説明

液体吐出装置およびインクジェット記録装置

【課題】液体貯留部と液体吐出部との水頭差を大きくすることなく、安定的に液体吐出部に液体を供給することができる液体吐出装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る液体吐出装置10は、媒体に液体を吐出する液体吐出部22と、その液体を貯留する液体貯留部17と、液体貯留部17と液体吐出部22との間を液体が流通可能に連結された第1の液体流路31とを備え、第1の液体流路31には、液体を流通させるための流通ポンプ37が設けられると共に、流通ポンプ37を挟んで上流側に第1の分岐部34および下流側に第2の分岐部35がそれぞれ設けられ、第1の分岐部34および第2の分岐部35に連結され、液体が流通可能に連通した第2の液体流路32をさらに備え、第2の液体流路32には、所定圧力以上で開放する第1の開閉バルブが36設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置およびインクジェット記録装置に関し、さらに詳細には、媒体に液体を吐出する液体吐出部を備えた液体吐出装置、および記録メディアにインクを吐出する記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記液体吐出装置の例としてインクジェットプリンタ(インクジェット記録装置)が挙げられ、従来より種々の構成のものが知られている。例えば、被印刷対象物であるシート状の記録メディアを支持するためのプラテン、およびこのプラテンの上側にプラテンに対向させた記録ヘッドを設けた構成が知られている。記録ヘッドは、例えば、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)等の色毎に設けられており、プラテンに対向した面には多数の吐出ノズルが形成されている。当該吐出ノズルから吐出されるインクは、インクカートリッジから記録ヘッドに供給される。この構成の液体吐出装置においては、記録ヘッドを左右に往復移動させる動作と、これに対して直交する前後方向に記録メディアを相対移動させる動作とを組み合わせて行いながら、プラテンに支持された記録メディアに向けて吐出ノズルからインク(インク滴)を吐出させる制御を行い、記録メディアの表面に所望の印刷を施すようになっている。
【0003】
上記構成に例示されるインクジェットプリンタの従来例として、図3に示すように、インクジェット記録ヘッド101と、インクを貯蔵するインクタンク103とこれらを連結する第1流路109と、第1流路109の途中から分岐しインクタンクに連結する第2流路107と、流路の分岐点とインクタンクとの間に取り付けられたポンプ104と、第1流路109へのインクを規制する手段によって構成され、制御手段である三方弁105によって第1流路へのインク流を遮断して、第2流路とインクタンク103でのインク循環を行い、インクタンク103内のインクを攪拌するインクジェットプリンタ100が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3127581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に例示されるインクジェットプリンタにおいては、例えば、インク貯留部と、インク吐出部との水頭差が小さく、且つ、粘度の高いインクを使用する機種において、印刷速度の速い印刷あるいは双方向印刷等のインク消費量が多い印刷を実行すると、インク吐出部へのインク供給が不十分になり易いという課題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、液体貯留部と液体吐出部との水頭差を大きくすることなく、安定的に液体吐出部に液体を供給しつつ、液体の循環を行うことができる液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態として、以下に開示するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0008】
