説明

液体吐出装置

【課題】第1筐体が離隔位置にあるときにカバーを効果的に保護位置に維持する。
【解決手段】第1筐体1aが離隔位置にあるときに、カバー13を退避位置から保護位置に移動させる力が加わった場合、凸部15pにA方向の力が作用する。一方、カバー13を保護位置から退避位置に移動させる力が加わった場合、凸部15pにB方向の力が作用する。しかしこのとき凸部15pはA,B両方向に関して穴1bxの側壁(交差部分1bx2の幅方向端部の側壁)に当接し、凸部15pの移動が当該側壁によって規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置において、ジャム処理(搬送経路における記録媒体の詰まりを解消する作業)等をユーザが手動で行う場合がある。この場合の作業空間を確保するため、液体吐出装置の筐体を、液体吐出ヘッドを収容する第1筐体と、記録媒体を支持する支持部等を収容する第2筐体とで構成し、第1筐体を第2筐体に対して移動可能とする技術が知られている(特許文献1参照)。特許文献1によると、特許文献1の第4図に示されているように、第1筐体(上ユニット1a)を第2筐体(下ユニット1b)から離隔した離隔位置に移動させることで、第2筐体に形成されている搬送経路を開放すると共に、搬送経路上に作業空間を確保することができる。
【0003】
また特許文献1によると、特許文献1の第5図(B)に示されているように、第1筐体が離隔位置にあるとき、吐出面(記録ヘッド101の下面)は、ユーザの手が触れたり異物が付着したりしないよう、カバー(紙ガイド201A)で覆われている。カバーは、第1筐体が離隔位置にあるとき吐出面を覆う保護位置にあり(第5図(B))、第1筐体が近接位置にあるとき吐出面を覆わない退避位置にある(第5図(A))。
【0004】
【特許文献1】特開昭63−254044号公報(第4図、第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によると、第1筐体が離隔位置にあるとき(第5図(B))、ユーザの手がカバーに触れる等して、図中時計回り方向の外力(カバーを退避位置から保護位置に移動させる方向の力)がカバーに加わった場合、ストッパ311により、カバーの移動が規制される。しかしながら、図中反時計回り方向の外力(カバーを保護位置から退避位置に移動させる方向の力)がカバーに加わった場合、当該方向の移動を規制するストッパ等が存在しないため、カバーが退避位置に移動してしまうことがある。この場合、吐出面が露出され、吐出面へのユーザの手の接触や異物付着等が生じ得る。
なお、特許文献1の第5図の形態では、ばね307の付勢力によって、カバーの退避位置への移動がある程度は抑制されるものの、外力の大きさが付勢力以上になれば、カバーは退避位置に移動してしまう。
【0006】
本発明の目的は、第1筐体が離隔位置にあるときにカバーを効果的に保護位置に維持することが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の観点によると、第1筐体と、第2筐体と、を備え、前記第1筐体は、前記第2筐体に対して移動可能であり、当該移動によって前記第2筐体に近接した近接位置と前記近接位置のときよりも前記第2筐体から離隔した離隔位置とを取り得ると共に、記録媒体に対して液体を吐出する複数の吐出口が開口した吐出面を有する液体吐出ヘッドを収容し、前記第2筐体は、前記吐出面に対向しつつ前記記録媒体を支持する支持部を収容し、前記第1筐体に取り付けられ、前記液体吐出ヘッドに対して移動可能であり、当該移動によって前記吐出面を覆う保護位置と前記吐出面を覆わない退避位置とを取り得るカバーと、前記第1筐体が前記近接位置にあるとき前記カバーが前記退避位置を取り、前記第1筐体が前記離隔位置にあるとき前記カバーが前記保護位置を取るように、前記カバーを前記第1筐体に連動させる連動機構と、をさらに備え、前記連動機構は、前記第2筐体に形成された穴と、前記穴に挿入された状態で前記穴に沿って移動可能な凸部であって、前記第1筐体に取り付けられ且つ前記カバーに係合した中間部材に設けられた、前記カバーに連動する凸部と、を含み、前記第1筐体が前記離隔位置にあるとき、前記カバーを前記退避位置から前記保護位置に移動させる力が作用する方向及び前記カバーを前記保護位置から前記退避位置に移動させる力が作用する方向に関して、前記凸部が前記穴の側壁に当接し、前記凸部の移動が前記側壁によって規制されていることを特徴とする、液体吐出装置が提供される。
