液体吐出装置および液体吐出面の清掃方法
【課題】 無駄な液体の消費を抑えつつ、液体吐出面の清掃性を向上させること。
【解決手段】 液体吐出面50aを有するヘッド50と、ヘッド50内の圧力を調整する圧力調整部162と、ヘッド50を駆動するヘッド駆動部154と、ヘッド50の液体吐出面50a上を摺動する清掃部材66と、圧力調整部162によってヘッド50内を加圧してヘッド50の液体吐出口のメニスカスを凸形状にするとともに、ヘッド駆動部154によって液体が吐出しない程度のメニスカス微振動波形をヘッド50に対して付与した状態で清掃部材66に第1の摺動を行わせて,液体吐出口から滲み出させた液体で液体吐出面50aを湿潤化する一方で、ヘッド50に対する前記メニスカス微振動波形の付与を停止した状態で清掃部材66に第2の摺動を行わせて,液体吐出面50aを払拭する制御手段を備えた。
【解決手段】 液体吐出面50aを有するヘッド50と、ヘッド50内の圧力を調整する圧力調整部162と、ヘッド50を駆動するヘッド駆動部154と、ヘッド50の液体吐出面50a上を摺動する清掃部材66と、圧力調整部162によってヘッド50内を加圧してヘッド50の液体吐出口のメニスカスを凸形状にするとともに、ヘッド駆動部154によって液体が吐出しない程度のメニスカス微振動波形をヘッド50に対して付与した状態で清掃部材66に第1の摺動を行わせて,液体吐出口から滲み出させた液体で液体吐出面50aを湿潤化する一方で、ヘッド50に対する前記メニスカス微振動波形の付与を停止した状態で清掃部材66に第2の摺動を行わせて,液体吐出面50aを払拭する制御手段を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する複数の液体吐出口が配置された液体吐出面を有する液体吐出装置、および、複数の液体吐出口が配置された液体吐出面を清掃する液体吐出面の清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を吐出する液体吐出口と、液体吐出口に連通する圧力室と、液体吐出口から液体を吐出させるための圧力を圧力室内に発生させる圧力発生素子を有する液体吐出ヘッド(以下単に「ヘッド」という)を用いて、紙などの被吐出媒体に向けて液体を吐出する液体吐出装置が知られている。このような液体吐出装置を用いて、色材を含有するインクを被吐出媒体に向けて吐出し、被吐出媒体上に画像を形成する。
【0003】
特許文献1の従来の技術欄には、ヘッドの液体吐出口をキャッピングするキャップ(キャッピング機構)と、キャッピング状態においてキャップに接続されてポンプを作動してキャップ内部に負圧を発生させて液体吐出口からインク等を吸引する吸引手段と、ヘッドの液体吐出面に付着した異物を拭き取るワイピング手段を備えたものが記載されている。
【0004】
特許文献2には、ヘッドと、印刷に適した速度でインク滴を発生させる第1の信号と液体吐出口からインクを滲み出させる第2の信号とを選択的に出力するヘッド駆動手段と、常時は非印刷領域に位置し、クリーニング時にはヘッドの長手方向に移動可能なクリーニング装置と、クリーニング装置をヘッドの長手方向に相対的に移動させる駆動手段と、クリーニング装置の位置を検出するクリーニング装置位置検出手段と、クリーニング指令に基づいてクリーニング装置位置検出手段によりクリーニング装置の位置を検出し、クリーニング装置の位置する近傍の液体吐出口からヘッド駆動手段により圧力発生素子を駆動してインクを滲み出させる手段を備えたものが記載されている。
【特許文献1】特開2002−166560号公報
【特許文献2】特許3535885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、無駄なインク量を抑えつつ、液体吐出面を十分に清掃することは困難であった。
【0006】
例えば、ヘッドをキャップで覆ってインクを吸引する態様では、一般に大部分のインクは液体吐出面に付着せずにキャップに吸引されるため、液体吐出面上の付着物を十分に取り除くことができない。液体吐出面にインクを十分に付着させるために、キャップと当該キャップでキャッピングされたヘッドの液体吐出面との間をインクを充満させる必要があるが、多数の液体吐出口を有するマトリクスヘッドではキャップが大型になるので多量のインクが必要になるばかりか、液体吐出面に付着するインクの量は限られてしまうのでインクの使用効率が悪い。すなわち、無駄なインク量を抑えることと、液体吐出面を十分に清掃することを両立させることは困難であった。
【0007】
また、液体吐出面に付着した異物をワイピング手段によって拭き取る際、ワイピング手段に向けてインクを吐出する態様も考えられるが、ワイピング手段の周辺にインクが飛び散り、装置内を汚してしまうという問題がある。
【0008】
また、液体吐出口からインクを滲み出させる信号を用いる態様では、液体吐出口近傍はインクで濡れるものの、液体吐出口から離れたところはインクで濡れることがなく湿潤にはならないので、液体吐出面上の付着物を十分に取り除くことができない。インクの滲み出し量を増やそうとして、波形を大きくしても、インクが吐出してしまい、結局、液体吐出面を湿潤な状態にすることはできない。すなわち、無駄なインク量を抑えることと、液体吐出面を十分に清掃することを両立させることは困難であった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、複数の液体吐出口が配置されている液体吐出面を液体吐出口から滲み出させた液体により十分に湿潤な状態にして、無駄な液体の消費を抑えつつ、液体吐出面の清掃性を向上させることができる液体吐出装置および液体吐出面の清掃方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、液体を吐出する複数の液体吐出口が配置された液体吐出面を有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッド内の圧力を調整する圧力調整手段と、前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出口から液体を吐出させる液体吐出駆動波形、および、前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出口から液体が吐出しない程度に該液体吐出口のメニスカスを微振動させるメニスカス微振動波形を選択的に前記液体吐出ヘッドに対して与えるヘッド駆動手段と、前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面上を摺動する清掃部材と、前記清掃部材を前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面上で摺動させる第1の摺動および該第1の摺動に続き前記清掃部材を前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面上で摺動させる第2の摺動を制御する制御手段であって、前記第1の摺動は、前記圧力調整手段によって前記液体吐出ヘッド内を加圧して前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出口のメニスカスを凸形状にするとともに、前記ヘッド駆動手段によって前記メニスカス微振動波形を前記液体吐出ヘッドに対して付与した状態で行って、前記液体吐出口から滲み出させた液体で前記液体吐出面を湿潤化する一方で、前記第2の摺動は、前記液体吐出ヘッドに対する前記メニスカス微振動波形の付与を停止した状態で行って、前記液体吐出面を払拭する制御手段を備えたことを特徴とする液体吐出装置を提供する。
【0011】
この発明によれば、液体吐出ヘッドの液体吐出口のメニスカスが凸形状であって微振動した状態で第1の摺動が行われるので、液体吐出口から滲み出した液体により液体吐出面が十分に湿潤な状態となり、次に、メニスカスの微振動が停止した状態で第2の摺動が行われるので、滲み出しインクで十分に潤滑な状態の液体吐出面から付着物および液体を払拭することができる。なお、第1の摺動によって液体吐出面が十分に潤滑な状態になる一方で、例えば液体吐出口から液体を吸引するような場合と比較して、消費する液体の量は必要最小限で済む。また、液体吐出面が十分に潤滑な状態で第2の摺動が行われるので、液体吐出面の損傷が防止される。したがって、無駄な液体の消費を抑えつつ、液体吐出面の清掃性を向上させることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記制御手段は、前記第1の摺動の際に、前記圧力調整手段を用いて、前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面のうちで特定領域を前記清掃部材が摺動するときの前記液体吐出ヘッド内の圧力を、前記液体吐出ヘッドの他の領域を前記清掃部材が摺動するときの前記液体吐出ヘッド内の圧力よりも、高くすることを特徴とする液体吐出装置を提供する。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記制御手段は、前記第1の摺動の際に、前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面のうちで特定領域を摺動するときの前記清掃部材の前記液体吐出ヘッドに対する速度を、前記液体吐出ヘッドの他の領域を摺動するときの前記清掃部材の前記液体吐出ヘッドに対する速度よりも、遅くすることを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出装置を提供する。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の発明において、前記制御手段は、前記ヘッド駆動手段を用いて前記第1の摺動よりも前に前記液体吐出ヘッドの各液体吐出口から液体を予備吐出させ、前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面のうちで特定領域内の各液体吐出口の予備吐出数を、前記液体吐出ヘッドの他の領域内の各液体吐出口の予備吐出数よりも、多くすることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の液体吐出装置を提供する。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか1項に記載の発明において、前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面のうちで特定領域の前記清掃部材と前記液体吐出面との接触角よりも、前記液体吐出ヘッドの他の領域の前記清掃部材と前記液体吐出面との接触角が、小さいことを特徴とする液体吐出装置を提供する。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の何れか1項に記載の発明において、前記液体吐出面の前記特定領域は、前記清掃部材が摺動を開始する摺動開始領域であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の液体吐出装置を提供する。
【0017】
請求項7に記載の発明は、液体を吐出する複数の液体吐出口が配置された液体吐出面を有する液体吐出ヘッドの前記液体吐出面を、該液体吐出面上を摺動する清掃部材を用いて清掃する液体吐出面の清掃方法において、前記液体吐出ヘッド内の圧力を調整する圧力調整手段を用いて前記液体吐出ヘッド内を加圧して前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出口のメニスカスを凸形状にするとともに、前記液体吐出ヘッドを駆動するヘッド駆動手段を用いて前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出口から液体が吐出しない程度のメニスカス微振動波形を前記液体吐出ヘッドに対して付与した状態で、前記清掃部材を前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面上で摺動させて、前記液体吐出口から滲み出させた液体で前記液体吐出面を湿潤化する第1の摺動ステップと、前記液体吐出ヘッドに対する前記メニスカス微振動波形の付与を停止した状態で、前記清掃部材を前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面上で摺動させて、前記液体吐出面を払拭する第2の摺動ステップを含むことを特徴とする液体吐出面の清掃方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の液体吐出口が配置されている液体吐出面を液体吐出口から滲み出させた液体により十分に湿潤な状態にして、無駄な液体の消費を抑えつつ、液体吐出面の清掃性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面に従って、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る液体吐出装置の一例としての画像形成装置10の全体構成を示すブロック図である。
【0021】
図1において、画像形成装置10は、主として、ヘッド50、液体受け64、清掃部材66、通信インターフェース110、システムコントローラ112、メモリ114、152、搬送部116、搬送駆動部118、プリント制御部150、タイマ153、ヘッド駆動部154、給液部160、圧力調整部162、液体受け移動部164、清掃部材移動部166、および、清掃部材押し圧変更部168を含んで構成されている。
【0022】
ヘッド50(以下単に「ヘッド」という)は、液体を吐出する複数の液体吐出口が配置された液体吐出面を有する。なお、本実施形態では、液体としてインクを吐出する場合について、以下説明する。例えば、画像形成装置10は、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)の各インク色ごとにひとつずつ、合計で4つのヘッド50を備えている。ヘッド50の具体例は後に詳説する。
【0023】
液体受け64は、ヘッド50の液体吐出面の清掃時に、ヘッド50から液体を受け取るものである。例えば、K、C、M、Yの各ヘッド50ごとにひとつずつ、合計で4つの液体受け64を備える。液体受け64の具体例は後に詳説する。
【0024】
清掃部材66は、ヘッド50の液体吐出面の清掃時に、ヘッド50の複数の液体吐出口が配置されている液体吐出面上を摺動するものである。本例の画像形成装置10は、実際には、K、C、M、Yの各ヘッド50ごとにひとつ又は複数の清掃部材66を備えている。この清掃部材66の具体例は後に詳説する。
【0025】
通信インターフェース110は、ホストコンピュータ300から送信される画像データを受信する。通信インターフェース110には、USB(Universal Serial Bus)、IEEE1394などの有線、又は、無線のインターフェースを適用することができる。この通信インターフェース110によって画像形成装置10に取り込まれた画像データは、画像データ記憶用の第1のメモリ114に一旦記憶される。
【0026】
システムコントローラ112は、マイクロコンピュータ及びその周辺回路等から構成されており、所定のプログラムに従って画像形成装置10の全体を制御する。すなわち、システムコントローラ112は、通信インターフェース110、搬送駆動部118、プリント制御部150等の各部を制御する。
【0027】
搬送部116は、紙などの被吐出媒体を搬送するためのローラ(図示を省略)と、このローラに動力を与えるモータ(図示を省略)を含んで構成されている。搬送部116によって、被吐出媒体とヘッド50とが相対的に移動される。搬送駆動部118は、システムコントローラ112からの指示に従って搬送部116を駆動する回路を含んで構成されている。
【0028】
プリント制御部150は、マイクロコンピュータ及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従って、給液制御部134、タイマ153、ヘッド駆動部154、給液部160、圧力調整部162、液体受け移動部164、および、清掃部材移動部166を制御する。
【0029】
