説明

液体吐出装置、検査方法およびプログラム

【課題】残留振動に基づいて吐出部を検査する際の誤判定を抑制する。
【解決手段】プリンターは、インクを吐出する複数の吐出部と、残留振動に応じた電気信号SWを検出する検出部290と、電気信号SWに基づいて吐出部を検査する検査部104とを備え、検出部290による電気信号SWの検出の際、検査対象の吐出部における駆動素子66を接地させる接地端子72を、他の接地端子72および接地ラインGLから電気的に切り離す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置における吐出部を検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置の一つであるインクジェットプリンターは、インクを吐出する複数の吐出部を備え、各吐出部では、ノズルに連通するキャビティーにインクが貯留され、キャビティーに設けられた駆動素子(圧電素子)の駆動によりノズルからインクが吐出される。これら複数の吐出部における各駆動素子は、駆動信号が印加される共通電路に、それぞれアナログスイッチを介して接続されており、ノズルからインクを吐出する際には、吐出対象の吐出部の駆動素子に対応するアナログスイッチをオン状態(導通状態)、非吐出対象の駆動素子に対応するアナログスイッチをオフ状態(非導通状態)にして、共通電路に駆動信号を印加する。
【0003】
液体吐出装置の吐出部では、キャビティー内のインクに気泡が混入した場合や、キャビティー内のインクが増粘した場合には、ノズルが目詰まりし、ノズルからのインクの吐出を良好に行うことができなくなるおそれがある。従来、駆動素子の駆動によりキャビティー内のインクに残留する残留振動に基づいて、吐出部におけるノズルの目詰まりを検査する技術が提案されていた(例えば、特許文献1を参照)。このような検査技術では、ノズルの目詰まりを検査する際に、検査対象の吐出部の駆動素子に対応するアナログスイッチをオン状態、その他の駆動素子に対応するアナログスイッチをオフ状態にして、共通電路に駆動信号を印加した後、検査対象の吐出部の駆動素子から出力される残留振動に応じた電気信号を検出し、その電気信号に基づいて吐出部を検査する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−305992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、駆動素子と共通電路とを接続するアナログスイッチにはオフ状態で寄生容量成分が形成されるため、従来、検査対象の吐出部の駆動素子に発生する電荷が、検査対象とは異なる吐出部の駆動素子に対応するアナログスイッチの寄生容量成分にリーク(漏洩)することによって、残留振動に応じた電気信号の信号レベルが低下してしまうという問題があった。そのため、残留振動に応じた電気信号の信号対雑音比(SN比)を十分に得られない状況では、検査の誤判定を招くおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記した課題を踏まえ、残留振動に基づいて吐出部を検査する際の誤判定を抑制することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1] 適用例1の液体吐出装置は、接地された接地ラインと、第1のキャビティーに連通する第1のノズルから前記第1のキャビティー内の液体を第1の駆動素子の駆動により吐出する第1の吐出部と、前記第1の駆動素子を前記接地ラインに接続する第1の接地端子と、第2のキャビティーに連通する第2のノズルから前記第2のキャビティー内の液体を第2の駆動素子の駆動により吐出する第2の吐出部と、前記第2の駆動素子を前記接地ラインに接続する第2の接地端子と、前記第1の駆動素子および前記第2の駆動素子にそれぞれアナログスイッチを介して選択的に接続可能な共通電路と、前記共通電路を介して、前記第1の駆動素子および前記第2の駆動素子の各駆動を制御する駆動制御部と、前記第1のキャビティー内の液体の振動であって前記第1の駆動素子の駆動により残留する残留振動に応じた電気信号を、前記第1の接地端子を介して検出する検出部と、前記電気信号に基づいて前記第1の吐出部を検査する検査部と、前記検出部による前記電気信号の検出の際、前記第2の接地端子および前記接地ラインから前記第1の接地端子を電気的に切り離すスイッチ部とを備えることを特徴とする。適用例1の液体吐出装置によれば、残留振動に応じた電気信号の検出時に、第1の接地端子と第2の接地端子とが電気的に切り離されるため、アナログスイッチの寄生容量成分に起因する残留振動に応じた電気信号のレベル低下を抑制することができる。その結果、残留振動に基づいて吐出部を検査する際の誤判定を抑制することができる。
【0009】
[適用例2] 適用例1の液体吐出装置は、更に、第3のキャビティーに連通する第3のノズルから前記第3のキャビティー内の液体を第3の駆動素子の駆動により吐出する第3の吐出部と、第4のキャビティーに連通する第4のノズルから前記第4のキャビティー内の液体を第4の駆動素子の駆動により吐出する第4の吐出部とを備え、前記第3の駆動素子は、前記第1の駆動素子と共に前記第1の接地端子を介して前記接地ラインに接続され、前記第4の駆動素子は、前記第2の駆動素子と共に前記第2の接地端子を介して前記接地ラインに接続されるとしても良い。適用例2の液体吐出装置によれば、駆動素子毎に個別に接地端子を設ける場合と比較して構成の簡素化を図ることができる。
【0010】
[適用例3] 適用例2の液体吐出装置において、前記第1の吐出部および前記第3の吐出部は、前記第1の接地端子が形成された第1のユニットに構成され、前記第2の吐出部および前記第4の吐出部は、前記第2の接地端子が形成された第2のユニットに構成されたとしても良い。適用例3の液体吐出装置によれば、駆動素子と接地端子との対応がユニット間を跨ぐ場合と比較して構成の簡素化を図ることができる。
【0011】
[適用例4] 適用例2または適用例3の液体吐出装置において、前記駆動制御部は、前記共通電路を介して前記第1、第2、第3および第4の駆動素子の各駆動を制御することによって、前記第1の吐出部および前記第3の吐出部と、前記第2の吐出部および前記第4の吐出部との間で、それぞれ異なるタイミングで液体を吐出させても良い。適用例4の液体吐出装置によれば、異なるタイミングで液体を吐出させる吐出部同士を共通の接地端子を介して接地ラインに接続する場合と比較して、液体を吐出させながらの吐出部の検査を容易に実施することができる。
【0012】
[適用例5] 適用例1ないし適用例4のいずれかの液体吐出装置において、前記スイッチ部は、前記検出部による前記電気信号の検出の際、前記第1の接地端子を前記接地ラインから電気的に切り離す第1のスイッチと、前記検出部による前記電気信号の検出の際、前記第2の接地端子を前記接地ラインから電気的に切り離す第2のスイッチと、前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチによる切り離しに先立って、前記第1の接地端子を前記検出部に電気的に接続すると共に、前記第2の接地端子を前記検出部から電気的に切り離す第3のスイッチとを含むとしても良い。適用例5の液体吐出装置によれば、スイッチ部の構成の簡素化を図ることができる。
【0013】
[適用例6] 適用例1ないし適用例4のいずれかの液体吐出装置において、前記スイッチ部は、前記検出部による前記電気信号の検出の際、前記第1の接地端子を前記接地ラインから電気的に切り離す第1のスイッチと、前記検出部による前記電気信号の検出の際、前記第2の接地端子を前記接地ラインから電気的に切り離す第2のスイッチと、前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチによる切り離しに先立って、前記検出部および前記接地ラインに電気的に接続された検出電路に対して、前記第1の接地端子を電気的に接続すると共に、前記検出電路から前記第2の接地端子を電気的に切り離す第3のスイッチと、前記検出部による前記電気信号の検出の際、前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチによる切り離しの後、前記検出電路を前記接地ラインから電気的に切り離す第4のスイッチとを含むとしても良い。適用例5の液体吐出装置によれば、第4のスイッチを設けずに検出電路が接地ラインから電気的に切り離されている場合と比較して、スイッチ部におけるスイッチング動作を高速に実施することができる。
