説明

液体吐出装置、及び、液体吐出方法

【課題】光の照射条件の最適化を図りつつ所望の画像を印刷する。
【解決手段】光の照射によって硬化する液体を吐出するヘッドを有し、媒体の搬送方向と交差する移動方向に移動するキャリッジと、キャリッジに設けられ光を照射する第1照射部であって、ヘッドよりも移動方向の上流側又は下流側に配置された第1照射部と、光を照射する第2照射部であって、第1照射部よりも搬送方向の下流側に設けられた第2照射部と、キャリッジを移動方向に移動させつつヘッドから液体を吐出させる吐出動作と、媒体を搬送方向に搬送させる搬送動作と、を実行することによって媒体に画像を形成するコントローラーであって、吐出動作の際に第1照射部の光の照射強度を制御して、画像の表面状態を調整し、且つ、第1照射部の光の照射強度に応じて、第2照射部の光の照射強度を変更するコントローラーと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、及び、液体吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光(例えば紫外線(UV))の照射によって硬化する液体(例えばUVインク)を用いて印刷を行なう液体吐出装置が知られている。このような液体吐出装置では、光の照射部を備えており、媒体に液体を吐出してドットを形成した後、照射部からドットに光を照射する。こうすることにより、ドットが硬化して媒体に定着するので、液体を吸収しにくい媒体に対しても印刷を行うことができる。また、このような液体吐出装置として、移動方向に移動するキャリッジに、液体を吐出するヘッドと、ヘッドよりも移動方向の上流側又は下流側に配置された照射部とを備えるようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。この場合、キャリッジが移動方向に移動する際に、ヘッドから媒体への液体の吐出と、媒体に形成されたドットへの光の照射を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-289722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
用途に応じて、画像の質感を変えて印刷したい場合がある。上述したような液体吐出装置では、ドット形成直後に照射する光の照射強度を変えることによって画像の質感を変えることが可能である。しかしながら、このように光の照射強度を変えた場合、例えばドットを完全に硬化させることが出来なくなるおそれや、あるいは、エネルギーを無駄に消費してしまうというおそれがあった。
そこで、本発明は、光の照射条件の最適化を図りつつ所望の画像を印刷することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための主たる発明は、
光の照射によって硬化する液体を吐出するヘッドを有し、媒体の搬送方向と交差する移動方向に移動するキャリッジと、
前記キャリッジに設けられ光を照射する第1照射部であって、前記ヘッドよりも前記移動方向の上流側又は下流側に配置された第1照射部と、
光を照射する第2照射部であって、前記第1照射部よりも前記搬送方向の下流側に設けられた第2照射部と、
前記キャリッジを前記移動方向に移動させつつ前記ヘッドから前記液体を吐出させる吐出動作と、媒体を前記搬送方向に搬送させる搬送動作と、を実行することによって媒体に画像を形成するコントローラーであって、前記吐出動作の際に前記第1照射部の光の照射強度を制御して、画像の表面状態を調整し、且つ、前記第1照射部の光の照射強度に応じて、前記第2照射部の光の照射強度を変更するコントローラーと、
を備えたことを特徴とする液体吐出装置である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】プリンターの構成を示すブロック図である。
【図2】プリンターのヘッド周辺の概略図である。
【図3】図3A及び図3Bは、プリンターの横断面図である。
【図4】ヘッドの構成の説明図である。
【図5】2パスのドット形成方法についての説明図である。
【図6】4パスのドット形成方法についての説明図である。
【図7】図7A〜図7Cは、媒体上に着弾したUVインク(ドット)の形状と、仮硬化のUVの照射エネルギーの関係の説明図である。
【図8】第1実施形態における印刷方式とUV照射条件の設定の説明図である。
【図9】2パスの印刷方式と4パスの印刷方式においてそれぞれ単位面積に形成されるドットの概念図である。
【図10】第2実施形態のヘッド部分の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
光の照射によって硬化する液体を吐出するヘッドを有し、媒体の搬送方向と交差する移動方向に移動するキャリッジと、
前記キャリッジに設けられ光を照射する第1照射部であって、前記ヘッドよりも前記移動方向の上流側又は下流側に配置された第1照射部と、
光を照射する第2照射部であって、前記第1照射部よりも前記搬送方向の下流側に設けられた第2照射部と、
前記キャリッジを前記移動方向に移動させつつ前記ヘッドから前記液体を吐出させる吐出動作と、媒体を前記搬送方向に搬送させる搬送動作と、を実行することによって媒体に画像を形成するコントローラーであって、前記吐出動作の際に前記第1照射部の光の照射強度を制御して、画像の表面状態を調整し、且つ、前記第1照射部の光の照射強度に応じて、前記第2照射部の光の照射強度を変更するコントローラーと、
を備えたことを特徴とする液体吐出装置。
このような液体吐出装置によれは、第1照射部からの光の照射によって画像の質感を調整することができ、第2照射部からの光の照射によってドットを完全に硬化させるための光量を確保することができる。よって照射条件の最適化を図りつつ所望の画像を印刷することができる。
【0008】
かかる液体吐出装置であって、前記コントローラーは、画像を或る表面状態にするときには、前記第1照射部の光の照射強度を第1強度とし、且つ、前記第2照射部の光の照射強度を第2強度とし、画像を前記或る表面状態よりも高い光沢の表面状態にするときには、前記第1照射部の光の照射強度を前記第1強度よりも弱くし、且つ、前記第2照射部の光の照射強度を前記第2強度よりも強くすることが望ましい。
このような液体吐出装置によれば、形成する画像の表面状態に適した照射条件を設定することができる。
【0009】