プリント制御部150は、画像形成装置10に入力される画像データに基づいて、ヘッド50が被吐出媒体に向けて吐出(打滴)を行って被吐出媒体上にドットを形成するために必要なデータ(ドットデータ)を生成する。すなわち、プリント制御部150は、システムコントローラ112の制御に従い、第1のメモリ114内の画像データから打滴用のドットデータを生成し、生成したドットデータをヘッド駆動部154に供給する。プリント制御部150には第2のメモリ152が付随しており、プリント制御部150における画像処理時にドットデータ等が第2のメモリ152に一時的に格納される。
【0030】
ヘッド駆動部154は、プリント制御部150の指示に従って、プリント制御部150から与えられるドットデータ(実際には第2のメモリ152に記憶されたドットデータである)に基づき、ヘッド50の液体吐出口(図2および図3の51)からインクを吐出させるための駆動信号(以下「液体吐出駆動波形」と称する)を生成して、ヘッド50(具体的には後述する図3の圧電素子58)に与える。また、ヘッド駆動部154は、プリント制御部150の指示に従って、ヘッド50の各液体吐出口からインクが吐出しない程度に各液体吐出口のメニスカスを微振動させる駆動信号(以下「メニスカス微振動波形」と称する)を生成して、ヘッド50(具体的には後述する図3の圧電素子58)に与える。ヘッド駆動部154は、液体吐出駆動波形とメニスカス微振動波形とを選択的にヘッド50に与える。
【0031】
給液部160は、プリント制御部150の指示に従い、インクをヘッド50へ供給するものである。給液部160の具体例については後に詳説する。
【0032】
圧力調整部162は、プリント制御部150の指示に従い、ヘッド51の内部の圧力(背圧)を調整するものである。この圧力調整部162の具体例については後に詳説する。
【0033】
液体受け移動部164は、後述のプリント制御部150の指示に従い、液体受け64をヘッド50に対して相対移動させるものである。具体的には、液体受け移動部164は、液体受け64の移動用のモータを含む周知の機構および駆動回路(いずれも図示を省略)を含んで構成されており、ヘッド50の液体吐出面に対して平行方向および垂直方向において、液体受け64を移動させる。
【0034】
清掃部材移動部166は、後述のプリント制御部150の指示に従い、清掃部材66をヘッド50に対して相対移動させるものである。具体的には、清掃部材移動部166は、清掃部材66の移動用のモータを含む周知の機構および駆動回路(いずれも図示を省略)を含んで構成されており、ヘッド50の液体吐出面に対して平行方向および垂直方向において、清掃部材66を移動させる。
【0035】
清掃部材移動部166の平行方向の移動機構としては、具体的には、ラック&ピニオン・ギアとレール(いずれも図示省略)を用い、清掃部材66を液体吐出面に対して平行な方向に移動させる。ベルトまたはワイヤ(いずれも図示省略)に清掃部材66を固定して、モータ(図示省略)の回転運動によってベルトまたはワイヤを巻き取って直線運動に変える機構としてもよい。あるいは、リニアモータやボールネジ(いずれも図示省略)によって清掃部材66を直接移動させる機構としてもよい。
【0036】
清掃部材移動部166の垂直移動機構としては、具体的には、カムとリンク(いずれも図示省略)によって、清掃部材66を液体吐出面に対して垂直な方向に移動させる。また、ソレノイド(図示省略)をオンおよびオフすることで、清掃部材66の位置を変えるようにしてもよい。空圧や油圧を用いてもよい。
【0037】
清掃部材押し圧変更部168は、清掃部材66をヘッド50の液体吐出面に押し当てる圧力(押し圧)を変更するものである。
【0038】
プリント制御部150は、給液部160を用いてヘッド50へインクを供給する給液制御、圧力調整部162を用いてヘッド50の背圧(ヘッド50の内部の圧力)を調整する圧力調整制御、液体受け移動部164を用いて液体受け64をヘッド50に対して相対移動させる液体受け移動制御、および、清掃部材移動部166を用いて清掃部材66をヘッド50に対して相対移動させる清掃部材移動制御を行う。これらの給液制御、圧力調整制御、液体受け移動制御、清掃部材移動制御については、後に詳説する。
【0039】
タイマ153は、インク滲み出し量の切換タイミングを生成するための清掃部材66の摺動開始からの経過時間の計時、待ち時間(ウエイトタイム)の計時等に用いられる。なお、プリント制御部150が計時機能を有している場合には、タイマ153を省略してもよい。
【0040】
なお、プリント制御部150は、所定のプログラムに従って、ヘッド50の液体吐出面の清掃処理等を実行する。このような清掃処理の際、プリント制御部150は、ヘッド50の液体吐出面上で清掃部材66を摺動させる第1の摺動および第1の摺動に続き清掃部材66をヘッド50の液体吐出面上で摺動させる第2の摺動を制御する。第1の摺動は、圧力調整部162によってヘッド50内を加圧してヘッド50の液体吐出口のメニスカスを凸形状にするとともに、ヘッド駆動部154によってメニスカス微振動波形をヘッド50に対して付与した状態で行わせる。第2の摺動は、ヘッド50に対するメニスカス微振動波形の付与を停止した状態で行わせる。この清掃処理の詳細については、後に詳説する。
【0041】
なお、図1ではシステムコントローラ112とプリント制御部150とを分けて表したが、1つのマイクロコンピュータによって構成されていてもよい。
【0042】
図2は、図1のヘッド50の一例の全体構成を示す平面透視図であり、図3は、図2の3−3線に沿った断面図である。
【0043】
図2に一例として示すヘッド50は、いわゆるフルライン型のヘッドであり、被吐出媒体16の搬送方向(図中に矢印Sで示す副走査方向)と直交する方向(図中に矢印Mで示す主走査方向)において、被吐出媒体16の幅Wmに対応する長さにわたり、被吐出媒体16に向けてインクを打滴する多数の液体吐出口51を2次元的に配列させた構造を有している。
【0044】
ヘッド50は、液体吐出口51、液体吐出口51に連通する圧力室52、および、液体供給口53を含んでなる複数の吐出素子54が、主走査方向Mおよび主走査方向Mに対して所定の鋭角θ(0度<θ<90度)をなす斜め方向の2方向に沿って配列されている。なお、図2では、図示の便宜上、一部の吐出素子54のみ描いている。
【0045】
液体吐出口51は、具体的には、主走査方向Mに対して所定の鋭角θをなす斜め方向において、一定のピッチdで配列されており、これにより、主走査方向Mに沿った一直線上に「d×cosθ」の間隔で配列されたものと等価に取り扱うことができる。
【0046】
ヘッド50を構成するひとつの吐出素子54について、図2中の3−3線に沿った断面図を図3に示す。なお、図3では、吐出素子54をひとつだけ示ししているので液体吐出面50aに液体吐出口51がひとつだけ配置されているが、実際には、図2に示すようにヘッド50には多数の吐出素子54が2次元配列されており、液体吐出面50aには多数の液体吐出口51が二次元配列されている。
【0047】
図3に示すように、各圧力室52は液体供給口53を介して共通液室55と連通している。共通液室55は、後述する図4のサブタンク42を介してインク供給源としての図4のインクタンク60と連通している。言い換えると、インクタンク60からサブタンク42を介して供給されるインクが、共通液室55を介して各圧力室52に分配供給される。
【0048】
圧力室52の天面を構成する振動板56の上には圧電体58aが配置され、この圧電体58aの上には個別電極57が配置されている。振動板56は、接地されており、共通電極として機能する。これらの振動板56、個別電極57および圧電体58aによって、圧力室52内に圧力を発生させる手段としての圧電素子58が構成されている。
【0049】
図1のヘッド駆動部154によって生成された液体吐出駆動波形が圧電素子58に与えられると、すなわち、圧電素子58の個別電極57にインク吐出用の駆動電圧が印加されることにより、圧電体58aが変形して圧力室52の容積が変化し、これに伴う圧力室52内の圧力の変化によって、液体吐出口51からインクが吐出される。インクの吐出にともなって、共通液室55から液体供給口53を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
【0050】
また、図1のヘッド駆動部154によって生成されたメニスカス微振動波形が圧電素子58に与えられると、すなわち、圧電素子58の個別電極57にメニスカス微振動用の駆動電圧が印加されることにより、圧電体58aが変形して圧力室52内のインクが微振動し、もって圧力室52に連通している液体吐出口51のメニスカスが微振動する。
【0051】
なお、図2および図3に示す吐出素子54は、一例であって、このような場合に特に限定されない。例えば、圧力室52よりも下(すなわち圧力室52よりも液体吐出面50a側)に共通液室55を配置する代りに、圧力室52よりも上(すなわち液体吐出面50aとは反対側)に共通液室55を配置してもよい。
【0052】
図4は、図1において説明したヘッド50、液体受け64、清掃部材66、給液部160および圧力調整部162を含んで構成される画像形成装置10の要部を示す構成図である。
【0053】
インク供給源としてのインクタンク60から、第1の液体供給路71を経て、サブタンク42へインクが供給される。具体的には、液体供給弁62が開かれた状態で、液体供給ポンプ61が駆動されることにより、インクタンク60内のインクはフィルタ63によってゴミや気泡が除去された後、サブタンク42へ送液される。このサブタンク42には、サブタンク42内のインク残量を検知するインク残量センサ421が設けられている。サブタンク42内のインクは、第2の液体供給路72を経て、ヘッド50へ供給される。
【0054】
また、サブタンク42には、圧力計422、大気連通口423、大気開放弁424、および、圧力調整ポンプ425が付随している。
【0055】
圧力計422は、サブタンク42内の圧力を計測し、もってヘッド50の背圧、すなわちヘッド50の内部の圧力を計測する。大気開放弁424は、大気連通口423とサブタンク42との連通を開閉する弁である。圧力調整ポンプ425は、大気開放弁424が開かれた状態でサブタンク42内の気体(大気)の補給および排出を行うことによってサブタンク42内の圧力を調整し、もってヘッド50の背圧を調整する。
【0056】
前述のインクタンク60、液体供給ポンプ61、液体供給弁62、フィルタ63、第1の液体供給路71、第2の液体供給路72、サブタンク42、インク残量センサ421、圧力計422、大気連通口423、大気開放弁424および圧力調整ポンプ425は、図1の給液部160を構成している。
【0057】
また、圧力計422、大気連通口423、大気開放弁424および圧力調整ポンプ425は、図1の圧力調整部162も構成している。このような圧力調整部162によってサブタンク42内の圧力を調整することにより、ヘッド50の背圧を調整するようになっている。
【0058】
清掃部材66は、清掃部材移動部166によって、ヘッド50の液体吐出面50aに対して垂直な方向(図中に矢印Vで示す垂直方向)において移動自在であるとともに、ヘッド50の液体吐出面50aに対して平行な方向(図中に矢印Mで示すヘッド50の主走査方向、「摺動方向」ともいう)において移動自在である。
【0059】
清掃部材66は、ブレード66aを有し、このブレード66aにおいてヘッド50の液体吐出面50aに当接しながら、ヘッド50の液体吐出面50a上を摺動する。
【0060】
清掃部材66のブレード66aの材料としては、例えば、シリコンゴム、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、ウレタンゴムが挙げられる。本例では、NBRに水素を添加したHNBR(水素化ニトリルゴム)を用いた。
【0061】
清掃部材66は、清掃部材移動部166によって、通常はヘッド50の液体吐出面50a下から退避した所定の退避位置(ヘッド50からのインク吐出を妨げない位置である)へ移動した状態となっており、ヘッド50の液体吐出面50aの清掃が行われるときには、ヘッド50の液体吐出面50aにそのブレード66aを当接させて液体吐出面50a上を摺動する。
【0062】
液体受け64は、ヘッド50からパージ(空吐出)されたインク、および、清掃部材66によってヘッド50から払拭されたインクを受け取るものである。また、液体受け64はヘッド50の液体吐出面50aを封止するキャップの機能も有する。
【0063】
液体受け64は、液体受け移動部164によって、通常はヘッド50の液体吐出面50a下から退避した所定の退避位置(ヘッド50からのインク吐出を妨げない位置である)へ移動した状態となっており、ヘッド50の液体吐出面50aの清掃が行われるときには、ヘッド50の液体吐出面50a下の所定のメンテナンス位置(すなわちヘッド50からインクを受け取り可能な位置である)へ移動した状態となっている。
【0064】
ヘッド50から液体受け64に受け渡されたインクは、回収ポンプ67が駆動されると、液体回収流路73を経て、回収タンク68へ送液される。
【0065】
次に、ヘッド50の液体吐出口51のメニスカスの様子を模式的に示す図5(A)、図5(B)および図5(C)を用いて、液体吐出面50aの湿潤化について説明する
吐出待機時には、圧力調整部162によってヘッド50の背圧は負圧(大気圧よりも低い圧力である)に保たれているので、図5(A)に示すように、液体吐出口51のメニスカス81は凹形状に保たれている。ここで、メニスカス81の周縁82(クリップポイント)は液体吐出口51の周縁51aに略一致している。
【0066】
このような図5(A)に示す状態において、圧力調整部162によってヘッド50の背圧が負圧から正圧(大気圧よりも高い圧力である)に切り換えられるとともに、ヘッド駆動部154からヘッド50の図3に示す圧電素子58に対してメニスカス微振動波形が印加される。そうすると、図5(B)に示すように、液体吐出口51のメニスカス81は凸形状になり且つ微振動する。このとき、メニスカス81の周縁82(クリップポイント)は、図5(A)に示す吐出待機時と比較して、液体吐出口51の周縁51aからその周縁51aの外側へ向けて若干広がる。すなわち、液体吐出口51からインクが若干滲み出る。このような初期のインクの滲み出しにより、液体吐出口51の周縁51aやその周縁51aのごく近傍に付着している付着物は、滲み出したインク中に溶解するか、剥がれてインクに浮遊することになる。
【0067】
ただし、図5(B)に示す状態では、インクの滲み出しによるメニスカス81の直径の増分は液体吐出口51の直径と比較して小さい。例えば、液体吐出口51の直径が約30μmである場合、顕微鏡観察によれば、メニスカス81の直径は数μm程度広がるにとどまった。そのため、メニスカス81の直径よりも長い紙の繊維やほこり等の除去は難しい。また、インク吐出時に主液滴とともに生じたサテライト液滴やミストなどは、液滴同士の静電反発に因り液体吐出口51から離れた位置に付着し易く、液体吐出面50a上で固化している。このようなインク滴が固化してなる付着物は、液体吐出面50a(例えば撥液膜が形成されている)を汚染することになる。以上のような付着物は、吐出時に液体吐出面50aから脱落したり、脱落しなくても紙などの被吐出媒体に接触し、画像劣化を引き起こす。
【0068】
そこで、図5(B)に示す状態、すなわち、ヘッド50の背圧を正圧に保ち且つメニスカス微振動波形をヘッド50の圧電素子58に印加した状態において、清掃部材66を液体吐出面50a上で摺動させる。これにより、凸形状且つ微振動状態のメニスカス81に対して清掃部材66が接触して、インクが液体吐出面50a上で広がり、図5(C)に示すように、液体吐出口51の周辺がインクで濡れて湿潤な状態になる。例えば、図5(B)に示す状態でメニスカス81の直径が約30μm〜40μmであった場合、メニスカス81の直径が数百μmまで広がった。
【0069】
このような清掃部材66の液体吐出面50aに対する摺動、すなわち、メニスカス81が凸形状且つ微振動状態で清掃部材66をヘッド50の液体吐出面50aに対して相対移動させて液体吐出口51の周辺をインクで湿潤にさせることを、以下「湿潤化摺動処理」または「第1の摺動処理」と称する。
【0070】