開示の液体吐出装置は、媒体に液体を吐出する液体吐出部と、前記液体吐出部から吐出する前記液体を貯留する液体貯留部と、前記液体貯留部と前記液体吐出部との間を前記液体が流通可能に連結された第1の液体流路と、を備えた液体吐出装置において、前記第1の液体流路には、前記液体を流通させるための流通ポンプが設けられると共に、該流通ポンプを挟んで上流側に第1の分岐部および下流側に第2の分岐部がそれぞれ設けられ、前記第1の分岐部および前記第2の分岐部に連結され、前記液体が流通可能に連通した第2の液体流路をさらに備え、前記第2の液体流路には、所定圧力以上で開放する第1の開閉バルブが設けられていることを特徴とする。これによれば、液体を還流(循環)させて液体内における固形物の沈降を防止できると共に、液体貯留部と液体吐出部との水頭差を大きくすることなく、安定的に液体吐出部に液体を供給しつつ、当該液体の還流(循環)を行うことができる。
【0009】
また、本発明において、前記第1の液体流路には、前記第2の分岐部と前記液体吐出部との間に、所定圧力以下で開放する第2の開閉バルブが設けられていることが好ましい。これによれば、能力の大きな流通ポンプの使用が可能となるため、液体の還流(循環)作用および流通作用を高めることができる。
【0010】
開示のインクジェットプリンタは、記録メディアにインクを吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドから吐出する前記インクを貯留するインクカートリッジと、前記インクカートリッジと前記記録ヘッドとの間を前記インクが流通可能に連結された第1の液体流路と、を備えたインクジェット記録装置において、前記第1の液体流路には、前記インクを流通させるための流通ポンプが設けられると共に、該流通ポンプを挟んで上流側に第1の分岐部および下流側に第2の分岐部がそれぞれ設けられ、前記第1の分岐部および前記第2の分岐部に連結され、前記インクが流通可能に連通した第2の液体流路をさらに備え、前記第2の液体流路には、所定圧力以上で開放する第1の開閉バルブが設けられていることを特徴とする。これによれば、インクを還流(循環)させてインクの色材が沈降することを防止できると共に、インクカートリッジと記録ヘッドとの水頭差を大きくすることなく、安定的に記録ヘッドにインクを供給しつつ、当該インクの還流(循環)を行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
開示の液体吐出装置によれば、液体貯留部と液体吐出部との水頭差を大きくすることなく、安定的に液体吐出部に液体を供給しつつ、液体の循環を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の本実施形態に係る液体吐出装置の例を示す概略図である。
【図2】図1の液体吐出装置における液体の流路とその周辺構成の概略図である。
【図3】従来の実施形態に係る液体吐出装置の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。ここでは、本実施形態に係る液体吐出装置として、インクジェットプリンタの場合を例に挙げて説明を行う。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0014】
図1に、本実施形態に係る液体吐出装置(ここでは、インクジェットプリンタ)10の構成を示す。なお、説明の便宜上、図1において矢印方向でインクジェットプリンタ10の左右、および上下方向を示す。また、図1における紙面の前後方向をインクジェットプリンタ10の前後方向とする。以下、これらの方向を用いて説明を行う。
【0015】
インクジェットプリンタ10は、図1に示すように、支持脚11により支持された中央ボディ部12と、中央ボディ部12の左側に設けられた左ボディ部13と、中央ボディ部12の右側に設けられた右ボディ部14と、左右ボディ部13、14を繋ぐと共に中央ボディ部12の上側に離間して平行に延びた上ボディ部15とを備えて構成される。このインクジェットプリンタ10は、左ボディ部13の内部に設けられたコントロールユニット40により、各部の動作制御が行われるようになっている。
【0016】