かかる液体吐出装置であって、前記コントローラーは、前記吐出動作をn回(nは自然数)行うことによって媒体の所定領域にドットを形成する第1印刷モード、又は、前記吐出動作をm回(mはnよりも大きい自然数)行うことによって前記所定領域にドットを形成する第2印刷モードを実行して所定の表面状態の画像を印刷する場合、前記第2印刷モードにおける各照射部の光の照射強度を、前記第1印刷モードにおける各照射部の光の照射強度よりも弱くすることが望ましい。
このような液体吐出装置によれば、印刷モードに適した照射条件を設定することができる。
【0010】
かかる液体吐出装置であって、前記コントローラーは、前記吐出動作と前記搬送動作の合間に、前記キャリッジを前記移動方向に移動させつつ、前記ヘッドから前記液体を吐出させずに各照射部から光を照射させる照射動作を実行することが望ましい。
このような液体吐出装置によれば、媒体に形成された画像をより確実に硬化させることができる。
【0011】
かかる液体吐出装置であって、前記コントローラーは、媒体の種類に応じて前記第1照射部及び前記第2照射部の光の照射強度を変更することが望ましい。
このような液体吐出装置によれば、光の照射条件をさらに最適化することができる。
【0012】
かかる液体吐出装置であって、前記第2照射部は、前記キャリッジに設けられていることが望ましい。
このような液体吐出装置によれば、第2照射部の移動方向の長さが媒体の幅よりも短くても、第2照射部がキャリッジとともに移動方向に移動するので、ヘッドによって媒体に形成された画像(第1照射部によって光が照射された後の画像)に光を照射することができる。よって、第2照射部を印刷可能な媒体幅以上の長さに亘って設ける場合と比べて、第2照射部の小型化を図ることができる。
【0013】
また、媒体を搬送方向に搬送させる搬送動作と、ヘッドを有するキャリッジを前記搬送方向と交差する移動方向に移動させつつ、前記ヘッドから光の照射によって硬化する液体を吐出させる吐出動作と、を実行することによって媒体に画像を形成する液体吐出方法であって、
前記吐出動作の際に、前記キャリッジに設けられた第1照射部であって、前記ヘッドよりも前記移動方向の上流側又は下流側に配置された第1照射部の光の照射強度を制御して、画像の表面状態を調整することと、
前記第1照射部の光の照射強度に応じて、前記第1照射部よりも前記搬送方向の下流側に設けられた第2照射部の光の照射強度を変更することと、
を有することを特徴とする液体吐出方法が明らかとなる。
【0014】
以下の実施形態では、液体吐出装置としてインクジェットプリンター(以下、プリンター1ともいう)を例に挙げて説明する。
【0015】
===第1実施形態===
<プリンターの構成について>
以下、図1、図2、図3A、及び図3Bを参照しながら本実施形態のプリンター1について説明する。図1は、プリンター1の構成を示すブロック図である。図2は、プリンター1のヘッド周辺の概略図である。図3A及び図3Bは、プリンター1の横断面図である。図3Aは図2のA−A断面に相当し、図3Bは図2のB−B断面に相当する。
【0016】
本実施形態のプリンター1は、紙、布、フィルムシート等の媒体に向けて、光の一種である紫外線(以下、UV)の照射によって硬化する紫外線硬化型インク(以下、UVインク)を吐出することにより、媒体に画像を印刷する装置である。UVインクは、紫外線硬化樹脂を含むインクであり、UVの照射を受けると紫外線硬化樹脂において光重合反応が起こることにより硬化する。なお、本実施形態のプリンター1は、CMYKの4色のUVインクを用いて画像を印刷する。
【0017】
プリンター1は、搬送ユニット10、キャリッジユニット20、ヘッドユニット30、照射ユニット40、検出器群50、及びコントローラー60を有する。外部装置であるコンピューター110から印刷データを受信したプリンター1は、コントローラー60によって各ユニット(搬送ユニット10、キャリッジユニット20、ヘッドユニット30、照射ユニット40)を制御する。コントローラー60は、コンピューター110から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、媒体に画像を印刷する。また、プリンター1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は、検出結果をコントローラー60に出力する。コントローラー60は、検出器群50から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
【0018】
搬送ユニット10は、媒体(例えば、紙)を所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送させるためのものである。この搬送ユニット10は、給紙ローラー11と、搬送モータ(不図示)と、搬送ローラー13と、プラテン14と、排紙ローラー15とを有する。給紙ローラー11は、紙挿入口に挿入された媒体をプリンター内に給紙するためのローラーである。搬送ローラー13は、給紙ローラー11によって給紙された媒体を印刷可能な領域まで搬送するローラーであり、搬送モーターによって駆動される。プラテン14は、印刷中の媒体を支持する。排紙ローラー15は、媒体をプリンターの外部に排出するローラーであり、印刷可能な領域に対して搬送方向下流側に設けられている。
【0019】
キャリッジユニット20は、ヘッドを所定の方向(以下、移動方向という)に移動(「走査」とも呼ばれる)させるためのものである。キャリッジユニット20は、キャリッジ21と、キャリッジモーター(不図示)とを有する。また、キャリッジ21は、UVインクを収容するインクカートリッジを着脱可能に保持している。そして、キャリッジ21は、後述する搬送方向と交差したガイド軸24に支持された状態で、キャリッジモーターによりガイド軸24に沿って往復移動する。
【0020】
ヘッドユニット30は、媒体に液体(本実施形態ではUVインク)を吐出するためのものである。ヘッドユニット30は、複数のノズルを有するヘッド31を備える。このヘッド31はキャリッジ21に設けられているため、キャリッジ21が移動方向に移動すると、ヘッド31も移動方向に移動する。そして、ヘッド31が移動方向に移動中にUVインクを断続的に吐出することによって、移動方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が媒体に形成される。なお、以下、図2の一端側から他端側に向かって移動する経路のこと往路と呼び、他端側から一端側に移動する経路のことを復路と呼ぶ。本実施形態では、往路及び復路の両期間中にヘッド31からUVインクが吐出される。すなわち、本実施形態のプリンター1は、双方向印刷を行なう。