【0014】
[適用例7] 適用例1ないし適用例6のいずれかの液体吐出装置において、前記駆動制御部は、液体を吐出させないレベルで前記第1の吐出部および前記第2の駆動素子を駆動した後、前記残留振動を発生させるレベルで前記第1の駆動素子を駆動する制御を行っても良い。適用例7の液体吐出装置によれば、第2の吐出部におけるキャビティー内の液体を攪拌し、第2の吐出部における液体の増粘を防止することができる。
【0015】
[適用例8] 適用例8の検査方法は、 第1のキャビティーに連通する第1のノズルから前記第1のキャビティー内の液体を第1の駆動素子の駆動により吐出し、前記第1の駆動素子が第1の接地端子を介して接地ラインに接続された第1の吐出部と、第2のキャビティーに連通する第2のノズルから前記第2のキャビティー内の液体を第2の駆動素子の駆動により吐出し、前記第2の駆動素子が第2の接地端子を介して前記接地ラインに接続された第2の吐出部と、を備える液体吐出装置を検査する検査方法であって、前記第1の駆動素子および前記第2の駆動素子にそれぞれアナログスイッチを介して選択的に接続可能な共通電路を介して、前記第1の駆動素子および前記第2の駆動素子の各駆動を制御し、前記第1のキャビティー内の液体の振動であって前記第1の駆動素子の駆動により残留する残留振動に応じた電気信号を、前記第1の接地端子を介して検出し、前記電気信号に基づいて前記第1の吐出部を検査し、前記電気信号の検出の際、前記第2の接地端子および前記接地ラインから前記第1の接地端子を電気的に切り離すことを特徴とする。適用例8の検査方法によれば、残留振動に応じた電気信号の検出時に、第1の駆動素子の接地ライン側と第2の駆動素子の接地ライン側とが電気的に切り離されるため、アナログスイッチの寄生容量成分に起因する残留振動に応じた電気信号のレベル低下を抑制することができる。その結果、残留振動に基づいて吐出部を検査する際の誤判定を抑制することができる。
【0016】
[適用例9] 適用例9のプログラムは、 第1のキャビティーに連通する第1のノズルから前記第1のキャビティー内の液体を第1の駆動素子の駆動により吐出し、前記第1の駆動素子が第1の接地端子を介して接地ラインに接続された第1の吐出部と、第2のキャビティーに連通する第2のノズルから前記第2のキャビティー内の液体を第2の駆動素子の駆動により吐出し、前記第2の駆動素子が第2の接地端子を介して前記接地ラインに接続された第2の吐出部と、を備える液体吐出装置を検査する機能をコンピューターに実現させるためのプログラムであって、前記第1の駆動素子および前記第2の駆動素子にそれぞれアナログスイッチを介して選択的に接続可能な共通電路を介して、前記第1の駆動素子および前記第2の駆動素子の各駆動を制御する機能と、前記第1のキャビティー内の液体の振動であって前記第1の駆動素子の駆動により残留する残留振動に応じた電気信号を、前記第1の接地端子を介して検出する機能と、前記電気信号に基づいて前記第1の吐出部を検査する機能と、前記電気信号の検出の際、前記第2の接地端子および前記接地ラインから前記第1の接地端子を電気的に切り離す機能とを実現させることを特徴とする。適用例9のプログラムによれば、残留振動に応じた電気信号の検出時に、第1の駆動素子の接地ライン側と第2の駆動素子の接地ライン側とが電気的に切り離されるため、アナログスイッチの寄生容量成分に起因する残留振動に応じた電気信号のレベル低下を抑制することができる。その結果、残留振動に基づいて吐出部を検査する際の誤判定を抑制することができる。
【0017】
本発明の形態は、液体吐出装置、検査方法およびプログラムに限るものではなく、インクジェットプリンターを始めとする液体吐出装置の具体的な形態の他、液体中や気体中に固体が分散した状態の流体を吐出する吐出装置など他の形態に適用することもできる。また、本発明は、前述の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】プリンターの構成を示す説明図である。
【図2】ヘッドユニットにおけるヘッドの構造を示す説明図である。
【図3】ヘッドユニットにおけるインク吐出機構を示す説明図である。
【図4】制御部およびヘッドユニットの電気的構成を示す説明図である。
【図5】制御部およびヘッドユニットにおける各種信号の一例を示す説明図である。
【図6】残留振動に応じた電気信号の変化の一例を示す説明図である。
【図7】プリンターにおける制御部が実行する吐出性能検査処理の詳細を示すフローチャートである。
【図8】検出電路から検出される電気信号の試験結果を示す説明図である。
【図9】第2実施例における制御部およびヘッドユニットの電気的構成を示す説明図である。
【図10】第2実施例における制御部およびヘッドユニットにおける各種信号の一例を示す説明図である。
【図11】第3実施例における制御部およびヘッドユニットにおける各種信号の一例を示す説明図である。
【図12】他の実施形態における制御部およびヘッドユニットの電気的構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以上説明した本発明の構成および作用を一層明らかにするために、以下本発明を適用した液体吐出装置について説明する。
【0020】
A.第1実施例:
A1.プリンターの構成:
図1は、プリンター10の構成を示す説明図である。プリンター10は、液体を吐出する液体吐出装置の一つであるインクジェットプリンターであり、液体としてインクを吐出することによって、文字、図形および画像などのデータを、紙やラベルなどの印刷媒体90に印刷する。プリンター10は、制御部100と、ユーザーインターフェイス180と、通信インターフェイス190と、ヘッドユニット200とを備える。
【0021】
プリンター10のユーザーインターフェイス180は、ディスプレーや操作ボタンを備え、プリンター10のユーザーとの間で情報のやり取りを行う。通信インターフェイス190は、プリンター10と電気的に接続可能なパーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、メモリーカードなどの外部機器との間で情報のやり取りを行う。プリンター10のヘッドユニット200は、インクを吐出するインク吐出機構を備える。なお、インク吐出機構の詳細については後述する。
【0022】
プリンター10の制御部100は、プリンター10の各部を制御する。例えば、制御部100は、通信インターフェイス190を介して入力されるデータに基づいて、ヘッドユニット200および印刷媒体90を相対的に移動させながら、ヘッドユニット200からインク滴を吐出させる印刷制御を行う。これによって、印刷媒体90に対する印刷が実現される。
【0023】
本実施例では、制御部100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および入出力インターフェイスなどを備える装置であり、制御部100による各種の機能は、CPUがコンピュータープログラムに基づいて動作することによって実現される。なお、制御部100による機能の少なくとも一部は、制御部100が備える電気回路がその回路構成に基づいて動作することによって実現されても良い。
【0024】
本実施例では、ヘッドユニット200は、キャリッジ210と、インクカートリッジ220と、ヘッド280とを備える。ヘッドユニット200のキャリッジ210は、制御部100とフレキシブルケーブル170を介して接続され、インクカートリッジ220およびヘッド280を搭載した状態で移動可能に構成されている。ヘッドユニット200のインクカートリッジ220は、インクを内部に収容し、そのインクをヘッド280に供給する。本実施例では、インクの色(フォトブラック、マットブラック、シアン、マゼンタおよびイエロの5色)毎に用意された複数のインクカートリッジ220がキャリッジ210に搭載されている。ヘッドユニット200のヘッド280は、印刷媒体90に対向する部位であり、インクカートリッジ220からヘッド280に供給されたインクは、ヘッド280から印刷媒体90に向けて液滴状に吐出される。
【0025】
