説明

液体吐出装置

【課題】簡単な構成で、液体吐出装置の印画時の状態、クリーニング時の状態、及び待機時の状態を切り替えられるようにする。
【解決手段】インク吐出面21に対して水平な方向と垂直な方向との間を回転可能であり、かつ水平な方向に移動可能な印画テーブル40と、インク吐出面21に当接又は離間するように移動可能なヘッドキャップ50と、印画テーブル40とヘッドキャップ50とを連動させる連動手段とを有し、印画テーブル40は、記録用紙11を載置可能なプラテン部と、インク吐出面21をクリーニング可能なゴムブレード41とを備え、ヘッドキャップ50は、印画テーブル40が水平な方向に回転した状態であるときに、インク吐出面21から離間した位置に配置され、垂直な方向に回転し、かつ水平な方向に移動していない状態であるときに、インク吐出面21に当接可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出するためのノズル列が形成された液体吐出ヘッドにおいて、印画時の状態からクリーニング時の状態や待機時の状態に、簡単に切り替えられるようにした液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタ等の液体吐出装置は、液体吐出ヘッドに形成されたノズル列から液体を吐出し、記録用紙に画像等を形成している。そのため、液体吐出ヘッドの液体吐出面(ノズル列の形成部分)が汚れていたり、液体吐出面に液体やゴミ等が付着した状態で画像等を形成すると、印画品質が低下してしまう。特に、フルカラー対応のインクジェットプリンタの場合には、既存のインク(液体)と異なる色のインクがノズルから逆流して入り込むと、既存のインクと混色を生じ、印画の際に混色インクが吐出されて画質が低下する。
【0003】
そこで、印画品質の低下を防止して液体吐出ヘッドの性能を維持するため、目的に応じた様々なヘッドメンテナンスの方法が知られている。例えば、液体吐出ヘッドのインク吐出面(液体吐出面)にやや硬めのゴムブレードを押し当てて摺動させ、インク吐出面をクリーニングする技術がある。このゴムブレード方式は、インク吐出面に付着した汚れ、インク溜まり、増粘又は固化したインク等をふき取って除去するようにしている。そして、このようなワイピングを行うことにより、インク吐出面が清潔な状態に保たれ、インクの吐出性能を安定化させることができる。
【0004】
また、別のヘッドメンテナンス技術として、液体吐出ヘッドのインク吐出面をキャッピングすることにより、汚れの付着や乾燥から保護する技術が知られている。具体的には、非印画時等の待機時において、上面が開口した浅い箱状のヘッドキャップをインク吐出面に当接させることによってインク吐出面を覆う。そのため、ヘッドキャップ内が密閉された状態となり、ほこりや異物からインク吐出面が保護されるとともに、乾燥しにくくなるので、ノズルの目詰まりを防止できる。
【0005】
さらにまた、キャッピングを施した気密状態で、インク吐出面側からポンプによってインクを吸引することにより、液体吐出ヘッド内のゴミや気泡を液体と一緒に強制的に排出させる技術も知られている。このような負圧吸引を行えば、吐出不良の原因となるゴミや気泡が液体吐出ヘッド内から除去され、インクの吐出性能を安定化させることができる。さらに、ヘッドキャップ内の底部に、多孔質体等からなる液体吸収体を設け、この液体吸収体に保湿液(水、インク等)を含浸させて気化させることにより、インク吐出面を湿潤させて乾燥を能動的に防止する技術もある。
【0006】
このように、ヘッドメンテナンス技術として、インク吐出面をワイピングしたりキャッピングしたりする技術が知られている。しかし、ワイピングやキャッピングを行うためには、液体吐出ヘッドのインク吐出面と印画テーブルとの間において、ゴムブレードを平行に移動させたり、ヘッドキャップを昇降させる等の機構が必要となる。また、このような各ヘッドメンテナンス動作が相互に干渉しないように、物理的な配慮をする必要もある。そのため、機構部が複雑化し、コストの増大やインクジェットプリンタの大型化を招く要因となる。
【0007】
そこで、回転可能なプラテンユニットの外周部に、プラテン部、キャップ部、インク吸収部、及びワイパ部を別々に配置するようにした技術が開示されている。この技術は、プラテンユニットを回転又はスライド駆動することにより、印画時の記録用紙の支持動作、クリーニング時のワイピング動作、及び待機時のキャッピング動作を行う。そして、ヘッドメンテナンス機構の占有エリアを少なくし、インクジェットプリンタの小型化を図っている。
【0008】
また、液体吐出ヘッドの下方に回転体を配置し、この回転体に、ゴムブレードやヘッドキャップ等のヘッドメンテナンス部と、記録用紙を裏面から支持するためのリブ状のプラテン部とを設けた技術も開示されている。この技術によれば、回転体を回転させることにより、キャッピング(待機時)、ワイピング(クリーニング時)、プライミング(クリーニング時)、及び印画の4種類の状態を切り替えられる。そのため、ヘッドメンテナンスに要する時間を短縮できるだけでなく、ヘッドメンテナンス機構を簡素化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−11377号公報
【特許文献2】特開2001−71521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、これらの技術はいずれも、キャップ部が回転体の外周面上にあるため、非キャッピング時は、廃インクが収容されている可能性のあるキャップ部が反転又は傾斜状態となる。そのため、非キャッピング時の状態に移行する際に、廃インクが流れ落ち、周囲を汚損してしまう。また、乾燥防止のための保湿液も同様に流出しやすく、液体吸収体を設けて保湿液を含浸させたとしても、キャップ部内に保湿液を保持するのは困難である。
【0011】