【0008】
上記観点によれば、第1筐体が離隔位置にあるとき、上記両方向に関して凸部の移動が穴の側壁によって規制される。凸部はカバーに連動することから、このときカバーの移動も規制され、カバーを効果的に保護位置に維持することができる。
【0009】
前記第1筐体が前記離隔位置にあるとき、前記凸部に作用する前記液体吐出装置の自重による力の方向が前記穴の延在方向と交差してよい。
上記自重による力の方向が穴の延在方向と平行な場合、外力が作用しない状況でも、凸部が穴に沿って移動し易い。しかし上記構成によれば、上記自重による力の方向が穴の延在方向と交差するため、大きな外力が作用しない限りは、凸部が穴に沿って移動し難く、カバーの移動を効果的に規制することができる。
【0010】
前記第1筐体が前記離隔位置にあるとき、前記凸部に作用する前記液体吐出装置の自重による力の方向が前記穴の延在方向と交差することにより、前記連動機構が前記第1筐体の位置決め機能を有してよい。
この構成によれば、連動機構によって、離隔位置にある第1筐体の開き過ぎや近接位置への移動を、確実に防止することができる。
【0011】
前記カバーは、前記保護位置で前記吐出面に対向する部分に、液体を保持する液体保持部を有してよい。
この構成によれば、カバーが保護位置にあるときに吐出口から液体が漏出した場合に、液体が液体保持部に保持される。これにより、装置内部への液体の飛散を防止することができる。
【0012】
前記第1筐体が前記離隔位置にあるとき、前記吐出面が鉛直方向下向きに配置され、前記カバーは前記吐出面を鉛直方向下側から覆ってよい。
この構成によれば、吐出口から液体が漏出した場合でも、液体はカバーに受容されるため、装置内部への液体の飛散を防止することができる。
【0013】
前記穴は、前記凸部に作用する前記液体吐出装置の自重による力の方向と平行な方向に延在する平行部分と、前記自重による力の方向と交差する方向に延在する交差部分と、を含み、前記第1筐体が前記近接位置にあるとき前記凸部は前記平行部分に配置され、前記第1筐体が前記離隔位置にあるとき前記凸部は前記交差部分に配置され、前記第1筐体が前記近接位置から前記離隔位置に移動する間に、前記凸部が前記平行部分に沿って移動する第1段階と、前記凸部が前記交差部分に沿って移動する第2段階とがこの順で出現し、前記凸部の前記穴に沿った移動速度に対する、前記カバーの前記退避位置から前記保護位置への移動速度は、前記第1段階よりも前記第2段階の方が速くてよい。
第1段階は、第2段階よりも第1筐体と第2筐体とが近接している。そのため、第1段階でカバーが保護位置に向かって高速で移動してしまうと、カバーが第2筐体に衝突するといった問題が生じ得る。第2段階は、第1段階よりも第1筐体と第2筐体とが離隔している。そこで上記構成のように、第2段階でカバーを保護位置に向けて速やかに移動させる。このようにカバーの移動速度を一定とせずに変化させることで、カバーが第2筐体に衝突するといった問題等を抑制しつつ、カバーを保護位置に移動させることができる。
【0014】
前記中間部材は、前記第1筐体に固定された第1軸を中心として回動可能であり、前記カバーは、前記第1筐体に固定された前記第1軸よりも前記穴に近接した位置にある第2軸を中心として回動可能であり、前記中間部材の回動半径が前記カバーの回動半径よりも大きくてよい。
