説明

液体吐出装置

【課題】ヘッドに信号を供給する部材が占有する空間が小さく、ヘッドとの接続が容易な液体吐出装置を提供する。
【解決手段】媒体との相対移動方向と交差する交差方向に並ぶ複数のノズルを有する複数のヘッドを有し、各々の前記ヘッドは、当該ヘッドに信号を供給するプリント回路基板にて互いに接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置としては、各種媒体にノズルから液体としてのインクを吐出するインクジェットプリンターが知られている。インクジェットプリンターは、ノズルが設けられている記録ヘッドに電気信号を伝達するために、絶縁電線を並列に配置した平型のフラットケーブルがコネクターを介して接続されている(例えば特許文献1参照)。そして、複数の記録ヘッドを有するインクジェットプリンターは、各々の記録ヘッドに各々フラットケーブルが接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−23168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、インクジェットプリンターが有する複数の記録ヘッドに各々フラットケーブルが接続されていると、フラットケーブルの数が多いため、これらのフラットケーブルを束ねた場合には占有する空間が大きくなるため配線し辛く、また装置のコンパクト化が図れない虞があるという課題がある。更に、各コネクターを個々に接続するため作業が繁雑であるという課題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヘッドに信号を供給する部材が占有する空間が小さく、ヘッドとの接続が容易な液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、媒体との相対移動方向と交差する交差方向に並ぶ複数のノズルを有する複数のヘッドを有し、
各々の前記ヘッドは、当該ヘッドに信号を供給するプリント回路基板にて互いに接続されていることを特徴とする液体吐出装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】印刷システムの構成を説明するブロック図である。
【図2】プリンターの断面図である。
【図3】プリンターが用紙を搬送する様子を示す図である。
【図4】ラインヘッドユニットの下面におけるノズルの配列を模式的に示した図である。
【図5】ヘッド列のヘッドを接続するプリント回路基板を説明するための斜視図である。
【図6】プリント回路基板にて接続されたヘッドを説明するための平面図である。
【図7】プリント回路基板、ヘッド、バックプレーンが接続された状態を説明するための図である。
【図8】プリント回路基板の変形例を説明するための斜視図である。
【図9】ヘッドに信号処理回路が設けられた変形例を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
===開示の概要===
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0010】
媒体との相対移動方向と交差する交差方向に並ぶ複数のノズルを有する複数のヘッドを有し、各々の前記ヘッドは、当該ヘッドに信号を供給するプリント回路基板にて互いに接続されていることを特徴とする液体吐出装置である。
このような液体吐出装置によれば、複数のヘッドは、媒体の相対移動方向と交差する方向に並べられているので、媒体の幅に相当するノズルを駆動するだけの多大な信号ラインが必要となるが、複数のヘッドが互いにプリント回路基板にて接続されているので、各ヘッドに信号を供給する部材が占有する空間を小さく抑えることが可能である。また、プリント回路基板は、例えばフラットフレキシブルケーブルより剛性が高いので、複数のコネクターに同時に接続することが可能である。このため、容易に接続することが可能である。
【0011】
かかる液体吐出装置であって、前記ヘッドは、各々コネクターを備え、前記プリント回路基板は、各々の前記ヘッドに対応する電極部を有し、当該電極部が前記コネクターに挿入されて接続されていることが望ましい。