本実施例では、プリンター10は、ヘッドユニット200および印刷媒体90を相対的に移動させるために、主走査送り機構および副走査送り機構を備える。プリンター10の主走査送り機構は、キャリッジモーター312および駆動ベルト314を備え、駆動ベルト314を介してキャリッジモーター312の動力をヘッドユニット200に伝達することによって、ヘッドユニット200を主走査方向に往復移動させる。プリンター10の副走査送り機構は、搬送モーター322およびプラテン324を備え、搬送モーター322の動力をプラテン324に伝達することによって、主走査方向に交差する副走査方向に印刷媒体90を搬送する。主走査送り機構のキャリッジモーター312、および副走査送り機構の搬送モーター322は、制御部100からの制御信号に基づいて動作する。
【0026】
本実施例の説明では、ヘッドユニット200を往復移動させる主走査方向に沿った座標軸にX軸を設定し、印刷媒体90を搬送する副走査方向に沿った座標軸にY軸を設定し、重力方向の下方から上方に向かう座標軸にZ軸を設定した。X軸、Y軸およびZ軸は、それぞれ相互に直交する座標軸である。
【0027】
図2は、ヘッドユニット200におけるヘッド280の構造を示す説明図である。図2には、印刷媒体90側から見たヘッド280を図示した。ヘッドユニット200のヘッド280は、インクを吐出する複数のノズル48を備える。本実施例では、インクの色(フォトブラック、マットブラック、シアン、マゼンタおよびイエロの5色)毎にn個(例えば720個)のノズル48が設けられ、各色のノズル48は、主走査方向(X軸方向)に、フォトブラック、マットブラック、シアン、マゼンタ、イエロの順に配置されている。各色のn個のノズル48は、相互に副走査方向(Y軸方向)にずらして配列され、本実施例では、副走査方向(Y軸方向)におけるノズル48同士の間隔を狭めるため、副走査方向(Y軸方向)に沿って二列に分けて交互に配列されている。
【0028】
本実施例の説明では、ヘッドユニット200におけるノズルを総称する場合には符号「48」を用い、フォトブラックのノズルを特定する場合には符号「48pk」、マットブラックのノズルを特定する場合には符号「48k」、シアンのノズルを特定する場合には符号「48c」、マゼンタのノズルを特定する場合には符号「48m」、イエロのノズルを特定する場合には符号「48y」をそれぞれ使用する。更に、個々のノズルを特定する場合には、ノズル番号を付加した符号を用いる。例えば、図2に示すように、イエロの1番目のノズルには符号「48y(1)」、イエロの2番目のノズルには符号「48y(2)」、イエロの3番目のノズルには符号「48y(3)」、・・・、イエロの(n−1)番目のノズルには符号「48y(n−1)」、イエロのn番目のノズルには符号「48y(n)」を用いる。
【0029】
図3は、ヘッドユニット200におけるインク吐出機構を示す説明図である。図3には、ヘッド280を重力方向(Z軸方向)に沿って切断した断面を図示した。ヘッドユニット200のインク吐出機構は、導入路40と、リザーバー42と、供給口44と、キャビティー46と、ノズル48と、駆動素子66と、振動板67とを備える。
【0030】
インク吐出機構の導入路40およびリザーバー42は、インクの色毎に設けられ、インクカートリッジ220からノズル48へとインクを流す流路の一部を形成する。インクカートリッジ220からヘッドユニット200に供給されたインクは、導入路40を通じてリザーバー42に貯留される。
【0031】
インク吐出機構における供給口44、キャビティー46、駆動素子66および振動板67の各部は、ヘッド280に形成された複数のノズル48の各々に対応して設けられ、ノズル48と共に吐出部270を構成する。つまり、ヘッドユニット200は、ノズル48の数に対応した複数の吐出部270を備える。吐出部270は、駆動素子66の駆動により、キャビティー46内のインクを、キャビティー46に連通するノズル48から吐出する。
【0032】
吐出部270の供給口44およびキャビティー46は、インクカートリッジ220からノズル48へとインクを流す流路の一部を形成する。供給口44は、リザーバー42とキャビティー46との間を連通する流路であり、供給口44を通じてリザーバー42からキャビティー46にインクが供給される。キャビティー46は、ノズル48に連通する流路であり、供給口44およびノズル48よりも十分に大きな流路断面を有し、吐出前のインクを貯留する。
【0033】
吐出部270の駆動素子66は、振動板67を介してキャビティー46に設けられ、吐出部270の振動板67は、キャビティー46における流路壁面の一部を形成する。本実施例では、駆動素子66は、二つの電極662,666の間に圧電体664を積層し電極666側に振動板67を設けたユニモルフ型圧電アクチュエーターであるが、他の実施形態において、積層型圧電アクチュエーターを駆動素子66に適用しても良い。駆動素子66は、駆動信号の印加に基づいて重力方向(Z軸方向)に撓み、振動板67を変位させる。これによって、キャビティー46の容積を拡張してリザーバー42からインクを引き込んだ後、キャビティー46の容積を縮小してノズル48からインク滴を吐出することが可能である。
【0034】
図1の説明に戻り、本実施例では、プリンター10は、ヘッドユニット200のヘッド280を整備するメンテナンス機構(整備部)として、ヘッドワイパー330と、ヘッドキャップ340とを備える。プリンター10のヘッドワイパー330は、ヘッド280を拭き取ることによって、ヘッド280に付着したインクを除去する。
【0035】
プリンター10のヘッドキャップ340は、ヘッドユニット200の待機期間中にヘッド280に取り付きノズル48を封止することによって、吐出部270におけるインクの乾燥を防止する。吐出部270のノズル48が目詰まりした場合には、ヘッドキャップ340は、フラッシング処理や吸引処理などの回復処理(メンテナンス処理)に用いられる。ヘッドキャップ340は、フラッシング処理では、ヘッド280に対峙して吐出部270のノズル48から吐出されるインク滴を受け止め、吸引処理では、ヘッド280に取り付いた状態で、劣化したインクをノズル48から吸引する。ヘッドキャップ340を用いた回復処理によって、気泡や増粘で劣化したインクで目詰まりした吐出部270を、インクを適切に吐出可能な状態へと回復させることができる。
【0036】
図4は、制御部100およびヘッドユニット200の電気的構成を示す説明図である。制御部100は、駆動制御部102と、検査部104と、記憶部108とを備え、ヘッドユニット200は、シフトレジスター52と、ラッチ回路54と、レベルシフター56と、共通電路62と、複数のスイッチ64と、検出電路68と、接地端子72と、検出部290とを備える。
【0037】
制御部100の駆動制御部102は、ヘッドユニット200の共通電路62を介して、ヘッドユニット200における複数の駆動素子66の各駆動を制御する。本実施例では、駆動制御部102は、駆動素子66を駆動する駆動信号COMを共通電路62に印加すると共に、駆動信号COMの印加に合わせて、シフト入力信号SI、クロック信号SCK、ラッチ信号LATをヘッドユニット200に出力する。
【0038】
ヘッドユニット200のシフトレジスター52は、複数の吐出部270における各駆動素子66の動作を指示する指示データを保持する記憶装置である。制御部100からのシフト入力信号SIには、各駆動素子66に対応する指示データがクロック信号SCKに同期して順次出力され、シフトレジスター52には、シフト入力信号SIおよびクロック信号SCKに基づいて、各駆動素子66に対応する指示データが順次格納される。本実施例では、各駆動素子66に対応する指示データは、2ビットのデータであり、[0,0]、[0,1]、[1,0]、[1,1]のいずれかを示す。
【0039】
ヘッドユニット200のラッチ回路54は、制御部100からのラッチ信号LATに基づいて、シフトレジスター52に格納されている各駆動素子66の指示データを保持し、各指示データに応じた論理信号をレベルシフター56に出力する。ラッチ信号LATは、シフトレジスター52に各駆動素子66の指示データの全てが格納されるタイミングで制御部100から出力される。本実施例では、ラッチ回路54は、[0,0]の指示データに応じてLoレベルの論理信号を出力し、[0,1]の指示データに応じてLoレベルに続いてHiレベルの論理信号を出力し、[1,0]の指示データに応じてHiレベルに続いてLoレベルの論理信号を出力し、[1,1]の指示データに応じてHiレベルの論理信号を出力する。
【0040】