上記構成によれば、カバーの回動半径よりも大きい回動半径を有する中間部材を設けたことで、中間部材が無い場合に比べ、カバーの回動角度を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、第1筐体が離隔位置にあるとき、上記両方向に関して凸部の移動が穴の側壁によって規制される。凸部はカバーに連動することから、このときカバーの移動も規制され、カバーを効果的に保護位置に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット式プリンタの外観を示す側面図である。
【図2】プリンタの内部を示す概略側面図である。
【図3】連動機構を示す部分側面図である。
【図4】図3(a)のIV−IV線に沿った部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1及び図2を参照し、本発明の一実施形態に係るインクジェット式プリンタ1の全体構成について説明する。
【0019】
プリンタ1は、共に直方体形状で且つサイズが略等しい第1筐体1a及び第2筐体1bを有する。第1筐体1aは下面が開口し、第2筐体1bは上面が開口している。第1筐体1aが第2筐体1b上に重なり、互いの開口面を封止することで、プリンタ1内部の空間が画定される(図2参照)。
第1筐体1aの天板上部には、排紙部31が設けられている。第1及び第2筐体1a,1bにより画定される空間には、給紙ユニット1cから排紙部31に向けて、図2に示す太矢印に沿って、用紙Pが搬送される搬送経路が形成されている。
【0020】
第1筐体1aは、その下端の一辺をヒンジ部1hとして、第2筐体1bに対して移動可能(回動可能)である。当該移動によって、第1筐体1aは、第2筐体1bに近接した近接位置(図2に示す位置)と、近接位置のときよりも第2筐体1bから離隔した離隔位置(図1に示す位置)とを取り得る。
第1筐体1aが離隔位置にあるとき、第2筐体1bに形成されている搬送経路が露出され、搬送経路上にユーザの作業空間が確保される。このとき、当該作業空間を利用して、ユーザが手動でジャム処理等を行うことができる。
【0021】
第1筐体1aには、近接位置にある第1筐体1aの移動を規制(禁止)するロック機構(図示せず)が設けられている。ロック機構を解除することで、第1筐体1aを近接位置から離隔位置に移動させることができる。そして第1筐体1aが離隔位置から近接位置に戻った後、ロック機構により第1筐体1aの移動が規制される。
なお、第1筐体1aは、近接位置から離隔位置に向かう方向にバネ等で付勢されている。また、第1筐体1aは、近接位置から離隔位置に向けて移動する際、水平面に対して略35度の傾斜角度まで開くことができ且つこれ以上開かないように、ストッパ等で規制される。
即ち、本実施形態において、近接位置は水平面に沿った位置、離隔位置は水平面に対して略35度傾斜した位置である。
【0022】
第1筐体1aは、インクジェットヘッド10、プリンタ1各部の動作を制御するコントローラ1p(図2参照)、ヘッド10に対するインク供給源(インクカートリッジ及びサブタンク:図示略)等を収容している。インクカートリッジは、例えばブラックインクを貯留している。カートリッジ内のインクは、ポンプの駆動等により、サブタンクを介してヘッド10に供給される。
【0023】
第2筐体1bは、搬送ユニット21、給紙ユニット1c等を収容している。
【0024】
ヘッド10は、主走査方向に長尺なライン式であり、略直方体の外形形状を有する。ヘッド10は、フレーム3を介して第1筐体1aに支持されている。ヘッド10において、上面には、可撓性チューブが取り付けられるジョイントが設けられ、下面の吐出面10aには、多数の吐出口が開口し、内部には、チューブ及びジョイントを介して対応するカートリッジから供給されたインクが各吐出口に至るまでの流路が形成されている。
【0025】
コントローラ1pは、外部装置(プリンタ1に接続されたPC等)から供給された記録指令に基づいて、用紙Pに画像が記録されるよう、記録に係わる準備動作、用紙Pの供給・搬送・排出動作、用紙Pの搬送に同期したインク吐出動作等を制御する。