このような液体吐出装置によれば、ヘッドが備えるコネクターにプリント回路基板が有する電極部が挿入されて接続されているので、コネクター同士が接続される場合より占有する空間を小さくすることが可能である。また、コネクターに剛性が高いプリント回路基板の電極部を挿入するだけなので、容易に接続することが可能である。
【0012】
かかる液体吐出装置であって、前記プリント回路基板には、信号処理回路が搭載されていることが望ましい。
このような液体吐出装置によれば、プリント回路基板に信号処理回路が搭載されているので、ヘッドにより近い位置に信号処理回路を設けることが可能である。このため、例えば、信号処理回路までの信号ラインの数を少なく抑えたり、信号処理回路から送出される信号へのノイズの影響を抑えることが可能である。
【0013】
かかる液体吐出装置であって、前記信号処理回路は、シリアル転送されたデータを前記ヘッドに対応させてパラレルデータに変換する回路であることが望ましい。
このような液体吐出装置によれば、シリアル転送されたデータをヘッドに対応させてパラレルデータに変換する回路がプリント回路基板に搭載されているので、ヘッドに送信される信号は、プリント回路基板に設けられた信号処理回路まではシリアル信号として転送される。このため、プリント回路基板までの信号ラインの数を低減することが可能である。
【0014】
かかる液体吐出装置であって、前記信号処理回路は、前記ノズルから液体を吐出させる駆動信号生成回路であることが望ましい。
このような液体吐出装置によれば、ノズルから液体を吐出させる駆動信号生成回路がプリント回路基板に設けられているので、ヘッドと駆動信号生成回路との間の距離を短縮することが可能である。このため、駆動信号生成回路から送出された駆動信号がノイズ等の影響により歪むことを抑えることが可能である。
【0015】
かかる液体吐出装置であって、前記プリント回路基板は、バックプレーンに接続されていることが望ましい。
このような液体吐出装置によれば、プリント回路基板は、バックプレーンに接続されているので、剛性が高いプリント回路基板はバックプレーンに接続しやすく、また、接続するだけで各ヘッドに信号を供給することが可能である。このため、ヘッドへの配線及び接続が容易な液体吐出装置を提供することが可能である。
【0016】
かかる液体吐出装置であって、前記複数のヘッドが前記交差方向に並ぶヘッド列を複数有し、複数の前記ヘッド列が、前記相対移動方向に並べて設けられていることが望ましい。
このような液体吐出装置によれば、相対移動方向に並べて設けられている複数のヘッド列が有する各ヘッドがプリント回路基板にて互いに接続されているので、たとえヘッドの数が多くなったとしても、各ヘッドに信号を供給する部材が占有する空間を小さく抑えることが可能である。
【0017】
かかる液体吐出装置であって、前記ヘッドは、送信されたシリアルデータを前記ヘッドが有する前記ノズルに対応させてパラレルデータに変換する信号処理回路を備え、前記プリント回路基板は、前記シリアルデータを前記ヘッドに転送する配線パターンを備えることが望ましい。
このような液体吐出装置によれば、ヘッドにはシリアルデータが多重化されて転送されるのでプリント回路基板に設ける電極及び配線パターンを、さらに少なくすることが可能であり、プリント回路基板のサイズを小さくすることが可能である。
【0018】
===実施形態===
印刷システムは、用紙S(図3等を参照)に画像を印刷するためのものであり、図1に示すように、コンピューターCPとプリンター1とを有する。このプリンター1は、液体状のインク(水性インク,油性インク)を吐出して用紙S等の媒体に画像を印刷する印刷装置の一種である。コンピューターCPは、印刷装置としてのプリンター1に印刷動作を行わせるための制御をする印刷制御装置の一種である。本実施形態では、コンピューターCPとプリンター1のセットが液体吐出装置の一種に相当する。
【0019】
<コンピューターCPについて>
コンピューターCPはホスト側コントローラー100を有する。このホスト側コントローラー100は、インターフェース部101と、CPU102と、メモリー103とを有する。インターフェース部101は、プリンター1との間でデータの受け渡しを行う。CPU102は、コンピューターCPの全体的な制御を行う。メモリー103は、コンピュータープログラムや各種のデータを記憶する。このメモリー103には、コンピュータープログラムの一種としてプリンタードライバーが記憶されている。このプリンタードライバーをCPU102が実行することにより、アプリケーションプログラムが実行されて得られた画像データから、プリンター1用のデータが生成される。詳しくは後で述べるが、C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(ブラック)からなるCMYK二値画像データが生成される。そして、生成された画像データがプリンター1へシリアル転送される。