ヘッドユニット200のレベルシフター56は、ラッチ回路54から出力される論理信号に応じて、各駆動素子66に接続された複数のスイッチ64の各々に、各スイッチ64をオン・オフ可能なレベルの電圧を出力する。本実施例では、レベルシフター56は、ラッチ回路54からのLoレベルの論理信号に応じてスイッチ64をオフにするレベルの電圧を出力し、ラッチ回路54からのHiレベルの論理信号に応じてスイッチ64をオンにするレベルの電圧を出力する。
【0041】
ヘッドユニット200における複数のスイッチ64は、共通電路62と各駆動素子66との間の電気的な接続をオン・オフし、本実施例では、スイッチ64は、駆動素子66における二つの電極のうちの電極662側に接続されている。本実施例では、スイッチ64は、トランスミッションゲートによるアナログスイッチであり、オフ状態のスイッチ64には寄生容量成分が形成される。スイッチ64によって駆動素子66が共通電路62に電気的に接続されたオン状態では、共通電路62に印加された駆動信号COMが駆動素子66の電極662側に印加され、スイッチ64によって駆動素子66が共通電路62から電気的に切り離されたオフ状態では、共通電路62に印加された駆動信号COMは駆動素子66に印加されない。
【0042】
本実施例の説明では、ヘッドユニット200において共通電路62に接続されたスイッチを総称する場合には符号「64」を用い、各色のノズル番号に対応するスイッチを特定する場合には対応のノズル番号を付加した符号を用いる。例えば、各色の1番目のノズルに対応するスイッチには符号「64(1)」、各色の2番目のノズルに対応するスイッチには符号「64(2)」、・・・、各色のn番目のノズルに対応するスイッチには符号「64(n)」を用いる。
【0043】
本実施例の説明では、吐出部270の駆動素子を総称する場合には符号「66」を用い、各色のノズル番号に対応する駆動素子を特定する場合には対応のノズル番号を付加した符号を用いる。例えば、各色の1番目のノズルに対応する駆動素子には符号「66(1)」、各色の2番目のノズルに対応する駆動素子には符号「66(2)」、・・・、各色のn番目のノズルに対応する駆動素子には符号「66(n)」を用いる。
【0044】
ヘッドユニット200の接地端子72は、駆動素子66から接地ラインGLへの電気的接続を中継する電気伝導体であり、接地端子72と接地ラインGLとの間には、スイッチSW1および抵抗R1が電気的に並列に設けられている。本実施例では、接地端子72は、各駆動素子66における二つの電極のうちの電極666側に接続されている。接地ラインGLは、プリンター10における基準電位点に接続されている電気伝導体であり、本実施例では、プリンター10の筐体(図示しない)に接続されている。本実施例では、スイッチSW1は、電界効果トランジスタ(FET)を用いたスイッチング素子である。
【0045】
本実施例では、接地端子72は、色毎(フォトブラック、マットブラック、シアン、マゼンタ、イエロの5色)に設けられ、各色の接地端子72は、各色に対応する複数の駆動素子66を接地ラインGLに接続する。本実施例の説明では、ヘッドユニット200における接地端子を総称する場合には符号「72」を用い、各色の接地端子72を特定する場合、フォトブラックの接地端子には「72_1」、マットブラックの接地端子には「72_2」、シアンの接地端子には「72_3」、マゼンタの接地端子には「72_4」、イエロの接地端子には「72_5」をそれぞれ用いる。
【0046】
本実施例では、スイッチSW1および抵抗R1は、接地端子72毎に設けられている。本実施例の説明では、接地端子72と接地ラインGLとの間のスイッチおよび抵抗を総称する場合には符号「SW1」および「R1」をそれぞれ用い、接地端子72毎に対応するスイッチおよび抵抗を特定する場合、接地端子72_1に対応するスイッチおよび抵抗には「SW1_1」および「R1_1」、接地端子72_2に対応するスイッチおよび抵抗には「SW1_2」および「R1_2」、・・・、接地端子72_5に対応するスイッチおよび抵抗には「SW1_5」および「R1_5」をそれぞれ用いる。
【0047】
本実施例では、スイッチ64、駆動素子66および接地端子72は、色毎(フォトブラック、マットブラック、シアン、マゼンタ、イエロの5色)に対応する吐出ユニット78に構成されている。本実施例の説明では、ヘッドユニット200におけるユニットを総称する場合には符号「78」を用い、各色に対応するユニットを特定する場合、フォトブラックのユニットには「78_1」、マットブラックのユニットには「78_2」、シアンのユニットには「78_3」、マゼンタのユニットには「78_4」、イエロのユニットには「78_5」をそれぞれ用いる。例えば、フォトブラックに対応する接地端子72_1が形成された吐出ユニット78_1には、フォトブラックに対応するn個のスイッチ64(1)〜64(n)、およびフォトブラックに対応するn個の駆動素子66(1)〜66(n)が構成されている。
【0048】
ヘッドユニット200の検出電路68は、接地端子72から検出部290への電気的接続を中継する電気伝導体であり、接地端子72と検出電路68と間には、スイッチSW3が設けられている。スイッチSW3は、複数の接地端子72(接地端子72_1〜5)の一つを検出電路68に電気的に接続するマルチプレクサである。
【0049】
ヘッドユニット200の検出部290は、吐出部270におけるキャビティー46内のインクの振動であって駆動素子66の駆動により残留する残留振動に応じた電気信号SWを、接地端子72を介して検出する。本実施例では、駆動素子66は、残留振動を感知して残留振動に応じた電気信号SWを出力する感知部として機能し、接地端子72には、残留振動に伴う起電力によって駆動素子66から出力される電気信号SWが印加される。検出部290は、スイッチSW3を介して接地端子72に電気的に接続された検出電路68の電気信号HGNDを測定することによって、残留振動に応じた電気信号SWを検出する。本実施例では、検出部290は、制御部100から出力される検出実施信号DSELに従って電気信号SWを検出し、その検出結果として電気信号SWの検出値を示す検出信号POUTを制御部100に出力する。
【0050】
本実施例では、検出部290は、検出実施信号DSELに合わせて制御部100から出力されるスイッチ制御信号TSWに基づいて、スイッチSW1_1〜5を制御するスイッチ制御信号Tsw1_1〜5、およびスイッチSW3を制御するスイッチ制御信号Tsw3をそれぞれ出力する。スイッチ制御信号Tsw1_1〜5およびスイッチ制御信号Tsw3に基づいて、スイッチSW1_1〜5およびスイッチSw3は、検出対象の吐出部270の駆動素子66が構成された吐出ユニット78の接地端子72である第1の接地端子を、非検出対象の吐出部270の駆動素子66が構成された吐出ユニット78の接地端子72である第2の接地端子、および接地ラインGLから、電気的に切り離すスイッチ部として機能する。
【0051】
図5は、制御部100およびヘッドユニット200における各種信号の一例を示す説明図である。図5には、上段から順に、ラッチ信号LAT、切替信号CH、駆動信号COM、検出実施信号DSEL、およびスイッチ制御信号Tsw1_1〜5の各時間変化を図示し、その下段に、シフト入力信号SIの指示データに応じて駆動素子66に印加される印加電圧の時間変化を図示した。
【0052】
ラッチ信号LATは、駆動周期TDに応じて立ち上がる論理信号であり、制御部100からラッチ回路54に入力される。駆動周期TDは、各吐出部270における駆動素子66を駆動して印刷媒体90上に1画素を生成する期間に相当する。
【0053】
切替信号CHは、ラッチ信号LATに基づいてヘッドユニット200において生成される信号であり、ラッチ信号LATの立ち上がりから規定時間の経過に応じて立ち上がる論理信号である。ラッチ回路54は、ラッチ信号LATの立ち上がりから切替信号CHの立ち上がりまでの第1期間T1の間、シフトレジスター52から受け取った2ビットの指示データにおける1ビット目に応じた論理信号を出力し、切替信号CHの立ち上がりからラッチ信号LATの次の立ち上がりまでの第2期間T2の間、指示データの2ビット目に応じた論理信号を出力する。
【0054】