なお、ヘッド31の構成については、後述する。
【0021】
照射ユニット40は、媒体に着弾したUVインクに向けてUVを照射するものである。媒体上に形成されたドットは、照射ユニット40からのUVの照射を受けることにより、硬化する。本実施形態の照射ユニット40は、第1照射部42a、42bと、第2照射部43a、43bを備えている。本実施形態では、各照射部(第1照射部42a、42b、及び、第2照射部43a、43b)は、キャリッジ21に設けられている。このため、キャリッジ21が移動方向に移動すると、第1照射部42a、42b、及び、第2照射部43a、43bも移動方向に移動する。
【0022】
第1照射部42a、42bは、ヘッド31を挟むようにして、キャリッジ21上のヘッド31の移動方向の一端側と他端側にそれぞれ設けられている。また、第1照射部42a、42bの搬送方向の長さは、ヘッド31のノズル列の長さとほぼ同じになっている。言い換えると、第1照射部42a、42bは、ヘッド31のノズル列と移動方向に並ぶ位置に設けられている。そして、第1照射部42a、42bは、ヘッド31とともに移動して、ヘッド31のノズル列がドットを形成する範囲にUVを照射する。なお、本実施形態の第1照射部42a、42bは、UV照射の光源として発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を用いている。LEDは入力電流の大きさを制御することによって、照射エネルギーを容易に変更することが可能である。第1照射部42a、42においてLEDは搬送方向に沿って複数配置されている。よって各LEDの点灯及び消灯を制御することによって、UVの照射範囲(搬送方向の範囲)を設定することができる。例えば、ヘッド31のノズル列のうち搬送方向下流側の半分しか使用されない場合、その半分のノズルがドットを形成する範囲に対してUVを照射することができる。
【0023】
第2照射部43a、43bは、それぞれ、第1照射部42a、42bの搬送方向の下流側に設けられている。また、第2照射部43a、43bの搬送方向の長さは、第1照射部42a、42bの搬送方向の長さ(つまり、ヘッド31のノズル列の長さ)と同じになっている。また、第2照射部43a、43bにおいても、第1照射部42a、42bと同様に、UV照射の光源として、搬送方向に沿って配置された複数のLEDを備えており、各LEDの点灯及び消灯を制御することによって、UVの照射範囲を設定することができる。
【0024】
なお、第1照射部42a、42b及び第2照射部43a、43bによるUV照射の詳細については後述する。
【0025】
検出器群50には、リニア式エンコーダー(不図示)、ロータリー式エンコーダー(不図示)、紙検出センサー53、および光学センサー54等が含まれる。リニア式エンコーダーは、キャリッジ21の移動方向の位置を検出する。ロータリー式エンコーダーは、搬送ローラー13の回転量を検出する。紙検出センサー53は、給紙中の媒体の先端の位置を検出する。光学センサー54は、キャリッジ21に取付けられている発光部と受光部により、媒体の有無を検出する。そして、光学センサー54は、キャリッジ21によって移動しながら媒体の端部の位置を検出し、媒体の幅を検出することができる。また、光学センサー54は、状況に応じて、媒体の先端(搬送方向下流側の端部であり、上端ともいう)・後端(搬送方向上流側の端部であり、下端ともいう)も検出できる。
【0026】
コントローラー60は、プリンター1の制御を行うための制御ユニット(制御部)である。コントローラー60は、インターフェイス部61と、CPU62と、メモリー63と、ユニット制御回路64とを有する。インターフェイス部61は、外部装置であるコンピューター110とプリンター1との間でデータの送受信を行う。CPU62は、プリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子を有する。CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御する。
【0027】
印刷を行うとき、コントローラー60は、後述するように往路方向及び復路方向に移動中のヘッド31からUVインクを吐出させる吐出動作と、搬送方向に媒体を搬送する搬送動作とを交互に繰り返し、複数のドットから構成される画像を媒体に印刷する。以下の説明において、この吐出動作のことを「パス」と呼ぶ。また、n回目のパスのことをパスnと呼ぶ。なお、後述するように、パスの際には媒体に形成されたドットへのUVの照射も行なう。
【0028】
<印刷手順について>
コントローラー60は、コンピューター110から受信した印刷データを印刷する際、プリンター1の各ユニットに以下の処理を行わせる。
まず、コントローラー60は、給紙ローラー11を回転させ、印刷すべき媒体(ここでは紙S)を搬送ローラー13の所まで送る。次に、コントローラー60は、搬送モーター(不図示)を駆動させることによって搬送ローラー13を回転させる。搬送ローラー13が所定の回転量にて回転すると、紙Sは所定の搬送量にて搬送される。
【0029】
紙Sがヘッド31の下部まで搬送されると、コントローラー60は、キャリッジモーター(不図示)を回転させる。このキャリッジモーターの回転に応じて、キャリッジ21が移動方向に移動する。また、キャリッジ21が移動方向に移動することによって、キャリッジ21に設けられたヘッド31、第1照射部42a、42b、第2照射部43a、43bも同時に移動方向に移動する。そして、コントローラー60は、ヘッド31が移動方向に移動している間にヘッド31から断続的にインク滴を吐出させる。このインク滴が、用紙Sにインク滴が着弾することによって、移動方向に複数のドットが並ぶドット列が形成される。また、コントローラー60は、キャリッジ21が移動方向に移動する際に照射ユニット40の各照射部から選択的にUVを照射させる。
【0030】
