説明

液体吐出方法、液体吐出ヘッド、及び、液体吐出装置

【課題】高粘度液体の吐出を安定化させる。
【解決手段】この液体吐出方法に用いる液体吐出ヘッドは、液体が吐出されるノズルと、液体をノズルから吐出させるために液体に圧力変化を与える圧力室と、圧力室に連通し、圧力室に液体を供給する供給部と、を有する。液体の粘度は、6mPa・s以上であって15mPa・s以下の範囲内である。供給部の容積は、圧力室の容積の1/5よりも大きく、かつ、圧力室の容積の1/2未満である。圧力室の流路長さは、供給部の流路長さ以上であって供給部の流路長さの2倍以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出方法、液体吐出ヘッド、及び、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタ等の液体吐出装置には、液体が吐出されるノズルと、ノズルから液体を吐出させるべく、液体に圧力変化を与える圧力室と、リザーバに貯留された液体を圧力室に供給するための供給部とを有する液体吐出ヘッドを有するものがある。この液体吐出ヘッドでは、粘度が水の粘度に近い液体を対象にして、ヘッド内の液体流路における大きさが定められている。
【特許文献1】特開2005−34998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、インクジェット技術を利用して、一般的なインクよりも粘度の高い液体を吐出する試みがなされている。そして、従来の形状のヘッドでこのような粘度の高い液体を吐出させると、液体の吐出が不安定になるという問題が生じることが判った。例えば、液体の飛行曲がりが生じたり、吐出量の不足が生じたりする場合があることが判った。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、一般的なインクよりも粘度の高い液体について、吐出を安定化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するための主たる発明は、
液体吐出方法であって、
液体吐出ヘッドから液体を吐出させることを有し、
前記液体の粘度は、
6mPa・s以上であって15mPa・s以下の範囲内であり、
前記液体吐出ヘッドは、
液体が吐出されるノズルと、
前記液体を前記ノズルから吐出させるために前記液体に圧力変化を与える圧力室と、
前記圧力室に連通し、前記圧力室に前記液体を供給する供給部と、を有し、
前記供給部の容積は、
前記圧力室の容積の1/5よりも大きく、かつ、前記圧力室の容積の1/2未満であり、
前記圧力室の流路長さは、
前記供給部の流路長さ以上であって前記供給部の流路長さの2倍以下である、液体吐出方法である。
【0005】
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。
【0007】
すなわち、液体吐出方法であって、液体吐出ヘッドから液体を吐出させることを有し、前記液体の粘度は、6mPa・s以上であって15mPa・s以下の範囲内であり、前記液体吐出ヘッドは、液体が吐出されるノズルと、前記液体を前記ノズルから吐出させるために前記液体に圧力変化を与える圧力室と、前記圧力室に連通し、前記圧力室に前記液体を供給する供給部と、を有し、前記供給部の容積は、前記圧力室の容積の1/5よりも大きく、かつ、前記圧力室の容積の1/2未満であり、前記圧力室の流路長さは、前記供給部の流路長さ以上であって前記供給部の流路長さの2倍以下である、液体吐出方法を実現できることが明らかにされる。
このような液体吐出方法によれば、供給部内における液体の移動を最適化できる。その結果、高い粘度の液体について吐出を安定化できる。
【0008】
かかる液体吐出方法であって、前記供給部の断面積は、前記圧力室の断面積の1/3以上であって前記圧力室の断面積以下の範囲内であることが好ましい。
このような液体吐出方法によれば、圧力室への液体の供給不足を抑制できる。
【0009】
かかる液体吐出方法であって、前記ノズルのイナータンスは、前記供給部のイナータンスよりも小さいことが好ましい。
このような液体吐出方法によれば、液体に与えた圧力振動によって液体を効率よく吐出することができる。
【0010】
かかる液体吐出方法であって、前記供給部の容積は、2240000×10−18以上であって3920000×10−18以下の範囲内であることが好ましい。
このような液体吐出方法によれば、10ng前後の量の液体をノズルから吐出させることができる。
【0011】
かかる液体吐出方法であって、前記圧力室の流路長さは、500×10−6m以上であって1000×10−6m以下の範囲内であることが好ましい。
このような液体吐出方法によれば、10ng前後の量の液体をノズルから吐出させることができる。
【0012】
かかる液体吐出方法であって、前記供給部の断面積は、3.3×10−15以上であって10×10−15以下の範囲内であることが好ましい。
このような液体吐出方法によれば、10ng前後の量の液体をノズルから吐出させることができる。
【0013】
かかる液体吐出方法であって、前記圧力室は、前記圧力室の一部を区画し、変形によって前記液体に圧力変化を与える区画部を有することが好ましい。
このような液体吐出方法によれば、圧力室内の液体に効率よく圧力変化を与えることができる。
【0014】
かかる液体吐出方法であって、前記液体吐出ヘッドは、印加された吐出パルスにおける電位の変化パターンに応じた度合いで、前記区画部を変形させる素子を有することが好ましい。
このような液体吐出方法によれば、圧力室内の液体の圧力を精度良く制御できる。
【0015】
また、次の液体吐出ヘッドを実現できることも明らかにされる。
すなわち、液体が吐出されるノズルと、前記液体を前記ノズルから吐出させるために前記液体に圧力変化を与える圧力室と、前記圧力室に連通し、前記圧力室に前記液体を供給する供給部と、を有し、前記供給部の容積は、前記圧力室の容積の1/5よりも大きく、かつ、前記圧力室の容積の1/2未満であり、前記圧力室の流路長さは、前記供給部の流路長さ以上であって前記供給部の流路長さの2倍以下である、液体吐出ヘッドを実現できることも明らかにされる。
【0016】
また、次の液体吐出装置を実現できることも明らかにされる。
すなわち、吐出パルスを生成する吐出パルス生成部と、ノズルから液体を吐出させる液体吐出ヘッドであって、前記液体を前記ノズルから吐出させるために、区画部を変形させることで前記液体に圧力変化を与える圧力室と、印加された前記吐出パルスにおける電位の変化パターンに応じた度合いで、前記区画部を変形させる素子と、前記圧力室に連通し、前記圧力室に前記液体を供給する供給部と、を有し、前記供給部の容積は、前記圧力室の容積の1/5よりも大きく、かつ、前記圧力室の容積の1/2未満であり、前記圧力室の流路長さは、前記供給部の流路長さ以上であって前記供給部の流路長さの2倍以下である、液体吐出ヘッドと、を有する、液体吐出装置を実現できることも明らかにされる。
【0017】
===印刷システム===
図1に例示した印刷システムは、プリンタ1と、コンピュータCPとを有する。プリンタ1は液体吐出装置に相当し、用紙、布、フィルム等の媒体に向けて、液体の一種であるインクを吐出する。媒体は、液体が吐出される対象となる対象物である。コンピュータCPは、プリンタ1と通信可能に接続されている。プリンタ1に画像を印刷させるため、コンピュータCPは、その画像に応じた印刷データをプリンタ1に送信する。
【0018】
<プリンタ1の概要>
プリンタ1は、用紙搬送機構10、キャリッジ移動機構20、駆動信号生成回路30、ヘッドユニット40、検出器群50、及び、プリンタ側コントローラ60を有する。
【0019】
用紙搬送機構10は、用紙を搬送方向に搬送させる。キャリッジ移動機構20は、ヘッドユニット40が取り付けられたキャリッジを所定の移動方向(例えば紙幅方向)に移動させる。駆動信号生成回路30は、駆動信号COMを生成する。この駆動信号COMは、用紙への印刷時にヘッドHD(ピエゾ素子433,図2Aを参照)へ印加されるものであり、図4に一例を示すように、吐出パルスPSを含む一連の信号である。ここで、吐出パルスPSとは、ヘッドHDから滴状のインクを吐出させるために、ピエゾ素子433に所定の動作を行わせる電位の変化パターンである。駆動信号COMが吐出パルスPSを含むことから、駆動信号生成回路30は、吐出パルス生成部に相当する。なお、駆動信号生成回路30の構成や吐出パルスPSについては、後で説明する。ヘッドユニット40は、ヘッドHDとヘッド制御部HCとを有する。ヘッドHDは液体吐出ヘッドの一種であり、インクを用紙に向けて吐出させる。ヘッド制御部HCは、プリンタ側コントローラ60からのヘッド制御信号に基づき、ヘッドHDを制御する。なお、ヘッドHDについては後で説明する。検出器群50は、プリンタ1の状況を監視する複数の検出器によって構成される。これらの検出器による検出結果は、プリンタ側コントローラ60に出力される。プリンタ側コントローラ60は、プリンタ1における全体的な制御を行う。このプリンタ側コントローラ60についても後で説明する。
【0020】
<ヘッドHDについて>
図2Aに示すように、ヘッドHDは、ケース41と、流路ユニット42と、ピエゾ素子ユニット43とを有する。ケース41は、ピエゾ素子ユニット43を収容して固定するための収容空部411が内部に設けられた部材である。このケース41は、例えば樹脂材によって作製される。そして、ケース41の先端面には、流路ユニット42が接合されている。
【0021】
流路ユニット42は、流路形成基板421と、ノズルプレート422と、振動板423とを有する。そして、流路形成基板421における一方の表面にはノズルプレート422が接合され、他方の表面には振動板423が接合されている。流路形成基板421には、圧力室424となる溝部、インク供給路425となる溝部、及び、共通インク室426となる開口部などが形成されている。この流路形成基板421は、例えばシリコン基板によって作製されている。圧力室424は、ノズル427の並び方向に対して直交する方向に細長い室として形成されている。インク供給路425は、圧力室424と共通インク室426との間を連通する。このインク供給路425は、共通インク室426に貯留されたインク(液体の一種)を圧力室424に供給する。従って、インク供給路425は、液体を圧力室424に供給するための供給部の一種である。共通インク室426は、インクカートリッジ(図示せず)から供給されたインクを一旦貯留する部分であり、共通の液体貯留室に相当する。
【0022】
ノズルプレート422には、複数のノズル427が、所定の並び方向に所定の間隔で設けられている。インクは、これらのノズル427を通じてヘッドHDの外に吐出される。このノズルプレート422は、例えばステンレス板やシリコン基板によって作製されている。
【0023】
振動板423は、例えばステンレス製の支持板428に樹脂製の弾性体膜429を積層した二重構造を採っている。振動板423における各圧力室424に対応する部分は、支持板428が環状にエッチング加工されている。そして、環内には島部428aが形成されている。この島部428aと島部周辺の弾性体膜429aとがダイヤフラム部423aを構成する。このダイヤフラム部423aは、ピエゾ素子ユニット43が有するピエゾ素子433によって変形し、圧力室424の容積を可変する。すなわち、ダイヤフラム部423aは、圧力室424の一部を区画し、変形によって圧力室424内のインク(液体)に圧力変化を与える区画部に相当する。
【0024】
ピエゾ素子ユニット43は、ピエゾ素子群431と、固定板432とを有する。ピエゾ素子群431は櫛歯状をしている。そして、櫛歯の1つ1つがピエゾ素子433である。各ピエゾ素子433の先端面は、対応する島部428aに接着される。固定板432は、ピエゾ素子群431を支持するとともに、ケース41に対する取り付け部となる。この固定板432は、例えばステンレス板によって構成されており、収容空部411の内壁に接着される。
【0025】
ピエゾ素子433は、電気機械変換素子の一種であり、圧力室424内の液体に圧力変化を与えるための動作(変形動作)をする素子に相当する。図2Aに示すピエゾ素子433は、隣り合う電極同士の間に電位差を与えることにより、積層方向と直交する素子長手方向に伸縮する。即ち、上記の電極は、所定電位の共通電極434と、駆動信号COM(吐出パルスPS)に応じた電位になる駆動電極435とを有する。そして、両電極434,435に挟まれた圧電体436は、共通電極434と駆動電極435との電位差に応じた度合いで変形する。ピエゾ素子433は、圧電体436の変形に伴って素子の長手方向に伸縮する。本実施形態において、共通電極434は、グランド電位、若しくは、グランド電位よりも所定電位だけ高いバイアス電位に定められる。そして、ピエゾ素子433は、駆動電極435の電位が共通電極434の電位よりも高くなるほど収縮する。反対に、駆動電極435の電位が共通電極434の電位に近付くほど、或いは、共通電極434の電位よりも低くなるほど伸張する。
