説明

液体吐出装置

【課題】 より簡便且つ安価な構造を有し、なお且つ充分なバックサクション量を得ることができるバックサクション機構を備えた液体吐出装置を提供する。
【解決手段】 容器体2の装着位置から上方に突出して設けられると共に、上方に付勢された状態で上下方向に移動可能に支持されたヘッド部6と、このヘッド部6から延長して設けられると共に、先端部から液体を吐出させるノズル部7とを有するノズルヘッド4と、このノズルヘッド4を付勢力に抗して押し下げることにより、容器体2に収容された液体をノズル部の先端部へと圧送するポンプ機構5と、押し下げられたノズルヘッド4が元の位置へと戻るとき、ノズル部7内に溜まった液体を吸引するバックサクション機構30とを備え、このバックサクション機構30をノズルヘッド4側に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器体に収容された液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ノズルが設けられたノズルヘッドと、このノズルヘッドを押し下げることによって容器体に収容された液体をノズルの先端部から吐出させるポンプ機構とを備えた液体吐出装置がある。この液体吐出装置は、ポンプディスペンサーと呼ばれるものであり、例えばシャンプーやリンス、液体石鹸などの液体が収容された容器体の口頸部に装着されて使用される。
【0003】
ところで、このような液体吐出装置を備える液体吐出容器(ポンプ付き容器)では、ノズル内に残った液体が先端部に溜まり、使用後にノズルの先端部から自重により垂れ落ちる、いわゆるアフタードローにより周囲を汚してしまうといった問題があった。また、ノズル内に残った液体は、長時間放置されたまま乾燥して固化することで、ノズルの先端部に固形物を形成することがある。このノズルの先端部に形成された固形物は、液体が吐出される吐出口を狭めるだけでなく、吐出口を詰まらせることもある。さらに、ノズルヘッドを押し下げた際には、ノズルから押し出されようとする液体によって固形物と吐出口との間が不規則に破断するため、液体をノズルの先端部から在らぬ方向へと勢いよく吐出させてしまう吐出方向異常や吐出圧異常といった問題も引き起こすことがある。
【0004】
そこで、従来の液体吐出装置では、ノズル内に残った液体が先端部に溜まるのを防ぐため、押し下げられたノズルヘッドが元の位置へと戻るとき、ノズルの先端部に吸引力を発生させるバックサクション機構を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1〜3を参照。)。しかしながら、従来のバックサクション機構を備える液体吐出装置は、何れもバックサクション機構をポンプ機構側に配置した構造又はポンプ機構自体にバックサクション機能を持たせた構造のため、構造が複雑となり、部品点数も多くなってしまうといった問題があった。また、バックサクション機構をポンプ機構側に配置した場合、構造上バックサクション量を多く取ることができず、ノズル内に溜まった液体を充分に吸引することができないといった問題も生じてしまう。
【0005】
なお、本発明に関連する公知文献としては、例えば下記特許文献4,5がある。
特許文献4には、ポンプ室に外部からの押圧により室内を小容化させる弾性壁を設け、この弾性壁の押圧により液体を吐出する構成が記載されている。しかしながら、この特許文献4に記載の発明は、容器内の液体をノズル側へと圧送するためのポンプ機構をノズルヘッド側に配置した構造であり、本発明のようにノズル内に溜まった液体を吸引するバックサクション機構を備えた構造とはなっていない。すなわち、特許文献4に記載の発明では、弾性壁を押圧することによって、ポンプ室内の液体が加圧されて吐出弁が開き、液体がノズルから吐出される一方、押圧を解除することによって、吐出弁が閉じると共にポンプ室内に発生した負圧により吸込み弁が開き、容器内の液体がポンプ室内へと吸い上げられる。したがって、このようなポンプ機構をノズルヘッド側に配置した構造の場合、ヘッド部が複雑な構造となり、ヘッド部の大型化を招くことになる。
一方、特許文献5には、ノズル部の排出口を開閉するノズル開閉手段が、本体部(ヘッド部)の上側を覆う弾性体からなる操作部と、該操作部の外面からノズル部の排出口まで延びて該排出口を外部で閉塞する開口部とを備え、操作部を弾性変形させることにより、開閉部を上げて排出口から離脱させる構成が記載されている。しかしながら、この特許文献5に記載の発明では、ノズル部の排出口を開閉するノズル開閉手段をヘッド部に設けることで、ヘッド部が複雑な構造となり、ヘッド部の大型化を招くことになる。
【特許文献1】特許第2697609号公報