駆動信号COMは、駆動周期TDに同期して周期的に出力される電圧信号であり、制御部100から共通電路62およびスイッチ64を通じて駆動素子66に供給される。駆動信号COMは、第1期間T1では、中間電圧Vcを維持した状態から、中間電圧Vcよりも低い電圧Vmにまで立ち下がった後、再び中間電圧Vcになる。その後の第2期間T2では、駆動信号COMは、中間電圧Vcから、中間電圧Vcおよび電圧Vmよりも低い電圧V2にまで立ち下がった後、中間電圧Vcよりも高い電圧V1にまで立ち上がり、再び中間電圧Vcになる。
【0055】
図5の駆動信号COMは、吐出部270の目詰まり検査用の駆動信号であり、印刷用の駆動信号とは異なる波形である。第1期間T1における図5の駆動信号COMは、ノズル48からインク滴を吐出させることなくキャビティー46内のインクに微振動を発生させる印加レベルの信号であり、第2期間T2における図5の駆動信号COMは、ノズル48からインク滴を吐出させることなくキャビティー46内のインクに残留振動を発生させる印加レベルの信号である。
【0056】
検出実施信号DSELは、吐出部270の目詰まり検査時に、第2期間T2において駆動信号COMが中間電圧Vcから電圧V1に立ち上がったタイミングから、電圧V1から中間電圧Vcに立ち下がる前のタイミングまでの間に、ローレベルを維持し、その他の期間ではハイレベルを維持する論理信号である。ヘッドユニット200の検出部290は、検出実施信号DSELがローレベルの間、検出電路68の電気信号HGNDを検出し、検出実施信号DSELがハイレベルの間、電気信号HGNDの検出を停止する。
【0057】
スイッチ制御信号Tsw1_1〜5は、検出実施信号DSELと同期した信号であり、吐出部270の目詰まり検査時に、第2期間T2において駆動信号COMが中間電圧Vcから電圧V1に立ち上がったタイミングから、電圧V1から中間電圧Vcに立ち下がる前のタイミングまでの間にローレベルを維持し、その他の期間ではハイレベルを維持する論理信号である。スイッチSW1_1〜5は、スイッチ制御信号Tsw1_1〜5がハイレベルの間、オン状態を維持し、スイッチ制御信号Tsw1_1〜5がローレベルの間、オフ状態を維持する。
【0058】
シフト入力信号SIの指示データが[0,0]の場合、駆動素子66に印加される印加電圧は、駆動周期TDを通じて中間電圧Vcを維持した状態となる。そのため、その駆動素子66に対応する吐出部270では、微振動および残留振動は発生しない。
【0059】
シフト入力信号SIの指示データが[0,1]の場合、駆動素子66に印加される印加電圧は、第1期間T1を通じて中間電圧Vcを維持した後、第2期間T2において電圧V2および電圧V1に変化する。そのため、その駆動素子66に対応する吐出部270では、微振動は発生せず、残留振動のみが発生する。
【0060】
シフト入力信号SIの指示データが[1,0]の場合、駆動素子66に印加される印加電圧は、第1期間T1において電圧Vmに変化した後、第2期間T2を通じて中間電圧Vcを維持する。そのため、その駆動素子66に対応する吐出部270では、微振動のみが発生し、残留振動は発生しない。本実施例では、シフト入力信号SIの指示データが[1,0]は、吐出部270の目詰まり検査時に、検査の対象ではない非検査対象の吐出部270に対して設定される。
【0061】
シフト入力信号SIの指示データが[1,1]の場合、駆動素子66に印加される印加電圧は、第1期間T1において電圧Vmに変化した後、第2期間T2において電圧V2および電圧V1に変化する。そのため、その駆動素子66に対応する吐出部270では、微振動および残留振動が発生する。本実施例では、シフト入力信号SIの指示データが[1,1]は、吐出部270の目詰まり検査時に、検査対象の吐出部270に対して設定される。
【0062】
図4の説明に戻り、制御部100の検査部104は、ヘッドユニット200の検出部290によって検出された電気信号SWに基づいて吐出部270を検査する。本実施例では、検査部104は、ヘッドユニット200の検出部290から出力される検出信号POUTに基づいて、吐出部270の状態としてノズル48の目詰まり(インクの気泡混入および増粘)を検査する。
【0063】
制御部100の記憶部108は、判定基準データ130および検査結果データ140を記憶する。記憶部108の判定基準データ130は、電気信号SWに基づいて吐出部270の状態を判定するための判定基準を示すデータであり、本実施例では、プリンター10の工場出荷時に記憶部108に記憶される。記憶部108の検査結果データ140は、検査部104による吐出部270の検査結果を示すデータであり、検査部104による検査の実施に応じて記憶部108に記憶される。
【0064】
図6は、残留振動に応じた電気信号SWの変化の一例を示す説明図である。図6には、縦軸を電圧、横軸を時間とし、電気信号SWg,SWb,SWvの時間的変化を図示した。
【0065】
図6の電気信号SWgは、インクを吐出可能な状態にある単独の吐出部270における残留振動に応じた電気信号SWを示す。図6の電気信号SWbは、キャビティー46内のインクに気泡が発生したためにインクを吐出できない状態にある単独の吐出部270における残留振動に応じた電気信号SWを示す。図6の電気信号SWvは、キャビティー46内のインクが増粘したためにインクを吐出できない状態にある単独の吐出部270における残留振動に応じた電気信号SWを示す。
【0066】
ここで、吐出部270における振動板67を想定した単振動の計算モデルに圧力Pを与えた時のステップ応答を体積速度uについて計算すると、次の数式1が得られる。
【0067】
【数1】

【0068】
上記の数式1において、流路抵抗rは、供給口44、キャビティー46およびノズル48などの流路形状やこれら流路におけるインクの粘度に依拠し、イナータンスmは、供給口44、キャビティー46およびノズル48などの流路内におけるインクの質量に依拠し、コンプライアンスcは、振動板67の伸縮性に依拠する。
【0069】
キャビティー46内のインクに気泡が混入した状態では、キャビティー46内のインクが少なくなるため、主にイナータンスmが減少する。イナータンスmが減少すると、前述の数式1に示すように、角速度ωが大きくなる。そのため、図6に示すように、気泡混入状態の電気信号SWbでは、振動周期が電気信号SWgよりも短くなる。
【0070】
キャビティー46内のインクが増粘した状態では、流路抵抗rが増加する。流路抵抗rが増加すると、前述の数式1に示すように、角速度ωが小さくなる。そのため、図6に示すように、増粘状態の電気信号SWvでは、振動周期が電気信号SWgよりも長くなると共に、減衰量が電気信号Swgよりも大きくなる。
【0071】
A2.プリンターの動作:
【0072】
図7は、プリンター10における制御部100が実行する吐出性能検査処理P200の詳細を示すフローチャートである。吐出性能検査処理P200は、ヘッドユニット200における複数の吐出部270を残留振動に基づいて検査する処理である。本実施例では、吐出性能検査処理P200は、制御部100のCPUがコンピュータープログラムに基づいて検査部104として動作することによって実現される。本実施例では、制御部100は、予め設定された時期や、ユーザーからの指示入力に基づいて、吐出性能検査処理P200を開始する。
【0073】
吐出性能検査処理P200を開始すると、制御部100は、各色の吐出ユニット78_1〜5から検査対象の吐出ユニット78を選定し(ステップS210)、その選定した吐出ユニット78の接地端子72を、スイッチSW3を介して検出電路68に電気的に接続する(ステップS212)。本実施例では、制御部100は、フォトブラック、マットブラック、シアン、マゼンタ、イエロの順に対応する吐出ユニット78を選定する。
【0074】
本実施例では、制御部100は、スイッチ制御信号TSWをヘッドユニット200に出力して、ヘッドユニット200のスイッチSW3を制御することによって、検査対象の吐出ユニット78の接地端子72を検出電路68に電気的に接続すると共に、非検査対象の吐出ユニット78の接地端子72を検出電路68から電気的に切り離す。例えば、検査対象としてフォトブラックの吐出ユニット78_1を選定した場合、スイッチSW3は、吐出ユニット78_1の接地端子72_1を検出電路68に電気的に接続すると共に、吐出ユニット78_2〜5の接地端子72_2〜5を検出電路68から電気的に切り離す。
【0075】