上ボディ部15の内部には、左右に延びたガイドレール15aが設けられており、このガイドレール15aに対してヘッドユニット20が取り付けられている。ヘッドユニット20は、ガイドレール15aに取り付けられて左右に移動自在となったキャリッジ21、およびキャリッジ21に搭載された記録ヘッド22から構成される。記録ヘッド22は、一例として、ブラックインクを吐出するブラックヘッド22K、マゼンタインクを吐出するマゼンタヘッド22M、イエローインクを吐出するイエローヘッド22Y、シアンインクを吐出するシアンヘッド22C、およびホワイトインクを吐出するホワイトヘッド22Wから構成されており、キャリッジ21に装着される。記録ヘッド22の下面には、インクを記録メディアMに向けて下方へ吐出する複数の吐出ノズル(図示せず)が形成されている。例えば、180個の吐出ノズルを前後方向に直線状に整列させて形成されたノズル列が、左右方向に8列並べられて形成される。各吐出ノズルにおけるインクの吐出制御は、コントロールユニット40から各記録ヘッド22に出力される駆動制御信号により行われる。
【0017】
中央ボディ部12の上面には、左右に延びた平板状のプラテン12aが露出して設けられ、このプラテン12aの後側に左右に延びた送りローラ(図示せず)が露出して設けられている。この送りローラは、中央ボディ部12の内部に設けられた前後駆動モータ19により回転駆動される。そのため、被印刷対象であるシート状の記録メディアMを、上ボディ部15に設けられたピンチローラ(図示せず)と送りローラとの間に挟持した状態で、コントロールユニット40からの駆動制御信号に従って前後駆動モータ19を駆動させることにより、記録メディアMを駆動制御量に応じた送り量で前後に送ることができるようになっている。
【0018】
右ボディ部14の上部には、カートリッジ装着部16が設けられており、このカートリッジ装着部16に対して複数のインクカートリッジ17が前後に挿入されている。この複数のインクカートリッジ17は、後述するインクの流路を介して記録ヘッド22と接続されている。そして、記録ヘッド22におけるインクの消費量に応じて、インクカートリッジ17のインクが当該インクの流路を介して記録ヘッド22へ供給されるようになっている。また、右ボディ部14の内部には、ガイドレール15aに沿ってヘッドユニット20を左右に移動させるための左右駆動モータ29が設けられている。この左右駆動モータ29を、コントロールユニット40からの駆動制御信号に従って駆動させることにより、駆動制御量に応じた送り量で左右に移動させることができるようになっている。
【0019】
左ボディ部13の前面側には、操作スイッチ類や表示装置類等から構成された操作表示部13aが設けられている。また、左ボディ部13の内部には、メンテナンスユニット30およびコントロールユニット40が設けられている。メンテナンスユニット30は、記録ヘッド22に対して着脱可能に設けられており、当該記録ヘッド22下面形状に応じて形成されると共に上方に向けて開口したキャップ部材(図示せず)、排出ポンプ(図示せず)およびキャップ駆動モータ39を備えて構成される。このキャップ駆動モータ39を、コントロールユニット40からの駆動制御信号に従って駆動させることにより、駆動制御量に応じた移動量で上下に移動させることができるようになっている。また、排出ポンプを駆動させることにより、キャップ部材の内部に負圧を作用させることができるようになっている。
【0020】
コントロールユニット40は、インクジェットプリンタ10の各部の動作を制御する制御プログラムが書き込まれたROM(Read−Only Memory)(図示せず)、記録メディアMに印刷するためのプログラム等を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)(図示せず)、および、RAMから読み込まれたプログラムや操作表示部13aから入力された操作信号等について演算処理を行い、制御プログラムに従って各部の動作を制御する制御部41(図2参照)から構成される。このコントロールユニット40は、制御部41における演算処理結果に基づいて、流通ポンプ37(図2参照)、前後駆動モータ19、左右駆動モータ29、キャップ駆動モータ39、記録ヘッド22等に駆動制御信号を出力することにより、これらの動作を制御するようになっている。
【0021】
ここで、本実施形態に係る液体吐出装置において特徴的なインクの流路および周辺構成について詳しく説明する。
【0022】
図2は、本実施形態に係る液体吐出装置(ここでは、インクジェットプリンタ)10におけるインクの流路およびその周辺構成の概略図である。
同図2に示すように、インクジェットプリンタ10は、液体貯留部(ここでは、インクカートリッジ)17と液体吐出部(ここでは、記録ヘッド)22との間をインクが流通可能に連結された第1の液体流路31を備えている。