【特許文献2】特開平8−337263号公報
【特許文献3】特開平9−290185号公報
【特許文献4】特開2004−210328号公報
【特許文献5】特許平10−258866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、より簡便且つ安価な構造を有し、なお且つ充分なバックサクション量を得ることができるバックサクション機構を備えた液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、液体を収容する容器体に装着されて、この容器体に収容された液体を吐出する液体吐出装置であって、容器体の装着位置から上方に突出して設けられると共に、上方に付勢された状態で上下方向に移動可能に支持されたヘッド部と、ヘッド部から延長して設けられると共に、先端部から液体を吐出させるノズル部とを有するノズルヘッドと、ノズルヘッドを付勢力に抗して押し下げることにより、容器体に収容された液体をノズル部の先端部へと圧送するポンプ機構と、押し下げられたノズルヘッドが元の位置へと戻るとき、ノズル部内に溜まった液体を吸引するバックサクション機構とを備え、バックサクション機構がノズルヘッド側に配置されていることを特徴とする液体吐出装置である。
また、請求項2に記載の発明は、バックサクション機構が、ヘッド部の上面部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置である。
また、請求項3に記載の発明は、バックサクション機構が、吸引された液体を収容する液体収容部と、液体収容部の容積を変動させる容積変動部と、液体収容部とノズル部との間を連通させる連通部とを有し、ヘッド部を押圧しながらノズルヘッドを押し下げたとき、容積変動部が液体収容部の容積を縮小させる一方、ヘッド部に対する押圧を解除して、押し下げられたノズルヘッドが元の位置へと戻るとき、液体収容部の容積が復元するのに伴って液体収容部内に負圧が発生し、このとき連通部を通してノズル部に溜まった液体を液体収容部側へと引き込むことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置である。
また、請求項4に記載の発明は、容積変動部が、液体収納部の少なくとも一部を構成する弾性部材を有し、この弾性部材の弾性変形により液体収容部の容積を変動させることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置である。
また、請求項5に記載の発明は、弾性部材が、ヘッド部の上面部を覆い且つ押圧操作可能に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置である。
また、請求項6に記載の発明は、容積変動部が、ヘッド部の上面部に押圧操作可能に設けられた操作部材と、操作部材を押圧する方向とは反対方向に付勢する弾性部材とを有し、操作部材を押圧する又は操作部材に対する押圧を解除することによって、液体収容部の容積を変動させることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置である。
また、請求項7に記載の発明は、容積変動部が、ヘッド部の上面部に押圧操作可能に設けられた操作部と、操作部と一体に形成されて操作部を押圧する方向とは反対方向に付勢する弾性変形部とを有し、操作部を押圧する又は操作部に対する押圧を解除することによって、液体収容部の容積を変動させることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置である。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明に係る液体吐出装置では、ノズル部内に溜まった液体を吸引するバックサクション機構をノズルヘッド側に配置することで、このバックサクション機構をより簡便且つ安価な構造とすることができ、なお且つ充分なバックサクション量を得ることができる。したがって、この液体吐出装置では、使用後にノズル部内に残った液体がノズル部の先端部から垂れ落ちたり、ノズル部内に残った液体がノズル部の先端部に溜まって固形物となったりするのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を適用した液体吐出装置について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明を適用した液体吐出装置は、例えば図1に示すポンプディスペンサー1である。このポンプディスペンサー1は、液体を収容する容器体2に装着されて、この容器体2に収容された液体を吐出するものであり、容器体2の口頸部2aに螺合により装着された装着キャップ3を介して容器体2に取り付けられている。そして、このようなポンプディスペンサー1が装着された容器体2によって、いわゆる縦型手動式のポンプ付き容器(液体吐出容器)が構成されている。