コントローラ1pは、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)に加え、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory:不揮発性RAMを含む)、I/F(Interface)等を有する。ROMには、CPUが実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。RAMには、プログラム実行時に必要なデータ(画像データ等)が一時的に記憶される。コントローラ1pは、I/Fを介して、外部装置とのデータ送受信等を行う。
【0026】
給紙ユニット1cは、給紙トレイ23及び給紙ローラ25を有する。このうち給紙トレイ23が第2筐体1bに対して主走査方向に着脱可能である。給紙トレイ23は、上面が開口した箱であり、複数種類のサイズの用紙Pを収容可能である。給紙ローラ25は、コントローラ1pの制御により回転し、給紙トレイ23の最も上方にある用紙Pを送り出す。給紙ローラ25によって送り出された用紙Pは、ガイド27a,27bによりガイドされ且つ送りローラ対26によって挟持されつつ搬送ユニット21へと送られる。
【0027】
搬送ユニット21は、2つのベルトローラ6,7及び両ローラ6,7間に架け渡されるように巻回されたエンドレスの搬送ベルト8に加え、搬送ベルト8の外側に配置されたニップローラ4及び剥離プレート5、搬送ベルト8の内側に配置されたプラテン9等を有する。
【0028】
ベルトローラ7は、駆動ローラであって、コントローラ1pの制御により回転し、図2中時計回りに回転する。ベルトローラ7の回転に伴い、搬送ベルト8が図2中の太矢印方向に走行する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、搬送ベルト8が走行するのに伴って、図2中時計回りに回転する。ニップローラ4は、ベルトローラ6に対向配置され、給紙ユニット1cから送られてきた用紙Pを搬送ベルト8の外周面8aに押さえ付ける。剥離プレート5は、ベルトローラ7に対向配置され、用紙Pを外周面8aから剥離して排紙部31へと導く。プラテン9は、ヘッド10に対向配置され、搬送ベルト8の上側ループを内側から支える。これにより、外周面8aと吐出面10aとの間に、画像記録に適した所定の間隙が形成される。
【0029】
搬送ベルト8の外周面8aには、弱粘着性のシリコン層が形成されている。給紙ユニット1cから搬送ユニット21へと送られてきた用紙Pは、ニップローラ4によって外周面8aに押え付けられた後、粘着力によって外周面8aに保持されつつ、黒塗り矢印に沿って副走査方向に搬送されていく。
【0030】
ここで、副走査方向とは、搬送ユニット21による用紙Pの搬送方向と平行な方向である。主走査方向とは、副走査方向に直交し且つ水平面に平行な方向である。
【0031】
用紙Pがヘッド10の直ぐ下方を通過する際に、コントローラ1pによる制御の下、ヘッド10が駆動し、吐出面10aから用紙Pに向けてインクが吐出されることで、用紙P上に画像が形成される。インクの吐出動作は、用紙センサ32からの検出信号に基づいて行われる。用紙Pは、その後剥離プレート5により外周面8aから剥離され、ガイド29a,29bによりガイドされ且つ二組の送りローラ対28によって挟持されつつ上方に搬送され、第1筐体1a上部に形成された開口30から排紙部31へと排出される。各送りローラ対28の一方のローラは、コントローラ1pの制御により回転する。
【0032】
第1筐体1aには、図1に示すように、吐出面10aを覆うカバー13が取り付けられている。カバー13は、ヘッド10に対して移動可能であり、当該移動によって吐出面10aを覆う保護位置(図1に示す位置)と吐出面10aを覆わない退避位置(図3(a)に示す位置)とを取り得る。
【0033】
カバー13は、主走査方向に延在した本体と、本体の主走査方向両端にそれぞれ形成された2つの側部とを含み、図1及び図3では1の側部のみが示されている。本体は、主走査方向の長さが吐出面10aよりも一回り大きく、保護位置で吐出面10aの略全体と対向する板状の部材である。各側部は、本体の主走査方向端部から主走査方向に直交する方向に突出し、軸13aを介して第1筐体1aの側部に支持されている。カバー13は、軸13aを中心として回動可能である。