【0026】
前述したように、ピエゾ素子ユニット43は、固定板432を介してケース41に取り付けられている。このため、ピエゾ素子433が収縮すると、ダイヤフラム部423aは、圧力室424から遠ざかる方向に引っ張られる。これにより、圧力室424が膨張される。反対に、ピエゾ素子433が伸長すると、ダイヤフラム部423aが圧力室424側に押される。これにより、圧力室424が収縮する。圧力室424内のインクには、圧力室424の膨張や収縮に起因して圧力変化が生じる。すなわち、圧力室424の収縮に伴って圧力室424内のインクは加圧され、圧力室424の膨張に伴って圧力室424内のインクは減圧される。ピエゾ素子433の伸縮状態は駆動電極435の電位に応じて定まるので、圧力室424の容積も駆動電極435の電位に応じて定まる。従って、ピエゾ素子433は、印加された吐出パルスPSにおける電位の変化パターンに応じた度合いで、ダイヤフラム部423a(区画部)を変形させる素子といえる。そして、圧力室424内のインクに対する加圧度合いや減圧度合いは、駆動電極435における単位時間あたりの電位変化量等によって定めることができる。
【0027】
<インク流路について>
ヘッドHDには、共通インク室426からノズル427に至る一連のインク流路(液体で満たされる液体流路に相当する)が、ノズル427の数に応じた複数設けられている。このインク流路では、圧力室424に対して、ノズル427及びインク供給路425がそれぞれ連通している。このため、インクの流れなどの特性を解析する場合、ヘルムホルツの共鳴器の考え方が適用される。図2Bは、この考え方に基づくヘッドHDの構造を模式的に説明する図である。
【0028】
一般的なヘッドHDにおいて、圧力室424の長さL424は200μmから2000μmの範囲内に定められる。圧力室424の幅W424は20μmから300μmの範囲内に定められ、圧力室424の高さH424は30μmから500μmの範囲内に定められる。そして、インク供給路425の長さL425は50μmから2000μmの範囲内に定められる。インク供給路425の幅W425は20μmから300μmの範囲内に定められ、インク供給路425の高さH425は30μmから500μmの範囲内に定められる。また、ノズル427の直径φ427は10μmから40μmの範囲内に定められ、ノズル427の長さL427は40μmから100μmの範囲内に定められる。
【0029】
ここで、図2Bはインク流路を模式的に説明する図である。このため、インク流路は、実際とは異なる形状で示されている。このようなインク流路では、圧力室424内のインクに圧力変化を与えることで、ノズル427からインクを吐出させる。このとき、圧力室424、インク供給路425、及び、ノズル427は、ヘルムホルツの共鳴器のように機能する。このため、圧力室424内のインクに圧力が加わると、この圧力の大きさはヘルムホルツ周期と呼ばれる固有の周期で変化する。すなわち、インクには圧力振動が生じる。
【0030】
ここで、ヘルムホルツ周期(インクの固有振動周期)Tcは、一般的には次式(1)で表すことができる。
Tc=1/f
f=1/2π√〔(Mn+Ms)/(Mn×Ms×(Cc+Ci))〕・・・(1)
式(1)において、Mnはノズル427のイナータンス(単位断面積あたりのインクの質量、後述する。)、Msはインク供給路425のイナータンス、Ccは圧力室424のコンプライアンス(単位圧力あたりの容積変化、柔らかさの度合いを示す。)、Ciはインクのコンプライアンス(Ci=体積V/〔密度ρ×音速c2〕)である。
この圧力振動の振幅は、インク流路をインクが流れることで次第に小さくなる。例えば、ノズル427やインク供給路425における損失、及び、圧力室424を区画する壁部等における損失により、圧力振動は減衰する。
【0031】
一般的なヘッドHDにおいて、圧力室424におけるヘルムホルツ周期は5μsから10μsの範囲内に定められる。例えば、図2Bのインク流路において、圧力室424の幅W424を100μm、高さH424を70μm、長さL424を1000μmとし、インク供給路425の幅W425を50μm、高さH425を70μm、長さL425を500μmとし、ノズル427の直径φ427を30μm、長さL427を100μmとした場合、圧力室424におけるヘルムホルツ周期は8μs程度になる。なお、このヘルムホルツ周期は、隣り合う圧力室424同士を区画する壁部の厚さ、弾性体膜429の厚さやコンプライアンス、流路形成基板421やノズルプレート422の素材によっても変化する。
【0032】
<プリンタ側コントローラ60について>
プリンタ側コントローラ60は、プリンタ1における全体的な制御を行う。例えば、コンピュータCPから受け取った印刷データや各検出器からの検出結果に基づいて制御対象部を制御し、用紙に画像を印刷させる。図1に示すように、プリンタ側コントローラ60は、インタフェース部61と、CPU62と、メモリ63とを有する。インタフェース部61は、コンピュータCPとの間でデータの受け渡しを行う。CPU62は、プリンタ1の全体的な制御を行う。メモリ63は、コンピュータプログラムを格納する領域や作業領域等を確保する。CPU62は、メモリ63に記憶されているコンピュータプログラムに従い、各制御対象部を制御する。例えば、CPU62は、用紙搬送機構10やキャリッジ移動機構20を制御する。また、CPU62は、ヘッドHDの動作を制御するためのヘッド制御信号をヘッド制御部HCに送信したり、駆動信号COMを生成させるための制御信号を駆動信号生成回路30に送信したりする。
【0033】
ここで、駆動信号COMを生成させるための制御信号はDACデータとも呼ばれ、例えば複数ビットのデジタルデータである。このDACデータは、生成される駆動信号COMの電位の変化パターンを定める。従って、このDACデータは、駆動信号COMや吐出パルスPSの電位を示すデータともいえる。このDACデータは、メモリ63の所定領域に記憶されており、駆動信号COMの生成時に読み出されて駆動信号生成回路30へ出力される。
【0034】
<駆動信号生成回路30について>
駆動信号生成回路30は、吐出パルス生成部として機能し、DACデータに基づき、吐出パルスPSを有する駆動信号COMを生成する。図3に示すように、駆動信号生成回路30は、DAC回路31と、電圧増幅回路32と、電流増幅回路33とを有する。DAC回路31は、デジタルのDACデータをアナログ信号に変換する。電圧増幅回路32は、DAC回路31で変換されたアナログ信号の電圧を、ピエゾ素子433を駆動できるレベルまで増幅する。このプリンタ1では、DAC回路31から出力されるアナログ信号は最大3.3Vであるのに対し、電圧増幅回路32から出力される増幅後のアナログ信号(便宜上、波形信号ともいう。)は最大42Vである。電流増幅回路33は、電圧増幅回路32からの波形信号について電流の増幅をし、駆動信号COMとして出力する。この電流増幅回路33は、例えば、プッシュプル接続されたトランジスタ対によって構成される。
【0035】
<ヘッド制御部HCについて>
ヘッド制御部HCは、駆動信号生成回路30で生成された駆動信号COMの必要部分をヘッド制御信号に基づいて選択し、ピエゾ素子433へ印加する。このため、図3に示すように、ヘッド制御部HCは、駆動信号COMの供給線の途中に、ピエゾ素子433毎に設けられた複数のスイッチ44を有する。そして、ヘッド制御部HCは、ヘッド制御信号からスイッチ制御信号を生成する。このスイッチ制御信号によって各スイッチ44を制御することで、駆動信号COMの必要部分(例えば吐出パルスPS)がピエゾ素子433へ印加される。このとき、必要部分の選択の仕方次第で、ノズル427からのインクの吐出を制御できる。
【0036】
<駆動信号COMについて>
次に、駆動信号生成回路30によって生成される駆動信号COMについて説明する。図4に示すように、駆動信号COMには、繰り返し生成される複数の吐出パルスPSが含まれている。これらの吐出パルスPSは、いずれも同じ波形をしている。すなわち、電位の変化パターンが同じである。前述したように、この駆動信号COMは、ピエゾ素子433が有する駆動電極435に印加される。これにより、固定電位とされた共通電極434との間に、電位の変化パターンに応じた電位差が生じる。その結果、ピエゾ素子433は、電位の変化パターンに応じて伸縮し、圧力室424の容積を変化させる。
【0037】
例示した吐出パルスPSの電位は、基準電位としての中間電位VBから最高電位VHまで上昇した後に、最低電位VLまで下降する。そして、中間電位VBまで上昇する。前述したように、ピエゾ素子433は、駆動電極435の電位が共通電極434の電位よりも高いほど収縮して、圧力室424の容積を拡大させる。
【0038】
従って、この吐出パルスPSがピエゾ素子433に印加されると、圧力室424は、中間電位VBに対応する基準容積から、最高電位VHに対応する最大容積まで膨張する。その後、最低電位VLに対応する最小容積まで収縮し、基準容積まで膨張する。そして、最大容積から最小容積に収縮する際に、圧力室424内のインクが加圧され、ノズル427からインク滴が吐出される。従って、この吐出パルスPSにおける最高電位VHから最低電位VLまで変化する部分が、インクを吐出させるための吐出部分に相当する。
【0039】
インク滴の吐出周波数は、相前後して生成される吐出部分の間隔によって定められる。例えば、図4の例において、実線の駆動信号COMではインク滴が期間Ta毎に吐出され、一点鎖線の駆動信号COMではインク滴が期間Tb毎に吐出されている。このため、実線の駆動信号COMによる吐出周波数は、一点鎖線の駆動信号COMによる吐出周波数よりも高いといえる。
【0040】
<各実施形態の概要>
この種のプリンタ1では、インクの吐出を安定化させたいという要望がある。例えば、低い周波数でインク滴を吐出させた場合と、高い周波数でインク滴を吐出させた場合とで、インク滴の量や飛行方向、或いは、飛行速度等を同じにしたいという要望がある。しかし、一般的なインクの粘度(約1ミリパスカル秒[mPa・s])よりも十分に高い粘度のインク、具体的には粘度が6〜20mPa・sのインク(便宜上、高粘度インクともいう。)を、従来のヘッドHDで吐出させた場合には、インクの吐出が不安定になってしまうという問題があった。図5Aは、高粘度インクが安定な状態で吐出されている様子を示している。これに対し、図5Bは、高粘度インクが不安定な状態で吐出されている様子を示している。これらの図を比較すると、不安定な状態では、飛行速度が不足しているインク滴や吐出曲がりが生じているインク滴があることが判る。
【0041】
インクの吐出を不安定にする要因は種々考えられるが、その要因に、圧力室424とインク供給路425との間の、構造上のバランスのずれがあると考えられる。具体例を挙げると、圧力室424の容積とインク供給路425の容積の比のずれ、圧力室424の断面積とインク供給路425の断面積の比のずれ、及び、圧力室424の流路長さとインク供給路425の流路長さの比のずれなどが要因として挙げられる。そして、容積の比と流路長さの比がずれている場合には、インク供給路425内におけるインクの移動が多くなりすぎたり少なくなり過ぎたりしてしまう。また、断面積の比と流路長さの比がずれている場合には、インク供給路425を通じて流れるインクの量が多くなりすぎたり少なくなり過ぎたりしてしまう。これらの要因によって、インクの吐出が不安定になってしまうと考えられる。
【0042】
これらの事情に鑑み、第1実施形態のヘッドHDでは、インク供給路425の容積を圧力室424の容積に基づいて定めるととともに、圧力室424の流路長さをインク供給路425の流路長さに基づいて定めている。すなわち、図2Bに示すように、インク供給路425の容積V425(W425×H425×L425)に関し、圧力室424の容積V424(W424×H424×L424)の1/5よりも大きく、かつ、圧力室424の容積V424の1/2未満の範囲内に定めている。そして、圧力室424の長さL424に関し、インク供給路425の長さL425以上であってこの長さL425の2倍以下の範囲内に定めている。これらの条件を満たすヘッドHDでは、圧力室424内のインクの圧力変化に基づき、インク供給路425内におけるインクの移動を適切に制御できると考えられる。その結果、高粘度インクについて吐出を安定化できる。
【0043】