【0010】
なお、容器体2に収容される液体としては、例えばシャンプーや、リンス、トリートメント、液体石鹸、化粧液、洗浄剤、液体洗剤、柔軟仕上げ剤、液体歯磨きなどを挙げることができる。また、粘性を持った液体であれば、これらの液体に特に限定されるものではない。さらに、本発明は、これら液中に含まれる固形成分(液中の組成成分のうち水分を除いた成分)が全重量の10%以上である場合に、後述するノズル部7の先端部に固形物が発生しやすくなるため、特に有効である。
【0011】
ポンプディスペンサー1は、装着キャップ3から上方に突出して設けられたノズルヘッド4と、装着キャップ3の内側から容器体2の内部に突出して設けられたポンプ機構5とを備えている。このうち、ノズルヘッド4は、押圧操作されるヘッド部6と、このヘッド部6から延長して設けられたノズル部7とを有している。ヘッド部6は、後述するステム10の上端部に取り付けられることによって、上方に付勢された状態で上下方向に移動可能に支持されている。また、ヘッド部6内には、ステム10からノズル部7へと液体を導く流路8が設けられている。ノズル部7は、ヘッド部6の側面部からほぼ水平方向に延長され、その先端部が下方に向かって僅かに屈曲した細長形状を有している。また、ノズル部7は、内部に残った液体が先端部に溜まって固形物となるのを防ぐため、先端部が基端部よりも上方に位置するような上向き形状としてもよい。
【0012】
ポンプ機構5は、装着キャップ3から容器体2の内部に垂下されたシリンダ9と、このシリンダ9内に挿入されたステム10と、このステム10の下端部に取り付けられた有底筒状のピストンヘッド11と、このピストンヘッド11の外周部に取り付けられたガスケット12と、シリンダ9内に圧縮された状態で配置された圧縮コイルバネ13とを有している。
【0013】
シリンダ9は、容器体2から吸引された液体が充填されるポンプ室Pを形成するものであり、その下端部には、容器体2に収容された液体を吸引する吸入口14と、この吸入口14を開閉する球状の吸入弁15とが設けられている。また、シリンダ9の下端部からは、容器体2に収容された液体を吸い込む吸引パイプ16が容器体2のほぼ底面部まで垂下されている。一方、シリンダ9の上部側の側面部には、容器体2の内部に空気を導入するための通気孔17が設けられている。
【0014】
ステム10は、装着キャップ3の上面部に設けられた支持筒18の貫通孔18aに挿通されて上下方向に移動可能に支持されている。ステム10の下端部には、貫通孔18aに挿通される部分よりも径が拡大された拡径部10aが設けられている。そして、圧縮コイルバネ13により上方に付勢されたステム10は、この拡径部10aが支持筒18の下端部と当接されることで、支持筒18からの抜け止めがなされている。一方、ステム10の上端部には、上記ヘッド部6が取り付けられている。これにより、ステム10は、上記ヘッド部6の流路8を介してノズル部7と連通されている。
【0015】
ピストンヘッド11は、ステム10の拡径部10aに差し込まれることによって、このステム10と連続する流路を形成している。また、ピストンヘッド11の下部側の側面部には、シリンダ8内の液体を排出する排出口19が設けられている。
【0016】
ガスケット12は、シリンダ9からの液漏れを防ぐため、このシリンダ9の内面と摺接可能に設けられている。また、ガスケット12は、ピストンヘッド11の排出口19を開閉するように、ピストンヘッド11の外周部に対して上下方向にスライド可能に取り付けられている。具体的に、このガスケット12は、ステム10の下端部に設けられた上側ストッパー20aと、ピストンヘッド11の下端部に設けられた下側ストッパー20bとの間で上下方向にスライド可能に設けられている。なお、ガスケット12は、ノズルヘッド5を押し下げる前の状態においては、ピストンヘッド11の下側ストッパー20bに当接されて、排出口19を閉塞した状態となっている。
【0017】
圧縮コイルバネ13は、ピストンヘッド11の底部に設けられた上側バネ受部21aと、シリンダ9内に設けられた下側バネ受部21bとの間に圧縮された状態で配置されている。これにより、ノズルヘッド4は、この圧縮コイルバネ13の付勢力により上方に付勢された状態で上下方向に移動可能となっている。なお、下側バネ受部21bは、吸入弁15が吸入口14を開放した際に、この吸入弁15の上方への移動を規制するストッパーとしての役割も有している。また、このとき液体は、下側バネ受部21bに当接された吸入弁15との隙間を通ってシリンダ9内に流れ込むことになる。