しかも、これらの技術では、液体吐出ヘッド内の気泡を除去したり、キャップ部内に蓄積された廃インクを外部に排出するための吸引チューブの配管構造が複雑化する。具体的には、気泡の除去等のために、キャップ部に吸引ポンプを接続し、インクを吸引して排出する。そのため、キャップ部から吸引ポンプまでを吸引チューブによってつなぎ、廃インクの流路を形成する。
【0012】
しかし、キャップ部が回転体の一部となる構成の場合には、キャップ部と吸引ポンプとを単純につないだだけでは、吸引チューブがねじれてしまう。そこで、上記の特許文献1の技術では、中空支持軸を設置して対処しているが、中空支持軸は、可動側と固定側との接続部において、回転自在かつ水密に構成しなければならない。そのため、部品の組立てや管理工程で、水密性に対して細心の注意を払う必要が生じる。
【0013】
また、上記の特許文献2の技術のように、プラテン部の外周面上に配置したゴムブレードを回転させてワイピングすると、ゴムブレードの移動軌跡が円弧をなすため、インク吐出面に対する接触圧が変動してしまう。そのため、水平移動によって最適な接触圧を維持しながらワイピングする場合と比較して、インク吐出面のふき残しが多くなり、ふき取り範囲も狭くなる。
【0014】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、廃インクの流出による汚損やインク吐出面のふき残しがなく、簡単な構成で、液体吐出装置の印画時の状態、クリーニング時の状態、及び待機時の状態を切り替えられるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、以下の解決手段により、上述の課題を解決する。
本発明の請求項1に記載の発明は、液体を吐出するための複数のノズルと、各前記ノズルを一方向に配列したノズル列が形成された液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドの前記ノズル列の形成部分に対して水平な方向と垂直な方向との間を回転可能であり、かつ水平な方向に移動可能な回転移動テーブルと、前記液体吐出ヘッドの前記ノズル列の形成部分に当接又は離間するように移動可能なヘッドキャップと、前記回転移動テーブルの回転及び移動と前記ヘッドキャップの移動とを連動させる連動手段とを有し、前記回転移動テーブルは、前記連動手段によって水平な方向に回転した状態であるときに、液体の吐出対象を載置可能なプラテン部と、前記連動手段によって垂直な方向に回転し、かつ水平な方向に移動したときに、前記ノズル列の形成部分をクリーニング可能なクリーニング部とを備え、前記ヘッドキャップは、前記回転移動テーブルが水平な方向に回転した状態であるときに、前記連動手段によって前記ノズル列の形成部分から離間した位置に配置され、前記回転移動テーブルが垂直な方向に回転し、かつ水平な方向に移動していない状態であるときに、前記連動手段によって前記ノズル列の形成部分に当接可能に設けられている液体吐出装置である。
【0016】
(作用)
上記の請求項1に記載の発明は、液体吐出ヘッドのノズル列の形成部分に対して水平な方向と垂直な方向との間を回転可能であり、かつ水平な方向に移動可能な回転移動テーブルと、ノズル列の形成部分に当接又は離間するように移動可能なヘッドキャップと、回転移動テーブルの回転及び移動とヘッドキャップの移動とを連動させる連動手段とを有している。そのため、連動手段により、回転移動テーブルとヘッドキャップとの物理的な相互干渉が回避される。
【0017】
また、回転移動テーブルは、水平な方向に回転した状態であるときに、液体の吐出対象を載置可能なプラテン部と、垂直な方向に回転し、かつ水平な方向に移動したときに、ノズル列の形成部分をクリーニング可能なクリーニング部とを備えている。そのため、回転移動テーブルの回転及び移動により、印画時の状態とクリーニング時の状態とが切り替えられる。しかも、回転移動テーブルを水平に移動させてクリーニングを行うので、ノズル列の形成部分が均一にクリーニングされる。
【0018】
さらにまた、ヘッドキャップは、回転移動テーブルが水平な方向に回転した状態であるときに、ノズル列の形成部分から離間した位置に配置され、回転移動テーブルが垂直な方向に回転し、かつ水平な方向に移動していない状態であるときに、ノズル列の形成部分に当接可能に設けられている。そのため、回転移動テーブルと干渉することなく、待機時の状態(キャッピング)に切り替えられる。しかも、ヘッドキャップを移動させてキャッピングを行うので、ヘッドキャップを回転させた場合に問題となるヘッドキャップ内の廃インクの流出や吸引チューブのねじれを生じない。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、回転移動テーブルとヘッドキャップとが相互に干渉することなく、簡単に、液体吐出ヘッドの印画時の状態、クリーニング時の状態、及び待機時の状態を切り替えできる。また、ノズル列の形成部分を均一にクリーニングでき、廃インクの流出等による汚損を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の液体吐出装置の一実施形態としての、インクジェットプリンタの概要を示す側面図である。
【図2】図1に示すインクジェットプリンタのラインヘッドの平面図であり、インク吐出面側から見た図である。
【図3】図1に示すインクジェットプリンタの1つの印画テーブルの側面図である。
【図4】図1に示すインクジェットプリンタの各印画テーブルの斜視図である。
【図5】図1に示すインクジェットプリンタの各ヘッドキャップの斜視図である。
【図6】図1に示すインクジェットプリンタの待機時のヘッドキャップの側面図である。
【図7】図1に示すインクジェットプリンタの待機時の印画テーブルの側面図である。
【図8】図1に示すインクジェットプリンタのクリーニング開始前のヘッドキャップの側面図である。
【図9】図1に示すインクジェットプリンタのクリーニング開始前の印画テーブルの側面図である。
