、ノズル4からインク滴が吐出(噴射)される。
【0033】
そして、圧電素子柱12Aに印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板部材2が初期位置に復元し、液室6が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室10から液室6内にインクが充填される。そこで、ノズル4のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
【0034】
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行なうこともできる。
【0035】
次に、このヘッドにおける加圧液室構成について図4及び図5も参照して説明する。なお、図4は同加圧液室構成の説明に供する平面説明図、図5は同じく凸部部分の拡大斜視説明図である。
加圧液室6は、壁面部材である振動板部材2に対向する天面31と、液室間隔壁30の側壁面32a、32b(区別しないときは「側壁面32」という。)と、振動板部材2の振動領域2aとで画成されている。そして、加圧液室6の壁面には、天面31と側壁面32a又は側壁面32bとを二つの面とする三角錐形状の凸部33が、液体の流れ方向(ここでは液室6の長手方向)に沿って所要の間隔で複数(個)設けられている。
【0036】
ここで、凸部33は、液体の流れ方向において、天面31と側壁面32にそれぞれ頂点33a、33bを、天面31と側壁面32の境目に液体の流れ方向において離間する頂点33c、33dを有し、頂点33a、33c、33dを含む面は天面31に、頂点33b、33c、33dを含む面は側壁面32にそれぞれ接し、頂点33a、33b、33cを含む面及び頂点33a、33b、33dを含む面はそれぞれ液室6内に臨み、液体の流れの方向に沿って頂点33a、33b、33cを含む面は頂点33a、33b間の辺に向かって立ち上がり、頂点33a、33b、33dを含む面は頂点33a、33b間の辺から立ち下がる方向に形成される。
【0037】
また、側壁面32a側の凸部33と側壁面32b側の凸部33とは液体の流れの方向において位置をずらして(頂点33a、33bの位置が液体の流れの方向においてずれて)形成されている。これにより加圧液室6の液体の流れ方向断面の面積が極端に狭くなる位置がないため、加圧液室内の液体の流れを阻害せず充填性等の低下も抑えられる。
【0038】
また、凸部33は流路板1の振動板部材2との接合面1aとは接していない。これにより、振動領域2aの変移を妨げることはない。
【0039】
このように、溝状に形成された個別液室(加圧液室)の天面と壁面を2つの面とする三角錐形状の凸部が形成されていることで、液室間隔壁の剛性が高まり、隣接クロストークを抑制することができる。また、凸部が三角錐形状であることから、個別液室内での液体の流れを阻害せず、流体抵抗値の上昇もほとんどないため、滴吐出性能の低下も抑制することができる。
【0040】
また、溝状に形成されている個別液室の隔壁の全域に三角錐形状の凸部を形成することにより、液室間隔壁全体の剛性をより高めることができる。
【0041】
ここで、流路板としてシリコン基板を使用し、エッチングによって個別液室(加圧液室6)を形成する場合には、そのエッチングレートとシリコンの結晶方位面により、マスク設計のみで三角錐形状の凸部33を形成することができるため、三角錐形状の凸部33を形成しない液室に対して工法的な変更を行なう必要がなく、コストの増加を招くことなく隔壁の剛性を向上させることができる。
【0042】
具体的には、ウエットエッチング用の保護膜を形成するときのマスクにおいて、側壁部のマスク遮蔽部から加圧液室内に飛び出した凸状の遮蔽部を側壁相当部に沿って複数配置しておく。この部位には凸状の保護膜が形成されるため、エッチング開始時にはエッチングがされないが、エッチングの進行とともに凸状の保護膜の側壁に沿った両側からエッチングが進行し、振動板部材2と接する面から凸部が消失していく。このまま長時間放置すると、凸部は完全に消失してしまうが、エッチング時間を適当な時間に管理することで、振動板部材に接する側は消失し、天面側にだけ三角錐形状の凸部を残すことができる。実際的には、エッチング時間は加圧液室6の天面までの高さを規定するため所定の値に決まっているため、ウェットエッチング用マスクの凸状の遮蔽部の大きさを制御し、前記所定の値のエッチング時間で三角錐形状が残るように調整することが好ましい。
【0043】
次に、本発明の第2実施形態について図6を参照して説明する。なお、図6は同実施形態における加圧液室部分の平面説明図である。
ここでは、側壁面32a側の凸部33と側壁面32b側の凸部33とは液体の流れの方向において交互に配置されるように位置をずらして(頂点33a、33bの位置が液体の流れの方向において対向する側壁面32側に凸部33が形成されていない位置までずれて)形成されている。
【0044】
このように、両側壁面32a、32b間で凸部33の位置をずらして交互に配置することによって、液室間隔壁30の全域に渡って三角錐状の凸部33を均等に配置できるため、隔壁30全体の剛性を均一に高めることができる。また、個別液室内での液体の流れが前記第1実施形態よりもスムーズになって液体の流れの不均一性が低減し、流体抵抗値の上昇もより少なくなり、滴吐出性能を高めることができる。
【0045】
次に、本発明の第3実施形態について図7を参照して説明する。なお、図7は同実施形態における加圧液室部分の平面説明図である。
ここでは、複数の加圧液室6が同じ形状であり、液体の流れ方向に交互に位置をずらして、ノズル配列方向に千鳥状に配置されている。この場合、加圧液室6からノズル4に至る連通管5の部分も千鳥状に互い違いに配置される。
【0046】
このとき、隣接する加圧液室6、6間では凸部33の位置が液体の流れの方向において互い違いに配置される。
【0047】
これにより、連通管部分の剛性と液室間隔壁の全域の剛性を均一に高めることができる。
【0048】