【0018】
ところで、このポンプディスペンサー1は、ノズル部7内に溜まった液体を吸引するバックサクション機構30をノズルヘッド4側に配置した構成となっている。具体的に、このバックサクション機構30は、ヘッド部6の上面部を覆い且つ押圧操作可能に設けられた弾性部材31を有している。
【0019】
弾性部材31は、例えばゴムや、エラストマー、ポリオレフィン、シリコン樹脂等の弾性変形可能な樹脂からなる。この弾性部材31は、略円形ドーム状に形成されて、その周縁部がヘッド部6の上面部に接着等により取り付けられている。これにより、弾性部材31は、ヘッド部6の上面部を構成する隔壁6aと共に、ノズル部7より吸引された液体を収容する空間である液体収容部Sを構成している。また、弾性部材31は、その弾性変形により液体収容部Sの容積を変動させる容積変動部を構成している。ヘッド部6の隔壁6aには、液体収容部Sと流路8との間を連通させる連通孔32が設けられている。すなわち、連通孔32及び流路8は、液体収容部Sとノズル部7との間を連通させる連通部を構成している。なお、液体収容部Sの容積は、ノズル部7の容積に対して同等かそれ以上であることが好ましい。また、連通孔32の径は、液体収容部Sに収容された液体が表面張力等により漏れ出ない程度の大きさとすることが好ましい。
【0020】
以上のようなポンプディスペンサー1を備えるポンプ付き容器では、先ず、図2に示すノズルヘッド4が上方に突出した状態から、図3に示すように、ヘッド部6を押圧することによって、弾性部材31の弾性変形により液体収容部Sの容積が縮小した状態となる。さらに、この状態から、図4に示すように、ノズルヘッド4を圧縮コイルバネ9の付勢に抗して押し下げることによって、ポンプ機構5が容器体2に収容された液体Lをノズル部7の先端部へと圧送する。
【0021】
具体的に、このポンプ機構5では、ノズルヘッド4と共に、ステム10、ピストンヘッド11及びガスケット12が下降することによって、ポンプ室Pが圧縮されてこのポンプ室P内に充填された液体Lが加圧された状態となる。このとき、ガスケット12は、ステム10の上側ストッパー20aに当接された状態となり、ピストンヘッド11の排出口19を開放する。これにより、加圧された液体Lがノズル部7の先端部から吐出されることになる。なお、このとき吸入弁15は、ポンプ室P内が加圧されることよって吸入口14を閉塞する。
【0022】
一方、このポンプディスペンサー1では、ヘッド部6に対する押圧を解除して、図5に示す押し下げられたノズルヘッド4が図6に示す元の位置へと戻るとき、このノズルヘッド4と共に、ステム10、ピストンヘッド11及びガスケット12が上昇することによって、ポンプ室Pが拡張される。このとき、ガスケット12は、下側ストッパー20bに当接された状態となり、ピストンヘッド11の排出口19を閉塞する。一方、ポンプ室Pが拡張されると、このポンプ室P内に発生する負圧によって吸入弁15が吸入口14を開放する。これにより、容器体2に収容された液体Lが吸引パイプ16から吸い込まれて、再びポンプ室Pに充填されることになる。なお、このとき容器体2内の液体Lが減少するのに伴って、ステム10と支持筒18の貫通孔18aとの間の隙間からシリンダ9の通気孔17を通って外気が容器体2の内部へと導入されることになる。
【0023】
また、図7に示すように、押し下げられたノズルヘッド4が元の位置へと戻るとき、ヘッド部6に対する押圧が解除されることによって、弾性部材31が弾性復帰する。このとき、液体収容部Sの容積が復元(拡張)するのに伴って、この液体収容部S内に負圧が発生し、ノズル部7に溜まった液体Lが流路8から連通孔32を通って液体収容部Sの内部へと引き込まれる。
【0024】
したがって、このポンプディスペンサー1では、使用後にノズル部7内に残った液体Lがノズル部7の先端部から垂れ落ちたり、ノズル部7内に残った液体Lがノズル部7の先端部に溜まって固形物となったりするのを防ぐことができる。
【0025】
以上のように、このポンプディスペンサー1では、バックサクション機構30をノズルヘッド4側に配置することで、従来のバックサクション機構をポンプ機構側に配置した構造又はポンプ機構自体にバックサクション機能を持たせた構造に比べて、ポンプ機構5及びバックサクション機構30をより簡便且つ安価な構造とすることができる。なお且つ、上述したポンプ室Pの容積に依存することなく、液体収容部Sの容積に応じた充分なバックサクション量を得ることができる。
【0026】
また、本発明を適用した液体吐出装置は、上記ポンプディスペンサー1が備えるバックサクション機構30の構成に必ずしも限定されるものではない。例えば図8乃至図11のようなバックサクション機構40,50,60,70を備えた構成とすることもできる。