また、コントローラー60は、ヘッド31が往復移動する合間に搬送モーターを駆動させる。搬送モーターは、コントローラー60からの指令された駆動量に応じて回転方向の駆動力を発生する。そして、搬送モーターは、この駆動力を用いて搬送ローラー13を回転させる。搬送ローラー13が所定の回転量にて回転すると、用紙Sは所定の搬送量にて搬送される。つまり、用紙Sの搬送量は、搬送ローラー13の回転量に応じて定まることになる。このように、ヘッド31の往復移動によるパス(及びUVの照射)と紙Sの搬送動作を交互に繰り返して行い、用紙Sの各画素にドットを形成していく。
【0031】
印刷の終わった紙Sは、搬送ローラー13と同期して回転する排紙ローラー15によって、排紙される。
こうして紙Sに画像が印刷される。
【0032】
<ヘッド31の構成について>
図4は、ヘッド31の構成の一例の説明図である。ヘッド31の下面には、図4に示すように、ブラックインクノズル列Kと、シアンインクノズル列Cと、マゼンダインクノズル列Mと、イエローインクノズル列Yとが形成されている。各ノズル列は、各色のUVインクを吐出するための吐出口であるノズルをそれぞれ複数個(例えば180個)備えている。本実施形態では、各ノズル列のノズルはノズルピッチD(例えば360dpi)で搬送方向に沿って設けられている。
各ノズル列のノズルには、搬送方向下流側のノズルほど若い番号が付されている。各ノズルには、各ノズルからUVインクを吐出させるための駆動素子としてピエゾ素子(不図示)が設けられている。このピエゾ素子を駆動信号によって駆動させることにより、前記各ノズルから滴状のUVインクが吐出される。吐出されたUVインクは、媒体に着弾してドットを形成する。
【0033】
<ドット形成方式について>
本実施形態のプリンター1では、後述する印刷モードに応じて、ノズルピッチ長さの領域の印刷を2回のパスで行う印刷方法(以下、2パスともいう)と、4回のパスで行う印刷方法(以下、4パスともいう)を実行する。以下、2パスと4パスのドット形成方法について説明する。
【0034】
≪2パスの場合≫
まず、2パスのドット形成方法について説明する。
図5は2パスのドット形成方法の一例についての説明図である。図では説明の簡易化のため4つのノズル列のうちの1つのノズル列(例えばブラックノズル列)について示している。また、ここでは説明の簡易化のため、ノズル列のノズル数を6個としている。
【0035】
前述したように、印刷を行なうとき、コントローラー60は、移動方向に移動中のヘッド31からインクを吐出させる吐出動作(パス)と、搬送方向に媒体を搬送する搬送動作を交互に繰り返し行なう。図の右側の丸印はドットを示している。なお、説明の便宜上、パス毎にノズル列が搬送方向(図の上下方向)に移動しているように描かれているが、同図は媒体に対するノズル列の相対的な位置を示すものであって、実際には媒体が搬送方向に搬送されている(移動している)。
【0036】
1回目のパスでは、コントローラー60は、ヘッド31を移動方向に移動させながら各ノズルからインクを吐出させる。これにより媒体には各ノズルに対応した位置(奇数番号のラスタライン)にドットが形成される。
1回目のパスの後の搬送動作では、コントローラー60は、媒体を搬送方向にノズルピッチDの半分(D/2=0.5D)だけ搬送させる。これにより、媒体に対するヘッドの相対位置が搬送方向上流側に0.5D移動する。
【0037】
そして2回目のパスにおいても、ヘッド31を移動方向に移動させながら各ノズルからインクを吐出させる。これにより媒体には各ノズルに対応した位置(偶数番号のラスタライン)にドットが形成される。図からわかるように、2回目のパスでは、例えば、1回目のパスの際にノズル#1で形成されたドット列(ラスタライン1)とノズル#2で形成されたドット列(ラスタライン3)との間に、ノズル#1によってドット列(ラスタライン2)が形成される。
【0038】
2回目のパスの後の搬送動作では、媒体を搬送方向に5.5D(=6D−0.5D)移動させる。これにより、媒体に対するヘッド31の相対位置が、搬送方向上流側に5.5D移動する。つまり、図5に示すように2回目のパスでノズル#6によって形成されたラスタライン12が、ノズル#1よりも0.5D搬送方向下流側に位置することになる。
【0039】
そして、3回目のパスでも、ヘッド31を移動方向に移動させながら各ノズルからインクを吐出させる。これにより媒体には各ノズルに対応した位置(奇数番号のラスタライン)にドットが形成される。例えば、2回目のパスで#6ノズルによって形成されたラスタライン(ラスタライン12)の下には、3回目のパスで#1ノズルによってラスタライン(ラスタライン13)が形成される。
3回目のパスの後の搬送動作では、媒体を搬送方向にノズルピッチDの半分(D/2=0.5D)だけ搬送させる。これにより、媒体に対するヘッドの相対位置が搬送方向上流側に0.5D移動する。
【0040】
そして4回目のパスにおいても、ヘッド31を移動方向に移動させながら各ノズルからインクを吐出させる。これにより媒体には各ノズルに対応した位置(偶数番号のラスタライン)にドットが形成される。
【0041】
以下、同様にして、コントローラー60は、奇数回目のパスの後には、媒体を0.5D搬送方向に搬送し、偶数回目のパスの後には、媒体を5.5D搬送方向に搬送させる。
この動作を繰り返すことで、移動方向及び搬送方向に並ぶドット列が媒体に形成される。
【0042】
≪4パスの場合≫
次に、4パスのドット形成方法について説明する。
図6は4パスのドット形成方法の一例についての説明図である。図6においても図5と同様に、4つのノズル列のうちの1つのノズル列(例えばブラックノズル列)について示している。この場合も、ノズル列のノズル数を6個としている。
また、前述したように、印刷を行なうとき、コントローラー60は、移動方向に移動中のヘッド31からインクを吐出させるドット形成動作(パス)と、搬送方向に媒体を搬送する搬送動作を交互に繰り返し行なう。図の右側の丸印はドットを示している。
【0043】
1回目のパスでは、コントローラー60は、ヘッド31を移動方向に移動させながら各ノズルからインクを吐出させる。これにより媒体には各ノズルに対応した位置にドット列が形成される(ラスタライン1、5、9、13、17、21)。
1回目のパスの後の搬送動作では、コントローラー60は、媒体を搬送方向にD/4(=0.25D)だけ搬送させる。これにより、媒体に対するヘッドの相対位置が搬送方向上流側に0.25D移動する。
【0044】
2回目のパスにおいても、コントローラー60は、ヘッド31を移動方向に移動させながら各ノズルからインクを吐出させる。媒体には各ノズルに対応した位置にドットが形成される(ラスタライン2、6、10、14、18、22)。