検査対象の吐出ユニット78の接地端子72を検出電路68に接続した後(ステップS212)、制御部100は、検査対象の吐出ユニット78に構成されている複数の吐出部270の一つを検査対象として選定する(ステップS220)。検査対象の吐出部270を選定した後(ステップS220)、制御部100は、駆動制御部102として動作することによって、微振動を発生させるレベルでヘッドユニット200における全ての駆動素子66を駆動した後(ステップS232)、残留振動を発生させるレベルで検査対象の吐出部270における駆動素子66を駆動する(ステップS234)。
【0076】
具体的には、制御部100は、検査対象である吐出部270に対応するシフト入力信号SIの指示データに[1,1]を設定し、その他の吐出部270に対応するシフト入力信号SIの指示データに[1,0]を設定して、シフト入力信号SIおよびクロック信号SCKと共に、図5に示すように、ラッチ信号LAT、駆動信号COMおよび検出実施信号DSELをヘッドユニット200に出力する。これによって、ヘッドユニット200における全ての吐出部270のキャビティー46内のインクに微振動が発生した後、検査対象の吐出部270のキャビティー46内のインクに残留振動が発生し、残留振動に応じた電気信号SWが、検査対象の吐出部270における駆動素子66から、接地端子72およびスイッチSW3を通じて、検出電路68に印加される。その際に、ヘッドユニット200の検出部290は、検出電路68を通じて電気信号SWを検出し、その検出結果として電気信号SWの検出値を示す検出信号POUTを制御部100に出力する。
【0077】
検出部290による電気信号SWの検出の際、スイッチSW1_1〜5は、それぞれ対応する接地端子72を接地ラインGLから電気的に切り離す。スイッチSW1_1〜5による接地端子72の接地ラインGLからの切り離しに先立って、スイッチSW3は、検査対象の吐出ユニット78に対応する接地端子72を検出電路68に電気的に接続すると共に、非検査対象の吐出ユニット78に対応する接地端子72を検出電路68から電気的に切り離している。
【0078】
検査対象の駆動素子66を駆動した後(ステップS234)、制御部100は、ヘッドユニット200の検出部290から出力される検出信号POUTを通じて、電気信号SWの検出値を取得し(ステップS240)、電気信号SWの検出値に基づいて検査対象の吐出部270の状態を判定する(ステップS250)。検査対象の吐出部270の状態を判定した後(ステップS250)、制御部100は、その判定結果を検査結果データ140として記憶部108に保存する(ステップS260)。
【0079】
判定結果を保存した後(ステップS260)、制御部100は、検査対象の吐出ユニット78における複数の吐出部270の全てを検査するまで、検査対象の吐出部270の選定(ステップS220)からの処理を繰り返し実行する(ステップS270:「NO」)。検査対象の吐出ユニット78における複数の吐出部270の全てを検査すると(ステップS270:「YES」)、制御部100は、ヘッドユニット200における吐出ユニット78の全てを検査するまで、検査対象の吐出ユニット78の選定(ステップS210)からの処理を繰り返し実行する(ステップS280:「NO」)。ヘッドユニット200における吐出ユニット78の全てを検査すると(ステップS280:「YES」)、制御部100は、吐出性能検査処理P200を終了する。
【0080】
図8は、検出電路68から検出される電気信号SWの試験結果を示す説明図である。図8には、縦軸を電圧、横軸を時間とし、電気信号SW_1,SW_720,SW_3600の時間的変化を図示した。電気信号SW_1,SW_720,SW_3600は、それぞれ異なる構成の吐出ユニット78に接続された検出電路68から検出される電気信号SWを示す。
【0081】
電気信号SW_1は、1個の駆動素子66を接地端子72に接続した吐出ユニット78において、検査対象の単独の駆動素子66から電気信号SWgが出力された場合に、検出電路68から検出される電気信号SWを示す。電気信号SW_1の場合、共通電路62と接地端子72との間には、検査対象の駆動素子66と電気的に並列に接続されたオフ状態のスイッチ64が存在しないため、電気信号SW_1は、オフ状態のスイッチ64による寄生容量成分の影響を受けずに、検査対象の駆動素子66から出力された電気信号SWgと同等の態様を示す。
【0082】
電気信号SW_720は、720個の駆動素子66を接地端子72に接続した吐出ユニット78において、検査対象の単独の駆動素子66から電気信号SWgが出力された場合に、検出電路68から検出される電気信号SWを示す。電気信号SW_720の場合、共通電路62と接地端子72との間には、検査対象の駆動素子66と電気的に並列に接続されたオフ状態のスイッチ64が719個存在するため、電気信号SW_720は、719個分のオフ状態のスイッチ64による寄生容量成分の影響を受け、電気信号SW_1よりも信号レベルが低下する。
【0083】
電気信号SW_3600は、3600個の駆動素子66を接地端子72に接続した吐出ユニット78において、検査対象の単独の駆動素子66から電気信号SWgが出力された場合に、検出電路68から検出される電気信号SWを示す。電気信号SW_3600の場合、共通電路62と接地端子72との間には、検査対象の駆動素子66と電気的に並列に接続されたオフ状態のスイッチ64が3599個存在するため、電気信号SW_3600は、3599個分のオフ状態のスイッチ64による寄生容量成分の影響を受け、電気信号SW_720よりも更に信号レベルが低下する。
【0084】
図8の結果から、接地端子72に接続される駆動素子66の個数が少ない程、検査対象の駆動素子66から出力される電気信号SWのレベル低下を抑制できることが分かる。
【0085】
A3.効果:
以上説明した第1実施例のプリンター10によれば、検出部290による電気信号SWの検出時に、検出対象の吐出部270の駆動素子66(第1の駆動素子)が構成された吐出ユニット78の接地端子72である第1の接地端子と、非検出対象の吐出部270の駆動素子66(第2の駆動素子)のみが構成された吐出ユニット78の接地端子72である第2の接地端子とが電気的に切り離されるため、スイッチ64の寄生容量成分に起因する残留振動に応じた電気信号SWのレベル低下を抑制することができる。その結果、残留振動に基づいて吐出部270を検査する際の誤判定を抑制することができる。
【0086】
また、各色に対応するn個の駆動素子66毎に接地端子72を設けたことから、駆動素子66毎に接地端子72を設ける場合と比較して構成の簡素化を図ることができる。
【0087】
また、一つの吐出ユニット78に構成された複数の吐出部270の各駆動素子66は、その吐出ユニット78に形成された接地端子72に接続されていることから、駆動素子66と接地端子72との対応が吐出ユニット78間を跨ぐ場合と比較して構成の簡素化を図ることができる。
【0088】
また、微振動を発生させるレベルで全ての駆動素子66を駆動した後(ステップS232)、残留振動を発生させるレベルで検査対象の吐出部270の駆動素子66を駆動するため(ステップS234)、非検査対象の吐出部270におけるキャビティー46内のインクを攪拌し、非検査対象の吐出部270におけるインクの増粘を防止することができる。
【0089】
B.第2実施例:
図9は、第2実施例における制御部100およびヘッドユニット200の電気的構成を示す説明図である。第2実施例のプリンター10は、ヘッドユニット200の検出電路68を接地ラインGLに接続するスイッチSW4を備える点、および、スイッチSW1_1〜5の動作が異なる点を除き、第1実施例と同様である。本実施例では、スイッチSW4は、トランスミッションゲートによるアナログスイッチである。第2実施例では、検出部290は、検出実施信号DSELに合わせて制御部100から出力されるスイッチ制御信号TSWに基づいて、スイッチ制御信号Tsw1_1〜5、スイッチ制御信号Tsw3に加え、スイッチSW4を制御するスイッチ制御信号Tsw4を出力する。
【0090】
図10は、第2実施例における制御部100およびヘッドユニット200における各種信号の一例を示す説明図である。図10には、上段から順に、ラッチ信号LAT、切替信号CH、駆動信号COM、検出実施信号DSEL、スイッチ制御信号Tsw1_1〜5、およびスイッチ制御信号Tsw4の各時間変化を図示し、その下段に、シフト入力信号SIの指示データに応じて駆動素子66に印加される印加電圧の時間変化を図示した。第2実施例の各種信号は、スイッチ制御信号Tsw1_1〜5の動作タイミングが異なる点、およびスイッチ制御信号Tsw4を出力する点を除き、第1実施例と同様である。