【0027】
具体的に、図8に示すバックサクション機構40は、ヘッド部6の上面部を覆い且つ押圧操作可能に設けられた弾性部材41を有している。この弾性部材41は、例えばゴムや、エラストマー、ポリオレフィン、シリコン樹脂等の弾性変形可能な樹脂からなり、キャップ状に形成されて、その周縁部がヘッド部6の上面部に固定具42により固定された状態で取り付けられている。これにより、弾性部材41は、ヘッド部6の上面部を構成する隔壁6aと共に、ノズル部7より吸引された液体を収容する空間である液体収容部Sを構成している。また、弾性部材41は、その弾性変形により液体収容部Sの容積を変動させる容積変動部を構成している。
【0028】
図8に示すバックサクション機構40の場合、ヘッド部6を押圧しながらノズルヘッド4を押し下げたとき、弾性部材41の弾性変形により液体収容部Sの容積を縮小させる。一方、ヘッド部6に対する押圧を解除して、押し下げられたノズルヘッド4が元の位置へと戻るとき、液体収容部Sの容積が復元(拡張)するのに伴って液体収容部S内に負圧が発生し、このとき連通孔32及び流路8を通してノズル部7に溜まった液体を液体収容部S内へと引き込むことができる。これにより、使用後にノズル部7内に残った液体がノズル部7の先端部から垂れ落ちたり、ノズル部7内に残った液体がノズル部7の先端部に溜まって固形物となったりするのを防ぐことができる。
【0029】
一方、図9に示すバックサクション機構50は、ヘッド部6の上面部に押圧操作可能に設けられた操作部材51を有している。この操作部材51は、その上面部分が押圧操作される操作部51aと、その側面部分が操作部51aと一体に形成されて操作部51aを押圧する方向とは反対方向に付勢する蛇腹状の弾性変形部51bとを構成している。そして、この操作部材51は、ヘッド部6の上面部を構成する隔壁6aと共に、ノズル部7より吸引された液体を収容する空間である液体収容部Sを構成している。また、操作部材51は、弾性変形部51bの弾性変形により液体収容部Sの容積を変動させる容積変動部を構成している。
【0030】
図9に示すバックサクション機構50の場合、ヘッド部6を押圧しながらノズルヘッド4を押し下げたとき、操作部51aを押圧することにより液体収容部Sの容積を縮小させる。一方、ヘッド部6に対する押圧を解除して、押し下げられたノズルヘッド4が元の位置へと戻るとき、弾性変形部51bの弾性復帰により液体収容部Sの容積が復元(拡張)するのに伴って液体収容部S内に負圧が発生し、このとき連通孔32及び流路8を通してノズル部7に溜まった液体を液体収容部S内へと引き込むことができる。これにより、使用後にノズル部7内に残った液体がノズル部7の先端部から垂れ落ちたり、ノズル部7内に残った液体がノズル部7の先端部に溜まって固形物となったりするのを防ぐことができる。
【0031】
一方、図10に示すバックサクション機構60は、液体収容部Sの容積を変動させる容積変動部として、ヘッド部6の上面部に押圧操作可能に設けられた操作部材61と、この操作部材61を押圧する方向とは反対方向に付勢する弾性部材である圧縮コイルバネ62とを有している。操作部材61は、ヘッド部6の上面部に設けられた嵌合凹部63に嵌合されて上下方向に移動可能に支持されている。また、操作部材61の下端部には、突起部61aが突出して設けられている。そして、圧縮コイルバネ62により上方に付勢された操作部材61は、嵌合凹部63の内面に設けられたストッパー63aに突起部61aが当接されることで、この嵌合凹部63からの抜け止めがなされている。この操作部材61は、ヘッド部6の上面部を構成する隔壁6a及び嵌合凹部63と共に、ノズル部7より吸引された液体を収容する空間である液体収容部Sを構成している。圧縮コイルバネ62は、この液体収容部S内に圧縮された状態で配置されている。なお、操作部材61を上方に付勢する弾性部材としては、圧縮コイルバネ62に限らず、種々のバネ部材を用いることができる。
【0032】
図10に示すバックサクション機構60の場合、ヘッド部6を押圧しながらノズルヘッド4を押し下げたとき、操作部材61を押圧することにより液体収容部Sの容積を縮小させる。一方、ヘッド部6に対する押圧を解除して、押し下げられたノズルヘッド4が元の位置へと戻るとき、操作部材61が元の位置へと復帰し、液体収容部Sの容積が復元(拡張)するのに伴って液体収容部S内に負圧が発生し、このとき連通孔32及び流路8を通してノズル部7に溜まった液体を液体収容部S内へと引き込むことができる。これにより、使用後にノズル部7内に残った液体がノズル部7の先端部から垂れ落ちたり、ノズル部7内に残った液体がノズル部7の先端部に溜まって固形物となったりするのを防ぐことができる。