【0020】
<プリンター1について>
プリンター1は、用紙搬送機構10、信号処理回路20、ラインヘッドユニット30、検出器群40、及び、プリンター側コントローラー50を有する。用紙搬送機構10は用紙Sを搬送方向(相対移動方向の一種)に搬送させる。
【0021】
信号処理回路20は、駆動信号生成回路21とデータ変換回路22とを有している。駆動信号生成回路21は、駆動信号COMを生成する。駆動信号COMはラインヘッドユニット30が有する各ヘッドHD(HDY1〜HDY4,HDM1〜HDM4,HDC1〜HDC4,HDK1〜HDK4,図3を参照)からインクを吐出させるために用いられる。データ変換回路22は、コンピューターCPからシリアル転送されたCMYK二値画像データを、各ヘッドHDに対応したデータに分配する。ここで、駆動信号COM及びCMYK二値画像データは、ヘッドを制御するためのヘッド制御信号である。
【0022】
ラインヘッドユニット30は複数のヘッドHDY1〜HDK4とヘッド制御部HCとを有する。ヘッドHDはインクを用紙Sに向けて吐出させる。ヘッド制御部HCは、プリンター側コントローラー50から信号処理回路20を経由したヘッド制御信号に基づいて各ヘッドHDY1〜HDK4によるインク滴の吐出を制御する。検出器群40は、プリンター1の状況を監視する複数の検出器によって構成される。これらの検出器による検出結果は、プリンター側コントローラー50に出力される。プリンター側コントローラー50は、プリンター1における全体的な制御を行う。
【0023】
用紙搬送機構10は、図2に示すように、給紙ローラー11と、搬送ローラー12と、プラテン13と、排紙ローラー14とを有する。給紙ローラー11は、用紙Sを供給するためのローラーである。搬送ローラー12は、給紙ローラー11によって給紙された用紙Sを印刷可能な領域まで搬送するローラーである。プラテン13は、印刷中の用紙Sを裏面側から支持する部材である。排紙ローラー14は、用紙Sをプリンター1の外部に排出するローラーである。
【0024】
ラインヘッドユニット30は、図3に示すように複数のヘッドHDY1〜HDK4を有する。これらのヘッドHDY1〜HDK4は、イエローのインクを吐出するヘッドHDY1〜HDY4、マゼンタのインクを吐出するヘッドHDM1〜HDM4、シアンのインクを吐出するヘッドHDC1〜HDC4、ブラックのインクを吐出するヘッドHDK1〜HDK4が、それぞれ用紙Sとの相対移動方向、すなわち搬送方向に4つずつ並べられており、インクの色毎に4つのヘッドHDを有するノズルが、用紙Sの幅方向において繋がるように配置されたヘッド群をなしている。以下の説明では、各ヘッド群に共通の説明においては、ヘッドを示す符号をHD1〜HD4として説明する。
【0025】
各ヘッド群を形成する4つのヘッドHDは、ベースプレートBPに対して千鳥状に取り付けられている。この例において、搬送方向の上流側には2つのヘッドHD1,HD3が紙幅方向に所定間隔で配置され、搬送方向の下流側にも2つのヘッドHD2,HD4が紙幅方向に所定間隔で配置されている。ここで紙幅方向は、搬送方向に交差する交差方向に相当する。この実施形態における紙幅方向は、搬送方向に対して直交する方向である。下流側のヘッド列HDL(HD2、HD4)は、上流側のヘッド列HDL(HD1、HD3)に対して、紙幅方向に位置をずらして配置されている。これにより、紙幅方向に対して上流側の各ヘッドHD1,HD3と下流側の各ヘッドHD2,HD4が交互に並んだ状態になる。各ヘッドHD1〜HD4は同じ種類のインクを吐出するので、1つのヘッドHDから吐出させた場合よりも、広い範囲にインクを吐出させることができる。なお、ラインヘッドユニット30の構成については、後で詳しく説明する。
【0026】