湿潤化摺動処理後、所定期間(以下「ウエイトタイム」という)、メニスカス微振動波形をヘッド50の圧電素子58に印加した状態を保つ。メニスカス81が微振動することにより、僅かずつインクの濡れ面積が広がり、最終的には互いに隣接する液体吐出口51間でインクが繋がる。これにより液体吐出口51の周辺のインク固形成分がインクに溶解する。
【0071】
このように、液体吐出口51から滲み出してヘッド50の液体吐出面50aを濡らしているインクを以下「滲み出しインク」といい、その量を以下「滲み出しインク量」という。
【0072】
ウエイトタイムの経過後、メニスカス微振動波形の印加を停止して、ヘッド50の液体吐出面50aに付着していた付着物および滲み出しインクを除去するため、清掃部材66を液体吐出面50a上で摺動させる。ここで、液体吐出口51の周辺に滲み出ているインクが液体吐出口51の内部へ戻らないように、ヘッド50の背圧を正圧に保ったまま清掃部材66を摺動させるようにしてもよいが、ヘッド50の背圧を正圧に保たなくても短時間で清掃部材66を摺動すると、液体吐出口51の周辺が濡れた状態(湿潤状態)となるので、このように短時間で清掃部材66を摺動する構成の場合には、ヘッド50の背圧を正圧に保たなくてもよい。
【0073】
このような清掃部材66の液体吐出面50aに対する摺動、すなわち、滲み出しインクが液体吐出口51の周辺を濡らしている状態(湿潤状態)且つ微振動停止状態で清掃部材66をヘッド50の液体吐出面50aに対して相対移動させて液体吐出口51の周辺のインクを除去することを、以下「払拭摺動処理」または「第2の摺動処理」と称する。
【0074】
前述の湿潤化摺動処理について、図6(A)〜(F)に示す模式図を用いて、さらに詳細に説明する。
【0075】
図6(A)に示すように、ヘッド50の背圧を正圧に設定してメニスカス81を凸形状にするとともに、圧電素子58にメニスカス微振動波形を印加して凸形状のメニスカス81を微振動させることにより、液体吐出口51から滲み出したインクからなるメニスカス81が、液体吐出口51の直径よりも若干広がっていく。一方で、清掃部材66のブレード66aの先端部66bが液体吐出口51に近づき、図6(B)に示すように、液体吐出口51上に来ると、液体吐出口51の周縁51aとブレード66aの先端部66bとの間で、メニスカス81が少し盛り上がる。詳細には、図中に符号82、83で示すクリップポイントの間で、メニスカス81の盛り上がりが生じ、図6(C)に示すように、やがて、メニスカス81の周縁としてのクリップポイント82が液体吐出口51の周縁51aに対して、さらに広がっていく。図6(D)に示すように、メニスカス81が壊れて微量のインクがブレード66aの斜面に沿って流れ落ちていく。一方で、図6(E)、図6(F)および図6(G)に示すように、ブレード66aの先端部66bに付着していたインクが液体吐出口51の周辺に広がっていく。図6(H)に示すように、液体吐出口51の周辺に広がったインクは、ヘッド50の正圧により、液体吐出口51内へ逆流することはない。
【0076】
以上説明した、湿潤化摺動処理、払拭摺動処理などの処理は、図1のプリント制御部150が、タイマ153、ヘッド駆動部154、圧力調整部162、清掃部材移動部166等を用いて行う。
【0077】
次に、インク滲み出し量を調整する各種の態様について、一覧を図7に示す。
【0078】
第1に、摺動速度、すなわち清掃部材66とヘッド50との相対速度を調整することにより、インクの滲み出し量を調整する態様がある。
【0079】
例えば、摺動速度を20〜120[mm/sec]の範囲内で変化させると、摺動速度が速いほど(上限値の120[mm/sec]に近いほど)インクの滲み出し量が少なくなり、摺動速度が遅いほど(下限値の20[mm/sec]に近いほど)インクの滲み出し量が多くなる。
【0080】
図8において、ヘッド50の液体吐出面50aのうちで所定の摺動開始領域501を清掃部材66が摺動するときの摺動速度を、ヘッド50の液体吐出面50aのうちで摺動終了領域を含む摺動開始領域以外の領域502を清掃部材66が摺動するときの摺動速度よりも遅くする。
【0081】
これにより、摺動始めのインクの滲みだし量を増やすことができ、清掃部材66によって摺動始めに滲み出たインクを液体吐出面50a上に押し広げることになるので、摺動の終点に近づくほど必要なインクは少なくて済む。また、ヘッド50の液体吐出面50aに与える損傷を防止する観点からも、摺動の始めにインクを十分に滲み出させればよい。そこで、例えば、摺動の開始領域501における摺動速度を20[mm/sec]、それ以外の領域502における摺動速度を80[mm/sec]と切り換える。120[mm/sec]を選択すると更なるインク量の低下が期待できるが、清掃部材移動部166の大型化およびコストアップのため、80[mm/sec]を選択した。
【0082】
摺動速度の切り換えは、例えば、図1のプリント制御部150が、清掃部材移動部166およびタイマ153を用いて行う。図1のタイマ153により摺動開始時点からの経過時間を計時して予め決められた時間を超えたときに摺動速度を切り換える。
【0083】
また、図9に示すように、長尺ヘッドの場合、すなわち清掃部材66の摺動距離が長い場合には、一定間隔で、インク滲み出し量を多くする領域501、すなわち摺動速度が遅い領域501を設けると効果的である。
【0084】
また、摺動速度は、連続的に変化させるようにしてもよいし、段階的に変化させるようにしてもよい。このように連続的または段階的に摺動速度を変化させることによって、長尺ヘッドにおいて、液体吐出口51からのインク滲み出し量を摺動位置に応じてより細かく変化させることも可能となる。
【0085】
なお、タイマ153を用いないで、清掃部材66の摺動位置を検知する手段(図示を省略)を設け、摺動位置が予め決められた位置となったときに摺動速度を切り換えるようにしてもよい。
【0086】
異常吐出検知(ノズルチェックパターンによる手動検出を含む)と組み合わせて、異常ノズルのある部分の摺動速度を遅くし、十分湿潤させて、清掃する。少ないインクで有効な清掃が可能である。
【0087】
摺動速度を速くするとインクの滲みだし量が少なくなる理由は、図6(B)および(C)に示す状態の時に、インクが液体吐出口51の周辺まで余分に広がる前に液体吐出口51の周辺を通り過ぎるためと考えられる。
【0088】
第2に、背圧、すなわちヘッド50の内部の圧力を調整することにより、インクの滲み出し量を調整する態様がある。
【0089】
例えば、背圧を0〜100[mmH2O]の範囲内で変化させると、背圧が低いほど(下限値の0[mmH2O]に近いほど)インクの滲み出し量が少なくなり、背圧が高いほど(上限値の100[mmH2O]に近いほど)インクの滲み出し量が多くなる。
【0090】
なお、0〜100[mmH2O]の範囲内で良好な結果が得られたが、ノズル径、インクの種類、清掃部材66の材質、液体吐出面50aの撥水性能などにより背圧の良好な値は異なるので、適宜設定する必要がある。
【0091】
また、背圧が高すぎると、第2の摺動後にインクがあふれる。逆に、背圧が低すぎると、第1の摺動時に十分なインクが滲み出さず、インク固形分の溶解に支障をきたすことがある。
【0092】
図8において、ヘッド50の液体吐出面50aのうちで所定の摺動開始領域501を清掃部材66が摺動するときのヘッド50の背圧を、ヘッド50の液体吐出面50aのうちで摺動終了領域を含む摺動開始領域以外の領域502を清掃部材66が摺動するときのヘッド50の背圧よりも高くする。このようにしても第1の態様と同じ効果が得られる。
【0093】
ヘッド50の背圧の切り換えは、例えば、図1のプリント制御部150が、圧力調整部162およびタイマ153を用いて行う。図1のタイマ153により摺動開始時点からの経過時間を計時して予め決められた時間を超えたときにヘッド50の背圧を切り換える。
【0094】
また、図9に示すように、摺動距離が長い場合には、一定間隔で、インク滲み出し量を多くする領域501、すなわち摺動速度が遅い領域501を設けると効果的である。ヘッド50の背圧は、連続的に変化させるようにしてもよいし、段階的に変化させるようにしてもよい。タイマ153を用いないで、清掃部材66の摺動位置を検知する手段(図示を省略)を設け、摺動位置が予め決められた位置となったときにヘッド50の背圧を切り換えるようにしてもよい。
【0095】
また、長尺ヘッドの場合、ヘッド50の共通液室55を分割するとともに各共通液室55ごとにサブタンク42を設けて、各サブタンク42ごとに背圧を切り換えることにより、一定間隔ごとにインクの滲みだし量を調整することも可能である。
【0096】
また、ヘッド50の背圧を調整する方法として、サブタンク42の内圧を調整する場合を例に説明したが、インクタンク60のインクを直接加圧してもよい。また、サブタンク42を大気連通とし、さらにサブタンク42を上下させる機構を設けて、サブタンク42内の液面とヘッド50の液体吐出面50aとの水頭差でヘッド50の背圧を変えてもよい。
【0097】
第3に、予備吐出数、すなわち湿潤化前のパージ(空吐出)の各液体吐出口51の吐出数を調整することにより、インクの滲み出し量を調整する態様がある。
【0098】
例えば、各液体吐出口51の予備吐出数を200〜20000[shot]の範囲内で変化させると、予備吐出数が少ないほど(下限値m200[shot]に近いほど)インクの滲み出し量が少なくなり、予備吐出数が多いほど(上限値の20000[shot]に近いほど)インク滲み出し量が少多くなる。
【0099】
図8において、ヘッド50の液体吐出面50aのうちで所定の摺動開始領域501内の各液体吐出口51の予備吐出数よりも、ヘッド50の液体吐出面50aのうちで摺動終了領域を含む摺動開始領域以外の領域502内の各液体吐出口51の予備吐出数を少なくする。例えば、摺動開始領域501内では各液体吐出口51ごとに20000[shot]、それ以外の領域502内では各液体吐出口51ごとに200[shot]とする。
【0100】
各液体吐出口51の予備吐出数の調整は、図1のプリント制御部150が、ヘッド駆動部154を用いて行う。
【0101】
予備吐出数が少ないとインクの滲み出し量が少なくなる理由は、液体吐出口51内のインクが増粘するためと考えられる。
【0102】
第4に、接触角、すなわち清掃部材66の表面上に小さなインク滴を乗せた状態における清掃部材66の表面とインクの表面とがなす角度(清掃部材66のインクに対する表面性を示す)を切り換えることにより、インクの滲み出し量を調整する態様がある。
【0103】
例えば、接触角を20〜60[度]の範囲内で変化させると、接触角が小さいほど(下限値の20[度]に近いほど)インクの滲み出し量が少なくなり、接触角が大きいほど(上限値の60[度]に近いほど)インクの滲み出し量が多くなる。
【0104】
図10(A)は、第4の態様に適した画像形成装置100を示す要部構成図である。図10(A)の画像形成装置100は、図10(B)および図10(C)に示す清掃部材600を備える。図10(B)は清掃部材660の摺動方向Mに沿った側面図であり、図10(C)は清掃部材660の清掃方向Mと直交する方向に沿った平面図である。図10(B)および(C)において、清掃部材660は、ヘッド50の液体吐出面50aのうちで摺動開始領域501を摺動する高接触角部材661と、インクとの接触角が高接触角部材661よりも小さく、ヘッド50の液体吐出面50aのうちで摺動終了領域503を含む摺動開始領域501以外の領域を摺動する低接角触部材662とを有する。具体的には、清掃部材660の先端部66bに、高接触角に表面処理したエリア(高接触角部材661)と、高接触角部材661よりも低い接触角に表面処理したエリア(低接触角部材662)を持つ。また、図10(A)の画像形成装置100は、清掃部材660をヘッド50の液体吐出面50aに押し当てる圧力(押し圧)を変更する清掃部材押し圧変更部168を備える。他の構成要素については、図4に示す画像形成装置10の構成要素と同じであり既に説明したので、ここでは説明を省略する。
【0105】
清掃開始前、具体的には第1の摺動処理(湿潤化摺動処理)の前に、圧力調整部162(圧力計422、大気連通口423、大気開放弁424および圧力調整ポンプ425)により、サブタンク42の内部圧力を正圧にする。すなわち、ヘッド50の背圧を正圧にする。そうすると、ヘッド50の液体吐出口のメニスカスは、凸形状となる。この状態で第1の摺動処理(湿潤化摺動処理)を開始する。液体吐出面50aの摺動開始領域501は、掃部材押し圧変更部170により設定した弱い押し圧で清掃部材660が摺動する。そうすると、図10(D)に示すように、清掃部材660の先端部の高接触角部材661が液体吐出面50a上を摺動して、ヘッド50の液体吐出口から滲み出したインクによって液体吐出面50aが湿潤になる。
【0106】
清掃部材66が液体吐出面50aの摺動開始領域501を過ぎた位置に来たとき、掃部材押し圧変更部170により清掃部材66の押し圧を強くする。このとき、図10(E)に示すように、清掃部材660の先端部の低接触角部材662が液体吐出面50a上を摺動する。そうすると、液体吐出面50aに付着するインク量は少なくなる。
【0107】
第1の摺動処理(湿潤化摺動処理)が終わったとき、圧力調整部162によりサブタンク42内の圧力を負圧にする。すなわち、ヘッド50の背圧を負圧にする。そして、第2の摺動処理(払拭摺動処理)を行う。このとき、掃部材押し圧変更部170により設定した弱い押し圧で清掃部材660の高接触エリア661を液体吐出面50aに押し当てる。このとき、図10(D)に示すように、清掃部材660の先端部の高接触角部材661が液体吐出面50a上を摺動して液体吐出面50aのインク等を払拭する。このとき、メニスカス振動波形のヘッド50への印加は停止した状態としておき、インクを液体吐出面50aに滲み出させないようにする。
【0108】
接触角が大きいほどインクの滲み出し量が多くなる理由は、図6(B)及び(C)に示す状態の時に、液体吐出面50aとブレード66aとの間に形成されるメニスカスの盛り上がりの大きさによりインクの滲み出し量が決まり、接触角が大きいほどメニスカスの盛り上がり形状も大きくなるためと考えられる。
【0109】
第5に、ウエイトタイムを調整することにより、インクの滲み出し量を調整する態様がある。ここで、ウエイトタイムは、湿潤化摺動処理(第1の摺動処理)の終了からメニスカス微振動停止までの待機時間である。
【0110】
例えば、ウエイトタイムを0〜60[sec] の範囲内で変化させると、ウエイトタイムが短いほど(下限値の0[sec]に近いほど)インクの滲み出し量が少なくなり、ウエイトタイムが長いほど(上限値の60[sec]に近いほど)インクの滲み出し量が多くなる。
【0111】
ウエイトタイムの調整は、図1のプリント制御部150が、ヘッド駆動部154およびタイマ153を用いて行う。
【0112】
特に、不吐出検出と組み合わせて、不吐出口が多いときは、ウエイトタイムを長くすると有効である。ウエイトタイムを長くすることで、液体吐出口51内部の増粘したインクの排出と液体吐出面についたインクの固形分の溶解が可能となる。また、液体吐出面の汚れがひどいとき、および、吐出方向性不良が多いときには、ウエイトタイムを長くすると有効である。
【0113】
[清掃処理]
図11は、摺動速度を変化させることよりインク滲み出し量を調整する第1の態様における液体吐出面の清掃処理の一例の流れを示すフローチャートである。
【0114】
図11において、所定の事前準備を行う(S2)。ここでは、図4のインク残量センサ421によって検知されたサブタンク42内のインク残量と予め決められた規定値とを比較し、インク残量が規定値以下のときには、インクの補給を行う。インクの補給は、図4の液体受け64と対向するメンテナンス位置にヘッド50を移動させて、液体受け64でヘッド50の液体吐出面50aを封止し、サブタンク42の大気開放弁424を開放してサブタンク42内部を大気と連通させ、その後、液体供給弁62が開かれている状態で液体供給ポンプ61を駆動して行う。これにより後述の湿潤化摺動処理(第1の摺動処理)においてインクが足りなくなることを防止する。
【0115】
次に、清掃前の予備吐出(パージ)を行う(S4)。パージは、ヘッド50が液体受け64と対向するメンテナンス位置にない場合には、ヘッド50をメンテナンス位置へ移動させた後に行う。ヘッド駆動部154からヘッド50の図3に示す各圧電素子58へパージ用の駆動信号を与えることによって、各液体吐出口51の増粘したメニスカス表面のインクをヘッド50外に出す。