【0023】
また、第1の液体流路31の流路途中には流通ポンプ37が設けられている。当該流通ポンプ37は、第1の液体流路31内および後述の第2の液体流路32内にインクを流通させる駆動源である。なお、流通ポンプ37の例として、チューブポンプ等を用いることが考えられるが、これに限定されるものではない。
【0024】
また、第1の液体流路31の流路途中には、流通ポンプ37を挟んで上流側に第1の分岐部34が設けられ、下流側に第2の分岐部35が設けられている。すなわち、第1の分岐部34は、第1の液体流路31の流路途中であって、インクカートリッジ17と流通ポンプ37との間に配設され、第2の分岐部35は、第1の液体流路31の流路途中であって、流通ポンプ37と記録ヘッド22との間に配設される構成である。
【0025】
また、同図2に示すように、インクジェットプリンタ10は、第1の分岐部34および第2の分岐部35に連結され、インクが流通可能に連通した第2の液体流路32を備えている。
ここで、第2の液体流路32には、所定圧力以上で開放する第1の開閉バルブ36が設けられている。
【0026】
なお、本実施形態においては、第1の液体流路31の流路途中であって、第2の分岐部35と記録ヘッド22との間には加圧ダンパーユニット60が設けられている。一例として、加圧ダンパーユニット60は、インク内の異物を除去するためのフィルター室61、および圧力室63の圧力が一定以下になると自動的に開放する封止バルブ(第2の開閉バルブ)62を備えて構成されている。これによれば、記録ヘッド22の吐出ノズル(図示せず)からインクが吐出されることによって圧力室63内の圧力が低下したとき、第2の開閉バルブ62が開放状態となるため、第1の流路31から記録ヘッド22へインクが流通して補充が行われる。
【0027】
また、本実施形態においては、後述する効果が得られるため、加圧ダンパーユニット60は、インクカートリッジ17に対して水頭差が小さくなるように配設することができる。
【0028】
以上のように、本願発明は、(1)印刷中、記録ヘッド22側への一定の正圧によってインクを安定的に供給すること。(2)また、印刷中に記録ヘッド22側へ上記一定圧以上の正圧にしてインクの循環を行うこと。の二つを目的としている。そのため、特に、以下の特徴的な構成を備えている。
(a)インクカートリッジ17と記録ヘッド22との流路間に流通ポンプ37を配設したこと。
(b)流通ポンプ37を挟むように配設された2つの分岐部(第1の分岐部34、第2の分岐部35)を有し、この2つの分岐部(第1の分岐部34、第2の分岐部35)に連結された循環経路(第2の液体流路32)を有すること。
(c)循環経路(第2の液体流路32)に圧力バルブ(第1の開閉バルブ36)を有すること。
【0029】
したがって、仮に流通ポンプ37が循環経路(第2の液体流路32)に配設された構成では、上記二つの目的(1)、(2)を達成することはできない。これに対して、本願発明は、特に上記の特徴的な構成を備えることによって、当該二つの目的を同時に達成することを可能としている。すなわち、印刷中、インク圧力を上記一定圧以上にすることにより、循環経路(第2の液体流路32)でのインク循環を行った場合でも、安定的な印刷を行うことが可能となる。
【0030】
以上、液体吐出装置の例として、インクジェットプリンタ10の構成について説明した。ここで、当該インクジェットプリンタ10の動作について、装置内部におけるインクの流通に沿って説明を行う。
【0031】
先ず、流通ポンプ37を起動する。これによって、流通ポンプ37よりも上流側の第1の流路内31内からインクが流通ポンプ37に取り込まれ、流通ポンプ37よりも下流側の第1の流路内31内へインクが流通ポンプ37から送り出される作用が生じる。したがって、インクカートリッジ17に貯留されたインクが加圧ダンパーユニット60へ向かって第1の流路内31内を流通する。
【0032】
このとき、記録ヘッド22による印刷が行われないと、記録ヘッド22の吐出ノズル(図示せず)からインクが吐出されず、圧力室63内の圧力が所定値(あらかじめ定めた開放設定値)以下に低下しないため、第2の開閉バルブ62が閉鎖状態に維持される。これによって、第2の開閉バルブ62よりも上流側(具体的には、流通ポンプ37と第2の開閉バルブ62との間)の第1の流路31内における圧力が上昇する。