【図10】図1に示すインクジェットプリンタのクリーニング途中の印画テーブルの側面図である。
【図11】図1に示すインクジェットプリンタのクリーニング途中のヘッドキャップの側面図である。
【図12】図1に示すインクジェットプリンタのクリーニング終了後の印画テーブルの側面図である。
【図13】図1に示すインクジェットプリンタの印画時の印画テーブルの側面図である。
【図14】図1に示すインクジェットプリンタの印画時のヘッドキャップの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について説明する。
ここで、本発明における液体吐出装置は、以下の実施の形態では、液体としてインクを吐出するインクジェットプリンタ10であるとする。また、インクジェットプリンタ10は、印画幅分(例えば、A4サイズ)のラインヘッド20(本発明における液体吐出ヘッドに相当するもの)を備えるライン方式のものである。さらにまた、ラインヘッド20には、インクを吐出するための複数のノズル32が一方向に所定のピッチで、印画可能な最大サイズの記録用紙11(本発明における吐出対象に相当するもの)の幅方向の長さにわたって配列されたノズル列32aが形成されている。そして、ノズル列32aの形成部分がインク吐出面21となっている。さらに、このインクジェットプリンタ10は、カラー印刷に対応しており、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のインクの色ごとにノズル列32aが形成されている。
【0022】
[液体吐出装置の構成例]

図1は、本発明の液体吐出装置の一実施形態としての、インクジェットプリンタ10の概要を示す側面図である。
図1に示すように、インクジェットプリンタ10は、給紙部(図示せず)から搬送された記録用紙11に対して印画を行う。そのため、記録用紙11を給紙する給紙ローラ12と、印画が行われた記録用紙11をペーパトレイ(図示せず)に排紙する排紙ローラ13とを備えている。
【0023】
また、インクジェットプリンタ10は、記録用紙11に向けてインクを吐出し、画像を形成するためのラインヘッド20を備えている。そして、ラインヘッド20は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の各色のインクをそれぞれ別々に吐出する4つのヘッドモジュール30によって構成されている。
【0024】
ここで、インクジェットプリンタ10は、各ヘッドモジュール30のそれぞれに対応するように整列する4つの印画テーブル40(本発明における回転移動テーブルに相当するもの)を備えている。この4つの印画テーブル40は、ラインヘッド20のインク吐出面21に対して水平な方向と垂直な方向との間を回転可能であり、水平な方向に回転した状態(図1に示す状態)で記録用紙11を載置できるようになっている。そして、垂直な方向に回転させたときに、インク吐出面21をクリーニングできるように、ゴムブレード41(本発明におけるクリーニング部に相当するもの)を備えている。
【0025】
また、インクジェットプリンタ10は、ラインヘッド20のインク吐出面21を各ヘッドモジュール30ごとに保護する4つのヘッドキャップ50を備えている。そして、各ヘッドキャップ50には、吸引ポンプ(図示せず)の吸引によって各ヘッドモジュール30内の気泡の除去したり、各ヘッドキャップ50内に蓄積された廃インクを外部に排出するための吸引チューブ51が接続されている。
【0026】
さらにまた、各ヘッドキャップ50内の底部には、多孔質体からなる吸収体57が設けられている。そして、この吸収体57に保湿液(水、インク等)が含浸されている。そのため、各ヘッドキャップ50をインク吐出面21に当接させれば、保湿液の気化によって各ヘッドキャップ50内のインク吐出面21が湿潤状態となる。したがって、インク吐出面21の乾燥を能動的に防止できる。
【0027】
さらに、各ヘッドキャップ50は、インク吐出面21に当接又は離間するように上下に移動可能であり、図1に示すように、各印画テーブル40が水平な方向に回転した状態であるときは、各印画テーブル40よりもインク吐出面21から遠く離れた位置にある。そして、各吸引チューブ51は、それぞれたるみを持って吸引ポンプ(図示せず)に接続されている。そのため、各ヘッドキャップ50が上下動しても接続部等に負担がかからず、ねじれや折れ等も発生しない。また、各ヘッドキャップ50内に保持された廃インクや保湿液が外部に流出することもない。
【0028】
[液体吐出ヘッドの構成例]

図2は、図1に示すインクジェットプリンタ10のラインヘッド20の平面図であり、インク吐出面21側から見た図である。
図2に示すように、ラインヘッド20は、ヘッドフレーム22と、ヘッドフレーム22に保持された複数のヘッドモジュール30とから構成されている。具体的には、各ヘッドモジュール30は、ヘッドフレーム22の長手方向(用紙幅方向)に2個直列に接続されてヘッドフレーム22に挿入されている。そして、その2個のヘッドモジュール30で、印画可能な最大サイズの記録用紙11(図1参照)の用紙幅(例えば、A4の横幅)の長さをカバーして1色を印画するようになっている。また、その直列に接続された2個のヘッドモジュール30が平行に4ライン(合計8個)設けられ、各ラインがそれぞれY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)のインクを吐出することで、フルカラー画像を形成する。
【0029】