また、第2実施形態のヘッドHDでは、インク供給路425の断面積を圧力室424の断面積に基づいて定めるとともに、圧力室424の流路長さをインク供給路425の流路長さに基づいて定めている。すなわち、図2Bに示すように、インク供給路425の断面積S425に関し、圧力室424の断面積S424の1/3以上であって圧力室424の断面積S424以下の範囲内に定めている。そして、圧力室424の長さL424に関し、インク供給路425の長さL425以上であってこの長さL425の2倍以下に定めている。なお、圧力室424の断面積S424やインク供給路425の断面積S425とは、図2Bに示すように、モデル化したインク流路におけるインクの流れ方向と直交する面の面積のことである。これらの条件を満たすヘッドHDでは、インク供給路425を流れるインクの量が適切に調整されると考えられる。その結果、高粘度インクについて吐出を安定化できる。
【0044】
===第1実施形態===
<吐出パルスPSについて>
まず、評価に用いた吐出パルスPSについて説明する。図6はこの吐出パルスPS1を説明する図である。なお、図6において、縦軸は駆動信号COM(吐出パルスPS1)の電位であり、横軸は時間である。
【0045】
図6に示す吐出パルスPS1は、符号P1から符号P5で示される複数の部分を有する。すなわち、吐出パルスPS1は、第1減圧部分P1と、第1電位保持部分P2と、加圧部分P3と、第2電位保持部分P4と、第2減圧部分P5とを有する。
【0046】
第1減圧部分P1は、タイミングt1からタイミングt2に亘って生成される部分である。この第1減圧部分P1は、タイミングt1における電位(始端電位に相当する)が中間電位VBであり、タイミングt2における電位(終端電位に相当する)が最高電位VHである。このため、第1減圧部分P1がピエゾ素子433に印加されると、圧力室424は、基準容積から最大容積まで第1減圧部分P1の生成期間に亘って膨張する。
【0047】
この吐出パルスPS1における中間電位VBは、吐出パルスPS1における最低電位VLよりも、最高電位VHから最低電位VLまでの差(26V)の32%分高い電位に定められている。また、第1減圧部分P1の生成期間は2.0μsである。
【0048】
第1電位保持部分P2は、タイミングt2からタイミングt3に亘って生成される部分である。この第1電位保持部分P2は、最高電位VHで一定である。このため、第1電位保持部分P2がピエゾ素子433に印加されると、圧力室424は、第1電位保持部分P2の生成期間に亘って最大容積が維持される。この吐出パルスPS1において、第1電位保持部分P2の生成期間は2.1μsである。
【0049】
加圧部分P3は、タイミングt3からタイミングt4に亘って生成される部分である。この加圧部分P3は、始端電位が最高電位VHであり、終端電位が最低電位VLである。このため、加圧部分P3がピエゾ素子433に印加されると、圧力室424は、最大容積から最小容積まで加圧部分P3の生成期間に亘って収縮する。この圧力室424の収縮に伴ってインクが吐出されるので、加圧部分P3はインク滴を吐出させるための吐出部分に相当する。この吐出パルスPS1において、加圧部分P3の生成期間は2.0μsである。
【0050】
第2電位保持部分P4は、タイミングt4からタイミングt5に亘って生成される部分である。第2電位保持部分P4は、最低電位VLで一定である。このため、第2電位保持部分P4がピエゾ素子433に印加されると、圧力室424は、第2電位保持部分P4の生成期間に亘って最小容積が維持される。この吐出パルスPS1において、第2電位保持部分P4の生成期間は5.0μsである。
【0051】
第2減圧部分P5は、タイミングt5からタイミングt6に亘って生成される部分である。この第2減圧部分P5は、始端電位が最低電位VLであり、終端電位が中間電位VBである。このため、第2減圧部分P5がピエゾ素子433に印加されると、圧力室424は、最小容積から基準容積まで第2減圧部分P5の生成期間に亘って膨張する。この吐出パルスPS1において、第2減圧部分P5の生成期間は3.0μsである。
【0052】
<粘度が15mPa・s秒のインクについて>
図7は、評価対象の各ヘッドHDにおける構造上のパラメータを説明する図である。図7において、縦軸はインク供給路425の容積V425の値を示し、横軸は圧力室424の長さ(流路長さ)L424を示す。そして、No1〜No16の各点は、粘度が15mPa・s秒のインク(比重はほぼ1である)を連続的に吐出させるシミュレーションを行ったヘッドHDを示している。例えば、No1のヘッドHDは、インク供給路425の容積V425が4840000×10−18であって、圧力室424の長さL424が450μm(10−6m)であることを示している。また、No16のヘッドHDは、インク供給路425の容積V425が2000000×10−18であって、圧力室424の長さL424が1100μmであることを示している。
【0053】
ここで、シミュレーションに用いた他の数値は次の通りである。まず、評価対象の各ヘッドHD(No1〜No16のヘッドHD)における、圧力室424の高さH424は80μmであり、容積V424は9680000×10−18である。そして、インク供給路425の深さH425は80μmであり、長さL425は圧力室424の長さL424に等しい。ノズル427の直径φ427は25μmであり、ノズル427の長さL427は80μmである。
【0054】
なお、シミュレーションに際し、ノズル427は、略漏斗状をしているもの、すなわちテーパー部分427aとストレート部分427bを有するものを対象にした(図82を参照)。ここで、テーパー部分427aは、円錐台状の空間を区画する部分であり、圧力室424から離れる程に開口面積が小さくなっている。すなわち、先細り形状に設けられている。ストレート部分427bは、テーパー部分427aにおける小径側の端部に連続して設けられている。このストレート部分427bは、円柱状の空間を区画する部分であり、ノズル方向と直交する面で、断面積がほぼ一定の部分である。そして、ノズル427の直径φ427は、ストレート部分427bにおける直径を意味する。このシミュレーションにおいて、ストレート部分427bの長さは20μmとし、テーパー角θ427は25度とした。また、ノズル427の長さL427は、テーパー部分427aとストレート部分427bとを足し合わせたものになる。従って、テーパー部分427aの長さは60μmになる。このような略漏斗状のノズル427については、図83に示すように、複数の円盤状空間で近似することにより、容積V427やイナータンス等を容易に解析できる。
【0055】
評価対象の各ヘッドHDのうち、本実施形態に属するヘッドは、No6,7,10,11の各ヘッドHDである。そして、他のヘッドHDは、比較例のヘッドである。以下、これらのヘッドHDによるシミュレーション結果について説明する。
【0056】
<No6のヘッドHDについて>
No6のヘッドHDは圧力室424の長さL424が500μmであり、インク供給路425の長さL425と等しい。また、インク供給路425の容積V425は3920000×10−18であり、圧力室424の容積V425の半分(4840000×10−18)よりも若干小さい。
【0057】
このようなインク流路を有するヘッドHDにおいて、図6の吐出パルスPS1をピエゾ素子433へ印加すると、ノズル427からはインク滴が吐出される。図8は、No6のヘッドHDによるインク滴の連続的な吐出時、具体的には60kHzの周波数で吐出させた場合におけるシミュレーション結果である。図8において、縦軸はメニスカス(ノズル427で露出しているインクの自由表面)の状態をインクの量で示しており、横軸は時間である。縦軸に関し、0ngは、定常状態におけるメニスカスの位置を示す。そして、正側に値が大きくなるほど、メニスカスは吐出方向に押し出された状態になっている。反対に、負側に値が大きくなるほど、メニスカスは圧力室424側に引き込まれた状態になっている。これらの縦軸や横軸の内容は、他の図(例えば図9〜図23)の縦軸や横軸にも同様にあてはまる。このため、他の図における説明は省略する。
【0058】
吐出パルスPS1の第1減圧部分P1がピエゾ素子433に印加されると、圧力室424は膨張する。この膨張に伴い圧力室424内のインクが負圧となり、インクがインク供給路425を通じて圧力室424側に流入する。また、インクが負圧になったことに伴って、メニスカスがノズル427内で圧力室424側に引き込まれる。
【0059】
メニスカスの圧力室424側への移動は、第1減圧部分P1の印加終了後も継続される。すなわち、圧力室424を区画する壁部や振動板423のコンプライアンス等により、メニスカスは第1電位保持部分P2の印加期間中も圧力室424側へ移動する。その後、メニスカスは圧力室424から遠ざかる方向に反転する(符号Aで示すタイミング)。このとき、加圧部分P3の印加に伴う圧力室424の収縮も加わるため、メニスカスの移動速度は速い。加圧部分P3の印加に伴って移動したメニスカスは柱状になる。そして、第2電位保持部分P4のピエゾ素子433への印加が終了するまでに、柱状になったメニスカスの先端側の一部分が切れ、滴状になって吐出される(符号Bで示すタイミング)。なお、図8において、タイミングBでのインク量が、吐出されたインク滴の量を示している。
【0060】
吐出の反動で、メニスカスは圧力室424側に速い速度で戻る。このとき、ピエゾ素子433には第2減圧部分P5が印加される。この第2減圧部分P5の印加に伴って圧力室424が膨張する。この膨張に伴い圧力室424内のインクが負圧となる。第2減圧部分P5が印加された後、メニスカスは、移動方向を吐出側に切り替える(符号Cで示すタイミング)。その後、メニスカスの移動方向が切り替わるタイミングで、次の吐出パルスPS1のピエゾ素子433への印加が開始される(符号Dで示すタイミング)。以降は、前述の動作が繰り返し行われる。
【0061】
なお、他の図(例えば図9〜図23)に示すシミュレーションでも図6の吐出パルスPS1をピエゾ素子433へ印加している。このため、タイミングA〜タイミングDでのメニスカスの挙動は上述した通りである。
【0062】
本実施形態では、図6の吐出パルスPS1にて60kHzの周波数でインク滴を繰り返し吐出させた場合に、吐出量として10ng以上を確保でき、かつ、吐出量が安定していることを、ヘッドHDの評価基準としている。10ng以上のインク滴を安定的に吐出できれば、高粘度インクを用いても、従来のインクを吐出するプリンタと同等以上の速度や画質で画像が印刷できるからである。No6のヘッドHDにおいて、4番目以降の各インク滴は、10.5ng程度の量で安定的に吐出されている。このため、No6のヘッドHDは、上記の評価基準を満たしているといえる。言い換えれば、高粘度インクを高い周波数で連続的に吐出させても、一滴の量が所定量以上であり、かつ、吐出量のばらつきが極めて少ないヘッドといえる。
【0063】
ところで、1番目から3番目の各インク滴には吐出量のばらつきが多少見られる。これは、慣性によるインクの流れが少なく、安定していないことが原因と考えられる。ここで、慣性によるインクの流れとは、インク滴が次々と吐出されることで生じる、共通インク室426からノズル427へ向かうインクの流れのことである。そして、上記の評価基準は、インク滴の連続的な吐出時を対象としている。このため、4番目以降の各インク滴について吐出量や吐出周波数が安定していれば、1番目から3番目の各インク滴に多少の吐出量のばらつきが見られても、安定的な吐出が行われていると評価している。
【0064】
<No7のヘッドHDについて>
No7のヘッドHDは、圧力室424の長さL424及びインク供給路425の長さL425がともに1000μmである。そして、インク供給路425の容積V425は3920000×10−18である。No6のヘッドHDと比較すると、インク供給路425の容積V425が圧力室424の容積V424の半分よりも若干小さい点で共通している。一方、圧力室424の長さL424及びインク供給路425の長さL425は1000μmであり、No6のヘッドHDにおける同じ部分の長さの2倍になっている点で相違している。
図9は、No7のヘッドHDによる、インク滴の連続的な吐出時のシミュレーション結果である。No7のヘッドHDにおいて、4番目以降の各インク滴は、11.0ngを少し超えた程度の量で安定的に吐出されている。このため、No7のヘッドHDも、前述の評価基準を満たしているといえる。
【0065】
<No10のヘッドHDについて>
No10のヘッドHDは、圧力室424の長さL424及びインク供給路425の長さL425がともに500μmである。そして、インク供給路425の容積V425は2240000×10−18である。No6のヘッドHDと比較すると、圧力室424の長さL424及びインク供給路425の長さL425がともに500μmである点で共通している。一方、インク供給路425の容積V425が2240000×10−18であり、圧力室424の容積V424の1/5(約2000000×10−18)よりも若干大きい点で相違している。