【0033】
一方、図11に示すバックサクション機構70は、図1に示すバックサクション機構30において、更にノズル部7の先端部に溜まった液体を液体収容部Sへと引き込む流路71を設けた構成である。この場合、流路7を通してノズル部7の先端部に溜まった液体を液体収容部S内へと効率良く引き込むことができる。
【0034】
なお、本発明を適用した液体吐出装置は、上述したノズル部7内に溜まった液体を吸引するバックサクション機構をヘッド部6の上面部に配置した構成に限らず、場合によってはヘッド部6の下面部側に配置した構成とすることもできる。
また、本発明を適用した液体吐出装置は、上記ポンプ機構5を用いた構成に必ずしも限定されるものではなく、従来から公知のポンプ機構を用いることができ、場合によってはバックサクション機能付きのポンプ機構を用いることができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。
本実施例では、先ず、一般的なポンプディスペンサーと、バックサクション機能付きポンプディスペンサーと、一般的なポンプディスペンサーにバックサクション機構付きノズルヘッドを組み合わせたもの、バックサクション機能付きポンプディスペンサーにバックサクション機構付きノズルヘッドを組み合わせたものを用意し、各ポンプディスペンサーが装着されたポンプ付き容器ついて、内容液を吐出させた際のノズル先端における液残りの状態について調べる吸引性能評価試験を行った。その評価結果を表1に示す。
なお、本試験では、バックサクション機構として、上記図1示すバックサクション機構30と同様のドーム状の弾性部材を用いた。この弾性部材は、ポリエステル系エラストマーからなり、その直径は20mm、その高さは6mm、その平均厚みは0.8mmである。また、内容液として、ライオン社製のキレイキレイボディーソープ(商品名)を用いた。
【0036】
【表1】

【0037】
表1に示す評価結果から、一般的なポンプディスペンサーでは、液の吸引がないことから、ノズル先端からの液だれが確認された。一方、バックサクション機能付きポンプディスペンサーでは、ノズルの途中まで液が吸引されるものの、ノズル先端からの僅かな液だれが確認された。これに対して、一般的なポンプディスペンサーにバックサクション機構付きノズルヘッドを組み合わせたものと、バックサクション機能付きポンプディスペンサーにバックサクション機構付きノズルヘッドを組み合わせたものは、何れもノズルの根元まで液が吸引され、ノズル先端からの液だれは確認されなかった。
【0038】
次に、上記各ポンプディスペンサーが装着されたポンプ付き容器ついて、内容液を繰り返し吐出させた際のノズル先端に発生する目詰まりについて調べる経時吐出性能評価試験を行った。その評価結果を表2に示す。
なお、本試験では、気温25℃、湿度40%の環境下で、1日2回の吐出操作を行いながら、ノズル先端の詰まり具合について調べた。また、内容液として、ライオン社製のキレイキレイボディーソープ(商品名)を用いた。
【0039】
【表2】

【0040】
表2に示す評価結果から、一般的なポンプディスペンサーでは、1週間目にノズル先端の目詰まりが確認された。一方、バックサクション機能付きポンプディスペンサーでは、10日目にノズル先端の目詰まりが確認された。これに対して、一般的なポンプディスペンサーにバックサクション機構付きノズルヘッドを組み合わせたものと、バックサクション機能付きポンプディスペンサーにバックサクション機構付きノズルヘッドを組み合わせたものは、何れも20日が経過してもノズル先端の目詰まりは確認されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、本発明を適用した液体吐出装置の一構成例を示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示す液体吐出装置の動作を説明するための図であり、ノズルヘッドを押し下げる前の状態を示す断面図である。
【図3】図3は、図1に示す液体吐出装置の動作を説明するための図であり、ヘッド部を押圧した状態を示す断面図である。
【図4】図4は、図1に示す液体吐出装置の動作を説明するための図であり、ノズルヘッドを押し下げることにより液体が吐出された状態を示す断面図である。
【図5】図5は、図1に示す液体吐出装置の動作を説明するための図であり、押し下げられたノズルヘッドが上昇する前の状態を示す断面図である。
【図6】図6は、図1に示す液体吐出装置の動作を説明するための図であり、押し下げられたノズルヘッドが元の位置へと戻った状態を示す断面図である。