第1筐体1aが離隔位置にあっても近接位置にあっても、吐出面10aは鉛直方向下向きに配置されている。第1筐体1aが離隔位置にあるとき、カバー13の本体は吐出面10aを鉛直方向下側から覆う(図1参照)。本体の上面(保護位置で吐出面10aと対向する部分)には、略全体に亘って、インクを吸収可能なスポンジ13sが設けられている。
【0034】
プリンタ1は、第1筐体1aが近接位置にあるときカバー13が退避位置を取り(図3(a)参照)、第1筐体1aが離隔位置にあるときカバー13が保護位置を取るように(図1参照)、カバー13を第1筐体1aに連動させる連動機構を有する。
以下、図1、図3、及び図4を参照し、連動機構の構成について説明する。
なお、連動機構はカバー13の各側部に対して設けられており、図1及び図3では1の連動機構のみを示す(即ち、図1及び図3は、プリンタ1の正面側に設けられた連動機構を示しているが、プリンタ1の背面側にも同様の連動機構が設けられている)。
【0035】
連動機構は、第2筐体1bに形成された穴1bx、及び、中間部材15に設けられた凸部15pを含む。
【0036】
中間部材15は、カバー13の側部(後述のピン13pを除く部分)と第2筐体1bとの間に介在しつつ、軸15aを介して第1筐体1aの側部に支持されている。中間部材15は、軸15aを中心として回動可能である。
軸15aは軸13aよりも穴1bxから離隔した位置にあり、中間部材15の回動半径はカバー13の回動半径よりも大きい。
【0037】
中間部材15は、長手方向一端に軸15aが設けられた細長部分と、細長部分の長手方向他端に接続された本体とを含む。本体に、長穴15x及び凸部15pが形成されている。
【0038】
長穴15xは、細長部分の長手方向と同じ方向に延在し、本体を貫通している。長穴15xに、カバー13の側部に設けられたピン13pが挿入されている。
ピン13pは、図4に示すように、カバー13の側部から主走査方向に沿って外側(図1の紙面手前側)に突出し且つ長穴15x内に配置された突出部13p1と、突出部13p1の先端に形成され且つ長穴15x外に配置された拡大部13p2とを含む。主走査方向から見て、突出部13p1は長穴15xの幅よりも一回り小さい円形であるのに対し、拡大部13p2は、突出部13p1より大きく、長穴15xの幅よりも一回り大きい円形である。つまり、拡大部13p2は、長穴15xの幅方向両端よりも外側に延出している。これにより、ピン13pの長穴15xからの脱落が防止され、中間部材15とカバー13との係合が保持されている。
【0039】
凸部15pも、図示は省略するが、ピン13pと同様、突出部と拡大部とを含む。これにより、凸部15pの穴1bxからの脱落が防止され、中間部材15と第2筐体1bとの係合が保持されている。
凸部15pは、穴1bxに挿入された状態で、穴1bxに沿って移動可能である。カバー13は、当該凸部15pの動作に連動し、退避位置と保護位置との間を移動する。
【0040】
穴1bxは、第2筐体1bの側壁を貫通している。
穴1bxは、凸部15pに作用するプリンタ1の自重による力の方向(本実施形態では、鉛直方向下向き。以下、「自重方向」と称す。)と平行な方向に延在する平行部分1bx1と、自重方向と交差する方向(本実施形態では、主走査方向から見て水平面に対して傾斜した方向)に延在する交差部分1bx2とを含む。
平行部分1bx1の上端と交差部分1bx2の一端とが接続している。穴1bxは、平行部分1bx1の下端から、平行部分1bx1の上端及び交差部分1bx2の一端を経て、交差部分1bx2の他端に至る、屈曲形状を有する。
【0041】
次いで、図1及び図3を参照し、第1筐体1aの移動に伴うカバー13及び連動機構の動作について説明する。
【0042】
例えば、第1筐体1aが近接位置(図3(a)参照)にあり、記録指令に基づく各動作が行われているときに、ジャム(搬送経路における用紙Pの詰まり)が検知された場合、ロック機構による規制が解除され、ユーザが第1筐体1aを近接位置から離隔位置に移動させることができる。