ヘッド制御部HCは、複数のヘッドHDY1〜HDK4が有する各ノズルからインク滴を吐出させるための制御を行う。例えば、ヘッド制御部HCは、プリンター側コントローラー50から信号処理回路20を経由したCMYK二値画像データと駆動信号生成回路21を経由した駆動信号COMとからなるヘッド制御信号に基づき、各ヘッドHDY1〜HDK4が有する駆動素子(図示せず)を動作させ、対応するノズルからインクを吐出させる。なお、駆動素子とは、CMYK二値画像データと駆動信号COMの印加とに基づいて駆動され、インク滴を吐出させるための動作をする駆動素子である。この駆動素子はピエゾ素子や発熱素子などである。
【0027】
プリンター側コントローラー50は、プリンター1における全体的な制御を行う。例えば、コンピューターCPから受け取った印刷データや各検出器からの検出結果に基づいて制御対象部を制御し、用紙Sに画像を印刷させる。図1に示すように、プリンター側コントローラー50は、インターフェース部51と、CPU52と、メモリー53とを有する。インターフェース部51は、コンピューターCPとの間でデータの受け渡しを行う。CPU52は、プリンター1の全体的な制御を行う。メモリー53は、コンピュータープログラムや各種のデータを記憶する領域や作業領域等を確保する。CPU52は、メモリー53に記憶されているコンピュータープログラム(ファームウェア等)に従い、各制御対象部を制御する。例えば、CPU52は用紙搬送機構10の制御を行う。また、CPU52は、ヘッドを制御するためのCMYK二値画像データを、データ変換回路22を介してヘッド制御部HCに送信したり、駆動信号COMを生成させるための制御信号を駆動信号生成回路21に送信したりする。
【0028】
<ラインヘッドユニット30の構成について>
図4に示すように、各ヘッドHDは、複数のノズルからなるノズル列を有する。この図において、ノズルは、記号#を付した番号で示す円形の部分である。この実施形態では、例えば1/360インチピッチでノズルが形成されている。そして、千鳥状に配置された各ヘッド群の4つのヘッドが有するノズル列も千鳥状に配置されている。すなわち、ヘッドHD1とヘッドHD3が有するノズル列は、紙幅方向に一直線上に配置されるとともに、紙幅方向に互いに間隔を隔てて配置されており、ヘッドHD2とヘッドHD4が有するノズル列も、紙幅方向に一直線上に配置されるとともに、紙幅方向に互いに間隔を隔てて配置されている。そして、ヘッドHD1、HD3のノズル列は、ヘッドHD2、HD4のノズル列より搬送方向において上流側に位置するとともに、紙幅方向において、ヘッドHD1とヘッドHD3とのノズル列間に、ヘッドHD2のノズル列が位置するように配置されている。
【0029】
ヘッド群を形成する4つのヘッドHDのうち互いに隣接する2つのヘッドHDの端に位置するノズルは、紙幅方向においてノズルピッチ(1/360インチ)だけ間隔を隔てて配置されている。具体的には、ヘッドHD1のn番目のノズル#nとヘッドHD2の1番目のノズル#1、ヘッドHD2のn番目のノズル#nとヘッドHD3の1番目のノズル#1、ヘッドHD3のn番目のノズル#nとHDヘッド4の1番目のノズル#1とは、紙幅方向において1/360インチ離れて配置されている。
【0030】
<各ヘッドHDの電気的接続について>
4つのヘッド群が有する各ヘッドの複数のノズルは、対応するノズル同士の紙幅方向における位置が揃っている。言い換えれば、このラインヘッドユニット30において、同じラスターラインを担当するノズルは、搬送方向に並んで配置されている。例えば、ブラックインクを吐出するヘッド群のヘッドHDK1における1番目のノズル#1、シアンインクを吐出するヘッド群のヘッドHDC1における1番目のノズル#1、マゼンタインクを吐出するヘッド群のヘッドHDM1の1番目のノズル#1、及び、イエローインクを吐出するヘッド群のヘッドHDY1の1番目のノズル#1は、互いに対応した関係にあり、搬送方向に沿って並んで配置されている。この関係は、各ヘッド群の紙幅方向において同じ位置に配置されたヘッドHDにおける同じ番号のノズル同士についても同様にあてはまる。このため、用紙Sにおける或る場所には、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、及び、イエローインクを重ねて吐出することが可能である。
【0031】