さらに、各ヘッドモジュール30は、それぞれ複数のヘッドチップ31を備えている。具体的には、各ヘッドモジュール30には、ヘッドチップ31が千鳥状に、4個×2列で合計8個配置されている。また、各ヘッドチップ31には、インクを吐出するための複数のノズル32が一方向に配列され、ノズル列32aとなっている。そのため、ノズル列32aは、各ヘッドモジュール30について2列に並列し、各ノズル32が記録用紙11(図1参照)の幅方向の長さにわたって配列されているだけでなく、ラインヘッド20の全体として、8列に並列した配置となっている。そして、このノズル列32aの形成部分(ノズル列32aが形成されている側の面)がインク吐出面21となっている。なお、各ノズル32の相互の間隔は、千鳥状に隣接する部分を含めて、すべて等間隔である。
【0030】
ここで、各ノズル32からインクの吐出を繰り返すうちに、インク吐出面21にインク溜まりができたり、ゴミや異物が付着することがある。そして、このような状態を放置しておくと、ノズル32からのインクの吐出が阻害され、不吐出や不完全吐出等の吐出不良を起こしてしまう。
【0031】
また、フルカラー対応のラインヘッド20では、インク吐出面21に異なる色のインク溜まりも付着する。そのため、ヘッドモジュール30内の既存のインクと異なる色のインク溜まりがノズル32から逆流して入り込んでしまうことがある。そして、既存のインクとの混色を生じる結果、混色インクが吐出されることとなり、濃度変化、色相ずれ、筋むら等の画質低下を引き起こす。
【0032】
そこで、印画テーブル40(図1参照)をインク吐出面21と垂直な方向に回転させ、印画テーブル40に設けられたゴムブレード41(図1参照)をインク吐出面21に接触させながらノズル配列方向に移動させることにより、インク溜まり等をふき取る。なお、ゴムブレード41の幅は、ラインヘッド20の短手方向に8列に並列する両端のノズル列32a間の間隔よりも少しだけ大きく形成されている。したがって、ゴムブレード41は、インク吐出面21の全幅をカバーできる。
【0033】
[回転移動テーブルの構成例]

図3は、図1に示すインクジェットプリンタ10の1つの印画テーブル40の側面図である。
また、図4は、図1に示すインクジェットプリンタ10の各印画テーブル40の斜視図である。
図3に示すように、印画テーブル40は、ゴムブレード41、プラテン部42、及び回転支持部43が一体的に形成された樹脂成形品である。そして、ゴムブレード41(本実施形態では、エチレン−プロピレン−ジエンゴム製)は、ダブルモールド等の方法によって樹脂製のプラテン部42と一体成形されている。さらに、プラテン部42は、幅方向の両端部で回転支持部43と一体成形されており、回転支持部43には、支点穴43aが形成されるとともに、支点穴43aから偏心した位置に金属製の開閉ピン44が設けられている。
【0034】
また、印画テーブル40は、4ラインのヘッドモジュール30(図2参照)にそれぞれ対応して、図4に示すように、4つ並べて支持フレーム45に取り付けられる。具体的には、各支点穴43a(図3参照)にそれぞれ支点軸46を挿入することにより、1つの支持フレーム45に回転可能に軸支される。なお、各開閉ピン44は、支持フレーム45の開口から露出する。
【0035】
したがって、各印画テーブル40の各開閉ピン44を力点として同時に水平方向に往復移動させれば、各印画テーブル40は、支点軸46を中心に一斉に回転(揺動)する。そして、水平方向に回転した状態(図3(a)に示す状態)や垂直方向に回転した状態(図3(b)及び図4に示す状態)となる。さらに、支持フレーム45を水平方向に移動させれば、各印画テーブル40も一斉に水平方向に移動する。
【0036】
ここで、印画テーブル40が水平方向に回転した状態(図3(a)に示す状態)であるとき、プラテン部42は、図1に示すように、記録用紙11を載置可能となる。そして、記録用紙11の裏面(非印画面)をインク吐出面21と平行に支持する。また、図3(a)に示すように、プラテン部42には、給紙側から排紙側に向かう記録用紙11の搬送方向に長い複数のリブ47が突設されている。そのため、記録用紙11は、その裏面がプラテン部42に部分的に(各リブ47の上面だけに)接触し、円滑に搬送される。
【0037】
一方、図3(b)及び図4に示すように、印画テーブル40が垂直方向に回転した状態であるときは、ゴムブレード41が立設される。そして、各ゴムブレード41の先端がインク吐出面21(図2参照)に接触し、各ラインのヘッドモジュール30(図2参照)に対応するようになる。そのため、各印画テーブル40を垂直方向に回転させた状態で支持フレーム45を水平方向に移動させれば、ヘッドモジュール30に対応するゴムブレード41がインク吐出面21を摺動する。したがって、各印画テーブル40の水平方向の移動にともない、それぞれのゴムブレード41により、インク吐出面21に付着していたインク溜まり、ゴミ、異物等がワイパーのようにしてふき取られる。
【0038】
[ヘッドキャップの構成例]

図5は、図1に示すインクジェットプリンタ10の各ヘッドキャップ50の斜視図である。
図5に示すように、ヘッドキャップ50は、ラインヘッド20のインク吐出面21とほぼ同じ長さで細長く伸び、上面が開口した浅い箱状に形成されている。そして、上面をインク吐出面21に当接させてノズル列32a(図2参照)の周囲を覆うことにより、各ノズル32(図2参照)の乾燥や目詰まりを防止する。
【0039】
ここで、ヘッドキャップ50は、4ラインのヘッドモジュール30(図2参照)にそれぞれ対応して、図5に示すように、4つ並べてキャップベース52に取り付けられる。具体的には、各ヘッドキャップ50に設けられた3つの支持軸53をキャップベース52に挿入することにより、上下動可能に取り付けられる。そして、各ヘッドキャップ50の下面とキャップベース52の上面との間に2つの上昇バネ54が挿入され、各ヘッドキャップ50が上向きに付勢されている。
【0040】