【0116】
次に、図4の液体供給弁62を閉じる(S6)。これにより、インクタンク60とサブタンク42間を遮断する。
【0117】
次に、ヘッド50の背圧を正圧に設定する(S8)。ここでは、図4の圧力計422によって圧力を計測しつつ、サブタンク42を加圧する方向に圧力調整ポンプ425を回転駆動することにより、ヘッド50の背圧を目的の範囲内の正圧に設定する。このようにヘッド50の背圧を正圧に設定することで、後述の湿潤化摺動処理で液体吐出口51から滲み出たインクが液体吐出口51の内部に戻ることを抑える。ここでは、30mmH2Oとした。
【0118】
次に、メニスカス微振動を開始する(S10)。ここでは、ヘッド駆動部154からヘッド50の図3に示す各圧電素子58にメニスカス微振動波形を印加して、ヘッド50の液体吐出口51のメニスカスを微振動させる。メニスカス微振動波形は全液体吐出口51から吐出しない波形を選択する必要がある。このようなメニスカス微振動に因り、インクの滲みだしを促進させる効果がある
次に、図12(A)に示すように、液体吐出面50a上で清掃部材66の第1の摺動を開始する(S12)。
【0119】
背圧設定(S8)とメニスカス微振動(S10)により、凸形状且つ微振動しているメニスカスに清掃部材66が接触して、メニスカスが壊れ、インクが滲みだし液体吐出面50aに広がる。インクの滲みだし量は、清掃部材66の摺動が遅いほど、また清掃部材66のブレード66aの接触角が大きいほど、多くなる。
【0120】
清掃部材66が液体吐出面50aの摺動開始領域501を摺動しているか否かを判定し(S14)、清掃部材66が摺動開始領域501以外の領域を摺動していると判定したときには、清掃部材移動部166によって摺動する清掃部材66の摺動速度を変更し、図12(B)に示すように清掃部材66の摺動を続ける(S16)。すなわち、摺動速度を変化させることにより、摺動開始領域における液体吐出口51からのインク滲み出し量よりも摺動開始領域以外の領域における液体吐出口51からのインク滲み出し量を減少させた。例えば、摺動開始領域の摺動速度は20mm/sec、それ以外の領域を80mm/secとした。
【0121】
所定時間だけウエイトし(S18)、メニスカス微振動を終了する(S20)。すなわち、図1のタイマ153を用いて予め決められたウエイトタイムだけ待機した後、図1のヘッド駆動部154からヘッド50の圧電素子58に対して与えていたメニスカス微振動波形の付与を停止する。図12(C)に示すように、清掃部材66は摺動開始位置の近傍まで戻す。
【0122】
なお、ウエイトタイムを切り換えることでインク滲みだし量を調整できる。ウエイトタイムを長くするとインクの滲みだし量は増加する。
【0123】
メニスカス微振動を終了することにより、インクの滲み出しを抑える。ただし、メニスカス微振動を停止した後もヘッド50の背圧は正圧のまま維持されているため、若干のインクが滲み出す。
【0124】
次に、図12(D)に示すように、清掃部材66を液体吐出面50a上で摺動させる払拭を行う(S22)。これにより、ヘッド50の液体吐出面50aに付着していた付着物が溶解しているインクやごみを除去できる。ヘッド50の液体吐出面50aは湿潤化(S12〜14)により十分に濡れているため、清掃部材66により液体吐出面50a(例えば撥液膜)を傷つけることもない。
【0125】
次に、図12(E)に示すように、圧力計422によってサブタンク42の内圧を計測しながら、圧力調整ポンプ425を逆回転駆動して、ヘッド50の背圧を吐出待機時と同じ負圧に設定する(S24)。なお、サブタンク42の大気開放弁424を開けて大気解放した後、圧力調整ポンプ425を駆動すると、短時間で所定の背圧に設定することができる。
【0126】
次に、図4の液体供給弁62を開ける(S26)。これにより、サブタンク42をインクタンク60と連通させる。
【0127】
次に、清掃後の空吐出(パージ)を行う(S28)。具体的には、ヘッド50の各液体吐出口51からインクを液体受け64に向けて吐出する。
【0128】
図13は、ヘッド50の背圧を変化させることによりインク滲み出し量を調整する第2の態様における液体吐出面清掃処理の一例の流れを示すフローチャートである。
【0129】
図13において、ステップS2〜S10は図11に示す第1の態様における処理と同じであり、事前準備し(S2)、パージし(S4)、液体供給弁62を閉じ(S6)、ヘッド50の背圧を正圧に設定し(S8)、メニスカス微振動を開始する(S10)。
【0130】
本態様では、図14(A)に示すように、圧力計422でサブタンク42の内圧(すなわちヘッド50の背圧)を計測しながら、圧力調整ポンプ425を駆動することによって、ヘッド50の背圧を摺動開始領域用の圧力に変更する(S11)。次に、図14(B)に示すように液体吐出面50a上で清掃部材66の第1の摺動を開始すると(S12)、清掃部材66が液体吐出面50aの摺動開始領域501を摺動しているか否か判定し(S14)、清掃部材66が摺動開始領域501以外の領域を摺動していると判定したときには、圧力調整部162を用いて、ヘッド50の背圧を変更し、図14(C)に示すように清掃部材66の摺動を続ける(S15)。
【0131】
なお、ステップS11およびS15において、液体吐出面50aの摺動開始領域501を清掃部材66が摺動するときのヘッド50の背圧を、液体吐出面50aの摺動開始領域501以外の領域を清掃部材66が摺動するときのヘッド50の背圧よりも高くする。
【0132】
ステップS18〜S28は図11に示す第1の態様における処理と同じである。所定時間だけウエイトし(S18)、メニスカス微振動を終了する(S20)。なお、図14(D)に示すように、清掃部材66は摺動開始位置の近傍まで戻す。次に、図14(E)に示すように、清掃部材66を液体吐出面50a上で摺動させる払拭を行い(S22)、図14(F)に示すように、ヘッド50の背圧を負圧に設定し(S24)、液体供給弁62を開けて(S26)、パージを行う(S28)。
【0133】
なお、図7を用いて説明した、各種のインク滲み出し量の調整態様は、組み合わせて行ってもよい。例えば、摺動速度およびヘッド50の背圧の両方を調整してもよいし、全ての調整態様を組み合わせてもよい。
【0134】
また、湿潤化摺動処理(第1の摺動処理)と払拭摺動処理(第2の摺動処理)とで、同一の清掃部材66を摺動させる場合を例に説明したが、湿潤化摺動処理と払拭摺動処理とで異なる清掃部材を摺動させるようにしてもよい。
【0135】
また、図9を用いて、一定間隔で、摺動速度が遅い領域501を設けた場合、すなわち清掃部材66の摺動速度を切り換える態様について説明したが、ヘッド50の液体吐出面50aの特定場所でヘッド50の液体吐出口51からの滲み出し液体量を変える態様は、摺動速度(清掃部材66とヘッド50との相対速度である)を切り換える態様に特に限定されない。具体的には、図7を用いて既に説明したように、ヘッド50の内部の圧力(背圧)を切り換える態様、予備吐出数を切り換える態様、接触角を切り換える態様などが挙げられる。
【0136】
また、ヘッド50の液体吐出面50aの特定場所で滲み出し液体量の切り換えを行うには、既に説明したように、図1のプリント制御部150がタイマ153を用いて摺動開始時点からの経過時間を計時した時間を位置に変換して行う態様のほか、清掃部材66の位置を検知する手段(図示省略)を設けて検知した位置に基づいて行う態様などが挙げられる。
【0137】
また、ヘッド50の液体吐出面50aの特定場所で滲み出し液体量の切り換えを行う態様を説明したが、液体吐出面50a(ノズル51の配置面である)の全領域で同一の滲み出し条件を用いてもよい。すなわち、液体吐出面50aの全領域で、清掃部材66の摺動速度、予備吐出数、接触角などの滲み出し条件を同一にする。
【0138】
このように液体吐出面50aの全領域で同一の滲み出し条件を用いた場合には、画像形成装置10のヘッド50による液体吐出に関する状態に応じて、液体吐出面50aの全領域で液体の滲み出し量を切り換えると、液体吐出面50aの清掃性の向上につながる。例えば、被吐出媒体16の通紙頻度(被吐出媒体16が液体吐出面50aに対して通過する頻度である)が所定値を超えたとき、ヘッド50を非吐出状態のまま所定期間を超えて放置したとき、ヘッド50の吐出異常が検出されたとき(ノズルチェックパターンによるユーザ判断を含む)、被吐出媒体16のジャムが回復したとき、画像形成装置10の電源オン時、などの所定の状態で液体の滲み出し量を切り換える。具体的には、プリント制御部150がヘッド50の液体吐出口51からの滲み出し液体量を通常よりも増やすか否かを判定し、通紙頻度、長期間放置、吐出異常、ジャム回復、電源オンなどの直後に行う第1の摺動(湿潤化摺動)における液体の滲み出し量を通常よりも増やす切り換えを行う。
【0139】
以上、本発明の実施形態について、ヘッド50から吐出する液体がインクである場合を例について説明したが、インク以外の何らかの処理液や、他の産業用の液体を吐出する場合にも、本発明を適用できる。
【0140】
また、圧電素子を圧力発生手段として用いた場合を例に説明したが、例えばヒータなどの他の圧力発生手段を用いる場合にも本発明を適用できる。
【0141】
本発明は、本明細書において説明した例や図面に図示された例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の設計変更や改良を行ってよいことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明に係る液体吐出装置の一例としての画像形成装置の全体構成を示すブロック図
【図2】ヘッドの一例の全体構成を示す平面透視図
【図3】図2の3−3線に沿ったヘッドの断面図
【図4】画像形成装置の要部を示す構成図
【図5】(A)は吐出待機時のメニスカスの様子を示す模式図、(B)は加圧及びメニスカス微振動開始直後のメニスカスの様子を示す模式図、(C)は湿潤化直後のメニスカスの様子を示す模式図
【図6】湿潤化摺動の説明に用いる模式図
【図7】インクの滲み出し量を調整する各種の態様の一覧を示す図
【図8】インクの滲み出し量調整の一例の説明に用いる説明図
【図9】インクの滲み出し量調整の他の例の説明に用いる説明図
【図10】清掃部材とインクとの接触角によりインクの滲み出し量を調整する態様の一例を示す模式図
【図11】摺動速度によりインクの滲み出し量を調整する態様における液体吐出面の清掃処理の一例の流れを示すフローチャート
【図12】図11に示す液体吐出面の清掃処理の説明に用いる説明図
【図13】ヘッドの背圧によりインクの滲み出し量を調整する態様における液体吐出面の清掃処理の一例の流れを示すフローチャート
【図14】図13に示す液体吐出面の清掃処理の説明に用いる説明図
【符号の説明】
【0143】
42…サブタンク、50…ヘッド(液体吐出ヘッド)、50a…ヘッドの液体吐出面、51…ヘッドの液体吐出口、51a…液体吐出口の周縁、52…ヘッドの圧力室、58…ヘッドの圧電素子、60…インクタンク、61…液体供給ポンプ、62…液体供給弁、64…液体受け、66…清掃部材、66a…清掃部材のブレード、81…メニスカス、150…プリント制御部(制御手段)、152…メモリ、153…タイマ、154…ヘッド駆動部、160…給液部、162…圧力調整部、164…液体受け移動部、166…清掃部材移動部
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する複数の液体吐出口が配置された液体吐出面を有する液体吐出装置、および、複数の液体吐出口が配置された液体吐出面を清掃する液体吐出面の清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を吐出する液体吐出口と、液体吐出口に連通する圧力室と、液体吐出口から液体を吐出させるための圧力を圧力室内に発生させる圧力発生素子を有する液体吐出ヘッド(以下単に「ヘッド」という)を用いて、紙などの被吐出媒体に向けて液体を吐出する液体吐出装置が知られている。このような液体吐出装置を用いて、色材を含有するインクを被吐出媒体に向けて吐出し、被吐出媒体上に画像を形成する。
【0003】
特許文献1の従来の技術欄には、ヘッドの液体吐出口をキャッピングするキャップ(キャッピング機構)と、キャッピング状態においてキャップに接続されてポンプを作動してキャップ内部に負圧を発生させて液体吐出口からインク等を吸引する吸引手段と、ヘッドの液体吐出面に付着した異物を拭き取るワイピング手段を備えたものが記載されている。
【0004】
特許文献2には、ヘッドと、印刷に適した速度でインク滴を発生させる第1の信号と液体吐出口からインクを滲み出させる第2の信号とを選択的に出力するヘッド駆動手段と、常時は非印刷領域に位置し、クリーニング時にはヘッドの長手方向に移動可能なクリーニング装置と、クリーニング装置をヘッドの長手方向に相対的に移動させる駆動手段と、クリーニング装置の位置を検出するクリーニング装置位置検出手段と、クリーニング指令に基づいてクリーニング装置位置検出手段によりクリーニング装置の位置を検出し、クリーニング装置の位置する近傍の液体吐出口からヘッド駆動手段により圧力発生素子を駆動してインクを滲み出させる手段を備えたものが記載されている。
【特許文献1】特開2002−166560号公報
【特許文献2】特許3535885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、無駄なインク量を抑えつつ、液体吐出面を十分に清掃することは困難であった。
【0006】
例えば、ヘッドをキャップで覆ってインクを吸引する態様では、一般に大部分のインクは液体吐出面に付着せずにキャップに吸引されるため、液体吐出面上の付着物を十分に取り除くことができない。液体吐出面にインクを十分に付着させるために、キャップと当該キャップでキャッピングされたヘッドの液体吐出面との間をインクを充満させる必要があるが、多数の液体吐出口を有するマトリクスヘッドではキャップが大型になるので多量のインクが必要になるばかりか、液体吐出面に付着するインクの量は限られてしまうのでインクの使用効率が悪い。すなわち、無駄なインク量を抑えることと、液体吐出面を十分に清掃することを両立させることは困難であった。
【0007】
また、液体吐出面に付着した異物をワイピング手段によって拭き取る際、ワイピング手段に向けてインクを吐出する態様も考えられるが、ワイピング手段の周辺にインクが飛び散り、装置内を汚してしまうという問題がある。
【0008】
また、液体吐出口からインクを滲み出させる信号を用いる態様では、液体吐出口近傍はインクで濡れるものの、液体吐出口から離れたところはインクで濡れることがなく湿潤にはならないので、液体吐出面上の付着物を十分に取り除くことができない。インクの滲み出し量を増やそうとして、波形を大きくしても、インクが吐出してしまい、結局、液体吐出面を湿潤な状態にすることはできない。すなわち、無駄なインク量を抑えることと、液体吐出面を十分に清掃することを両立させることは困難であった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、複数の液体吐出口が配置されている液体吐出面を液体吐出口から滲み出させた液体により十分に湿潤な状態にして、無駄な液体の消費を抑えつつ、液体吐出面の清掃性を向上させることができる液体吐出装置および液体吐出面の清掃方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、液体を吐出する複数の液体吐出口が配置された液体吐出面を有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッド内の圧力を調整する圧力調整手段と、前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出口から液体を吐出させる液体吐出駆動波形、および、前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出口から液体が吐出しない程度に該液体吐出口のメニスカスを微振動させるメニスカス微振動波形を選択的に前記液体吐出ヘッドに対して与えるヘッド駆動手段と、前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面上を摺動する清掃部材と、前記清掃部材を前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面上で摺動させる第1の摺動および該第1の摺動に続き前記清掃部材を前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面上で摺動させる第2の摺動を制御する制御手段であって、前記第1の摺動は、前記圧力調整手段によって前記液体吐出ヘッド内を加圧して前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出口のメニスカスを凸形状にするとともに、前記ヘッド駆動手段によって前記メニスカス微振動波形を前記液体吐出ヘッドに対して付与した状態で行って、前記液体吐出口から滲み出させた液体で前記液体吐出面を湿潤化する一方で、前記第2の摺動は、前記液体吐出ヘッドに対する前記メニスカス微振動波形の付与を停止した状態で行って、前記液体吐出面を払拭する制御手段を備えたことを特徴とする液体吐出装置を提供する。