【0043】
第1筐体1aが近接位置(図3(a)参照)にあるとき、凸部15pは平行部分1bx1の下端に配置されており、カバー13は退避位置にある。このとき凸部15pは平行部分1bx1の下端の壁に当接している。
【0044】
第1筐体1aは、ユーザにより持ち上げられることで、近接位置(図3(a)参照)から離隔位置(図1参照)に移動する。このとき、凸部15pが穴1bxに沿って移動することで、中間部材15が図3(b),(c)のように軸15aを中心として図中反時計回りに回動する。さらにこのとき、ピン13pが長穴15xの壁に押圧されることで、カバー13は中間部材15の回動に連動して図3(b),(c)のように軸13aを中心として図中反時計回りに回動する。
【0045】
第1筐体1aが近接位置から離隔位置に移動する間、凸部15pが平行部分1bx1に沿って移動する第1段階(図3(a),(b)参照)と、凸部15pが交差部分1bx2に沿って移動する第2段階(図3(c)参照)とがこの順で出現する。
本実施形態では、穴1bxを平行部分1bx1と交差部分1bx2とで構成したことにより、凸部15pの穴1bxに沿った移動速度に対する、カバー13の退避位置から保護位置への移動速度は、第1段階よりも第2段階の方が速くなっている。
【0046】
第1筐体1aが離隔位置に到達したとき(図1参照)、凸部15pは交差部分1bx2の他端に配置される。
このとき、カバー13を退避位置から保護位置に移動させる力が加わった場合、凸部15pにA方向の力が作用する。一方、カバー13を保護位置から退避位置に移動させる力が加わった場合、凸部15pにB方向の力が作用する。しかしこのとき凸部15pはA,B両方向に関して穴1bxの側壁(交差部分1bx2の幅方向端部の側壁)に当接し、凸部15pの移動が当該側壁によって規制される。そしてこのとき凸部15pに作用する力は、穴1bxの側壁を介して第2筐体1bに分散される。
【0047】
以上に述べたように、本実施形態に係るプリンタ1によると、第1筐体1aが離隔位置にあるとき(図1参照)、A,B両方向に関して凸部15pの移動が穴1bxの側壁によって規制されている。凸部15pはカバー13に連動することから、このときカバー13の移動も規制され、カバー13を効果的に保護位置に維持することができる。
また、本実施形態の連動機構は、電源駆動によるものではない。電源駆動による連動機構の場合、複雑な構成になったり、電源を投入しないと動作しない等の問題があるが、本実施形態の連動機構は、比較的簡素な構成であり、電源を投入しなくても動作する。
【0048】
第1筐体1aが離隔位置にあるとき(図1参照)、自重方向が交差部分1bx2の延在方向と平行な場合、外力が作用しない状況でも、凸部15pが交差部分1bx2に沿って移動し易い。しかし本実施形態によれば、自重方向が交差部分1bx2の延在方向と交差するため、大きな外力が作用しない限りは、凸部15pが交差部分1bx2に沿って移動し難く、カバー13の移動を効果的に規制することができる。
【0049】
第1筐体1aが離隔位置にあるとき(図1参照)、自重方向が交差部分1bx2の延在方向と交差することにより、連動機構が第1筐体1aの位置決め機能を有する。したがって、連動機構によって、離隔位置にある第1筐体1aの開き過ぎや近接位置への移動を、確実に防止することができる。
なお、本実施形態において、第1筐体1aの開き過ぎは、ストッパ等によっても防止されるが、上記のような連動機構の位置決め機能によって、より一層確実に防止される。
【0050】
カバー13は、保護位置で吐出面10aに対向する部分に、スポンジ13sを有する。したがって、カバー13が保護位置にあるときに吐出口からインクが漏出した場合に、インクがスポンジ13sに保持される。これにより、プリンタ1内部へのインクの飛散を防止することができる。
【0051】