また、キャップベース52は、垂直ガイド55により、ラインヘッド20のインク吐出面21に対して垂直な方向に移動可能となっている。そのため、キャップベース52を垂直ガイド55にそって上昇させることにより、4つのヘッドキャップ50がそれぞれインク吐出面21に当接する。そして、各ヘッドキャップ50は、それぞれの上昇バネ54の作用により、インク吐出面21を均一に押圧するようになる。したがって、各ノズル列32a(図2参照)が各ヘッドキャップ50内で密閉された状態となる。その結果、インク吐出面21がほこりや異物から保護されるだけでなく、乾燥しなくなるので、各ノズル32(図2参照)の目詰まりが防止される。逆に、キャップベース52を下降させることにより、各ヘッドキャップ50をインク吐出面21から離間させることができる。
【0041】
このように、本実施形態のインクジェットプリンタ10は、ゴムブレード41及びプラテン部42をそれぞれ備える4つの印画テーブル40と4つのヘッドキャップ50とを有している。また、各印画テーブル40は、ラインヘッド20のインク吐出面21に対して水平な方向と垂直な方向との間を回転可能であり、かつ水平な方向に移動可能となっている。一方、各ヘッドキャップ50は、インク吐出面21に当接又は離間するように(本実施形態では、インク吐出面21に対して垂直な方向に)移動可能となっている。そして、各印画テーブル40の回転及び移動と各ヘッドキャップ50の移動とは、連動手段によって連動しており、連動手段により、待機時の状態、クリーニング時の状態、及び印画時の状態を切り替えられる。
【0042】
図6は、図1に示すインクジェットプリンタ10の待機時のヘッドキャップ50の側面図である。
図6に示すように、インクジェットプリンタ10の待機時の状態では、ヘッドキャップ50がラインヘッド20のインク吐出面21に当接している。なお、ヘッドキャップ50は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、及びK(ブラック)の4ラインのヘッドモジュール30にそれぞれ対応して、4つ並べてキャップベース52に取り付けられている。
【0043】
ここで、キャップベース52は、連動機構60(本発明における連動手段に相当するもの)により、ラインヘッド20のインク吐出面21に対して垂直な方向に移動可能となっている。具体的には、連動機構60は、モータ61(本発明における駆動源に相当するもの)、カム62、ピニオンギヤ63、伝達ベルト64、昇降レバー65、及び垂直引っ張りバネ67を有している。そして、昇降レバー65は、昇降支点66を中心としてカム62によって回転(揺動)し、昇降作用点56を介してキャップベース52を上下動させるようになっている。
【0044】
図6に示す状態は、インクジェットプリンタ10の待機時であり、カム62の水平部が昇降レバー65を載置している。そして、昇降レバー65は、昇降支点66とカム62との間で、垂直引っ張りバネ67によって下向きに付勢されている。そのため、昇降作用点56に上向きの力が作用し、これにより、キャップベース52は、垂直ガイド55にそって上昇する。その結果、キャップベース52上の各ヘッドキャップ50がインク吐出面21に当接し、インク吐出面21を保護する。なお、各ヘッドキャップ50は、それぞれの上昇バネ54の作用により、インク吐出面21を均一に押圧する。
【0045】
このように、各ヘッドキャップ50は、モータ61によって駆動される昇降レバー65の作用によって上下動し、インク吐出面21に当接する。そして、この際に、各印画テーブル40が支障とならないように、各印画テーブル40は、垂直な方向に回転した状態(図6に示す状態)となっている。また、この際、各印画テーブル40が水平方向に移動することもない。
【0046】
図7は、図1に示すインクジェットプリンタ10の待機時の印画テーブル40の側面図である。
図7に示すように、4ラインのヘッドモジュール30にそれぞれ対応するように設けられた4つの印画テーブル40は、各支点軸46により、支持フレーム45に回転可能に取り付けられている。また、各印画テーブル40は、開閉ピン44により、スライドレバー71に回転可能に取り付けられている。
【0047】
このスライドレバー71は、連動機構60の構成要素であり、ラックギヤ72とピニオンギヤ63とのかみ合いよって水平方向に移動する。また、支持フレーム45のフレーム移動突起48とスライドレバー71との間には、水平引っ張りバネ73(連動機構60の構成要素)が配置されている。そして、水平引っ張りバネ73を介して、支持フレーム45を水平ガイド74(連動機構60の構成要素)にそって水平方向に移動させることができる。
【0048】
ここで、図7に示す待機時の状態では、支持フレーム45に対してスライドレバー71が右寄りに位置している。そのため、支点軸46と開閉ピン44との位置関係により、印画テーブル40は、ラインヘッド20のインク吐出面21に対して垂直な方向に回転した状態となる。また、支持フレーム45は、図6に示すように、隣接する2つの印画テーブル40の間にヘッドキャップ50が入るような位置にある。さらにまた、図7に示すように、ラックギヤ72とピニオンギヤ63とがかみ合っていないので、スライドレバー71が動くことはない。
【0049】
したがって、各印画テーブル40は、図6に示すように、各ヘッドキャップ50がインク吐出面21に当接する際の妨げにならない。具体的には、各ヘッドキャップ50は、隣接する2つの印画テーブル40の間を通ってインク吐出面21に当接する。そのため、インクジェットプリンタ10の小型化が可能となっている。
【0050】
図8は、図1に示すインクジェットプリンタ10のクリーニング開始前のヘッドキャップ50の側面図である。
インクジェットプリンタ10のクリーニングを開始するには、最初に、ラインヘッド20のインク吐出面21に当接していた各ヘッドキャップ50を離間させる必要がある。そのため、モータ61をCCW方向(反時計回りの方向)に回転駆動する。
【0051】