【0011】
この発明によれば、液体吐出ヘッドの液体吐出口のメニスカスが凸形状であって微振動した状態で第1の摺動が行われるので、液体吐出口から滲み出した液体により液体吐出面が十分に湿潤な状態となり、次に、メニスカスの微振動が停止した状態で第2の摺動が行われるので、滲み出しインクで十分に潤滑な状態の液体吐出面から付着物および液体を払拭することができる。なお、第1の摺動によって液体吐出面が十分に潤滑な状態になる一方で、例えば液体吐出口から液体を吸引するような場合と比較して、消費する液体の量は必要最小限で済む。また、液体吐出面が十分に潤滑な状態で第2の摺動が行われるので、液体吐出面の損傷が防止される。したがって、無駄な液体の消費を抑えつつ、液体吐出面の清掃性を向上させることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記制御手段は、前記第1の摺動の際に、前記圧力調整手段を用いて、前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面のうちで特定領域を前記清掃部材が摺動するときの前記液体吐出ヘッド内の圧力を、前記液体吐出ヘッドの他の領域を前記清掃部材が摺動するときの前記液体吐出ヘッド内の圧力よりも、高くすることを特徴とする液体吐出装置を提供する。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記制御手段は、前記第1の摺動の際に、前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面のうちで特定領域を摺動するときの前記清掃部材の前記液体吐出ヘッドに対する速度を、前記液体吐出ヘッドの他の領域を摺動するときの前記清掃部材の前記液体吐出ヘッドに対する速度よりも、遅くすることを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出装置を提供する。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の発明において、前記制御手段は、前記ヘッド駆動手段を用いて前記第1の摺動よりも前に前記液体吐出ヘッドの各液体吐出口から液体を予備吐出させ、前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面のうちで特定領域内の各液体吐出口の予備吐出数を、前記液体吐出ヘッドの他の領域内の各液体吐出口の予備吐出数よりも、多くすることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の液体吐出装置を提供する。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか1項に記載の発明において、前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面のうちで特定領域の前記清掃部材と前記液体吐出面との接触角よりも、前記液体吐出ヘッドの他の領域の前記清掃部材と前記液体吐出面との接触角が、小さいことを特徴とする液体吐出装置を提供する。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の何れか1項に記載の発明において、前記液体吐出面の前記特定領域は、前記清掃部材が摺動を開始する摺動開始領域であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の液体吐出装置を提供する。
【0017】
請求項7に記載の発明は、液体を吐出する複数の液体吐出口が配置された液体吐出面を有する液体吐出ヘッドの前記液体吐出面を、該液体吐出面上を摺動する清掃部材を用いて清掃する液体吐出面の清掃方法において、前記液体吐出ヘッド内の圧力を調整する圧力調整手段を用いて前記液体吐出ヘッド内を加圧して前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出口のメニスカスを凸形状にするとともに、前記液体吐出ヘッドを駆動するヘッド駆動手段を用いて前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出口から液体が吐出しない程度のメニスカス微振動波形を前記液体吐出ヘッドに対して付与した状態で、前記清掃部材を前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面上で摺動させて、前記液体吐出口から滲み出させた液体で前記液体吐出面を湿潤化する第1の摺動ステップと、前記液体吐出ヘッドに対する前記メニスカス微振動波形の付与を停止した状態で、前記清掃部材を前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面上で摺動させて、前記液体吐出面を払拭する第2の摺動ステップを含むことを特徴とする液体吐出面の清掃方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の液体吐出口が配置されている液体吐出面を液体吐出口から滲み出させた液体により十分に湿潤な状態にして、無駄な液体の消費を抑えつつ、液体吐出面の清掃性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面に従って、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る液体吐出装置の一例としての画像形成装置10の全体構成を示すブロック図である。
【0021】
図1において、画像形成装置10は、主として、ヘッド50、液体受け64、清掃部材66、通信インターフェース110、システムコントローラ112、メモリ114、152、搬送部116、搬送駆動部118、プリント制御部150、タイマ153、ヘッド駆動部154、給液部160、圧力調整部162、液体受け移動部164、清掃部材移動部166、および、清掃部材押し圧変更部168を含んで構成されている。
【0022】
ヘッド50(以下単に「ヘッド」という)は、液体を吐出する複数の液体吐出口が配置された液体吐出面を有する。なお、本実施形態では、液体としてインクを吐出する場合について、以下説明する。例えば、画像形成装置10は、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)の各インク色ごとにひとつずつ、合計で4つのヘッド50を備えている。ヘッド50の具体例は後に詳説する。
【0023】
液体受け64は、ヘッド50の液体吐出面の清掃時に、ヘッド50から液体を受け取るものである。例えば、K、C、M、Yの各ヘッド50ごとにひとつずつ、合計で4つの液体受け64を備える。液体受け64の具体例は後に詳説する。
【0024】
清掃部材66は、ヘッド50の液体吐出面の清掃時に、ヘッド50の複数の液体吐出口が配置されている液体吐出面上を摺動するものである。本例の画像形成装置10は、実際には、K、C、M、Yの各ヘッド50ごとにひとつ又は複数の清掃部材66を備えている。この清掃部材66の具体例は後に詳説する。
【0025】
通信インターフェース110は、ホストコンピュータ300から送信される画像データを受信する。通信インターフェース110には、USB(Universal Serial Bus)、IEEE1394などの有線、又は、無線のインターフェースを適用することができる。この通信インターフェース110によって画像形成装置10に取り込まれた画像データは、画像データ記憶用の第1のメモリ114に一旦記憶される。
【0026】
システムコントローラ112は、マイクロコンピュータ及びその周辺回路等から構成されており、所定のプログラムに従って画像形成装置10の全体を制御する。すなわち、システムコントローラ112は、通信インターフェース110、搬送駆動部118、プリント制御部150等の各部を制御する。
【0027】
搬送部116は、紙などの被吐出媒体を搬送するためのローラ(図示を省略)と、このローラに動力を与えるモータ(図示を省略)を含んで構成されている。搬送部116によって、被吐出媒体とヘッド50とが相対的に移動される。搬送駆動部118は、システムコントローラ112からの指示に従って搬送部116を駆動する回路を含んで構成されている。
【0028】
プリント制御部150は、マイクロコンピュータ及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従って、給液制御部134、タイマ153、ヘッド駆動部154、給液部160、圧力調整部162、液体受け移動部164、および、清掃部材移動部166を制御する。
【0029】
プリント制御部150は、画像形成装置10に入力される画像データに基づいて、ヘッド50が被吐出媒体に向けて吐出(打滴)を行って被吐出媒体上にドットを形成するために必要なデータ(ドットデータ)を生成する。すなわち、プリント制御部150は、システムコントローラ112の制御に従い、第1のメモリ114内の画像データから打滴用のドットデータを生成し、生成したドットデータをヘッド駆動部154に供給する。プリント制御部150には第2のメモリ152が付随しており、プリント制御部150における画像処理時にドットデータ等が第2のメモリ152に一時的に格納される。
【0030】
ヘッド駆動部154は、プリント制御部150の指示に従って、プリント制御部150から与えられるドットデータ(実際には第2のメモリ152に記憶されたドットデータである)に基づき、ヘッド50の液体吐出口(図2および図3の51)からインクを吐出させるための駆動信号(以下「液体吐出駆動波形」と称する)を生成して、ヘッド50(具体的には後述する図3の圧電素子58)に与える。また、ヘッド駆動部154は、プリント制御部150の指示に従って、ヘッド50の各液体吐出口からインクが吐出しない程度に各液体吐出口のメニスカスを微振動させる駆動信号(以下「メニスカス微振動波形」と称する)を生成して、ヘッド50(具体的には後述する図3の圧電素子58)に与える。ヘッド駆動部154は、液体吐出駆動波形とメニスカス微振動波形とを選択的にヘッド50に与える。
【0031】
給液部160は、プリント制御部150の指示に従い、インクをヘッド50へ供給するものである。給液部160の具体例については後に詳説する。
【0032】
圧力調整部162は、プリント制御部150の指示に従い、ヘッド51の内部の圧力(背圧)を調整するものである。この圧力調整部162の具体例については後に詳説する。
【0033】
液体受け移動部164は、後述のプリント制御部150の指示に従い、液体受け64をヘッド50に対して相対移動させるものである。具体的には、液体受け移動部164は、液体受け64の移動用のモータを含む周知の機構および駆動回路(いずれも図示を省略)を含んで構成されており、ヘッド50の液体吐出面に対して平行方向および垂直方向において、液体受け64を移動させる。
【0034】
清掃部材移動部166は、後述のプリント制御部150の指示に従い、清掃部材66をヘッド50に対して相対移動させるものである。具体的には、清掃部材移動部166は、清掃部材66の移動用のモータを含む周知の機構および駆動回路(いずれも図示を省略)を含んで構成されており、ヘッド50の液体吐出面に対して平行方向および垂直方向において、清掃部材66を移動させる。
【0035】
清掃部材移動部166の平行方向の移動機構としては、具体的には、ラック&ピニオン・ギアとレール(いずれも図示省略)を用い、清掃部材66を液体吐出面に対して平行な方向に移動させる。ベルトまたはワイヤ(いずれも図示省略)に清掃部材66を固定して、モータ(図示省略)の回転運動によってベルトまたはワイヤを巻き取って直線運動に変える機構としてもよい。あるいは、リニアモータやボールネジ(いずれも図示省略)によって清掃部材66を直接移動させる機構としてもよい。
【0036】
清掃部材移動部166の垂直移動機構としては、具体的には、カムとリンク(いずれも図示省略)によって、清掃部材66を液体吐出面に対して垂直な方向に移動させる。また、ソレノイド(図示省略)をオンおよびオフすることで、清掃部材66の位置を変えるようにしてもよい。空圧や油圧を用いてもよい。
【0037】
清掃部材押し圧変更部168は、清掃部材66をヘッド50の液体吐出面に押し当てる圧力(押し圧)を変更するものである。
【0038】
プリント制御部150は、給液部160を用いてヘッド50へインクを供給する給液制御、圧力調整部162を用いてヘッド50の背圧(ヘッド50の内部の圧力)を調整する圧力調整制御、液体受け移動部164を用いて液体受け64をヘッド50に対して相対移動させる液体受け移動制御、および、清掃部材移動部166を用いて清掃部材66をヘッド50に対して相対移動させる清掃部材移動制御を行う。これらの給液制御、圧力調整制御、液体受け移動制御、清掃部材移動制御については、後に詳説する。
【0039】
タイマ153は、インク滲み出し量の切換タイミングを生成するための清掃部材66の摺動開始からの経過時間の計時、待ち時間(ウエイトタイム)の計時等に用いられる。なお、プリント制御部150が計時機能を有している場合には、タイマ153を省略してもよい。
【0040】
なお、プリント制御部150は、所定のプログラムに従って、ヘッド50の液体吐出面の清掃処理等を実行する。このような清掃処理の際、プリント制御部150は、ヘッド50の液体吐出面上で清掃部材66を摺動させる第1の摺動および第1の摺動に続き清掃部材66をヘッド50の液体吐出面上で摺動させる第2の摺動を制御する。第1の摺動は、圧力調整部162によってヘッド50内を加圧してヘッド50の液体吐出口のメニスカスを凸形状にするとともに、ヘッド駆動部154によってメニスカス微振動波形をヘッド50に対して付与した状態で行わせる。第2の摺動は、ヘッド50に対するメニスカス微振動波形の付与を停止した状態で行わせる。この清掃処理の詳細については、後に詳説する。
【0041】
なお、図1ではシステムコントローラ112とプリント制御部150とを分けて表したが、1つのマイクロコンピュータによって構成されていてもよい。
【0042】
図2は、図1のヘッド50の一例の全体構成を示す平面透視図であり、図3は、図2の3−3線に沿った断面図である。
【0043】
図2に一例として示すヘッド50は、いわゆるフルライン型のヘッドであり、被吐出媒体16の搬送方向(図中に矢印Sで示す副走査方向)と直交する方向(図中に矢印Mで示す主走査方向)において、被吐出媒体16の幅Wmに対応する長さにわたり、被吐出媒体16に向けてインクを打滴する多数の液体吐出口51を2次元的に配列させた構造を有している。
【0044】
ヘッド50は、液体吐出口51、液体吐出口51に連通する圧力室52、および、液体供給口53を含んでなる複数の吐出素子54が、主走査方向Mおよび主走査方向Mに対して所定の鋭角θ(0度<θ<90度)をなす斜め方向の2方向に沿って配列されている。なお、図2では、図示の便宜上、一部の吐出素子54のみ描いている。
【0045】