第1筐体1aが離隔位置にあるとき(図1参照)、吐出面10aが鉛直方向下向きに配置され、カバー13は吐出面10aを鉛直方向下側から覆う。吐出口からインクが漏出した場合でも、インクはカバー13に受容されるため、プリンタ1内部へのインクの飛散を防止することができる。
【0052】
穴1bxが平行部分1bx1と交差部分1bx2とを含み、第1筐体1aが近接位置から離隔位置に移動する間、凸部15pが平行部分1bx1に沿って移動する第1段階(図3(a),(b)参照)と、凸部15pが交差部分1bx2に沿って移動する第2段階(図3(c)参照)とがこの順で出現する。
第1段階は、第2段階よりも第1筐体1aと第2筐体1bとが近接している。そのため、第1段階でカバー13が保護位置に向かって高速で移動してしまうと、カバー13が第2筐体1bに衝突するといった問題が生じ得る。第2段階は、第1段階よりも第1筐体1aと第2筐体1bとが離隔している。そこで、第2段階でカバー13を保護位置に向けて速やかに移動させる。このようにカバー13の移動速度を一定とせずに変化させることで、カバー13が第2筐体1bに衝突するといった問題等を抑制しつつ、カバー13を保護位置に移動させることができる。
また、第1段階では、凸部15pに作用する外力が小さくても、凸部15pがスムーズに平行部分1bx1に沿って移動する。第2段階では、凸部15pを移動させるのに、第1段階よりも大きな外力が必要である。そのため、第2段階(第1筐体1aと第2筐体1bとが離隔した状態)において、凸部15pに外力が加わっても、凸部15pの移動を効果的に規制でき、ひいてはカバー13の移動を効果的に規制することができる。
【0053】
カバー13の回動半径よりも大きい回動半径を有する中間部材15を設けたことで、中間部材15が無い場合に比べ、カバー13の回動角度を効果的に大きくすることができる。
【0054】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0055】
支持部は、ベルトに限定されず、プラテン等であってもよい。
【0056】
第2筐体に形成された穴、及び、中間部材に設けられた凸部は、様々な形態であってよい。
例えば、穴は、貫通した穴、及び、貫通しない穴(凹部)のいずれでもよい。
また、凸部は、穴からの脱落を防止するための拡大部等を含まなくてもよい。
【0057】
液体保持部は、液体を保持する限りは、液体を吸収するスポンジ等に限定されず、布、毛管現象で液体を保持するもの(多数の突起が密に配置された部材)等であってよい。
【0058】
第1筐体は、第2筐体に対してヒンジ部を中心として回動することに限定されず、例えば鉛直方向又は水平方向に移動してもよい。
カバーや中間部材についても、同様に、回動ではなく鉛直方向や水平方向に移動してもよい。
【0059】
第1筐体は、ユーザの手動によらず、コントローラ1pが機械的な機構を制御することで、近接位置と離隔位置との間を移動してもよい。
【0060】
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能である。
液体吐出ヘッドは、インク以外の任意の液体を吐出してよい。また、液体吐出装置に含まれる液体吐出ヘッドの数は1以上であればよい。2以上の液体吐出ヘッドを含む場合、ヘッド毎にカバー及び連動機構を設けてよい。
記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な任意の媒体であってよい。
【符号の説明】
【0061】
1 インクジェット式プリンタ(液体吐出装置)
1a 第1筐体
1b 第2筐体
1bx 穴(連動機構)
1bx1 平行部分
1bx2 交差部分
8 搬送ベルト(支持部)
10 インクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)
10a 吐出面
13 カバー
13a 軸(第2軸)
13s スポンジ(液体保持部)
15 中間部材
15a 軸(第1軸)
15p 凸部(連動機構)
P 用紙(記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体と、
第2筐体と、を備え、