また、2回目のパスの後の搬送動作においても、コントローラー60は、媒体を搬送方向に0.25D移動させる。これにより、媒体に対するヘッドの相対位置が搬送方向上流側に0.25D移動する。
【0045】
3回目のパスにおいても、コントローラー60は、ヘッド31を移動方向に移動させながら各ノズルからインクを吐出させる。媒体には各ノズルに対応した位置にドットが形成される(ラスタライン3、7、11、15、19、23)。
また、3回目のパスの後の搬送動作においても、コントローラー60は、媒体を搬送方向に0.25D移動させる。これにより、媒体に対するヘッドの相対位置が搬送方向上流側に0.25D移動する。
【0046】
さらに4回目のパスにおいても、コントローラー60は、ヘッド31を移動方向に移動させながら各ノズルからインクを吐出させる。媒体には各ノズルに対応した位置にドットが形成される(ラスタライン4、8、12、16、20、24)。
そして、4回目のパスの後の搬送動作では、コントローラー60は、媒体を搬送方向に5.25D(=6D−3/4D)移動させる。これにより、媒体に対するヘッドの相対位置が搬送方向上流側に5.25D移動する。例えばノズル#1が、パス4におけるノズル#6の搬送方向上流側の位置に相当するようになる。
【0047】
そして5回目のパスにおいても、コントローラー60は、ヘッド31を移動方向に移動させながら各ノズルからインクを吐出させる。媒体には各ノズルに対応した位置にドットが形成される(ラスタライン25、29、33、37、41、45)。
【0048】
以下、同様にして、パスと搬送動作を繰り返す。
このようにして、図に示すように、移動方向及び搬送方向に並ぶドット列が媒体に形成される。
【0049】
<UV照射について>
本実施形態では、媒体に着弾したUVインクにUVを照射することで、ドットを硬化させている。本実施形態のプリンター1では、照射ユニット40として、第1照射部42a、42bと、第2照射部43a、43bを備えており、2段階の硬化を行なうようにしている。このうち、第1照射部42a、42bは、媒体に着弾したUVインクの流動(ドットの広がり)を抑えるためのUV照射を行う。以下、このようにドットの広がりを抑える程度にドットを硬化させることを仮硬化ともいう。なお、仮硬化後のドットは完全に硬化していない。また、第1照射部42a、42bよりも搬送方向下流側に設けられた第2照射部43a、43bは、ドットを完全に硬化させるためのUV照射を行う。以下、このようにドットを完全に硬化させることを本硬化ともいう。
【0050】
第1照射部42a、42bは、図2に示すように、それぞれキャリッジ21に設けられている。第1照射部42aは、キャリッジ21の移動方向の一端側に設けられ、第1照射部42bは、キャリッジ21の移動方向の他端側に設けられている。したがって、キャリッジ21の移動に伴って、ヘッド31及び第1照射部42a、42bも移動方向に移動する。換言すると、ヘッド31の各色のノズル列が往復移動する際、第1照射部42a、42bは、各色のノズル列に対する相対位置を維持しながら往復移動する。この際に、コントローラー60は、この往復移動の際に第1照射部42a、42bから、媒体に向けてUVを照射させる。より具体的には、キャリッジ21が往路(一端側から他端側)に移動する際には、第1照射部42aからUVを照射させ、キャリッジ21が復路(他端側から一端側)に移動する際には、第1照射部42bからUVを照射させる。つまり、ヘッド31に対して移動方向の上流側の照射部からUVを照射させる。こうすることで、ヘッド31によって媒体に形成された直後のドットを硬化(仮硬化)させることができる。このように仮硬化は、ヘッド31が移動方向に移動する期間に行われるものであり、ドットを形成するのと同じパスにおいて行なわれる。なお、第1照射部42a、42bの光源(LED)は、それぞれ第1照射部42a、42b内に収容されることによりヘッド31から隔離されている。これにより、光源から照射されるUVがヘッド31の下面へ漏れるのを防ぎ、以って、当該下面に形成された各ノズルの開口付近でUVインクが硬化すること(ノズルの目詰まり)を防止している。
【0051】
第2照射部43a、43bも、図2に示すように、それぞれキャリッジ21に設けられている。第2照射部43aは、キャリッジ21の移動方向の一端側において、第1照射部42aの搬送方向下流側に設けられ、第2照射部43bは、キャリッジ21の移動方向の他端側において第2照射部42bの搬送方向下流側に設けられている。すなわち、第2照射部43a、43bは、ヘッド31のノズル列よりも搬送方向下流側に設けられている。コントローラー60は、パスの際に第2照射部43a、43bからもUVを照射させる。このとき、第2照射部43a、43bがUVを照射するドットは、すでに前のパスにおいて媒体に形成されたドット(第1照射部42a、42bによって仮硬化されたドット)である。
【0052】
<仮硬化とドット形状との関係について>
前述したように本実施形態では2段階の硬化(仮硬化、本硬化)を行っている。このうち仮硬化は媒体に形成されたドットの流動(広がり)や、ドット間の滲みを抑えるためのUV照射である。このため、仮硬化後のドットは完全に硬化していないが、最終的なドット形状はこの仮硬化によって決まる。
図7A〜図7Cは、媒体上に着弾したUVインク(ドット)の形状と、仮硬化のUVの照射エネルギーの関係の説明図である。図7A、図7B、図7Cの順で仮硬化におけるUVの照射エネルギーが低くなっている。なお、各図において、ドットにUVを照射するタイミングは同じ(ドット形成直後)である。
【0053】
仮硬化の際のUVの照射エネルギーが高い場合、例えば図7Aに示すようにドットの流動が小さくなる。この場合、媒体表面の凹凸が大きくなるため、表面の光沢を抑えた低光沢の画質(マット調)になる。なお、この場合、他のインク間との間で滲みが生じに難くなる。
一方、仮硬化の際のUVの照射エネルギーが高い場合、例えば図7Cに示すようにドットの流動が大きくなる。この場合、媒体表面の凹凸が小さくなるため、表面の光沢を高めた高光沢の画質(グロス調)になる。なお、この場合、他のインクとの間で滲みが生じやすくなる。
【0054】