液体吐出口51は、具体的には、主走査方向Mに対して所定の鋭角θをなす斜め方向において、一定のピッチdで配列されており、これにより、主走査方向Mに沿った一直線上に「d×cosθ」の間隔で配列されたものと等価に取り扱うことができる。
【0046】
ヘッド50を構成するひとつの吐出素子54について、図2中の3−3線に沿った断面図を図3に示す。なお、図3では、吐出素子54をひとつだけ示ししているので液体吐出面50aに液体吐出口51がひとつだけ配置されているが、実際には、図2に示すようにヘッド50には多数の吐出素子54が2次元配列されており、液体吐出面50aには多数の液体吐出口51が二次元配列されている。
【0047】
図3に示すように、各圧力室52は液体供給口53を介して共通液室55と連通している。共通液室55は、後述する図4のサブタンク42を介してインク供給源としての図4のインクタンク60と連通している。言い換えると、インクタンク60からサブタンク42を介して供給されるインクが、共通液室55を介して各圧力室52に分配供給される。
【0048】
圧力室52の天面を構成する振動板56の上には圧電体58aが配置され、この圧電体58aの上には個別電極57が配置されている。振動板56は、接地されており、共通電極として機能する。これらの振動板56、個別電極57および圧電体58aによって、圧力室52内に圧力を発生させる手段としての圧電素子58が構成されている。
【0049】
図1のヘッド駆動部154によって生成された液体吐出駆動波形が圧電素子58に与えられると、すなわち、圧電素子58の個別電極57にインク吐出用の駆動電圧が印加されることにより、圧電体58aが変形して圧力室52の容積が変化し、これに伴う圧力室52内の圧力の変化によって、液体吐出口51からインクが吐出される。インクの吐出にともなって、共通液室55から液体供給口53を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
【0050】
また、図1のヘッド駆動部154によって生成されたメニスカス微振動波形が圧電素子58に与えられると、すなわち、圧電素子58の個別電極57にメニスカス微振動用の駆動電圧が印加されることにより、圧電体58aが変形して圧力室52内のインクが微振動し、もって圧力室52に連通している液体吐出口51のメニスカスが微振動する。
【0051】
なお、図2および図3に示す吐出素子54は、一例であって、このような場合に特に限定されない。例えば、圧力室52よりも下(すなわち圧力室52よりも液体吐出面50a側)に共通液室55を配置する代りに、圧力室52よりも上(すなわち液体吐出面50aとは反対側)に共通液室55を配置してもよい。
【0052】
図4は、図1において説明したヘッド50、液体受け64、清掃部材66、給液部160および圧力調整部162を含んで構成される画像形成装置10の要部を示す構成図である。
【0053】
インク供給源としてのインクタンク60から、第1の液体供給路71を経て、サブタンク42へインクが供給される。具体的には、液体供給弁62が開かれた状態で、液体供給ポンプ61が駆動されることにより、インクタンク60内のインクはフィルタ63によってゴミや気泡が除去された後、サブタンク42へ送液される。このサブタンク42には、サブタンク42内のインク残量を検知するインク残量センサ421が設けられている。サブタンク42内のインクは、第2の液体供給路72を経て、ヘッド50へ供給される。
【0054】
また、サブタンク42には、圧力計422、大気連通口423、大気開放弁424、および、圧力調整ポンプ425が付随している。
【0055】
圧力計422は、サブタンク42内の圧力を計測し、もってヘッド50の背圧、すなわちヘッド50の内部の圧力を計測する。大気開放弁424は、大気連通口423とサブタンク42との連通を開閉する弁である。圧力調整ポンプ425は、大気開放弁424が開かれた状態でサブタンク42内の気体(大気)の補給および排出を行うことによってサブタンク42内の圧力を調整し、もってヘッド50の背圧を調整する。
【0056】
前述のインクタンク60、液体供給ポンプ61、液体供給弁62、フィルタ63、第1の液体供給路71、第2の液体供給路72、サブタンク42、インク残量センサ421、圧力計422、大気連通口423、大気開放弁424および圧力調整ポンプ425は、図1の給液部160を構成している。
【0057】
また、圧力計422、大気連通口423、大気開放弁424および圧力調整ポンプ425は、図1の圧力調整部162も構成している。このような圧力調整部162によってサブタンク42内の圧力を調整することにより、ヘッド50の背圧を調整するようになっている。
【0058】
清掃部材66は、清掃部材移動部166によって、ヘッド50の液体吐出面50aに対して垂直な方向(図中に矢印Vで示す垂直方向)において移動自在であるとともに、ヘッド50の液体吐出面50aに対して平行な方向(図中に矢印Mで示すヘッド50の主走査方向、「摺動方向」ともいう)において移動自在である。
【0059】
清掃部材66は、ブレード66aを有し、このブレード66aにおいてヘッド50の液体吐出面50aに当接しながら、ヘッド50の液体吐出面50a上を摺動する。
【0060】
清掃部材66のブレード66aの材料としては、例えば、シリコンゴム、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、ウレタンゴムが挙げられる。本例では、NBRに水素を添加したHNBR(水素化ニトリルゴム)を用いた。
【0061】
清掃部材66は、清掃部材移動部166によって、通常はヘッド50の液体吐出面50a下から退避した所定の退避位置(ヘッド50からのインク吐出を妨げない位置である)へ移動した状態となっており、ヘッド50の液体吐出面50aの清掃が行われるときには、ヘッド50の液体吐出面50aにそのブレード66aを当接させて液体吐出面50a上を摺動する。
【0062】
液体受け64は、ヘッド50からパージ(空吐出)されたインク、および、清掃部材66によってヘッド50から払拭されたインクを受け取るものである。また、液体受け64はヘッド50の液体吐出面50aを封止するキャップの機能も有する。
【0063】
液体受け64は、液体受け移動部164によって、通常はヘッド50の液体吐出面50a下から退避した所定の退避位置(ヘッド50からのインク吐出を妨げない位置である)へ移動した状態となっており、ヘッド50の液体吐出面50aの清掃が行われるときには、ヘッド50の液体吐出面50a下の所定のメンテナンス位置(すなわちヘッド50からインクを受け取り可能な位置である)へ移動した状態となっている。
【0064】
ヘッド50から液体受け64に受け渡されたインクは、回収ポンプ67が駆動されると、液体回収流路73を経て、回収タンク68へ送液される。
【0065】
次に、ヘッド50の液体吐出口51のメニスカスの様子を模式的に示す図5(A)、図5(B)および図5(C)を用いて、液体吐出面50aの湿潤化について説明する
吐出待機時には、圧力調整部162によってヘッド50の背圧は負圧(大気圧よりも低い圧力である)に保たれているので、図5(A)に示すように、液体吐出口51のメニスカス81は凹形状に保たれている。ここで、メニスカス81の周縁82(クリップポイント)は液体吐出口51の周縁51aに略一致している。
【0066】
このような図5(A)に示す状態において、圧力調整部162によってヘッド50の背圧が負圧から正圧(大気圧よりも高い圧力である)に切り換えられるとともに、ヘッド駆動部154からヘッド50の図3に示す圧電素子58に対してメニスカス微振動波形が印加される。そうすると、図5(B)に示すように、液体吐出口51のメニスカス81は凸形状になり且つ微振動する。このとき、メニスカス81の周縁82(クリップポイント)は、図5(A)に示す吐出待機時と比較して、液体吐出口51の周縁51aからその周縁51aの外側へ向けて若干広がる。すなわち、液体吐出口51からインクが若干滲み出る。このような初期のインクの滲み出しにより、液体吐出口51の周縁51aやその周縁51aのごく近傍に付着している付着物は、滲み出したインク中に溶解するか、剥がれてインクに浮遊することになる。
【0067】
ただし、図5(B)に示す状態では、インクの滲み出しによるメニスカス81の直径の増分は液体吐出口51の直径と比較して小さい。例えば、液体吐出口51の直径が約30μmである場合、顕微鏡観察によれば、メニスカス81の直径は数μm程度広がるにとどまった。そのため、メニスカス81の直径よりも長い紙の繊維やほこり等の除去は難しい。また、インク吐出時に主液滴とともに生じたサテライト液滴やミストなどは、液滴同士の静電反発に因り液体吐出口51から離れた位置に付着し易く、液体吐出面50a上で固化している。このようなインク滴が固化してなる付着物は、液体吐出面50a(例えば撥液膜が形成されている)を汚染することになる。以上のような付着物は、吐出時に液体吐出面50aから脱落したり、脱落しなくても紙などの被吐出媒体に接触し、画像劣化を引き起こす。
【0068】
そこで、図5(B)に示す状態、すなわち、ヘッド50の背圧を正圧に保ち且つメニスカス微振動波形をヘッド50の圧電素子58に印加した状態において、清掃部材66を液体吐出面50a上で摺動させる。これにより、凸形状且つ微振動状態のメニスカス81に対して清掃部材66が接触して、インクが液体吐出面50a上で広がり、図5(C)に示すように、液体吐出口51の周辺がインクで濡れて湿潤な状態になる。例えば、図5(B)に示す状態でメニスカス81の直径が約30μm〜40μmであった場合、メニスカス81の直径が数百μmまで広がった。
【0069】
このような清掃部材66の液体吐出面50aに対する摺動、すなわち、メニスカス81が凸形状且つ微振動状態で清掃部材66をヘッド50の液体吐出面50aに対して相対移動させて液体吐出口51の周辺をインクで湿潤にさせることを、以下「湿潤化摺動処理」または「第1の摺動処理」と称する。
【0070】
湿潤化摺動処理後、所定期間(以下「ウエイトタイム」という)、メニスカス微振動波形をヘッド50の圧電素子58に印加した状態を保つ。メニスカス81が微振動することにより、僅かずつインクの濡れ面積が広がり、最終的には互いに隣接する液体吐出口51間でインクが繋がる。これにより液体吐出口51の周辺のインク固形成分がインクに溶解する。
【0071】
このように、液体吐出口51から滲み出してヘッド50の液体吐出面50aを濡らしているインクを以下「滲み出しインク」といい、その量を以下「滲み出しインク量」という。
【0072】
ウエイトタイムの経過後、メニスカス微振動波形の印加を停止して、ヘッド50の液体吐出面50aに付着していた付着物および滲み出しインクを除去するため、清掃部材66を液体吐出面50a上で摺動させる。ここで、液体吐出口51の周辺に滲み出ているインクが液体吐出口51の内部へ戻らないように、ヘッド50の背圧を正圧に保ったまま清掃部材66を摺動させるようにしてもよいが、ヘッド50の背圧を正圧に保たなくても短時間で清掃部材66を摺動すると、液体吐出口51の周辺が濡れた状態(湿潤状態)となるので、このように短時間で清掃部材66を摺動する構成の場合には、ヘッド50の背圧を正圧に保たなくてもよい。
【0073】
このような清掃部材66の液体吐出面50aに対する摺動、すなわち、滲み出しインクが液体吐出口51の周辺を濡らしている状態(湿潤状態)且つ微振動停止状態で清掃部材66をヘッド50の液体吐出面50aに対して相対移動させて液体吐出口51の周辺のインクを除去することを、以下「払拭摺動処理」または「第2の摺動処理」と称する。
【0074】
前述の湿潤化摺動処理について、図6(A)〜(F)に示す模式図を用いて、さらに詳細に説明する。
【0075】
図6(A)に示すように、ヘッド50の背圧を正圧に設定してメニスカス81を凸形状にするとともに、圧電素子58にメニスカス微振動波形を印加して凸形状のメニスカス81を微振動させることにより、液体吐出口51から滲み出したインクからなるメニスカス81が、液体吐出口51の直径よりも若干広がっていく。一方で、清掃部材66のブレード66aの先端部66bが液体吐出口51に近づき、図6(B)に示すように、液体吐出口51上に来ると、液体吐出口51の周縁51aとブレード66aの先端部66bとの間で、メニスカス81が少し盛り上がる。詳細には、図中に符号82、83で示すクリップポイントの間で、メニスカス81の盛り上がりが生じ、図6(C)に示すように、やがて、メニスカス81の周縁としてのクリップポイント82が液体吐出口51の周縁51aに対して、さらに広がっていく。図6(D)に示すように、メニスカス81が壊れて微量のインクがブレード66aの斜面に沿って流れ落ちていく。一方で、図6(E)、図6(F)および図6(G)に示すように、ブレード66aの先端部66bに付着していたインクが液体吐出口51の周辺に広がっていく。図6(H)に示すように、液体吐出口51の周辺に広がったインクは、ヘッド50の正圧により、液体吐出口51内へ逆流することはない。
【0076】
以上説明した、湿潤化摺動処理、払拭摺動処理などの処理は、図1のプリント制御部150が、タイマ153、ヘッド駆動部154、圧力調整部162、清掃部材移動部166等を用いて行う。
【0077】
次に、インク滲み出し量を調整する各種の態様について、一覧を図7に示す。
【0078】
第1に、摺動速度、すなわち清掃部材66とヘッド50との相対速度を調整することにより、インクの滲み出し量を調整する態様がある。
【0079】
例えば、摺動速度を20〜120[mm/sec]の範囲内で変化させると、摺動速度が速いほど(上限値の120[mm/sec]に近いほど)インクの滲み出し量が少なくなり、摺動速度が遅いほど(下限値の20[mm/sec]に近いほど)インクの滲み出し量が多くなる。
【0080】
図8において、ヘッド50の液体吐出面50aのうちで所定の摺動開始領域501を清掃部材66が摺動するときの摺動速度を、ヘッド50の液体吐出面50aのうちで摺動終了領域を含む摺動開始領域以外の領域502を清掃部材66が摺動するときの摺動速度よりも遅くする。
【0081】
これにより、摺動始めのインクの滲みだし量を増やすことができ、清掃部材66によって摺動始めに滲み出たインクを液体吐出面50a上に押し広げることになるので、摺動の終点に近づくほど必要なインクは少なくて済む。また、ヘッド50の液体吐出面50aに与える損傷を防止する観点からも、摺動の始めにインクを十分に滲み出させればよい。そこで、例えば、摺動の開始領域501における摺動速度を20[mm/sec]、それ以外の領域502における摺動速度を80[mm/sec]と切り換える。120[mm/sec]を選択すると更なるインク量の低下が期待できるが、清掃部材移動部166の大型化およびコストアップのため、80[mm/sec]を選択した。
【0082】
摺動速度の切り換えは、例えば、図1のプリント制御部150が、清掃部材移動部166およびタイマ153を用いて行う。図1のタイマ153により摺動開始時点からの経過時間を計時して予め決められた時間を超えたときに摺動速度を切り換える。
【0083】
また、図9に示すように、長尺ヘッドの場合、すなわち清掃部材66の摺動距離が長い場合には、一定間隔で、インク滲み出し量を多くする領域501、すなわち摺動速度が遅い領域501を設けると効果的である。
【0084】
また、摺動速度は、連続的に変化させるようにしてもよいし、段階的に変化させるようにしてもよい。このように連続的または段階的に摺動速度を変化させることによって、長尺ヘッドにおいて、液体吐出口51からのインク滲み出し量を摺動位置に応じてより細かく変化させることも可能となる。
【0085】
なお、タイマ153を用いないで、清掃部材66の摺動位置を検知する手段(図示を省略)を設け、摺動位置が予め決められた位置となったときに摺動速度を切り換えるようにしてもよい。
【0086】
異常吐出検知(ノズルチェックパターンによる手動検出を含む)と組み合わせて、異常ノズルのある部分の摺動速度を遅くし、十分湿潤させて、清掃する。少ないインクで有効な清掃が可能である。
【0087】
摺動速度を速くするとインクの滲みだし量が少なくなる理由は、図6(B)および(C)に示す状態の時に、インクが液体吐出口51の周辺まで余分に広がる前に液体吐出口51の周辺を通り過ぎるためと考えられる。
【0088】
第2に、背圧、すなわちヘッド50の内部の圧力を調整することにより、インクの滲み出し量を調整する態様がある。