図10は、No10のヘッドHDによる、インク滴の連続的な吐出時のシミュレーション結果である。No10のヘッドHDにおいて、4番目以降の各インク滴は、10.5ng程度の量で安定的に吐出されている。このため、No10のヘッドHDも、前述の評価基準を満たしているといえる。
【0066】
<No11のヘッドHDについて>
No11のヘッドHDは、圧力室424の長さL424及びインク供給路425の長さL425がともに1000μmである。そして、インク供給路425の容積V425は2240000×10−18である。No6のヘッドHDと比較すると、圧力室424の長さL424及びインク供給路425の長さL425が、No6のヘッドHDにおける同じ部分の長さの2倍になっている点で相違している。加えて、インク供給路425の容積V425が圧力室424の容積V424の1/5よりも若干大きい点でも相違している。
図11は、No11のヘッドHDによる、インク滴の連続的な吐出時のシミュレーション結果である。No11のヘッドHDにおいて、4番目以降の各インク滴は、11.5ng程度の量で安定的に吐出されている。このため、No11のヘッドHDも、前述の評価基準を満たしているといえる。
【0067】
<まとめ>
以上のように、No6,7,10,11の各ヘッドHDは、前述の評価基準を満たすことが確認された。すなわち、圧力室424の長さL424とインク供給路425の長さL425とが等しいヘッドHDの場合、インク供給路425の容積V425を、圧力室424の容積V424の1/5よりも大きく、かつ、圧力室424の容積V424の1/2未満の範囲内に定めることで、評価基準を満たすことが確認された。具体的には、圧力室424の長さL424及びインク供給路425の長さL425を500μmから1000μmの範囲内に定め、インク供給路425の容積V425を2240000×10−18以上であって3920000×10−18以下の範囲内に定めることで、粘度が15mPa・s秒のインクを60kHzの周波数で吐出させても、10ng以上の量が確保できることが確認された。
【0068】
これらのヘッドHDでは、インク供給路425の長さL425及び容積V425が圧力室424の形状との関係で定められている。そして、長さL425と容積V425に基づきインク供給路425の断面の大きさ(断面積S425)も定められる。ここで、圧力室424側から圧力変化を与えた場合における、インク供給路425内のインクの移動しやすさは、インク供給路425の断面積S425とインク供給路425の容積V425とインクの比重とによって定まる。簡単に説明すると、インク供給路425内のインクの質量が大きいほどインクは移動し難くなり、インク供給路425の断面積S425が大きいほどインクは移動し易くなる。
【0069】
前述の各ヘッドHDでは、圧力室424内のインクに与えられた圧力変化によって、インク供給路425内のインクやノズル427内のインクを移動させている。ここで、圧力室424内のインクに与え得る圧力変化の大きさには限りがある。そして、インク供給路425の長さL425及び容積V425と、圧力室424の長さL424及び圧力室424の容積V424との関係を、前述の各ヘッドHDのように定めることで、圧力室424内のインクに与え得る圧力変化の大きさに基づいて、インク供給路425内のインクの移動を最適化できる。これにより、例えば、圧力室424へのインクの供給不足を抑制でき、十分な量のインクを供給することができる。また、圧力室424内のインクの加圧時において、インク供給路425内のインクが共通インク室426側に過度に移動してしまうことも抑制できる。その結果、インク滴の連続的な吐出時において吐出を安定化できると考えられる。
【0070】
<ノズル427との関係について>
上記の各ヘッドHDにおいて、ノズル427の形状もインク滴の吐出に影響を与え得る。以下、ノズル427との関係について説明する。
【0071】
各ヘッドHDでは、インク供給路425の容積V425と長さL425とに基づき、断面積が定まる。これに伴ってインク供給路425の流路抵抗も定まる。ここで、流路抵抗とは、媒質の内部損失である。本実施形態では、インク流路を流れるインクが受ける力であって、インクの流れる方向とは逆向きの力である。この流路抵抗に関し、ノズル427の流路抵抗は、インク供給路425の流路抵抗よりも大きいことが好ましい。これは、ノズル427の流路抵抗をインク供給路425の流路抵抗よりも大きくすることで、圧力室424へのインクの供給不足が生じ難くなると考えられるからである。すなわち、共通インク室426からノズル427側へ向かうインクの流れに関し、インク供給路425の方をノズル427よりも流れ易くすることができると考えられる。
【0072】
ここで、円形状断面を有する流路の流路抵抗Rは次式(2)にて近似して表すことができ、矩形状断面を有する流路の流路抵抗Rは次式(3)にて近似して表すことができる。このため、これらの式に基づいて寸法を定めることで、ノズル427の流路抵抗をインク供給路425の流路抵抗よりも大きくすることができる。
流路抵抗R=(8×粘度μ×長さL)/(π×半径r) ・・・(2)
流路抵抗R=(12×粘度μ×長さL)/(幅W×高さH)・・・(3)
これらの式(2),(3)において、粘度μはインクの粘度、Lは流路の長さ、Wは流路の幅、Hは流路の高さ、rは円形状断面を有する流路の半径をそれぞれ表している。
【0073】
なお、前述したように、ノズル427は略漏斗状をしている。この場合、上記式(2)を適用するに際しては、例えば図83に示すように、テーパー部分427aをモデル化すればよい。すなわち、圧力室424側からストレート部分427bに近付くにつれて半径を段階的に小さくした複数の円盤状部分によって、テーパー部分427aを近似的に定義すればよい。
【0074】
また、各ヘッドHDで高粘度インクを吐出させる場合、圧力室424内のインクの圧力変化に基づき、ノズル427内のインクをインク供給路425内のインクよりも移動し易くした方が好ましい。言い換えると、ノズル427のイナータンスをインク供給路425のイナータンスよりも小さくすることが好ましい。なお、イナータンスとは、流路内におけるインクの移動し易さを表す値である。このようにすることで、圧力室424内のインクに与えた圧力変化を、インク滴の吐出に効率よく用いることができるからである。
【0075】
インクの密度をρ、流路の断面積をS、流路の長さをLとしたとき、イナータンスMは、次式(4)にて近似して表すことができる。このため、式(4)に基づいて寸法を定めることで、ノズル427のイナータンスをインク供給路425のイナータンスよりも小さくすることができる。
イナータンスM=(密度ρ×長さL)/断面積S ・・・(4)
この式(4)から、イナータンスは、単位断面積あたりのインクの質量と考えることができる。そして、イナータンスが大きいほど、インクは圧力室424内のインク圧力に応じて移動し難くなり、イナータンスが小さいほど、インクは圧力室424内の圧力に応じて移動しやすくなることが判る。
【0076】
図2Bに示すように、ここでの流路の長さLや断面積Sは、モデル化したインク流路における各部の長さや断面積を示している。長さLは、インクの流れ方向の長さである。また、断面積Sに関しては、インクの流れ方向とほぼ直交する面の面積である。例えば、圧力室424については符号S424で示すように、圧力室424の長手方向と直交する面の面積が断面積になる。インク供給路425もやノズル427も同様である。すなわち、符号S425や符号S427で示すように、インク供給路425やノズル427の長手方向と直交する面の面積が断面積になる。そして、ノズル427のテーパー部分427aに関しては、図83に示すように、円盤状部分の大きさにあわせて断面積S427を段階的に大きくすることで、近似することができる。
【0077】
<比較例について>
次に比較例のヘッドについて説明する。比較例のヘッドは、図7におけるNo1〜5,No8〜9,No12〜16の各ヘッドHDである。これらのヘッドHDの中で、No1〜No4の各ヘッドHDは、インク供給路425の容積V425が圧力室424の容積V424の1/2に定められている。具体的には、4840000×10−18に定められている。No13〜No16の各ヘッドHDは、インク供給路425の容積V425が圧力室424の容積V424のほぼ1/5に定められている。具体的には、2000000×10−18に定められている。No1,5,9,13の各ヘッドHDは、圧力室424の長さL424が下限の規定長さである500μmよりも短く定められている。具体的には450μmに定められている。No4,8,12,16の各ヘッドHDは、圧力室424の長さL424が上限の規定長さである1000μmよりも長く定められている。具体的には、1100μmに定められている。
図12から図23は、比較例の各ヘッドHDにおけるシミュレーション結果を示している。例えば、図12はNo1のヘッドHDによるシミュレーション結果を示し、図13はNo2のヘッドHDによるシミュレーション結果を示す。また、図23にはNo16のヘッドHDによるシミュレーション結果が示されている。
【0078】
<V425=1/2×V424の各ヘッドHDについて>
図12(No1のヘッドHD)から図15(No4のヘッドHD)に示すように、これらのヘッドHDでは、インク滴の量が基準値(10ng)よりも少ない。例えば、4番目以降のインク滴について最大の吐出量を比較すると、No1及びNo2のヘッドHDは約7.2ng(LV1a,LV2a)である。そして、No3及びNo4のヘッドHDは約7.8ng(LV3a,LV4a)である。また、各ヘッドHDでは吐出量が不安定になっている。すなわち、吐出量の周期的な変化が生じている。例えば、No1,2のヘッドHDでは、符号LV1b,LV2bの線で示すように、最小量のインク滴(約2ng)から最大量のインク滴(約7.2ng)まで4種類のインク滴が繰り返し吐出される。同様に、No3,4のヘッドHDでは、符号LV3b,LV3bの線で示すように、最小量のインク滴から最大量のインク滴まで5種類のインク滴が繰り返し吐出される。
【0079】
<V425≒1/5×V424の各ヘッドHDについて>
図20(No13のヘッドHD)から図23(No16のヘッドHD)に示すように、これらのヘッドHDでもインク滴の量が基準値よりも少ない。例えば、4番目以降のインク滴について最大の吐出量を比較すると、No13及びNo14のヘッドHDは約8ng(LV13a,LV14a)である。そして、No15のヘッドHDでは、4番目以降のインク滴で吐出量は揃っているものの、最大の吐出量は約7.5ng(LV15)である。同様に、No16のヘッドHDは約8.8ng(LV16)である。また、No13のヘッドHD及びNo14のヘッドHDでは吐出量が不安定になっている。これらのヘッドHDでは、符号LV13b,LV14bの線で示すように、最小量のインク滴(約2ng)から最大量のインク滴(約8ng)まで4種類のインク滴が繰り返し吐出されている。
【0080】
<L424=450μmの各ヘッドHDについて>
図12(No1のヘッドHD),図16(No5のヘッドHD),図18(No9のヘッドHD),図20(No13のヘッドHD)に示すように、これらのヘッドHDでもインク滴の量が基準値よりも少ない。例えば、4番目以降のインク滴について最大の吐出量を比較すると、No1及びNo5のヘッドHDは約7.2ng(LV1a,LV5a)であり、No9及びNo13のヘッドHDは約8ng(LV9a,LV13a)である。また、各ヘッドHDでは、吐出量の周期的な変化が生じている。すなわち、符号LV1b,LV5b,LV9b,LV13bの線で示すように、最小量のインク滴から最大量のインク滴まで4種類のインク滴が繰り返し吐出されている。
【0081】
<L424=1100μmの各ヘッドHDについて>
図15(No4のヘッドHD),図17(No8のヘッドHD),図19(No12のヘッドHD),図23(No16のヘッドHD)に示すように、これらのヘッドHDでもインク滴の量が基準値よりも少ない。例えば、4番目以降のインク滴について最大の吐出量を比較すると、No4及びNo8のヘッドHDは約7.8ng(LV4a,LV8a)である。そして、No12のヘッドHDでは、4番目以降のインク滴で吐出量は揃っているものの、最大の吐出量は約7.5ng(LV12)である。同様に、No16のヘッドHDは約8.8ng(LV16)である。また、No4のヘッドHD及びNo8のヘッドHDでは吐出量が不安定になっている。これらのヘッドHDでは、符号LV13b,LV14bの線で示すように、最小量のインク滴から最大量のインク滴まで5種類のインク滴が繰り返し吐出されている。
【0082】
<吐出量に関する考察>