このように、ドット形成直後のUVの照射条件を変えることで画像の仕上げ状態(質感)を調整することができる。本実施形態のプリンター1では、第1照射部42a、42bを備えていて、パスの際にドット形成直後にUVを照射することができるようになっている。よって、このUVの照射条件を変更することで画像の質感を調整することが可能である。しかしながら、もし仮に、仮硬化後に行うUV照射(本硬化のUV照射)の照射エネルギーが固定であるとすると、仮硬化の際のUVの照射エネルギーを変えることによってドットを確実に硬化させることができなくなるおそれや、あるいは、エネルギーを無駄に消費してしまうおそれがある。
そこで、本実施形態では、UVの照射条件の最適化を図りつつ画像の質感を調整するようにしている。
【0055】
<印刷モードとUV照射条件の設定について>
図8は、第1実施形態における印刷方式とUV照射条件の設定の説明図である。本実施形態のプリンター1では印刷方式として2つの印刷モード(速いモード、高画質モード)を実行する。速いモードでは前述した2パスによるドットの形成を行い、高画質モードでは前述した4パスによるドットの形成を行う。
また、各印刷モードにおいて、画像の仕上げ状態としてA〜Cの3つが定められている。仕上げ状態Aは、低光沢の画質(マット調)であり、仕上げ状態Cは高光沢の画質(グロス調)である。また仕上げ状態Bは、仕上げ状態A(マット調)と仕上げ状態C(グロス調)の中間の状態である。
また、図には各照射部におけるUVの照射強度の設定値が示されている。この設定値は最小強度から最大強度までを5段階で示したものであり、「1」が最小で「5」が最大である。コントローラー60は各照射部の光源のLEDへの入力電流を変えることによって、この照射強度を制御する。
【0056】
≪速いモード≫
前述したように、ドット形成直後のUV照射によって画像の仕上げ状態を調整することが可能である。本実施形態の場合、第1照射部42a、42bのUVの照射量を変更することで仕上げ状態を調整できる。そこでコントローラー60は、ユーザーインターフェースを通してユーザーから指定された仕上げ状態に応じて、図のように第1照射部42a、42bの照射強度を変更する。さらに、コントローラー60は、第1照射部42a、42bの照射強度に応じて、第2照射部43a、43bの照射強度を変える。
【0057】
例えば、仕上げ状態A(マット調)が指定された場合は、第1照射部42a、42bの照射強度を「5」にし、第2照射部43a、43bの照射強度を「2」にする。つまり、ドット形成時のパスにおいて第1照射部42a、42bから最大の照射強度でUVを照射してドットを図7Aのような状態に仮硬化させる。そして、その後のパスで第2照射部43a、43bから比較的小さい照射強度でUVを照射してドットを本硬化させる。
【0058】
また、仕上げ状態C(グロス調)が指定された場合は、第1照射部42a、42bの照射強度を「2」にし、第2照射部43a、43bの照射強度を「5」にする。つまり、ドット形成時のパスにおいて第1照射部42a、42bから比較的小さい照射強度でUVを照射してドットを図7Aのような状態に仮硬化させる。そして、その後のパスで第2照射部43a、43bから最大の照射強度でUVを照射してドットを本硬化させる。こうすることで、仕上げ状態にかかわらずに、エネルギーを無駄に消費することなく確実にドットを硬化させることができる。
【0059】
≪高画質モード≫
高画質モードにおいても、速いモードの場合と同様に、コントローラー60はユーザーから指定された仕上げ状態に応じて、第1照射部42a、42bの照射強度、及び第2照射部43a、43bの照射強度をそれぞれ設定する。ただし、図に示すように高画質モードでは、速いモードと比べて各照射部のUVの照射強度が全体的に低くなっている。以下、この理由について説明する。なお、前述したように速いモードは2パスによる印刷方式(図5参照)であるのに対し、高画質モードは4パスによる印刷方式(図6参照)である。
【0060】
図9は、2パスの印刷方式と4パスの印刷方式においてそれぞれ単位面積に形成されるドットの概念図である。図からわかるように、2パスの印刷方式と4パスの印刷方式では解像度が異なる。つまり単面積に形成されるドットの数が異なっている。具体的には、2パスでは単位面積当たりに1つのドットが形成されているのに対し、4パスでは単位面積当たりに4つのドットが形成されている。このため、4パスの印刷方式で形成されるドットのドットサイズは、2パスの印刷方式で形成されるドットのドットサイズよりも小さくなる。つまり、ドットを硬化させるために必要なUVの照射強度は、2パスのときよりも4パスのときの方が小さくなる。よって、高画質モード(4パス)では、速いモード(2パス)よりもUVの照射強度が全体的に低く設定されている。
【0061】
また、この高画質モードでもコントローラー60は、仕上げ状態に応じて第1照射部42a、42bの照射強度を変更しており、さらに第1照射部42a、42bの照射強度応じて、第2照射部43a、43bの照射強度を変えている。こうすることで、仕上げ状態にかかわらずに、エネルギーを無駄に消費することなく確実にドットを硬化させることができる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態のプリンター1はUVインクを吐出するヘッド31を有し、搬送方向と交差する移動方向に移動するキャリッジ21と、キャリッジ21に設けられUVを照射する第1照射部42a、42b、及び、第2照射部43a、43bと、キャリッジ21を移動方向に移動させつつヘッド31からインクを吐出させるパスと、媒体を搬送方向に搬送させる搬送動作と、を実行することによって媒体に画像を形成するコントローラー60を備えている。このうち第1照射部42aはキャリッジ21においてヘッド31よりも移動方向の一端側に配置され、第1照射部42bはヘッド31よりも移動方向の他端側に配置されている。また、第2照射部43a、43bは第1照射部42a、42bよりも搬送方向の下流側に配置されている。
【0063】
そして、コントローラー60は、パスの際に第1照射部42a、42bのUVの照射強度を制御して、画像の仕上げ状態を調整し、且つ、第1照射部42a、42bのUVの照射強度に応じて、第2照射部43a、43bのUVの照射強度を変更している。
【0064】
こうすることにより、画像の仕上げ状態(質感)にかかわらずに、エネルギーを無駄に消費することなくドットを確実に硬化させることができる。つまり、UVの照射条件の最適化を図りつつ所望の画像を印刷することができる。
【0065】