【0033】
ここで、流通ポンプ37と第2の開閉バルブ62との間における第1の流路31内の圧力が上昇すると、第2の分岐部35に連結されて第1の流路31から分岐している第2の流路32内(具体的には、第2の分岐部35と第1の開閉バルブ36との間)の圧力が上昇する作用が生じる。その結果、第1の開閉バルブ36に作用する圧力が所定値(あらかじめ定めた開放設定値)以上に上昇すると、当該第1の開閉バルブ36が開放状態となる。これによって、第1の流路31から第2の分岐部35を経由して第2の流路32内へインクが流通する。そのインクはさらに、第1の開閉バルブ36を通過して、第2の流路32内を第1の分岐部34へ向かって流通する。さらに、第1の分岐部34から第1の流路31内へ流通して、再度、流通ポンプ37に取り込まれることとなり、インクの還流作用が生じる。このように、インクを還流(循環)させる作用が得られることによって、インクに含まれる色材の沈降を防止することができる。
【0034】
一方、記録ヘッド22による印刷が行われると、記録ヘッド22の吐出ノズル(図示せず)からインクが吐出されることによって圧力室63内の圧力が所定値(あらかじめ定めた開放設定値)以下に低下して、第2の開閉バルブ62が開放状態となる。これによって、第1の流路31から記録ヘッド22へインクが流通して補充が行われる。このとき、第2の開閉バルブ62よりも上流側(具体的には、流通ポンプ37と第2の開閉バルブ62との間)の第1の流路31内における圧力が低下する。
【0035】
ここで、流通ポンプ37と第2の開閉バルブ62との間における第1の流路31内の圧力が低下すると、第2の分岐部35に連結されて第1の流路31から分岐している第2の流路32内(具体的には、第2の分岐部35と第1の開閉バルブ36との間)の圧力が低下する作用が生じる。その結果、第1の開閉バルブ36に作用する圧力が所定値(あらかじめ定めた開放設定値)未満に低下して、当該第1の開閉バルブ36が閉鎖状態となる。これによって、第1の流路31から第2の分岐部35を経由して第2の流路32内へのインク流通が停止する。そのため、流通ポンプ37と第2の開閉バルブ62との間における第1の流路31内の圧力が上昇する作用が生じる。
すなわち、インクカートリッジ17と加圧ダンパーユニット60との水頭差を大きく設けない場合であっても、流通ポンプ37の起動によって、記録ヘッド22による印刷時には、所定の圧力(第1の開閉バルブ36の開放設定値未満)で加圧ダンパーユニット60に適切な正圧を印加することができる。なお、その場合、流通ポンプ37は制御部41によって、適切な駆動状態に制御される。
【0036】
このように、加圧ダンパーユニット60に印加される圧力を適切な正圧に維持できることにより、印刷時の記録ヘッド22におけるインク消費量に応じた、必要なインク流量を確保することができる。したがって、例えば、インクカートリッジと、加圧ダンパーユニット(もしくは記録ヘッド)との水頭差が小さく、且つ、粘度の高いインクを使用する機種において、印刷速度の速い印刷あるいは双方向印刷等のインク消費量が多い印刷を実行すると、記録ヘッドへのインク供給が不十分になり易いという課題の解決が可能となる。すなわち、記録ヘッド22におけるインク消費量に対して、インク供給量が不十分となる(不足する)という事態の発生を防止することができる。
【0037】
以上説明した通り、開示の液体吐出装置によれば、液体貯留部と液体吐出部との水頭差を大きくすることなく、安定的に液体吐出部に液体を供給しつつ、液体を還流(循環)させることが可能となる。また、当該液体の還流(循環)によって液体内に含まれる固形物の沈降を防止することが可能となる。特に、本実施形態によれば、以下の特徴的な作用効果が奏される。
【0038】