比較例の各ヘッドHDについて、吐出量の不足や周期的な変化が生じる原因は正確には判っていない。ここで、吐出量の不足について考察すると、No1のヘッドHDからNo4のヘッドHDでは、圧力室424の容積が大きすぎるため、圧力室424内のインクに対する圧力変化が不足していることが考えられる。すなわち、圧力室424の容積に対して、ダイヤフラム部423a(区画部)の変形量が足りないことが考えられる。また、No12,15,16の各ヘッドHDでは、圧力室424の幅が狭くなりすぎたため、ダイヤフラム部423aの変形量が足りないことが考えられる。
また、吐出量の周期的な変化について考察すると、インク滴の吐出後において、圧力室424内のインクが十分に減圧されていないことが考えられる。例えば、1番目のインク滴を吐出させた直後において圧力室424内のインクの減圧が不十分な場合、インク供給路425内のインクは移動し難い状態にあると考えられる。このため、2番目のインク滴については、吐出量が過度に少なくなってしまっていると考えられる。そして、2番目のインク滴の吐出動作によって圧力室424内のインクが十分に減圧されると、インク供給路425内のインクが圧力室424側へ移動を開始し、圧力室424内にインクが充填されると考えられる。このことは、インク供給路425の長さL425が長いNo3,4のヘッドHDの方が、No1,2のヘッドHDよりもインクの充填に時間を要していることからも伺える。
【0083】
<吐出周波数に起因する吐出量の変化について>
前述したNo12,15,16の各ヘッドHDに関し、吐出周波数に起因する吐出量の変化について考察する。これらのヘッドHDでは、図25(No12のヘッドHD)、図26(No15のヘッドHD)及び図27(No16のヘッドHD)に示すように、1つのインク滴を吐出させた場合においてほぼ基準値の吐出量が得られている。しかし、図29(No12のヘッドHD)、図30(No15のヘッドHD)及び図31(No16のヘッドHD)に示すように、吐出周波数を30kHzにした場合、吐出量は基準値に達しなくなる。この例では、No12,15,16の各ヘッドHDにおいて、吐出量は約7.5ngまで減少している(LV12,LV15,LV16)。
これに対し、No11のヘッドHDでは、図24及び図28に示すように、1つのインク滴を吐出させた場合と吐出周波数を30kHzにした場合の何れも、吐出量は基準値以上になっている。このように、本実施形態のヘッドと比較例のヘッドとは、吐出周波数に起因する吐出量の変化について有意の差があるといえる。
【0084】
<粘度が6mPa・s秒のインクについて>
前述の評価結果においてインクの粘度は15mPa・sであった。そして、本実施形態のヘッドを用いることで、粘度が6mPa・sのインクも同様に吐出することができる。ここで、インクの粘度が低いということは、流路抵抗が低くなることを意味する。この場合、圧力室424やインク供給路425における流路抵抗が低いヘッドHDほど大きな影響を受けると考えられる。このため、流路抵抗の低いヘッドHD、すなわち圧力室424やインク供給路425が太く短いヘッドHDについて評価をすればよいといえる。
具体的には、No6のヘッドHDを評価すればよいといえる。すなわち、No6のヘッドHDで粘度が6mPa・s秒のインクを安定的に吐出できれば、No7,10,11の各ヘッドHDでもこのインクを高い周波数で安定的に吐出できるといえる。また、比較例としては、No1,2,5の各ヘッドHDを評価すればよいといえる。
【0085】
図32は、No6のヘッドHDを用いて粘度が6mPa・s秒のインク(比重はほぼ1である)を60kHzの周波数で吐出させた場合のシミュレーション結果である。No6のヘッドHDにおいて、4番目以降の各インク滴は、約10.5ngの量で安定的に吐出されている。この結果からNo6のヘッドHDも、前述の評価基準を満たしているといえる。すなわち、No6のヘッドHDは、粘度が6mPa・s秒のインクであっても、インク滴を高い周波数で安定的に吐出できるといえる。
【0086】
図33〜図35は、No1,2,5の各ヘッドHDを用いて粘度が6mPa・s秒のインクを60kHzの周波数で吐出させた場合のシミュレーション結果である。これらの図に示すように、何れのヘッドHDもインク滴の最大量が基準量(10ng)に達していない(LV1a,LV2a,LV5a)。また、吐出量のばらつきも生じている(LV1b,LV2b,LV5b)。これらの結果から、No1,2,5の各ヘッドHDでは、粘度が6mPa・s秒のインクを高い周波数で吐出させると、インク滴の量の不足が生じ、インク滴の量が不安定になるといえる。
【0087】
<他の吐出パルスPS2について>
次に、電位の変化パターンが前述の吐出パルスPS1と異なる他の吐出パルスPS2を用いた評価結果について説明する。図36は、他の吐出パルスPS2を説明する図である。なお、図36において、縦軸は駆動信号COMの電位であり、横軸は時間である。他の吐出パルスPS2は、符号P11から符号P13で示される複数の部分を有する。すなわち、他の吐出パルスPS2は、減圧部分P11と、電位保持部分P12と、加圧部分P13とを有する台形状の電位変化パターンに定められている。
【0088】
減圧部分P11は、タイミングt1における始端電位が最低電位VLであり、タイミングt2における終端電位が最高電位VHである。この吐出パルスPS2において減圧部分P11の生成期間は2.0μsである。電位保持部分P12は、タイミングt2からタイミングt3に亘って生成され、最高電位VHで一定の部分である。この吐出パルスPS2において電位保持部分P12の生成期間は2.0μsである。加圧部分P13は、タイミングt3における始端電位が最高電位VHであり、タイミングt4における終端電位が最低電位VLである。この吐出パルスPS2において、加圧部分P13の生成期間は2.0μsである。
【0089】
他の吐出パルスPS2がピエゾ素子433に印加されると、ノズル427からはインクが吐出される。このときのメニスカスの挙動は、前述の吐出パルスPS1をピエゾ素子433に印加した場合と同様である。簡単に説明すると、減圧部分P11に起因して圧力室424内のインクが減圧され、メニスカスが圧力室424側に引き込まれる。メニスカスの移動は電位保持部分P12の印加中も継続される。そして、メニスカスの移動方向が反転したタイミング(図38に符号Aで示すタイミング)にあわせて、加圧部分P13が印加される。これにより、圧力室424内のインクが加圧され、メニスカスが柱状に延びる。タイミングBでは、メニスカスの先端側の一部分がインク滴として吐出される。その反動でメニスカスは圧力室424側に急速に戻り、その後反転する(符号Cで示すタイミング)。そして、タイミングDでは、次の吐出パルスPS2の印加が開始される。
【0090】
<評価結果について>
図37は、評価対象のヘッドHDにおける構造上のパラメータを説明する図であり、先に説明した図7に対応している。ヘッドHDの構造は前述したものと同じであるが、便宜上、他の吐出パルスPS2を用いた評価結果については番号に[’]を付けて示している。従って、評価対象の各ヘッドHDのうち、本実施形態に属するヘッドは、No6’,7’,10’,11’の各ヘッドHDである。そして、残りの各ヘッドHDは、比較例のヘッドである。
【0091】
図38から図53は、粘度が15mPa・sのインクを、No1’〜No16’の各ヘッドHDを用いて吐出させた場合のシミュレーション結果である。
図38から図41に示すように、本実施形態に属するNo6’,7’,10’,11’の各ヘッドHDでは、インク滴を60kHzの高い周波数で吐出させても、基準量(10ng)以上の吐出量が確保でき、かつ、各インク滴のインク量が揃っていることが判る。これらのことから、他の吐出パルスPS2を用いても、前述の吐出パルスPS1を用いた場合と同様に、基準量以上のインク滴を高い周波数で安定的に吐出させることができるといえる。
一方、図42から図53に示すように、比較例としてのNo1’〜5’,No8’〜9’,No12’〜16’の各ヘッドHDでは、インク滴を高い周波数で吐出させると、最大吐出量が基準量に達せず(LV1a’〜LV5a’,LV8a’〜LV9a’,LV12’,LV13a’,LV15’〜LV16’)、吐出量に周期的なばらつきが生じている(LV1b’〜LV5b’,LV8b’LV〜9b’,LV13b’)。
これらの結果は、多少の差はあるが前述の吐出パルスPS1を用いた場合と同じことを示しているといえる。
【0092】
<L424=2×L425の各ヘッドHDについて>
先に説明した評価対象の各ヘッドHDは、いずれも圧力室424の長さL424とインク供給路425の長さL425が等しかった。ここで、圧力室424の長さL424がインク供給路425の長さL425の2倍のヘッドHDであっても、高粘度インクを同様に吐出することができる。以下、この点について説明する。
【0093】
図54は評価に用いた吐出パルスPS1’を説明する図である。この吐出パルスPS1’は、図6の吐出パルスPS1と同様に、第1減圧部分P1と、第1電位保持部分P2と、加圧部分P3と、第2電位保持部分P4と、第2減圧部分P5とを有する。図6の吐出パルスPS1との違いは、最高電位VHから最低電位VLまでの差(印加電圧)と中間電位VBとにある。すなわち、最高電位VHから最低電位VLまでの差は23Vに定められている。また、中間電位VBは、吐出パルスPS1’における最低電位VLよりも、最高電位VHから最低電位VLまでの差の45%分高い電位に定められている。なお、この吐出パルスPS1’が有する各部の機能及び生成期間は、図6の吐出パルスPS1と同様である。このため説明を省略する。
【0094】
図55は、評価対象のヘッドHDにおける構造上のパラメータを説明する図であり、先に説明した図7や図37に対応している。便宜上、この評価結果については各ヘッドHDの番号に[”]を付けて示す。従って、本実施形態に属するヘッドは、No6”,7”,10”,11”の各ヘッドHDである。各ヘッドHDの構造に関し、図7の各ヘッドHDとはインク供給路425の長さL425が相違している。すなわち、インク供給路425の長さL425が圧力室424の長さL424の1/2、言い換えれば、圧力室424の長さL424がインク供給路425の長さL425の2倍になっている点で相違している。例えば、圧力室424の長さが500μmのヘッドHD(No6”,10”のヘッドHD)において、インク供給路425の長さは250μmである。同様に、圧力室424の長さが1000μmのヘッドHD(No7”,11”のヘッドHD)において、インク供給路425の長さは500μmである。
【0095】
図56から図59に示すように、本実施形態に属するNo6”,7”,10”,11”の各ヘッドHDでは、インク滴を60kHzの高い周波数で吐出させても、基準量(10ng)以上の吐出量が確保でき、かつ、各インク滴のインク量が揃っていることが判る。これらのことから、圧力室424の長さL424がインク供給路425の長さL425の2倍のヘッドHDであっても、図7の各ヘッドHDと同様に、基準量以上のインク滴を高い周波数で安定的に吐出させることができるといえる。
【0096】
先の評価結果とあわせて考えると、圧力室424の長さに関しては、インク供給路425の長さL425以上であってインク供給路425の長さL425の2倍以下の範囲内であれば、前述の評価基準を満たせるといえる。圧力室424の長さについて考察すると、この範囲内に定めることで、インク滴の連続的な吐出に起因して生じる、共通インク室426からノズル427側へ向かうインクの流れを有効に使用できたことが考えられる。例えば、このインクの流れを、インク滴の吐出を補助する目的で使用できたことが考えられる。
【0097】
===第2実施形態===
前述したように、第2実施形態のヘッドHDでは、インク供給路425の断面積S425を、圧力室424の断面積S424の1/3以上であってこの断面積S424以下の範囲内に定めている。また、圧力室424の流路長さL424を、インク供給路425の長さL425以上であってこの長さL425の2倍以下に定めている。以下、第2実施形態のヘッドHDの評価結果について説明する。なお、評価に用いた吐出パルスPSは、図6にて説明した吐出パルスPS1である。このため、説明は省略する。
【0098】
<粘度が15mPa・s秒のインクについて>
図60は、評価対象の各ヘッドHDにおける構造上のパラメータを説明する図である。図60において、縦軸はインク供給路425の断面積S425を示し、横軸は圧力室424の長さL424を示す。そして、No1〜No16の各点は、粘度が15mPa・s秒のインクを連続的に吐出させるシミュレーションを行ったヘッドHDを示している。例えば、No1のヘッドHDは、インク供給路425の断面積S425が11×10−15であって、圧力室424の長さL424が450μmであることを示している。また、No16のヘッドHDは、インク供給路425の断面積S425が2.9×10−15であって、圧力室424の長さL424が1100μmであることを示している。