【0091】
第2実施例のスイッチ制御信号Tsw1_1〜5は、第2期間T2において駆動信号COMが電圧V2に立ち下がるタイミングの前から、電圧V1から中間電圧Vcに立ち下がるタイミングまでの間にローレベルを維持し、その他の期間ではハイレベルを維持する論理信号である。スイッチ制御信号Tsw1_1〜5がハイレベルの間、スイッチSW1_1〜5は、オン状態を維持し、接地端子72_1〜5を接地ラインGLに電気的に接続する。スイッチ制御信号Tsw1_1〜5がローレベルの間、スイッチSW1_1〜5は、オフ状態を維持し、接地端子72_1〜5を接地ラインGLから電気的に切り離す。
【0092】
第2実施例のスイッチ制御信号Tsw4は、検出実施信号DSELと同期した信号であり、吐出部270の目詰まり検査時に、第2期間T2において駆動信号COMが中間電圧Vcから電圧V1に立ち上がったタイミングから、電圧V1から中間電圧Vcに立ち下がる前のタイミングまでの間にローレベルを維持し、その他の期間ではハイレベルを維持する論理信号である。スイッチ制御信号Tsw4がハイレベルの間、スイッチSW4は、オン状態を維持し、検出電路68を接地ラインGLに電気的に接続する。スイッチ制御信号Tsw4がローレベルの間、スイッチSW4は、オフ状態を維持し、検出電路68を接地ラインGLから電気的に切り離す。
【0093】
以上説明した第2実施例のプリンター10によれば、第1実施例と同様に、スイッチ64の寄生容量成分に起因する残留振動に応じた電気信号SWのレベル低下を抑制することができ、その結果、残留振動に基づいて吐出部270を検査する際の誤判定を抑制することができる。また、検出電路68に設けたスイッチSW4によって、検査対象の吐出部270に対応する接地端子72と接地ラインGLとの間の電気的な切り離し動作を、第1実施例と比較して高速に実施することができる。
【0094】
C.第3実施例:
第3実施例のプリンター10は、スイッチSW1_1〜5の動作が異なる点を除き、第2実施例と同様である。
【0095】
図11は、第3実施例における制御部100およびヘッドユニット200における各種信号の一例を示す説明図である。図11には、上段から順に、ラッチ信号LAT、切替信号CH、駆動信号COM、検出実施信号DSEL、スイッチ制御信号Tsw1_1〜5、およびスイッチ制御信号Tsw4の各時間変化を図示し、その下段に、シフト入力信号SIの指示データに応じて駆動素子66に印加される印加電圧の時間変化を図示した。図11に示すスイッチ制御信号Tsw1_1〜5は、吐出ユニット78_1〜5のうち、吐出ユニット78_1が検査対象に選定され、吐出ユニット78_2〜5が非検査対象にある状態を示す。
【0096】
第3実施例のスイッチ制御信号Tsw1_1〜5は、第2実施例と同様に変化するが、検査対象の吐出ユニット78_1に対応するスイッチSW1_1のスイッチ制御信号Tsw1_1と、非検査対象の吐出ユニット78_2〜5に対応するスイッチSW1_2〜5のスイッチ制御信号Tsw1_2〜5との間で、ローレベルの期間が相互にずれる点が異なる。図11の例では、スイッチ制御信号Tsw1_1〜5の間でローレベルの期間の長さは同じであるが、スイッチ制御信号Tsw1_1は、スイッチSW1_2〜5よりも先にローレベルの期間になる。これによって、スイッチSW1_1と、スイッチSW1_2〜5との間の動作タイミングをずらし、オン・オフ切り替え時にスイッチSW1_1〜5に流れる電流を低減させることができる。
【0097】
以上説明した第3実施例のプリンター10によれば、第1実施例と同様に、スイッチ64の寄生容量成分に起因する残留振動に応じた電気信号SWのレベル低下を抑制することができ、その結果、残留振動に基づいて吐出部270を検査する際の誤判定を抑制することができる。また、検出電路68に設けたスイッチSW4によって、検査対象の吐出部270に対応する接地端子72と接地ラインGLとの間の電気的な切り離し動作を、第1実施例と比較して高速に実施することができる。
【0098】
D.その他の実施形態:
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。
【0099】
例えば、上述の実施例では、インク滴を吐出させることなく残留振動を発生させる印加レベルで駆動素子66を駆動させて残留振動を検出したが、他の実施形態において、インク滴を吐出させる印加レベルで駆動素子66を駆動させて残留振動を検出しても良い。
【0100】
また、上述の実施例では、印刷媒体90に対する印刷とは異なるタイミングで吐出検査処理P200を実施したが、他の実施形態において、印刷媒体90に対する印刷を実行中に、残留振動に応じた電気信号SWに基づいて吐出部270を検査しても良い。
【0101】
また、上述の実施例では、検査対象の吐出部270の駆動素子66を駆動する前に、微振動を発生させるレベルでヘッドユニット200における全ての駆動素子66を駆動したが(ステップS232)、他の実施形態において、微振動のレベルで全ての駆動素子66を発生させることなく、検査対象の吐出部270の駆動素子66を駆動しても良い。
【0102】
また、上述の実施例では、吐出部270から吐出されるインクの色毎に接地端子72_1〜5を設けたが、他の実施形態において、複数の吐出部270を複数のグループに分けて、それぞれ異なるタイミングでインクを吐出する場合(例えば、特開2010−221499号公報の技術を参照)に、これらのグループ毎に接地端子72を設けても良い。例えば、色毎に、ノズル48(1)〜48(n/2)のグループと、ノズル48((n・2)+1)〜48(n)のグループとに分けて、それぞれ異なるタイミングでインクを吐出する場合には、ノズル48(1)〜48(n/2)のグループに対応する駆動素子66(1)〜66(n/2)に接続される接地端子と、ノズル48((n・2)+1)〜48(n)のグループに対応する駆動素子66((n・2)+1)〜66(n)に接続される接地端子と、を別々に設けても良い。これによって、異なるタイミングでインクを吐出させる吐出部270同士を共通の接地端子72を介して接地ラインGLに接続する場合と比較して、インクを吐出させながらの吐出部270の検査を容易に実施することができる。
【0103】
また、スイッチ64の寄生容量成分による電気信号SWのレベル低下を抑制する観点から、一つの接地端子72に接続する駆動素子66の数はより少ない方が好ましく、一つの接地端子72に一つの駆動素子66を接続することが最も好ましい。図12は、他の実施形態における制御部100およびヘッドユニット200の電気的構成を示す説明図である。図12に示す例では、駆動素子66毎に接地端子72を設け、これら接地端子72と接地ラインGLとの各間の電気的な接続をスイッチSW5で実施する。
【0104】
上述した実施例では、液体吐出装置の一例として、インクを吐出するインクジェットプリンターについて説明したが、本発明の液体吐出装置が吐出する液体は、インクに限るものではなく、各種の液体の他、液体中や気体中に固体が分散した状態の流体であっても良い。例えば、本発明は、インクジェット方式のプリンターに限るものではなく、他の方式のプリンターに適用することもできる。また、液晶ディスプレー、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレー、および面発光ディスプレー(Field Emission Display、FED)等の製造に用いられ、電極材や色材などの材料を分散や溶解の状態で含む液状体を吐出する吐出装置に適用することもできる。また、バイオチップの製造に用いられ、生体有機物を含有する液体を吐出する吐出装置に適用することもできる。また、精密ピペットとして用いられ、試料となる液体を吐出する吐出装置に適用することもできる。また、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する吐出装置や、光通信素子に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)を形成するために紫外線硬化性樹脂を始めとする透明樹脂液を吐出する吐出装置に適用することもできる。また、ウェハーをエッチングするためのエッチング液を吐出する吐出装置や、トナーを始めとする粉体を吐出する吐出装置に適用することもできる。
