説明

液体吐出装置

【課題】チューブを湾曲せず、しかも格別な撹拌手段を設けることなく沈降性を有する液体の沈降を防止しかつ沈降した液体成分を撹拌可能な液体吐出装置を提供する。
【解決手段】キャリッジ3の主走査方向への往復動に追従して移動するインクチューブ14とこれに沿って配置された当接部材16を備え、インクチューブ14と当接部材16との干渉作用によりインクチューブ14を振動させて当該インクチューブ14内に滞留するインクを撹拌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット記録装置などの液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置に使用されるインクとしては、例えば白インクに代表されるように溶媒中に顔料等の分散粒子を均一に分散させた顔料系インクが用いられる。この顔料等の分散粒子は、溶媒に対して比重が大きいことから、記録装置が長時間にわたって使用されない場合には、分散粒子(顔料成分)が沈降しやすく、インク供給系の目詰まりやインク濃度の変化などを引き起こすおそれがある。
【0003】
この問題を解決すべく、インクに含まれる分散粒子を拡散すべく滞留するインクを撹拌する方法が提案されている。例えば、インクタンクと印字ヘッドを結ぶインク供給管の印字ヘッド近傍側にインク撹拌容器が挿入され、該インク撹拌容器には撹拌球が移動可能に内蔵されている。キャリッジが往復動する際に撹拌球がインク撹拌容器内を移動することによりインクが撹拌されるようになっている。
【0004】
また、上記インク撹拌容器と併用してインクチューブをらせん状、波型状などに湾曲させて顔料濃度の薄い上部と顔料が沈降した下部とが交互に配置され、キャリッジが停止状態から移動開始すると、顔料濃度が薄いインクによって沈降した顔料部分が押し出して撹拌する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−131976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した特許文献1においては、インクタンクと印字ヘッドを結ぶインク供給管に撹拌球を内蔵したインク撹拌容器を設ける場合には、部品点数が嵩むうえに、容器内に沈降した顔料を撹拌できてもその他のインクチューブ内に沈降した顔料成分までは撹拌できない。
また、インクチューブをらせん状、波型状などに湾曲させて顔料濃度の薄い湾曲上部と顔料が沈降した湾曲下部とが交互に配置されるようにした場合には、インクチューブが長くなるうえに湾曲下部に沈降した顔料が凝集すると、キャリッジが往復動走査を開始しても顔料濃度の薄いインク成分によって沈降した顔料を押し出すことができなくなる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、チューブを湾曲せず、しかも格別な撹拌手段を設けることなく沈降性を有する液体の沈降を防止しかつ沈降した液体成分を撹拌可能な液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る液体吐出装置は、印刷ユニットに支持された液体を貯留する貯留容器からチューブを介して主走査方向に往復動するキャリッジに搭載された液体吐出部に液体が供給され、前記キャリッジが主走査方向に往復動しながら対向する媒体に前記液体吐出部より液体を吐出する液体吐出装置であって、前記キャリッジの主走査方向への往復動に追従して移動する前記チューブとこれに沿って配置された当接部材を備え、前記チューブと当接部材との干渉作用によりチューブを振動させて当該チューブ内に滞留する液体を撹拌することを特徴とする。
【0009】
前記チューブ表面に形成された凹凸部と当接部材との摺動によりチューブ内の液体が撹拌されるのが好ましい。
これにより、キャリッジの往復動に伴うチューブの凹凸面と当接部材との摺動によってチューブが振動し、沈降性を有する液体の沈降を防止しかつ沈降した液体成分を撹拌することができる。
【0010】
前記チューブの表面に形成された第一の凹凸部と当接部材に形成された第二の凹凸面との干渉作用によりチューブを振動させて当該チューブ内の液体が撹拌されるようにしても良い。
これにより、キャリッジの往復動によってチューブの表面に形成された第一の凹凸部と当接部材に形成された第二の凹凸面との干渉作用により、チューブに生じる振動が相乗効果により大きくなるので当該チューブ内に沈降した液体成分が効率よく撹拌される。
【0011】
少なくとも前記チューブの表面に凹凸部が外付けされて凹凸面が形成されるか当接部材に凹凸部が外付けされて凹凸面が形成されるかのいずれかによりチューブを振動させて当該チューブ内の液体が撹拌されるようになっていても良い。
これにより、チューブの表面に凹凸部が外付けされるか或いは当接部材に凹凸部が外付けされて凹凸面が形成されるので、チューブ内で流動する液体が沈降性の液体かそれ以外の液体かで凹凸部を使い分けて使用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、チューブと当接部材との干渉作用によりチューブを振動させて当該チューブ内に滞留する液体を撹拌するので、格別な撹拌手段を設けることなくキャリッジを往復動させるだけで沈降性インクの沈降を防止しかつ沈降したインク成分を撹拌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】インクジェット記録装置の外観斜視図である。