なお、印刷条件(インクの種類、媒体の種類、印刷環境など)によっては、最も強い照射強度でUVを照射しても本硬化までされないような場合も考えられる。このような場合、パスの後に搬送動作を行わず、且つ、キャリッジ21を動移動方向に移動させつつ、各照射部からUVの照射のみを行う空パス(照射動作に相当する)を行うようにしてもよい。こうすることによりUVの累積照射量を多くすることができ、ドットをより確実に硬化させることができる。或いは、本硬化用の別の照射部を、例えばキャリッジ21よりも搬送方向下流側の搬送経路上において、移動方向の長さが、印刷対象となる媒体の最大幅よりも長くなるように設けておくようにしてもよい。
【0066】
また、本実施形態では、パスの際に第2照射部43a、43bの何れか一方からUVを照射するようにしているが、第2照射部43a、43bの両方からUVを照射するようにしてもよい。
【0067】
===第2実施形態===
図10は、第2実施形態のヘッド部分の説明図である。第2実施形態では、ヘッドの構成が第1実施形態と異なっている。
第2実施形態ではキャリッジ21に4つのヘッド(ヘッド31a、31b、31c、31d)を備えている。また、第1実施形態と同様にキャリッジ21に第1照射部42a、42b、第2照射部43a、43bを備えている。
【0068】
ヘッド31aとヘッド31cは、移動方向の他端側において、搬送方向に並んで配置されている。また、ヘッド31bとヘッド31dは、移動方向の一端側において、搬送方向に並んで配置されている。また、各ヘッドは、それぞれ搬送方向にずれて配置されている。
【0069】
第1照射部42a、42bは、4つのヘッドを挟むように、各ヘッドの外側にそれぞれ設けられている。
また、第2照射部43a、43bは、それぞれ、第1照射部42a、42bの搬送方向下流側に設けられている。
第1照射部42a、42b及び第2照射部43a、43bの搬送方向の長さは、4つのヘッドで構成されるノズル列の長さと同じになっている。
【0070】
第2実施形態による印刷動作(ドット形成、及びUV照射)は第1実施形態と同様なので、説明を省略する。
第2実施形態においても第1照射部42a、42bによって仮硬化を行なって仕上げ状態を調整した後、第2照射部43a、43bによって本硬化を行なう。これにより、UVの照射条件の最適化を図りつつ、所望の画像を印刷することができる。
【0071】
なお、第2実施形態では、搬送方向下流側のヘッド31a、31bと、搬送方向上流側のヘッド31c、31dとで別々にドットの形成を行うようにしてもよい。例えば、搬送方向下流側のヘッド31a、31bでカラーインク(CMYK)を吐出して画像を形成し、その後、各ヘッドのノズル列長さ分だけ媒体を搬送して、次のパスでヘッド31c、31dからクリアインクを吐出してカラーの画像上にクリアインクを塗布するようにしてもよい。この場合、カラー画像を形成した直後には、第1照射部42a、42bの搬送方向下流側の半分の領域から仮硬化用のUVを照射して、クリアインクを塗布した直後には、第1照射部42a、42bの搬送方向上流側の半分の領域から仮硬化のUVを照射するようにすればよい。そして、その後第2照射部43a、43bから本硬化のUVを照射するようにすればよい。
【0072】
あるいは、搬送方向下流側のヘッド31a、31bでホワイトインク(W)を吐出して媒体に背景画像を形成し、その後、各ヘッドのノズル列長さ分だけ媒体を搬送して、次のパスでヘッド31c、31dからカラーインクを吐出して背景画像上にカラー画像を形成するようにしてもよい。この場合、背景画像を形成した直後には、第1照射部42a、42bの搬送方向下流側の半分の領域から仮硬化用のUVを照射して、カラー画像を形成した直後には、第1照射部42a、42bの搬送方向上流側の半分の領域から仮硬化用のUVを照射するようにすればよい。そして、その後、第2照射部43a、43bから本硬化用のUVを照射するようにすればよい。
【0073】
これらの場合においても、前述の実施形態と同様に仕上げ状態に応じて第1照射部42a、42bの照射強度を変更し、且つ、第1照射部42a、42bの照射強度に応じて第2照射部43a、43bの照射強度を変更するようにすればよい。
【0074】
===その他の実施の形態===
一実施形態としてのプリンター等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0075】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、装置の一例としてプリンターが説明されていたが、これに限られるものではない。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、液体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の液体吐出装置に、本実施形態と同様の技術を適用しても良い。
【0076】
<ノズルについて>
前述の実施形態では、圧電素子(ピエゾ素子)を用いてインクを吐出していた。しかし、液体を吐出する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
【0077】
<インクについて>
前述の実施形態は、紫外線(UV)の照射を受けることによって硬化するインク(UVインク)をノズルから吐出していた。しかし、ノズルから吐出する液体は、このようなインクに限られるものではなく、UV以外の他の光(例えば可視光線など)の照射を受けることによって硬化する液体をノズルから吐出しても良い。この場合、各照射部から、その液体を硬化させるための光(可視光線など)を照射するようにすればよい。
【0078】
<印刷方法について>
前述の実施形態では、バンド印刷(ノズルピッチD間を埋める微小搬送と、ノズル列分の搬送を組み合わせた印刷方法)の場合について説明していたが、これには限られず、他の印刷方法を用いてもよい。例えば、同一ノズルによって形成されるドットが搬送方向に隣接しないマイクロウィーブ印刷であってもよい。
【0079】
<媒体について>
前述の実施形態は、各印刷モードにおいて同一種類の媒体に印刷することとしたが、媒体の種類によって、インク(ドット)の広がり方が異なる場合がある。このような場合、媒体の種類に応じて各照射部の照射強度を変えるようにしてもよい。例えば、インクが広がりやすい媒体に印刷する場合は、各照射部の照射強度を全体的に強くし、逆にインクが広がり難い媒体に印刷する場合は、各照射部の照射強度を全体的に弱くするようにすればよい。こうすることにより、さらに照射条件の最適化を図ることができる。