【符号の説明】
【0105】
10…プリンター
40…導入路
42…リザーバー
44…供給口
46…キャビティー
48,48k,48c,48m,48y…ノズル
52…シフトレジスター
54…ラッチ回路
56…レベルシフター
62…共通電路
64…スイッチ
66…駆動素子
67…振動板
68…検出電路
72,72_1〜5…接地端子
78,78_1〜5…吐出ユニット
90…印刷媒体
100…制御部
102…駆動制御部
104…検査部
108…記憶部
130…判定基準データ
140…検査結果データ
170…フレキシブルケーブル
180…ユーザーインターフェイス
190…通信インターフェイス
200…ヘッドユニット
210…キャリッジ
220…インクカートリッジ
270…吐出部
280…ヘッド
290…検出部
312…キャリッジモーター
314…駆動ベルト
322…搬送モーター
324…プラテン
330…ヘッドワイパー
340…ヘッドキャップ
662…電極
664…圧電体
666…電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地された接地ラインと、
第1のキャビティーに連通する第1のノズルから前記第1のキャビティー内の液体を第1の駆動素子の駆動により吐出する第1の吐出部と、
前記第1の駆動素子を前記接地ラインに接続する第1の接地端子と、
第2のキャビティーに連通する第2のノズルから前記第2のキャビティー内の液体を第2の駆動素子の駆動により吐出する第2の吐出部と、
前記第2の駆動素子を前記接地ラインに接続する第2の接地端子と、
前記第1の駆動素子および前記第2の駆動素子にそれぞれアナログスイッチを介して選択的に接続可能な共通電路と、
前記共通電路を介して前記第1の駆動素子および前記第2の駆動素子の各駆動を制御する駆動制御部と、
前記第1のキャビティー内の液体の振動であって前記第1の駆動素子の駆動により残留する残留振動に応じた電気信号を、前記第1の接地端子を介して検出する検出部と、
前記電気信号に基づいて前記第1の吐出部を検査する検査部と、
前記検出部による前記電気信号の検出の際、前記第2の接地端子および前記接地ラインから前記第1の接地端子を電気的に切り離すスイッチ部と
を備える液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、更に、
第3のキャビティーに連通する第3のノズルから前記第3のキャビティー内の液体を第3の駆動素子の駆動により吐出する第3の吐出部と、
第4のキャビティーに連通する第4のノズルから前記第4のキャビティー内の液体を第4の駆動素子の駆動により吐出する第4の吐出部と
を備え、
前記第3の駆動素子は、前記第1の駆動素子と共に前記第1の接地端子を介して前記接地ラインに接続され、
前記第4の駆動素子は、前記第2の駆動素子と共に前記第2の接地端子を介して前記接地ラインに接続される、液体吐出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体吐出装置であって、
前記第1の吐出部および前記第3の吐出部は、前記第1の接地端子が形成された第1のユニットに構成され、
前記第2の吐出部および前記第4の吐出部は、前記第2の接地端子が形成された第2のユニットに構成された、液体吐出装置。
【請求項4】
前記駆動制御部は、前記共通電路を介して前記第1、第2、第3および第4の駆動素子の各駆動を制御することによって、前記第1の吐出部および前記第3の吐出部と、前記第2の吐出部および前記第4の吐出部との間で、それぞれ異なるタイミングで液体を吐出させる、請求項2または請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の液体吐出装置であって、
前記スイッチ部は、
前記検出部による前記電気信号の検出の際、前記第1の接地端子を前記接地ラインから電気的に切り離す第1のスイッチと、
前記検出部による前記電気信号の検出の際、前記第2の接地端子を前記接地ラインから電気的に切り離す第2のスイッチと、
前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチによる切り離しに先立って、前記第1の接地端子を前記検出部に電気的に接続すると共に、前記第2の接地端子を前記検出部から電気的に切り離す第3のスイッチと
を含む、液体吐出装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の液体吐出装置であって、
前記スイッチ部は、
前記検出部による前記電気信号の検出の際、前記第1の接地端子を前記接地ラインから電気的に切り離す第1のスイッチと、
前記検出部による前記電気信号の検出の際、前記第2の接地端子を前記接地ラインから電気的に切り離す第2のスイッチと、
前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチによる切り離しに先立って、前記検出部および前記接地ラインに電気的に接続された検出電路に対して、前記第1の接地端子を電気的に接続すると共に、前記検出電路から前記第2の接地端子を電気的に切り離す第3のスイッチと、
前記検出部による前記電気信号の検出の際、前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチによる切り離しの後、前記検出電路を前記接地ラインから電気的に切り離す第4のスイッチと
を含む、液体吐出装置。
【請求項7】
前記駆動制御部は、液体を吐出させないレベルで前記第1の吐出部および前記第2の駆動素子を駆動した後、前記残留振動を発生させるレベルで前記第1の駆動素子を駆動する制御を行う、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
第1のキャビティーに連通する第1のノズルから前記第1のキャビティー内の液体を第1の駆動素子の駆動により吐出し、前記第1の駆動素子が第1の接地端子を介して接地ラインに接続された第1の吐出部と、
第2のキャビティーに連通する第2のノズルから前記第2のキャビティー内の液体を第2の駆動素子の駆動により吐出し、前記第2の駆動素子が第2の接地端子を介して前記接地ラインに接続された第2の吐出部と、を備える液体吐出装置を検査する検査方法であって、
前記第1の駆動素子および前記第2の駆動素子にそれぞれ選択的に接続可能な共通電路を介して、前記第1の駆動素子および前記第2の駆動素子の各駆動を制御し、
前記第1のキャビティー内の液体の振動であって前記第1の駆動素子の駆動により残留する残留振動に応じた電気信号を、前記第1の接地端子を介して検出し、
前記電気信号に基づいて前記第1の吐出部を検査し、
前記電気信号の検出の際、前記第2の接地端子および前記接地ラインから前記第1の接地端子を電気的に切り離す、検査方法。
【請求項9】
第1のキャビティーに連通する第1のノズルから前記第1のキャビティー内の液体を第1の駆動素子の駆動により吐出し、前記第1の駆動素子が第1の接地端子を介して接地ラインに接続された第1の吐出部と、
第2のキャビティーに連通する第2のノズルから前記第2のキャビティー内の液体を第2の駆動素子の駆動により吐出し、前記第2の駆動素子が第2の接地端子を介して前記接地ラインに接続された第2の吐出部と、を備える液体吐出装置を検査する機能をコンピューターに実現させるためのプログラムであって、
前記第1の駆動素子および前記第2の駆動素子にそれぞれ選択的に接続可能な共通電路を介して、前記第1の駆動素子および前記第2の駆動素子の各駆動を制御する機能と、
前記第1のキャビティー内の液体の振動であって前記第1の駆動素子の駆動により残留する残留振動に応じた電気信号を、前記第1の接地端子を介して検出する機能と、
前記電気信号に基づいて前記第1の吐出部を検査する機能と、
前記電気信号の検出の際、前記第2の接地端子および前記接地ラインから前記第1の接地端子を電気的に切り離す機能と
を実現させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−218376(P2012−218376A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88828(P2011−88828)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】