前記第1筐体は、前記第2筐体に対して移動可能であり、当該移動によって前記第2筐体に近接した近接位置と前記近接位置のときよりも前記第2筐体から離隔した離隔位置とを取り得ると共に、記録媒体に対して液体を吐出する複数の吐出口が開口した吐出面を有する液体吐出ヘッドを収容し、
前記第2筐体は、前記吐出面に対向しつつ前記記録媒体を支持する支持部を収容し、
前記第1筐体に取り付けられ、前記液体吐出ヘッドに対して移動可能であり、当該移動によって前記吐出面を覆う保護位置と前記吐出面を覆わない退避位置とを取り得るカバーと、
前記第1筐体が前記近接位置にあるとき前記カバーが前記退避位置を取り、前記第1筐体が前記離隔位置にあるとき前記カバーが前記保護位置を取るように、前記カバーを前記第1筐体に連動させる連動機構と、をさらに備え、
前記連動機構は、前記第2筐体に形成された穴と、前記穴に挿入された状態で前記穴に沿って移動可能な凸部であって、前記第1筐体に取り付けられ且つ前記カバーに係合した中間部材に設けられた、前記カバーに連動する凸部と、を含み、
前記第1筐体が前記離隔位置にあるとき、前記カバーを前記退避位置から前記保護位置に移動させる力が作用する方向及び前記カバーを前記保護位置から前記退避位置に移動させる力が作用する方向に関して、前記凸部が前記穴の側壁に当接し、前記凸部の移動が前記側壁によって規制されていることを特徴とする、液体吐出装置。
【請求項2】
前記第1筐体が前記離隔位置にあるとき、前記凸部に作用する前記液体吐出装置の自重による力の方向が前記穴の延在方向と交差することを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第1筐体が前記離隔位置にあるとき、前記凸部に作用する前記液体吐出装置の自重による力の方向が前記穴の延在方向と交差することにより、前記連動機構が前記第1筐体の位置決め機能を有することを特徴とする、請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記カバーは、前記保護位置で前記吐出面に対向する部分に、液体を保持する液体保持部を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記第1筐体が前記離隔位置にあるとき、前記吐出面が鉛直方向下向きに配置され、前記カバーは前記吐出面を鉛直方向下側から覆うことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記穴は、前記凸部に作用する前記液体吐出装置の自重による力の方向と平行な方向に延在する平行部分と、前記自重による力の方向と交差する方向に延在する交差部分と、を含み、
前記第1筐体が前記近接位置にあるとき前記凸部は前記平行部分に配置され、前記第1筐体が前記離隔位置にあるとき前記凸部は前記交差部分に配置され、
前記第1筐体が前記近接位置から前記離隔位置に移動する間に、前記凸部が前記平行部分に沿って移動する第1段階と、前記凸部が前記交差部分に沿って移動する第2段階とがこの順で出現し、
前記凸部の前記穴に沿った移動速度に対する、前記カバーの前記退避位置から前記保護位置への移動速度は、前記第1段階よりも前記第2段階の方が速いことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記中間部材は、前記第1筐体に固定された第1軸を中心として回動可能であり、
前記カバーは、前記第1筐体に固定された前記第1軸よりも前記穴に近接した位置にある第2軸を中心として回動可能であり、
前記中間部材の回動半径が前記カバーの回動半径よりも大きいことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−76232(P2012−76232A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220527(P2010−220527)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】