【0089】
例えば、背圧を0〜100[mmH2O]の範囲内で変化させると、背圧が低いほど(下限値の0[mmH2O]に近いほど)インクの滲み出し量が少なくなり、背圧が高いほど(上限値の100[mmH2O]に近いほど)インクの滲み出し量が多くなる。
【0090】
なお、0〜100[mmH2O]の範囲内で良好な結果が得られたが、ノズル径、インクの種類、清掃部材66の材質、液体吐出面50aの撥水性能などにより背圧の良好な値は異なるので、適宜設定する必要がある。
【0091】
また、背圧が高すぎると、第2の摺動後にインクがあふれる。逆に、背圧が低すぎると、第1の摺動時に十分なインクが滲み出さず、インク固形分の溶解に支障をきたすことがある。
【0092】
図8において、ヘッド50の液体吐出面50aのうちで所定の摺動開始領域501を清掃部材66が摺動するときのヘッド50の背圧を、ヘッド50の液体吐出面50aのうちで摺動終了領域を含む摺動開始領域以外の領域502を清掃部材66が摺動するときのヘッド50の背圧よりも高くする。このようにしても第1の態様と同じ効果が得られる。
【0093】
ヘッド50の背圧の切り換えは、例えば、図1のプリント制御部150が、圧力調整部162およびタイマ153を用いて行う。図1のタイマ153により摺動開始時点からの経過時間を計時して予め決められた時間を超えたときにヘッド50の背圧を切り換える。
【0094】
また、図9に示すように、摺動距離が長い場合には、一定間隔で、インク滲み出し量を多くする領域501、すなわち摺動速度が遅い領域501を設けると効果的である。ヘッド50の背圧は、連続的に変化させるようにしてもよいし、段階的に変化させるようにしてもよい。タイマ153を用いないで、清掃部材66の摺動位置を検知する手段(図示を省略)を設け、摺動位置が予め決められた位置となったときにヘッド50の背圧を切り換えるようにしてもよい。
【0095】
また、長尺ヘッドの場合、ヘッド50の共通液室55を分割するとともに各共通液室55ごとにサブタンク42を設けて、各サブタンク42ごとに背圧を切り換えることにより、一定間隔ごとにインクの滲みだし量を調整することも可能である。
【0096】
また、ヘッド50の背圧を調整する方法として、サブタンク42の内圧を調整する場合を例に説明したが、インクタンク60のインクを直接加圧してもよい。また、サブタンク42を大気連通とし、さらにサブタンク42を上下させる機構を設けて、サブタンク42内の液面とヘッド50の液体吐出面50aとの水頭差でヘッド50の背圧を変えてもよい。
【0097】
第3に、予備吐出数、すなわち湿潤化前のパージ(空吐出)の各液体吐出口51の吐出数を調整することにより、インクの滲み出し量を調整する態様がある。
【0098】
例えば、各液体吐出口51の予備吐出数を200〜20000[shot]の範囲内で変化させると、予備吐出数が少ないほど(下限値m200[shot]に近いほど)インクの滲み出し量が少なくなり、予備吐出数が多いほど(上限値の20000[shot]に近いほど)インク滲み出し量が少多くなる。
【0099】
図8において、ヘッド50の液体吐出面50aのうちで所定の摺動開始領域501内の各液体吐出口51の予備吐出数よりも、ヘッド50の液体吐出面50aのうちで摺動終了領域を含む摺動開始領域以外の領域502内の各液体吐出口51の予備吐出数を少なくする。例えば、摺動開始領域501内では各液体吐出口51ごとに20000[shot]、それ以外の領域502内では各液体吐出口51ごとに200[shot]とする。
【0100】
各液体吐出口51の予備吐出数の調整は、図1のプリント制御部150が、ヘッド駆動部154を用いて行う。
【0101】
予備吐出数が少ないとインクの滲み出し量が少なくなる理由は、液体吐出口51内のインクが増粘するためと考えられる。
【0102】
第4に、接触角、すなわち清掃部材66の表面上に小さなインク滴を乗せた状態における清掃部材66の表面とインクの表面とがなす角度(清掃部材66のインクに対する表面性を示す)を切り換えることにより、インクの滲み出し量を調整する態様がある。
【0103】
例えば、接触角を20〜60[度]の範囲内で変化させると、接触角が小さいほど(下限値の20[度]に近いほど)インクの滲み出し量が少なくなり、接触角が大きいほど(上限値の60[度]に近いほど)インクの滲み出し量が多くなる。
【0104】
図10(A)は、第4の態様に適した画像形成装置100を示す要部構成図である。図10(A)の画像形成装置100は、図10(B)および図10(C)に示す清掃部材600を備える。図10(B)は清掃部材660の摺動方向Mに沿った側面図であり、図10(C)は清掃部材660の清掃方向Mと直交する方向に沿った平面図である。図10(B)および(C)において、清掃部材660は、ヘッド50の液体吐出面50aのうちで摺動開始領域501を摺動する高接触角部材661と、インクとの接触角が高接触角部材661よりも小さく、ヘッド50の液体吐出面50aのうちで摺動終了領域503を含む摺動開始領域501以外の領域を摺動する低接角触部材662とを有する。具体的には、清掃部材660の先端部66bに、高接触角に表面処理したエリア(高接触角部材661)と、高接触角部材661よりも低い接触角に表面処理したエリア(低接触角部材662)を持つ。また、図10(A)の画像形成装置100は、清掃部材660をヘッド50の液体吐出面50aに押し当てる圧力(押し圧)を変更する清掃部材押し圧変更部168を備える。他の構成要素については、図4に示す画像形成装置10の構成要素と同じであり既に説明したので、ここでは説明を省略する。
【0105】
清掃開始前、具体的には第1の摺動処理(湿潤化摺動処理)の前に、圧力調整部162(圧力計422、大気連通口423、大気開放弁424および圧力調整ポンプ425)により、サブタンク42の内部圧力を正圧にする。すなわち、ヘッド50の背圧を正圧にする。そうすると、ヘッド50の液体吐出口のメニスカスは、凸形状となる。この状態で第1の摺動処理(湿潤化摺動処理)を開始する。液体吐出面50aの摺動開始領域501は、掃部材押し圧変更部170により設定した弱い押し圧で清掃部材660が摺動する。そうすると、図10(D)に示すように、清掃部材660の先端部の高接触角部材661が液体吐出面50a上を摺動して、ヘッド50の液体吐出口から滲み出したインクによって液体吐出面50aが湿潤になる。
【0106】
清掃部材66が液体吐出面50aの摺動開始領域501を過ぎた位置に来たとき、掃部材押し圧変更部170により清掃部材66の押し圧を強くする。このとき、図10(E)に示すように、清掃部材660の先端部の低接触角部材662が液体吐出面50a上を摺動する。そうすると、液体吐出面50aに付着するインク量は少なくなる。
【0107】
第1の摺動処理(湿潤化摺動処理)が終わったとき、圧力調整部162によりサブタンク42内の圧力を負圧にする。すなわち、ヘッド50の背圧を負圧にする。そして、第2の摺動処理(払拭摺動処理)を行う。このとき、掃部材押し圧変更部170により設定した弱い押し圧で清掃部材660の高接触エリア661を液体吐出面50aに押し当てる。このとき、図10(D)に示すように、清掃部材660の先端部の高接触角部材661が液体吐出面50a上を摺動して液体吐出面50aのインク等を払拭する。このとき、メニスカス振動波形のヘッド50への印加は停止した状態としておき、インクを液体吐出面50aに滲み出させないようにする。
【0108】
接触角が大きいほどインクの滲み出し量が多くなる理由は、図6(B)及び(C)に示す状態の時に、液体吐出面50aとブレード66aとの間に形成されるメニスカスの盛り上がりの大きさによりインクの滲み出し量が決まり、接触角が大きいほどメニスカスの盛り上がり形状も大きくなるためと考えられる。
【0109】
第5に、ウエイトタイムを調整することにより、インクの滲み出し量を調整する態様がある。ここで、ウエイトタイムは、湿潤化摺動処理(第1の摺動処理)の終了からメニスカス微振動停止までの待機時間である。
【0110】
例えば、ウエイトタイムを0〜60[sec] の範囲内で変化させると、ウエイトタイムが短いほど(下限値の0[sec]に近いほど)インクの滲み出し量が少なくなり、ウエイトタイムが長いほど(上限値の60[sec]に近いほど)インクの滲み出し量が多くなる。
【0111】
ウエイトタイムの調整は、図1のプリント制御部150が、ヘッド駆動部154およびタイマ153を用いて行う。
【0112】
特に、不吐出検出と組み合わせて、不吐出口が多いときは、ウエイトタイムを長くすると有効である。ウエイトタイムを長くすることで、液体吐出口51内部の増粘したインクの排出と液体吐出面についたインクの固形分の溶解が可能となる。また、液体吐出面の汚れがひどいとき、および、吐出方向性不良が多いときには、ウエイトタイムを長くすると有効である。
【0113】
[清掃処理]
図11は、摺動速度を変化させることよりインク滲み出し量を調整する第1の態様における液体吐出面の清掃処理の一例の流れを示すフローチャートである。
【0114】
図11において、所定の事前準備を行う(S2)。ここでは、図4のインク残量センサ421によって検知されたサブタンク42内のインク残量と予め決められた規定値とを比較し、インク残量が規定値以下のときには、インクの補給を行う。インクの補給は、図4の液体受け64と対向するメンテナンス位置にヘッド50を移動させて、液体受け64でヘッド50の液体吐出面50aを封止し、サブタンク42の大気開放弁424を開放してサブタンク42内部を大気と連通させ、その後、液体供給弁62が開かれている状態で液体供給ポンプ61を駆動して行う。これにより後述の湿潤化摺動処理(第1の摺動処理)においてインクが足りなくなることを防止する。
【0115】
次に、清掃前の予備吐出(パージ)を行う(S4)。パージは、ヘッド50が液体受け64と対向するメンテナンス位置にない場合には、ヘッド50をメンテナンス位置へ移動させた後に行う。ヘッド駆動部154からヘッド50の図3に示す各圧電素子58へパージ用の駆動信号を与えることによって、各液体吐出口51の増粘したメニスカス表面のインクをヘッド50外に出す。
【0116】
次に、図4の液体供給弁62を閉じる(S6)。これにより、インクタンク60とサブタンク42間を遮断する。
【0117】
次に、ヘッド50の背圧を正圧に設定する(S8)。ここでは、図4の圧力計422によって圧力を計測しつつ、サブタンク42を加圧する方向に圧力調整ポンプ425を回転駆動することにより、ヘッド50の背圧を目的の範囲内の正圧に設定する。このようにヘッド50の背圧を正圧に設定することで、後述の湿潤化摺動処理で液体吐出口51から滲み出たインクが液体吐出口51の内部に戻ることを抑える。ここでは、30mmH2Oとした。
【0118】
次に、メニスカス微振動を開始する(S10)。ここでは、ヘッド駆動部154からヘッド50の図3に示す各圧電素子58にメニスカス微振動波形を印加して、ヘッド50の液体吐出口51のメニスカスを微振動させる。メニスカス微振動波形は全液体吐出口51から吐出しない波形を選択する必要がある。このようなメニスカス微振動に因り、インクの滲みだしを促進させる効果がある
次に、図12(A)に示すように、液体吐出面50a上で清掃部材66の第1の摺動を開始する(S12)。
【0119】
背圧設定(S8)とメニスカス微振動(S10)により、凸形状且つ微振動しているメニスカスに清掃部材66が接触して、メニスカスが壊れ、インクが滲みだし液体吐出面50aに広がる。インクの滲みだし量は、清掃部材66の摺動が遅いほど、また清掃部材66のブレード66aの接触角が大きいほど、多くなる。
【0120】
清掃部材66が液体吐出面50aの摺動開始領域501を摺動しているか否かを判定し(S14)、清掃部材66が摺動開始領域501以外の領域を摺動していると判定したときには、清掃部材移動部166によって摺動する清掃部材66の摺動速度を変更し、図12(B)に示すように清掃部材66の摺動を続ける(S16)。すなわち、摺動速度を変化させることにより、摺動開始領域における液体吐出口51からのインク滲み出し量よりも摺動開始領域以外の領域における液体吐出口51からのインク滲み出し量を減少させた。例えば、摺動開始領域の摺動速度は20mm/sec、それ以外の領域を80mm/secとした。
【0121】
所定時間だけウエイトし(S18)、メニスカス微振動を終了する(S20)。すなわち、図1のタイマ153を用いて予め決められたウエイトタイムだけ待機した後、図1のヘッド駆動部154からヘッド50の圧電素子58に対して与えていたメニスカス微振動波形の付与を停止する。図12(C)に示すように、清掃部材66は摺動開始位置の近傍まで戻す。
【0122】
なお、ウエイトタイムを切り換えることでインク滲みだし量を調整できる。ウエイトタイムを長くするとインクの滲みだし量は増加する。
【0123】
メニスカス微振動を終了することにより、インクの滲み出しを抑える。ただし、メニスカス微振動を停止した後もヘッド50の背圧は正圧のまま維持されているため、若干のインクが滲み出す。
【0124】
次に、図12(D)に示すように、清掃部材66を液体吐出面50a上で摺動させる払拭を行う(S22)。これにより、ヘッド50の液体吐出面50aに付着していた付着物が溶解しているインクやごみを除去できる。ヘッド50の液体吐出面50aは湿潤化(S12〜14)により十分に濡れているため、清掃部材66により液体吐出面50a(例えば撥液膜)を傷つけることもない。
【0125】
次に、図12(E)に示すように、圧力計422によってサブタンク42の内圧を計測しながら、圧力調整ポンプ425を逆回転駆動して、ヘッド50の背圧を吐出待機時と同じ負圧に設定する(S24)。なお、サブタンク42の大気開放弁424を開けて大気解放した後、圧力調整ポンプ425を駆動すると、短時間で所定の背圧に設定することができる。
【0126】
次に、図4の液体供給弁62を開ける(S26)。これにより、サブタンク42をインクタンク60と連通させる。
【0127】
次に、清掃後の空吐出(パージ)を行う(S28)。具体的には、ヘッド50の各液体吐出口51からインクを液体受け64に向けて吐出する。
【0128】
図13は、ヘッド50の背圧を変化させることによりインク滲み出し量を調整する第2の態様における液体吐出面清掃処理の一例の流れを示すフローチャートである。
【0129】
図13において、ステップS2〜S10は図11に示す第1の態様における処理と同じであり、事前準備し(S2)、パージし(S4)、液体供給弁62を閉じ(S6)、ヘッド50の背圧を正圧に設定し(S8)、メニスカス微振動を開始する(S10)。
【0130】
本態様では、図14(A)に示すように、圧力計422でサブタンク42の内圧(すなわちヘッド50の背圧)を計測しながら、圧力調整ポンプ425を駆動することによって、ヘッド50の背圧を摺動開始領域用の圧力に変更する(S11)。次に、図14(B)に示すように液体吐出面50a上で清掃部材66の第1の摺動を開始すると(S12)、清掃部材66が液体吐出面50aの摺動開始領域501を摺動しているか否か判定し(S14)、清掃部材66が摺動開始領域501以外の領域を摺動していると判定したときには、圧力調整部162を用いて、ヘッド50の背圧を変更し、図14(C)に示すように清掃部材66の摺動を続ける(S15)。
【0131】
なお、ステップS11およびS15において、液体吐出面50aの摺動開始領域501を清掃部材66が摺動するときのヘッド50の背圧を、液体吐出面50aの摺動開始領域501以外の領域を清掃部材66が摺動するときのヘッド50の背圧よりも高くする。
【0132】
ステップS18〜S28は図11に示す第1の態様における処理と同じである。所定時間だけウエイトし(S18)、メニスカス微振動を終了する(S20)。なお、図14(D)に示すように、清掃部材66は摺動開始位置の近傍まで戻す。次に、図14(E)に示すように、清掃部材66を液体吐出面50a上で摺動させる払拭を行い(S22)、図14(F)に示すように、ヘッド50の背圧を負圧に設定し(S24)、液体供給弁62を開けて(S26)、パージを行う(S28)。
【0133】
なお、図7を用いて説明した、各種のインク滲み出し量の調整態様は、組み合わせて行ってもよい。例えば、摺動速度およびヘッド50の背圧の両方を調整してもよいし、全ての調整態様を組み合わせてもよい。