【図7】図7は、図1に示す液体吐出装置の動作を説明するための図であり、ノズル部に溜まった液体が液体収容部の内部へと引き込まれた状態を示す断面図である。
【図8】図8は、バックサクション機構の別の構成例を示す断面図である。
【図9】図9は、バックサクション機構の別の構成例を示す断面図である。
【図10】図10は、バックサクション機構の別の構成例を示す断面図である。
【図11】図11は、バックサクション機構の別の構成例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1…ポンプディスペンサー(液体吐出装置) 2…容器体 4…ノズルヘッド 5…ポンプ機構 6…ヘッド部 7…ノズル部 8…流路 9…シリンダ 10…ステム 11…ピストンヘッド 12…ガスケット 13…圧縮コイルバネ 30…バックサクション機構 31…弾性部材 32…連通孔 40…バックサクション機構 41…弾性部材 50…バックサクション機構 51…操作部材 51a…操作部 51b…弾性変形部 60…バックサクション機構 61…操作部材 62…圧縮コイルバネ(弾性部材) 70…バックサクション機構 71…流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する容器体に装着されて、この容器体に収容された液体を吐出する液体吐出装置であって、
前記容器体の装着位置から上方に突出して設けられると共に、上方に付勢された状態で上下方向に移動可能に支持されたヘッド部と、前記ヘッド部から延長して設けられると共に、先端部から前記液体を吐出させるノズル部とを有するノズルヘッドと、
前記ノズルヘッドを付勢力に抗して押し下げることにより、前記容器体に収容された液体を前記ノズル部の先端部へと圧送するポンプ機構と、
前記押し下げられたノズルヘッドが元の位置へと戻るとき、前記ノズル部内に溜まった液体を吸引するバックサクション機構とを備え、
前記バックサクション機構が前記ノズルヘッド側に配置されていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記バックサクション機構は、前記ヘッド部の上面部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記バックサクション機構は、前記吸引された液体を収容する液体収容部と、前記液体収容部の容積を変動させる容積変動部と、前記液体収容部と前記ノズル部との間を連通させる連通部とを有し、
前記ヘッド部を押圧しながら前記ノズルヘッドを押し下げたとき、前記容積変動部が前記液体収容部の容積を縮小させる一方、前記ヘッド部に対する押圧を解除して、前記押し下げられたノズルヘッドが元の位置へと戻るとき、前記液体収容部の容積が復元するのに伴って前記液体収容部内に負圧が発生し、このとき前記連通部を通して前記ノズル部に溜まった液体を前記液体収容部側へと引き込むことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記容積変動部は、前記液体収納部の少なくとも一部を構成する弾性部材を有し、この弾性部材の弾性変形により前記液体収容部の容積を変動させることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記弾性部材は、前記ヘッド部の上面部を覆い且つ押圧操作可能に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記容積変動部は、前記ヘッド部の上面部に押圧操作可能に設けられた操作部材と、前記操作部材を押圧する方向とは反対方向に付勢する弾性部材とを有し、
前記操作部材を押圧する又は前記操作部材に対する押圧を解除することによって、前記液体収容部の容積を変動させることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記容積変動部は、前記ヘッド部の上面部に押圧操作可能に設けられた操作部と、前記操作部と一体に形成されて前記操作部を押圧する方向とは反対方向に付勢する弾性変形部とを有し、
前記操作部を押圧する又は前記操作部に対する押圧を解除することによって、前記液体収容部の容積を変動させることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−50343(P2007−50343A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−237281(P2005−237281)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】