【0099】
ここで、シミュレーションに用いた他の数値は次の通りである。まず、評価対象の各ヘッドHD(No1〜No16のヘッドHD)における、圧力室424の高さH424は80μmであり、断面積S424は10×10−15である。そして、インク供給路425の深さH425は80μmであり、長さL425は500μmである。また、ノズル427の形状は第1実施形態と同じである。
【0100】
評価対象の各ヘッドHDのうち、本実施形態に属するヘッドは、No6,7,10,11の各ヘッドHDである。そして、他のヘッドHDは、比較例のヘッドである。以下、これらのヘッドHDによるシミュレーション結果について説明する。
【0101】
<No6のヘッドHDについて>
No6のヘッドHDは、圧力室424の長さL424が500μmであり、インク供給路425の断面積S425が10×10−15である。つまり、インク供給路425の断面積S425は、圧力室424の断面積S424に等しくなっている。
図61は、No6のヘッドHDによるインク滴の連続的な吐出時のシミュレーション結果である。すなわち、図6の吐出パルスPS1を用いて、インク滴を60kHzの周波数で吐出させた場合のシミュレーション結果である。No6のヘッドHDにおいて、4番目以降の各インク滴は、10.5ng程度の量で安定的に吐出されている。このため、No6のヘッドHDは、前述の評価基準を満たしているといえる。
【0102】
<No7のヘッドHDについて>
No7のヘッドHDは、圧力室424の長さL424が1000μmであり、インク供給路425の断面積S425が10×10−15である。No6のヘッドHDと比較すると、インク供給路425の断面積S425が圧力室424の断面積S424と等しい点で共通している。一方、圧力室424の長さL424が1000μmであり、インク供給路425の長さL425の2倍になっている点で相違している。
図62は、No7のヘッドHDによる、インク滴の連続的な吐出時のシミュレーション結果である。No7のヘッドHDにおいて、4番目以降の各インク滴は、11.5ng程度の量で安定的に吐出されている。このため、No7のヘッドHDも、前述の評価基準を満たしているといえる。
【0103】
<No10のヘッドHDについて>
No10のヘッドHDは、圧力室424の長さL424が500μmであり、インク供給路425の断面積S425が3.3×10−15である。No6のヘッドHDと比較すると、圧力室424の長さL424がインク供給路425の長さL425と等しい点で共通している。一方、インク供給路425の断面積S425が圧力室424の断面積S424のほぼ1/3になっている点で相違している。
図63は、No10のヘッドHDによる、インク滴の連続的な吐出時のシミュレーション結果である。No10のヘッドHDにおいて、4番目以降の各インク滴は、10.5ng程度の量で安定的に吐出されている。このため、No10のヘッドHDも、前述の評価基準を満たしているといえる。
【0104】
<No11のヘッドHDについて>
No11のヘッドHDは、圧力室424の長さL424が1000μmであり、インク供給路425の断面積S425が3.3×10−15である。No6のヘッドHDと比較すると、圧力室424の長さL424が1000μmであり、インク供給路425の長さL425の2倍になっている点、及び、インク供給路425の断面積S425が圧力室424の断面積S424のほぼ1/3になっている点で相違している。
図64は、No11のヘッドHDによる、インク滴の連続的な吐出時のシミュレーション結果である。No11のヘッドHDにおいて、4番目以降の各インク滴は、11ngを少し超えた程度の量で安定的に吐出されている。このため、No11のヘッドHDも、前述の評価基準を満たしているといえる。
【0105】
<まとめ>
以上のように、No6,7,10,11の各ヘッドHDは、前述の評価基準を満たすことが確認された。すなわち、圧力室424の長さL424をインク供給路425の長さL425以上であってこの長さL425の2倍以下の範囲内に定めたヘッドHDに関し、インク供給路425の断面積S425を圧力室424の断面積S424の1/3以上であってこの断面積S424以下の範囲内に定めることで、評価基準を満たすことが確認された。具体的には、圧力室424の長さL424を500μmから1000μmの範囲内に定め、インク供給路425の断面積S425を3.3×10−15以上であって10×10−15以下の範囲内に定めることで、粘度が15mPa・s秒のインクを60kHzの周波数で吐出させても、10ng以上の量が確保できることが確認された。
【0106】
これらのヘッドHDでは、インク供給路425の断面積S425(開口の大きさ)が圧力室424の断面積S424との関係で定められているので、インク供給路425を流れるインクの量が適切に調整されると考えられる。また、インク供給路425の断面積S425は、最大でも圧力室424の断面積S424と同じである。このため、インクがインク供給路425内を流れる場合に、インク供給路425内での流れの乱れが抑制されると考えられる。加えて、圧力室424の長さL424が所定範囲内に定められているので、インク滴の連続的な吐出によって生じる共通インク室426からノズル427側へのインクの流れを利用でき、圧力室424内へのインクの供給不足が抑制されると考えられる。これらの理由から、インク滴の連続的な吐出時において吐出を安定化できると考えられる。
【0107】
<流路抵抗について>
第2実施形態の各ヘッドHDにおいて、インク供給路425の流路抵抗と圧力室424の流路抵抗とが等しいものもあるが、インク供給路425の流路抵抗は、圧力室424の流路抵抗よりも大きいことがより好ましいと考えられる。このように構成することで、インク滴の吐出後における圧力室424内のインクの残留振動を早期に収束できるからである。
【0108】
<ノズル427との関係について>
第2実施形態の各ヘッドHDにおいて、第1実施形態の各ヘッドHDと同様に、ノズル427の形状もインク滴の吐出に影響を与え得る。例えば、ノズル427の流路抵抗は、インク供給路425の流路抵抗よりも大きいことが好ましい。インクの圧力室424への供給不足を確実に抑制できるからである。また、ノズル427のイナータンスをインク供給路425のイナータンスよりも小さくすることが好ましい。このようにすることで、圧力室424内のインクに与えた圧力変化を、インク滴の吐出に効率よく用いることができるからである。
【0109】
<比較例について>
次に比較例のヘッドについて説明する。比較例のヘッドは、図60におけるNo1〜5,No8〜9,No12〜16の各ヘッドHDである。これらのヘッドHDの中で、No1〜4の各ヘッドHDは、インク供給路425の断面積S425が圧力室424の断面積S424よりも大きく定められている。具体的には、11×10−15に定められている。No13〜16の各ヘッドHDは、インク供給路425の断面積S425が圧力室424の断面積S424の1/3よりも小さく定められている。具体的には、2.9×10−15に定められている。No1,5,9,13の各ヘッドHDは、圧力室424の長さL424がインク供給路425の長さL425よりも短く定められている。具体的には、500μmよりも50μm短い450μmに定められている。No4,8,12,16の各ヘッドHDは、圧力室424の長さL424がインク供給路425の長さL425の2倍よりも長く定められている。具体的には、500μmの2倍よりも100μm長い1100μmに定められている。
【0110】
<S425>S424の各ヘッドHDについて>
図65(No1のヘッドHD)から図68(No4のヘッドHD)に示すように、これらのヘッドHDでは、インク滴の量が基準値(10ng)よりも少ない。例えば、4番目以降のインク滴について最大の吐出量を比較すると、No1のヘッドHD及びNo2のヘッドHDは約8ng(LV1a,LV2a)である。そして、No3及びNo4のヘッドHDは7ngに僅かに足りない程度(LV3a,LV4a)である。また、各ヘッドHDでは吐出量が不安定になっている。すなわち、吐出量の周期的な変化が生じている。例えば、No1,2のヘッドHDでは、符号LV1b,LV2bの線で示すように、最小量のインク滴から最大量のインク滴まで4種類のインク滴が繰り返し吐出される。同様に、No3,4のヘッドHDでは、符号LV3b,LV4bの線で示すように、量の異なる2種類のインク滴が交互に吐出される。
【0111】
<S425<1/3×S424の各ヘッドHDについて>
図73(No13のヘッドHD)から図76(No16のヘッドHD)に示すように、これらのヘッドHDでも、インク滴の量が基準値よりも少ない。例えば、4番目以降のインク滴について最大の吐出量を比較すると、No13のヘッドHDでは約8.8ng(LV13a)であり、No14のヘッドHDでは約6.5ng(LV14a)である。そして、No15のヘッドHD及びNo16のヘッドHDでは約8ng(LV15a,LV16a)である。また、各ヘッドHDでは吐出量が不安定になっている。例えば、No13,14のヘッドHDでは、符号LV13b,LV14bの線で示すように、量の異なる2種類のインク滴が交互に吐出される。同様に、No15,16のヘッドHDでは、符号LV15b,LV16bの線で示すように、最小量のインク滴から最大量のインク滴まで4種類のインク滴が繰り返し吐出される。
【0112】
<L424<L425の各ヘッドHDについて>
図65(No1のヘッドHD),図69(No5のヘッドHD),図71(No9のヘッドHD),図73(No13のヘッドHD)に示すように、これらのヘッドHDでもインク滴の量が基準値よりも少ない。例えば、4番目以降のインク滴について最大の吐出量を比較すると、No1及びNo5のヘッドHDは約8ng(LV1a,LV5a)である。また、No9のヘッドHDは約7ng(LV7a)であり、No13のヘッドHDは約8.8ng(LV13a)である。また、各ヘッドHDでは、吐出量の周期的な変化が生じている。例えば、No1及びNo5のヘッドHDでは、符号LV1b,LV5bの線で示すように、最小量のインク滴から最大量のインク滴まで4種類のインク滴が繰り返し吐出されている。また、No9及びNo13のヘッドHDでは、符号LV9b,LV13bの線で示すように、量の異なる2種類のインク滴が交互に吐出される。
【0113】
<L424>2×L425の各ヘッドHDについて>
図68(No4のヘッドHD),図70(No8のヘッドHD),図72(No12のヘッドHD),図76(No16のヘッドHD)に示すように、これらのヘッドHDでもインク滴の量が基準値よりも少ない。例えば、4番目以降のインク滴について最大の吐出量を比較すると、No4のヘッドHDでは7ngに僅かに足りない程度(LV4a)であり、No8のヘッドHDでは9ngに僅かに足りない程度(LV8a)である。No12のヘッドHDでは約8.8ng(LV12a)であり、No16のヘッドHDは約8ng(LV16a)である。また、各ヘッドHDでは、吐出量の周期的な変化が生じている。例えば、No4,No8,No12の各ヘッドHDでは、符号LV4b,LV8b,符号LV12bの線で示すように、量の異なる2種類のインク滴が交互に吐出される。また、No16のヘッドHDでは、LV16bの線で示すように、最小量のインク滴から最大量のインク滴まで4種類のインク滴が繰り返し吐出されている。
【0114】
<吐出量に関する考察>
比較例の各ヘッドHDについて、吐出量の不足や周期的な変化が生じる原因は正確には判っていない。ここで、吐出量の不足について考察すると、No1のヘッドHDからNo4のヘッドHDでは、インク供給路425の流路抵抗が小さすぎるため、圧力室424内のインクを加圧した際に、圧力室424からインク供給路425へインクが戻り過ぎていることが考えられる。一方、No13のヘッドHDからNo16のヘッドHDでは、圧力室424の幅が狭すぎてダイヤフラム部423aの変形量が足りなくなったり、インク供給路425の流路抵抗が大きすぎてインク供給路425からのインクの供給が不足したりしたことが考えられる。
また、吐出量の周期的な変化について考察すると、インク滴の吐出後における圧力室424内のインクが十分に減圧されていないことやインク供給路425内の流路抵抗が適切な範囲から外れてしまったことが考えられる。
【0115】
<粘度が6mPa・s秒のインクについて>
前述の評価結果においてインクの粘度は15mPa・sであった。そして、本実施形態のヘッドを用いることで、粘度が6mPa・sのインクも同様に吐出することができる。ここで、インクの粘度が低いということは、流路抵抗が低くなることを意味する。このため、インク供給路425における流路抵抗が低いヘッドHDについて評価をすればよいといえる。