各々のヘッドHDには、用紙Sと対向する側、すなわち下側に向かってインクを吐出可能にn個のノズルが設けられており、各ノズルに対応してインク供給部と駆動素子とが設けられている。また、ヘッドHDには、図5に示すように、電極挿入部31が上方に向けられたコネクター32と、上方に向かって開放されインク供給部(不図示)と連通するインク供給孔33とが設けられており、インク供給孔33にはインクが供給されるチューブ(不図示)が接続される。このため、コネクター32に上方から装着されるケーブルと、インク供給孔33に接続されるチューブとが干渉しないように、コネクター32は、紙幅方向においてヘッドHDの中央側であって用紙Sの搬送方向においてヘッドHDの中央より上流側に、インク供給孔33は、紙幅方向においてヘッドHDの端側であって用紙Sの搬送方向においてヘッドHDの中央より下流側に配置されている。
【0032】
ヘッド群を構成する4つのヘッドHDは、搬送方向において上流側に位置する2つのヘッドHD1、HD3からなる上流側ヘッド列HDLと、搬送方向において下流側に位置する2つのヘッドHD2、HD4からなる下流側ヘッド列HDLとにてヘッド群を構成している。各ヘッド列HDLの2つのヘッドは、1枚のプリント回路基板35にて接続されている。
【0033】
各プリント回路基板35は、2つのヘッドHDに対応する2つの電極部35aを有している。2つの電極部35aには、各ヘッドHDが有する駆動素子の数n以上の電極が上下方向に沿って設けられており、紙幅方向に互いに間隔を隔てて並べて配置されている。2つのヘッドHDが有する各電極は、プリント回路基板35における紙幅方向の端まで形成されたプリントパターンと繋がっており、プリント回路基板35における紙幅方向の端に端部コネクター35bが設けられている。
【0034】
例えば、ヘッドHD1、HD3の各々n個の駆動素子と接続される2n本以上のパターンが、プリント回路基板35の紙幅方向における一方の端まで形成され、ヘッドHD2、HD4の各々n個の駆動素子と接続される2n本以上のパターンが、プリント回路基板35の紙幅方向における一方の端まで形成され、各パターンの端が端部コネクター35bに繋がっている。すなわち、プリント回路基板35には、紙幅方向における一方の端部に2n個以上の電極を有する端部コネクター35bが設けられており、端部コネクター35bの各電極から繋がったパターンがプリント回路基板35の中央側に引き回され、少なくともn本ずつに分けられるとともに紙幅方向と直交する方向に引き出されて、2つのヘッドHDに対応した2つの電極部35aが設けられている。このようなプリント回路基板35は、各ヘッド列HDLに1枚ずつ設けられるため、本実施形態のプリンター1は、8枚のプリント回路基板35を有している。
【0035】
各ヘッドHDに設けられたコネクター32は、各ヘッドHDに設けられている駆動素子を対応させて少なくともn個の電極を有している。各電極は、対をなす金属部材が互いに対向するとともに当接されるか、または、プリント回路基板の厚みより狭い距離の間隔を隔てて構成されており、対をなす金属部材が互いに離れる方向に弾性変形可能に設けられている。少なくともn対の電極は、紙幅方向すなわちノズル列の方向に沿って配置されており、対をなす金属部材の当接部分が紙幅方向に沿って並ぶように配置されている。そして、プリント回路基板35が備える各ヘッドHDに対応した電極部35aは、コネクター32が有する少なくともn個の電極が対向している部位の間に差し込まれることにより、コネクター32側の電極とプリント回路基板35側の電極とが接触して電気的に接続される。このとき、コネクター32側の対をなす電極が、電極が有する弾性力により互いに押圧しあっている間にプリント回路基板35の電極部35aが挿入されるので、電極部35aをコネクター32に挿入するだけで、電極部がコネクター32の電極に狭持され、プリント回路基板35とヘッドHDとが確実に電気的に接続される。
【0036】
紙幅方向においてラインヘッドユニット30より外側には、プリンター側コントローラー50及び信号処理回路20と繋がったバックプレーン37がラインヘッドユニット30の一方側に設けられている。バックプレーン37には、プリント回路基板35が接続されるバックプレーン側コネクター38が設けられている。バックプレーン側コネクター38が有する電極の構造は、ヘッドHDが有するコネクター32の電極の構造と同じである。バックプレーン側コネクター38は、少なくとも2n個の電極が上下方向に並ぶように設けられている。また、バックプレーン37には、バックプレーン側コネクター38が搬送方向に互いに間隔を隔てるとともに搬送方向に並べて8つ設けられている。