【図2】インクジェット記録装置の走査部を示す模式図である。
【図3】インクチューブと当接部の構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る液体吐出装置の実施形態について詳細に説明する。本実施形態は液体吐出装置の一例としてインクジェット記録装置を用い、液体の一例として顔料系のインクを用いた場合について説明するものとする。以下の説明において、主走査方向は、印刷ユニットの長手方向(キャリッジが往復動する方向)、副走査方向は、ステージ部(吸着プレート)の長手方向(主走査方向と直交する方向)を指し示すものとする。
【0015】
図1は、インクジェット記録装置の外観を示す斜視図である。同図に示すように、インクジェット記録装置1は、例えばフラットベッド型インクジェット記録装置が用いられる。印刷ユニット4には、主走査方向に往復動するキャリッジ3が設けられている。このキャリッジ3には、対向するステージ部2(吸着プレート)に吸着支持された印刷対象である媒体にインクを吐出するインクジェットヘッド15が搭載されている。インクは、溶媒に対して顔料比重の大きい分散型のインクが用いられる。
【0016】
図2に示すように印刷ユニット4に固定されたインクを貯留するインクカートリッジ13(液体貯留部)からインクチューブ14を介して主走査方向に往復動するキャリッジ3に搭載されたインクジェットヘッド15にインクが供給される。インクジェットヘッド15には、スキャン(走査)に伴い屈曲が可能なインクチューブ14が接続されている。
【0017】
また、インクジェットヘッド15に接続するインクチューブ14には緩衝部18が設けられている。緩衝部18はキャリッジ3の往復動によって滞留したインクに生ずる圧力変動によって容積変化する。緩衝部18は圧力変動を緩和するダンパー機能や少量のインクを貯留する機能があるが、更に圧力を一定に保つためのレギュレータ機能を持つ部材であっても良いし、図2に示すように緩衝部18とインクジェットヘッド15との間にレギュレータ15aを入れても良い。
【0018】
また、インクジェットヘッド15に接続するインクチューブ14は、キャリッジ3の主走査方向への往復動に追従して移動する。また、インクチューブ14の移動方向に沿って当接部材16が配置されている。当接部材16は、キャリッジ3の移動をガイドするガイド部材でもよいし、インクチューブ14をガイドするガイド部材でもよいし、印刷ユニット4のシャーシ等であっても良い。
【0019】
インクチューブ14と当接部材16との干渉作用によりインクチューブ14を振動させて当該インクチューブ14内に滞留するインクを撹拌するようになっている。上記構成によれば、キャリッジを往復動させるだけで、インクチューブ14と当接部材16との干渉作用によりインクチューブ14を振動させて当該インクチューブ14内に滞留するインクを撹拌するので、格別な撹拌手段を設けることなく沈降性インクの沈降を防止しかつ沈降したインク成分を撹拌することができる。
【0020】
以下、図3を参照して具体的に説明する。
図3(a)は、インクチューブ14の表面に凹凸部14aが形成され、当接部材16との摺動によりインクチューブ14内のインクが撹拌される。凹凸部14aはインクチューブ14に線材(コイル)をスパイラル状に巻いたり、図3(b)に示すようにチューブ表面にローレット14bを形成したり、チューブ外装樹脂にビーズを混入して成形したものや、金属表面に溶射により凹凸を形成したもの、或いはチューブ表面にサンドブラストにより粗面化したものなどであっても良い。
【0021】
これにより、キャリッジ3の往復動に伴うインクチューブ14の凹凸面14a,14bと当接部材16との摺動によってインクチューブ14が振動し、沈降性インクの沈降を防止しかつ沈降したインク成分を撹拌することができる。
【0022】
また、図3(c)に示すように、インクチューブ14の表面に形成された可撓板17に形成された第一の凹凸部17aと当接部材16に形成された第二の凹凸部16aとの干渉作用によりインクチューブ14を振動させて当該インクチューブ14内のインクが撹拌されるようにしても良い。
【0023】
可撓板17は、プレス成形により段差を形成したもの、エッチングにより凹凸を形成したもの、樹脂成形により一体に段差を形成したもの、樹脂板若しくは金属板にUVインクを散点状に吐出して凹凸を形成したもの、金属表面に溶射により凹凸を形成したもの、或いはチューブ表面にサンドブラストにより粗面化したものなどであっても良い。
また、当接部材16は、単位板に上記凹凸を設けたものでもよいが、インクチューブ14を収納した屈曲ダクト(保護案内チェーン、ケーブルペア等)のダクト表面に突起を設けても良い。
【0024】
これにより、可撓板17の表面に形成された第一の凹凸部17aと当接部材16に形成された第二の凹凸面16aとの干渉作用により、キャリッジ3の往復動によってインクチューブ14に生じる振動が相乗効果により大きくなるので当該インクチューブ14内に沈降したインクが撹拌されやすくなる。
【0025】
また少なくともインクチューブ14の表面に凹凸部14aが外付けされて凹凸面が形成されるか若しくは当接部材16に凹凸部16aが外付けされて凹凸面が形成されるかのいずれかによりインクチューブ14を振動させて当該インクチューブ14内のインクが撹拌されるようにしても良い。