ここで、モータ61の駆動力は、伝達ベルト64により、カム62及びピニオンギヤ63に伝達される。そのため、モータ61をCCW方向に回転駆動すれば、カム62も図8に示す矢印のようにCCW方向に回転する。これにより、昇降レバー65は、垂直引っ張りバネ67の付勢に反して昇降支点66よりもカム62側が持ち上げられ、逆に、昇降作用点56側が下降する。その結果、キャップベース52が下降し、各ヘッドキャップ50がインク吐出面21から離間する。なお、この際、各ヘッドキャップ50は、各印画テーブル40と平行に下降するので、各印画テーブル40が支障となることはない。また、各印画テーブル40が水平方向に移動することもない。
【0052】
図9は、図1に示すインクジェットプリンタ10のクリーニング開始前の印画テーブル40の側面図である。
各ヘッドキャップ50(図8参照)をインク吐出面21から離間させるためにモータ61をCCW方向に回転駆動すると、カム62だけでなく、ピニオンギヤ63もCCW方向に回転する。そのため、ピニオンギヤ63の回転位置は、カム62によって各ヘッドキャップ50を離間させる位置(図8に示す位置)と同じになる。
【0053】
しかし、この位置では、図9に示すように、ピニオンギヤ63がラックギヤ72にかみ合ってラックギヤ72を動かす直前の状態となっている。そのため、スライドレバー71は、図7に示す待機時の状態から動かない。具体的には、支持フレーム45に対してスライドレバー71が右寄りに位置し、印画テーブル40がインク吐出面21に垂直な方向に回転した状態がそのまま維持される。したがって、図8に示すように、各印画テーブル40は、各ヘッドキャップ50がインク吐出面21から離間する際の妨げにならず、各ヘッドキャップ50は、隣接する2つの印画テーブル40の間を下降し、インク吐出面21から離間する。
【0054】
図10は、図1に示すインクジェットプリンタ10のクリーニング途中の印画テーブル50の側面図である。
図9に示すクリーニング開始前の状態からさらにモータ61をCCW方向に回転駆動すると、ピニオンギヤ63とラックギヤ72とがかみ合うようになる。そのため、ピニオンギヤ63のCCW方向の回転により、スライドレバー71は、図10に示す矢印のように左向きに移動する。
【0055】
また、スライドレバー71が左向きに移動すると、スライドレバー71の先端部に取り付けられた水平引っ張りバネ73が左向きに引っ張られる。そして、水平引っ張りバネ73の他端側は、支持フレーム45に設けられたフレーム移動突起48に接続されているので、支持フレーム45も左向きに引っ張られるようになる。そのため、支持フレーム45は、水平ガイド74にそって水平方向に矢印のように移動する。したがって、スライドレバー71と支持フレーム45とが同時に同じ速さで左向きに移動することとなる。
【0056】
ここで、支持フレーム45には、各支点軸46を介して4つの印画テーブル40が取り付けられている。また、各印画テーブル40は、開閉ピン44によってスライドレバー71に取り付けられている。そして、印画テーブル40の姿勢は、支点軸46と開閉ピン44との位置関係によって定まる。
【0057】
しかし、スライドレバー71と支持フレーム45とが同じように移動するので、支点軸46と開閉ピン44との位置関係は変わらない。そのため、各印画テーブル40は、インク吐出面21に対して垂直な方向に回転した状態のまま、左向きに水平に移動する。その結果、各印画テーブル40に設けられた4つのゴムブレード41がインク吐出面21を摺動し、インク吐出面21に付着していたインク溜まり等がふき取られる。
【0058】
このように、各印画テーブル40は、モータ61によって駆動されるスライドレバー71の作用によって左向きに水平移動し、各ゴムブレード41によってインク吐出面21に平行にクリーニングされる。そのため、インク吐出面21のふき残しのない効率的なワイピングが可能となる。そして、この際に、各ヘッドキャップ50(図8参照)が支障とならないように、各ヘッドキャップ50は、各印画テーブル40よりもインク吐出面21から遠く離れた位置に維持される。
【0059】
図11は、図1に示すインクジェットプリンタ10のクリーニング途中のヘッドキャップ50の側面図である。
各印画テーブル40を左向きに移動させ、各ゴムブレード41によってクリーニングを行うためにモータ61をCCW方向に回転駆動すると、ピニオンギヤ63だけでなく、カム62もCCW方向に回転する。そのため、カム62の回転位置は、ピニオンギヤ63によって各ゴムブレード41がインク吐出面21を摺動する位置(図10に示す位置)と同じになる。
【0060】
しかし、この位置では、図11に示すように、カム62の昇降レバー65の載置位置が同一半径の円弧形状となっている。そのため、カム62がCCW方向に回転しても、昇降レバー65は、図8に示す状態から変化せず、各ヘッドキャップ50が下降した状態がそのまま維持される。したがって、各ヘッドキャップ50は、各印画テーブル40が水平な方向に移動する際の妨げにならず、各印画テーブル40は、各ヘッドキャップ50の上空を通過できる。
【0061】
図12は、図1に示すインクジェットプリンタ10のクリーニング終了後の印画テーブル40の側面図である。
クリーニング途中の状態(図11に示す状態)からさらにモータ61をCCW方向に回転駆動すると、スライドレバー71、水平引っ張りバネ73、支持フレーム45、及び各印画テーブル40が図12に示す矢印のようにさらに左向きに移動する。そして、各印画テーブル40の4つのゴムブレード41がそれぞれインク吐出面21を摺動し、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、及びK(ブラック)の4ラインのヘッドモジュール30を通過する。
【0062】
また、各ゴムブレード41が各ヘッドモジュール30を通過すると、支持フレーム45の左端部が水平ガイド74のストッパ75に当接する。そのため、支持フレーム45の左向きの移動が阻止される。そして、各印画テーブル40の水平移動が止まり、インク吐出面21の一通りのクリーニングが終了する。なお、図12に示すクリーニングの終了位置においても、カム62の昇降レバー65(図11参照)の載置位置は、同一半径の円弧形状のままである。したがって、各ヘッドキャップ50(図11参照)は、各印画テーブル40よりもインク吐出面21から遠く離れた位置に維持されており、クリーニング終了の妨げとならない。