【0134】
また、湿潤化摺動処理(第1の摺動処理)と払拭摺動処理(第2の摺動処理)とで、同一の清掃部材66を摺動させる場合を例に説明したが、湿潤化摺動処理と払拭摺動処理とで異なる清掃部材を摺動させるようにしてもよい。
【0135】
また、図9を用いて、一定間隔で、摺動速度が遅い領域501を設けた場合、すなわち清掃部材66の摺動速度を切り換える態様について説明したが、ヘッド50の液体吐出面50aの特定場所でヘッド50の液体吐出口51からの滲み出し液体量を変える態様は、摺動速度(清掃部材66とヘッド50との相対速度である)を切り換える態様に特に限定されない。具体的には、図7を用いて既に説明したように、ヘッド50の内部の圧力(背圧)を切り換える態様、予備吐出数を切り換える態様、接触角を切り換える態様などが挙げられる。
【0136】
また、ヘッド50の液体吐出面50aの特定場所で滲み出し液体量の切り換えを行うには、既に説明したように、図1のプリント制御部150がタイマ153を用いて摺動開始時点からの経過時間を計時した時間を位置に変換して行う態様のほか、清掃部材66の位置を検知する手段(図示省略)を設けて検知した位置に基づいて行う態様などが挙げられる。
【0137】
また、ヘッド50の液体吐出面50aの特定場所で滲み出し液体量の切り換えを行う態様を説明したが、液体吐出面50a(ノズル51の配置面である)の全領域で同一の滲み出し条件を用いてもよい。すなわち、液体吐出面50aの全領域で、清掃部材66の摺動速度、予備吐出数、接触角などの滲み出し条件を同一にする。
【0138】
このように液体吐出面50aの全領域で同一の滲み出し条件を用いた場合には、画像形成装置10のヘッド50による液体吐出に関する状態に応じて、液体吐出面50aの全領域で液体の滲み出し量を切り換えると、液体吐出面50aの清掃性の向上につながる。例えば、被吐出媒体16の通紙頻度(被吐出媒体16が液体吐出面50aに対して通過する頻度である)が所定値を超えたとき、ヘッド50を非吐出状態のまま所定期間を超えて放置したとき、ヘッド50の吐出異常が検出されたとき(ノズルチェックパターンによるユーザ判断を含む)、被吐出媒体16のジャムが回復したとき、画像形成装置10の電源オン時、などの所定の状態で液体の滲み出し量を切り換える。具体的には、プリント制御部150がヘッド50の液体吐出口51からの滲み出し液体量を通常よりも増やすか否かを判定し、通紙頻度、長期間放置、吐出異常、ジャム回復、電源オンなどの直後に行う第1の摺動(湿潤化摺動)における液体の滲み出し量を通常よりも増やす切り換えを行う。
【0139】
以上、本発明の実施形態について、ヘッド50から吐出する液体がインクである場合を例について説明したが、インク以外の何らかの処理液や、他の産業用の液体を吐出する場合にも、本発明を適用できる。
【0140】
また、圧電素子を圧力発生手段として用いた場合を例に説明したが、例えばヒータなどの他の圧力発生手段を用いる場合にも本発明を適用できる。
【0141】
本発明は、本明細書において説明した例や図面に図示された例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の設計変更や改良を行ってよいことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明に係る液体吐出装置の一例としての画像形成装置の全体構成を示すブロック図
【図2】ヘッドの一例の全体構成を示す平面透視図
【図3】図2の3−3線に沿ったヘッドの断面図
【図4】画像形成装置の要部を示す構成図
【図5】(A)は吐出待機時のメニスカスの様子を示す模式図、(B)は加圧及びメニスカス微振動開始直後のメニスカスの様子を示す模式図、(C)は湿潤化直後のメニスカスの様子を示す模式図
【図6】湿潤化摺動の説明に用いる模式図
【図7】インクの滲み出し量を調整する各種の態様の一覧を示す図
【図8】インクの滲み出し量調整の一例の説明に用いる説明図
【図9】インクの滲み出し量調整の他の例の説明に用いる説明図
【図10】清掃部材とインクとの接触角によりインクの滲み出し量を調整する態様の一例を示す模式図
【図11】摺動速度によりインクの滲み出し量を調整する態様における液体吐出面の清掃処理の一例の流れを示すフローチャート
【図12】図11に示す液体吐出面の清掃処理の説明に用いる説明図
【図13】ヘッドの背圧によりインクの滲み出し量を調整する態様における液体吐出面の清掃処理の一例の流れを示すフローチャート
【図14】図13に示す液体吐出面の清掃処理の説明に用いる説明図
【符号の説明】
【0143】
42…サブタンク、50…ヘッド(液体吐出ヘッド)、50a…ヘッドの液体吐出面、51…ヘッドの液体吐出口、51a…液体吐出口の周縁、52…ヘッドの圧力室、58…ヘッドの圧電素子、60…インクタンク、61…液体供給ポンプ、62…液体供給弁、64…液体受け、66…清掃部材、66a…清掃部材のブレード、81…メニスカス、150…プリント制御部(制御手段)、152…メモリ、153…タイマ、154…ヘッド駆動部、160…給液部、162…圧力調整部、164…液体受け移動部、166…清掃部材移動部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数の液体吐出口が配置された液体吐出面を有する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッド内の圧力を調整する圧力調整手段と、
前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出口から液体を吐出させる液体吐出駆動波形、および、前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出口から液体が吐出しない程度に該液体吐出口のメニスカスを微振動させるメニスカス微振動波形を選択的に前記液体吐出ヘッドに対して与えるヘッド駆動手段と、
前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面上を摺動する清掃部材と、
前記清掃部材を前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面上で摺動させる第1の摺動および該第1の摺動に続き前記清掃部材を前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面上で摺動させる第2の摺動を制御する制御手段であって、前記第1の摺動は、前記圧力調整手段によって前記液体吐出ヘッド内を加圧して前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出口のメニスカスを凸形状にするとともに、前記ヘッド駆動手段によって前記メニスカス微振動波形を前記液体吐出ヘッドに対して付与した状態で行って、前記液体吐出口から滲み出させた液体で前記液体吐出面を湿潤化する一方で、前記第2の摺動は、前記液体吐出ヘッドに対する前記メニスカス微振動波形の付与を停止した状態で行って、前記液体吐出面を払拭する制御手段と、
を備えたことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1の摺動の際に、前記圧力調整手段を用いて、前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面のうちで特定領域を前記清掃部材が摺動するときの前記液体吐出ヘッド内の圧力を、前記液体吐出ヘッドの他の領域を前記清掃部材が摺動するときの前記液体吐出ヘッド内の圧力よりも、高くすることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1の摺動の際に、前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面のうちで特定領域を摺動するときの前記清掃部材の前記液体吐出ヘッドに対する速度を、前記液体吐出ヘッドの他の領域を摺動するときの前記清掃部材の前記液体吐出ヘッドに対する速度よりも、遅くすることを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記ヘッド駆動手段を用いて前記第1の摺動よりも前に前記液体吐出ヘッドの各液体吐出口から液体を予備吐出させ、前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面のうちで特定領域内の各液体吐出口の予備吐出数を、前記液体吐出ヘッドの他の領域内の各液体吐出口の予備吐出数よりも、多くすることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面のうちで特定領域の前記清掃部材と前記液体吐出面との接触角よりも、前記液体吐出ヘッドの他の領域の前記清掃部材と前記液体吐出面との接触角が、小さいことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記液体吐出面の前記特定領域は、前記清掃部材が摺動を開始する摺動開始領域であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
液体を吐出する複数の液体吐出口が配置された液体吐出面を有する液体吐出ヘッドの前記液体吐出面を、該液体吐出面上を摺動する清掃部材を用いて清掃する液体吐出面の清掃方法において、
前記液体吐出ヘッド内の圧力を調整する圧力調整手段を用いて前記液体吐出ヘッド内を加圧して前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出口のメニスカスを凸形状にするとともに、前記液体吐出ヘッドを駆動するヘッド駆動手段を用いて前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出口から液体が吐出しない程度のメニスカス微振動波形を前記液体吐出ヘッドに対して付与した状態で、前記清掃部材を前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面上で摺動させて、前記液体吐出口から滲み出させた液体で前記液体吐出面を湿潤化する第1の摺動ステップと、
前記液体吐出ヘッドに対する前記メニスカス微振動波形の付与を停止した状態で、前記清掃部材を前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面上で摺動させて、前記液体吐出面を払拭する第2の摺動ステップと、
を含むことを特徴とする液体吐出面の清掃方法。
【請求項1】
液体を吐出する複数の液体吐出口が配置された液体吐出面を有する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッド内の圧力を調整する圧力調整手段と、
前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出口から液体を吐出させる液体吐出駆動波形、および、前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出口から液体が吐出しない程度に該液体吐出口のメニスカスを微振動させるメニスカス微振動波形を選択的に前記液体吐出ヘッドに対して与えるヘッド駆動手段と、
前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面上を摺動する清掃部材と、
前記清掃部材を前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面上で摺動させる第1の摺動および該第1の摺動に続き前記清掃部材を前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面上で摺動させる第2の摺動を制御する制御手段であって、前記第1の摺動は、前記圧力調整手段によって前記液体吐出ヘッド内を加圧して前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出口のメニスカスを凸形状にするとともに、前記ヘッド駆動手段によって前記メニスカス微振動波形を前記液体吐出ヘッドに対して付与した状態で行って、前記液体吐出口から滲み出させた液体で前記液体吐出面を湿潤化する一方で、前記第2の摺動は、前記液体吐出ヘッドに対する前記メニスカス微振動波形の付与を停止した状態で行って、前記液体吐出面を払拭する制御手段と、
を備えたことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1の摺動の際に、前記圧力調整手段を用いて、前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面のうちで特定領域を前記清掃部材が摺動するときの前記液体吐出ヘッド内の圧力を、前記液体吐出ヘッドの他の領域を前記清掃部材が摺動するときの前記液体吐出ヘッド内の圧力よりも、高くすることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1の摺動の際に、前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面のうちで特定領域を摺動するときの前記清掃部材の前記液体吐出ヘッドに対する速度を、前記液体吐出ヘッドの他の領域を摺動するときの前記清掃部材の前記液体吐出ヘッドに対する速度よりも、遅くすることを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記ヘッド駆動手段を用いて前記第1の摺動よりも前に前記液体吐出ヘッドの各液体吐出口から液体を予備吐出させ、前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面のうちで特定領域内の各液体吐出口の予備吐出数を、前記液体吐出ヘッドの他の領域内の各液体吐出口の予備吐出数よりも、多くすることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面のうちで特定領域の前記清掃部材と前記液体吐出面との接触角よりも、前記液体吐出ヘッドの他の領域の前記清掃部材と前記液体吐出面との接触角が、小さいことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記液体吐出面の前記特定領域は、前記清掃部材が摺動を開始する摺動開始領域であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
液体を吐出する複数の液体吐出口が配置された液体吐出面を有する液体吐出ヘッドの前記液体吐出面を、該液体吐出面上を摺動する清掃部材を用いて清掃する液体吐出面の清掃方法において、
前記液体吐出ヘッド内の圧力を調整する圧力調整手段を用いて前記液体吐出ヘッド内を加圧して前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出口のメニスカスを凸形状にするとともに、前記液体吐出ヘッドを駆動するヘッド駆動手段を用いて前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出口から液体が吐出しない程度のメニスカス微振動波形を前記液体吐出ヘッドに対して付与した状態で、前記清掃部材を前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面上で摺動させて、前記液体吐出口から滲み出させた液体で前記液体吐出面を湿潤化する第1の摺動ステップと、
前記液体吐出ヘッドに対する前記メニスカス微振動波形の付与を停止した状態で、前記清掃部材を前記液体吐出ヘッドの前記液体吐出面上で摺動させて、前記液体吐出面を払拭する第2の摺動ステップと、
を含むことを特徴とする液体吐出面の清掃方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−49535(P2008−49535A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−226643(P2006−226643)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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