インクジェットプリンタ10は、記録メディアMにインクを吐出する記録ヘッド22と、記録ヘッド22から吐出するインクを貯留するインクカートリッジ17と、インクカートリッジ17と記録ヘッド22との間をインクが流通可能に連結された第1の液体流路31とを備え、第1の液体流路31には、インクを流通させるための流通ポンプ37が設けられると共に、流通ポンプ37を挟んで上流側に第1の分岐部34および下流側に第2の分岐部35がそれぞれ設けられ、第1の分岐部34および第2の分岐部35に連結され、インクが流通可能に連通した第2の液体流路32をさらに備え、第2の液体流路32には、所定圧力以上で開放する第1の開閉バルブ36が設けられている。これによれば、印刷速度が速い印刷あるいは双方向印刷を行う場合にも、水頭差を大きくすることなく、安定的にインクを供給しつつ、インクの還流(循環)を行うことができる。また、インクを供給する第1の液体流路31と、インクを還流する第2の液体流路32との間で当該インクの還流(循環)を行うことによって、例えばホワイトインク等、比重の大きいインクの色材の沈降を防ぐことができる。さらに、圧送式のインク供給方式に比べて、加圧ダンパーユニット60を用いるため、簡便に記録ヘッドのノズル面の負圧制御ができる。
【0039】
また、第1の液体流路31には、第2の分岐部35と記録ヘッド22との間に、所定圧力以下で開放する第2の開閉バルブ62が設けられている。これによれば、能力の大きな流通ポンプ37の使用が可能となるため、インクの還流(循環)作用および流通作用を高めることができる。
【0040】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。特に、液体吐出装置としてインクジェットプリンタを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、その他の装置に対しても適用が可能である。
【符号の説明】
【0041】
10 液体吐出装置
12 中央ボディ部
13 左ボディ部
14 右ボディ部
15 上ボディ部
16 カートリッジ装着部
17 インクカートリッジ
20 ヘッドユニット
21 キャリッジ
22 記録ヘッド
30 メンテナンスユニット
31 第1の液体流路
32 第2の液体流路
34 第1の分岐部
35 第2の分岐部
36 第1の開閉バルブ
37 流通ポンプ
40 コントロールユニット
41 制御部
60 加圧ダンパーユニット
62 第2の開閉バルブ
63 圧力室
M 記録メディア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に液体を吐出する液体吐出部と、前記液体吐出部から吐出する前記液体を貯留する液体貯留部と、前記液体貯留部と前記液体吐出部との間を前記液体が流通可能に連結された第1の液体流路と、を備えた液体吐出装置において、
前記第1の液体流路には、前記液体を流通させるための流通ポンプが設けられると共に、該流通ポンプを挟んで上流側に第1の分岐部および下流側に第2の分岐部がそれぞれ設けられ、
前記第1の分岐部および前記第2の分岐部に連結され、前記液体が流通可能に連通した第2の液体流路をさらに備え、
前記第2の液体流路には、所定圧力以上で開放する第1の開閉バルブが設けられていること
を特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記第1の液体流路には、前記第2の分岐部と前記液体吐出部との間に、所定圧力以下で開放する第2の開閉バルブが設けられていること
を特徴とする請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項3】
記録メディアにインクを吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドから吐出する前記インクを貯留するインクカートリッジと、前記インクカートリッジと前記記録ヘッドとの間を前記インクが流通可能に連結された第1の液体流路と、を備えたインクジェット記録装置において、
前記第1の液体流路には、前記インクを流通させるための流通ポンプが設けられると共に、該流通ポンプを挟んで上流側に第1の分岐部および下流側に第2の分岐部がそれぞれ設けられ、
前記第1の分岐部および前記第2の分岐部に連結され、前記インクが流通可能に連通した第2の液体流路をさらに備え、
前記第2の液体流路には、所定圧力以上で開放する第1の開閉バルブが設けられていること
を特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−236334(P2012−236334A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106881(P2011−106881)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】