次に、本発明の第4実施形態について図8を参照して説明する。なお、図8は同実施形態における加圧液室部分の凸部部分の拡大斜視説明図である。
ここでは、凸部33は、側壁面32と平行な面33eを設けて前述した頂点33aを取り除いた三角錐台形状としている。つまり、天面31及び側壁面32を二つの面とし側壁面と平行な面33eを有する三角錐台形状の凸部33を設けている。
【0049】
このような形状にしても前記各実施形態と同様の作用効果が得られるとともに、凸部33自体の剛性が前記実施形態よりも高くなって、一層液室間隔壁の剛性を高めることができる。
【0050】
このような構成は、第1実施形態と同じマスクを用いてウエットエッチングを行う場合に、エッチングの進行過程で必然的に形成される形であり、第1実施形態同様、エッチング時間もしくは凸状の遮蔽部の大きさの制御で容易に形成することができる。なお、第2実施形態の状態でさらにエッチングを継続すると、側壁面32と平行な面33eがエッチングによりだんだん小さくなり、いずれ第1実施形態の形状となる。
【0051】
なお、上記各実施形態の液体吐出ヘッドにインクを供給するタンクを一体にしたインクカートリッジを構成することもできる。
【0052】
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドを備える本発明に係る画像形成装置の一例について図9及び図10を参照して説明する。なお、図9は同装置の機構部の全体構成を説明する概略構成図、図10は同機構部の要部平面説明図である。
この画像形成装置はシリアル型画像形成装置であり、左右の側板221A、221Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド231、232でキャリッジ233を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0053】
このキャリッジ233には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための本発明に係る液体吐出ヘッドと同ヘッドに供給するインクを収容するタンクを一体化した液体吐出ヘッドユニットからなる記録ヘッド234を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0054】
記録ヘッド234は、それぞれ2つのノズル列を有する液体吐出ヘッドユニット234a、234bを1つのベース部材に取り付けて構成したもので、一方のヘッド234aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、他方のヘッド234bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。なお、ここでは2ヘッド構成で4色の液滴を吐出する構成としているが、1ヘッド当たり4ノズル列配置とし、1個のヘッドで4色の各色を吐出させることもできる。
【0055】
また、記録ヘッド234のタンク235には各色の供給チューブ236を介して、供給ユニット224によって各色のインクカートリッジ210から各色のインクが補充供給される。
【0056】
一方、給紙トレイ202の用紙積載部(圧板)241上に積載した用紙242を給紙するための給紙部として、用紙積載部241から用紙242を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)243及び給紙コロ243に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド244を備え、この分離パッド244は給紙コロ243側に付勢されている。
【0057】
そして、この給紙部から給紙された用紙242を記録ヘッド234の下方側に送り込むために、用紙242を案内するガイド部材245と、カウンタローラ246と、搬送ガイド部材247と、先端加圧コロ249を有する押さえ部材248とを備えるとともに、給送された用紙242を静電吸着して記録ヘッド234に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト251を備えている。
【0058】
この搬送ベルト251は、無端状ベルトであり、搬送ローラ252とテンションローラ253との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト251の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ256を備えている。この帯電ローラ256は、搬送ベルト251の表層に接触し、搬送ベルト251の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト251は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ252が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0059】
さらに、記録ヘッド234で記録された用紙242を排紙するための排紙部として、搬送ベルト251から用紙242を分離するための分離爪261と、排紙ローラ262及び排紙コロ263とを備え、排紙ローラ262の下方に排紙トレイ203を備えている。
【0060】
また、装置本体の背面部には両面ユニット271が着脱自在に装着されている。この両面ユニット271は搬送ベルト251の逆方向回転で戻される用紙242を取り込んで反転させて再度カウンタローラ246と搬送ベルト251との間に給紙する。また、この両面ユニット271の上面は手差しトレイ272としている。
【0061】