【0037】
<印刷動作について>
次に、この印刷システムにおける印刷動作について説明する。この印刷システムでは、画像データから印刷用のデータを生成し、印刷用のデータに基づいてインク滴の吐出制御が行われる。例えば、ホスト側コントローラー100は、アプリケーションプログラムを実行することで、印刷対象の画像データを生成する。また、ホスト側コントローラー100は、プリンタードライバーを実行することで、印刷対象の画像データから、ドットの形成或いは非形成を示す二値画像データをインクの種類毎に生成し、プリンター1へシリアル転送する。プリンター1では、プリンター側コントローラー50が二値画像データをデータ変換回路22にて各ヘッド列HDLに対応したデータに分配してラインヘッドユニット30に転送する。転送された二値画像データに基づき、各ヘッドHDは、対応するノズルからインクを吐出させる。すなわち、二値画像データを構成する画素データがドットの形成を示す場合、ヘッド制御部HCは、インクを吐出すべきノズルに対応する駆動素子に駆動信号COMを印加させる。これにより、駆動素子が動作して、対応するノズルからインク滴が吐出される。一方、この画素データがドットの非形成を示す場合、ヘッド制御部HCは、対象となるノズルに対応する駆動素子に、駆動信号COMを印加させない。この場合、駆動素子は動作しないので、対応するノズルからインク滴は吐出されない。
【0038】
本実施形態のプリンター1によれば、各ヘッド群が有する4つのヘッドHDは、用紙Sの相対移動方向(搬送方向)と交差する紙幅方向に並べられているので、ヘッド群が有する用紙Sの幅に相当するノズルを駆動するだけの多大な信号ラインが必要となる。しかしながら、4つのヘッドHDのうちヘッド列HDLをなす2つずつのヘッドHDが互いにプリント回路基板35にて接続されているので、各ヘッドHDに信号を供給する部材が占有する空間を小さく抑えることが可能である。また、プリント回路基板35は、例えばフラットフレキシブルケーブルより剛性が高いので、複数のコネクター32に同時に接続することが可能である。このため、容易に接続することが可能である。
【0039】
さらに、用紙Sの搬送方向には、4つのヘッド群が並べて設けられているが、いずれのヘッド群も2つのヘッドHDが互いにプリント回路基板35にて接続されているので、ヘッドHDの数が多くなったとしても、各ヘッドHDに信号を供給する部材が占有する空間を、フレキシブルフラットケーブルを用いた場合より小さく抑えることが可能である。
【0040】
また、ヘッドHDが備えるコネクター32にプリント回路基板35が有する電極部35aが挿入されて接続されているので、例えばコネクター同士が接続される場合より占有する空間を小さくすることが可能である。また、コネクター32に剛性が高いプリント回路基板35の電極部35aを挿入するだけなので容易に接続することが可能である。
【0041】
また、プリント回路基板35は、紙幅方向においてラインヘッドユニット30の一方側に設けられたバックプレーン37に接続されているので、剛性が高いプリント回路基板35はバックプレーン37に接続し易く、また、接続するだけで各ヘッドHDに信号を供給することが可能であり、複数のヘッドHDを備えつつも配線及び接続が容易なプリンター1を提供することが可能である。
【0042】
===その他の実施の形態===
上記の実施形態は、主としてプリンターを有する印刷システムについて記載されているが、液体吐出方法、液体吐出装置の制御方法、制御プログラム、制御コード、制御プログラムを記憶した記憶媒体等の開示も含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0043】
<プリント回路基板について>
上記実施形態においては、プリント回路基板35に配線パターンと電極のみが設けられた例について説明したが、プリント回路基板35には、図8に示すように、信号処理回路が搭載されていてもよい。例えば、プリント回路基板に、シリアル転送されたCMYK二値画像データをヘッドHDに対応させてパラレルデータに変換するデータ変換回路22が搭載されていても良い。この場合には、CMYK二値画像データがプリント回路基板に至るまでシリアルデータとして転送されるので、バックプレーン37とプリント回路基板35との接続部における電極及び配線を少なくすることが可能である。