具体的には、インク供給路425の断面積S425が最も大きく、長さL425が最も短いNo6のヘッドHDを評価すればよいといえる。すなわち、No6のヘッドHDで粘度が6mPa・s秒のインクを安定的に吐出できれば、No7,10,11の各ヘッドHDでもこのインクを高い周波数で安定的に吐出できるといえる。また、比較例としては、No1,2,5の各ヘッドHDを評価すればよいといえる。
【0116】
図77は、No6のヘッドHDを用いて粘度が6mPa・s秒のインクを60kHzの周波数で吐出させた場合のシミュレーション結果である。No6のヘッドHDにおいて、4番目以降の各インク滴は、11ngよりも若干少ない量で安定的に吐出されている。この結果からNo6のヘッドHDも、前述の評価基準を満たしているといえる。すなわち、No6のヘッドHDは、粘度が6mPa・s秒のインクであっても、インク滴を高い周波数で安定的に吐出できるといえる。
【0117】
図78〜図80は、No1,2,5の各ヘッドHDを用いて粘度が6mPa・s秒のインクを60kHzの周波数で吐出させた場合のシミュレーション結果である。これらの図に示すように、何れのヘッドHDもインク滴の最大量が基準量に達していない(LV1a,LV2a,LV5a)。また、吐出量のばらつきも生じている(LV1b,LV2b,LV5b)。これらの結果から、No1,2,5の各ヘッドHDでは、粘度が6mPa・s秒のインクを高い周波数で吐出させると、インク滴の量の不足が生じ、インク滴の量が不安定になるといえる。
【0118】
===その他の実施形態について===
前述した実施形態は、主として、液体吐出装置としてのプリンタ1を有する印刷システムについて記載されているが、その中には、液体吐出方法、液体吐出システム、吐出パルスの設定方法等の開示が含まれている。また、この実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0119】
<他のヘッドHD´について>
前述した実施形態のヘッドHDでは、ピエゾ素子として、吐出パルスPS1(PS1,PS2等)で与えられる電位が高いほど、圧力室424の容積を大きくするための動作をするタイプのものを用いていた。ピエゾ素子に関し、他のタイプのものを用いてもよい。図81に示した他のヘッドHD´は、ピエゾ素子75として、吐出パルスPSで与えられる電位が高いほど、圧力室73の容積を小さくするための動作をするタイプのものを用いている。
【0120】
簡単に説明すると、他のヘッドHD´は、共通インク室71と、インク供給口72と、圧力室73と、ノズル74とを有する。そして、共通インク室71から圧力室73を通ってノズル74に至る一連のインク流路をノズル74に対応する複数有している。他のヘッドHD´でも圧力室73は、その容積がピエゾ素子75の動作によって変化される。すなわち、圧力室73の一部は振動板76によって区画され、圧力室73とは反対側となる振動板76の表面にはピエゾ素子75が設けられている。
【0121】
ピエゾ素子75はそれぞれの圧力室73に対応して複数設けられている。各ピエゾ素子75は、例えば圧電体を上電極と下電極とで挟んだ構成であり(何れも図示せず。)、これらの電極間に電位差を与えることにより変形する。この例では、上電極の電位を上昇させると圧電体が充電され、これに伴ってピエゾ素子75は圧力室73側に凸となるように撓む。これにより圧力室73が収縮される。なお、他のヘッドHD´では、振動板76における圧力室73を区画している部分が区画部に相当する。
【0122】
他のヘッドHD´でも、圧力室73内のインクに圧力変化を与え、この圧力変化を利用してインク滴を吐出させている。このため、インク滴の吐出時における圧力室73内のインクの挙動は、前述のヘッドHDと同じである。従って、圧力室73の長さやインク供給口72の長さ及び断面積などを調整することにより、前述のヘッドHDと同じような作用効果が得られる。
【0123】
<各実施形態の組み合わせについて>
本明細書では、第1実施形態と第2実施形態とを個別に説明したが、第1実施形態の特徴と第2実施形態の特徴を併せ持つヘッドHDとしてもよい。このようなヘッドHDであれば、インク滴の吐出を確実に安定化できると考えられる。
【0124】
<吐出動作をする素子について>
前述のヘッドHDでは、インクを吐出させるための動作(吐出動作)をする素子として、ピエゾ素子433,75を用いている。ここで、吐出動作をする素子は、ピエゾ素子433,75に限定されるものではない。例えば、磁歪素子であってもよい。そして、ピエゾ素子433,75を用いた場合には、圧力室424,73の容積を吐出パルスPSの電位に基づいて精度良く制御できるという利点を有する。
【0125】
<ノズル427やインク供給路425等の形状について>
前述の実施形態において、ノズル427は、ノズルプレート422の厚さ方向を貫通する略漏斗状の孔によって構成されていた。また、インク供給路425は、矩形の開口形状を有し、圧力室424と共通インク室426とを連通する孔によって構成されていた。言い換えれば、角柱状の空間を区画する連通孔によって構成されていた。
【0126】
ここで、ノズル427やインク供給路425は種々の形状を採り得る。例えば、ノズル427に関し、図84Aに示すように、ノズル方向と直交する面で、断面積がほぼ一定になっている形状、すなわち、円柱状の空間を区画する形状であってもよい。言い換えれば、前述したストレート部分427bのみで構成されているノズル427であってもよい。
【0127】
また、インク供給路425に関し、例えば図84Bに示すように、縦方向に長い長円状(半径の等しい二つの半円を共通外接線でつないだ形状)の開口を有する流路で構成してもよい。この場合、インク供給路425の断面積Ssupは、斜線で示す長円状部分の面積が該当する。この長円状開口を有するインク供給路425については、これと等価な矩形状開口を有する流路を定義して、解析してもよい。この場合、インク供給路425の高さH425は、実際のインク供給路425の最大高さよりも多少低くなる。なお、インク供給路425の開口が楕円状であっても同様である。
【0128】
さらに、圧力室424についても同様である。図84Bに示すように、圧力室424における長手方向と直交する面が、横長の六角形状をしていた場合には、これと等価な矩形状断面を有する流路を定義して、解析してもよい。すなわち、高さがH424であり、幅が圧力室424の最大幅よりも多少小さいW424である矩形状断面の流路を定義して、解析してもよい。
【0129】
<他の応用例について>
また、前述の実施形態では、液体吐出装置としてプリンタ1が説明されていたが、これに限られるものではない。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、液体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の液体吐出装置に、本実施形態と同様の技術を適用しても良い。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】印刷システムの構成を説明するブロック図である。
【図2】図2Aは、ヘッドの断面図である。図2Bは、ヘッドの構造を模式的に説明する図である。
【図3】駆動信号生成回路等の構成を説明するブロック図である。
【図4】駆動信号の一例を説明するための図である。
【図5】図5Aは、高粘度インクが安定して吐出されている様子を示す図である。図5Bは、高粘度インクが不安定な状態で吐出されている様子を示す図である。
【図6】評価に用いた吐出パルスについて説明する図である。
【図7】第1実施形態を説明する図であって、圧力室の長さとインク供給路の長さが等しい各ヘッドにおける構造上のパラメータを説明する図である。
【図8】No6のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図9】No7のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図10】No10のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図11】No11のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図12】No1のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図13】No2のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図14】No3のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図15】No4のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図16】No5のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図17】No8のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図18】No9のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図19】No12のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図20】No13のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図21】No14のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図22】No15のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図23】No16のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図24】No11のヘッドで1つのインク滴を吐出させた場合のシミュレーション結果である。
【図25】No12のヘッドで1つのインク滴を吐出させた場合のシミュレーション結果である。
【図26】No15のヘッドで1つのインク滴を吐出させた場合のシミュレーション結果である。
【図27】No16のヘッドで1つのインク滴を吐出させた場合のシミュレーション結果である。
【図28】No11のヘッドによる30kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図29】No12のヘッドによる30kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図30】No15のヘッドによる30kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図31】No16のヘッドによる30kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図32】No6のヘッドを用いて粘度が6mPa・s秒のインクを60kHzの周波数で吐出させた場合のシミュレーション結果である。
【図33】No1のヘッドを用いて粘度が6mPa・s秒のインクを60kHzの周波数で吐出させた場合のシミュレーション結果である。
【図34】No2のヘッドを用いて粘度が6mPa・s秒のインクを60kHzの周波数で吐出させた場合のシミュレーション結果である。
【図35】No5のヘッドを用いて粘度が6mPa・s秒のインクを60kHzの周波数で吐出させた場合のシミュレーション結果である。
【図36】他の吐出パルスを説明する図である。
【図37】第1実施形態を説明する図であって、他の吐出パルスを用いた場合の各ヘッドにおける構造上のパラメータを説明する図である。