【0063】
図13は、図1に示すインクジェットプリンタ10の印画時の印画テーブル40の側面図である。
クリーニング終了の状態(図12に示す状態)からさらにモータ61をCCW方向に回転駆動すると、スライドレバー71は、図13に示す矢印のようにさらに左向きに移動する。一方、支持フレーム45は、水平ガイド74のストッパ75に当接しているため、左向きの移動が阻止されている。
【0064】
ここで、支持フレーム45のフレーム移動突起48とスライドレバー71との間には、水平引っ張りバネ73が挿入されている。そのため、支持フレーム45が移動しなくなっても、水平引っ張りバネ73が伸びることにより、スライドレバー71は移動できる。その結果、支持フレーム45が静止したままスライドレバー71が左向きに移動し、支持フレーム45とスライドレバー71との位置関係が変化する。
【0065】
また、各印画テーブル40は、各支点軸46により、支持フレーム45に回転可能に取り付けられている。さらにまた、各印画テーブル40は、各開閉ピン44により、スライドレバー71に回転可能に取り付けられている。そのため、スライドレバー71のみの左向きの移動により、各開閉ピン44が対応する各支点軸46よりも左寄りに位置するようになる。したがって、各印画テーブル40がそれぞれの支点軸46を中心に回転するようになり、最終的には、図13に示すように、ラインヘッド20のインク吐出面21に対して水平な状態となる。
【0066】
このように、各印画テーブル40が水平な方向に回転した状態になると、各印画テーブル40の上面が記録用紙11(図1参照)を載置可能なプラテン部42となる。そして、このプラテン部42により、記録用紙11の裏面(非印画面)をインク吐出面21と平行に支持できるようになる。したがって、給紙部(図示せず)からプラテン部42まで記録用紙11を搬送し、各ヘッドモジュール30から各色のインクを吐出することにより、印画を実行できる。なお、図13に示す印画時においても、各ヘッドキャップ50(図11参照)が支障とならないように、各ヘッドキャップ50は、各印画テーブル40よりもインク吐出面21から遠く離れた位置に維持される。
【0067】
図14は、図1に示すインクジェットプリンタ10の印画時のヘッドキャップ50の側面図である。
各印画テーブル40を水平な方向に回転させるためにモータ61をCCW方向に回転駆動すると、ピニオンギヤ63だけでなく、カム62もCCW方向に回転する。しかし、図14に示すように、印画時の位置でも、カム62の昇降レバー65の載置位置は、同一半径の円弧形状となっている。そのため、昇降レバー65は、図11に示す状態から変化せず、各ヘッドキャップ50が下降した状態がそのまま維持される。
【0068】
したがって、各ヘッドキャップ50は、各印画テーブル40よりもインク吐出面21から遠く離れた位置に維持されており、各印画テーブル40を水平な方向に回転させる際の妨げとならない。なお、図13及び図14に示す印画時の状態からモータ61をCW方向(時計回りの方向)に回転させれば、逆に、図12、図10(図11)、及び図9(図8)の順序でクリーニングを行うことができる。また、その後、図6(図7)に示すように、インク吐出面21をキャッピングすることにより、待機時の状態に戻すことができる。
【0069】
以上、説明したように、本実施形態のインクジェットプリンタ10は、連動機構60により、各印画テーブル40の回転及び移動と各ヘッドキャップ50の移動とが連動し、待機時の状態、クリーニング時の状態、及び印画時の状態が切り替えられる。具体的には、連動機構60により、各印画テーブル40を水平な方向に回転させた状態においては、各ヘッドキャップ50がラインヘッド20のインク吐出面21から離間した位置に配置される。そのため、各ヘッドキャップ50は、各印画テーブル40の水平なプラテン部42に記録用紙11(図1参照)を載置する際の妨げとならず、各ヘッドモジュール30による印画が可能となる。
【0070】
また、連動機構60により、各印画テーブル40を垂直な方向に回転させ、かつ水平な方向に移動させたときは、各印画テーブル40から立設するゴムブレード41により、インク吐出面21のワイピング(クリーニング)を行うことができる。なお、この際には、各ヘッドキャップ50がラインヘッド20のインク吐出面21から離間した位置にあるので、各ヘッドキャップ50は、クリーニングの妨げとならない。
【0071】
さらにまた、連動機構60により、各印画テーブル40が垂直な方向に回転し、かつ水平な方向に移動しない状態においては、各ヘッドキャップ50が上昇可能となる。具体的には、隣接する2つの印画テーブル40の間を各印画テーブル40と平行に移動させ、ラインヘッド20のインク吐出面21に当接させることができる。そのため、各ヘッドキャップ50によってキャッピングし、インク吐出面21を保護した状態で待機させることができる。
【0072】
さらに、連動機構60は、1つのモータ61により、各印画テーブル40の回転及び移動と各ヘッドキャップ50の移動とが機械的に連動する構成されている。そのため、省スペース、低コストで、待機時の状態、クリーニング時の状態、及び印画時の状態の相互の物理的な干渉を防止しつつ、各状態を即時に、容易に切り替えることができる。特に、長尺で大型のラインヘッド20を備えるライン方式の場合には、各状態の切り替えに必要な駆動力や移動量が大きくなるので、本実施形態のインクジェットプリンタ10のような連動機構60による切替えが有効となる。
【0073】
さらにまた、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、以下のような種々の変形等が可能である。