【0044】
また、プリントプリント基板35に、ノズルから液体を吐出させる駆動信号COMを生成する駆動信号生成回路21が搭載されていても良い。この場合には、ノズルから液体を吐出させる駆動信号生成回路21がプリント回路基板35に搭載されているので、ヘッドHDと駆動信号生成回路21との間の距離を短縮することが可能である。このため、駆動信号生成回路21から送出された駆動信号COMがノイズ等の影響により歪むことを抑えることが可能である。
【0045】
さらに、例えば、図9に示すように、各ヘッドHDに、シリアル転送されたCMYK二値画像データをヘッドHDが有する各ノズルに対応させてパラレルデータに変換するデータ変換回路22が搭載されており、プリント回路基板35には、各々のヘッドHDに対応する電極部35aと、シリアルデータをヘッドHDに転送する配線パターン35cとが設けられており、電極部35aがヘッドHDのコネクター32に挿入されて、前記シリアルデータがヘッドHDに転送されても良い。この場合には、プリント回路基板は、コネクター35bから、ヘッド列HDLが有する2つのヘッドHD分のCMYK二値画像データ(シリアルデータ)が多重化されて転送されるだけなので、プリント回路基板35との接続部における電極及び配線をさらに少なくして、プリント回路基板35を小さくすることが可能である。
【0046】
<ヘッドHD及びノズルについて>
上記実施形態においては、ノズル群の数を4つ、各ヘッド群が有するヘッド列HDLの数を2列、各ヘッド列HDLが有するヘッドHDの数を2個とした例について説明したが、ヘッドHD、ヘッド列HDL及びヘッド群の数や配置は適宜定めることが可能である。
また、1つのヘッドHDが有するノズル列の数は1列に限られない。例えば、2列以上であっても構わない。例えば、同じインクを吐出するノズルを千鳥状に配置して1つのノズル列を構成してもよい。また、ノズルピッチ(印刷解像度)や1つのノズル列を構成するノズルの数も適宜定めることができる。
【0047】
<交差方向について>
前述の実施形態では、同じノズル列に属する複数のノズルが、用紙Sの搬送方向に直交する紙幅方向に並んでいた。言い換えれば、各ノズルが並ぶ交差方向は、搬送方向に対して直交する方向であった。ここで、紙幅方向におけるドットの形成ピッチをノズルピッチよりも高くするため、ラインヘッドユニット30を紙幅方向に対して斜めに配置する構成が考えられる。この場合の交差方向は、紙幅方向に対して斜めの方向になる。そして、同じラスターラインを担当するノズル同士は、搬送方向に沿って一列に並ぶ。
【0048】
<相対移動方向について>
媒体としての用紙Sを搬送する装置に限定されず、用紙Sが固定されラインヘッドユニット30を移動させる装置であってもよい。この場合、ラインヘッドユニット30の移動方向が相対移動方向に相当する。さらに、用紙Sを搬送しつつラインヘッドユニット30を移動させる装置であってもよい。また、用紙搬送機構10を有するプリンター1において、ラインヘッドユニット30を紙幅方向に移動させるようにしてもよい。この場合、各ノズル列が搬送方向に沿って配置される。そして、ラインヘッドユニット30の移動方向が相対移動方向に相当する。
【0049】
<液体吐出装置について>
上述の実施形態においては、液体吐出装置として、コンピューターCPとプリンター1を有する印刷システムを例示したが、これに限定されない。スキャナ機能と印刷機能とを併せ持つ複合機や、画像データを記憶した記憶媒体(メモリカードやCD−ROM等)から画像データを読み出し、対応する画像を印刷するダイレクト印刷機能を有するプリンター1であってもよい。これらの装置では、プリンタードライバーが行う処理、すなわち、RGB画像からCMYK二値画像を得る処理を、これらの装置が有するコントローラーが行う。
また、液体吐出装置であれば、様々な工業用装置についても適用可能である。例えば、布地に模様をつけるための捺染装置、カラーフィルタ製造装置や有機ELディスプレイ等のディスプレイ製造装置、チップへDNAを溶かした溶液を塗布してDNAチップを製造するDNAチップ製造装置、回路基板製造装置等であっても、本発明を適用できる。