さらに、キャリッジ233の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド234のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む本発明に係るヘッドの維持回復装置である維持回復機構281を配置している。この維持回復機構281には、記録ヘッド234の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)282a、282b(区別しないときは「キャップ282」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード283と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け284などを備えている。
【0062】
また、キャリッジ233の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け288を配置し、この空吐出受け288には記録ヘッド234のノズル列方向に沿った開口部289などを備えている。
【0063】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ202から用紙242が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙242はガイド245で案内され、搬送ベルト251とカウンタローラ246との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド237で案内されて先端加圧コロ249で搬送ベルト251に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0064】
このとき、帯電ローラ256に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト251が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト251上に用紙242が給送されると、用紙242が搬送ベルト251に吸着され、搬送ベルト251の周回移動によって用紙242が副走査方向に搬送される。
【0065】
そこで、キャリッジ233を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド234を駆動することにより、停止している用紙242にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙242を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙242の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙242を排紙トレイ203に排紙する。
【0066】
このように、この画像形成装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを記録ヘッドとして備えるので、高画質画像を形成することができる。
【0067】
なお、ここでは、画像形成装置としてシリアル型画像形成装置で説明しているが、本発明に係る液体吐出ヘッドはライン型画像形成装置にも搭載することができる。
【0068】
また、上記実施形態では本発明をプリンタ構成の画像形成装置に適用した例で説明したが、これに限るものではなく、前述したように、例えば、プリンタ/ファックス/コピア複合機などの画像形成装置に適用することができ、また、前述したように狭義のインク以外の液体や定着処理液などを用いる画像形成装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 流路板
2 振動板部材
3 ノズル板
4 ノズル
5 ノズル連通路
6 加圧液室(個別液室)
7 流体抵抗部
8 導入部
10 共通液室
12 圧電部材
12Am、12B 圧電素子柱
17 フレーム部材
30 液室間隔壁
31 天面
32a、32b 側壁面
33 凸部
233 キャリッジ
234a、234b 記録ヘッド
411y、411m、411c、411k 記録ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する複数のノズルが形成されたノズル部材と、
前記ノズルが連通する溝状の複数の個別液室が形成された流路部材と、
前記個別液室の一面を形成する壁面部材と、を有し、
前記個別液室には、前記壁面部材と反対側の面を天面とし、複数の個別液室間の隔壁の面を側壁面としたとき、前記天面及び側壁面を二つの面とする三角錐形状又は前記天面及び側壁面を二つの面とし前記側壁面と平行な面を有する三角錐台形状の凸部が設けられている
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記凸部は、前記個別液室の天面及び壁面に沿う方向に複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記凸部は、前記個別流路の両側壁面に設けられ、かつ、液体の流れの方向において交互に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記複数の凸部は、隣接する個別液室間の隔壁の両側に液体の流れの方向において交互に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記複数の個別液室は形状が同じであり、
隣接する前記個別液室はノズル配列方向に千鳥状に配置され、
前記凸部は、各個別液室で液体の流れの方向において同じ位置に配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載の液滴吐出ヘッド
【請求項6】
前記凸部は、前記壁面部材と接していないことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−56286(P2012−56286A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204507(P2010−204507)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】