(1)本実施形態は、ラインヘッド20を備えるライン方式のインクジェットプリンタ10を液体吐出装置としている。しかし、液体吐出装置は、これに限らず、ヘッドを記録用紙の幅方向に移動させて印画を行うシリアル方式のプリンタであってもよい。また、プリンタの他、複写機、ファクシミリ等にも適用できる。
【0074】
(2)本実施形態では、連動手段として、モータ61、カム62、ピニオンギヤ63、伝達ベルト64、昇降レバー65、スライドレバー71、水平引っ張りバネ73、水平ガイド74、及びストッパ75等によって構成された連動機構60を用いている。しかし、モータ、カム、ギヤ、ベルト、レバー、ピストン、又はこれら等を適宜組み合わせることにより、別の連動手段を構成してもよい。また、モータ等の駆動源は1つに限らず、複数設けてもよい。さらにまた、機械的な連動ではなく、電気的に連動させるようにしてもよい。
【0075】
(3)本実施形態では、クリーニング部として、ゴムブレード41を使用している。しかし、ゴムブレードではなく、円柱状のゴム等であってもよい。また、発泡体等によってクリーニング部を構成することもできる。
【符号の説明】
【0076】
10 インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
20 ラインヘッド(液体吐出ヘッド)
32 ノズル
32a ノズル列
40 印画テーブル(回転移動テーブル)
41 ゴムブレード(クリーニング部)
42 プラテン部
50 ヘッドキャップ
60 連動機構(連動手段)
61 モータ(駆動源)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するための複数のノズルと、
各前記ノズルを一方向に配列したノズル列が形成された液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドの前記ノズル列の形成部分に対して水平な方向と垂直な方向との間を回転可能であり、かつ水平な方向に移動可能な回転移動テーブルと、
前記液体吐出ヘッドの前記ノズル列の形成部分に当接又は離間するように移動可能なヘッドキャップと、
前記回転移動テーブルの回転及び移動と前記ヘッドキャップの移動とを連動させる連動手段と
を有し、
前記回転移動テーブルは、
前記連動手段によって水平な方向に回転した状態であるときに、液体の吐出対象を載置可能なプラテン部と、
前記連動手段によって垂直な方向に回転し、かつ水平な方向に移動したときに、前記ノズル列の形成部分をクリーニング可能なクリーニング部と
を備え、
前記ヘッドキャップは、
前記回転移動テーブルが水平な方向に回転した状態であるときに、前記連動手段によって前記ノズル列の形成部分から離間した位置に配置され、
前記回転移動テーブルが垂直な方向に回転し、かつ水平な方向に移動していない状態であるときに、前記連動手段によって前記ノズル列の形成部分に当接可能に設けられている
液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記ヘッドキャップは、
前記液体吐出ヘッドの前記ノズル列の形成部分に対して垂直な方向に移動可能であり、
前記回転移動テーブルが水平な方向に回転した状態であるときに、前記回転移動テーブルよりも前記ノズル列の形成部分から遠く離れた位置に配置され、
前記回転移動テーブルが垂直な方向に回転し、かつ水平な方向に移動していない状態であるときに、前記回転移動テーブルと平行に移動可能に設けられている
液体吐出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記液体吐出ヘッドは、複数の前記ノズル列が並列に形成されており、
前記回転移動テーブル及び前記ヘッドキャップは、各前記ノズル列ごとにそれぞれ設けられている
液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記液体吐出ヘッドは、複数の前記ノズル列が並列に形成されており、
前記回転移動テーブル及び前記ヘッドキャップは、各前記ノズル列ごとにそれぞれ設けられており、
各前記ヘッドキャップは、前記液体吐出ヘッドの各前記ノズル列の形成部分に対して垂直な方向に移動可能であり、
各前記ヘッドキャップは、各前記回転移動テーブルが水平な方向に回転した状態であるときに、各前記回転移動テーブルよりも各前記ノズル列の形成部分から遠く離れた位置に配置され、
少なくとも1つの前記ヘッドキャップは、各前記回転移動テーブルが垂直な方向に回転し、かつ水平な方向に移動していない状態であるときに、隣接する2つの前記回転移動テーブルの間を各前記回転移動テーブルと平行に移動可能に設けられている
液体吐出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記ヘッドキャップに接続され、前記ヘッドキャップから液体を吸引するための吸引ポンプを有する
液体吐出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記連動手段は、1つの駆動源により、前記回転移動テーブルの回転及び移動と前記ヘッドキャップの移動とを機械的に連動させるように構成されている
液体吐出装置。
【請求項7】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記液体吐出ヘッドは、液体の吐出対象の幅方向の長さにわたって各前記ノズルを配列したラインヘッドである
液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−184446(P2010−184446A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30536(P2009−30536)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】