【0050】
<媒体について>
前述の実施形態では、媒体として用紙Sを例示したが、用紙Sに限定されない。例えば、コンパクトディスクやOHP用のフィルムであってもよい。要するに、媒体は、液体が着弾するものであれば、種々のものを用いることができる。
【0051】
<液体について>
前述の実施形態ではプリンター1を例示したので、液体はインク(水性インク,油性インク)であった。液体に関しては、装置に適したものが適宜用いられる。そして、吐出される液体の種類は、複数種類に限らず1種類であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 プリンター,10 用紙搬送機構,11 給紙ローラー,12 搬送ローラー,
13 プラテン,14排紙ローラー,20 信号処理回路,21 駆動信号生成回路,
22 データ変換回路,30 ラインヘッドユニット,31 電極挿入部,
32 コネクター,33 供給孔,35 プリント回路基板,35a 電極部,
35b 端部コネクター,35c 配線パターン、37 バックプレーン,
38 バックプレーン側コネクター,40 検出器群,
50 プリンター側コントローラー,51 インターフェース部,
52 CPU,53 メモリー,100 ホスト側コントローラー,
101 インターフェース部,102 CPU,103 メモリー,
BP ベースプレート,CP コンピューター,COM 駆動信号,
HD ヘッド,HD1〜HD4 ヘッド,HDY1〜HDK4 ヘッド,
#1〜#360 ノズル,HC ヘッド制御部,HDL ヘッド列,S 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体との相対移動方向と交差する交差方向に並ぶ複数のノズルを有する複数のヘッドを有し、
各々の前記ヘッドは、当該ヘッドに信号を供給するプリント回路基板にて互いに接続されていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記ヘッドは、各々コネクターを備え、
前記プリント回路基板は、各々の前記ヘッドに対応する電極部を有し、当該電極部が前記コネクターに挿入されて接続されていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液体吐出装置であって、
前記プリント回路基板には、信号処理回路が搭載されていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液体吐出装置であって、
前記信号処理回路は、送信されたシリアルデータを前記ヘッドに対応させてパラレルデータに変換する回路であることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の液体吐出装置であって、
前記信号処理回路は、前記ノズルから液体を吐出させる駆動信号生成回路であることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の液体吐出装置であって、
前記プリント回路基板は、バックプレーンに接続されていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の液体吐出装置であって、
前記複数のヘッドが前記交差方向に並ぶヘッド列を複数有し、
複数の前記ヘッド列が、前記相対移動方向に並べて設けられていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の液体吐出装置であって、
前記ヘッドは、送信されたシリアルデータを前記ヘッドが有する前記ノズルに対応させてパラレルデータに変換する信号処理回路を備え、
前記プリント回路基板は、前記シリアルデータを前記ヘッドに転送する配線パターンを備えることを特徴とする液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−62850(P2011−62850A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213531(P2009−213531)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】