例えば、当接部材16に凹凸面を形成する構造としては、チューブ当接部にローラー等の凹凸を設けたり、図3(c)に示すように当接部材16の当接面に凹凸部16aを貼り付けたりしたものでもよい。
【0026】
これによれば、インクチューブ14の表面に凹凸部が外付けされるか或いは当接部材16に凹凸部が外付けされて凹凸面が形成されるので、インクチューブ14に使用されるインクが沈降性インクかそれ以外のインクかで凹凸部を使い分けて使用することができる。
【0027】
印刷ユニット4は、図1に示すようにキャリッジ3が往復動する主走査方向(Y軸方向)と直交する副走査方向(X軸方向)に往復移動可能に設けられている。尚、媒体には、普通紙などの紙類のほかに、PVC(ポリ塩化ビニル),PLA(ポリ乳酸),PP(ポリプロピレン),PET(ポリエチレンテレフタレート),PC(ポリカーボネート),PMMA(ポリメタクリル酸メチル)などの樹脂シート、織布、不織布などの布シート、アルミやステンレスなどの金属シート、或いは複合材料からなる合成シートなどの各種材料が含まれるものとする。
【0028】
印刷ユニット4には、キャリッジ3に搭載されインクジェットヘッドHから吐出直後の紫外線硬化インクに紫外線を照射して一次硬化させる第一紫外線硬化ランプ5a,5bがキャリッジ3の主走査方向両側に各々設けられている。第一紫外線硬化ランプユニット5a,5bはLED素子を光源として搭載されており、インクジェットヘッドHに設けられた各色ヘッドの印刷範囲に対応して設けられている。
【0029】
また、印刷ユニット4の外装である印刷ユニットカバー7には、副走査方向に突出してランプ収納カバー8が外付けにより着脱可能に設けられている。このランプ収納カバー8内には、一次硬化させた紫外線硬化インクに再度紫外線を照射して二次硬化させる第二紫外線硬化ランプユニット9が設けられている。第一紫外線硬化ランプユニット5a,5bと第二紫外線硬化ランプユニット9とは、媒体との間隔を各々調整可能に設けられている。ランプ収納カバー8はカバー本体10の上部を開閉する開閉部材11が回動可能に設けられている。
【0030】
第一紫外線硬化ランプユニット5a,5bの波長域は、300nm〜400nmとなっている。なお、このインクジェットプリンタ1では、インクジェットヘッドHが1ライン分の印刷を終了するたびに印刷ユニット4が、主走査方向に直交する副走査方向にステージ部2の長手方向に一方側から他方側に向かって移動する。電源ボックス12は、印刷ユニット4の上部に配置されており、紫外線蛍光ランプに安定した電源を供給する複数の安定器(インバータ機能内蔵;図示せず)を備えている。
【0031】
上記構成によれば、インクチューブ14を湾曲せず、しかも格別な撹拌手段を設けることなく沈降性インクの沈降を防止しかつ沈降したインク成分を撹拌可能なインクジェット記録装置を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0032】
1 インクジェット記録装置 2 ステージ部 3 キャリッジ 4 印刷ユニット 5a,5b 第一紫外線硬化ランプ 7 印刷カバー 8 ランプ収納カバー 9 第二紫外線硬化ランプユニット 10 カバー本体 11 開閉部材 12 電源ボックス 13 インクカートリッジ 14 インクチューブ 14a,16a,17a 凹凸部 14b ローレット 15 インクジェットヘッド 15a レギュレータ 16 当接部材 17 可撓板 18 緩衝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ユニットに支持された液体を貯留する貯留容器からチューブを介して主走査方向に往復動するキャリッジに搭載された液体吐出部に液体が供給され、前記キャリッジが主走査方向に往復動しながら対向する媒体に前記液体吐出部より液体を吐出する液体吐出装置であって、
前記キャリッジの主走査方向への往復動に追従して移動する前記チューブとこれに沿って配置された当接部材を備え、前記チューブと当接部材との干渉作用によりチューブを振動させて当該チューブ内に滞留する液体を撹拌することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記チューブ表面に形成された凹凸部と当接部材との摺動によりチューブ内の液体が撹拌されることを特徴とする請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記チューブの表面に形成された第一の凹凸部と当接部材に形成された第二の凹凸面との干渉作用によりチューブを振動させて当該チューブ内の液体が撹拌されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の液体吐出装置。
【請求項4】
少なくとも前記チューブの表面に凹凸部が外付けされて凹凸面が形成されるか前記当接部材に凹凸部が外付けされて凹凸面が形成されるかのいずれかにより前記チューブを振動させて液体が撹拌されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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