【図38】No6’のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図39】No7’のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図40】No10’のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図41】No11’のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図42】No1’のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図43】No2’のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図44】No3’のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図45】No4’のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図46】No5’のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図47】No8’のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図48】No9’のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図49】No12’のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図50】No13’のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図51】No14’のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図52】No15’のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図53】No16’のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図54】評価に用いた吐出パルスについて説明する図である。
【図55】第1実施形態を説明する図であって、圧力室の長さがインク供給路の長さの2倍である各ヘッドにおける構造上のパラメータを説明する図である。
【図56】No6”のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図57】No7”のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図58】No10”のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図59】No11”のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図60】第2実施形態を説明する図であって、評価対象の各ヘッドにおける構造上のパラメータを説明する図である。
【図61】No6のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図62】No7のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図63】No10のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図64】No11のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図65】No1のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図66】No2のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図67】No3のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図68】No4のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図69】No5のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図70】No8のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図71】No9のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図72】No12のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図73】No13のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図74】No14のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図75】No15のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図76】No16のヘッドによる60kHz吐出時のシミュレーション結果である。
【図77】No6のヘッドを用いて粘度が6mPa・s秒のインクを60kHzの周波数で吐出させた場合のシミュレーション結果である。
【図78】No1のヘッドを用いて粘度が6mPa・s秒のインクを60kHzの周波数で吐出させた場合のシミュレーション結果である。
【図79】No2のヘッドを用いて粘度が6mPa・s秒のインクを60kHzの周波数で吐出させた場合のシミュレーション結果である。
【図80】No5のヘッドを用いて粘度が6mPa・s秒のインクを60kHzの周波数で吐出させた場合のシミュレーション結果である。
【図81】他のヘッドを説明する断面図である。
【図82】略漏斗状のノズルの拡大図である。
【図83】略漏斗状のノズルの解析用のモデルを説明する図である。
【図84】図84Aは、ストレート部分のみで構成されたノズルの拡大図である。図84Bは、インク供給路と圧力室の変形例を説明する図である。
【符号の説明】
【0131】
1 プリンタ,10 用紙搬送機構,20 キャリッジ移動機構,
30 駆動信号生成回路,31 DAC回路,32 電圧増幅回路,
33 電流増幅回路,40 ヘッドユニット,41 ケース,
411 収容空部,42 流路ユニット,421 流路形成基板,
422 ノズルプレート,423 振動板,423a ダイヤフラム部,
424 圧力室,425 インク供給路,426 共通インク室,
427 ノズル,428 支持板,428a 島部,429 弾性体膜,
43 ピエゾ素子ユニット,431 ピエゾ素子群,432 固定板,
433 ピエゾ素子,434 共通電極,435 駆動電極,
436 圧電体,44 スイッチ,50 検出器群,
60 プリンタ側コントローラ,61 インタフェース部,
62 CPU,63 メモリ,71 共通インク室,
72 インク供給口,73 圧力室,74 ノズル,75 ピエゾ素子,
76 振動板,CP コンピュータ,HC ヘッド制御部,
HD ヘッド,HD´ 他のヘッド,COM 駆動信号,
PS 吐出パルス,PS1 吐出パルス,
PS1’ 吐出パルス,PS2 他の吐出パルス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出方法であって、
液体吐出ヘッドから液体を吐出させることを有し、
前記液体の粘度は、
6mPa・s以上であって15mPa・s以下の範囲内であり、
前記液体吐出ヘッドは、
液体が吐出されるノズルと、
前記液体を前記ノズルから吐出させるために前記液体に圧力変化を与える圧力室と、
前記圧力室に連通し、前記圧力室に前記液体を供給する供給部と、を有し、
前記供給部の容積は、
前記圧力室の容積の1/5よりも大きく、かつ、前記圧力室の容積の1/2未満であり、
前記圧力室の流路長さは、
前記供給部の流路長さ以上であって前記供給部の流路長さの2倍以下である、液体吐出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出方法であって、
前記供給部の断面積は、
前記圧力室の断面積の1/3以上であって前記圧力室の断面積以下の範囲内である、液体吐出方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液体吐出方法であって、
前記ノズルのイナータンスは、
前記供給部のイナータンスよりも小さい、液体吐出方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の液体吐出方法であって、
前記供給部の容積は、
2240000×10−18以上であって3920000×10−18以下の範囲内である、液体吐出方法。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載の液体吐出方法であって、
前記圧力室の流路長さは、
500×10−6m以上であって1000×10−6m以下の範囲内である、液体吐出方法。
【請求項6】
請求項2から5の何れか1項に記載の液体吐出方法であって、
前記供給部の断面積は、
3.3×10−15以上であって10×10−15以下の範囲内である、液体吐出方法。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の液体吐出方法であって、
前記圧力室は、
前記圧力室の一部を区画し、変形によって前記液体に圧力変化を与える区画部を有する、液体吐出方法。
【請求項8】
請求項7に記載の液体吐出方法であって、
前記液体吐出ヘッドは、
印加された吐出パルスにおける電位の変化パターンに応じた度合いで、前記区画部を変形させる素子を有する、液体吐出方法。
【請求項9】
液体が吐出されるノズルと、
前記液体を前記ノズルから吐出させるために前記液体に圧力変化を与える圧力室と、
前記圧力室に連通し、前記圧力室に前記液体を供給する供給部と、
を有し、
前記供給部の容積は、
前記圧力室の容積の1/5よりも大きく、かつ、前記圧力室の容積の1/2未満であり、
前記圧力室の流路長さは、
前記供給部の流路長さ以上であって前記供給部の流路長さの2倍以下である、液体吐出ヘッド。
【請求項10】
吐出パルスを生成する吐出パルス生成部と、
ノズルから液体を吐出させる液体吐出ヘッドであって、
前記液体を前記ノズルから吐出させるために、区画部を変形させることで前記液体に圧力変化を与える圧力室と、
印加された前記吐出パルスにおける電位の変化パターンに応じた度合いで、前記区画部を変形させる素子と、
前記圧力室に連通し、前記圧力室に前記液体を供給する供給部と、を有し、
前記供給部の容積は、前記圧力室の容積の1/5よりも大きく、かつ、前記圧力室の容積の1/2未満であり、
前記圧力室の流路長さは、前記供給部の流路長さ以上であって前記供給部の流路長さの2倍以下である、液体吐出ヘッドと、
を有する、液体吐出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40】
image rotate

【図41】
image rotate

【図42】
image rotate

【図43】
image rotate

【図44】
image rotate

【図45】
image rotate

【図46】
image rotate

【図47】
image rotate

【図48】
image rotate

【図49】
image rotate

【図50】
image rotate

【図51】
image rotate

【図52】
image rotate

【図53】
image rotate

【図54】
image rotate

【図55】
image rotate

【図56】
image rotate

【図57】
image rotate

【図58】
image rotate

【図59】
image rotate

【図60】
image rotate

【図61】
image rotate

【図62】
image rotate

【図63】
image rotate

【図64】
image rotate

【図65】
image rotate

【図66】
image rotate

【図67】
image rotate

【図68】
image rotate

【図69】
image rotate

【図70】
image rotate

【図71】
image rotate

【図72】
image rotate

【図73】
image rotate

【図74】
image rotate

【図75】
image rotate

【図76】
image rotate

【図77】
image rotate

【図78】
image rotate

【図79】
image rotate

【図80】
image rotate

【図81】
image rotate

【図82】
image rotate

【図83】
image rotate

【図84】
image rotate


【公開番号】特開2009−234252(P2009−234252A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305333(P2008−305333)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】