【0080】
<照射部について>
前述の実施形態では、キャリッジ21における移動方向の両端にそれぞれ第1照射部42aと第1照射部42bが設けられているが、何れか一方であってもよい。なお、例えば単方向印刷を行う場合、ドットを形成するパスにおけるヘッド31の移動方向の上流側に第1照射部を設けていると、ドット形成直後に、仮硬化のUV照射を行うことができる。
【0081】
また、前述した実施形態では、第1照射部42aと第1照射部42bの搬送方向下流側に、それぞれ第2照射部43aと第2照射部43bを設けていたがこれには限らない。例えば、第2照射部43aと第2照射部43bの何れか一方を設けるようにしてもよいし、第2照射部43a、43bと同様の構成の照射部をキャリッジ21の移動方向の中央(ヘッド31よりも搬送方向の下流側)に一つ設けても良い。この場合においても、ドット形成のパス以降のパスで本硬化のUVを照射することができる。また、キャリッジ21以外の場所に第2照射部を設けるようにしてもよい。例えば、キャリッジ21よりも搬送方向下流側の搬送経路上に第2照射部を設けても良い。そして媒体が搬送方向に搬送される際に媒体に形成されたドット(仮硬化後のドット)に本硬化のためのUVを照射するようにしてもよい。ただし、本実施形態のように第2照射部をキャリッジ21に設けるようにすると、キャリッジ21とともに移動方向に移動してUVを照射できるので、第2照射部の小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0082】
1 プリンター、10 搬送ユニット、11 給紙ローラー、
13 搬送ローラー、14 プラテン、15 排紙ローラー、
20 キャリッジユニット、21 キャリッジ、
30 ヘッドユニット、31 ヘッド、
40 照射ユニット、42a,42b 第1照射部、43a,43b 第2照射部、
50 検出器群、53 紙検出センサー、54 光学センサー、
60 コントローラー、61 インターフェイス部、62 CPU、
63 メモリー、64 ユニット制御回路、
110 コンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の照射によって硬化する液体を吐出するヘッドを有し、媒体の搬送方向と交差する移動方向に移動するキャリッジと、
前記キャリッジに設けられ光を照射する第1照射部であって、前記ヘッドよりも前記移動方向の上流側又は下流側に配置された第1照射部と、
光を照射する第2照射部であって、前記第1照射部よりも前記搬送方向の下流側に設けられた第2照射部と、
前記キャリッジを前記移動方向に移動させつつ前記ヘッドから前記液体を吐出させる吐出動作と、媒体を前記搬送方向に搬送させる搬送動作と、を実行することによって媒体に画像を形成するコントローラーであって、前記吐出動作の際に前記第1照射部の光の照射強度を制御して、画像の表面状態を調整し、且つ、前記第1照射部の光の照射強度に応じて、前記第2照射部の光の照射強度を変更するコントローラーと、
を備えたことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記コントローラーは、
画像を或る表面状態にするときには、前記第1照射部の光の照射強度を第1強度とし、且つ、前記第2照射部の光の照射強度を第2強度とし、
画像を前記或る表面状態よりも高い光沢の表面状態にするときには、前記第1照射部の光の照射強度を前記第1強度よりも弱くし、且つ、前記第2照射部の光の照射強度を前記第2強度よりも強くする
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液体吐出装置であって、
前記コントローラーは、前記吐出動作をn回(nは自然数)行うことによって媒体の所定領域にドットを形成する第1印刷モード、又は、前記吐出動作をm回(mはnよりも大きい自然数)行うことによって前記所定領域にドットを形成する第2印刷モードを実行して所定の表面状態の画像を印刷する場合、前記第2印刷モードにおける各照射部の光の照射強度を、前記第1印刷モードにおける各照射部の光の照射強度よりも弱くする
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の液体吐出装置であって、
前記コントローラーは、前記吐出動作と前記搬送動作の合間に、前記キャリッジを前記移動方向に移動させつつ、前記ヘッドから前記液体を吐出させずに各照射部から光を照射させる照射動作を実行する
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の液体吐出装置であって、
前記コントローラーは、媒体の種類に応じて前記第1照射部及び前記第2照射部の光の照射強度を変更する
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の液体吐出装置であって、
前記第2照射部は、前記キャリッジに設けられている
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項7】
媒体を搬送方向に搬送させる搬送動作と、ヘッドを有するキャリッジを前記搬送方向と交差する移動方向に移動させつつ、前記ヘッドから光の照射によって硬化する液体を吐出させる吐出動作と、を実行することによって媒体に画像を形成する液体吐出方法であって、
前記吐出動作の際に、前記キャリッジに設けられた第1照射部であって、前記ヘッドよりも前記移動方向の上流側又は下流側に配置された第1照射部の光の照射強度を制御して、画像の表面状態を調整することと、
前記第1照射部の光の照射強度に応じて、前記第1照射部よりも前記搬送方向の下流側に設けられた第2照射部の光の照射強度を変更することと、
を有することを特徴とする液体吐出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−232515(P2012−232515A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103113(P2011−103113)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】